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iFOC Newsletter 2 BNCT BNCT Boron Neutron Capture Therapyホウ素中性子捕捉療法 次世代低侵襲がん治療の実用化 世界的がん治療の拠点へ ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の治療装置を設置する「(仮称)南 東北 BNCT 研究センター」の起工式が 3 月 2 日、郡山市の総合南東北 病院敷地内の建設予定地で行われました。 起工式には渡邉一夫一般財団法人脳神経疾患研究所理事長、寺西寧 総合南東北病院院長をはじめとする病院関係者のほか、京都大学教授 で BNCT 研究の第一人者である小野公二教授ら約 70 名が出席し、渡 邉理事長らが鍬入れをして工事の安全を祈願しました。 (仮称)南東北 BNCT 研究センター は、郡山市八山田の南東北がん陽子線 治療センター西側敷地に建設されます。 鉄筋コンクリート地上 5 階、地下 2 階 で、延床面積は約 5980 平方メートル。 完成予定は 2014 年 7 月。2018 年 度の治療開始を目指します。 南東北 BNCT 研究センター (仮称)南東北 BNCT 研究センター建設予定地 (仮称) 南東北 BNCT 研究センター起工式 2013 年 3 月 2 日 南東北 BNCT センター起工式 工事の安全を祈願し鍬入れする 渡邉一夫理事長 一般財団法人 脳神経疾患研究所 附属 総合 南東北病院 理事長 南東北グループ 総長 公益財団法人 国際口腔医療財団 評議員 雪の中を南東北 BNCT 研究センター建設 予定地へ向かう京都大学粒子線腫瘍学セン ター長の小野公二教授と瀬戸晥一総長首 席補佐監。 BNCT はテレビ東京 「ガイアの夜明け…治 せなかった “がん” に挑む」で取り上げられ、 小野教授らの長年にわたる研究が紹介され ました。

(仮称)南東北BNCT研究センター起工式 - Seto KiFOC Newsletter 3 (仮称)南東北BNCT研究センターの概要 郡山市の総合南東北病院に建設される(仮称)南東北

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Page 1: (仮称)南東北BNCT研究センター起工式 - Seto KiFOC Newsletter 3 (仮称)南東北BNCT研究センターの概要 郡山市の総合南東北病院に建設される(仮称)南東北

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BNCT(BNCT Boron Neutron Capture Therapy) ホウ素中性子捕捉療法次世代低侵襲がん治療の実用化—世界的がん治療の拠点へ

 ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の治療装置を設置する「(仮称)南東北 BNCT 研究センター」の起工式が 3 月 2 日、郡山市の総合南東北病院敷地内の建設予定地で行われました。 起工式には渡邉一夫一般財団法人脳神経疾患研究所理事長、寺西寧総合南東北病院院長をはじめとする病院関係者のほか、京都大学教授で BNCT 研究の第一人者である小野公二教授ら約 70 名が出席し、渡邉理事長らが鍬入れをして工事の安全を祈願しました。

 (仮称)南東北 BNCT 研究センターは、郡山市八山田の南東北がん陽子線治療センター西側敷地に建設されます。鉄筋コンクリート地上 5 階、地下 2 階で、延床面積は約 5980 平方メートル。 完成予定は 2014 年 7 月。2018 年度の治療開始を目指します。

南東北BNCT研究センター

(仮称)南東北BNCT研究センター建設予定地

(仮称)南東北BNCT研究センター起工式2013 年 3 月 2 日

南東北BNCTセンター起工式

工事の安全を祈願し鍬入れする渡邉一夫理事長一般財団法人 脳神経疾患研究所 附属 総合南東北病院 理事長南東北グループ 総長公益財団法人 国際口腔医療財団 評議員

雪の中を南東北 BNCT 研究センター建設予定地へ向かう京都大学粒子線腫瘍学センター長の小野公二教授と瀬戸晥一総長首席補佐監。BNCT はテレビ東京「ガイアの夜明け…治せなかった“がん”に挑む」で取り上げられ、小野教授らの長年にわたる研究が紹介されました。

Page 2: (仮称)南東北BNCT研究センター起工式 - Seto KiFOC Newsletter 3 (仮称)南東北BNCT研究センターの概要 郡山市の総合南東北病院に建設される(仮称)南東北

