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災害研究所 所長
阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター友の会副会長
大規模災害対策研究機構企画委員
伊永 勉
福岡県 特色ある自主防災組織育成強化事業
~地域防災力を高めるには~
福岡県断層帯の概略位置図
福岡県活断層の長期評価
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断層帯の名称 小倉東断層帯 福智山断層帯
平均活動間隔 約8,500年 約25,000年
最新活動時期 約2,200年前 約11,000年前から数千年遡る期間
断層帯の長さ 約17㎞ 約20㎞
活動の規模 M=6.9 M=7.0
30年以内の発生確率 0.005% 0.6%
福岡県 地震に関する防災アセスメント調査報告書 平成24年3月より
海溝型地震の心配 長周期地震
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• 直下型活断層地震と違い、振幅の長い揺れ
• 低層階の建物よりも高層ビルが危険
●揺れが長く続く 時には3分以上揺れが続く
地震が終わっても建物が共振 家具の転倒や移動 仕上げ材(壁等)の崩壊 ●大きく変形する Mg7クラスでは、 50階建ての建物の最上階での加速
度は最大300gal程度、左右2m以上の揺れ幅になる
1時間に50㎜や100㎜を超す集中豪雨が頻発
5
0
100
200
300
500
400
10
0
5
(回/年)
(回/年)
53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
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1時間降水量 50 ㎜以上の降水の発生回数
1時間降水量 100 ㎜以上の降水の発生回数
1時間降水量の年間延べ件数(全国のアメダス地点 約1,300箇所より)
H
H
S
S
平均 2.5 回 平均 1.9 回
S53~62
平均 206 回
S53~62
平均 4.8 回
H10~19
H10~19
平均 233回
S63~H9
S63~H9
平均 318 回
雨の量
6
6畳間 10ミリの雨
…ペットボトル60本 (約10㎡)
50ミリの雨 …ドラム缶 2本半
80ミリの雨 …浴槽2杯強
災害対策とは・・・
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• 自治体の防災体制の強化と広域連携 住民参加型の推進、防災訓練の強化、広域連携の拡大、その他公的機関の防災力向上
• 地域共助の強化 自主防災・企業・医療福祉等のネットワーク
• 地域の潜在力の結集 企業・事業所等の潜在力を活かせる行動
• 自主防災組織の強化 コミュニティーへの参加強化、人材の育成
災害に先手を打つ備え 災害を迎え撃つ力
• ハード対策の先行 耐震補強、液状化防止工事、堤防補強、避難所確保、避難路拡幅、防災行政無権完備、その他、被害軽減対策
• 防災知識の普及 想定災害の理解、地地域のハザードの把握、避難路・場所の把握、その他災害の知見
• 自助の強化 家庭の備蓄、家族の連絡簿、非常持ち出し、家具の固定、浸水予防、その他家庭でできること
自助と共助が命を救う • 被災者は住民だけではない!
• 大規模な災害は、行政も、消防も被災者になる!
• 全国からの救助の開始には時間が必要!
阪神・淡路大震災の西宮市では、4日目朝の職員の出勤率が41%
自 助
共 助
発災直後の人命救助(阪神淡路大震災の事例)
自力で, 34.9
通行人に,2.6
その他, 0.9
救助隊に,1.7
家族に, 31.9
友人、隣人に, 28.1
10万9千人 (67%)
3千2百人 (2%)
5万9百人 (31%)
阪神大震災で閉じ込められた人:16万4千人
【生存率】 1日目:80% 2日目:25% 4日目: 5%
出典:(社)日本火災学会
市民レベルの 「先手を打つ備え」と「迎え撃つ力」
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自助の備え
●自宅の耐震補強と家具の固定
●水や食糧の備蓄
●非常持ち出し袋を作る
