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12 2015年1月新春号 日本小売業協会発行
雨期明けの近い2014年9月22日、ベトナムホーチミン経由で
2月以来、今年(2014年)2度目のプノンペンを訪問した。6月にアセアン新興国内
でベトナムホーチミンに次いで、2店目として開業したイオンモールを訪れるためであった。ここプノンペンには何しろ近代的な商業施設といえるものが何にもないに等しい流通空白区であった。 カンボジアは、日本の国土の約2分の1の面積に人口1500万人、GDPの75%が主要産業の農業で占められ、1人当たりのGDPはようやく1000ドルに届くほどで、国民の半数が1日2ドル未満で暮すアセアンの中でも最後進国といえる。国のインフラ整備の遅れが農業の生産性を落としており経済運営は厳しいが、近年観光と縫製産業が成長し外国投資が急増、成長率は二桁を記録している。 イオンカンボジアの牛澤社長によると、アセアンは国でなく都市で見る必要があるという。カンボジアも国全体で見ると非常に貧しいが、プノンペンという都市で見た場合、1人当たりのGDPは3000ドルを超えているだろうと推測され、世帯収入月額400ドルの家庭の50%以上からコンビニやスーパーマーケットが利用され始めている水準にある。 しかし、こと流通業に関していえばラッキースーパーマーケット、家電量販店サンシメコなど、数社が店舗展開している程度で、日常生活のほとんどは伝統的な市場で消費されている。現時点でプノンペンにはイオンの競争相手は存在しないといっても過言ではない。ということは、逆にいえば小売業を支えるメーカーや卸や物流企業が存在しないということでもある。プノンペンの街中に突如として現れた巨大なショッピングモールに、朝からたくさんの市民が足を運ぶ。私た
ちは朝一番に訪問したが、開店を待つ多くのお客様とともに一段となって突入したような感じだった。店内は豊富な商品で溢れていたが、そのほとんどは市内では調達できず輸入に頼っているということだった。そのためプノンペンでの生活財のほとんどを輸入に頼っており、東南アジアで最も物価の高い国となっている。ほとんどの商品が、発注してから入荷までに40日以上かかるため、季節商品では売れ行きを見極める前に発注を出さなければならず、その苦労は並大抵ではんないようだった。 発注といえば、牛乳は40日前に毎週分発注する。そして木曜日は意識的に品切れさせる。金曜日に新しい商品が入ってくるため買い控えで売れ残るからである。また、肉の販売は一部パック販売も採用しているが、消費者の間には抵抗感が強いため、量り売りのローカル方式を採り入れている。衣料品はやはり1年中暑い国のため厳しく、好調な部門は食品や外食レストラン部門だった。驚いたことに1貫30円前後の日本風お寿司が好調で、昼食に購入しイートインで食べる若い人たちや家族連れが目についた。ところで、日系テナントは飲食を中心に約30%であるが、いずれも好調を維持している。 イオンカンボジアでは、開店前に行政から値札にはカンボジア通貨表示とするよう求められたが、すでにドルでの販売が常態化しているプノンペン市内では顧客の混乱を招きかねず、基本的にドル表示を採用し、食品の1ドル未満の商品のみドルとリエル(カンボジア通貨)の併記とすることで決着
プノンペン
ベトナムカンボジア
ホーチミン
ハノイ
アセアンの発展は国でなく都市で見ることだ!
日本小売業協会 国際担当部長近江 淳
第5回ベトナム&プノンペン最新流通視察会報告
~イオンの進出でクローズアップされるプノンペン、ホーチミンの新興国マーケット~
プノンベン市内のイオンで大人気の寿司コーナー
14 2015年1月新春号 日本小売業協会発行
今回の欧州最新流通&物流システム視察では、飛行機とバスを乗り継ぎ4カ国を訪問した。具体的には、ドイツ、フランス、チェコ、ベルギーの順となり図表1の通りである。欧州はいまだ不安定な経済状況の中、小売業界も厳しい経営環境にある。 このような厳しい環境が続くと、つい目先の「効率の追求」に走りがちである。しかし、欧州では、今回の視察企業を中心に『人に優しく環境に配慮した経営』が行われていた。今回の欧州視察を通じ、「欧州のグローバル化におけるロジスティクスの重要性」から、今後、日本を始めとするアジアのグローバル化にも参考となる部分があった。 世界銀行が発表している2014年の「The Logistics Performance Index ‒ LPI(各国のロジスティクスのレベルを評価)」の国別ランキングによれば、世界155カ国で最も効率性が高いのはドイツであり、上位4位までがドイツ、オランダ、ベルギー、イギリスと欧州勢が占めている。また、10位以内でも欧州勢が占める割
