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炉物理の研究 第 59 (2007 4 ) 3 <特集 5%超濃縮度軽水炉燃料の開発> (1)エルビア入り次世代高燃焼度燃料に関する技術開発の現状 京都大学 原子炉実験所 宇根崎博信 大阪大学 竹田敏一 名古屋大学 山本章夫 (株)原子力エンジニアリング 森 正明 原子燃料工業(株) 山崎正俊 1.はじめに 使用済燃料の発生量抑制の観点からは燃料の高燃焼度化が有効であるが,このためには燃料 濃縮度を上昇させる必要がある。一方,たとえば国内 PWR における高燃焼度ステップ 2 燃料の濃 縮度は既に 4.8wt%であるなど,現在の 5wt%の制限下においては今後の濃縮度上昇の余地は小 さい。また,将来的に長期サイクル運転に移行すると,取出平均燃焼度が低下するため,発電量あ たりの使用済燃料の発生量が増加する。このため,将来的な使用済燃料発生量の抑制の観点か らは,5wt%の制限にとらわれず濃縮度を上昇させることが望まれる。 しかしながら,現行の核燃料サイクル施設は臨界管理の観点から濃縮度 5wt%以下を想定して おり,5wt%超の燃料を扱うには濃縮・再転換・成型加工・輸送・燃料保管・中間貯蔵あるいは再処 理の各工程における設計変更,許認可取得,設備改造等が必要になり,これらに要するコストが非 常に大きくなる可能性がある。このため,5wt%超燃料の実機導入は世界的に未だ具体化していな い。 この 5wt%の「壁」を越えるために、我々のグループでは、「エルビアクレジット」と呼ぶ概念を提 唱している。このコンセプトは,5wt%を超える燃料について、再転換後すべてのウラン燃料粉末に 低濃度のエルビア(酸化エルビウム;Er 2 O 3 )を混入し,5wt%以下のウラン燃料と同等の臨界安全 性を担保し,それ以降の輸送や成型加工施設への影響を限定するという概念である。このエルビ アクレジットを用いたエルビア入り次世代超高燃焼度燃料(Er-SHB 燃料:Er bia-bearing S uper H igh B urnup Fuel)は,高燃焼度燃料の利点を活かしつつ,大幅な設備変更・設備投資を回避 できる画期的な燃料である。また、取扱量(輸送量,加工量,貯蔵量など)も現状通りとすることが出 来るので,作業効率・輸送効率・貯蔵効率の劇的な向上も期待できる。 このエルビアクレジットの実用化のためには,高濃縮度かつ様々なエルビア濃度の燃料体系に おける核特性評価および臨界性評価コードの信頼性確認をはじめ、様々な技術的な検討が必要 である。そこで、筆者等は、革新的実用原子力技術開発費補助事業(INVET)のサポートのもと、図

<特集 5%超濃縮度軽水炉燃料の開発> (1)エルビア入り次 ......装置(KUCA)を用いたエルビア燃料装荷炉模擬炉心の臨界実験を実施している。平成17

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  • 炉物理の研究 第 59 号 (2007 年 4 月)

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    <特集 5%超濃縮度軽水炉燃料の開発>

    (1)エルビア入り次世代高燃焼度燃料に関する技術開発の現状

    京都大学 原子炉実験所 宇根崎博信

    大阪大学 竹田敏一

    名古屋大学 山本章夫

    (株)原子力エンジニアリング 森 正明

    原子燃料工業(株) 山崎正俊

    1.はじめに

    使用済燃料の発生量抑制の観点からは燃料の高燃焼度化が有効であるが,このためには燃料

    濃縮度を上昇させる必要がある。一方,たとえば国内 PWR における高燃焼度ステップ 2 燃料の濃

    縮度は既に4.8wt%であるなど,現在の5wt%の制限下においては今後の濃縮度上昇の余地は小

    さい。また,将来的に長期サイクル運転に移行すると,取出平均燃焼度が低下するため,発電量あ

    たりの使用済燃料の発生量が増加する。このため,将来的な使用済燃料発生量の抑制の観点か

    らは,5wt%の制限にとらわれず濃縮度を上昇させることが望まれる。

    しかしながら,現行の核燃料サイクル施設は臨界管理の観点から濃縮度 5wt%以下を想定して

    おり,5wt%超の燃料を扱うには濃縮・再転換・成型加工・輸送・燃料保管・中間貯蔵あるいは再処

    理の各工程における設計変更,許認可取得,設備改造等が必要になり,これらに要するコストが非

    常に大きくなる可能性がある。このため,5wt%超燃料の実機導入は世界的に未だ具体化していな

    い。

    この 5wt%の「壁」を越えるために、我々のグループでは、「エルビアクレジット」と呼ぶ概念を提

    唱している。このコンセプトは,5wt%を超える燃料について、再転換後すべてのウラン燃料粉末に

    低濃度のエルビア(酸化エルビウム;Er2O3)を混入し,5wt%以下のウラン燃料と同等の臨界安全

    性を担保し,それ以降の輸送や成型加工施設への影響を限定するという概念である。このエルビ

    アクレジットを用いたエルビア入り次世代超高燃焼度燃料(Er-SHB 燃料:Erbia-bearing Super

    High Burnup Fuel)は,高燃焼度燃料の利点を活かしつつ,大幅な設備変更・設備投資を回避

    できる画期的な燃料である。また、取扱量(輸送量,加工量,貯蔵量など)も現状通りとすることが出

    来るので,作業効率・輸送効率・貯蔵効率の劇的な向上も期待できる。

    このエルビアクレジットの実用化のためには,高濃縮度かつ様々なエルビア濃度の燃料体系に

    おける核特性評価および臨界性評価コードの信頼性確認をはじめ、様々な技術的な検討が必要

    である。そこで、筆者等は、革新的実用原子力技術開発費補助事業(INVET)のサポートのもと、図

  • 炉物理の研究 第 59 号 (2007 年 4 月)

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    1に示すように、原子燃料工業(株)(総括代表)、大阪大学、京都大学、名古屋大学、(株)原子力

    エンジニアリングからなる研究開発チームを発足させ、平成17年度より研究開発を実施している。

    ①KUCA実験 ・計画策定 ・実験実施

    ①KUCA実験 ・計画策定 ・実験実施

    京大炉京大炉

    ②GB因子検討 ・理論構築 ・共分散ファイル作成 ・予測精度向上法

    ②GB因子検討 ・理論構築 ・共分散ファイル作成 ・予測精度向上法

    阪大阪大

     ・Er板調達 ・Er板調達原燃工原燃工

    ④集合体・炉心設計⑤安全解析⑥熱・遮蔽計算

    ④集合体・炉心設計⑤安全解析⑥熱・遮蔽計算

    NELNEL

    ③エルビアクレジットの妥当性評価

    ③エルビアクレジットの妥当性評価

    名大名大

    ⑦健全性評価⑧施設臨界安全評価⑨製造性確証試験

    ⑦健全性評価⑧施設臨界安全評価⑨製造性確証試験

    プログラム

    推進委員会

    プログラムプログラム

    推進委員会推進委員会

    図1 研究実施体制

    本稿では、このプロジェクトで実施中の各テーマについて、平成18年度の成果を中心として紹介

    する。

    2. KUCAを用いたエルビア燃料装荷炉模擬炉心の臨界実験

    核特性データの取得と評価コードの信頼性確認を実施する目的で、京都大学臨界集合体実験

    装置(KUCA)を用いたエルビア燃料装荷炉模擬炉心の臨界実験を実施している。平成 17 年度に

    少数のエルビア板を用いたサンプル反応度価値測定実験を実施し、実験手法および核特性評価

    手法の基本的な妥当性を確認したことをふまえ、平成 18 年度より、全炉心にエルビアを装荷した

    臨界実験を実施中である。

    実験には、図2に示す KUCA の固体減速架台(B 架台)が用いられており、エルビア模擬板,濃

    縮ウラン板,天然ウラン板,ポリエチレン板と組み合わせて炉内に装荷し,種々のウラン濃縮度、エ

    ルビア濃度、H/U235 比を模擬した熱中性子体系を構築して、臨界量、サンプル反応度等を測定

    する。実験に用いているエルビア模擬板(図3)は、厚さ 1.5mm の黒鉛板の一部に凹みを設け,そ

    の中に 0.3g のエルビアを焼き付けたものである。平成 18 年度には、ウラン濃縮度 5.4wt%,エルビ

    ア濃度 0.3%,H/U235 比約 280 の炉心(炉心名称:B6/8”P17EU-NU-EU-NU-Er(3):燃料体構

    成図を図4に示す)を構築し、臨界近接実験,サンプル反応度測定実験及び炉雑音法による即発

  • 炉物理の研究 第 59 号 (2007 年 4 月)

