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096 Film Exhibition Yearbook 2018 Chapter III ここでは、増加の一途を辿っている 公開作品と地域における上映活動の有り様について、考えてみたい。 公開作品の内容 映画館での公開作品数は、 1990 年代以降 2004 年までは、多少の増減はあるものの、大体550700 本を 推移してきたが、 2013 年に日本映画、外国映画とも500 本を越え、公開本数は初めて1000 本を越えた。そ の後も2018 年まで、ほぼ毎年増え続けており、日本映画製作者連盟発表の2018 年の公開本数は、日本 映画 613 本、外国映画 579 本で、合計 1192 本となっている。 コミュニティシネマセンターでも、インターネットに掲載された情報を元に 公開作品リストを作成し、日本映 606 本、外国映画 643 本、合計 1249 本という数値を得ている。映連発表の数値とは多少の齟齬がある が、こちらで得たデータを元に公開作品の内容を見てみる。 公開規模 日本映画、外国映画を、公開規模と公開された映画館 (シネコンミニシアター・シネコン以外) に分類して得られた 数値が fig.01である。 300 館以上の映画館で公開されたのは、日本映画 45 本、外国映画 36 本である。日本映画では ドラえ もんポケモン名探偵コナン等のアニメシリーズや、 未来のミライ』『劇場版コード・ブルードクターヘリ 緊急救命』『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII 』『検察側の罪人』『空飛ぶタイヤ等々、外国映画では、 ボヘミアン・ラプソディ 』『ジュラシック・ワールド炎の王国』『スター・ウォーズ最後のジェダイ』『グレイテス ト・ショーマン』『 リメンバー・ミー 』『 ミッション:インポッシブルフォールアウトといった 大作」「話題作が並 ぶ。これらの作品はシネマ・コンプレックス (シネコン) でしか公開されていない。 2018 年には唯一、都内のミニシ アター 2 館での公開からスタートしてシネコンにも拡大し、最終的には350 館近い公開館数となった カメラを 止めるな! があったが、このような作品は例外中の例外である。 150 館以上で公開された日本映画も概ねシネコンのみで上映されている。 2018 年は モリのいる場所2018 |沖田修一) 日日是好日2018 |大森立嗣) 泣き虫しょったんの奇跡2018 |豊田利晃) 3 作品が、東京で、 シネコンとミニシアターで同時公開され、その後、多くのミニシアター・既存興行館で上映されている。他方、外 国映画は150 館以上で公開された作品でも、 ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書2017 |スティーブン・スピ ルバーグ) シェイプ・オブ・ウォーター 2017 |ギレルモ・デル・トロ) ワンダー君は太陽2017 |スティーブン・チョボウスキー) 15 17分、パリ行き 2018 |クリント・イーストウッド) 等、多くの作品がミニシアターでも上映されている。 70149 館で公開された 外国映画をみると、東京ではミニシアターで公開された (ミニシアター・シネコン同時公開 を含む) デトロイト 2017 |キャスリン・ピグロー) 君の名前で僕を呼んで2017 |ルカ・グァダニーノ) ファントム・スレッド2017 |ポール・トーマス・アンダーソン) 華氏119 2017 |マイケル・ムーア) アイ,トーニャ史上最大のスキャンダル2017 クレイグ・ギレスピー) レディ・バード2017 |グレタ・ガーウィグ) といった作品、あるいはシネコンで公開された スリー・ビ ルボード2017 |マーティン・マクドナー) ウィンストン・チャーチルヒトラーから世界を救った男2017 |ジョー・ライト) The Chapter II  公開作品増加地域における 上映作品・上映活動多様性 える Chapter III 特別調査

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096 Film Exhibition Yearbook | 2018 Chapter III

