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ImPACTの成果・社会実装状況について 令和元年7月 内閣府 資料3

ImPACTの成果・社会実装状況について · ②セレンディピティの計画的創出による新価値創造【6頁】 先端光技術を基軸に、電子工学、機械工学、遺伝子工学、応用化学、情報科学、分子生物学からの知見と手

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ImPACTの成果・社会実装状況について

令和元年7月内閣府

資料3

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(1)成果・実装

①超薄膜化・強靭化「しなやかタフポリマー」の実現 【4頁】しなやかで壊れにくい分子構造のメカニズムを解析し、そのエッセンスを安いポリマーに転用する。

②セレンディピティの計画的創出による新価値創造 【6頁】先端光技術を基軸に、電子工学、機械工学、遺伝子工学、応用化学、情報科学、分子生物学からの知見と手法を学際的に融合。

③ユビキタス・パワーレーザーによる安全・安心・長寿社会の実現 【8頁】レーザープラズマ加速による超小型のX線自由電子レーザーを異分野融合により実現し、いつでもどこでも利用。

④無充電で長期間使用できる究極のエコIT機器の実現 【10頁】「究極の不揮発性メモリ」と「スピントロニクス論理集積回路」でコンピュータの省電力化を極める。

⑤重介護ゼロ社会を実現する革新的サイバニックシステム 【12頁】本人・家族・社会の重く厳しい多大な負担を減らす「革新的サイバニックシステム」の社会実装に挑戦。

⑥超高機能構造タンパク質による素材産業革命 【14頁】自然界に学びながら、クモやノミなどがもつ超高機能構造タンパク質を素材として活用する。

⑦タフ・ロボティクス・チャレンジ 【16頁】「タフな」基盤技術(極限環境アクセシビリティ、極限センシング、作業失敗リカバリ、極限環境適合性)。

ImPACT(30年度終了)成果・実装 概要等

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⑧核変換による高レベル放射性廃棄物の大幅な低減・資源化 【18頁】世界初の核反応データを取得し、核変換のプロセスを提案。新しい核反応制御法を確立。

⑨進化を超える極微量物質の超迅速多項目センシングシステム 【20頁】昆虫が生物進化で獲得した驚くべきセンシングシステムを、超微細エレクトロニクスで実現。

⑩イノベーティブな可視化技術による新成長産業の創出 【22頁】最先端のレーザと超音波を融合した「光超音波イメージング」により、非侵襲で血管などをリアルタイムに三次元可視化。

⑪脳情報の可視化と制御による活力溢れる生活の実現 【24頁】脳情報の可視化と制御技術に関する研究開発を社会課題に結びつけ、世界に先駆けた脳情報産業を創出。

⑫量子人工脳を量子ネットワークでつなぐ高度知識社会基盤の実現 【26頁】量子力学の原理を応用した量子コンピュータに、直方情報処理を取り込む。

⑬オンデマンド即時観測が可能な小型合成開口レーダ衛星システム 【28頁】SARでポピュラーな従来方式を採用せず、第3の「受動平面展開アンテナ方式」により、世界最軽量、高密度収納のSAR衛星システムを構築。

ImPACT(30年度終了)成果・実装 概要等

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⑭豊かで安全な社会と新しいバイオものづくりを実現する人工細胞リアクタ 【30頁】人工細胞デバイスを利用した技術革新によって、バイオ分析産業や酵素・細胞を用いた産業の根本的問題を解決する。

⑮バイオニックヒューマノイドが拓く新産業革命 【32頁】「センサー付の精巧な偽物」を活用して感覚的な表現を定量的に理解し、試行錯誤をなくすことで技術シーズを早く社会に届ける。

⑯社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム 【34頁】現状のビッグデータ処理を遥かに凌ぐ超高速解析と超広域データ収集が可能な「超ビッグデータプラットフォーム」を構築。

(2)研究開発支援の一例・スタートアップ戦略の視点 【36頁】起業家がこれまでの制約を超越し(Beyond Limits)、日本の潜在能力を開放する(Unlock Our Potential)、スタートアップ・エコシステムを構築

ImPACT(30年度終了)成果・実装 概要等

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(1) ① 『超薄膜化・強靭化「しなやかタフポリマー」の実現』

伊藤耕三PM PMによる産業や社会の変革

東京大 教授

軽量かつ強靭な高分子化合物を生み出す新たな分子結合メカニズム等を解明し、それらメカニズムを応用した新規高分子化合物の設計指針を確立することによって、自動車用の新たな構造材の開発など、用途特性に応じた最適な高分子化合物が設計・製造できる基盤技術を確立する。(車体構造向け材料で曲げ弾性率50GPa以上、タイヤ用ゴム材料で重量40%減、等)

環動高分子

分子構造設計構造解析計算科学

強靭性を付与する構造例

軸環

現行の金属構造材等を刷新する、より軽量・強靭な新たな高分子化合物(タフポリマー)等を開発し、自動車をはじめとする様々な製品・サービスの省エネルギー性や耐久性を飛躍的に高める。【関連する経済活動規模(推計)約1.5兆円(10年後)】

PMによるチャレンジ

犠牲結合

タフポリマーブランドの普及

安全・安心、低環境負荷社会の実現

高安全性・省エネ自動車

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基礎研究の知見を製品化に結び付ける研究開発体制の構築

研究成果例①︓車体構造用樹脂 東レ 研究成果例②︓タイヤの薄ゲージ化 ブリヂストン

企業の開発課題は大学からは見え難く、大学の持つ基礎的な要素技術は企業が活用し難い。PMが企業の開発課題を把握し、活用可能な要素技術を保有する大学とマッチングさせ、研究開発体制(マトリクス運営)を構築した。企業は、研究開発のステージに合わせ、体制を柔軟に組替えながら、複数大学と同時に課題解決に取組んでいる。

