16
2019 年度 上智大学 経済学部経営学科 網倉ゼミナール 卒業論文 J リーグの観客動員数を上げるには A1642035 藤原拓海

Jリーグの観客動員数を上げるにはpweb.sophia.ac.jp/amikura/thesis/2019/fujiwara_takumi.pdf · おけるjリーグの定義付けをする。というのも、jリーグが意味するものはj1リーグのみなのか、j

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: Jリーグの観客動員数を上げるにはpweb.sophia.ac.jp/amikura/thesis/2019/fujiwara_takumi.pdf · おけるjリーグの定義付けをする。というのも、jリーグが意味するものはj1リーグのみなのか、j

2019 年度 上智大学 経済学部経営学科

網倉ゼミナール 卒業論文

Jリーグの観客動員数を上げるには

A1642035

藤原拓海

Page 2: Jリーグの観客動員数を上げるにはpweb.sophia.ac.jp/amikura/thesis/2019/fujiwara_takumi.pdf · おけるjリーグの定義付けをする。というのも、jリーグが意味するものはj1リーグのみなのか、j

目次

・はじめに ............................................................................................................................................... 3

第1章 J リーグとは ............................................................................................................................. 3

第1節 J リーグの概要 ....................................................................................................................... 3

第2節 2020 年明治安田生命 J1リーグの大会概要 .......................................................................... 6

第3節 定義 ........................................................................................................................................ 7

第2章 J リーグの現状 .......................................................................................................................... 8

第1節 市場規模 ................................................................................................................................. 8

第2節 J リーグの収入項目................................................................................................................ 8

第3節 観客動員数 ............................................................................................................................. 9

第4節 1試合あたりの平均入場者数 .............................................................................................. 10

第3章 観客動員数増加の要因 ............................................................................................................ 11

第1節 要因分析 ............................................................................................................................... 11

第2節 まとめ .................................................................................................................................. 14

第4章 提案 ......................................................................................................................................... 14

第5章 結論 ......................................................................................................................................... 15

第1節 検証 ...................................................................................................................................... 15

第2節 結論 ...................................................................................................................................... 15

第6章 終わりに .................................................................................................................................. 16

<参考文献> ......................................................................................................................................... 16

Page 3: Jリーグの観客動員数を上げるにはpweb.sophia.ac.jp/amikura/thesis/2019/fujiwara_takumi.pdf · おけるjリーグの定義付けをする。というのも、jリーグが意味するものはj1リーグのみなのか、j