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    中性子減衰定数(α 値)測定実験を実施した。なお、全炉心に低濃度のエルビアを装荷した臨界

    実験は,本実験が世界で初めてのものである。平成 19 年度以降は、ウラン濃縮度、エルビア濃度、

    H/U235 比を系統的に変化させた臨界実験を実施し、エルビア装荷軽水炉模擬体系の核特性デ

    ータの取得を行う予定である。

    実験解析としては、MVP コードと JENDL-3.3 ライブラリを用いた臨界性(実効増倍率)解析の結

    果,計算値対実験値比(C/E 値)は 1.004±0.001 程度となり,過去の KUCA 臨界実験解析結果と

    比較した場合,エルビアの有無による C/E 値の傾向の違いは現段階では明確には認められない

    ことがわかった。今後は、解析モデルの精緻化を行うとともに、物質板組成のばらつきを考慮した

    実験解析精度の評価を実施する予定である。

    図2 KUCA 固体減速炉心 図3 エルビア模擬板

    6/8"P17EU-NU-EU-NU-Er 燃料体

    下部ポリエチレン反射体 上部ポリエチレン反射体

    P Block 483mm P Block 483mm

    註)EU:高濃縮ウラン、Th:トリウム、P;ポリエチレン、NU:天然ウラン:G+Erbia;エルビアコート付き黒鉛

    1/4"P

    1/16"EU

    NU

    1/8"P

    1/8"P

    Al B

    ase

    1/2"P

    ×2

    1/4"P

    NU

    1/8"P

    1/16"EU

    1/2"P

    ×3

    +1/8

    "P

    ×1

    0.1

    5m

    m G

    +Erb

    ia

    1/4"P

    1/16"EU

    NU

    1/4"P

    1/8"P

    1/16"EU

    NU

    0.1

    5m

    m G

    +Erb

    ia

    炉心領域 17 セル

    単位セル

    燃料体上部方向→

    単位セル

    図4 6/8”P17EU-NU-EU-NU-Er 燃料体構成図

    3. 核特性予測精度向上の為の一般化バイアス因子法

    新型炉を設計する場合、検討する炉心をモデル化して臨界実験を実施し、その核特性を把握す

    ることは重要である。バイアス因子法による実機核特性予測では、1つの臨界実験の結果と解析か

    らバイアス因子を決定している。しかし、1つの臨界実験で実機炉心を完全に模擬することは困難

    であり、通常、複数の臨界実験を実施し、その中から実機核特性の似通った臨界実験での結果を

  • 炉物理の研究 第 59 号 (2007 年 4 月)

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    用いることになる。一方、複数の臨界実験を取り扱うものとして、たとえば TSUNAMI コードでは、

    感度係数を用いて複数の実験と解析の相関を求め、どの臨界実験が、どの計算コード・データベ

    ースに適用できるかを指し示すようになっている。しかし、実機核特性の解析に対しては、具体的

    にどの実験を用いればよいのかは一般的には指し示されない。

    これらの背景をふまえ、実機核特性予測精度の向上を図ることを目的とし、複数の実験から実機

    に対する実効的なバイアス因子を与えるものとして、一般化バイアス因子(Generalized Bias

    Factor:GB 因子)を提唱した。

    今,N個の臨界実験を実施したとすると i 番目の臨界実験より得られたバイアス因子は

    cic

    eic

    i RRf = (1)

    となる。ここで,上付添え字の e,c は,それぞれ実験値,計算値を示す。GB 因子は従来の各々の

    バイアス因子の線形結合として表すことができる。

    ∑=

    =N

    iii fCf

    1

    ~ (2)

    下付添え字の r は実機炉心を表す。ここで, iC は i 番目の実験に対する重み係数である。従来法と同様に実機核特性は次式によって計算できる。

    fRR crcr

    ~~ ×= (3)

    次に,GB 因子法によって計算される実機核特性の不確かさについて検討する。実機核特性に

    は,断面積誤差( σΔ ),計算手法誤差( rcMΔ )に起因する不確かさが含まれている。

    )1( rcrrcr MSRR Δ+Δ+= σ (4)

    臨界集合体 i も同様に

    )1( iciiccic MSRR Δ+Δ+= σ (5)

    一方,臨界実験データ i には実験誤差( iEΔ )が含まれているので,

    ( )iiceic ERR Δ+= 1 (6)

    式(1)~(6)より次式を得る。

    ∑=

    ⎟⎟⎠

    ⎞⎜⎜⎝

    Δ+Δ+Δ+

    ×Δ+Δ+=N

    i ici

    iircrr

    cr MS

    ECMSRR

    1 11

    )1(~σ

    σ (7)

    ここで, σΔiS と icMΔ は小さいとすると,式(9)より,実機核特性の分散は次のように表すことがで

    きる。

  • 炉物理の研究 第 59 号 (2007 年 4 月)

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    ( )

    ( )⎥⎦

    ⎤Δ⋅Δ+

    ⎟⎠

    ⎞⎜⎝

    ⎛Δ−Δ+

    ⎢⎣

    ⎭⎬⎫

    ⎩⎨⎧

    −⎭⎬⎫

    ⎩⎨⎧

    −×=

    ∑∑

    ∑∑

    = =

    =

    ==

    N

    i

    N

    jjiji

    N

    iiirc

    tN

    iiirx

    N

    iiirr

    cr

    EEVCC

    MCMV

    SCSVSCSRRV

    1 1

    1

    11

    2~

    (8)

    ただし, xV は断面積共分散を表す。また,添え字 t は転置行列を意味する。 本研究の目的は,実機核特性予測精度を向上させることである。この為に式(8)で与えられる実機核特性の分散を最小化する。故に重み係数 iC は以下のようにして決定できる。

    ( ) 0/~

    =i

    rcr

    CdRRVd (9)

    また,実機核特性の不確かさ低減(UR)は次式で定義される。

    ( )( )rctrxr

    N

    i

    N

    jji

    N

    iiirc

    tx

    MVSVS

    EEVMCMVSVSUR

    Δ+

    Δ⋅Δ+⎟⎠

    ⎞⎜⎝

    ⎛Δ−Δ+ΔΔ

    −=∑∑∑= == 1 111 (10)

    tN

    iiirx

    N

    iiir

    tx SCSVSCSSVS ⎟

    ⎞⎜⎝

    ⎛−⎟

    ⎞⎜⎝

    ⎛−=ΔΔ ∑∑

    == 11

    (11)

    この GB 因子を用いると,実施された全ての臨界実験に対して自動的に重み係数が求まり,これま

    での定性的な知見を定量的に評価できるようになる。なお、GB 因子は、エルビア入り燃料を用い

    た炉心特性のみならず、燃料粉末等を取り扱う加工施設の臨界評価においても適用可能であり、

    この点で、全ての工程の臨界安全に適用されることが期待される。

    さらに、GB 因子法に断面積調整法の考えを取り入れ,より正確な計算値を得るための手法を考

    案した。考案した手法に基づくと,予測される実機炉心のサンプル反応度は,

    ( ){ } ( ) EGWGGWGgGWGGWG teeterreteetercr Δ−+ −− 1010 1 ρρρ ≒ (12) と示される。ここで

    0ρ は実機炉心のサンプル反応度の予測値, crρ は実機炉心のサンプル反応度

    計算値, rG はcrρ に対する感度係数, eG は実験体系の反応度に対する感度係数,W は断面積

    共分散, EΔ は実験誤差である。 eg は実験体系のバイアス因子 ce

    eef ρ

    ρ= により egf += 1 に

    て定義され, σΔ−Δ= ee GEg で与えられる。式(12)より,実機炉心のサンプル反応度は,

    ( ){ }eteetercr gGWGGWG 11 −+ρ により正確に計算できる。 次に、このようにして導出された GB 因子を用いる上で、基礎データとして必要となる、エルビウム

    反応断面積の共分散ファイルの作成を行った。現在利用することができる断面積ライブラリである

    JENDL や ENDF などには,断面積の誤差情報である共分散ファイルが格納されているが,エルビ

  • 炉物理の研究 第 59 号 (2007 年 4 月)

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    ウムは共分散ファイルが与えられていない。このため、エルビウムの捕獲反応(図5)で主要な寄与