◆目標︓衝突エネルギー吸収量5倍・重量1/2 ◆目標︓タイヤゴム重量40%減

産学連携マトリクス運営

小林 定之 氏東レ研究主幹

角田克彦氏ブリヂストン中央研究所フェロー

企業燃料電池電解質膜薄膜化 Li電池セパレータ薄膜化 車体構造用

樹脂強靭化タイヤ薄ゲージ化

透明樹脂強靭化

旭硝子 三菱ケミカル 東レ ブリヂストン 住友化学

○ ○ ○ ○ ○九大○ ○ ○ ○ ○理研①○ ○北大○ ○ ○名大

○お茶の水大○ ○阪大

○理研②○ ○ ○ ○山形大

○ ○ ○東大

大学

アカデミアから得られた設計指針を自社のゴム配合技術と組合せ、タイヤの摩耗速度減60%を達成。→ブリヂストンが経営戦略技術に採用。

・主な成果

PMが間に入ってマッチング

(対スチール)

アカデミアの新規分子設計技術の一つ環動高分子と汎用樹脂をナノレベルで混合(自社技術)し、硬さと脆さのトレードオフを脱却。

硬い柔らかい

脆い

しなやか 硬くてしなやか

トレードオフの脱却︓非連続イノベーション

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(1) ②『セレンディピティの計画的創出による新価値創造』

合田圭介PM PMによる産業や社会の変革

東京大 教授

PMによるチャレンジ

バイオ産業的に高価値な細胞

細胞検索エンジン「セレンディピター」~細胞のGoogle~

1秒間に計測・分取可能な細胞の数

スループット

1細胞の情報量(ピクセル数xモダリティカラー数)

精度

フローサイトメータ

顕微鏡

10 100 1,000 10,000 100,000

10

100

1,00

0

10,0

00

100

,000

従来の

技術基盤

従来の技術基盤

得られる

細胞の

イメージ

血液中に極微量存在するがん細胞等、生物が有する様々な変異を、1細胞レベルで高速かつ高精度に検出・識別できる世界初の計測システム「セレンディピター(細胞検索エンジン)」を開発する。(1細胞選別速度10,000細胞/秒、特異性10^6(従来技術の1000倍)以上、等)

得られる

細胞の

イメージ

ライフイノベーション

グリーンイノベーション

バイオ燃料

機能性飼料

機能性食品

バイオプラスチック

血栓症検査 がん検出

白血病治療

アレルギー検出

血中稀少細胞血液1mlに2000細胞以下で医学的に高価値な細胞

ナチュラルキラーT細胞

抗原特異的T細胞

母体血中胎児有核赤血球

循環腫瘍細胞

循環がん幹細胞

スマートセルバイオ医薬品、バイオ燃料、

バイオ素材を高生産する有用細胞

ユーグレナ(バイオ燃料生産)

大腸菌(クモ糸生産)

ヘマトコッカス(アスタキサンチン生産)

酵母(バイオプラスチック生産)

生物が有する多様な変異・機能を、1細胞レベルで高速かつ高精度に検出・識別できる世界初の計測システムを開発し、早期がん検診サービスの創出やバイオ医薬品創薬の加速化、バイオ燃料用微生物の効率的な探索等、今後成長が期待されるバイテク産業分野のイノベーション創出を図る。【関連する経済活動規模(推計) 約5,000億円(約15年後)】

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主な成果

東京大小関准教授

高速分子イメージング法セレンディピターの要素技術の開発

セレンディピターへの応用と実証評価へ

生きた細胞の内部に存在する生体分子を無標識で光学的に検出する、高速誘導ラマン散乱(SRS)顕微鏡を実現。

脂質や多糖類などをイメージング

生きたミドリムシの個々の細胞を観察

世界最高速の細胞分取法

名古屋大新井教授

世界最高速(23,000 cells/s)、分取成功率(93%)、細胞生存率(91%)で細胞の分取に成功。

重水による光合成能力計測法

九州大星野准教授

重水を取り込ませてラマン顕微鏡で光合成量を計測。油脂の蓄積能力が高い優秀なミドリムシの網羅的な計測に成功。

重水素をラマン顕微鏡で検出

血液中の血小板凝集塊を検出

東京大学病院矢冨教授

東京大雷特任助教

細胞の薬剤応答を検出 ミドリムシの品種改良法を開発

細胞選別技術を用いてミドリムシを効率的に選抜する手法を開発し、油脂を多く含むミドリムシの取得に成功。

ユーグレナ岩田主任研究員

野生株より約40%油脂を多く含むミドリムシ変異体を取得

高速明視野顕微鏡を用いて多数の細胞を無標識で連続撮影し、抗がん剤によって生じたがん細胞の形態学的変化を、機械学習により高精度に検出することに成功。

高速に流れる細胞を無標識で撮影し、機械学習によりヒト血液中の血小板凝集塊を高精度に検出することに成功。

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(1) ③ 『ユビキタス・パワーレーザーによる安全・安心・長寿社会の実現』

佐野雄二PM PMによる産業や社会の変革

超小型・低コストパワーレーザーの開発・製品化

X線自由電子レーザー(XFEL)の小型化基盤技術の確立

ものづくり(長寿命燃料電池等)における物質組成等を原子レベルで簡易に計測できる世界初の「小型X線自由電子レーザー」等を開発することによって、他国が真似できない分子レベルの超精密加工を可能とし、ものづくり分野における産業競争力を抜本的に強化する。【関連する経済活動規模(推計) 約3,500億円(約20年後)】

現在、先進各国が競って建設整備を進めている大型施設「Ⅹ線自由電子レーザー」を、レーザープラズマ加速技術等を応用することにより、実験室レベル(トレーラーサイズ)で実現可能であることを概念実証する。(1kmオーダーの加速器を20m化し、1keVのX線ビームを発生、等)