・はじめに

私はサッカーが好きだ。小中高とサッカー部に所属していたこともあり、現在でも友人

と時間が合えばサッカーをしている。大学生になってからはサッカーをするだけではな

く、試合を見にいくことも増えた。大学2年生の時は、地元のクラブである柏レイソルの

試合を見に、ホームゲームは毎試合観戦しに行った。プロの洗練されたプレーを見ること

が楽しいだけでなく、それを鼓舞するサポーターの応援やテレビ観戦では味わえないスタ

ジアム観戦特有の雰囲気に惹かれ、スタジアムへ足を運ぶことが趣味になっていた。そん

な中で、スタジアムに空席が目立つことが気になった。サッカー観戦に惹かれていた私

は、空席を埋めてより多くの人にサッカーを楽しんでもらいたいと考えている。そこで、

本論文では「J リーグの観客動員数を増やすには」をテーマに、J リーグをより盛り上げる

ために必要なことを明らかにしていきたい。

第1章 J リーグとは

本章では、J リーグとは何なのか、その概要を明らかにしていく。J リーグの概要を述べる上で、J

リーグ公式ホームページを参考にしていく。

第1節 J リーグの概要

第1項 目的

J リーグの公式ホームページによると、J リーグ設立の目的は以下のように記されている。

公益社団法人 日本プロサッカーリーグ定款よりこの法人は、公益財団法人 日本サッカー協会の傘

下団体として、プロサッカー(この法人の正会員となった団体に所属するサッカーチームが業務とし

て行うサッカーをいう。以下同じ)を通じて日本サッカーの水準向上及びサッカーの普及を図ること

により、豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達に寄与するとともに、国際社会にお

ける交流及び親善に貢献することを目的とする。

第2項 事業内容

J リーグの公式ホームページによると、J リーグの事業内容は以下の 11 個にまとめられている。

1. プロサッカーの試合の主催、公式記録の作成

2. プロサッカーに関する諸規約の制定

3. プロサッカーの選手、監督、審判などの養成、 資格認定、登録

4. プロサッカーの試合の施設検定、用具の認定

5. 放送などを通じたプロサッカーの試合の広報普及

6. サッカーやサッカー技術の調査、研究、指導

7. プロサッカー選手、監督、関係者の福利厚生事業の実施

8. サッカーに関する国際的な交流、事業の実施

9. サッカーをはじめとするスポーツの振興、援助

10. 機関紙の発行などを通じたプロサッカーに関する広報普及

11. その他、目的を達成するために必要な事業

第3項 位置付け

図表1は J リーグの世界的な位置付けを表したものである。国際サッカー連盟(FIFA)が世界の

Page 4: Jリーグの観客動員数を上げるにはpweb.sophia.ac.jp/amikura/thesis/2019/fujiwara_takumi.pdf · おけるjリーグの定義付けをする。というのも、jリーグが意味するものはj1リーグのみなのか、j

サッカー連盟のトップにあたる。その下に各大陸ごとのサッカー連盟があり、日本はアジアサッカー

連盟(AFC)に属している。そのアジアサッカー連盟に日本サッカー連盟(JFA)が属しており、その下

に日本プロサッカーリーグ(J リーグ)が所属しているという位置付けになる。

(図表 1 J リーグの位置付け J リーグ公式サイトより引用)

第4項 理念

J リーグは以下の3つの理念をもとに事業を行っている。

第5項 活動方針

J リーグは以下の6点を活動の方針として、事業を行っている。

一、日本サッカーの水準向上及びサッカーの普及促進

一、豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与

一、国際社会における交流及び親善への貢献

Page 5: Jリーグの観客動員数を上げるにはpweb.sophia.ac.jp/amikura/thesis/2019/fujiwara_takumi.pdf · おけるjリーグの定義付けをする。というのも、jリーグが意味するものはj1リーグのみなのか、j

第6項 所属チーム

ここでは、J リーグから代表して J1リーグと J2リーグのクラブ名を記す。

【J1】

• 北海道コンサドーレ札幌

• ベガルタ仙台

• 鹿島アントラーズ

• 浦和レッズ

• 柏レイソル

• FC 東京

• 川崎フロンターレ

• 横浜 F・マリノス

• 横浜 FC

• 湘南ベルマーレ

• 清水エスパルス

• 名古屋グランパス

• ガンバ大阪

• セレッソ大阪

• ヴィッセル神戸

• サンフレッチェ広島

• サガン鳥栖

• 大分トリニータ

【J2】

• モンテディオ山形

• 水戸ホーリーホック

• 栃木 SC

• ザスパクサツ群馬

• 大宮アルディージャ

• ジェフユナイテッド千葉

1. フェアで魅力的な試合を行うことで、地域の人々に夢と楽しみを提供します。

2. 自治体・ファン・サポーターの理解・協力を仰ぎながら、世界に誇れる、安全で快適なス

タジアム環境を確立していきます。

3. 地域の人々にJクラブをより身近に感じていただくため、クラブ施設を開放したり、選手

や指導者が地域の人々と交流を深める場や機会をつくっていきます。

4. フットサルを、家族や地域で気軽に楽しめるようなシステムを構築しながら普及していき

ます。

5. サッカーだけでなく、他のスポーツにも気軽に参加できるような機会も多くつくっていき

ます。

6. 障がいを持つ人も一緒に楽しめるスポーツのシステムをつくっていきます。

Page 6: Jリーグの観客動員数を上げるにはpweb.sophia.ac.jp/amikura/thesis/2019/fujiwara_takumi.pdf · おけるjリーグの定義付けをする。というのも、jリーグが意味するものはj1リーグのみなのか、j

• ヴェルディ株式会社

• FC 町田ゼルビア

• ヴァンフォーレ甲府

• 松本山雅 FC

• アルビレックス新潟

• ツエーゲン金沢

• ジュビロ磐田

• 京都サンガ F.C.

