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~公共財ゲームからのアプローチ~ 中京大学 古川ゼミ

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~公共財ゲームからのアプローチ~

中京大学 古川ゼミ

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行動経済学とは「典型的な経済学のように経済人を前提とするのではなく、実際の人間による実験やその観察を重視し、人間がどのように選択・行動し、その結果どうなるかを究明することを目的とした経済学の一分野である。」

人間は実際には合理的な行動ができないこともあるということを示す経済学である!

合理的って?

自分の利益を最大限にしようとすること

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経済人の条件

「自分の好みが明確であり、それには矛盾がなく、常に変わらないこと。そして、その好みに基づいて、自分の満足が最も大きくなるような選択肢を選ぶことである。」

つまり、自分の利益が出ることでしか行動しない人

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みんなが経済人であれば!!

利己的にフリーライドが発生するはずである。

道路を作るからお金をだしてくださいといわれたら、ほかのみんなが出して自分は出さない、つまりタダ乗り(フリーライド)するかもしれない。

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「必要とされる経済的・時間的・労力的コスト(費用)を負担せずに便益やサービスを得る行為。」

「経済学用語としては、悪意をもった行為をさすわけではなく、費用を負担する者と便益を受ける者が、

一致しない場合に、便益を受ける者をフリーライダーfree riderとよぶ。」

フリーライド

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フリーライドの例

あなたが旅行先などで自分の住んでいる地区以外の公園で水を飲む。

参加者として準備しないのに学祭を楽しむ。

N○Kの受信料金を払わずにN○Kを視聴する。

これらすべてフリーライド!

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が、しかし!!

実際に実験をすると、意外にお金をだすこともしられていて、人間は完全に利己的で、(合理的な)行動を必ずしもとるわけではない。

ただ、常にみんなのために(利他的に)行動するわけでもない、、、、、

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ではどんな時に利己的なのか?あるいは利他的になるのか?

どんな状況下で人間の行動が変わるのか?

また、社会全体の利益を高めるため、最も望ましい

状態を達成するため利他性を引き出すには?

公共財ゲームである!

それを考えるための実験

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公共財ゲーム

「公共財(こうきょうざい、英: public good)は、経済学の用語であり、非競合性あるいは非排除性の少なくとも一方を有する財として定義される。対語として、競合性と排除性とを有する私的財がある。」

「競合性とは、消費者(利用者)たちによるその財の消費が増えるにつれ、追加的な費用なしでは、次第に財の便益(質・量など)が保たれない性質を指す。」

「排除性とは、対価を支払わず財を消費しようとする行為を実際に排除可能な性質を指す。この場合市場では、価格付けされた財が対価の支払いを条件として販売される。」

つまりみんなで力を合わせて仕事をすれば

大きな成果を得られるが、他者の働きを期待して怠けてしまう

状況を作りだし、その状況での人間の行動を見ようと

する実験である!

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¥1,000 ¥1,000 ¥1,000 ¥1,000

×2倍

集まった金額を2倍にしたものを4人に均等に再分配する。

グループの他の人が出した金額を知ることはできない

人間は利他的?

or フリーライダー?

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¥1,000 ¥1,000 ¥1,000 ¥1,000

×2倍

8000÷4=2000で一人当たり2000円分配

¥4,000

全員が協力してお金を出し合えば全員が得をすることができる!!

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しかし現実は?

全員お金を出さない経済的な利己的人間

全員が1000円を出す社会的な利他的人間

出資する金額

ほとんどの人がどっちつかずの金額を出す!

フリーライドする人がいなくなり全員が得をするために、

人間の利他性を引き出したい!

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既存の研究結果参考文献

『行動経済学』友野典男

1回目, 40%

2回目, 35%

3回目, 30%

4回目, 10%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

1回目 2回目 3回目 4回目

合計集金額の推移

最初はみんなお金を出すが回数を重ねるごとに下がっていく

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公共財ゲーム実験結果Aチーム

条件なし A B C D E 合計 平均

1回目 500 300 0 100 0 900 180

2回目 100 200 180 200 200 880 176

3回目 100 50 176 100 0 426 85

合計 700 550 356 400 200 2206 441

900 880

426

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

1回目 2回目 3回目

合計金額の推移

集まる合計金額が回数を重ねるごとに減っていき3回目は1回目と比べて約52.7%も少なくなっている!

既存の研究結果とほぼ同じ結果となった

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公共財ゲーム実験結果Bチーム・Cチーム

78.7%減

97.6%減

条件なし K L M N O 合計 平均

1回目 500 320 300 499 300 1919 384

2回目 0 136 0 101 250 487 97

3回目 0 68 100 201 40 409 82

合計 500 524 400 801 590 2815 563

条件なし F G H I J 合計 平均

1回目 1000 1 300 500 380 2181 436

2回目 1000 1 50 1 1 1053 211

3回目 0 1 50 1 1 53 11

合計 2000 3 400 502 382 3287 657900 880

426

2181

1053

53

1919

487

409

0

500

1000

1500

2000

2500

1回目 2回目 3回目

合計金額の推移

Aチーム Bチーム Cチーム

Aチームと同じようにどちらのチームも回数を重ねるごとに集まる金額が減っている。

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公共財ゲーム実験結果まとめ

フリーライドする人と損をする人が現れる。

回数を重ねるごとに集まる金額が少なくなる。3チーム平均76.3%減

理屈上では全員が儲かるはずなのになぜなのか?