    を示す質量数166と167の2核種を対象に、JENDL-3.3,JENDL-3.2,ENDF/B-IV,ENDF/B-IV

    revision8,JEF2.2,JEFF-3.0 のそれぞれに基づく群定数セットに内蔵されている反応断面積の差

    異を共分散ファイルにおける不確かさ設定の参考として、共分散ファイルの作成を行った。作成し

    た共分散ファイルは,KUCA で行われつつあるエルビア燃料装荷模擬炉心の実験解析を通じて

    更新を図っていく予定である。

    1.0E-4

    1.0E-3

    1.0E-2

    1.0E-1

    1.0E+0

    1.0E+1

    1.0E+2

    1.0E+3

    1.0E+4

    1.0E-3 1.0E-1 1.0E+1 1.0E+3 1.0E+5 1.0E+7energy [eV]

    cros

    s se

    ctio

    n [b

    ]

    Er170 captureEr168 captureEr167 captureEr166 captureEr164 captureEr162 capture

    図5 JENDL-3.3 に基づくエルビウムの捕獲断面積

    4. 燃料・炉心設計

    様々な炉心サイクル長における次世代エルビア入り高燃焼度燃料集合体(Er-SHB 燃料集合体)

    装荷炉心の解析を実施し,核設計パラメータの予備的評価を実施している。

    ここでは、まず、13.5,18.5,24.0EFPM のサイクル長において,様々なウラン濃縮度,可燃性毒

    物(エルビア,ガドリニア,BPR)の組み合わせで平衡炉心を作成し,臨界ボロン濃度や減速材温

    度係数などの観点から核設計パラメータのサーベイ検討を実施した。炉心特性の検討に際しては、

    17x17 燃料を用いた4ループ PWR 炉心(出力 118 万 kW)を選定し、燃料棒最高燃焼度制限値と

    しては,耐食性を向上させたジルカロイ新合金を被覆管として採用した場合を考慮して 80GWd/t

    とした。また,燃料集合体最高燃焼度制限値は,余裕を見込んで 70GWd/t と設定した。対象とし

    た燃料集合体の燃料組成を表1に示す。また、燃料集合体の無限増倍率の燃焼特性を図6に示

    す。

  • 炉物理の研究 第 59 号 (2007 年 4 月)

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    表1 燃料集合体の燃料組成一覧

    本数 235U濃縮度 Gd濃度

    (wt%) (wt%) (本) (wt%) (wt%)

    6.0%U-0.4%Er-SHB 燃料集合体 6.0 0.4

    6.0%U-0.7%Er-SHB 燃料集合体 6.0 0.7

    6.0%U-1.0%Er-SHB 燃料集合体 6.0 1.0

    5.8%U-0.4%Er-SHB 燃料集合体 5.8 0.4

    5.6%U-0.4%Er-SHB 燃料集合体 5.6 0.4

    16本10%Gd燃料棒入り6.0%U-0.4%Er-SHB 燃料集合体 6.0 0.4 16 4.4 10.0

    4.95%標準ウラン燃料集合体 4.95 ---

    24本10%Gd燃料棒入り4.95%ウラン燃料集合体 4.95 --- 24 3.35 10.0

    ---

    ---

    ---

    ---

    ---

    ---

    集合体名称235

    U濃縮度 エルビア濃度Gd入り燃料棒

    0.7

    0.8

    0.9

    1.0

    1.1

    1.2

    1.3

    1.4

    1.5

    0 10 20 30 40 50 60 70 80

    集合体燃焼度(GWd/t)

    無限

    増倍

    6.0%U-0.4%Er-SHB燃料集合体

    6.0%U-0.7%Er-SHB燃料集合体

    6.0%U-1.0%Er-SHB燃料集合体

    5.8%U-0.4%Er-SHB燃料集合体

    5.6%U-0.4%Er-SHB燃料集合体

    16本10%Gd燃料棒入り 6.0%U-0.4%Er-SHB燃料集合体

    6.0%U-0.4%Er-SHB燃料集合体+24本BP 

    4.95%標準ウラン燃料集合体

    24本10%Gd燃料棒入り 4.95%ウラン燃料集合体

    図6 燃料集合体無限増倍率の燃焼特性

    サーベイ計算の結果、いずれのサイクル長においても,Er-SHB燃料集合体を使用することにより,

    現行濃縮度制限内のウラン濃縮度 5.0wt%以下の燃料集合体を使用するよりも燃料取替体数を削

    減することができ,燃料成型加工費,燃料輸送費および放射性廃棄物削減の観点で有利であるこ

    とが示された。特に、13.5,18.5EFPM の炉心に関しては,エルビア濃度 0.4wt%の Er-SHB 燃料集

    合体 1 種類で炉心を構成することができることが示されており、エルビア濃度 1 種類の燃料集合体

    で炉心を構成できることは,燃料製造コストの点で優れていると考えられる。一方、24.0EFPM 炉心

    では,減速材温度係数を負にするために,燃料中の可燃性毒物の割合を増やす必要がある。この

    ため,Er-SHB 燃料棒とガドリニア入り燃料棒を組み合わせて使用,あるいは 2 種類のエルビア濃

  • 炉物理の研究 第 59 号 (2007 年 4 月)

    10

    度の Er-SHB 燃料集合体を使用するなどが考えられる。核特性的には両者に特に大きな差異はな

    く,最終的には燃料製造コスト等を含めた全体的な燃料サイクルコストにより採用燃料仕様を決め

    る必要があると考えられる。

    この知見を元に、Er-SHB 燃料を装荷したサイクル長 13.5EFPM、18.5EFPM、24.0EFPM の平

    衡炉心に対して,制御棒挿入により炉内出力分布がひずむ異常な過渡変化事象の解析を行ない,

    PCI 破損特性の評価を実施するとともに、濃縮度・エルビア濃度分布による耐 PCI 破損特性の改

    善効果を径方向分布と軸方向分布に分けて検討した。こうして得られた結果を基に,異なる運転

    サイクル長への移行に対応できる燃料集合体仕様を検討した。

    その結果、運転サイクル長 13.5EFPM では,濃縮度・エルビア濃度分布なしでも現行の PCI 破損

    しきい値に対する余裕は少ないものの,耐 PCI 破損特性に問題がないことがわかった。また,

    18.5EFPM および 24.0EFPM では EOC の炉心下部で PCI 評価結果が破損しきい値に対して厳し

    いこと、とくに,24.0EFPM では,PCI 評価結果が現行燃料の破損しきい値を逸脱する可能性があ

    ることがわかった。

    集合体内径方向の濃縮度およびエルビア濃度分布による集合体内燃料棒出力の平坦化の効果

    については、エルビア濃度分布はサイクル初期にしか改善が期待できないこと、濃縮度分布はサ

    イクルを通じて効果はあるが、24.0EFPM では PCI 評価結果が破損しきい値を満足するまでには

    至らないことがわかった。

    一方、軸方向の濃縮度分布については、図7に例示したように軸方向上下部の濃縮度を低下さ

    せることにより、特に運転サイクル長 18.5EFPM や 24.0EFPM の場合でも, PCI 評価結果が破損

    しきい値に対して厳しい炉心下部の EOC での反応度を低下させることにより,PCI 評価結果が破

    損しきい値を満足することがわかった。さらに、異なるサイクル長への移行を考慮しつつ,PCI 評価

    結果が破損しきい値を満足する燃料仕様の検討を行った結果,それぞれのサイクル長で1種類の

    燃料を共通に用いて,13.5EFPM および 24.0EFPM についてそれぞれ 1 種類の燃料集合体を追

    加することによって,合計 3 種類の燃料集合体仕様を用いることにより,PCI評価結果が破損しきい

    値を満足させることができ,異なるサイクル長への移行に対応可能であることがわかった。

    図7 軸方向濃縮度・エルビア濃度分布を設定した燃料棒の模式図(例)

    5. エルビアクレジットを考慮した燃焼度クレジットの評価

    PWRの使用済み燃料キャスクを想定して,燃焼が進んだ Er-SHB燃料において,エルビアクレジ

    上部3ノード

    濃縮度5.5wt%

    中央部18ノード

    濃縮度 5.9wt%

    下部3ノード

    濃縮度5.5wt%

    Er0 4wt%

  • 炉物理の研究 第 59 号 (2007 年 4 月)

    11

    ットによりウラン濃縮度 5wt%のウラン燃料と同等の臨界安全性を担保できるウラン濃縮度,エルビ

    ア濃度を解析評価し,燃焼も考慮した Er-SHB 燃料のエルビアクレジットについて検討した。

    まず、使用済燃料キャスクの燃料部の基本的な幾何形状となる燃料棒無限格子体系において,

    Er-SHB 燃料の臨界安全評価上,保守的となる解析条件(ボロン濃度,運転履歴,冷却期間,エル

    ビウム断面積の誤差の影響等)について AEGIS コードを用いて検討し,濃縮度 5wt%のウラン新

    燃料と同等の臨界安全性を担保できるウラン濃縮度,エルビア濃度の組み合わせを求めた。図8よ

    り,ウラン濃縮度 6.0wt%の Er-SHB 燃料において,4.95wt%濃縮のウラン新燃料以下の反応度を

    担保するためには,0.36wt%以上のエルビアの添加が必要であることがわかる。

    0.0

    0.1

    0.2

    0.3

    0.4

    0.5

    0.6

    5.4 5.6 5.8 6 6.2 6.4 6.6

    ウラン濃縮度 (wt%)