ここでは、増加の一途を辿っている「公開作品」と地域における上映活動の有り様について、考えてみたい。

公開作品の内容

映画館での公開作品数は、1990年代以降2004年までは、多少の増減はあるものの、大体550-700本を

推移してきたが、2013年に日本映画、外国映画とも500本を越え、公開本数は初めて1000本を越えた。そ

の後も2018年まで、ほぼ毎年増え続けており、日本映画製作者連盟発表の2018年の公開本数は、日本

映画613本、外国映画579本で、合計1192本となっている。

コミュニティシネマセンターでも、インターネットに掲載された情報を元に「公開作品」リストを作成し、日本映

画606本、外国映画643本、合計1249本という数値を得ている。映連発表の数値とは多少の齟齬がある

が、こちらで得たデータを元に公開作品の内容を見てみる。

公開規模

日本映画、外国映画を、公開規模と公開された映画館(シネコン/ミニシアター・シネコン以外)に分類して得られた

数値が�g.01である。

「300館以上」の映画館で公開されたのは、日本映画45本、外国映画36本である。日本映画では「ドラえ

もん」や「ポケモン」「名探偵コナン」等のアニメシリーズや、『未来のミライ』『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ

緊急救命』『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』『検察側の罪人』『空飛ぶタイヤ』等々、外国映画では、

『ボヘミアン・ラプソディ』『ジュラシック・ワールド/炎の王国』『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』『グレイテス

ト・ショーマン』『リメンバー・ミー』『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』といった「大作」「話題作」が並

ぶ。これらの作品はシネマ・コンプレックス(シネコン)でしか公開されていない。2018年には唯一、都内のミニシ

アター2館での公開からスタートしてシネコンにも拡大し、最終的には350館近い公開館数となった『カメラを

止めるな!』があったが、このような作品は例外中の例外である。

「150館以上」で公開された日本映画も概ねシネコンのみで上映されている。2018年は『モリのいる場所』(2018|沖田修一)『日日是好日』(2018|大森立嗣)『泣き虫しょったんの奇跡』(2018|豊田利晃)の3作品が、東京で、

シネコンとミニシアターで同時公開され、その後、多くのミニシアター・既存興行館で上映されている。他方、外

国映画は150館以上で公開された作品でも、『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』(2017|スティーブン・スピ

ルバーグ)『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017|ギレルモ・デル・トロ)『ワンダー 君は太陽』(2017|スティーブン・チョボウスキー)

『15時17分、パリ行き』(2018|クリント・イーストウッド)等、多くの作品がミニシアターでも上映されている。

「70-149館で公開された」外国映画をみると、東京ではミニシアターで公開された(ミニシアター・シネコン同時公開

を含む)『デトロイト』(2017|キャスリン・ピグロー)『君の名前で僕を呼んで』(2017|ルカ・グァダニーノ)『ファントム・スレッド』(2017|ポール・トーマス・アンダーソン)『華氏119』(2017|マイケル・ムーア)『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017|

クレイグ・ギレスピー)『レディ・バード』(2017|グレタ・ガーウィグ)といった作品、あるいはシネコンで公開された『スリー・ビ

ルボード』(2017|マーティン・マクドナー)『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2017|ジョー・ライト)『The

Chapter II

 公開作品の増加と地域における上映作品・上映活動の多様性を考える

Chapter III 特別調査

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Chapter III 097映画上映活動年鑑|2018 特別調査 2|公開作品の増加と地域における上映作品・上映活動の多様性を考える

Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ』(2017|ソフィア・コッポラ)『バーフバリ 王の凱旋 完全版』(2017|SS・ラージャマウリ)

『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』(2016|アシュリング・ウォルシュ)といった、かつて、いわゆる“ミニシアター

