12
2 0 4 6 致死率(%) ITARDA Institute for Traffic Accident Research and Data Analysis 走行中自転車への 追突事故 特集 交通事故総合分析センター No. イタルダ・インフォメーション 2011 APRIL 88 自転車運転者の事故類型別致死率 車両相互全体 0.47% 車両相互その他 0.47% 右折時 (その他) 0.28% 右折時 (右折直進) 0.30% 左折時 0.29% すれ違い 0.22% 追越時・追抜時 0.63% 出会い頭 0.47% 追突 (その他) 0.70% 正面衝突 0.70% 追突(進行中) 4.7% 追突事故致死率出会い頭事故の致死率の (進行中) 10

Institute for Traffic Accident Research and Data …Research and Data Analysis 走行中自転車への 追突事故 特集 (財)交通事故総合分析センター No. イタルダ・インフォメーション

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20 4 6致死率(%)

ITARDA Institute for Traffic Accident Research and Data Analysis

走行中自転車への追突事故

特集

(財)交通事故総合分析センターNo.

イタルダ・インフォメーション2011APRIL88

自転車運転者の事故類型別致死率車両相互全体0.47%

車両相互その他0.47%

右折時(その他)0.28%

右折時(右折直進)0.30%

左折時0.29%

すれ違い0.22%

追越時・追抜時0.63%

出会い頭0.47%

追突(その他)0.70%

正面衝突0.70%

追突(進行中) 4.7%

追突事故の致死率は

出会い頭事故の致死率の(進行中)

10倍約

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Institute for Traffic Accident Research and Data Analysis

2011 APRIL No.

12345

88ITARDAINFORMATION財団法人 交通事故総合分析センターイタルダ・インフォメーション

CONTENTS

主な内容

自転車運転者の被害状況追突(進行中)事故の特徴なぜ脇見や漫然運転をしてしまうのか事故事例紹介まとめ

特 集

走行中自転車への追突事故

(致死率が高い事故)

 自転車が関わる交通事故は、事故類型の分類で言えば「出会い頭事故」が最も多く発生しています。しかし走行中の自転車に後方から自動車が衝突する「追突(進行中)事故」は、事故件数こそ多くはありませんが、一旦発生すると致死率が他の自転車事故に比べて突出して高く、重大な結果に繋がっています。 四輪車と自転車の事故では、自転車側にも違反がある場合が多く見られます。しかし、「追突(進行中)事故」では、自転車運転者が違反をしている割合は低く、四輪運転者の危険予測運転励行により多くの追突事故を防ぐことができると考えられます。今回のイタルダインフォメーションでは、四輪運転者が走行中の自転車に追突する事故を防ぐには、どのような運転をすれば良いかを探っていきます。

2 ITARDA INFORMATION 88

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図1 自転車運転者の事故類型別致死率(車両相互事故)   (*自転車運転者が第1当事者及び第2当事者の場合を含む)

図2 事故類型別 自転車運転死者1、2当比率(車両相互事故)

正面衝突 追突(進行中)

追突(その他) 出会い頭 追越・

追抜時 すれ違い 左折時 右折時(右折直進)

右折時(その他)

車両相互その他

車両相互全体

致死率 0.70 4.7 0.70 0.47 0.63 0.22 0.29 0.30 0.28 0.47 0.47死者(人) 264 611 53 3,877 236 63 473 219 297 957 7,050

重傷者(人) 3,666 2,156 553 60,428 3,915 1,822 7,669 5,200 7,070 13,735 106,214軽傷者(人) 33,819 10,186 6,968 763,666 33,353 26,765 154,295 68,166 99,404 186,935 1,383,557死傷者(人) 37,749 12,953 7,574 827,971 37,504 28,650 162,437 73,585 106,771 201,627 1,496,821

0.70%

4.7%

0.70% 0.47% 0.63%0.22% 0.29% 0.30% 0.28% 0.47% 0.47%

0

2

4■ 致死率

正面衝突 追突(進行中)

追突(その他) 出会い頭 追越・

追抜時 すれ違い 左折時 右折時(右折直進)

右折時(その他)

車両相互その他

車両相互全体

死者(人)

1+2当 264 611 53 3877 236 63 473 219 297 957 7,0501当 56 4 5 1,466 22 18 6 24 32 200 1,8332当 208 607 48 2,411 214 45 467 195 265 757 5,217