●家族の連絡先を決めておく
●避難路・避難所を知っておく
●外出の避難場所を決めておく
●浸水に備えた家具を配置
●ハザードマップを知っておく
共助の実践 ★ひと・労力の提供 ★もの・資機材・車 ★場所・施設 ★知恵・技術 ★お金 地域の潜在能力の活用
自主防災組織 共助の効果を発揮するのが、自主防災活動
自主防災活動とは全住民が参加できる災害ボランティア
労力 (時間)
被災者への個人ケア、避難所の作業、地域の作業、清掃、ガレキ撤去・搬送、物資等の運搬・配布、炊き出し等人的労力
金 義援金、救援金、善意銀行、支援金、見舞金などの募金活動と募金協力
物資 救援物資提供、救援・復旧用資機材の提供 場所 一時避難場所、ボランティア休息所、物資倉庫、駐車場など 知恵 専門知識、資機材の使い方など、ノウハウ 情報 アマチュア無線、インターネットを利用した掲示板、画像など、必
要な情報
• 地域での共助は、地域住民だけでなく、地域にある企業やお店など地域全
体で助け合うことで一層大きな力となります。 • 地域の中で、避難や救助支援に役立つ場所、資機材・車両等がある場所、
救助などの人手を提供してもらえる場所、要援護者等の一時休息できる施
設等、地域の中に潜在する能力(スキル)を活用することが重要です。
自主防災活動と潜在能力
自主防災活動のポイント
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★役割は「だれがする」より「なにをする」が大切! ★共助の効果を発揮するのが自主防災活動 ★地域に潜在する全てのチカラを活かせること
担当者がいない場合を考え、作業手順をみんなが知っておくことが先決
★「浸水している」、「地鳴りがする」など 近隣の出来事を通報する
★近所に避難を呼びかける・・・みんなが情報提供者になる
★地域のリーダーは大げさに、 率先して避難する姿を住民に見せる
全員攻撃・全員守備・全員センサー! そして、率先行動!
★全国の支援を受け入れるチカラ! ★自分たちで何ができるのか、 何を支援してほしいのか!
受援力
地域の連携
★実効性を持たせる人材の登用 ★地域内事業所・団体との連携 ★災害時要援護者支援対策
⇒地域で経験と人脈が豊かな人 ⇒企業、自衛消防組織の協力 ⇒介護福祉施設、医療機関の協力
ポイント1
ポイント2
ポイント3 日常のコミュニティーの潜在力を活かした自主防災組織が育っていないと、支援も効率の
悪い無駄な活動となってしまう
ポイント4
• 防災知識の広報・啓発 ⇒地域防災・家庭内の安全対策
• 地域の災害危険の把握 ⇒防災マップ・ハザードマップつくり
要援護者の把握
• 防災訓練 ⇒避難誘導訓練・避難所運営訓練、
情報伝達訓練
お祭りは防災訓練そのもの • 本部テント設営 ⇒避難所テントの設置
• 倉庫から備品の搬出 ⇒物資運搬保管
• 夜のお祭り ⇒発電機の使い方
• 焼きそばなど屋台 ⇒炊き出し
地域住民が楽しむお祭りは、
地域の安全を守る訓練に直結!
平常時の防災活動
出典:東京商工会議所文京支部
必ずやる
対策
できれば
やる対策
自主防災活動とボランティアは、 初めから、全部やろうとせず
出来ることの優先順位をつけよう
水害時の避難
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どこに避難する?(洪水・津波)
歩いて避難するとき 歩行速度の目安
浸水深が60cm以上になると避難は困難 • 東海豪雨水害(2000年9月)では、ひざの高さより上 (約50cm)の浸水深で救助が必要だった。 • 伊勢湾台風(1959年)では、大人男性が70cm、女性 が50cmの深さ間でなら歩けた。
参考:東海豪雨水害時にゴムボードなどで救助された避難したときの浸水深
浸水深 浸水なし くるぶし ひざ 腰 胸 合計
人数 0 0 2 10 22 34
出典:内閣府 大規模水害対策に関する専門調査会
自主防災の避難誘導
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(注意) 指導誘導法では、避難者の中から勝手に避難出口に走る人が出るなど、即時的な誘導者になり、出口に殺到する無秩序な避難行動によって、二次災害を招く危険がある。
①指導誘導法
誘導者は「出口はあちらです。あわてずに逃げてください。」と
大声で叫び、出口の方向を全身で示し、誘導者自身も出口に