系”と称された作品の中でも大きめの作品は、現在では、地域によってシネコンで公開されることもあれば、ミニ

シアター/既存興行館で公開されることもある。メジャーな大作はシネコンで公開され、アート系・インディペン

デント系の作品はミニシアターで公開される、というかつての明確な線引きは無くなっている。

シネコンは「大作」のみを上映しているわけではない。日本映画の291本、外国映画の189本が、シネコンで

上映されている。日本映画では、40-50館の規模で公開された『サニー 32』(2018|白石和彌)『素敵なダイナ

マイトスキャンダル』(2018|富永昌敬)『キスできる餃子』(2018|秦建日子)『菊とギロチン』(2018|瀬々敬久)『ここは

退屈迎えに来て』(2018|廣木隆一)『生きる街』(2018|榊英雄)『一陽来復 Life Goes On』(2017|尹美亜)等の作

品がシネコンでも上映されている。

公開作品の種類

日本映画の公開作品606本の内訳をみると、劇映画・アニメーションの新作が442本、ドキュメンタリー映画

が59本、公演やライブ等のODSが23本、特集上映(短篇・若手・その他)が11企画82本となっている。

2018年も多くのドキュメンタリー映画が劇場公開されたが、『フジコ・ヘミングの時間』『太陽の塔』、『MIFUNE:

THE LAST SAMURAI』といった限られた作品以外は、ミニシアターのみで10-40館の規模で公開されてい

る。毎日映画コンクール・ドキュメンタリー映画賞を受賞した『廻り神楽』(2017|遠藤協・大澤未来)、キネマ旬報ベスト

10・文化映画第1位の『沖縄スパイ戦史』(2018|三上知恵・大矢英代)、原一男監督の力作『ニッポン国VS泉南

石綿村』、想田和弘監督の新作『港町』等はいずれもミニシアターのみでの公開である。

日本映画の特集で、10館以上で上映されたのは4企画のみで、このうちの2企画はLDH PICTURESによる

短篇集2パッケージで約120のシネコンで上映されている。また、アニメーション作家・村田朋泰の特集「夢の

記憶装置」はミニシアターのみ13館で上映された。他の7つの特集はいずれも東京のミニシアター1館(-3館)

のみでの上映である。(今回の調査では日本映画のデジタルリマスター版の特集については情報を採取していない)

ODS23本のうち、K SEVEN STORIESや蜷川幸雄シアター、シネマ歌舞伎、熊川哲也 Kバレエ カンパニー

等のシリーズはシネマコンプレックスのみで上映されている。

外国映画の内訳は、劇映画・アニメーションの新作が332本、ドキュメンタリー映画45本、ODSが46本、旧作

デジタルリマスター版のリバイバル公開が29本、特集上映が12企画52本で、以上の小計が504本。さら

に、東京の1館(あるいは2、3館)のみで特集上映された作品が139本あり、合計643本となっている。

外国映画では、旧作のデジタルリマスター版のリバイバル公開が増えている。2018年には約29本が公開さ

れたが、いわゆるクラシックの名画ではなく、70-80年代のヒット作(『ラストワルツ』1978、『ストリート・オブ・ファイヤー』

1984、『恐怖の報酬』1977、『遊星からの物体X』1982、『ディア・ハンター』1978 等)、あるいはミニシアター全盛期のヒット作

(『ムトゥ 踊るマハラジャ』1995、『欲望の翼』1990、『モーリス』1987、『メイド・イン・ホンコン』1997 等)が相次いで公開され、公

開当時を知っている映画ファンを集めている。『禁じられた遊び』(1952)、『暗殺のオペラ』(1970)、『モアナ 南海

日本映画

A 300館以上B 150-299館C 101-149館C 70-99館D 50-69館E 30-49館F 10-29館9館以下以上合計

A 300館以上B 150-299館C 70-149館D 50-69館E 30-49館F 10-29館9館以下以上合計

本数

45

44

23

27

31

54

108

169

501

本数

36

18

32

45

86

106

54

377

シネコンのみ

4441161612231714183

シネコンのみ

3609232052

シネコン+ミニシアター

1371015203616108

シネコン+ミニシアター

018223433273137

ミニシアターのみ

000141354139211

ミニシアターのみ

0019507751188

�g. 01 2018年に公開された映画(公開規模別|ODS、旧作リバイバル、特集を除く)

外国映画

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098 Film Exhibition Yearbook | 2018 Chapter III