    エル

    ビア

    添加

    量 

    (wt%

    )

    図8 ウラン濃縮度とエルビア濃度の組み合わせ

    次に,燃料棒無限格子体系における検討結果をもとに,各ウラン濃縮度,エルビア濃度の組み

    合わせにおいて反応度的に最も保守的な燃焼度点の燃料組成を典型的な使用済燃料キャスク体

    系に適用した結果,燃料棒無限格子体系での検討結果が保守的な評価であることが確認できた。

    また、加工施設臨界評価として、単純形状に対する臨界評価を SCALE5 コードシステムの

    KENO V.a コードを使用して実施し、エルビア入り 5wt%超ウラン燃料の未臨界判定図の作成を行

    った。なお,計算体系の寸法は,エルビアが添加されていない濃縮度 5wt%のウラン燃料において,

    体系の反応度が最も高くなる条件で決めた寸法と同一とした。 その結果,体系が未臨界と判定で

    きるエルビア添加量は,非均質体系より均質体系の方が多く,均質体系の方が保守的であること、

    および、均質体系に関して,図9に示すように、球,無限円柱,無限平板のどの形状でも,体系が

    未臨界と判定できるエルビア添加量は極めて近い結果となっていることがわかった。すなわち、単

    純形状に対しては,均質体系(球,無限平板,無限円柱のどの形状でも適用可)の未臨界判定図

    を用いて未臨界を判定できることが考えられる。

  • 炉物理の研究 第 59 号 (2007 年 4 月)

    12

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    3.0

    3.5

    4.0

    4.5

    5.0

    5 10 15 20

    U235濃縮度 (wt%)

    エル

    ビア

    添加

    量 (

    wt%

    )

    球形状均質

    無限平板形状均質

    無限円柱形状均質

    図9 均質体系に対する 5wt%超エルビア入りウラン燃料の未臨界判定図

    6. 製造性確証試験

    原料ウラン粉末(天然組成 UO2)にエルビア粉末(99.99%純度 Er2O3)またはガドリニア(Gd2O3)

    粉末を機械的に混合し,エルビア添加量が 0,0.2,0.4,1,6wt%となるペレット及びガドリニア添加

    量が 0.2wt%となるペレットを製造し,外観観察、寸法密度,液浸密度、金相試験(気孔観察,結晶

    粒観察)、X線回折、SEM/EDSによるU,Erのマッピング、ICP-MSによる Er2O3含有量(重量

    割合)の定量分析を実施した。その結果を以下に挙げる。

    上記評価の結果,製造されたペレットに欠陥は観察されず,製造性に問題が生ずるようなこと

    は無かった。また,エルビア添加による燃料ペレットの焼結性に問題が発生することは無く,今

    回の濃度域でのエルビア入り燃料の焼結性は,既存のガドリニア入り燃料の場合と比較して

    大きな差異は生じないと判断される。

    X 線回折による格子定数の評価結果から,エルビア濃度の増加と共に格子定数の低下が確

    認され,文献との比較から,添加された Er(エルビウム)がペレット中にほぼ固溶していることが

    確認された。

    SEM/EDS 結果からは,Er の偏在は,低濃度エルビア試料(0.2,0.4,1wt%)のマッピングで

    は明確には確認されず,高濃度試料(6wt%)においては僅かであるが確認された。

    ICP-MSによる定量分析では,製作されたペレットを硝酸に溶解・希釈後,エルビア含有量

    を定量した。分析結果は,製造目標値とほぼ一致していることが示された。

    以上により,エルビア入り燃料のペレットを製作し,分析・評価した結果から,焼結性について既

    存のガドリニア入り燃料と大差なく,製造性に問題ないことが確認された。また,既存の分析手法の

    応用によるエルビア添加量の分析が可能であることが示されたことにより,エルビアの中性子吸収

    効果により未臨界性を担保すること(エルビアクレジット)を燃料製造工程中において確認できる見

    通しが得られた。

  • 炉物理の研究 第 59 号 (2007 年 4 月)

    13

    なお、以上述べた研究開発項目に加え、エルビア入り超高燃焼度燃料を実用化する上での基本

    情報として,工業原料としてのエルビア粉末の供給性について詳細な調査を実施している。

    7. おわりに

    本プロジェクトで提唱されたエルビアクレジット燃料は、世界中が躊躇している濃縮度 5wt%の

    障壁を乗り越えることを可能とする革新的かつ画期的なアイデアであり,当研究によって開発ある

    いは取得される様々な知見は,次世代燃料開発において幅広い応用発展性を持つものと考えて

    いる。今後も引き続きこの体制を維持し,適切に計画を見直しながら継続的に技術開発を遂行す

    ることによって,原子力の安定供給と経済性向上に貢献すべく、より効果的な研究開発を推進して

    行く所存である。これまでの関係各位からの御助言、御批判に感謝を申し上げるとともに、引き続き、

    忌憚の無い議論をお願いする次第である。

    【本研究開発に関連した外部発表】

    「エルビア入り次世代高燃焼度燃料の研究開発(1):全体計画」,山崎他,日本原子力学会

    春の年会:2006 年 3 月

    “Development of Erbia-bearing Super High Burnup Fuel”, Akio Yamamoto et.al.,

    International congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP’06):2006 年 6 月

    「エルビア入り次世代高燃焼度燃料の研究」,山崎他,日本原子力学会 第 11 回アクチニド

    の物性科学研究専門委員会:2006 年 7 月

    「PWR/BWR 炉心設計手法」,山崎他,日本原子力学会 核燃料部会 核燃料・夏季セミナ

    ー(第 21 回):2006 年 7 月

    「エルビア入り次世代高燃焼度燃料の研究開発(2):KUCA を用いた予備実験」,宇根崎他,

    日本原子力学会 秋の大会:2006 年 9 月

    「エルビア入り次世代高燃焼度燃料の研究開発(3):核設計パラメータサーベイ」,今村他,日

    本原子力学会 秋の大会:2006 年 9 月

    「エルビア入り次世代高燃焼度燃料に関する技術開発」,山本他,日本原子力学会「先端技

    術と原子力」研究専門委員会「名古屋大学若手研究者による原子力シンポジウム:2007 年 1

    「エルビア入り次世代高燃焼度燃料の研究開発(4):2006 年度成果概要」,山崎他,日本原子

    力学会 春の年会:2007 年 3 月

    「エルビア入り次世代高燃焼度燃料の研究開発(5):KUCA を用いた臨界実験」,宇根崎他,

    日本原子力学会 春の年会:2007 年 3 月

    「エルビア入り次世代高燃焼度燃料の研究開発(6):一般化バイアス因子(GB)法の改良」,竹

    田他,日本原子力学会 春の年会:2007 年 3 月

    「エルビア入り次世代高燃焼度燃料の研究開発(7):集合体核設計」,今村他,日本原子力学

  • 炉物理の研究 第 59 号 (2007 年 4 月)

    14

    会 春の年会:2007 年 3 月

    “Erbia-bearing Super High Burnup fuel: A Pathway for Breaking 5wt% Enrichment

    Barrier in LWR Fuel”, Akio Yamamoto et al., 15th International Conference on Nuclear

    Engineering (ICONE15) :2007 年 4 月

    “Current Status of Development of Erbia-bearing Super High Burnup Fuel”, Masatoshi

    Yamasaki et al., 2007 International congress on Advances in Nuclear Power Plants

    (ICAPP 2007) :2007 年 5 月

    “Current Status of R&D on Erbia-Bearing Super High-Burnup Fuel”, Hironobu Unesaki et al., AESJ-KNS joint session on Reactor Physics and Nuclear Data (2007

    Korean Nuclear Society meeting) :2007 年 5 月

  • 炉物理の研究 第 59 号 (2007 年 4 月)

    15

    (2)濃縮度 5wt%を越える軽水炉ウラン酸化物燃料の実用化に関す

    る技術開発 (H16 革新的技術開発補助事業)