PMによるチャレンジ

700mのXFELを実験室サイズで実現できることを実証する

インフラ保守・点検、ヘルスケア、加工等様々な産業に向けて社会実装を目指す

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阪大細貝准教授

KEK山本教授

分子研平等准教授

レーザー媒質中に透明な放熱層を複数設けて冷却を促進し、熱影響を低減

多層接合で高出力化を実現

・掌サイズの発振器で20mJ超を実現・発振器体積あたりの出力は世界最高

XFELの小型化 超小型パワーレーザーの開発

従来不可能であった10mm以下の磁場周期4mmを実現

プロト機完成・国内3社に技術移管

・数mmの加速長で500MeVの安定な電子加速を実現、1GeVを目指す

・加速のエネルギー効率は世界最高

一体型アンジュレーターで小型化を実現

1枚の磁石に周期磁場を形成

SACLAのアンジュレーター

1個1個の磁石で磁場を生成

磁場周期18mm

磁場周期4mm

レーザーの多段化で安定な電子ビームを実現

海外の手法

多段化で電子発生や加速の条件を制御高いエネルギーが出るが不安定

要素技術の開発・検証フェーズから組合せ実証へ

励起光を増やすとレーザー媒質が過熱しレーザーの出力が低下

励起光

レーザー励起光

放熱効率大

高出力化の問題点

放熱効率小

レーザー

X線の発生を確認し、小型化の検証を完了(平成30年12月)

小型加速機と小型アンジュレータの統合播磨に実証施設を建設し、電子加速を開始

機械的・熱的・光学的にほぼ完璧な接合を実現(世界初)

長さ2cm 想定される産業用途

医療用機器(NIDEX)、航空機会社(AIRBUS)等から実施許諾申込

将来イメージ

主な成果

60m

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(1) ④『無充電で長期間使用できる究極のエコIT機器の実現』

佐橋政司PM PMによる産業や社会の変革

東北大 教授リサーチプロフェッサ名誉教授

PMによるチャレンジ【チャレンジングな技術開発のポイント】

・電圧駆動MRAM開発プロジェクト電圧パルス制御を用いた新たな電圧駆動方式 (書込み電力:数フェムトジュール以下)を開発。ギガビット級の大容量と数ナノ秒の高速書込み性能、1014回以上の書込み耐性を合わせ持ったメインメモリ等記憶装置へ応用展開。

我が国が世界を先導するスピントロ二クス技術を用いた磁気メモリ(MRAM)により、メインメモリのみならずLSIの演算処理部まで不揮発し、超低消費電力化が行える究極のエコIT機器を実現する。IoTやAI等の進展により爆発的に増大する情報の処理、増大する機器の消費電力の抑制等の社会的課題の解決を図る。【関連する経済活動規模(推計) 約6,700億円(約10年後)】

・スピントロニクス集積回路プロジェクト新構造のスピン軌道トルク(SOT)素子によ

り、屋内光等の微弱なエネルギー(100μW以下 )でも駆動し、高速処理可能 (100~200MHz)な不揮発性マイコンの開発。

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電圧駆動MRAM開発プロジェクトの成果

主な成果

③ 書込み方式からのブレークスルーにより新概念メモリ(VoCSM)を開発し、高速型と大容量型のコンセプト検証を完了。集積回路機能実証試作をアプリを想定した設計開発及び評価を開始。

PL︓湯浅新治産総研スピントロニクスセンター長

① Cr下地やIr界面層により磁気異方性電圧効果を、当初から10倍に向上。実用レベル(~400fJ/Vm)を達成。

② パルス幅1nsで4×10-6の書込みエラー率を実証し、安定な電圧駆動磁化反転を実現。回路設計技術からのブレークスルーにより、逆バイアス電圧を印可して電圧書込みを制御する新手法を確立。

PI: 與田博明東芝半導体研究開発センター 技監

スピントロニクス集積回路プロジェクトの成果

② 不揮発性マイコンを実現するため、内部メモリの回路設計と動作タイミングを「内蔵する要素ブロックレベル」にまで検討し、無駄な待機電力を極限まで低減するよう設計。通常の200分の1の駆動電力(100μW以下)で動作することを確認し、現在機能実証試作中。

① 新構造のスピン軌道トルク(SOT)素子を用い、SOT磁化反転特有のパルス幅依存性を世界で初めて実験検証、450psパルスで100%の磁化反転を実証。

PL︓大野英男東北大 教授

電気通信研究所長

PI: 遠藤哲郎東北大 教授

国際集積エレクトロニクス研究開発センター長

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患者

医師 医療 従事者

介護 する側

サイバニッ ク インタ フェ ース

サイバニッ ク

デバイス

介護 される側

サイバニッ クシステム

患者医師・ 医療 従事者

・ 要介護者の自立度向上

・ 介護者負担の激減

人とテクノ ロジーが情報的・ 物理的に繋がる

PJ1 : 脳神経系、 生理系、感覚系、 身体系の情報の授受、 提示、 管理技術

PJ2 : 残存している機能の改善、 機能の拡張、 作業支援を行う 技術・ デバイス

PJ3 : 人に関するビッ グデータを扱う情報基盤( ICTと RT) 、 システム統合化

サイバニッ クインタフェース

サイバニッ クデバイス

サイバニッ クシステム

(1) ⑤『重介護ゼロ社会を実現する革新的サイバニックシステム』

山海PM PMによる産業や社会の変革

筑波大学教授

PMによるチャレンジ

要介護者の身体機能の状態等に応じたロボット介護支援システムを開発するための基盤技術(脳神経情報等を伝達するインターフェース、身体機能を支援する各種デバイス等)を確立する。(3種類以上の新規インタフェース/デバイスの開発、等)

少子高齢化の進展に伴い、高齢者等の重介護問題が深刻化する中、要介護者の自立度を高め、介護者の負担を大幅に減らすため、要介護者の脳・神経情報等に基づき介護支援等を行うロボット支援システムを開発し、「重介護ゼロ社会」の実現に貢献する。【関連する経済活動規模(推計)約4,500億円(約8年後)】