の歓喜』(1926)といった巨匠の作品を含め、そのほとんどがミニシアター15-30館程度での公開である。製作

50周年を迎えた『2001年宇宙の旅』の4Kデジタルリマスター版は、シネコンのIMAXシアターで2週間

限定公開され、国立映画アーカイブでも70ミリ・ニュープリント版(クリストファー・ノーラン監修)のフィルム上映が行

われて話題をよんだ。

また、デジタルリマスター版による特集も数多く配給されている。「ベルイマン生誕100年映画祭」では大作

『ファニーとアレクサンデル』を含む13作品が、ミニシアターを中心に27館で上映された。このほか、アラン・ロ

ブ=グリエ特集(7作品)、ジョージア映画の巨匠・テンギズ・アブラゼ監督「祈り3部作」、ジャン・ヴィゴ特集、ハ

ル・ハートリー復活祭、また、ホン・サンス監督の4作品(『それから』『夜の浜辺でひとり』『正しい日 間違えた日』『クレアの

カメラ』)連続公開も行われている。これらの特集も、ミニシアター(名画座、自主上映、シネマテークを含む)で10-30館

程度の公開となっている。

外国映画のODSは、METライブビューイング、英国ロイヤル・オペラ・ハウス、ナショナル・シアター・ライヴ等の

シリーズがシネマコンプレックスを中心に公開されている。�g.02

シネコンの上映作品/ミニシアターの上映作品

2018年8月 大分県

コミュニティシネマセンターでは、大分県の映画館の、2018年8月の上映作品を詳細に調査した。

大分県は人口約115万人、大分市に人口の約40%が集中している。県内には35スクリーンあり、このうちシ

ネコンは3館30スクリーン、大分市のシネマ5、シネマ5bis、別府市のブルーバード劇場、日田市のシネマ

テーク・リベルテと、県内に4スクリーンのミニシアターがあることが大分県の特徴である。�g.03

8月の上映作品をみると、当然のことながら、シネコンとミニシアターでは上映作品が全く異なっている。前項の

「公開作品の内容」を読んでも、各地域でそれぞれの映画館がどのようなあり方をしているのかはわからず、

シネコンでもかなり多様な作品を上映しているんじゃないかという印象を受ける。あるいは、ミニシアターで上映

している作品の多くがシネコンでも上映されていて、ミニシアターでしか見られない映画はごく低予算のインディ

ペンデント映画か特集上映だけなのかと感じられるかもしれない。しかし、実際に具体的な上映作品リストを

見ると、そうとは言えないことがわかる。

シネコンで上映された作品をみると、特に8月は夏休み興行で大作が目白押しで、上映作品の大半が全国

300館以上で公開される超大作、話題作で占められている。どのシネコンでも、上映する作品にさほど変わり

日本映画一般映画新作(劇映画・アニメーション)ドキュメンタリーODS

特集上映(短篇・若手・その他)日本映画合計

外国映画一般映画新作(劇映画・アニメーション)ドキュメンタリーODS

旧作デジタルリマスター版特集上映(旧作デジタルリバイバル)以上小計1館(あるいは2、3館)のみでの上映外国映画合計日本映画+外国映画

本数442592382606

本数33245462952504

139643

1249

公開規模1-300館以上1-50館1-50館

公開規模1-300館以上1-50館1-20館1-50館5-30館

8企画

備考

59本中46本がミニシアターでの上映23本中15本がシネコンでの上映11企画中 7企画は1-3館での上映•日本映画製作者連盟発表本数613本

備考

45本中37本がミニシアターでの上映46本中36本がシネコンでの上映ほぼミニシアターでの上映12企画すべてミニシアターでの上映

東京の1-2館のみでの上映•日本映画製作者連盟発表本数579本•日本映画製作者連盟発表本数1192本

�g. 02 2018年に公開された映画(種類別)

大分県の映画館(2018年)