• ファジアーノ岡山

• レノファ山口 FC

• 徳島ヴォルティス

• 愛媛FC

• アビスパ福岡

• ギラヴァンツ北九州

• V・ファーレン長崎

• FC 琉球

第2節 2020 年明治安田生命 J1リーグの大会概要

ここでは、J リーグの大会概要を明らかにする。大会概要の記述にあたり、J リーグのトップに位置

する明治安田生命 J1リーグ(J1)を代表として参考にする。

【主催】

公益財団法人 日本サッカー協会/公益社団法人 日本プロサッカーリーグ

【大会方式】

ホーム&アウェイ方式による 2 回戦総当たりリーグ戦

【開催期間および試合数】

2 月 21 日~12 月 5 日(34節/合計 306 試合)

【試合方式】

―試合方式および勝敗の決定―

90 分間(前後半各 45 分)の試合を行い、勝敗が決しない場合は引き分けとする。

―勝点―

勝利:3 点、引き分け:1 点、敗戦:0 点

―年間順位の決定―

リーグ戦が終了した時点で、勝点合計の多いチームを上位とし、順位を決定する。ただし、勝点が同じ

場合は、以下の順によって順位を決定する。

得失点差

総得点数

当該チーム間の対戦成績(イ:勝点、ロ:得失点差、ハ:総得点数)

反則ポイント

抽選

※抽選は、降格チームの決定等、理事会が必要と判断した場合のみ実施される

Page 7: Jリーグの観客動員数を上げるにはpweb.sophia.ac.jp/amikura/thesis/2019/fujiwara_takumi.pdf · おけるjリーグの定義付けをする。というのも、jリーグが意味するものはj1リーグのみなのか、j