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主な成果

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(1) ⑥『超高機能構造タンパク質による素材産業革命』

鈴木隆領PM PMによる産業や社会の変革

鉄鋼の340倍もの強度を有すると言われる「クモの糸」に代表されるように、世界的にも未開拓分野となっている構造タンパク質の設計・加工技術等を開発することによって、衛星・航空機用や次世代燃料(水素)用等の分野に新素材(高機能性タンパク質素材)を供給する新産業の創出を図る。【関連する経済活動規模(推計) 約7,400億円(約10年後)】

PMによるチャレンジ

歩行者にケガをさせない超衝撃吸収ボディー

次世代燃料電池車用水素タンク

次世代防弾防護装備

Caerostris darwini

Caerostris darwini

アラミド繊維アラミド繊維

炭素繊維炭素繊維

高張力鋼(鋼鉄)高張力鋼(鋼鉄)

ダーウィンズバークスパイダーダーウィンズバークスパイダー 2722723636

14140.80.8

340倍

Toughness(MJ/m3)/ρToughness(MJ/m3)/ρ

天然物を超える性能・機能を実現する人工構造タンパク質素材の設計・製造概念を世界で初めて確立・実証する。(繊維強度(収縮率3%、耐熱性180℃、引張強度1.6Gpa、タフネス350MJ)の実現)

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研究成果例①︓構造タンパク質素材を用いた複合材の開発主な成果

積層工法で製造した複合材

CFのみ CF+構造タンパク質素材

最大荷重

100

176

CFのみ CF+構造タンパク質素材

吸収エネルギー

100

最大荷重 吸収エネルギー 最大荷重、吸収エネルギーが増加し、複合材の破壊挙動も改善

試験片の写真

※ CFのみの物性を100とした場合の相対値

127CFのみ

破面︓鋭利

CF+構造タンパク

質素材

破断無し

アコースティックエミッション(AE)法による積層体の破壊挙動評価

CFのみ CF+構造タンパク質素材

AE法は積層体の繰り返し曲げ試験において、積層体の内部で亀裂・破壊が発生した際の音を検知し、破壊状態を評価する手法である。

右のグラフでは青色部分が破壊に伴う音を表している。

研究成果例②︓天然構造タンパク質の耐水性メカニズム解析

アミノ酸配列と収縮率の相関解析

天然から得た知見を

新規分子設計にフィードバック

親水性アミノ酸を疎水性アミノ酸に置換した新規分子により収縮率大幅改善

天然クモ共通の特定の親水性アミノ酸配列

従来設計 新規分子A 新規分子B

収縮率

62%減

54%減

疎水性アミノ酸配列

沼田 圭司 氏理化学研究所

環境資源科学研究センター

谷池 俊明 氏北陸先端科学技術大学院大学

物質化学領域

研究成果例③︓構造タンパク質の劣化抑制添加剤の選定

構造タンパク質素材の劣化指標の策定/ハイスループットな劣化評価用装置の開発

構造タンパク質の劣化抑制に有効・最適な添加剤・組合せを特定

添加剤・組合せ別での劣化抑制効果比較

構造タンパク質繊維形態

ハイブリッド対象素材 マトリクス樹脂 材料成形

長繊維短繊維撚り糸

ナノファイバー不織布織物編物

炭素繊維アラミド繊維ガラス繊維ナイロンポリエステル

熱硬化性樹脂熱可塑性樹脂合成ゴム天然ゴム

圧縮成形射出成形積層加工

フィラメントワインディングオートクレーブSMCBMCRTM

既存の高機能素材とハイブリッド化することでこれまでにない工業用材料やその加工方法を実現

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(1) ⑦ 『タフ・ロボティクス・チャレンジ』

田所諭PM PMによる産業や社会の変革

東北大 教授

地震発生時の災害現場における救命活動や、老朽化したビルの修繕管理、原発事故現場の除染作業等、ヒトが立ち入れないような危険な場所で遠隔自律ロボットを効果的に活用できるよう、それら状況に応じたロボット・コンポーネント等を設計・開発し、安全・安心な社会の実現に貢献する。【関連する経済活動規模(推計) 約5,000億円(約5年後)】

PMによるチャレンジ地震、津波、風水害等の災害発生時に想定される極限環境下で、遠隔操作により自律的に人命救助や応急工事等を行うロボット開発に必要となる共通的なロボット・コンポーネントやインテリジェンス技術等を開発する。(力/自重比35N/kg(従来の電気駆動モータ等の5~10倍)であるロボット用ハイパワー人工筋肉の開発、等)

5種類のロボットプラットフォーム タフに鍛え上げる極限技術フィールド評価会で実用化,ユーザ普及,産業波及を推進

困難箇所移動技術 極限作業技術 センシング技術 極限条件認識技術 遠隔自律知能 ヒューマンインタフェース 通信技術・安全技術

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広域災害情報収集(飛行ロボット) 瓦礫内人命捜索・情報収集(サイバー救助犬,能動スコープカメラ)

野波健蔵(株)ACSL

主な成果

大野和則東北大准教授

フィールド評価会(屋内外に,模擬倒壊家屋,模擬プラントを設置)

災害復旧工事(建設ロボット) 産業設備点検・災害予防(索状(太径)ロボット,脚ロボット)

昆陽雅司東北大准教授

吉灘裕大阪大特任教授

松野文俊京都大教授

橋本健二早稲田大准教授

強風、豪雨、構造物隣接、負荷変動プロペラ停止でも飛行継続可

犬の行動・活性度モニタ、誘導犬から映像伝送、遺留品発見伝達(日本救助犬協会、伊山岳救助隊協力)

サイバースーツ

瓦礫内での要救助者捜索騒音下での声の聞き取り視聴触覚・3Dマップの操縦支援

高精度・高出力複椀重機無人化施工の高度化任意視点視覚,触力覚の操縦支援

能動スコープカメラ

4脚ロボットWAREC-1

プラント内の自在移動(階段,段差,ギャップ,垂直梯子,配管)高性能ハンド(バルブ操作,無通電把持)計器読み取り,非破壊検査,穴開け作業

索状(太径)ロボット建設ロボット

年2回開催,約500名の参加,ユーザ・産業界に使用シナリオでデモ技術カタログによる説明,アンケートによる研究へのフィードバック波及による,20社以上との共同開発開始 フィールド評価会の様子