    株式会社東芝 電力システム社 三橋 偉司 株式会社テプコシステムズ 小坂 進矢

    1.はじめに 軽水炉燃料の更なる高燃焼度化、増出力や長期サイクル運転を実現し、また、ウラン燃

    料を使用する次世代炉・革新炉を実現する技術革新を行い、資源の有効利用や経済性向上

    を図るには、現行の軽水炉燃料サイクルでは濃縮度が 5wt%未満であることを前提としており、燃料サイクル全般で「235U 濃縮度が 5wt%を超えるウラン燃料(以下、5wt%超燃料)の実用化」に向けた技術基盤を確立することが必要である。そこで、経産省 H16 革新的技術開発補助事業において、5wt%超燃料実用化のためのフィージビリティ・スタディ(以下、FS)を実施した。以下に、その成果の概要を紹介する。 2.研究成果について 本 FS では、表1に示す 6 項目について調査・検討を行った。先ず、FS 全般の検討で使

    用する 5wt%超燃料の燃料設計・炉心設計を行い、これを用いて 5wt%超燃料の経済性及び炉心成立性を確認した。 続いて、該当する各指針を参照し、5wt%超燃料導入の際の燃料サイクル各工程の課題を

    摘出した。現行の燃料サイクル施設は 5wt%未満の燃料を取り扱うことを前提に設計が行われており、5wt%超燃料導入に際しては何らかの設備設計および設備運用方法の変更が必要となる。この設備設計変更等を、保守性を保ちつつ合理的に実施するためには、安全評価

    手法の信頼性検証が必要となるが、5wt%超燃料の臨界実験データの現状について調査したところ、軽

    水炉の 5wt%超燃料体系を模擬した臨界実験データは濃縮度 5wt%以下の臨界実験データに比べて少なく、5wt%超燃料に対応した臨界実験データの整備が臨界計算コードの信頼性評価を行う上で重

    要であることを確認した。この調査結果に基づき、

    今後の臨界実験計画を立案した。 2.1 ターゲット燃料の設計および炉心成立性評価

    燃料設計対象の炉型は ABWR、取出平均燃焼度は 70GWd/t,運転サイクル期間は 24 ヶ月と設定した。ABWR は現有 BWR の中では炉心特性の面で自由度が大きく燃料の大幅な燃焼度増加にも適しており、濃縮度 5wt%を超える燃料が実用化される将来において、最も

    表1 FS における調査・検討項目 FS 調査・検討項目 1 5wt%超燃料の燃料設計 2 5wt%超燃料の経済的効果の評価 3 5wt%超燃料の環境負荷軽減効果の評価 4 燃料サイクル各工程における課題摘出 5 臨界実験データの現状調査 6 臨界実験計画の立案

  • 炉物理の研究 第 59 号 (2007 年 4 月)

    16

    適切な炉型と考えることができる。また、取出平均燃焼度は照射実績のある 70GWd/t を設定し、運転期間は現在通常運転として実施される運転期間の範囲でほぼ最長と考えられる

    24 ヶ月を設定している。燃料機械設計は現行の 9x9 燃料とし、核設計のみ変更を行い 5wt%超燃料を設計した。図1に 5wt%超燃料の燃料設計例、図2に現行燃料との無限増倍率推移の比較を示す。なお、5wt%超燃料装荷炉心の成立性に関しては、このターゲット燃料を装荷した平衡炉心を作成し、炉心特性に特に問題が生じないことを確認している。

    2.2 経済的効果および環境負荷低減の効果 5wt%超燃料の経済的優位性を確認するため現行 BWR 9x9 燃料との燃料経済性比較を行

    った。比較対象とした現行 9x9 燃料は、運転期間を現在国内 BWR の標準的な運転期間 14ヶ月(取出平均燃焼度 47GWd/t)とし、定期検査の期間は 5wt%超燃料、現行 9x9 燃料ともに 1 ヶ月とした。燃料経済性評価には OECD/NEA 推奨のデータ(1994)を使用し、標準耐用年間均質化コスト手法にて評価した。設備利用率、定検費、火力燃料費、原子燃料費及

    び総費用について 5wt%超燃料、現行 9x9 燃料のコスト比較した結果を表2、表3に纏める。 5wt%超燃料を使用した 24 ヶ月運転の方が燃料サイクルコストを大きく削減(約 38 億円

    /(年・プラント))できる。これは濃縮度を高めることでフロントエンド費用は高くなるもの

    の、発電電力量あたりの燃料体数削減によりバックエンド費用が減少し、また運転長期化に

    よる設備利用率向上により定期検査費、火力燃料費が大きく抑えられるためである。

    コスト削減の効果は火力

    燃料費、再処理費及び定検

    期間などの評価条件により

    大きく影響を受けるが、双

    方の定検期間がほぼ同等と

    した場合は、常に同様の大

    きなコスト削減効果がある

              22Gd燃料

    平均濃縮度 : 約6.1wt%

    3 : 燃料棒(濃縮度約3wt%)4 : 燃料棒(濃縮度約4wt%)5 : 燃料棒(濃縮度約5wt%)6 : 燃料棒(濃縮度約6wt%)8 : 燃料棒(濃縮度約8wt%)G : ガドリニア入り燃料棒(濃縮度約7wt%)V : 短尺燃料棒(濃縮度約6wt%)W : ウォータロッド

    3 4 5 6 6 6 5 4

    4 V G V G G V

    5 G 8 8 G 8 6 G

    6 G 8 G 8 G

    6 V G G V

    G

    G 8W

    G 8

    G5

    6

    6 8 G 8 8 5

    4 V

    6

    G V

    6

    G V

    3

    4

    5

    6

    6

    G 6

    4

    3 4 5

    G

    6

    G

    5 4 3

    W

    G

              22Gd燃料

    平均濃縮度 : 約6.1wt%

    3 : 燃料棒(濃縮度約3wt%)4 : 燃料棒(濃縮度約4wt%)5 : 燃料棒(濃縮度約5wt%)6 : 燃料棒(濃縮度約6wt%)8 : 燃料棒(濃縮度約8wt%)G : ガドリニア入り燃料棒(濃縮度約7wt%)V : 短尺燃料棒(濃縮度約6wt%)W : ウォータロッド

    3 4 5 6 6 6 5 4

    4 V G V G G V

    5 G 8 8 G 8 6 G

    6 G 8 G 8 G

    6 V G G V

    G

    G 8W

    G 8

    G5

    6

    6 8 G 8 8 5

    4 V

    6

    G V

    6

    G V

    3

    4

    5

    6

    6

    G 6

    4

    3 4 5

    G

    6

    G

    5 4 3

    W

    G

    3 4 5 6 6 6 5 4

    4 V G V G G V

    5 G 8 8 G 8 6 G

    6 G 8 G 8 G

    6 V G G V

    G

    G 8W

    G 8

    G5

    6

    6 8 G 8 8 5

    4 V

    6

    G V

    6

    G V

    3

    4

    5

    6

    6

    G 6

    4

    3 4 5

    G

    6

    G

    5 4 3

    W

    G

    3 4 5 6 6 6 5 4

    4 V G V G G V

    5 G G 8 G G 6 G

    6 G 8 G G G

    6 V G G V

    G

    G GW

    G 8

    G5

    6

    6 G G 8 8 5

    4 V

    6

    G V

    6

    G V

    3

    4

    5

    6

    6

    G 6

    4

    3 4 5

    G

    6

    G

    5 4 3

    W

    G

              27Gd燃料

    平均濃縮度 : 約6.1wt%

    3 : 燃料棒(濃縮度約3wt%)4 : 燃料棒(濃縮度約4wt%)5 : 燃料棒(濃縮度約5wt%)6 : 燃料棒(濃縮度約6wt%)8 : 燃料棒(濃縮度約8wt%)G : ガドリニア入り燃料棒(濃縮度約7wt%)V : 短尺燃料棒(濃縮度約6wt%)W : ウォータロッド

    3 4 5 6 6 6 5 4

    4 V G V G G V

    5 G G 8 G G 6 G

    6 G 8 G G G

    6 V G G V

    G

    G GW

    G 8

    G5

    6

    6 G G 8 8 5

    4 V

    6

    G V

    6

    G V

    3

    4

    5

    6

    6

    G 6

    4

    3 4 5

    G

    6

    G

    5 4 3

    W

    G

    3 4 5 6 6 6 5 4

    4 V G V G G V

    5 G G 8 G G 6 G

    6 G 8 G G G

    6 V G G V

    G

    G GW

    G 8

    G5

    6

    6 G G 8 8 5

    4 V

    6

    G V

    6

    G V

    3

    4

    5

    6

    6

    G 6

    4

    3 4 5

    G

    6

    G

    5 4 3

    W

    G

              27Gd燃料

    平均濃縮度 : 約6.1wt%

    3 : 燃料棒(濃縮度約3wt%)4 : 燃料棒(濃縮度約4wt%)5 : 燃料棒(濃縮度約5wt%)6 : 燃料棒(濃縮度約6wt%)8 : 燃料棒(濃縮度約8wt%)G : ガドリニア入り燃料棒(濃縮度約7wt%)V : 短尺燃料棒(濃縮度約6wt%)W : ウォータロッド

