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情報システム部門の戦略提案 2007 年に創業 100 周年を迎えた AGC 旭硝子は、文字通り我が国を代表するガ ラスメーカーである。世界トップクラスの シェアを誇るガラス事業から、電子事業、 化学品事業まで、多彩な事業をグローバ ルに展開している。全世界およそ30 の国 や地域に広がるグループ企業は、連結子 会社だけで 180 社近くに及ぶ。 この AGC 旭 硝 子が、今 回日 本・アジ ア 地 域のグループ会社を結ぶ、コミュニケー ションインフラを構築した。その背景は 何か。プロジェクトを主導した旭硝子の グローバル IT リーダー 情報システムセン ター長 神庭基氏にお話を伺った。 目的 多国籍メンバーによるグループ内コミュ ニケーションの効率化と、セキュリティレ ベルの向上のため、日本・アジア地域にお けるコミュニケーションインフラを標準 化、統合化する。 アプローチ アジア地域 7 カ国 30 社におけるコミュニ ケーションインフラ構築プロジェクトの 迅速な展開を図るために、コンサルティン グサービス、 IT インフラの構築支援サー ビスを比較検討。特にグローバルデリバ リ体制を重視した結果、経験豊富な HP ンサルティングサービスを採用。グローバ ルデリバリを迅速化した。 IT の効果 メール・認証基盤・情報共有基盤を標準化 ID 管理、情報セキュリティ技術仕様の標準 化とレベルアップを実現 システム管理レベルの向上を実現 ビジネスの効果 グループ内の情報共有・コミュニケー ションの強化により、国や地域を横断し た業務オペレーションの基盤を整備 グループ内のセキュリティレベルの向上 による情報漏洩の防止 「第 2 のグローバリゼーション」施策を促 進させる基盤を整備 お客様導入事例: グローバルでのグループ共通コミュニ ケーション基盤の構築 業界: 製造業 グローバルなIT 基盤整備プロジェクトの企画から計画実行 までを担い、スピーディなサービス展開を支援するHP AGC 旭硝子が、グローバルでのグループ共通 コミュニケーションインフラを構築

IT HPh50146.‚ん、HP はプロジェクトについての理解もグローバ ル展開の能力も抜群でしたが、それだけではなく、コ スト面でも常に競争力のある提案をしてくれました」

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情報システム部門の戦略提案

2007年に創業100周年を迎えたAGC

旭硝子は、文字通り我が国を代表するガ

ラスメーカーである。世界トップクラスの

シェアを誇るガラス事業から、電子事業、

化学品事業まで、多彩な事業をグローバ

ルに展開している。全世界およそ30の国

や地域に広がるグループ企業は、連結子

会社だけで180社近くに及ぶ。

このAGC旭硝子が、今回日本・アジア地

域のグループ会社を結ぶ、コミュニケー

ションインフラを構築した。その背景は

何か。プロジェクトを主導した旭硝子の

グローバル ITリーダー 情報システムセン

ター長 神庭基氏にお話を伺った。

目的多国籍メンバーによるグループ内コミュ

ニケーションの効率化と、セキュリティレ

ベルの向上のため、日本・アジア地域にお

けるコミュニケーションインフラを標準

化、統合化する。

アプローチアジア地域7カ国30社におけるコミュニ

ケーションインフラ構築プロジェクトの

迅速な展開を図るために、コンサルティン

グサービス、ITインフラの構築支援サー

ビスを比較検討。特にグローバルデリバ

リ体制を重視した結果、経験豊富なHPコ

ンサルティングサービスを採用。グローバ

ルデリバリを迅速化した。

ITの効果・ メール・認証基盤・情報共有基盤を標準化

・ ID管理、情報セキュリティ技術仕様の標準

化とレベルアップを実現

・ システム管理レベルの向上を実現

ビジネスの効果・ グループ内の情報共有・コミュニケー

ションの強化により、国や地域を横断し

た業務オペレーションの基盤を整備

・ グループ内のセキュリティレベルの向上

による情報漏洩の防止

・ 「第2のグローバリゼーション」施策を促

進させる基盤を整備

お客様導入事例:

グローバルでのグループ共通コミュニ

ケーション基盤の構築

業界:

製造業

グローバルなIT基盤整備プロジェクトの企画から計画実行までを担い、スピーディなサービス展開を支援するHP

AGC旭硝子が、グローバルでのグループ共通コミュニケーションインフラを構築

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「AGCグループは“高収益、高成長のグローバル優良

企業”を目指しています。我々情報システム部門にも、

これを実現するための IT戦略が求められていたので

す」

AGCグループは、50年以上も前から積極的な海外

進出を行なってきたが、新たな目標に向かってその

グローバル展開の方針も刷新したという。グループ

の経営方針Grow Beyondでフォーカスする「第2の

グローバリゼーション」と呼ばれる新たな施策では、

すでに進出している先進・新興地域における事業強

化に加え、未進出の成長著しい新興の国や地域にお

ける事業展開を見据えている。この重要なグループ

横断的施策をサポートするために情報システム部門

としては何をすべきか。神庭センター長の結論は、グ

ローバルコミュニケーションの基盤整備だった。

「世界のどこからでもグループ内のコミュニケーショ

ン、情報共有が簡単に行える。そのようなグローバル

な共通基盤を整備することがまず必要だと考えたの

です」

この方針に基づき、グローバルコミュニケーション

インフラ整備プロジェクト(Global Communication

Enhancement Project : GCEP)がスタートした。最

初に着手したのは、日本・アジア、ヨーロッパ、北米の

3極のうち、アジアを除く各地域のコミュニケーショ

ンインフラの連携だった。ヨーロッパ、北米地域では

域内のコミュニケーションインフラが標準化されて

いたため、認証基盤の統合だけで連携できたとのこ

と。問題は、アジア地域だった。

「アジア地域では、メールも認証基盤も拠点ごとに異

なるシステムが導入されていました。何より問題だっ

たのは、セキュリティのレベルも違っていたことです」

ユーザー IDの管理やメールの暗号化ルール、PCソフ

トウェアの管理方法まで、拠点ごとに異なっていたと

いう。各社の IT担当者のスキルも様々で、システムの

保守・管理体制も標準化されていなかった。

「グループ内のコミュニケーション効率を高め、グルー

プとしてのセキュリティレベルを向上させるために、

アジア地域・日本を統合した共通インフラの構築が

急務でした」

対象となったのは、タイ、シンガポール、中国、香港、

韓国、フィリピン、台湾の7カ国30社の連結子会社

である。国も言語もシステムも違うこれらの拠点に

新たなコミュニケーションインフラを短期導入する

──AGCグループが未だ経験したことのないこの挑

戦的なプロジェクトの構想がスタートした。2008年

のことである。

グローバル展開を支えるノウハウ

「GCEP日本・アジア展開」と名付けられたこのプロ

ジェクトを、当初からサポートしたのが、HPである。

「構想の段階から相談に乗ってもらっています。2009

年には、各社のインフラ環境の現地調査も依頼しま

した。グローバル展開のノウハウを持つHPが最初か

らサポートしてくれたのは、心強かったですね」(神

庭センター長)