九州北部豪雨災害に出動!!→消防庁のドローン導入に繋がった

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(1) ⑧『核変換による高レベル放射性廃棄物の大幅な低減・資源化』

藤田玲子PM PMによる産業や社会の変革高レベル放射性廃棄物中に含まれる長寿命核分裂生成物(半減期が10万年以上の放射性物質)を有用貴金属や半減期の短い短寿命核種に変換する新たな処理プロセス概念を確立することにより、原子力発電所等から生じる高レベル放射性廃棄物の処理処分問題に貢献する。【関連する経済活動規模(推計) 約2兆円(約20年後)】

PMによるチャレンジ

高レベル放射性廃棄物(HLW)中に含まれる長寿命核分裂生成物(LLFP)を有用貴金属や半減期の短い短寿命核種に変換する新たなプロセス概念を世界で初めて確立・実証する。(HLWからLLFPの分離回収率90%以上、LLFPの低レベル廃棄物及び安定核への変換90%以上)

パラジウム(Pd)-107の核変換の経路(パス)

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高レベル放射性廃棄物の処分概念を変える分離・核変換プロセスを開発

主な成果 偶奇分離法の開発 パラジウムの核変換の経路(パス)の提示

緑川克美TL

主な成果

櫻井博儀教授

Pdの同位体のうち、奇数核種のみをレーザー法でイオン化する方法を開発した。従来法に比べて処理量を10万倍にすることに成功した。偶数核種は放射性物質ではないためそのまま資源として使用できる。

100MeVの陽子、重陽子を用いたPd-107、Zr-93、Se-79、Cs-135の核反応データをRIBFを用いて世界で初めて測定し、核変換の経路(パス)を提示した。

Pd-107のインプラントターゲットを作製し、世界で初めて実証試験を実施中。

六ヶ所村の再処理工場から発生するPd-107を 適用できる。イオン化し電極に回収後、加速器により安定核種に核変換することによりPdのすべての核種を再利用できる。

この核変換を実現する小型の重陽子加速器仕様を決定した。

この加速器を実現する純ニオブ製超伝導空洞の開発に成功した。

高レベル放射性廃棄物からLLFPを分離回収する最適なプロセスフローの提案に基づき、模擬高レベル放射性廃液を用いて確認試験を実施(プロジェクト1)

PJ2の測定データを取り入れ、バルクでのモデルとシミュレーションにより反応精度を向上させ、核変換データベース“ImPACT/LLFP-2018”を完成(プロジェクト3)

PJ2とPJ3の成果に基づき、実用加速器概念の仕様を決定すると共に加速器の要素技術を開発(プロジェクト4)

高レベル廃棄物を中低レベル廃棄物に変更する概念の構築、リサイクル技術の開発のためにPd-107、Zr-93のクリアランスレベルの提案(プロジェクト5)

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(1) ⑨『進化を超える極微量物質の超迅速多項目センシングシステム』

宮田令子PM PMによる産業や社会の変革

PMによるチャレンジ細菌やウィルス等のナノ粒子を1分子レベルで高感度識別できる世界初の「超微細エレクトロ・デバイス」の開発を目指し、その基本原理を確立・実証する。(検出感度の目標スペック︓細菌・ウイルス︓感度10粒子/μL、PM2.5︓数個/mL(直径2.5μm)~数百粒子/mL(直径0.05μm)、有害低分子︓pptオーダー)

昆虫等の優れた生物能力に学び、身の回りの多様な有害・危険物質を1分子レベルで簡便かつ高感度に検出・識別できる「超微細エレクトロニクスデバイス」原理を確立し、病原細菌による薬剤耐性の発達や新型病原性ウィルスの発生等、公衆衛生における将来の危機に備える。【関連する経済活動規模(推計)約220億円 (約5年後)】

1粒子解析技術 人工嗅覚システム

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大阪大学特任教授川合 知二

名古屋大学教授

馬場 嘉信

九州大学主幹教授都甲 潔

PJ1:細菌・ウイルス PJ3︓人工嗅覚システム

磁場周期

スマートナノポアで1粒子解析を実現

主な成果PJ2:バイオエアロゾル大気中バイオエアロゾルの捕捉・濃縮・計測を実現

人工嗅覚で有害物質や危険の予兆を可視化する

今後の展開 今後の展開今後の展開•医学系研究機関での実証実験

•プロトタイプの高機能化、小型化を進め、汎用性を高める。

コアシェル・ナノワイヤにより水の保持力が大きい水フィルムの形成に成功。大気中の微粒子の水相への捕捉・濃縮が可能となり、捕捉効率70%、濃縮率3,700倍の小型デバイスを創製。

ナノワイヤ濃縮チップ、16chケモレジ検出チップを一体化したプロトタイプを開発。100倍の濃縮効率、検出感度10ppbを確認。

•捕捉・濃縮デバイスと検出デバイスを統合し、動作実証する。 •パナソニック㈱が実施許諾申請

スマートナノポアで亜型の識別を達成 ナノワイヤで大気中粒子を捕捉・濃縮 濃縮・検出を備えたシステムを開発薄膜ナノポアで得られるパルス電流波形を機械学習させ、パターン認識によりインフルエンザ亜型を1粒子パルスで68%、10パルスのアンサンブルで90%の識別精度を達成。