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(仮称)南東北 BNCT 研究センターの概要 郡山市の総合南東北病院に建設される(仮称)南東北BNCT 研究センターには、京都大学と同型のベリリウムターゲット方式のサイクロトロンが設置されます。 ベリリウム(Be)とは、中性子ビームを発生させるための加速陽子のターゲット(標的)となる物質で、この方式は京都大学での実績があり、安全性も確認されています。 照射室の設計においても、患者さんは前室で準備し、ポジショニングをして照射室に搬入するなど、より安全性を考慮しています。 また、治療準備、照射が効率的に行われるように工夫し、1 日あたり 6 人の照射を目標にしています。 センターの建設計画については、2013、14 年度に研究棟の建設、BNCT 装置の設置、および安全性試験を実施し、ハード面での整備調整を実施します。2014 年度には装置の性能向上試験、すなわち中性子の密度を濃くして照射時間を短くする実験をあわせて行います。周辺機器開発、関連技術の開発は京都大学と筑波大学が分担、次世代製薬ならびに免疫学的サポートについては東京理科大学が担当、その成果を順次導入していく予定です。 このほかにも大阪大学、大阪医科大学、川崎医科大学など、多くの BNCT 研究に取り組む研究機関との間でオールジャパンの連携を進めていくことになります。

世界最先端のがん治療拠点今後、BNCT 治療が実用化されるためには、ホウ素薬剤と中性子源がそれぞれ医薬品、医療用具として承認され、薬事法上の承認を得る必要があります。すでに京都大学では治験第Ⅰ相(フェーズ ・ワン)を開始しています。 本年 3 月 2 日にセンターの鍬入れ式が行われましたが、BNCT の第一人者である京都大学粒子線腫瘍学センター長の小野公二教授にも御列席頂きました。 2015 年にセンターの建物が完成したのち、私たちは脳腫瘍、、頭頚部腫瘍の治験を京都大学と一体となって進め、2016 年の終わりをめどに薬事を申請、2017 年度には先進医療の届け出をして実用化を図る考えです。さらに、次のターゲットは胸部悪性腫瘍で特に中皮腫は適応疾患になると信じています。 南東北グループの院是は「すべては患者さんのために」です。病院として BNCT の世界初の実用化をなしとげ、既設の陽子線治療センターなどとともに、最先端のがん治療拠点として、日本はもとより世界中からがんに苦しむ患者さんや研究者が集う場所を目指し、病院一丸となって前進していきます。

■注 /京都大学原子炉実験所 大阪府熊取町の京都大学原子炉実験所(KUR)の設置計画は、1956(昭和 31)年の第 1 回研究用原子炉設置準備委員会(初代委員長 湯川秀樹教授)の開催から始まり、1963(昭和 38)年、「原子炉による実験及びこれに関連する研究」を行うことを目的に、全国大学の共同利用研究所として京都大学に附置されされた。

起工式に先立ち、総合南東北病院北棟 NABE ホールでは同センターの概略について記者発表会が開かれ、渡邉理事長とともに南東北グループ総長首席補佐監を務める瀬戸晥一先生が会見に臨み、BNCT の治療原理、今後の建設と実用化へ向けた計画についての説明が行われました。

放射線治療 特徴の比較一般的な X 線 陽子線・重粒子線 BNCT

体の内部になるほど線量は弱くなる

体を透過するので、 正常細胞にも影響が出る

照射する線量に限界がある

がんの標準的治療として実施

がん細胞でエネルギーが最大になるように照射できる

正常細胞への影響が X 線より少ない(ピンポイント照射)

再発がんにも照射可能

先進医療として実施

ホウ素を取り込んだがん細胞だけを狙い撃ちする

正常細胞への影響が最も少ない

再発がんにも照射可能

研究段階〜治験第一相先進医療を目指す

(仮称) 南東北 BNCT 研究センター記者説明会で BNCT の治療原理と建設計画について説明する瀬戸晥一先生

2015 年春完成・2017 年実用化を目指してがん治療のパラダイム転換

リポート3 Report

(仮称)南東北BNCT研究センター起工式 南東北グループ総長首席補佐監

総合南東北病院 BNCT 準備室長/国際部長/口腔がん治療センター長公益財団法人国際口腔医療財団理事長 瀬 戸 晥 一http://www.seto-k.net