【J1クラブ・J2クラブの入れ替えについて】

• J1における年間順位の下位2クラブがJ2に降格し、J2における年間順位の上位2クラブ

がJ1に昇格する。

• J1における年間順位 16 位のJ1クラブとJ2における年間順位3位から6位のJ2クラブ

が参加するJ1参入プレーオフに優勝したJクラブがJ1に残留または昇格する。

• J2における年間順位1位から6位のJ2クラブの中でJ1クラブライセンスの交付判定を

受けられなかったJ2クラブがあった場合は、次のとおりとする。

1. 当該J2クラブがJ2における年間順位の上位2クラブとなったとしても、J1に昇

格できない

2. 当該J2クラブは、J1参入プレーオフに参加できない

3. J2における年間順位の上位2クラブのうち、J1クラブライセンスの交付判定を受

けたJ2クラブが1クラブの場合、当該J2クラブがJ1に昇格し、J1における年

間順位の最下位(18 位)のJ1クラブがJ2に降格する。また、その場合のJ1参入

プレーオフにはJ1における年間順位 17 位のJ1クラブが参加する

4. J2における年間順位の上位2クラブのうち、J1クラブライセンスの交付判定を受

けたJ2クラブがない場合は、J1における年間順位の下位2クラブとの入れ替えは

行わない。また、その場合のJ1参入プレーオフにはJ1における年間順位の最下位

(18 位)のJ1クラブが参加する

• J1参入プレーオフに参加する資格を有する、J1における年間順位 16 位、17 位または 18 位

のJ1クラブがJ1ライセンスの交付判定を受けられなかった場合、当該J1クラブはJ1参

入プレーオフには参加できない。

• J1参入プレーオフの出場資格を満たさないクラブがあった場合でも、J1リーグ戦年間順位

15 位以上のクラブが繰り下がってJ1参入プレーオフに出場することはなく、また、J2リー

グ戦年間順位7位以下のクラブが繰り上がってJ1参入プレーオフに出場することもない。

• その他J1参入プレーオフの詳細については理事会が定める「2020J1参入プレーオフ試

合実施要項」によるものとする。

第3節 定義

前節までは J リーグそのものや試合方式の概要について述べた。それを踏まえ本節では、本論文に

おける J リーグの定義付けをする。というのも、J リーグが意味するものは J1リーグのみなのか、J

3やリーグ戦とは異なるリーグカップ戦である「J リーグ YBC ルヴァンカップ」も含めるのか、という

点が曖昧であると考えたからだ。前提条件が曖昧なまま本論文を執筆すると、結論やそれまでの過程

がぶれ、机上の空論となってしまうと考え、前提条件を明確にするためにも本論文においての「J リー

グ」が意味するところを明確にする。

本論文においての J リーグとは「2020 明治安田生命 J1リーグ」とし、題名でもある J リーグの観

客動員数とは、「2020 明治安田生命 J1リーグに属する 18 クラブのそれぞれのホームゲームにおける

ホームサポーター動員数」である。アウェイサポーターの数を含まない理由としては、対戦クラブの本

拠地の距離やアクセスによって左右されてしまうためだ。例えば横浜 F・マリノス対横浜 FC の場合、

本拠地が近いためアウェイサポーターも多く来ることが考えられるが、横浜 F・マリノス対北海道コン

サドーレ札幌の場合、移動距離が長くアクセスも飛行機を利用しなくてはいけないためアウェイサポ

Page 8: Jリーグの観客動員数を上げるにはpweb.sophia.ac.jp/amikura/thesis/2019/fujiwara_takumi.pdf · おけるjリーグの定義付けをする。というのも、jリーグが意味するものはj1リーグのみなのか、j

ーターの数が考えづらい。以上の理由から、観客動員数はホームチームのサポーターに限定する。

第2章 J リーグの現状

前章では J リーグの概要について述べた。本章では J リーグの現状を明らかにしていく。

第1節 市場規模

1993 年に開幕した J リーグは、順調に市場規模を広げ、一時低迷したものの、サッカーの日韓ワー

ルドカップが開催された 2002年以降は再び盛り上がりを見せ、市場規模をさらに拡大させた。しかし、

2009 年以降、市場規模は減少し、2011 年に起きた東日本大震災の影響で大きく減少した。2012〜2013

年にかけて回復傾向が強くり、2018 年度現在まで8年連続で増収している。結果、2018 年度に J1・

J2・J3合計の営業収益は 1200 億円を突破し、成長率は 113.7%と高い比率となっている。(図表2)

(単位:億円)

(図表 2 J リーグ年度別営業収益合計 2018 年度クラブ経営情報開示資料より引用)

第2節 J リーグの収入項目

本節では J リーグ所属クラブの収入の出所について明らかにしていく。

J クラブの収入項目は大きく分けて5つの項目になる。図表3は J リーグの収入項目と内容を表し

たものである。欧州のサッカーリーグとの違いとしては、放映権料収入が挙げられる。欧州と比べ、J

リーグでは放映権料収入小さくなっている。欧州のサッカーリーグでは放映権収入が 50%を占めるク

ラブもあるほど大きな収入の柱となっている一方で、J クラブは広告料収入と入場料収入の2つが柱

となっている。

広告料収入は景気やスポンサー企業の業績に依拠する部分が大きいため、価格が大きく変動するリ

Page 9: Jリーグの観客動員数を上げるにはpweb.sophia.ac.jp/amikura/thesis/2019/fujiwara_takumi.pdf · おけるjリーグの定義付けをする。というのも、jリーグが意味するものはj1リーグのみなのか、j