移動する。
②吸着誘導法
誘導者は、「自分についてきてください。」と声をかけ、誘導者が
避難者を先導する。
阪神・淡路大震災で、自然に生まれた地域連携
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西宮市のT町会240世帯の場合 • 地震発生から30分後に町内の安否を確認 • けが人を自動車に分乗して大阪に輸送 • 避難する人としない人の分別 • 避難所への集団避難のために下見 • 町内で残っている食料を集める • 避難しない人で自警団結成
自主防災組織の先進事例
泉区市名坂東町内会 避難生活が新たな交流を生む 集会所が避難所機能を発揮 127 世帯の新興住宅地で、役員全員が女性の町内会 他県から移住者や1978年の宮城県沖地震を知らない人 が多いから、備蓄米を集会所にストックするなど、防災活 動に熱心だった。集会所オール電化にしたので、地震3 日 後に電気が復旧して、炊き出しが可能となった。 3 月11 日の地震で、2 キロ離れた小学校に向かうのは困難な子供連れや高齢者を集会所に約100人を受け入れる。 町内会に入っていないマンションの住民も受け入れ。 震災で新たな交流が生まれ、近所付き合いのなかった大学生が、子供たちの遊び相手や勉強を教えたり、乳児を抱えるお母さんの手伝いをしていた。人と人がつながり、支えあうことで、住民のほとんどが経験したことのない困難に立ち向かうことができた。 今後の備えとして停電に備えた発電機の設置を考えている。
東日本大震災 仙台市の自主防災活動
宮城野区西原町内会 津波被害地域の自主防災 小学校屋上に避難した住民の一夜 世帯数280 世帯の町内会。津波により多くの人と建物がなくなった。 地震後、役員が手分けして町内の避難誘導している時に、携帯ラジオで津波の情報を知ったので、まず一人暮らしの人たちを中野小学校に避難させた。 役員の一人がその活動中に津波に巻き込まれ犠牲になった。 雪が降っている中野小学校の屋上に550 名が避難したが、発生した火災が瓦礫に延焼して中野小学校の500 mまでに迫り、学校の防災行政無線で、消防局にヘリコプターの出場の要請を校長先生にお願いした。 暗闇の中、消防ヘリコプターが空中消火し鎮火時、学校屋上の避難者から歓喜と安堵の声があがった。自衛隊のヘリコプターが、けが人や体調の悪い人を搬送した。 ヘリコプターでの搬送の優先順番は年齢や健康状態を基に、町内会役員と避難住民とが話し合って決定した。 翌日、学校から1km近くまでの道が通れるようになり、午後から小学校の高学年や高齢者以外の人たちが市営バスで避難した。
東日本大震災 仙台市の自主防災活動
太白区鈎取ニュータウン町内会 強力なリーダーシップ 黄色いハンカチで安否確認日頃の備えが功を奏す。 地震発生後35 分で全129 世帯約400 人の安否の確認ができた。 地震発生後、全世帯の80%の世帯が「黄色いハンカチ」を玄関先に掲げ、家族全員が無事であることを知らせた。残り20%の世帯は町内会役員が回って町内会の全員にけが人等がないことを確認した。 1978年の宮城県沖地震の教訓から、災害時に死傷者・火災・建物倒壊を出さないことを目標にした、「出さない君運動」を展開。 避難所生活を想定して、町内会集会所に発電機、ストーブ、飲み水、プロパンガスボンベ等を備えていた。 3 月11 日の夜は、お年寄りや幼児をもつ母親ら83 人が集会所に避難。投光機
の灯りと石油ストーブの暖かさは避難者を安心させ、備蓄の飲料水と米、住民が持ち寄った食材でおにぎりと豚汁の炊き出しができた。避難所に来れない在宅被災者にはおにぎりの宅配を行った。
東日本大震災 仙台市の自主防災活動
東六番丁民生委員児童委員協議会 町内会や婦人防火クラブとともに 地域の避難所が帰宅困難者の避難所になった 民児協は所属22 名で、社会福祉協議会、日赤奉仕団の三位一体の組織。 震災当日、市の指定避難所は小学校ですが、民児協は小学校とコミュニティセンター、常盤木学園で、避難所運営を行い、発災当日から避難所閉鎖の25 日までの14日間、午前10 時から午前0時まで交代制で活動した。 地震発生当日、小学校は、体育館・教室・廊下を開放し、旅行者の帰宅困難者など1,800 人を受け入れ、多くの地区住民はコミュニティセンターへ誘導した。 また、75 歳以上の方や障がい者の安否確認を行い、避難所でケア、支援物資の管理、清掃ゴミ処理、体調不良者の観察等を行った。