死傷者(人)

1+2当 37,749 12,953 7,574 827,971 37,504 28,650 162,437 73,585 106,771 201,627 1,496,8211当 5,500 430 1,279 106,072 2,246 2,450 1,925 1,842 3,653 17,116 142,5132当 32,249 12,523 6,295 721,899 35,258 26,200 160,512 71,743 103,118 184,511 1,354,308

0

20

40

100

80

60

■ 1当  ■ 2当

6

構成率(%)

致死率(%)

3ITARDA INFORMATION88

特集

(1)自転車運転者の致死率と被害者数 図1は、第1及び第2当事者 * の自転車運転者における致死率と傷害程度別人数です。交通事故データは平成 13 年から 21 年の合計値で、以後同じです。

 死者や死傷者数は「出会い頭事故」が最も多くなっています。しかし、致死率に着目すると「追突(進行中)事故」では 4.7%と約 20 人に1人が亡くなっています。一方「出会い頭事

故」の致死率は 0.47%と約 200 人に1人ですので、「追突(進行中)事故」は「出会い頭事故」に比べて約 10 倍も死亡事故になる割合が高くなっています。 図2は事故類型別に自転車運転死者の第 1、第 2当事者比率を表します。これによると、「出会い頭事故」などは自転車が第 1当事者の比率が比較的高いのですが、「追突(進行中)事故」では、殆どの場合自転車が第2当事者となっています。

自転車運転者の被害状況SEC

TION

1

走行中自転車への追突事故

*交通事故に直接関与した当事者は2人存在し、より重い過失を犯した当事者が第1当事者、相対する当事者が第2当事者とされる。過失が同程度の場合は傷害程度の軽い方が第1当事者とされる。

致死率= 死者数 × 100(%)死傷者数

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図4 事故類型別の自転車運転者違反なし率   (*第1当事者四輪車、第2当事者自転車)

正面衝突 追突(進行中)

追突(その他) 出会い頭 追越・

追抜時 すれ違い 左折時 右折時(右折直進)

右折時(その他)

車両相互その他

車両相互全体

違反なし率(%) 31 82 75 29 49 40 49 43 51 44 38違反なし件数(件) 5,980 7,450 3,639 187,536 12,472 7,339 74,599 28,835 49,599 70,168 447,617

全件数(件) 19,099 9,054 4,823 640,686 25,219 18,475 150,710 66,759 96,951 161,050 1,192,826

31%

82%75%

29%

49%40%

49%43%

51%44%

38%

0

40

20

60

80

100

■ 違反なし率違反なし率(%)

79%四輪車

98%四輪車

二輪車 18%

自転車 3% 二輪車 2%自転車 0%

その他 0% その他 1%

2当の自転車運転者の死傷者数n=11,372人

2当の自転車運転者の死者数n=601人

図3 追突(進行中)事故における第1当事者車両種別   (*ひき逃げによる第1当事者車両種別不明分を除く)

特集 走行中自転車への追突事故

4 ITARDA INFORMATION 88

(3)自転車運転者の違反状況 図4は、第 2当事者である自転車側に違反がない割合を示す「違反なし率」を表しています。

 これを見ると「出会い頭事故」の 29%に比べ、「追突(進行中)事故」では 82%と違反のない割合は高い状況です。 言い換えれば、「追突(進行中)事故」の82%は専ら四輪運転者に責任があり、四輪運転者が危険予測運転を励行することにより事故を回避できることを意味しています。

(2)追突(進行中)事故における加害者 自転車に追突した第1当事者を分類した結果によると(図3)、第 2当事者である自転車運転者が死傷した場合には二輪車や自転車も見られます。しかし、死亡の場合は殆ど相手が四輪

車なので、以後は四輪車(第1当事者)対自転車(第2当事者)の事故について分析します。 また、自転車と四輪車の事故では、殆どの場合自転車運転者が事故関与者の中で最も大きな傷害を負いますので、事故件数で見ていきます。

違反なし率= 違反なし件数 × 100(%)全件数

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■ 停~10km/h■ ~20■ ~30■ ~40■ 40超■ 調査不能

■ 交差点■ 交差点付近■ 単路■ 他

図5 四輪車の事故直前速度

図6 事故発生場所の道路形状別割合

全体n=119万件

全体n=119万件

追突(進行中)n=9,054件

追突(進行中)n=9,054件

0 20 40 60 80 100

0 20 40 60 80 100

構成率(%)