スクがある。そのためクラブの安定した経営という観点から見ると、広告料収入は不安定なものであ

り広告料収入に重点を置くことはリスクが高いと言える。一方、入場料収入に関しては景気やクラブ

の調子に左右される部分はあるものの価格の変動は少なく、い少なくとも一定水準の収入は確保でき

る可能性が高い。これら J クラブの収入背景を踏まえると、本論文の目的である「観客動員数を増や

すこと」は J クラブの安定した経営のためにも、非常に大きな効果のある要素であると言える。

(図表 3 J リーグの収入項目と内容 「J リーグの現状分析」KPMG ジャパンより引用)

第3節 観客動員数

前節では J リーグの収入項目という観点から、観客動員数を増やす必要性を明らかにした。それを

踏まえ、本節では J リーグの観客動員数の推移を明らかにしていきたい。

図表4は 1999 年度から 2018 年までのリーグ戦総入場者数の推移を表したグラフである。全体的に

見ると J リーグの入場者数は大きく増加していることがわかる。これはサッカーというスポーツが日

本に根付いてきたことや景気の変動など様々な要因が挙げられる。2011 年の入場者数が落ち込んだ理

由は前述の通り、東日本大震災の影響である。2011 年のように入場者数は自然災害の影響で大きく変

動してしまう可能性があることがわかる。また、震災の影響で落ち込んだ 2011 年からは、J リーグの

総入場者数は右肩上がりで増加していることがわかる。2014 年からは J2に続く J3が開設したため、

それの影響も少なからずあるだろう。

Page 10: Jリーグの観客動員数を上げるにはpweb.sophia.ac.jp/amikura/thesis/2019/fujiwara_takumi.pdf · おけるjリーグの定義付けをする。というのも、jリーグが意味するものはj1リーグのみなのか、j

(図表 4 リーグ戦総入場者数の推移 2018 年度クラブ経営情報開示資料より引用)

第4節 1試合あたりの平均入場者数

本節では1試合あたりの平均入場者数について述べていく。

図表5は 1999 年度から 2018 年までの J リーグの1試合あたりの平均入場者数の推移を表したグラ

フである。このグラフからは、入場者数は J1リーグの試合が他のリーグに比べて圧倒的に多いことが

わかる。また、前節で明らかとなった総入場者数の増加の一方で、1試合あたりの平均入場者数は全体

的に大きな変動がないことがわかる。また、直近お 5 年間で J1の1試合あたりの平均入場者数は増加

していることがわかる。

Page 11: Jリーグの観客動員数を上げるにはpweb.sophia.ac.jp/amikura/thesis/2019/fujiwara_takumi.pdf · おけるjリーグの定義付けをする。というのも、jリーグが意味するものはj1リーグのみなのか、j

(図表 5 1試合あたりの平均入場者数の推移 2018 年度クラブ経営情報開示資料から引用)

第3章 観客動員数増加の要因

前章では J リーグの現状として、観客動員数が収入の観点から重要な要素であることや J リーグの

総入場者数、1試合あたりの平均入場者数がともに増加していることを明らかにした。それを踏まえ

本章では、観客動員数が年々増加している理由について分析し、その例を挙げることで今後の J リー

グ全体のさらなる観客動員数増加に活かせる点を考察していく。

第1節 要因分析

本節では、観客動員数が増加した要因を分析していく。

要因分析にあたり、まず1年間の J リーグ観客動員数は、

(スタジアムキャパシティ数) × (客席稼働率) × (年間試合数)