システム規模や必要な技術など現地調査で得られた

情報をもとに、HPは新しいコミュニケーションイン

フラの構成やそれをアジア地域の各関連会社に展開

するためのグランドプランを、AGC情報システムセン

ターとともにまとめあげた。HP クライアントソリュー

ション本部のプロジェクトマネージャー、吉川由氏

は、この際、HPの海外展開の豊富な支援経験が役

立ったと言う。

「AGC様のように日本の本社主導で海外の IT展開を

行なうケースでは、現地固有の問題への対応や本社・

現地間の調整など、数多くのハードルを乗り越えな

ければなりません。私たちは、それまでの経験に基づ

き、これらの課題をあらかじめ考慮した上で、ベスト

な体制、仕組みを提案しました」

共通インフラで使われるシステムとしては、認証基

盤にMicrosoft® Active Directory®、メールシステムにMicrosoft® Exchange Server、コラボレーション基盤

(グループウェア)にMicrosoft® SharePoint® Server

というマイクロソフト製品が採用され、ユーザー管

理システムなど一部システムはカスタム開発される

ことになった。

旭硝子株式会社グローバル ITリーダー情報システムセンター長

神庭基氏

日本ヒューレット・パッカード株式会社テクノロジーコンサルティング統括本部クライアントソリューション本部プロジェクトマネージャー

吉川由氏

日本ヒューレット・パッカード株式会社テクノロジーコンサルティング統括本部クライアントソリューション本部プロジェクトマネージャー久保寺誠史氏

日本ヒューレット・パッカード株式会社テクノロジーコンサルティング統括本部クライアントソリューション本部本部長坂田恭司氏

かんば もとい

ゆう

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2009年末には経営会議にて承認され、翌2010年に

は、PMO、現地担当、共通基盤のチーム、それぞれが

有機的に連携するプロジェクト推進体制、どのような

会議をどのようなタイミングで実施するか、いつ何を

社内に周知・説明するかを規定したコミュニケーショ

ン計画まで含む詳細なプロジェクト計画書が作ら

れ、それに基づいて共通 ITインフラの設計・構築が

始まった。

なお、HPは企画から計画、準備、実行にいたるすべて

のフェーズを支援したが、実はフェーズごとに必ず競

争入札という「試練」を受けていたという。

「ベンダーには厳しいかもしれないですが、作業内容

や費用をフェーズごとに確認して支援いただくパー

トナーを決定していくことで、曖昧な部分を残すこと

なく、着実にプロジェクトを進めていけるのです。もち

ろん、HPはプロジェクトについての理解もグローバ

ル展開の能力も抜群でしたが、それだけではなく、コ

スト面でも常に競争力のある提案をしてくれました」

(神庭センター長)

本番移行を迎えて

2011年には、対象となる30社に向けた現地説明会

をそれぞれ3回に分けて実施した。新システムのコ

ンセプトについてはAGC本社が説明し、ID環境の変

更などシステム管理者や現地ベンダーに向けた説

明は、HPが行った。なお、移行に関しては、まず試験

導入を行い、問題をフィックスした後に本格導入する

パイロット移行という手法を採用している。これによ

り、パイロット段階から実機による操作を実際に見る

ことができ、現場の理解を深められるようになったと

いう。

移行作業は、今まさに山場を迎えている。HPのコン

サルタントや技術者の中には、ほとんどの時間を海

外現地での作業や現地向けのトレーニングにあてて

いる者もいるという。HPのクライアントソリューショ

ン本部 本部長の坂田恭司氏は、「現地から宿題とし

て持ち帰らない」よう一貫して指導しているという。

「現地での課題は基本的に現地で解決する。難しい

問題でも、日本のバックエンド部隊と連携しながら可

能な限り現地で解決する。これが基本です。課題を持

ち帰ると間違いなくスケジュールが遅れるからです」

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AGCの狙い 日本HPが提供したサービスAGCの狙い 日本HPが提供したサービス