お互いの出した金額が分からないため自分だけ出すのが馬鹿らしくなる?

限られた実験回数と環境で得られた結果をみて、自分たちなりの、一つの可能性・仮説はこんなかんじです!

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利他性を引き出すために様々な条件をつけてみる

自分の出した金額がグループに公開される

出した金額が1番低い人に罰金500円

出した金額が1番多い人に賞金500円

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既存の研究結果(出した金額が低い人に罰金)

完全に同じ条件の実験はなかったため似たような条件の実験結果です。

参考文献行動経済学友野典男

1回目, 70%

2回目, 76%

3回目, 85%

4回目, 91%

50%

55%

60%

65%

70%

75%

80%

85%

90%

95%

1回目 2回目 3回目 4回目

合計集金額の推移

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条件付き公共財ゲーム実験結果(出した金額が1番低い人に罰金500円)

1回目 1000 1000 1000 1000 4000 10002回目 1000 1000 1000 200 3200 8003回目 900 800 1000 1000 3700 925合計 2900 2800 3000 2200 10900 2725

罰金500円 A B C D 合計 平均4000

3200

3700

1667

807

296

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

3500

4000

4500

1回目 2回目 3回目

合計金額の推移

罰金 条件なし(平均)

罰金

条件なし

既存の研究結果とほぼ同じ結果となった

条件をつける前の結果と比べて集金額も上がり、回数を重ねても下がらない?

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罰金という条件は利他性を引き出せたのか?

結果だけで見ると合計金額は上がり回数を重ねても集金金額が減らないため利他性を引き出せたのではないかと考えた。

「しかしこれまで利己的だった人が、処罰という条件により利他者に変わったというよりも、利得構造が変わり、お金を出さないよりも出したほうが儲かるから出したといったほうが正しいのではないか?」

本当の意味で利他性を引き出せたわけではない?

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条件付き公共財ゲーム実験結果(出した金額が1番高い人に賞金500円)

1回目 0 400 1000 0 1400 3502回目 0 600 200 700 1500 3753回目 0 0 600 100 700 175合計 0 1000 1800 800 3600 900

平均賞金500円 A B C D 合計1667

807

296

1400

1500

700

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

1回目 2回目 3回目

合計金額の推移

条件なし(平均) 賞金

条件なし

賞金

条件なしよりも全体の合計金額は上がっているものの、回数を重ねると下がってくる?

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賞金という条件は利他性を引き出せたのか?

結果だけで見ると「条件なし」の時より上がっているため一見、利他性を引き出せたかのように思う、しかし賞金を与えることを条件としているためマイナス500円しなければならず、実際の合計金額は損している?!

また回数を重ねるごとに賞金を貰うよりもフリーライドした方が得と分かり集金額が減ってくる?

利他性を引き出せていない?しかも損をする場合もあり改善が微小である

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条件付き公共財ゲーム実験結果(自分の出した金額がグループに公開される)

金額公開 F G H I J 合計 平均1回目 1000 1000 100 0 0 2100 4202回目 1000 100 100 0 0 1200 2403回目 1000 0 100 0 0 1100 220合計 3000 1100 300 0 0 4400 880

金額公開 A B C D E 合計 平均1回目 1000 0 300 0 0 1300 2602回目 100 100 300 100 400 1000 2003回目 1 0 400 0 30 431 86合計 1101 100 1000 100 430 2731 546

4000

3200

3700

1667

807296

1400

1500

700

1700

1100 765

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

3500

4000

4500

1回目 2回目 3回目

合計金額の推移

罰金 条件なし(平均) 賞金 金額公開(平均)

前2つの実験とちがい出資金額によるメリット、デメリットはないはずなのに「条件なし」の合計金額より少しだけ高い

「条件なし」の実験結果より

平均265円集金額が上がっている

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金額公開という条件は利他性を引き出せたのか?

罰金や賞金などの実験結果よりも合計金額は多くないが、自分の出したお金をグループ全員に知られるという条件だけで、集金額が265円伸びたのは自分がフリーライダーだと思われたくないから?

お金の損得よりも、人間関係上の損得を気にしている?

自分のことだけを考えていないため利他性を引き出せた?

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条件付き公共財ゲーム実験のまとめ

合計金額が最も高く、回数を重ねても減額しない

合計金額は条件なしより上がるが、回数を重ねると減額する

合計金額は条件なしより上がり、減額の仕方が他の実験と比べ緩やか

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現実

罰金を課すという条件は現実的に難しい

賞金を与えるという条件は合計金額が上がっても、賞金を与えないといけないため、実質的な利益が出にくい。それに、利潤動機の変化による結果かもしれない

金額を公開するという条件は、金銭の移動がなく、コストも低い、利潤動機に影響を与えないというメリットがある。

金額公開が一番利他性を引き出せるのではないだろうか?

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情報公開が利他性を引き出すアイデア

寄付の名義を公開する。

サークル活動などで友達に

来てくれるように頼む

どちらも情報公開していることによりお金を出さなきゃと、思ったり出席しなきゃ、と思ってくれるのではないか?

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出典

行動経済学

経済は「感情」で動いている

友野典男

光文社新書

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ご清聴ありがとうございました!