という式で求めることができる。これらの要素を見ていくと、年間試合数は直近5年間で変わってい

ないため、増加要因ではないと考えられる。つまり、増加した要因としては①スタジアムキャパシティ

数と②客席稼働率のどちらかまたは両方が増加したことだと考えられるため、この2つの要素をさら

に細かく分析していく。

① スタジアムキャパシティ数

スタジアムのキャパシティが増える理由としては、増設と新設の2つが可能性として考えられる。

ここでは、増設と新設の2つによって実際に観客動員数が増加するのかを検証していく。増設の検証

では、2015 年にホームスタジアムである等々力競技場を改築し、キャパシティを増設した川崎フロン

ターレの例を見ていく。

川崎フロンターレは 2015 年に等々力競技場を改築し、収容人数を 4000 人増加させた。図表6は川

崎フロンターレの平均入場者数を表している。この表を見ると、完成した 2015年を境に、平均入場者

数が大きく増加していることがわかる。つまり、収容人数を増加する改築は、観客動員数増加の要因で

あったと言えることができる。また、同時に、4000 人の増築で 4000 人以上増えていることから、ス

Page 12: Jリーグの観客動員数を上げるにはpweb.sophia.ac.jp/amikura/thesis/2019/fujiwara_takumi.pdf · おけるjリーグの定義付けをする。というのも、jリーグが意味するものはj1リーグのみなのか、j

タジアムの収容人数の増加だけでなく、整備としてスタジアムがきれいになることやその話題性も含

め、改築した収容人数以上の効果が見込める可能性があることもわかった。

(図表 6 川崎フロンターレ年度別ホーム平均入場者数 サッカーファムより引用)

続いて、新設の検証を行う。新設の検証にあたっては、2016 年にスタジアムを新設したガンバ大阪

の例を見ていく。図表7はガンバ大阪の平均入場者数を表している。これを見る限り、2016 年の新設

を機に、平均入場者数を大きく伸ばしていることがわかる。つまり、スタジアムの新設は観客動員数を

挙げる要因となっていることがわかった。

(図表 7 ガンバ大阪年度別ホーム平均入場者数 サッカーファムより引用)

② 客席稼働率

次に客席稼働率が観客動員数増加の要因となり得るのか見ていく。稼働率の増減の要因は大きく2

つに分けることができる。1つは外的要因、1つは内的要因である。外的要因とは景気や天気など、ク

ラブや J リーグだけでは動かすことのできない要素を指す。天候によって客席稼働率は大きく左右さ

れるが、この要素に関しては前述の通り動かすことができないので、今回は考えないものとする。

内的要因としては、チームの状態と選手の状態が挙げられる。というのも、スタジアムに試合を観に

Page 13: Jリーグの観客動員数を上げるにはpweb.sophia.ac.jp/amikura/thesis/2019/fujiwara_takumi.pdf · おけるjリーグの定義付けをする。というのも、jリーグが意味するものはj1リーグのみなのか、j

来る動機として、チームを見るためか選手を見るための2つが最も大きな要素だと考えたからだ。ま

た、チームに関しては調子や順位によるものが大きいと考え、それらも1クラブ単位、または J リー

グでは操作することができないため(八百長になってしまうため)、本論文では考えないものとする。

図表8は客席稼働率が増加の要因となり得るのかについて考えた際のプロセスを図表化したものであ

る。

(図表 8 客席稼働率増加要因の分析 筆者作成)