グローバルコミュニケーションインフラ整備プロジェクト(GCEP)日本・アジア展開

7カ国の30社の連結子会社を結び、多国籍メンバーによるコミュニケーション効率を向上

● グローバル統合認証基盤の整備● メールシステムの統合とアドレス台帳の共有● グローバル情報共有インフラの整備

● アカウントの一元管理● 情報セキュリティポリシーの標準化● クライアントPCのソフトウェア資産管理● ウィルス対策の強化

● インフラ統合による可用性向上● データ保護の強化

● グローバル統合認証基盤の整備● メールシステムの統合とアドレス台帳の共有● グローバル情報共有インフラの整備

AGCグループ全体の情報セキュリティ水準を強化

● アカウントの一元管理● 情報セキュリティポリシーの標準化● クライアントPCのソフトウェア資産管理● ウィルス対策の強化

国や地域を横断する業務インフラの整備とサービス品質の向上

● インフラ統合による可用性向上● データ保護の強化

アセスメント、統合計画、移行設計から、現地でのシステム構築、移行実施支援、現地法人での説明会、ユーザー教育までの一貫したサービスを提供

アセスメント、統合計画、移行設計から、現地でのシステム構築、移行実施支援、現地法人での説明会、ユーザー教育までの一貫したサービスを提供

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HP クライアントソリューション本部の統括プロジェ

クトマネージャー、久保寺誠史氏は、グローバル展開

プロジェクトならではの難しさを次のように語る。

「日本から現地の状況を正確に把握することは非常

に難しいと感じています。実際に行ってみたら、話に

聞いていた状況と違っていたというケースが非常に

多いのです。また、国や文化によって担当者とのお付

き合いの仕方も違いますね。最終的には顔を突き合

わせてのコミュニケーションをしっかり取って、現地

との信頼関係を確立するしかありません」

移行に際しては、あらかじめ汎用的なフォーマットを

用意し、パイロットシステムを稼働させるときに、各

社固有の条件に合わせていくという。当然、問題も出

てくるが、それはHPが持っているノウハウを最大限

に活用することで解決している。

2012年の11月に、すべての拠点でパイロット移行が

終了する。日本も含めたアジア地域で約30,000名、

統合認証で連携するヨーロッパ、北アメリカまで入れ

ると全世界で約50,000名のAGCグループ社員が、

グローバルなコミュニケーションインフラを介して

結びつくことになる。

ワークスタイルの革新に向けて

既に、新しいコミュニケーションインフラに移行した

拠点では、アドレス帳の連携によって他社担当者の

メールアドレスも検索できるようになっている。ドメ

インもAGCグループのブランドである「agc.com」に

統合された。さらに、セキュリティーポリシーに基づ

いて、個人や部署、会社の権限を設定して、メールのや

り取りを管理することで、技術情報の漏洩といったセ

キュリティ上のリスクに対応することもできるように

なったという。

今回のプロジェクトを踏まえ、HP諸氏は次のように

語った。

「まずは11月までのパイロット移行に向けて、HPが

一丸となって支援させていただきます。今回のアジア

展開で得たノウハウをもとに、これからも日本企業の

アジア展開に対して支援してまいります」(吉川氏)

「新しい技術の導入によるシステム全体の最適化や

グローバルに広がった運用オペレーションの最適化

が、課題だと認識しています。5年、10年先 を見据え

た IT戦略を一緒に考え、実現させていきたいですね」

(久保寺氏)

「このプロジェクトは、HPにとっても非常に良い経験

でした。今後も、AGC様の IT戦略にどうHPがお手伝

いできるかということを考えながら、グローバルビジ

ネスに貢献できる ITサービスを提供させていただき

たいと思っております」(坂田氏)

また、神庭センター長は今後の展開及びHPへの期

待を次のように述べられた。

「今回のプロジェクトで構築したのは、あくまでもコ

ミュニケーションの基盤です。これを使ってどうワー

クスタイルを変えていくか、“第2のグローバリゼー

ション”に向けてどう貢献できるかが次のステップで

す。欧米企業、日本企業のワークスタイルに精通した

HPには長くお付き合いいただけるビジネスパート

ナーとしてぜひ、そこまで一緒に考えてほしいと思い

ます」

記載されている会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。記載事項は 2012年 9月現在のものです。本カタログに記載されている情報は取材時におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承下さい。@Copyright 2012 Hewlett-Packard Development Company,L.P. 日本ヒューレット・パッカード株式会社〒136-8711 東京都江東区大島 2丁目 2番 1号

CSO12398-01 2012年9月

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ソリューション概略

HPサービス・HP グローバルIT統合戦略立案コンサルティングサービス

・HP グローバルプロジェクト管理・展開支援サービス

・HP グローバル認証基盤統合サービス

・HP グローバルコミュニケーション基盤構築・移行サービス

・H P P C管理基盤構築サービス

主要ソフトウェア・Microsoft® Active

Directory®

・Microsoft® Exchange Server

・Microsoft® SharePoint® Server