    図1 5wt%超燃料の設計例(運転期間 24 ヶ月運転、 平均取出燃焼度 70GWd/t)

    0.7

    0.8

    0.9

    1.0

    1.1

    1.2

    1.3

    1.4

    0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

    燃焼度(GWd/t)

    無限

    増倍

    率(-

    基準燃料

    濃縮度5wt%超燃料

    図2 無限増倍率の変化(履歴ボイド率 40%)

    表2 経済性評価結果 項目 単位 経済性評価(5wt%超 - 現行)

    設備利用率 % +4.8 定検費 億円/(年・プラント) -17.4

    火力燃料費 億円/(年・プラント) -22.6 原子燃料費 億円/(年・プラント) +2.3

    総費用 億円/(年・プラント) -37.6

  • 炉物理の研究 第 59 号 (2007 年 4 月)

    17

    ことを確認している。なお、

    2005 年度策定された原子力

    政策大綱のコスト試算で用い

    られた最新の燃料経済性評価

    データを用いて評価を行った

    場合、よりバックエンド費用

    を高く見積もることになるた

    め、燃料体数削減の効果がよ

    り顕著になると推測される。

    以上、高燃焼度化に伴う設

    備利用率向上により経済性は

    大きく改善することを確認し

    た。なお、現行燃料を用いた

    場合でも、現状の 14 ヶ月より運転期間を長くすることで設備利用率を向上させることはで

    きるが、1 バッチの燃料取替体数は増えることとなる。5wt%超燃料を用いた場合、燃料取替体数を大きく変更することなく設備利用率を向上させることが可能となる。

    使用済燃料の再処理から発生する高レベル放射性廃棄物は、ガラス固化等の処理の後、

    冷却のための中間貯蔵を経て深地層処分することが検討されているが、環境への負荷軽減

    及び、中間貯蔵・地層処分後における管理の負荷軽減という観点から、高レベル放射性廃

    棄物の発生量抑制が原子力発電の重要課題となっている。高レベル放射性廃棄物発生量抑

    制のためには発電電力量あたりの燃料体数を削減することが必要であり、これには燃料の

    高燃焼度化が必須となる。 この背景の下、5wt%超燃料により削減できる燃料体数を評価した。表4に炉心設計によ

    る燃料取替体数を纏める。この結果、14 ヶ月運転換算の燃料体数(=発電電力量あたりの燃料体数)は、5wt%超燃料を使用することにより約 3 割削減され、環境への負荷及び、中間貯蔵・地層処分後における高レベル放射性廃棄物管理の負荷軽減の観点から 5wt%超燃料の大きな優位性を確認した。なお、

    発電電力量あたりの燃料体数は取

    出平均燃焼度に依存し、本評価結果

    は取出平均燃焼度を現行燃料

    47GWd/t、5wt%超燃料 70GWd/tと設定した場合のものである。 2.3 燃料サイクル各工程における課題

    5wt%超燃料導入に伴い、燃料サイクル各工程において発生する課題を調査した。軽水炉の燃料サイクル工程を図3に示す。ここでは、燃料製造から、輸送、原子炉における使用、

    表3 原子燃料費評価内訳

    分類 項目 必要費用*1 の差 [円/kWh] (5wt%超燃料‐現行燃料)

    天然ウラン 0.019 転換 0.003 濃縮 0.060 成型加工 -0.023

    フロントエンド

    小計 0.059 使用済燃料輸送 -0.004 再処理 -0.053 高レベル廃棄物処分 -0.007

    バックエンド

    小計 -0.063 U クレジット -0.005 Pu クレジット 0.001 クレジット 小計 -0.004 合計 -0.008

    *1 現在価値換算とした場合の費用

    表4 燃料取替体数 現行9x9燃料炉心 5wt%超燃料炉心 運転期間 14 ヶ月 24 ヶ月 燃料取替体数 204 体 240 体 14 ヶ月換算の燃料体数 同上 140 体 バッチ数 4.3 3.6

  • 炉物理の研究 第 59 号 (2007 年 4 月)

    18

    貯蔵、及び再処理にわたって現行の許認可体系、関連規制等に照らし合わせ課題の摘出を

    行っている。各工程の調査結果は以降に纏めるが、5wt%超燃料導入における最も大きな課題は、5wt%超燃料を取り扱う燃料加工施設は安全審査指針において「特定ウラン加工施設」に指定され、許認可解析における臨界事故評価を義務付けられている点である。臨界事故

    評価に基づく安全対策を行う場合、設備の大幅な変更若しくは新たな燃料加工施設の建設

    が必要となり、高燃焼度化に伴う経済的優位性を損なう恐れがある。 これに関しては十分な事故の発生防止策・設備等の拡充により事故発生の可能性を無視

    できる程度まで低減するなどの、高燃焼度

    化の優位性を損なわない合理的な対応策の

    可能性を探っていく必要がある。なお、検

    討項目のうち、課題が大きいと考えられる

    燃料製造と再処理について、対応する指針

    への課題を表5、表6にまとめた。 ○燃料製造における課題 原料輸送から燃料輸送までに関する許認可体系、関連規制等の現状について整理し、5wt%

    超濃縮ウランに対する施設、設備の臨界管理、被ばく管理、廃棄物管理等の課題について

    検討した。各施設で適用される燃料の組成、性状に応じた質量、平板厚さ、円筒直径、減

    速度及び貯蔵施設の形状などについて、新たな核的、取扱制限値が必要となることを確認

    した。これらの制限値を設定するにあたり、これまで使用実績のある臨界計算コードと断

    面積ライブラリに関する信頼性検証が必須となる。特に、5wt%濃縮ウラン対応の既存設備に、中性子吸収材を用いて対策するケースが多いと考えられるため、中性子吸収材を取り

    入れた体系について評価手法の検証が必要となる。また、「特定のウラン加工指針」で要求

    されている臨界事故評価について、合理的な対応策の可能性を探っていく必要がある。 ○原子力発電所における燃料使用での課題 原子力発電所での 5wt%超燃料使用に関し、炉心及びプラントの安全性、運用の観点から

    技術的課題について検討した。安全審査指針の観点から炉心成立性、設備余裕を評価し、

    全ての項目において炉心成立性を確認し、各設備について現行設計から変更の必要が無い

    ことを示した。なお、現行の炉心解析手法は濃縮度 5wt%以下の燃料に対してその信頼性が確認されており、5wt%超燃料への適用に対してもその外挿性が期待できるが、より信頼性を向上させるためには 5wt%超燃料を対象とした検証が必須である。その検証項目としては、制御棒価値、ホウ素価値、反応度係数及び濃縮度やボイド率の集合体間ミスマッチ拡大に

    関する炉心燃料の核特性等が挙げられる。

    粉体/溶液/燃料棒/新燃料集合体 使用中/使用済

    燃料集合体使用済燃料集合体

    新燃料輸送使用済燃料

    輸送

    気体/粉体

    原料輸送

    粉体/溶液/燃料棒/新燃料集合体 使用中/使用済

    燃料集合体使用済燃料集合体

    新燃料輸送使用済燃料

    輸送粉体/溶液/燃料棒

    /新燃料集合体 使用中/使用済燃料集合体

    使用済燃料集合体

    新燃料輸送使用済燃料

    輸送

    気体/粉体

    原料輸送

    図3 軽水炉の燃料サイクル

  • 炉物理の研究 第 59 号 (2007 年 4 月)

    19

    ○輸送・貯蔵における課題 原子力発電所での燃料貯蔵及び使用済燃料の輸送・貯蔵に対する許認可法体系、関連規

    制等の現状について整理し、技術基準への適合性の観点から施設、設備の遮蔽性能、除熱

    性能及び臨界管理等の課題について検討した。5wt%超燃料の輸送・貯蔵では濃縮度上昇に対応した臨界安全設計が最も重要となる。ガドリニアを含む BWR 燃料に関しては使用済燃

    料の臨界安全性は Gd クレジットの採用が重要な課題であり、ガドリニアを含まない PWR

    燃料では新たな設備対応が必要となることが確認された。これらの合理的安全設計には

    5wt%超燃料および Gd クレジットに関する臨界安全評価手法の信頼性検証が重要となる。 ○再処理における課題

    再処理工程における許認可法体系、関連規制等の現状について整理し、技術基準への適

    合性の観点から各施設、設備の遮蔽性能、除熱性能及び臨界管理等の課題について検討し

    た。使用済燃料受入施設及び溶解槽では、採用している燃焼度クレジットの濃縮度範囲を

    5wt%から 10wt%までに拡大して使用することの適用性について検討が必要である。また、溶液系工程では施設の Pu 処理能力の観点から工程の運用方法について検討する必要があることが確認された。事故評価に関しては溶解槽における臨界事故評価を行う場合、全核