これを踏まえ、選手の状態を変えることで観客動員数を増加させることができるのかを検証してい

く。検証にあたり、スター選手の加入などで近年選手の状態を刷新したヴィッセル神戸を例を見てい

く。

図表9はヴィッセル神戸の年間入場者数を1試合平均入場者数の表である。ヴィッセル神戸はキャ

ッシュレス化などのスタジアム改修は行なったが、等々力競技場のような大規模な収容人数変更は行

なっていない。また、直近でスタジアムを新設することもしていない。これらの理由から、スタジアム

のキャパシティはほとんど増加していないことがわかる。しかし、図表9を見ると、ここ数年で入場者

数、1試合平均入場者数ともに大きく増加させていることがわかる。つまり、ヴィッセル神戸はここ数

年で客席稼働率を大幅に伸ばしたチームだということができるだろう。その要因としてあげられるの

は、スター選手の加入である。ヴィッセル神戸はここ数年、世界の舞台で活躍していた超ビッグネーム

と呼ばれる選手を多数獲得した。代表的な例としては、元ドイツ代表 F W のルーカス・ポドルスキや

元スペイン代表 M F のアンドレス・イニエスタ、同じく元スペイン代表 F W のダビド・ビジャらだ。

彼らの加入は日本だけでなく世界のサッカーファンの中で大きな話題となった。私も1サッカーファ

ンとしてこのニュースには大変驚いた記憶がある。サッカーファンなら知らない人はいないと言って

も過言ではないようなワールドクラスの選手たちの加入が観客動員数増加の大きな要因となったこと

は間違い無いだろう。

Page 14: Jリーグの観客動員数を上げるにはpweb.sophia.ac.jp/amikura/thesis/2019/fujiwara_takumi.pdf · おけるjリーグの定義付けをする。というのも、jリーグが意味するものはj1リーグのみなのか、j

シーズン リーグ 入場者数 試合数 1試合平均入場者数

(図表 9 ヴィッセル神戸年間入場者数 ヴィッセル神戸公式 HP より引用)

第2節 まとめ

本章では J リーグの観客動員数が増加している要因について考察してきた。結果、スタジアムの新

設・増築や選手の状態を変えること(特にスター選手を獲得すること)を要因として、観客動員数が増

加していることがわかった。

第4章 提案

前章では J リーグの観客動員数が増加している要因について考察してきた。その結果を踏まえ本章

では、観客動員数をさらに増やすために必要なことについて提案していきたい。この提案の内容とし

ては、J リーグに対する提案を想定している。

① スタジアム新設・改築費援助額の増額

観客動員数が増える要因としてスタジアムの新設・改築が大きな役割を果たしていることが明らか

となった。さらに多く観客を呼び込み、且つスタジアムに対する満足度を上げるための、スタジアム新

設・改築に伴う費用を J リーグ側が多く負担することで、各クラブが今よりも少ない負担でそれがで

きるようになる。2019 年からスタジアムの新設や改築に伴う費用に対して「スタジアム整備補助金」

という形で補助金を交付しているが、その金額をさらに上げるというものが、本提案である。J リーグ

によると、現在のスタジアム整備補助金は「1 クラブあたり 1,000 万円、年間合計 5,000 万円を上限と

し、スタジアム整備事業や整備に向けた調査事業に係る費用の一部を補助するもの」とされている。ま

た、スタジアム整備補助金の制度概要としては以下のようになっている。

【制度趣旨】

スタジアム整備事業や整備に向けた調査事業にかかる費用の一部を補助することで、Jリーグが掲げ

る理想のスタジアムの整備を促進する

【対象】

Jリーグ規約第 30 条「理想のスタジアム」に定める 4 要件のすべてを満たすための抜本的なスタジア

ム整備を行うJクラブ

【補助内容】

1 クラブ当たりの上限 1,000 万円(対象経費<工事費・調査費>の 2 分の 1 以内)

この制度では上限が 1000 万円となっているが、スタジアムの工事では 100 億円を超えるものも少な

Page 15: Jリーグの観客動員数を上げるにはpweb.sophia.ac.jp/amikura/thesis/2019/fujiwara_takumi.pdf · おけるjリーグの定義付けをする。というのも、jリーグが意味するものはj1リーグのみなのか、j