�g. 03

シネマコンプレックスミニシアター/名画座既存興行館成人映画館シネマコンプレックス以外合計

映画館3

4015

8

スクリーン30

4015

35

映画館・スクリーン数

『映画年鑑』別冊「映画館名簿」(キネマ旬報社刊)、『映画上映活動年鑑』(コミュニティシネマセンター刊)参照

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Chapter III 099映画上映活動年鑑|2018 特別調査 2|公開作品の増加と地域における上映作品・上映活動の多様性を考える

123456789101112131415161718192021222324

1234567

123

12345678

12345678910111213141516171819

日本映画『未来のミライ』『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』『名探偵コナン ゼロの執行人』『カメラを止めるな!』『劇場版 七つの大罪 天空の囚われ人』『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』『検察側の罪人』『空飛ぶタイヤ』『BLEACH』『万引き家族』『劇場版 仮面ライダービルド Be the one/快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー en film』『パンク侍、斬られて候』『SUNNY 強い気持ち・強い愛』『虹色デイズ』『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ―2人の英雄(ヒーロー)』『センセイ君主』『銀魂2 掟は破るためにこそある』『青夏 きみに恋した30日』『それいけ! アンパンマン かがやけ!クルンといのちの星』『ペンギン・ハイウェイ』『ちいさな英雄―カニとタマゴと透明人間』『Bz 30th Year Exhibition SCENES 1988–2018 劇場版』『ピース・ニッポン』『ミュージカル 刀剣乱舞 阿津賀志山異聞2018 巴里』

外国映画『ジュラシック・ワールド/炎の王国』『ミッション:インポッシブル フォールアウト』『インクレディブル・ファミリー』『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』『アントマン&ワスプ』『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』『オーシャンズ8』

ライブビューイングアイドリッシュセブン 1st LIVE 「Road To Infinity」ディレイビューイングGENERATIONS LIVE TOUR 2018 “UNITED JOURNEY” ライブ・ビューイングPKCZ(R)×DTC―湯けむり純情篇 from HiGH&LOW 完成披露試写&PREMIUM LIVE ライブビューイング

全国公開館数3673643603493453453343303283283243223173172992972722342081921208464

371366364363356336326

155

分類アニメーション

アニメーション

アニメーション

劇映画

アニメーション

劇映画

劇映画

劇映画

劇映画

劇映画

劇映画

劇映画

劇映画

劇映画

アニメーション

劇映画

劇映画

劇映画

アニメーション

アニメーション

アニメーション

ODS

ドキュメンタリーODS

劇映画

劇映画

アニメーション

劇映画

劇映画

劇映画

劇映画

 

 

日本映画『カメラを止めるな!』『モリのいる場所』『フジコ・ヘミングの時間』『ルームロンダリング』『菊とギロチン』『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』『沖縄スパイ戦史』『港町』大映男優祭 全21作品

外国映画『30年後の同窓会』『レディ・バード』『29歳問題』『セラヴィ!』『女と男の観覧車』『天命の城』『パティ・ケイク$』『ブリグズビー・ベア』『ゲッベルスと私』『子どもが教えてくれたこと』『告白小説、その結末』『ヒトラーを欺いた黄色い星』『ザ・ビッグハウス』『ジェイン・ジェイコブズ ニューヨーク都市計画革命』『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』『それから』『夜の浜辺でひとり』『正しい日/間違えた日』『クレアのカメラ』

公開館数349167795948474327

62742858534442524245284424282328282828

分類劇映画

劇映画

ドキュメンタリー

劇映画

劇映画

劇映画

ドキュメンタリー

ドキュメンタリー

特集

劇映画

劇映画

劇映画

劇映画

劇映画

劇映画

劇映画

劇映画

ドキュメンタリー

ドキュメンタリー

劇映画

劇映画

ドキュメンタリー

ドキュメンタリー

アニメーション

劇映画

劇映画

劇映画

劇映画

備考

リチャード・リンクレイター監督

ウディ・アレン監督

ロマン・ポランスキー監督

ホン・サンス監督

ホン・サンス監督

ホン・サンス監督

ホン・サンス監督

2018年8月に大分県のシネマ・コンプレックスで上映された作品

�g. 04

2018年8月に 「シネマ5」及び 「シネマ5bis」で上映された作品

�g. 05

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100 Film Exhibition Yearbook | 2018 Chapter III