構成率(%)

78%11% 10%

29%15%7% 21% 28%

23%72% 4%

3%

12% 6%27%52%

1%

1%

5ITARDA INFORMATION88

 「追突(進行中)事故」の特徴を捉えるために、四輪車(第1当事者)対自転車(第2当事者)の全事故を「全体」と称して比較します。また、死亡事故は件数が少ないため傾向が捉えにくいので、基本的には件数が多い死傷事故を対象とします。

(1)四輪車事故直前速度 交通事故データの危険認知速度(四輪運転者が事故の危険を感じた時の速度)を事故直前速度と捉えて表したグラフが図5です。比較対象である「全体」では「停止中~ 10km/h 以下」

が半数以上を占めていますが、「追突(進行中)事故」ではこの速度域は少なく、逆に「40km/h 超」が 29%と、中速域以上が多くなっています。このように「追突(進行中)事故」は、四輪車の事故直前速度が速い事故と言うことができます。

(2)事故発生場所 どのような場所で発生しているかを道路形状別に見ると(図6)、「全体」では「交差点」が72%ですが、「追突(進行中)事故」では、「単路」が 78%を占めています。

追突(進行中)事故の特徴SEC

TION

2

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図7 死傷事故の昼夜別発生割合

図8 死亡事故の昼夜別発生割合

全体n=119万件

全体n=5,031件

追突(進行中)n=9,054件

追突(進行中)n=591件

0 20 40 60 80 100

0 20 40 60 80 100

構成率(%)

構成率(%)

72%28%

47%53%

39%61%

22%78%

■ 昼間■ 夜間

■ 昼間■ 夜間

特集 走行中自転車への追突事故

6 ITARDA INFORMATION 88

(3)昼夜別発生割合 昼夜別に見ると(図7)、「全体」では「夜間」の割合は低いのですが、「追突(進行中)事故」は半数近くです。

 さらに死亡事故に限ってみると(図8)、「全体」では「夜間」は 39%ですが、「追突(進行中)事故」では 72%が「夜間」に発生しています。

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■ 発見の遅れ■ 判断の誤り■ 操作上の誤り■ 調査不能

■ 漫然運転 (内在的)■ 脇見 (外在的)■ 安全不確認

■ 漫然運転 (内在的)■ 脇見 (外在的)■ 安全不確認

図9 四輪運転者の人的事故要因

図10 人的事故要因「発見の遅れ」の内訳

全体n=119万件

全体n=104万件

追突(進行中)n=9,054件

追突(進行中)n=7,098件

0 20 40 60 80 100

0 20 40 60 80 100

図11 追突(進行中)事故の昼夜別「発見の遅れ」の内訳

昼間n=3,399件

夜間n=3,699件

0 20 40 60 80 100

構成率(%)

構成率(%)

構成率(%)

18%27% 55%

15%53%

19%

32%

78%

91%6%

3%

21%57%

12%

22%

87%

2%

1%

7ITARDA INFORMATION88

(4)四輪運転者の人的事故要因 なぜ事故になったのかを見てみると、第1当事者である四輪運転者の事故発生につながった人的事故要因(図9)から、「発見の遅れ」が「全体」及び「追突(進行中)事故」のどちらも多くを占めています。 この「発見の遅れ」について内訳を見ると(図10)、「全体」では「安全不確認」が殆どを占

めていますが、「追突(進行中)事故」では、「脇見」と「漫然運転」が合わせて 82%と、四輪運転者の多くが前方の自転車を見落しています。 「追突(進行中)事故」における「漫然運転」の割合を昼夜別に見ると(図 11)、「昼間」より「夜間」が多く、「夜間」になると更に自転車の存在を見落していることがうかがわれます。

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8 ITARDA INFORMATION 88

特集 走行中自転車への追突事故

82%違反なし

後方安全不確認 6%

通行方法 2%

通行区分 2%

その他7%

調査不能 1%

図12 自転車運転者の違反内容

 これまでの分析をまとめると、「追突(進行中)事故」は他の事故と比べて

という特徴があります。 人的事故要因と昼夜割合を併せて見ると、夜間における「追突(進行中)事故」は、四輪運転者の運転への集中力の低下や後方から認識しずらい自転車の形状などにより見落とされがちなため、「全体」より夜間での発生が多くなっていると考えられます。