東日本大震災 仙台市の自主防災活動
宮城野区福住町内会 相互応援協定が命をつないだ 地震発生後4日目に救援物資が届く 毎年、独自の防災訓練を実施し、高齢者世帯に家具の転倒防止金具を取付け、雨水を溜める天水桶、発電機、プロパンガス、暖房器具、食糧、飲料水等を備蓄するなど、行政に頼らない“自立”した防災活動に取組んできた。 地震発生日の夜、100 名近い住民が集会所に集まってきた。電気・水道・ガスは使えないが、飲料水・食料・発電機など備えは万端。 訓練通りに、食糧と暖があれば3 日間は持ちこたえる自信があった。 地震から4 日後、新潟県の小千谷市と尾花沢市等から、米・飲料水・野菜等
の支援物資が届き、備蓄食糧や持ち寄った食糧が少なくなったときだったので、本当に助かった。 防災相互応援協定を締結していた県外の町内会から支援を受け、命をつなぐことができましたが、これも、毎年協定締結先の町内会に出向き、雪おろしの手伝いをなど、日頃からの交流、顔の見える関係づくりが功を奏したものと考えている。
東日本大震災 仙台市の自主防災活動
太白区茂庭台五丁目町内会 中学生も高校生も地域の防災担当 中学生が壁新聞で情報を提供 町内会は、5年に「即効性のある備え」をキーワードに、発電機、投光器や無線機等を備えてきた。中学校での避難所生活で、投光器・パソコン・喘息の治療のための吸引器等に電気を供給できた。 備蓄していた無線機は、2か所の避難所間の連絡や被害状況の把握に威力を発揮した。 住民に各家庭にある食料を持ち寄ることや、不要になった木材、裏山のかんばつ材を使って炊き出しを行った。 中学生や高校生も大きな役割を担った。トイレに使う水を プールから汲んだり、安否情報のポスターを掲示したり、 在宅避難者に非常食、飲料水や水を宅配したりした。 また、中学生は避難所に壁新聞を掲示して、 地域外の情報を提供してくれた。
東日本大震災 仙台市の自主防災活動
富山県高岡市古中中町自主防災会(150 世帯) 南北に長い自治会であり、資機材の備蓄倉庫の配置を工夫した。 初期消火及び応急手当用等の特に緊急を要する資機材は、毎年交代する班長の防災意識を高める意味も含め、各班長宅に小規模倉庫に分散配置した。 1.自治会公民館倉庫 テント、脚立、チェーンソー、バールなどの資機材を収納。 副会長が、3 ヶ月に1 度資機材を点検。 2.小規模倉庫 初期消火用資機材、救急箱等は12 班の班長宅に分散配置。 各班長が、毎月点検し、救急箱の消耗品の補充などを行う。 小規模倉庫は、高さ90cm、幅65cm、奥行50cmで、 班長宅の軒先に設置。班長は1年交替で、交替の度に 新班長宅へ移設する。
小規模防災倉庫を各班長宅に分散配置
地図に描かれている資機材や施設
などの内容
地元企業と連携した防災マップ 大阪市生野区中川連合
出典:読売新聞 平成20年6月7日
民間施設を避難所に提供 尼崎市東園田町会
日頃の訓練と学習が犠牲者ゼロを生んだ 岩手県釜石市の防災教育
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・釜石市教育委員会は平成17年から防災教育に取り組み、子供 たちにも登下校時の避難計画も立てさせた。 ・津波の脅威を学ぶ授業も年間5~10数時間つくり、「避難3原則」を徹底してたたき込んだ。
釜石市の避難3原則 1:想定にとらわれるな 2:最善を尽くす 3:率先して避難せよ
防災教育のねらい 1.防災教育で災害文化の醸成を促す 2.『釜石市津波防災教育の手引き』を作成。 3.『助けられる人』から『助ける人』へ
EASTレスキュー活動の例(釜石東中学校)
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防災訓練 応急処置 防災マップつくり
非常食炊出し 安否札配布
『ぼうさい甲子園』の 優秀賞を平成21年、22年と2年連続で受賞
水上救助
津波記念碑清掃
竹ざお担架つくり
登下校途中に地震が発生したら、避難場所が遠い場合もあり、小学校低学年の児童だけでは避難が困難。 そのため、地域住民にいざというときに子どもたちの避難の支援に協力してもらえる建物として、『こども津波ひなんの家』を地域で募集。
安否札の活用 生徒たちが地域住民に配布した安否札が玄関に貼り付けてある家屋がありました。
こども津波ひなんの家