はないことを考えると、ミニシアターがない地域のシネコンであっても、100館以下で公開されるようなアート系・

インディペンデント系の作品が上映されることはほとんどない、ごく限られたスクリーンでの限定的な公開に止

まっていると考えられる。�g.04

他方、シネマ5、シネマ5bisの2スクリーンでは、7本のドキュメンタリー映画とホン・サンス監督特集を含む

27本の新作と日本映画の特集(大映男優祭)という多彩なプログラムが組まれている。�g.05

さらに指摘しておきたいのは、シネコンでは、上映された34作品のうち、日本映画が27本で外国映画が7

本にとどまっていることである。しかも、外国映画7本はすべて、ハリウッド・メジャーの作品で、300館以上で公

開された大作である。シネマ5+シネマ5bisでは27作品+1特集のうち、19本が外国映画であり、その中

にはドキュメンタリー映画やアジア映画、ヨーロッパ映画も含まれている。

映画は、娯楽であり芸術作品であると同時に、その時代や地域、そこに生きる人 の々重要な記録でもある。人

は映画を通して訪れたことのない世界を知り、様 な々人種や民族、文化や歴史、価値観に触れ、異質な存

在、他者を受容することを学ぶことができる。外国人観光客が年々増加し、今後、外国人居住者も増加してい

くことが予想される現在、このような多様な映画が上映される場は益々重要になると考えられる。

シネコンができたことで、それまでの映画館の古いイメージが一新され、車社会のニーズに合わせた場所で、

多くの映画が上映され、多くの人が映画を見ることができるようになったことは間違いない。とはいえ、シネコン

では上映されない重要な映画も多く存在しており、地域の映画文化の多様性を確保するという点では、やは

り、ミニシアターやシネマテークのようなコミュニティシネマが非常に重要な役割を果たしていることを忘れては

ならない。

上映作品と上映活動の多様性

地域の映画文化を考えるときに、上映作品の多様性が重要であることに異論はないところだろう。しかし、アート

系の映画を上映する地方のミニシアターや既存興行館の多くが、集客が難しい、観客が減少している、若い

観客をよぶことができていない、スタッフも集まりにくいという悩みを抱えている。

この状況を打開しようと、積極的に、観客の創造、拡大を目指して新しい試みをするミニシアター、地域コミュ

ニティとの関わりを強化しようと奮闘するコミュニティシネマや上映者も少なくない。ここでは、3つのコミュニティ

シネマを紹介したい。

映画×書店×カフェのカルチャー拠点

出町座|京都市

https://demachiza.com/

出町座は2017年12月に開館した映画館で、上京区の出町枡形商店街の中にある。

映画館(2スクリーン・48席/42席)に、カフェ、書店が併設され、トークやワークショップができる小さなフリースペース

もある。映画館では連日10-12本の映画を上映。映画に関する様 な々イベント(トークや舞台挨拶等)、ワーク

ショップや講座も頻繁に実施している。大学が多い京都の特徴を活かして、講座やトークイベントには映画関

係者のみならず、近隣の大学や文化機関の様 な々研究者や専門家が登壇する。このように様 な々イベントを

行うことで、多様な客層にアピールし、映画の見方を提示し、映画を見るきっかけを作ろうとしている。出町座

は、大都市京都にありながら、地域に密着した“町の風景”に溶け込む映画館となっている。京都及び関西の

ミニシアターのネットワークにも積極的に関わり、2019年2月には、大阪・シネヌーヴォ、神戸・元町映画館ととも

に近年の日本インディペンデント映画13本をセレクトした特集「次世代映画ショーケース2019」を開催した。

上から―

出町座外観、出町座入口、出町座カフェ

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Chapter III 101映画上映活動年鑑|2018 特別調査 2|公開作品の増加と地域における上映作品・上映活動の多様性を考える