(5)自転車運転者の違反内容 それでは、自転車運転者には事故の要因はないのでしょうか。自転車運転者の違反内容(図12)は、「違反なし」が最も多くなっていますが、自転車が進路変更、右左折、横断をする場

合の「後方安全不確認」は6%、「通行区分違反」(左側に寄らない通行、他の軽車両との並進等)は2%、「自転車の通行方法違反」は2%となっています。

❶ 四輪車の事故直前速度は 40km/h 超(中速域以上)が多い。

❷ 単路や夜間での事故が多い。❸ 四輪運転者の人的事故要因は、「発見の遅

れ」が約 80%と多く、その内訳は「脇見」と「漫然運転」で 80%以上を占め、夜間は

「漫然運転」の割合が更に多くなる。

❹ 自転車運転者側には、進路変更、右左折、横断時に後方の安全を十分に確認していない場合が見られる。

n=9,054件

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9ITARDA INFORMATION88

 交通事故データでは、四輪運転者は脇見や漫然運転が多いことは分かりましたが、なぜそのような運転をしてしまうのかまでは分かりません。そこで、ITARDAが実施する事故例調査データ(ミクロデータ)でその要因を探ってみます。 四輪車対自転車事故の中で、「追突(進行中)事故」は、抽出してみると 31 件(表1)が該当し、「夜間」が多く見られます。四輪運転者の人的事故要因は「発見の遅れ」は 24 件、「発見していた」は7件と「発見の遅れ」が多く、更に昼夜別に見ると、「夜間」は殆どが「発見の遅れ」ですが、「昼間」は「発見していた」が多くなっています。

(1)発見の遅れの要因 発見の遅れの昼夜合計 24 件について、その遅れた直接の要因を見ていくと(表2)、大きくは「視界」、「被視認性」、「交通環境」の三つに分けることができます。

❶視界に関しては、道路照明がない暗い道路の事例が夜間 22 件中 18 件と多く見られます。他は、対向車がいないのにライト下向きが3件、雨による視界不良の事例が3件でした。❷被視認性に関しては、自転車運転者の服装の色が判明している 11 件中9件が暗い服装でした。また、2台の自転車が併走をしていて、道路端の自転車には早く気が付いたが、車線中央の自転車に直前まで気が付かない事例がありました。❸交通環境では、対向車に気を取られた事例が

5件あり、その道路幅員はいずれも 4.7 から5.6 mでした。他には、交通量がない・少ないことによる事例が4件と、歩道が整備されているので自転車は歩道を走ると思っていた事例が1件でした。

(2)発見が遅れる背景いずれも事故を回避できる距離で発見しようと思えば発見できる状況でありながら発見が遅れているので、運転に集中していないと考えられます。背景としては、

❶深夜で大雨なので自転車はいない❷事故が発生した時間帯はいつも自転車が いない(夜間)❸交通量がないので脇見をしても大丈夫(昼間)❹歩道が整備されており自転車は歩道を走行するので、車道にはいない(昼間)

などの「自転車はいない」との思込みによるものでした。運転者への聞取り調査で明確な事例は上記の4件だけです。しかし、夜間の事故が多いことと併せてみると、発見が遅れる直接的な要因には様々なものが見られるものの、運転に集中しない背景としては「自転車はいない」だろうとの思込みの影響が非常に大きいと考えられます。

(3)発見していたのに事故となった要因発見していたのに事故になってしまった7件は、

なぜ脇見や漫然運転をしてしまうのか

SECTION

3

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表2 四輪運転者発見の遅れの要因別件数   (複数選択/件)

区分 昼間 合計

視界道路が暗い 18ライト下向き 3雨 3

被視認性服装が暗い 9自転車が併走 1

交通環境対向車に気を取られた 5交通量がない・少ない 4歩道が整備されている 1

表1 四輪運転者の人的事故要因別、昼夜別件数   (*第1当事者四輪車、第2当事者自転車)