大気中に浮遊している希薄な微粒子をナノ流路デバイスで捕捉・濃縮し、スマートナノポアで検出する技術を開発する。

超希薄な成分からなる空間ガス、生体ガスをセンシングし多様な使用シーンに対応可能な人工嗅覚システムを開発する。

従来のナノポアでは実現不可能であった1粒子解析を、超薄膜ナノポアと機械学習を融合したスマートナノポアにより実現する。

ナノポアチップ 読み取り装置

大気中粒子

長尺ナノポアで耐性菌を識別ナノポアの電流計測回路を新開発。ナノポアの厚さを長尺とすることで、薬剤耐性菌(VRSA)と感受性菌の識別に成功。

可搬型のプロトタイプを開発可搬型の小型デバイスの開発に成功。実使用シーンでの実証が可能に。

センサ出力パターンの機械学習により、4種モデルガスの識別精度94%を達成。

モデルガスの識別精度94%を達成

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(1) ⑩『イノベーティブな可視化技術による新成長産業の創出』

八木隆行PM PMによる産業や社会の変革

PMによるチャレンジ光超音波を活用した生体情報リアルタイムイメージング手法の概念実証し、世界で初めて血管画像等を非侵襲・非破壊で測定可能であることを確認する。(分解能︓0.2mm、撮影速度︓20フレーム/秒)

)球面形状超音波センサ(高解像度3D画像の実現)

高出力波長可変レーザ(酸素飽和度表示の実現)

・多チャンネル・広周波数帯域

・リアルタイム画像再構成・高速3D画像表示・2波長交互照射による酸素飽和度表示

ワイドフィールド可視化装置

(解像度︓0.2mm)

マイクロ可視化装置(解像度︓0.03mm)

・高速波長切替え・小型・低コスト

キャノン株式会社出身

非侵襲で血管網を可視化

非破壊で内部の変化を可視化

血管等の生体情報を非侵襲・非破壊で可視化する新たな計測手法等を開発することによって、病気の早期発見や個人情報のセキュリティ対策等、様々なサービス分野に応用し、安全・安心な社会の実現に貢献する。【関連する経済活動規模(推計)約500億円(約10年後)】

価値の実証(医療・美容)三次元可視化システムの完成デバイスの確立と国産化

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波長可変レーザの開発

PL:和田智之氏理研グループディレクタ

主な成果

PL:大平克己氏ジャパンプローブ(株)

超音波センサの開発

PL:数藤義明氏キヤノン(株)

ワイドフィールド可視化システムの開発

超小型波長可変パルスレーザの開発に成功

PI:高田博之氏(株)メガオプト

開発した2波長切替えTi:Sapphireレーザ

・サイズ:16x15x7cm・出力 :100mJ/パルス・波長︓756nm,797nm・波長交互照射︓20Hz

従来の複雑な共振器構造を一新した狭帯域波長同調による短共振器を開発し世界最小クラスの高出力TiSaレーザを実現

球面形状超音波センサの開発に成功フィルム状の超音波圧電振動子を用いて球面に圧電振動子を多チャンネルに配置した超音波センサを実現(世界初の1024チャンネル球面センサ)

球面形状超音波センサ

圧電振動子の一部

高解像度・リアルタイム3Dイメージングを実現価値検証を行う臨床研究体制の構築

多診療科による臨床研究チーム

(平成29年下期に京大病院と慶大病院にシステムを提供し、臨床研究を開始)

PI:伊藤安啓(株)日立製作所

京大病院と慶大病院に、多様な疾患での臨床価値を検証する臨床研究体制を構築(8診療科)

・球面形状超音波センサより0.2mm解像度のリアルタイム3Dイメージングを実証、従来法では実現できない酸素飽和度の3Dイメージング技術を確立

対象疾病/治療京大病院 がん

手術計画

運動器官疾患

皮膚希少疾患慶大病院 末梢循環器疾患

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(1) ⑪『脳情報の可視化と制御による活力溢れる生活の実現』

山川 義徳PM PMによる産業や社会の変革情報化の進展に伴う心の病の増加や、高齢者の認知症対策等が社会問題化する中、個々人の脳情報を簡便に計測できる手法の開発やそれら脳情報を民間企業等が活用できるインフラ基盤を構築することによって、世界初の脳情報サービス産業を創出する。【関連する経済活動規模(推計) 約4,000億円(約20年後)】

PMによるチャレンジ

大型機器でしか計測できなかった個々人の脳情報を、簡便に計測できる手法の開発や、それら計測情報のビックデータ解析の結果から、認知症の予防や学習効率の向上等に向けて脳機能を最適化する世界初の制御手法を確立する。(大型機器の10分の1のコスト、従来の3倍の脳情報解読能)

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脳の最適制御を目指す携帯型BMI

PL︓川人光男(ATR)

主な成果

PL︓石黒浩(阪大)

PL︓神谷之康(京大)

・MRIを用いたニューロフィードバックシステムを開発し、脳機能の改善技術に道筋→ 得られた成果を基にベンチャー企業を設立・携帯型BMIに向けた、NIRSやEEGを用いたニューロフィードバックの研究開発も進捗

携帯型BMIによる認知・情動機能の改善技術の開発

脳の深い理解を目指す脳ビッグデータ 脳の高度活用を進める脳ロボティクス大量のMRIデータ解析技術を用いた個人向け脳情報サービスの開発

ロボティクス技術を用いた脳のセルフコントロールシステムの開発

Koizumi et al. Nature Human Behaviour (2016)

・脳のウェルネスやエンパワーメントを目指した複数のロボットのプロトタイプを作成

・脳への影響を解明し、順次市場へ展開予定

・MRIを用いた脳のデコーディング技術を開発→ ライセンスアウトにより民間企業と新規事業化

・今後、個人の脳活動予測モデルを開発予定

Horikawa & Kamitani. Nature Communications (2017)

概念実証と共に、異業種コンソーシアム(2018年1月現在28社参加)等を通じた事業化支援も活発化

恐怖記憶の消去認知機能に関する機能結合の変更

画像に対する脳活動から類似度行列を作成(特許出願済み)

脳内イメージ解読技術脳活動ベースの画像類似度評価

運動対話支援ロボット

アンドロイド追加肢(マルチタスク強化)

M. Yamashita et al. Scientific Reports (2015)A. Yamashita et al. Cerebral Cortex (2017)

Hirayama et al. International Conference on Machine Learning (2017)