映画のある暮らし

シネマ尾道|広島県尾道市

http://cinemaonomichi.com/

2001年に尾道市内で最後の映画館「尾道松竹」が閉館した後、2004年に「尾道に映画館をつくる会」がつ

くられ、5年にわたり様 な々活動を展開、2008年、尾道松竹を改装して、人口13万人の尾道市にNPO法

人によるミニシアター「シネマ尾道」が開館した。創設者であり、支配人でもある河本清順さんと彼女を取り巻く

スタッフの個性が映画館の随所に見られる。開館10周年となる2018年4月に完成した手作りの看板は、シネ

マ尾道と関わりの深い大林宣彦監督の『花筐/HANAGATAMI』に出演した満島真之介さんと呉市出身の

絵本作家の長田真作さんが地元の小中学生たちと一緒に作った。

1スクリーン112席の映画館では、毎日5回3-4作品、1年間で約140本もの映画を上映している。また、

通常の上映に合わせて、様 な々イベントを頻繁に開催し、多様な層の誘客、観客開拓につとめており、SNS

を頻繁に更新して、上映作品やイベントを丁寧に紹介している。自治体や地域のNPO、団体との連携事業

も積極的に実施。2017年に始まった「尾道映画祭」の事務局もシネマ尾道内にある。子どもや中高校生など

若年層を対象にした企画(「こども映画館」「こども映画制作ワークショップ」「『東京物語』鑑賞ワークショップ」等)にも力を入れ

ている。2018年、広島文化賞を受賞した。

1981年開館の地方自治体初のシネマテーク

広島市映像文化ライブラリー

http://www.cf.city.hiroshima.jp/eizou/index.html#top

広島市映像文化ライブラリーは、1981年に広島市中央図書館の隣に開館した地方自治体初の映画アーカ

イブで、広島に関わる多くの映画を収集保存し、連日上映も行っている。メインプログラムではコレクション作

品を中心に日本映画の特集(2019年3月は鈴木清順監督特集)を組み、併せて外国映画の特集(2019年3月は山

形国際ドキュメンタリー映画祭優秀作品上映会)、子ども向けの映画を上映するファミリーシアターや文化映画鑑賞会

も定期的に開催、映画に関わるレクチャーや活弁付き上映会、子ども向けのワークショップ等も実施している。

公共文化施設であるため、入場料金は大人510円と非常に安く映画を鑑賞することができる。169席のシア

ターはかなり古くなっており、観客の高齢化も見られるが、多彩な企画に手堅く集客、広島国際アニメーション

フェスティバルや広島国際映画祭の会場としても使われ、地域の文化施設として親しまれている。年間上映日

数は約260日(1日2-3回上映)、年間観客数は3万2000人(1回平均約50人)に上る。

左から―

シネマ尾道外観

看板制作ワークショップ

広島市映像文化ライブラリー外観―

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102 Film Exhibition Yearbook | 2018 Chapter III

これらのミニシアターやシネマテークのあり方をみると、上映される映画の多様性とともに、上映される場所の多

様性、地域の固有性、観客の多様性にも目を向ける必要があると感じる。出町座も、シネマ尾道も、広島市

映像文化ライブラリーも、それぞれが存在する町で、それぞれを取り巻く環境、自治体や商店街や文化施

設、学校、映画館等 と々の関わりの中で、自らの位置を定め、“顔の見える映画館”、その地域になくてはなら

ない存在となるべく活動を続けている。

このような映画館、コミュニティシネマは、全国各地に多く存在している。シネコンが映画館の主流となり、既存

興行館が閉館、映画館がない町が増える一方で、自分の町に映画館を取り戻したい、身近な場所に映画を

上映する場所を作りたいという人も増えている。多様な映画を、多様な場所で見ることができるというだけでも、

その町のクオリティ・オブ・ライフは向上するに違いない。

全国各地で様 に々奮闘する映画館や映画祭、シネマテーク、自主上映、こうした活動を支え、活気づける仕

組みが今後、益々重要となってくる。