く無い。それを踏まえると上限が 1000 万円というのは非常に少ないと感じてしまうため、この上限を

上げることで、各クラブがより負担を少なくスタジアムの新設・改築ができると考えた。また、「交付

が決定したクラブは、2020 年 12 月 10 日までに事業を完了し、Jリーグ宛に報告書を提出する」とい

う制限も存在する。事業官僚が 2020 年 12 月 10 日までということは実質1年以内に工事を完了させな

ければいけないということである。シーズンと並行して工事をすることが難しい中で1年以内に事業

完了させないければならないという制限があることで、この補助金を申請しづらくなっているのでは

無いかと考えたため、この制限をより延期することでさらに多くのチームに交付することができるの

では無いかと考える。

② 外国人選手枠の拡大

外国人選手枠とは、試合にでられる日本国籍以外の選手の人数の制限である。現在 J リーグでは、

外国人選手の登録、かつ同時出場は5名まで(J2・J3では4名)と定められている。この制限は年々

ゆるくなってはいるものの、まだ5名という制限があるため、ヴィッセル神戸など多くの外国人が在

籍するクラブでは思うように外国人選手を活かしきれていない現状がある。そのため、外国人選手枠

をさらに拡大することでより多くの外国人選手の獲得を促し、スター選手が多く在籍するリーグにな

ることで観客動員数を増やせるのではないかと考える。

第5章 結論

前章では観客動員数を増やすための方策として、2つの提案をした。本章ではそれらの提案を検証

し、結論とする。

第1節 検証

本節では第4章で述べた提案を検証していく。検証の際は実現可能性と費用、効果の大きさの観点

から見る。

・実現可能性

実現可能性としては、外国人選手枠の拡大の方が高いといえる。というのも、外国人選手枠の拡大の

ために必要なプロセスが制度を変えるのみである一方で、補助金に関しては制度を変えるだけではな

く実際に予算の策定など踏まなくてはいけないプロセスが多い。以上の理由から、実現可能性は外国

人選手枠の拡大の方が高いと言える。

・費用

実現可能性のところでも少し触れた通り、費用は圧倒的に補助金を交付する方が多くかかる。よっ

て、外国人選手枠拡大の方が費用の面でも優れていると言える。

・効果の大きさ

効果の大きさの観点からみると、補助金交付の方が大きいと考えている。というのも、外国人選手枠

を拡大することに成功したとしても、スター選手を獲得できるかどうかは各クラブの資金面や交渉力、

ブランド力などに依存する部分が多いからだ。一方スタジアム補助金の方は、より多くの補助金を交

付することができればより多くのクラブのスタジアムを整備することができるため、効果の大きさは

スタジアム補助金の方が高いと言える。

第2節 結論

本節では前節で行なった検証を踏まえて、本論文に結論づけを行う。図表 10 は前節の検証を数値化

Page 16: Jリーグの観客動員数を上げるにはpweb.sophia.ac.jp/amikura/thesis/2019/fujiwara_takumi.pdf · おけるjリーグの定義付けをする。というのも、jリーグが意味するものはj1リーグのみなのか、j

し表にしたものである。

(図表 10 提案の検証 筆者作成)

この表を踏まえ、第4章の提案の②外国人選手枠の拡大を J リーグの観客動員数を上げるために J

リーグが行うべき方策として結論づける。

第6章 終わりに

本論文を通じ、J リーグの観客動員数を上げるためにするべきことについて考えた。空席が目立つと

思っていたが実際には観客動員数が伸びていたり、J リーグが既に様々な取り組みを行っていたりと、

自分が知らない多くの新しい発見があった。また、本論文の執筆にあたり問題定義から結論まで、様々

な難しさを経験した。例えば、問題定義の難しさである。日頃の生活から疑問に思うことをピックアッ

プする。一見簡単そうに見えるが常にアンテナを張っていないと非常に難しいことであると感じた。

何も無いところから何かを生み出すことは今後社会人として仕事をする上で非常に大切な力になると

思うので、今後成長していきたいと感じた。

<参考文献>

・「J リーグ.jp」

https://www.jleague.jp/aboutj/

・「J リーグの現状分析」KPMG ジャパン

https://assets.kpmg/content/dam/kpmg/pdf/2016/03/jp-sports-advisory-20150915.pdf

・「2018 年度クラブ経営情報開示資料」公益社団法人日本プロサッカーリーグ

https://www.jleague.jp/docs/aboutj/club-h30kaiji_4.pdf

・「サッカーファム 入場者数データ」

http://soccer-fam.jp/gamba-attendance

・「ヴィッセル神戸公式ホームページ」

https://www.vissel-kobe.co.jp/news/article/15547.html