    分裂数を再検討する必要がある。これらの検討では、濃縮度が 5wt%を超える集合体体系、及び溶液体系における臨界安全評価手法の信頼性検証が重要となる。 2.4 臨界実験データの現状調査 国際臨界安全ベンチマーク評価プロジェクト(ICSBEP)臨界実験データのハンドブック 1)

    より、現時点での世界における 5wt%超濃縮ウラン体系の実験の現状を軽水減速の棒状燃料集合体体系、溶液体系及び非均質溶液体系の分類で調査した。溶液系の臨界データは整備

    が進められているものの、集合体体系については国内軽水炉燃料に対し、棒状燃料寸法・

    材質、格子ピッチ、水対ペレット体積比、集合体形状等のすべての条件を満足するものは

    存在せず、新規のデータ取得が必要であること、ガドリニア入り燃料については集合体体

    系、溶液体系共に殆どデータが存在しないことを確認した。 また、各国の代表的な臨界安全ハンドブックについて調査した。日本及び欧州のハンド

    ブックには、濃縮度 10wt%の均質系の臨界データは比較的記載が多いが、5wt%と 10wt%の間の濃縮度の臨界データや非均質系の UO2-H2O 系の臨界データは極端に少ないこと、中性子吸収体を含んだものは殆ど存在しないこと等を確認した。 1) "International Handbook of Evaluated Criticality Safety Benchmark Experiments," NEA/NSC/DOC(95)03, Nuclear Science Committee, Nuclear Energy Agency (2005)

  • 炉物理の

    研究 第

    59号

    (2007年

    4月

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    20

    表5 燃料製造(濃縮、再転換、成型加工)における濃縮度 5wt%超(10wt%)の安全設計への影響評価 影響を与える要因

    分 類 指針毎の安全設計 ( )内は、特定のウラン加工指針 濃縮度 放射能量 線量当量

    必要な対策

    指針 10.単一ユニットの臨界安全 ○ 制限値変更に伴う設備改造 (指針 10.単一ユニットの臨界安全) ○ 溶液系については、全濃度安全形状を基本 指針 11.複数ユニットの臨界安全 ○ 制限値変更に伴う設備改造

    臨界安全

    (指針 12.臨界事故に対する考慮) ○ 臨界警報装置の設置及び事故時の未臨界措置装置 指針4.閉じ込め機能 - 指針5.放射線遮蔽 ○ (影響は軽微)

    放射線 管理 指針6.放射線被ばく管理 ○ ○ (影響は軽微)

    指針7.放射性気体、液体廃棄物の放出管理 ○ (影響は軽微) 指針8.貯蔵に対する考慮 ○ 敷地境界線量に対する遮蔽対策の必要性は、施設に依存 指針9.放射線監視 ○ (影響は軽微) 環境安全(指針9.放射線監視) 放射線測定装置やモニタリングの追加 指針 13.地震に対する考慮 ○ (影響は軽微) 指針 14.地震以外の自然現象 - 指針 15.火災・爆発に対する考慮 - (指針 16.電源喪失に対する考慮) ○ 臨界警報設備の非常用電源系への接続

    臨界安全以外の安全設計 その他

    (指針 17.放射性物質の移動に対する考慮) ○ バッチ処理工程における核的制限値維持のための設備設計上の対策 指針3.事故時条件 ○ ○ (影響は軽微) (指針3.事故時条件) ○ ○ 臨界事故の考慮による事故評価、その結果によっては、遮蔽対策要 指針 18.事故時に対する考慮 - 事故評価 (指針 18.事故時に対する考慮)

    放射線計測器、放射線防護具等の確保、電源喪失時にも機能を失わない退避用の照明、単純/明確/永続性のある標識のついた安全退避通路

    表6 再処理における 5wt%超燃料の安全設計への影響評価 分 類 指針毎の安全設計 影響を与える要因 必要な対策

    指針 10.単一ユニットの臨界安全

    臨界安全 指針 11.複数ユニットの臨界安全

    濃縮度 ・採用している燃焼度クレジットの適用性を 10wt%まで検討し、必要があれば施設の改造又は新たな設備の建設が必要 ・ウラン量に対するプルトニウム生成量が多くなるため、工

    程対応または設備の追加の他、臨界安全設計の見直しが必要 ・燃焼度計測装置及び安全系インライン中性子モニタへの影

    響や適用性の検討が必要 指針 5.放射線遮蔽

    被ばく 指針 7.放射性廃棄物の放出管理

    放射能 (影響は軽微)

    化学的及び熱的

    制限値

    指針 4.閉じ込め機能 - - 臨界安全以外の安全設計

    発熱量 指針 8.貯蔵等に対する考慮 崩壊熱 (影響は軽微) 臨界事故 指針 12.臨界事故に対する考慮 濃縮度 ・総核分裂数等の事故規模の評価が必要

  • 炉物理の研究 第 59 号 (2007 年 4 月)

    21

    2.5 臨界実験計画 本 FS 及び次期技術開発が最終的に目指すところは我が国の軽水炉燃料サイクルでの

    5wt%超燃料の実用化であり、国内の臨界実験施設での実験が重要である。溶液系は日本原子力研究開発機構 STACY による 6wt%及び 10wt%燃料の実験データを活用するが、燃料棒と燃料集合体の臨界実験は軽水減速で棒状燃料を使用する東芝 NCA または日本原子力研究開発機構 TCA が候補となる。NCA は濃縮度 5wt%未満の燃料に対する BWR 炉心燃料の開発や燃料サイクル施設の臨界安全設計、研究開発及び測定機器システム開発に貢献し、

    また、ガドリニアを含む燃料集合体の臨界実験を実施してきた実績がある。TCA での実験は ICSBEP にて評価され、国際的に信頼度の高いデータを提供した。これら国内の実験施設に対しては、今後、実験技術リソースの確保・継承を行い、国際的に信頼度の高いデー

    タを取得するニーズがある。 2.3 に示した燃料サイクル全般にわたる調査から、5wt%超燃料導入に係る課題を基に臨

    界安全性および燃料核特性の観点から燃料集合体体系及び溶液体系における臨界実験を下

    記のように立案した。 ○燃料集合体体系 燃料棒および集合体体系における臨界実験は 5wt%超燃料の臨界安全性および炉心燃料

    の核特性の観点から立案した。臨界安全性および炉心燃料の核特性に関する実験計画を図

    4に示す。実験では濃縮度 5wt%未満から 10wt%程度までの一貫したデータを燃料棒ピッ

    図4 燃料集合体体系の臨界実験計画(臨界安全性、炉心燃料の核特性)

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    Gd 棒

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    テストバンドル

    ドライババンドル

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    テストバンドル

    ドライババンドル

    臨界安全性に関する臨界実験・赤の濃縮度を変え、中性子吸収材の有無、燃料棒ピッチ、減速材密度、Gdの濃度およびGd棒の位置をパラメータとして試験・黄の濃縮度は固定・ガドリニア、エルビアの反応度価値

    BWR炉心燃料の核特性に関する臨界実験 

    (濃縮度均一体系) (濃縮度不均一体系)

    課題:制御棒価値、ホウ酸の吸収効果、反応度係数、濃縮度やボイド率の集合体間ミスマッチの拡大 、ガドリニア、エルビアの反応度価値

    PWR炉心燃料の核特性に関する臨界実験

    課題:制御棒価値、ホウ酸の吸収効果、反応度係数、濃縮度やボンド率の集合体間ミスマッチの拡大、

    ガドリニア、エルビアの反応度価値

    新規に導入する燃料棒の濃縮度は5wt%以上で3種類、総本数は400本程度

  • 炉物理の研究 第 59 号 (2007 年 4 月)

    22

    チ、減速材密度及び燃料棒配列数をパラメータとして、濃縮度依存の臨界量とそれらに関

    する詳細データを取得する。また、ガドリニア反応度の基礎データ及びそれらの濃縮度依

    存性に関する実験も実施する。炉心燃料の核特性に関するものとしては、濃縮度ミスマッ

    チ、ガドリニア棒反応度、濃縮度依存の吸収体反応度データ取得のための実験を実施する。 ○溶液体系

    現在までに濃縮度 6wt%および 10wt%のウラン溶液を用いた STACY 臨界実験が実施されており、今後の実験計画として、これらを補間する濃縮度について実験データを取得す