EEGから安静時fMRI推定

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(1) ⑫『量子人工脳を量子ネットワークでつなぐ高度知識社会基盤の実現』

山本喜久PM PMによる産業や社会の変革脳内の神経ネットワークを模した、世界初の新型量子コンピュータを開発し、現行コンピュータでは処理できない大規模な組み合わせ最適化問題等を高速処理できるようにすることによって、通信分野におけるビックデータ処理等の技術的な隘路を解決し、高度情報ネットワーク社会の実現に貢献する。【関連する経済活動規模(推計)約3.3兆円(約10年後)】

PMによるチャレンジ

創薬 無線通信 機械学習圧縮センシング ポートフォリオ

現代コンピュータの性能では、実現不可能な膨大な組み合わせ処理問題等を瞬時に処理できる「光ネットワーク型量子コンピュータ」のプロトタイプ開発を行い、創薬、無線通信、圧縮センシング、金融、機械学習等での適用実証を行う。(1つの光スピンを1ビットとする新しい量子コンピュータの原理検証︓正解率95%以上、ビット数10,000~100,000の大規模マシンの試作検証)

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クラウドサービス開発

主な成果

光パラメトリック発振器を量子ニューロンとして用い、測定フィードバック回路を量子シナプスとする光・電子ハイブリッド型の全結合・室温動作量子人工脳を開発(2000量子ビット)。2017/11からクラウドサービスを開始(2019/01までに520万件アクセス)。

PL︓河原林健一

ハードウェア開発

PL︓武居弘樹

PL︓合原一幸

PL︓Martin Fejer

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慶應義塾大 教授

白坂成功 PM自然災害等の緊急時に、雨天や夜間等コンディションを問わず被災地状況等を速やかに把握し、救命・復旧等に当たり得るよう、場所や天候、時間を問わ即時観測が可能な「小型合成開口レーダ衛星システムを開発し、各地の防災・減災対応に貢献する。【関連する経済活動規模(推計)約1,400億円(約5年後)】

PMによる産業や社会の変革

PMによるチャレンジ

(1) ⑬オンデマンド即時観測が可能な小型合成開口レーダ衛星システム』

民間利用を中心に政府・自治体も想定

平常時︓全地球規模の常時観測を実現(コンステレーションの導入)全地球常時観測データを元にした高付加価値サービスの提供

災害発生時︓オンデマンド即時観測

災害地域の即時情報の入手

政府・自治体の利用を想定注1)【出典】国土交通省 広報誌「国土交通」No.122注2)【出典】国土交通省 広報誌「国土交通」No.146

注2)注1)

これまで実現されていない、場所や天候、時間を問わず即時観測が可能な世界最小のXバンド合成開口レーダ衛星システムを開発する。(衛星重量︓100kg以下、 1機︓5億円以下、分解能︓1m 等)

ベンチャー企業を立ち上げ、2019年に実証衛星を打ち上げ予定。

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成功へのシナリオ• SAR実現方式として

成功へのシナリオ• SAR実現方式として

成功へのシナリオ• SAR実現方式として

「高画質データの送信を可能にする高速データ送信技術」「難易度の高い小型SARミッションを支える小型衛星技術」

東京大 中須賀教授

JAXA 齋藤特任教授

東京工業大 廣川教授

地上へのデータ伝送速度1.5Gbps以上・大型衛星用含めて世界最高クラスの超高速ダウンリンク通信を小型衛星で実現(小型衛星の世界記録に対して3倍以上の伝送速度)

64値振幅位相変調方式

展開時5m(片側2.1m)のアンテナを0.7m(片側0.15m)にまで収納

「ロケットへの収納を超コンパクトにする高収納型アンテナ技術の開発」

世界の2大潮流である「アクティブフェーズドアレー方式」と「パラボラ方式」のどちらでもない平面スロットアレイアンテナ方式を選択し、前例のない世界最軽量・高密度収納を実現

主な成果

目標現状

【姿勢制御シナリオ】【衛星による自律判断の概念イメージ】

アンテナの超コンパクトな収納技術(片側15cm)チョークフランジ

シンプルな構造の巻込式展開機構非接触でも低損失な信号給電が可能

【収納状態】

【展開状態】

5m(片側2.1m)

15cm

薄型平面スロットアレーアンテナ(厚さ6mm)スロット間隔や誘電体(ハニカムコア)の材料を複雑に調整

アンテナ平面

誘電体(ハニカムコア)

電波を放出するスロット

アンテナ断面管内進行波

放射電波

東京大・JAXA宇宙研共同研究成果

・衛星自身が自己の状態や環境等の状況を基に判断し、姿勢変更等の制御を自動的に実施(観測時には自動的に目標地点を指向、非観察時には太陽電池発電や冷却緩和のための姿勢に自動移行。)・小型衛星ながら大型衛星に匹敵する高いバス機能・性能の実現に挑む

ほどよし衛星を進化させた高機能・高性能な衛星バス

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(1) ⑭『豊かで安全な社会と新しいバイオものづくりを実現する人工細胞リアクタ』

野地博行PM PMによる産業や社会の変革生物が持つ物質生産機能を活用して、有用な物質を人工的に合成する新たなバイオ産業を創出するため、それら基盤技術となり得る「人工細胞リアクタ」やDNAの人工合成技術等を開発し、創薬等のものづくり分野におけるイノベーション創出を図る。【関連する経済活動規模(推計) 約3,500億円(約10年後)】

PMによるチャレンジ

人工的に作り出した細胞から多様な有用物質を自在かつ効率的に製造するための基盤技術として、「人工細胞リアクタ」やDNAの人工合成技術等を開発する。(10^6の分子群から目的分子を1回で選別、0.5Mbpの人工ゲノムを24時間以内に合成、等)

東京大 教授

産業的・社会的インパクト

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主な成果デジタルELISA(はかる;PJ1A )

PCRと同等以上の感度を達成(セロコンバージョン検体を用いて検証)

吉村徹 所長Abbott

スーパー酵素開発(つくる;PJ2A)