昼間 夜間 合計発見の遅れ 2 22 24発見していた 5 2 7

合計 7 24 31

10 ITARDA INFORMATION 88

特集 走行中自転車への追突事故

❶発見後に脇見をした…4件❷自転車が後方確認なく進路変更をした…1件❸自転車が交差道路右側から斜め横断した …1件

❹他の危険回避…1件でした。 せっかく自転車を発見したのに脇見をしてしまった事例が目に付きます。

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現場状況図

A1

B1B2

B自転車

11ITARDA INFORMATION88

 前章にて分析したミクロデータから1事例を紹介します。

事故状況 普通貨物ワンボックス車(A車)を運転していた 40 歳代の男性は、大雨の夜 11 時過ぎに、道路照明がない暗い往復2車線道路を走行していました。対向車はありませんでしたが、対向車が来ても切り替えずに済むようにヘッドライトは下向きのままでした。仕事の緊張から解放されてほっとした状態で、通り慣れた道路をい

つもと同じように時速 45km 位で漠然と前方を見ながら進行していると、突然衝突音がして車両の左前角部が自転車に追突してしまったことに気が付きました。大雨の深夜なので自転車や歩行者の存在を全く予測していなかったため、事前に発見できなかった

とのことです。 自転車(B車)の運転者は、この事故で重傷を負いました。

事故事例紹介SEC

TION

4

B

AA

衝突現場車道左寄りを走行していた自転車BにA車が追突しました。

衝突現場の約30m手前からの状況事故当時も特に視認を阻害するものはなかったと思われます。A運転者が自転車の走行を予測していたならばBを発見できたと推測されます。

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特集 走行中自転車への追突事故

Institute for Tra

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TIO

N

イタルダ・インフォメーション

つくば交通事故調査事務所〒305-0831 茨城県つくば市西大橋 641-1

(財)日本自動車研究所内TEL029-855-9021 FAX029-855-9131

事務局〒102-0083 東京都千代田区麹町6-6 麹町東急ビル5階TEL03-3515-2525 FAX03-3515-2519

APRIL2011

No.88発 行 (財)交通事故総合分析センター

発行月 平成23年4月 〒102-

0083

東京都千代田区麹町6-

6 麹町東急ビル5階

(1)事故の特徴 致死率が高い「追突(進行中)事故」の特徴は、交通事故データの分析から

ことが分かりました。

(2)ミクロデータ分析結果 ミクロデータ分析から、発見が遅れる直接の要因は

と様々でした。 しかし、いずれも運転に集中しておらず、集中していない背景としては「自転車はいない」だろうとの思込みの影響が非常に大きいと考えられます。 また、自転車を発見していた事故では、発見後に脇見をしてしまった事例が多く見られました。

(3)事故予防策 以上の分析結果から考えられる事故予防策は

 四輪運転者にも自転車運転者にも不安全な行動が多く見られます。これは事故になった場合を見ているので当然です。しかし、同じような状況であっても、事故予防に努めて事故を防いだ運転者がはるかに多いはずです。ゆとりを持って、お互いがルールとマナーを守った運転をすることが大切です。 特に「追突(進行中)事故」では、自転車運転者には過失がない場合が多いので、死者や事故そのものを減少させるために、四輪運転者による危険を予測した運転のより一層の徹底が強く望まれます。

まとめSEC

TION

5

❶ 四輪車の事故直前速度は 40km/h 超(中速域以上)が多い。

❷ 単路や夜間での事故が多い。❸ 四輪運転者の人的事故要因は、「発見の遅

れ」が約 80%と多く、その内訳は「脇見」と「漫然運転」で 80%以上を占め、夜間は「漫然運転」の割合が更に多くなる。

❹ 自転車運転者側には、進路変更、右左折、横断時に後方の安全を十分に確認していない場合が見られる。

❶ 視界:道路が暗い、ライト下向き、雨❷ 自転車の被視認性:自転車運転者の服装

が暗い、2台の自転車が併走❸ 交通環境:対向車に気を取られた、交通

量がないあるいは少ない、自転車は歩道を走る

❶ 四輪運転者自転車を早く発見する為には自転車はいつでも、どこにでもいると考えること。自転車は車道走行が基本なので、車道にいると考えること。対向車が気になるときは、自車線の自転車にも注意すること。対向車がいない場合は、ライト上向きを基本とすること。自転車を発見したら 安全な速度に減速し自転車との間隔を取り、追い越すまで自転車に気を配ること。

❷ 自転車運転者自分を守るため 明るい服装、夜間は反射材を着用するなど目立つ工夫をすること。進路変更時には後方に車両がいないことを十分確認すること。

a

b

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