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-患者・家族とケアー提供者の協働で 安全管理の向上をー 南木 勝子 医療安全学術認定講師・主任研究員 一般社団法人 日本病院管理協会

-患者・家族とケアー提供者の協働で 安全管理の向上をー 勝子 · 1医療の安全確保における 1) 患者参加のあゆみ 日本と米国の状況

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Page 1: -患者・家族とケアー提供者の協働で 安全管理の向上をー 勝子 · 1医療の安全確保における 1) 患者参加のあゆみ 日本と米国の状況

-患者・家族とケアー提供者の協働で 安全管理の向上をー

南木 勝子 医療安全学術認定講師・主任研究員 一般社団法人 日本病院管理協会

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1 医療の安全確保における 1) 患者参加のあゆみ 日本と米国の状況 2) 安全のためのノンテクニカルスキルとは 3) 患者・家族と医療者との協働行動 ・ 失敗と成功から学ぶ 2 患者・家族の力を発揮させる安全文化とは ・ コミュニケーション上手と借り上手 3 まとめ

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1 医療安全を考えるきっかけ1999年(平成11年) 1月 横浜市立大学付属病院

患者取り違え事故

1999年(平成11年) 2月 都立広尾病院

血管内に消毒薬を誤注入

2000年(平成12年) 2月 京都大学医学部付属病院

人工呼吸器の加湿器にエタノール誤注入

2000年(平成12年) 4月 東海大学医学部付属病院

内服薬の点滴内誤注入

医療の信頼を損なう相次いだ医療事故は、 社会に大きな反響を呼び、2001年4月、厚生労働省は

医政局内に「医療安全推進室」を設置し、実質的な医療安全

対策に着手した。

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2 患者参加具体例 2001年 厚生労働省 「安全な医療を提供する

10の要点」

10項目 医療者向けのメッセージ

2、安全高める患者の参加 対話が深める互いの理解

参加のあり方を示した例

9、患者と薬を再確認 用法・容量 気をつけて

2000年 米国保健福祉省 AHRQ 「医療事故を防ぐ

ための20のヒント」

患者参加の具体的な方法を示した

2008年 「医療安全全国共同行動」で示された

行動目標に「患者・市民の医療参加」を謳い

患者参加の具体的な方法を提案し支援している。

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1998年: DFCI 患者・家族と病院上級管理職

の構成で協議会をスタート

3つの委員会

1: 活動推進の広報活動

2: 患者・家族の立場で体験者の声を

聞かせる教育活動

3: 治療中の患者・家族と会い、その

声を届ける活動

特に効果のあった活動

患者・家族が患者・家族を対象に行う院内巡回

6か月後の結果 ある部署のインシデントが激変

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<キーワード>

・医療従事者が考える医療安全 患者が考える

医療安全

・ A患者が考える医療安全 B患者が考える

医療安全

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1 患者・家族参加の意義を理解する。

・患者・家族と医療従事者双方の理解が必要

2 具体的に何をするのか。

・双方に示す。

3 患者が「自ら参加する」仕掛けを工夫する。

医療安全推進者ネットワーク: 医療安全をとりまく動向・ここに注目

「患者参加の医療安全」を進めるための条件 鮎沢純子 より引用・改変

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患者参加の方法 活動例

患者・家族自身の医療への参加 看護職と氏名や薬剤の確認 自分の疾病や治療について学習

他の患者のための患者参加 事故被害者への支援 闘病記の執筆,Webへの掲載 患者体験に基づき他の患者への助言

国や地域医療を支えるための患者参加 医療行政の委員会に患者の立場から 参加 医療事故防止に関する講演会の講師 医療安全推進のための標準テキストP24より引用

(山内桂子著:事故と安全の心理学)

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テクニカルスキル:その職務を遂行する上での

必要な専門的能力

ノンテクニカルスキル:テクニカルスキルを支えるため

あらゆるスキルの総称

専門家のテクニカルスキルを補い、安全で効率的に職務を遂行

できるような認知能力、社会能力、人的資源を活用できる能力

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<8つの要素>

状況認識 意思決定

チームワーク コミュニケーション

リーダシップ ストレス管理

疲労対処 認知心理学者

ローナ・フィリン分類

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考える力

伝える力

決める力 4つの力の体系

動かす力

考える力

伝える力

決める力

動かす力

ロジカル シンキング

プレゼン テーション

ファシリ テーション

マネジメント

メディプロ ノンテクニカルスキルとは より引用

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(総室での出来事)

・ ベットより転落しそうなところを発見

患者・家族 医療従事者

患者家族が発見 教えていただいて

急いでナースステーションに ありがとうございます。

連絡

再発防止に向けて

患者・家族の力を引き出す説明と対話は?

事例1

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・ 持続点滴中の排泄援助

医療従事者 患者・家族

おしっこがしたくなったら はい

コールしてください。

ナースコールを押す

どうされましたか? ?

(自力で排泄した患者は点滴が皮下漏れして ナースコールを押した。)

再発防止の向けて

患者・家族の力を引き出す説明と対話は?

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4つの力の体系

<考える力>

(1) ベットサイドは安全管理情報の宝庫

① 患者・家族のヒヤリ体験事例を見逃さない

② 患者・家族の防止策は何よりのヒント

物事の優先順位を考え、問題を発見し、

問題を解決する力、

物事を客観的に理解する方法

物事を形でなく機能や効用で捉える方法

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<伝える力>

(2) 医療従事者間で情報共有

(3) 共有した情報を患者・家族に提供し、

患者・家族の療養生活の力に活かす。

相手に思いを伝え、伝える内容は論理的に組み立て 相手に問いかけ、語らせる。 双方向の関係

<決める力・動かす力>

(4) 患者・家族と共に考える安全活動計画と実施

患者や家族も安全ミーティングに巻き込み、意見を 引き出す

(5) 効果判定と継続力

効果はともに共有し、喜び励ます

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1 患者・家族の気持ちを掬い取り、医療従事者で共有

2 共有した情報は患者・家族の闘病生活に役立つ

内容に変化させ伝える。

3 伝えた後の患者・家族の反応を共有する。

4 患者・家族と医療従事者が一体化する。

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・医療現場で患者や家族が気づいた

ヒヤリ・ハット事例はないか?

・その場限りの対応で済ませていないか?

・患者・家族のヒントから安全対策に効果があった

事例をチームで共有する。

・院内で共有する仕組みをつくり、患者・家族参加を

促進する院内風土を醸成する。

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発生要因 %

当事者の行動に関わる要因 46

確認を怠った 12.1

観察を怠った 10.5

判断を誤った 10.5

連携ができていなかった 5.6

患者への説明不足(怠った) 5.3

報告が遅れた(怠った) 1.1

記録等の不備 0.9

ヒュマンファクター 18.8

環境・設備機器 17.6

その他 17.3

医療事故情報収集等事業 平成25年年報P119より引用

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・序列や権威勾配

・リーダーシップのスタイル

・名ばかりのチーム

・医療従事者の偏見や懸念

・見ず知らずの人達(初対面者同士)

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1 患者・家族は医療のパートナー

2 患者・家族力を信じて借り上手になろう。

(患者・家族は安全管理上の重要な資源)

3 対話上手で、患者・家族力を医療安全向上

の潤滑油にしょう。

4 医療従事者の懸念は払拭し、謙虚になろう。

(教えてくれてありがとう文化の醸成)

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<医療安全推進の要>

テクニカルスキルを補う

ノンテクニカルスキルにある。

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ご清聴ありがとうございました

(皆さまのご活躍を祈念いたします)