合が非常に高い。アメリカが9位で、日本は10位である。この調査からも、なぜ最新のロジスティクスを欧州に学ぶのかが理解できるはずである。 今回ドイツ、ベルギーで4つの物流拠点の視察を通じて気づいた点を以下の通り整理する。①従業員に優しい労働環境の提供と効率を向上させるマネジメント②環境負荷を軽減するための取り組み③労働人口減少に対応するための物流システム投資④返品は発生するものという考え方を前提とした再販までを含めたロジスティクス
従業員に優しい労働環境の提供と効率を向上させるマネジメント 視察した物流拠点では、「労働者の働きやすさ」への配慮がされている。働くことに対するモチベーションアップやストレスフリーを目指した施設や設備の設計が行われている。具体的には、ドイツのOTTOグループの傘下にあるカタログ通販会社のWITT社の物流センターでは、1つひとつの通路の照度を考えて照明を配置している。 また、物流センター内の休憩室ではカフェのように皆で対話ができ、ゆっくりと庭を見ながらくつろげる場があり、従業員が働きやすい環境を提供している。現場では、立ち仕事を行う検品作業場や仕分作業場における作業者の負担を軽減するため、足元に
第16回 欧州最新流通&物流システム視察会報告
寡占化が進み、経済状況の厳しさが続く欧州では、小売・流通各社はさまざまな改革に取り組んでいる。今回で16回目を迎えた当視察会は、8月27日~9月6日の日程で
丸和運輸機関ドラッグ物流運営部課長森谷治央 氏
丸和運輸機関食品物流運営部課長小島靖弘 氏
ドイツ、フランス、チェコ、ベルギーの最新物流センターおよび店舗を視察した。 参加者の視察レポートを掲載する。
厳しい経済環境下『人に優しく環境に配慮』を優先課題とする欧州小売業
図表1 視察先一覧視察先名 業 態
KeDeBe(ドイツ) 百貨店WITT物流センター(ドイツ) 通信販売(衣料品)物流センタープラハ市内視察(チェコ) スーパーマーケット・百貨店REWE物流センター・店舗(ドイツ)
スーパーマーケット(ボランタリーチェーン)
ALDI店舗(ドイツ) スーパーマーケット(ハイパーディスカウント)
EDEKA店舗(ドイツ) スーパーマーケットOTTO返品専用物流センター(ドイツ)
総合通販(衣料品)返品物流センター
メヘレン野菜果物オークションセンター(ベルギー) 生鮮市場
自由視察 パリ市内小売店視察 スーパーマーケット・百貨店
18 2015年1月新春号 日本小売業協会発行
今回の視察は、徐々に国内経済の回復基調にあるアメリカにおける、さまざまな業種・業態の店舗を視察してまわりました。 全体として感じたのは、アメリカの小売業は、これまでにも増してその変化が速くなってきていることです。ディスカウント・ストアとして最大のウォルマートは、全売上の60%ほどを、食品を含むグローサリーの売上が占めており、低価格競争に拍車がかかっています。ターゲットも小型の生鮮食品売場を備えたPフレッシュと呼ばれるフォーマットを広げ、顧客の来店頻度向上を目指しています。 大手企業のこのような動きに対して、スーパーマーケット・チェーンは、ジェネラル・マーチャンダイジング商品を加えた大型店や、調理済み食品などの対面販売を強調したカフェ、グルメ・コーナー、オーガニックを中心とした健康食品売場、地場野菜の量り売りコーナー、精肉と新鮮な海産物の品揃え、PB商品を中心とした価格訴求商品の品揃えなど、それぞれが魅力ある売場づくりを行っています。
近年、スマートフォン(インターネット)の普及により、価格の透明性は高まってきており、消費者の方々の価格指向が購買の大きな要因になってきています。かたや、付加価値の提供が可能な商品、サービスは相対的価値が認められています。 小売業にとって、質の高い従業員と地域に密着の品揃えは必要不可欠な要素になってきています。オンラインを利用した小売業が、食品などの販売も手掛けるようになってきており、地域の一員として、消費者の購買経験を高める全体システムと、現場でそれを上手に運営できる社員を持つ企業が今後も成長する要素となってきており、それらを実感することができる店舗も今回の視察において訪問することができました。
図表1のグラフは今回の視察に参加していただいた方々のアンケートから、印象に残った視察先を回答していただいたものです。 これら、上位に入った店舗について一部ご紹介させ
図表1 印象に残った視察先(参加者アンケートより)
Trader Joe’s バックルームでのレクチャー風景
当協会が開催している「アメリカ最新小売業態視察
会」は、アメリカ西海岸の流通激戦地区(ロサンゼル
ス近郊・サンフランシスコ近郊)を、短期間で集中的
に効率よく視察するツアーとして、社員研修を始めさ
まざまな形に活用され好評を得ております。今回は
2014年10月28日(火)から11月3日(月)までの日
程で開催され、話題の小売店や専門店など多彩な店舗
を視察しました。以下、参加者の方々のアンケートな
どをご紹介しつつご報告します。
岩田浩義 日本小売業協会部長
当協会が開催している「アメリカ最新小売業態視察 2014年10月28日(火)から11月3日(月)までの日
──第41回 アメリカ最新小売業態視察ツアー──
変化のスピード速まるアメリカの小売業