    ることが提案された。また、Gd クレジット及び FP クレジット導入の観点から、主要な核分裂生成物(FP)模擬物質あるいはガドリニウムをウラン溶液に添加した臨界データを取得する。 2.6 感度解析による試験体系の実体系に対する模擬性の検討 本 FS では、特定の実体系を想定するのではなく、広い範囲に対応できる可能性を示すた

    めに感度解析・不確かさ解析の手法を適用し、臨界実験の組み立て方とターゲット燃料へ

    の核的模擬性を定量化して、技術的に有効な基準臨界実験の可能性と模擬性を検討した。 ○既存臨界実験データの模擬性の検討 高燃焼度燃料のために有効な試験データを把

    握するため、235U 濃縮度範囲が 5~10wt%の既存データを ICSBEP から摘出した(固体タイプ:49 ベンチマーク、溶液タイプ:73 ベンチマーク)。これら既存の 122 ベンチマーク体系の断面積感度係数は米国オークリッジ国立研究所

    でデータベース化されており、本検討で想定し

    た 3 種類のターゲット実体系 5~10wt%の範囲から 3 つの体系(平均約 4.6wt%、6.5wt%と 8.0wt%のウラン濃縮度を持つ燃料)の断面積感度係数計算結果および断面積データの不確かさとを組合せ、ベンチマーク体系のターゲ

    ット実体系に対する模擬性を示す相関係数 Ck 等 2),3)を評価し、模擬性の評価を行った。その結果を図 5 に示すが、適合性の定量評価目安である Ck 値が 0.9 以上で対象を満たすベンチマーク実験データは数個程度であり、今後の高燃焼度燃料の手法検証に適用できる既存 2)B. L. Broadhead, B. T. Rearden, C. M. Hopper, J. J. Wagschal, and C. V. Parks,

    “Sensitivity- and Uncertainty-Based Criticality Safety Validation Techniques,” Nucl. Sci. Eng. 146, 340-366 (2004)

    3)B. T. Rearden, “Perturbation Eigenvalue Sensitivity Analysis with Monte Carlo Techniques,” Nucl. Sci. Eng., 146, 367-382 (2004)

    図5 ベンチマーク臨界実験のターゲッ

    ト燃料に対する Ck 値評価結果

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    のベンチマーク実験は不足していることが分った。 また、現在、米国 NERI プログラム Project 2001-0124 の中で Framatome、ANP、AREVA

    と Siemens、サンディア国立研究所(SNL),オークリッジ国立研究所(ORNL)およびフロリダ大学(UF)が連携し、約 7wt%濃縮ウランで構成している PWR 用模擬試験体系の実験を行っているが、この PWR 用模擬試験体系の実験の Ck は 0.85 であり、BWR 用に試験体系を最適化すること、ガドリニア等バーナブルポイズン試験体の導入などで、臨界性に関す

    る模擬性指標を改善できる余地があることが分った。 ○新たな NCA 臨界実験体系の立案と模擬性評価

    NCA 体系を想定して、新規・既存濃縮度燃料棒との組合せにより広い範囲の実験体系が構成できることを検討した。ウラン濃縮度 10wt%程度の燃料棒を 200~400 本程度、新たに製作し、図4に示した 2 または 4 体の模擬燃料を配置した場合の実験計画案例である。Ck 値は 0.9 程度以上となり、高燃焼度燃料の主要実効断面積を反映した臨界予測手法の高精度化のために、基盤的臨界実験が有効に実施できること、BWR 運転状態模擬のためには減速材密度をパラメータとした臨界実験が可能であることが分った。データベースを国際

    視点で協力・拡充する上で、SNL 臨界試験計画と新しい NCA 臨界実験を相互に補完して、手法検証用に信頼性の高いデータベースとなることが分った。 3.5wt%超燃料による大幅高燃焼度燃料実用化への道筋

    5wt%超燃料の実用化に向けた技術開発計画(ロードマップ)を表7の通り作成した。本 FS終了後、燃料溶液体系に関しては日本原子力研究開発機構による 6wt%および 10wt%燃料の STACY 臨界実験データを活用して解析評価を進め、また、5wt%超燃料の燃料棒・燃料集合体体系の臨界安全性および原子炉プラント炉心燃料体系における核特性に関する試験

    では、米国 NERI 研究で実施されている 7wt%燃料棒による臨界試験研究の動向を調査、連携を検討しつつ、燃料棒を新たに製作し、国内施設において臨界試験を実施する。また、

    並行して、70GWd/t の高燃焼度化を図る燃料ハードの課題を解決する試験研究を別途、行い、燃料サイクル施設の許認可変更、施設の改造または新設を行って、現有軽水炉・次期

    炉での 5wt%超燃料の導入がなされる。革新型将来炉では革新型将来炉の研究開発の結果も受けて、5wt%超燃料が導入される。

    5wt%超燃料の導入後は、現有軽水炉・次期炉および革新型将来炉における核特性や燃料ハードに関する試験を行い、燃料サイクル各施設の技術にフィードバックを行い、5wt%超燃料の実用を確実なものとし、実用化が完結する。

    なお、表7の④に示した燃料ハードの実験・評価については、「最新核燃料工学」4)によ

    れば、濃縮度 5wt%制限内で達成可能な燃焼度は BWR、PWR ともに集合体燃焼度約65GWd/t で、これまでの燃料使用経験から燃料健全性は 70GWd/t 程度までは現在の実績 4)最新核燃料工学―高度化の現状と展望―,「高度燃料技術」研究専門委員会,(社)日本原子力学会,2001年6月

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    を延長し得るものとしている。更に、5wt%を超えた高燃焼度化を確実に進める上では、表8に示す研究・開発項目が重要であるとしているが、それぞれの項目に対して必要となる

    試験・評価も合せて、表8に示した。 4.まとめ

    本 FS では 5wt%超燃料の実用化に向けた技術基盤確立のため、燃料の製造、使用、輸送、貯蔵及び再処理の燃料サイクル全体での課題を調査し、必要対応策を示した。また、これ

    らの調査に基づき、5wt%超燃料実用化に向けて最も重要な臨界および炉心燃料の核特性に係る安全性に着目した臨界実験を中心とした技術開発計画を策定した。 今後は本 FS 成果に基づき、臨界実験、解析コードの精度検証作業を進める予定である。

    溶液系に関しては既に取得されている 5wt%超燃料の解析評価を進めると共に、追加すべき実験計画の検討を行い、集合体体系に関しては臨界安全性、及び核特性に関する実験の準

    備を進め、実施を図る予定である。 本研究開発は経済産業省「平成 16 年度革新的実用原子力技術開発費補助事業」の一環と

    して行われたものであり、株式会社テプコシステムズ、株式会社東芝、京都大学原子炉実

    験所、武蔵工業大学原子力研究所、日本原子力研究所(現、日本原子力研究開発機構)、及び株式会社グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパンの共同研究として実施した。

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    表7 5wt%超燃料の実用化に向けた技術開発計画(ロードマップ) 年度 H16以前 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 以降

    ①5wt%超溶液系臨界実験データの取得 (日本原子力研究開発機構 STACY)

    ②本 FS「濃縮度 5wt%を超える軽水炉用ウラン酸化物燃料の実用化に関する技術開発」

    ③次期技術開発 ・5wt%超溶液系臨界実験データの解析評価 ・5wt%超燃料棒・燃料集合体体系の臨界実験

    ④現行軽水炉及び次世代炉における高燃焼度化に

    対する燃料ハードの実験・評価(表8)

    ⑤革新型将来炉の研究開発

    燃料サイクル施設 許認可変更、施設の改造または新設▲

    現有軽水炉・次期炉 革新型将来炉

    実用▲ 実用▲

    表8 5wt%超燃料実用化における高燃焼度化に対する燃料ハードの課題と試験

    課題 試験・評価

    被覆管水側腐食(酸化、水素化)に対応する改良合金の開発

    数年間の炉外開発と改良材の照射による実証試験

    FP ガス放出機構の評価と、抑制のためのペレット組織改良

    数年間の照射済み燃料照射後試験による評価と改良ペレットの照射による実証試験

    ペレット熱伝導率低下、リム組織、ボンディングの評価

    数年間の照射済み燃料の照射後試験による評価

    過渡時燃料健全性の評価、事故時挙動の評価

    現行の高い燃焼度燃料ならびに段階的に燃焼度が進んだ上記の照射済燃料を用いた試験炉での試験

    核特性・ハードの試験

    燃料サイクル各施設に技術的フィードバックを行い、実用化完了

    核特性・ハードの試験