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yuhsuke-koyama
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JRPGの誕生と概念の吟味
小山友介(芝浦工業大学)
はじめに:そもそも, JRPGって? 海外で日本産 RPGを意味する表現
賞賛と言うより,揶揄する表現 いつ頃から用いられているかは不明
参照文献にあげた Kohler( 2005)には無く, Barton( 2008)には JRPGの表記がある.そのあたりで広がったのでは?
現世代の据置機時代から,日本ゲーム産業の低迷が激しく,欧米に逆転されたという論調が多い.その頃に生まれた議論だろう(状況証拠)
明確な定義がない 日本と異なり, RPGと ARPGの区別をしない
そのため,ゼルダの伝説や Ysも JRPG扱い 共通点は「日本で制作された RPG」という点のみ
つかみ(1) DQ9のアマゾンレビュー 高評価もあるが,酷評も多い
他のレビューサイト( DSmk2)も同傾向( 57点) いくつかのニュースで話題に
酷評の理由の一つが仲間キャラ 話さない,ストーリーに絡まない・・・ おっさんゲーマーの私には強い違和感
だって,ドラクエってそう言うゲーム・・・ 作品を出してないうちに,日本人の RPGイメージと DQの間にズレが生じた?→じゃぁ,そもそも JRPGってどういうもの?
2010年 11月 7日現在
つかみ(2) 海外の JRPG評 最近の JRPG議論:「後進性」「ガラパゴス化」
Bioware創設者:「 JRPGには進化も進歩もない」 Jim Sterling:「ドット絵中心なら,携帯機で出せばいい」 新清士:日本人が「洋ゲー」を揶揄するときと同じ響き
Kohler( 2005)が指摘した日本ゲームの特徴 起承転結のある物語,カットシーン,完璧に設定されたキャラクタ,映画形式のプレゼンテーション
FFの影響大 Barton( 2008)による説明
非常に様式化されたな外観と操作感覚 直感的なゲームプレイと一本道のストーリー展開
本発表の目的 JRPGに関する議論の交通整理
JRPGに定義があるのか,出来るのか JRPGに特徴的な要素の歴史的発生プロセス
発表者の考え JRPGを厳密に定義することは不可能
いくつかの JRPG的要素の集積として表現 理念型を示すことは可能だが,完全に類型的な JRPGは無い
日本の RPG受容史が, JRPG形成に大きな影響 海外 RPGがさまざまに「翻訳」された DQは RPG受容史の結節点であり, JRPG史の「序章」
RPG経験のコアは何? WRPG・・・ Barton( 2008):システム重視 長いRPGの歴史に共通する要素→「キャラクタが戦闘や行動する際に作動する 統計的システム」 手元の資源を駆使し,目前の困難を乗り越える
多摩( 1995):日本RPGはストーリー重視 堀井雄二のもたらしたもの( 2章 5節)
RPGを「ストーリーを語るためのシステム」ととらえた 日本においては, RPGとは“キャラクターが成長するシステムを持ったストーリーメディア”と捕らえられたのである.( P82)
ただし,今回の議論では,初期DQはまだストーリー寄りになりきってない,と考えています
余談:日本と欧米の RPG文化差私論 日本:ゲーム=趣向のある遊び
コマンド式戦闘:「趣向の一つ」として自然に許容 ゲーム「で」遊んでも,ゲーム「を」鑑賞してもいい
欧米:ゲームに対する「シミュレータ志向」が強い さらに,「ゲーム=自己表現のツール」と言う要素も RPGもリアル・シミュレータ志向
ごくわずかな例外を除いて、西洋のRPGは厳格にシリアスかつリアルであり、第一の顧客はティーンエイジャーと大人の男性である。一方、 JRPGはより広範な人々を対象としている。 Barton( 2008, P223)
アクション性が自然に取り入れられる
90年代~定着
日本の RPG受容(と翻訳)史・強引まとめ
70年代後半~ 80年代前半普及前期
80年代後半普及後期
90年代~定着
PCRPG
Wizardry(米)Ultima(米)The Black Onyx( BPS)夢幻の心臓(クリスタルソフト)
エメラルドドラゴン(バショウハウス)ビジュアルシーン,群像劇
英雄伝説(ファルコム)章立て
ACTARPG
ドルアーガの塔(ナムコ)ドラゴンバスター(ナムコ)ハイドライド( T&Eソフト)Xanadu(ファルコム)
イース(ファルコム)夢幻戦士ヴァリス(テレネット)ゼルダの伝説(任天堂)
家庭用 DQ1~ 3(エニックス)FF1~ 4(スクウェア)Wizardry( FC移植)
DQ4~
その他 『火吹き山の魔法使い』(翻訳)ゲームブックブーム
『ロードス島戦記』(小説版)
80年代後半普及後期
70年代後半~ 80年代前半普及前期
日本の RPG受容史(1) 1970年代後半~ 80年代前半:普及前期
一部の好事家が英語版でプレイ 英語版 D&Dや Apple版Wizardry, Ultimaなど
PC雑誌/ゲーム雑誌で紹介・説明記事
一般ユーザ-:「気になる」けど「取っつきづらい」 ゲーム中に何をしていいか分からない,難しい 基本的知識の圧倒的不足
中世ヨーロッパファンタジーなんて,誰も知らない
→日本的な「翻訳」と「啓蒙」が不可欠に
当時の RPG啓蒙の様子
Beepに連載されていた「 RPG幻想事典」(第 1回, 1985年 8月号)とその単行本