人工ゲノム合成(ふえる;PJ3A)

野地博行 教授東京大

末次正幸 准教授立教大

基盤技術開発(PJ4A)

田端和仁 講師東京大

デジタルインフルエンザウイルス計測

デジタル計測による高感度インフルエンザウイルス計測に成功

合成速度kbp/day

20

200

ゲノム合成を10倍高速化

既存方法(Science 2016)

試験管内DNA合成技術(RCR法)の開発に成功

DNA合成キット化に成功

0 5 10 15 20

Mutant‐6

Mutant‐5

Mutant‐4

Mutant‐3

Mutant‐2

Mutant‐1

Wild type

活性10倍以上のスーパー酵素

バイオ分析用のスーパー酵素開発に成功

アレイ型人工細胞リアクタを用いた超並列スクリーニング

現在、米国で急速に拡大しているRetail Clinic市場に展開しデファクトスタンダード化31

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(1) ⑮『バイオニックヒューマノイドが拓く新産業革命』

原田香奈子PM PMによる産業や社会の変革

東京大 准教授

人体を精巧に模倣した「バイオニックヒューマノイド」を開発し、医療分野等での先行利用を通じて、人とヒューマノイド(ロボット)との共存実現に向けた社会的課題等を抽出する。【関連する経済活動規模(推計)約4, 800億円(約10年後)】

PMによるチャレンジ

http://www.mayfieldclinic.com/PE-surgpit.htm

http://clinicalgate.com/basic-principles-of-skull-base-surgery/

https://www.mech.kuleuven.be/

C. C. Lai, et al (2002).

従来は侵襲大

低侵襲微細手術の普及

ロボット微細手術の実現

これまでロボット導入が困難とされてきた脳外科・眼科用の手術ロボット「バイオニックヒューマノイド」を開発し、医療用現場での導入実証を行う。(精度10μm、遅延100msで自動安全制御機能を搭載した手術ロボット、等))

脳外科手術・眼科手術を対象

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共同研究を必須とする研究開発体制

バイオニックヒューマノイド スマートアーム

主な成果

欧州の大型国際共同研究を参考に、 PMが中心となって多施設連携・産学連携・医工連携体制を構築。

東大 光石教授

産業用ロボット技術を応用した匠の手術ロボット「スマートアーム」をバイオニックヒューマノイドを活用することで短期間で開発。

名大 新井教授

生体組織の物性測定から精巧に再現する素材を開発。眼科用や鼻腔用のセンサ付超精巧モデル開発に成功し、販売に向けて検討中。

眼科用モデルBionic EyE

ツール先端部︓直径3.5mm, 屈曲±60度

バイオニックヒューマノイド

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(1) ⑯『社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム』

原田博司PM PMによる産業や社会の変革

京都大学 教授

個々人の健康・医療情報等をビックデータ化し、それら膨大な情報を効率的に解析・処理するプラットフォームをモデル構築することにより、Society 5.0が目指すサイバー空間とフィジカル空間の融合による知識集約的な社会の実現に貢献する。【関連する経済活動規模(推計) 約200億円(約5年後)】

PMによるチャレンジ•各家庭を結ぶ無線通信ネットワーク化技術等を開発することにより、住民情報等を効率的にビックデータ化し、個々人のニーズに応じたきめ細かな行政サービスの提供を可能とする超ビックデータプラットフォームを確立する。

•(医療データを基に住民の健康状態を予測するリスクシミュレーションの実施(2拠点以上) 等)

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医療・介護・健診の統合解析による地域包括ケアシステム医療・介護・健診等を統合した解析が可能な超高速解析システムの試作に成功。三重地域における医療・介護・健診の実態に即した地域包括ケアシステムを構築。

主な成果の例

国民健康保険被保険者の通院動態の可視化東京大学喜連川教授

医療経済研満武副部長

自治医大苅尾教授

自治医大永井学長

京都大学原田教授

三菱電機米田部長

詳細な検査・治療情報をリアルタイムで収集し、タイムリーに解析結果をフィードバックするため、 SS-MIX2標準ストレージを用いて、電子カルテ内の血液検査値などのデータ、CAIRS 心臓カテーテル検査レポートデータを自動収集するMCDRSシステムを確立。

攻撃・異常検知方法、および攻撃・異常検知プログラムの開発

新国際無線通信規格Wi-SUN FANに対応した無線機の開発手軽にIoTが実現できるマルチホップ対応

環境・生体信号を同時に時系列記録できるマルチセンサー携帯型自動血圧計を開発

複数循環器医療施設からの情報収集システムを確立

今後、岐阜県、福井県でも現地実証

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”Beyond Limits. Unlock Our Potential.”

戦略1︓ 世界と伍するスタートアップ・エコシステム拠点都市の形成戦略2︓ 大学を中心としたエコシステム強化戦略3︓ 世界と伍するアクセラレーション・プログラムの提供戦略4︓ 技術開発型スタートアップの資金調達等促進(Gap Fund)戦略5︓ 政府、自治体がスタートアップの顧客となってチャレンジを推進戦略6︓ エコシステムの「繋がり」形成の強化、気運の醸成戦略7︓ 研究開発人材の流動化促進

米国、中国はじめ世界のベンチャーエコシステムは都市を中心に激変、多数のユニコーンが創出されるなどベンチャーカンブリア紀が到来、日本の遅れが顕在化。我が国は東京等の大都市、優秀な人材、卓越した研究開発力、技術力の高い大企業、豊富な資金を有するが、十分に活かすことができていないことが課題。今後、都市や大学を巻き込み、世界を志向する起業家教育やアクセラレータ機能を抜本的に強化すること等を通じて、起業家がこれまでの制約を超越し(Beyond Limits)、日本の潜在能力を開放する(Unlock Our Potential)、スタートアップ・エコシステムを構築することが可能となる。

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(2) 研究開発支援の一例スタートアップ戦略の視点 ”Beyond Limits. Unlock Our Potential.”