日本の RPG受容史(2) 普及初期:デジタル /アナログ RPG同時受容
PCゲーム:「ブラックオニキス」( 1984) ゲームブック翻訳:『火吹き山の魔法使い』( 1984)
「ロードス島戦記」 コンプティーク誌上での D&Dリプレイ( 1985) 小説第 1巻「灰色の魔女」( 1988)
日本的な「翻訳」「味付け」作業 ACT:謎解き要素,アイテム利用, 3機制→ライフ制 ARPG, RPG:システムの簡素化
TRPGの即興詩的に物語を紡ぐ伝統は別系列として,コンピュータ RPGの冒険システムを輸入・翻案
同時期:「プレイ時間至上主義」の終焉 ADV:不当な単語探し,
理不尽な謎→物語中心へ 簡単に終わらない→プレイそのものを楽しめる
「オホーツクに消ゆ」以後,コマンド選択式が定着
ARPG:イースが転換点 「 RPGは今,優しさへ」 理不尽な謎もなく,殆どの人がエンディングに行ける アクション下手はダームの塔で詰みますが・・・
広告: Beep1987年 9月号より
第1次結節点としてのドラクエ 「ドラゴンクエスト」発売( 1986)
続けて DQ2, DQ3が 1年ごとに発売 DQ1作目:初回出荷 70万本→口コミで 100万本
初回出荷時点で,日本で一番売れた RPG PCの最大ヒットタイトルは XANADUの 40万本
おそらく,当時の日本国内の RPG合計販売数< DQ3部作
→RPGシステム( RPGの「文法」)のスタンダードに
RPG≒ドラクエのようなゲーム
DQの古典的要素,古典化した要素 当時の米国 RPGらしさが残っている点
主人公=プレイヤーの図式 言葉を発しない,名前が付けられる
行動の自由度が(以外と)高い 船の入手までが「長めのチュートリアル」,そこからは任意の順番で冒険可能
ストーリー性が薄い:戦闘と冒険が第一義的 RPGのスタンダードとなった要素
洞窟まで 2Dのフィールドマップ コマンド入力式戦闘 誰でも解ける「やさしさ」 さまざまな演出:にじのしずく, DQ2のオープニング
DQ後の日本での RPG進化 ドラクエ的冒険システム+演出面での差別化※DQと同時期の現象も含む 主人公の 3人称化 シナリオの群像劇化 ビジュアル要素
戦闘中のカットイン 重要イベント時にビジュアルシーン
ヒロインとの恋愛要素 リアルタイム性を加味した戦闘
主に PCで様々なチャレンジがなされる 90年代半ばまでは PCのゲームの方が「高級」「格上」感
余談:DQ発展経路イメージ
軸足はシステムに置きながら他の RPGの発展/影響を受けつつ発展
RPG受容史まとめと JRPG 日本の RPG
冒険システムのスタンダード: DQ 1人称のゲームプレイ,ゲーム体験中心
シナリオ周り・各演出面で DQから差別化→ JRPGへ シナリオ+それを生かす冒険システム, DQ4以降に還流
閉鎖的大陸での進化:恐竜? 有袋類? では, JRPGとは?
完全に典型的な JRPGのタイトルをあげるのは難しい 多くの JRPG的要素の寄せ集め
JRPG指標が作れるのでは? 論文の最後にリストをあげました(まだまだ改良の余地アリ)
全体まとめ:今後の JRPG 据置機の表現力とのつきあい方が鍵
それまでの「ゲームのお約束」がみすぼらしく見える 個人的にショックを受けたのが DQ8の戦闘
作り込みの地獄に陥らないように 据置機で制作するに十分なシステム・世界観が必要
ヒントになりそうなのがエンドオブエタニティ 退廃的な世界,ど派手な戦闘シーン,バカゲー要素
ドット絵の様式美を追求するなら携帯機もアリ JRPGのバリアフリー性・ユニバーサル性は長期的には強み
戦闘 コマンド選択式のターン制バトルである 各キャラが持ち技(必殺技)を持っている 武器のバリエーションが豊富で,各キャラで使える武器の系列が異なる
特殊技が発動するときには画面にカットインが入る 物語
少年(もしくは少女)の成長物語である 何気ない事件に巻き込まれる形でスタートした冒険が,いつの間にか世界を救う話になっている
ストーリー上の敵役も,絶対的な悪ではない.「異なる2つの正義がぶつかることの悲劇」というストーリーラインである
主人公とヒロインの恋愛要素がある
登場人物 ゲーム中にパーティの構成メンバーが頻繁に入れ替わる パーティに入る仲間キャラの過去がストーリー上で重要な役割を果たす
仲間キャラクタは、何らかのトラウマや克服すべき弱さを持ったキャラが多い
仲間キャラクタが「立って」いる 登場キャラ同士の掛け合いの妙が作品の魅力の一つである
世界観 中世ヨーロッパのファンタジー世界,もしくは,スチームパンク世界である
異国から来た武芸者,という想定の登場人物がいる. 失われた古代文明の産物が重要アイテムとして登場する ゲーム中に魔法や超能力が発揮できるキャラがいる
演出 主人公キャラの名前が決まっており,変更不可である. 重要なシーンでは、主人公はプレイヤーの操作や意思決定と関係なく話し,意思決定する
画像表現 移動中の操作キャラはデフォルメされたドット絵で表現される ステータス画面もしくは会話中に出るキャラの絵はアニメ的な絵である ゲーム中の演出として,ムービーシーンがある
フラグ管理・ゲーム展開 物語が章別構成となっており,発生するイベントが厳密に管理されている
ストーリー上での重要イベントが,制作者が意図した「成功」以外の終わり方(失敗,大成功など)をすることがない
基本的に、制作者が用意したフラグをクリアするまで、次の街に移動できない(一本道展開)
ストーリーを進めるイベントの謎解きに理不尽なものは存在しない