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ICPC-2を利用した SOAP記述型診療所向け 電子カルテの開発 ○医療法人 社団 カレスアライアンス 登別記念病院 佐藤健一 地域医療振興協会 山田隆司 株式会社 サイバーラボ 加藤康之 Kenichi Sato POS医療学会’05.6.10~11 電子カルテ開発に関わったきっかけ 2001年 経済産業省、医療情報システム開発センター(MEDIS)の公募 「先進的IT活用による医療を中心としたネットワーク化推進事業 ー 電子カルテを中心とした地域医療情報化ー」プロジェクト MAJUNの開発コンセプト 医学知識の共有(多くの電子カルテは患者情報の共有) →最新の知識を表示(医療の質を均一化) そのために ・EBMエンジンの開発 ・POMRを簡便・的確に入力するインターフェースの開発(ICPC利用) ・治療ガイドラインとの適正性を評価するEBMフィルタ 沖縄県立中部病院が EBM支援型電子カルテ「MAJUN」で採択 これに診療所部門で参画 2 Kenichi Sato POS医療学会’05.6.10~11 実際の画面 3 Kenichi Sato POS医療学会’05.6.10~11 現時点での多くの電子カルテの特徴 SOAP形式で記載は可能 A、PについてはICD10( or 9-CM)を用いて共通化 診療報酬明細書へ病名を自動記載 しかし ・ 診療時間短縮を目的としているものが多い ・ 診療の継続性は考慮されていない ・ 医療者にとって使いやすさを追求 4 Kenichi Sato POS医療学会’05.6.10~11 家庭医が電子カルテを使う時の問題 本当に、患者中心のシステムとなっているのか? 家庭医に重要な診療の継続性は記録されるか? 日本の医療状態を正しく反映できる情報か? 国民の健康増進に結びつくのか? 医療の質の均一化・向上に結びつくのか? 現在の電子カルテでこの条件を満たすものはない 5 診療所の外来診療で求められている機能 Kenichi Sato POS医療学会’05.6.10~11 診療内容は貴重な医療情報なのに... S、Oの記載方法・形式がバラバラ                  ⇒例:テキスト(フリー記載、スタンプ、ひな形)、画像貼り付け 同じ医学用語でもソフトによって割り当てたコードが異なる     ⇒互換性が取れない 数回の診察で診断がついた時に最終病名と最初の受診理由(愁訴)  を結びつけることができない                   ⇒各診察毎のSOAPを連続したものとして捉える概念がない →国民にとって有効なデータにならない 6

[kenichi Sato/佐藤健一](2005/06/11)<POS学会>「ICPC-2を利用したSOAP記述型電子カルテの開発」

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ICPC2を用い他電子カルテを作成することがどのようなメリットを国民にもたらすのかをまとめています.元となるのは沖縄で働いていたときに県立中部病院が開発していたEBM対応型電子カルテです(経産省案件).そこから発展させた内容となっています.

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Page 1: [kenichi Sato/佐藤健一](2005/06/11)<POS学会>「ICPC-2を利用したSOAP記述型電子カルテの開発」

ICPC-2を利用したSOAP記述型診療所向け電子カルテの開発

○医療法人 社団 カレスアライアンス 登別記念病院 佐藤健一 地域医療振興協会 山田隆司

 株式会社 サイバーラボ 加藤康之 Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

電子カルテ開発に関わったきっかけ2001年 経済産業省、医療情報システム開発センター(MEDIS)の公募 「先進的IT活用による医療を中心としたネットワーク化推進事業 ー    電子カルテを中心とした地域医療情報化ー」プロジェクト

MAJUNの開発コンセプト 医学知識の共有(多くの電子カルテは患者情報の共有)   →最新の知識を表示(医療の質を均一化)そのために・EBMエンジンの開発・POMRを簡便・的確に入力するインターフェースの開発(ICPC利用)・治療ガイドラインとの適正性を評価するEBMフィルタ

沖縄県立中部病院が EBM支援型電子カルテ「MAJUN」で採択これに診療所部門で参画

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Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

実際の画面

3 Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

現時点での多くの電子カルテの特徴SOAP形式で記載は可能A、PについてはICD10( or 9-CM)を用いて共通化診療報酬明細書へ病名を自動記載

しかし・ 診療時間短縮を目的としているものが多い・ 診療の継続性は考慮されていない・ 医療者にとって使いやすさを追求

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Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

家庭医が電子カルテを使う時の問題

本当に、患者中心のシステムとなっているのか?家庭医に重要な診療の継続性は記録されるか?日本の医療状態を正しく反映できる情報か?国民の健康増進に結びつくのか?医療の質の均一化・向上に結びつくのか?

現在の電子カルテでこの条件を満たすものはない

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診療所の外来診療で求められている機能

Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

診療内容は貴重な医療情報なのに...S、Oの記載方法・形式がバラバラ                          ⇒例:テキスト(フリー記載、スタンプ、ひな形)、画像貼り付け同じ医学用語でもソフトによって割り当てたコードが異なる    ⇒互換性が取れない数回の診察で診断がついた時に最終病名と最初の受診理由(愁訴) を結びつけることができない                  ⇒各診察毎のSOAPを連続したものとして捉える概念がない

→国民にとって有効なデータにならない6

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Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

ICPC-2を用いた次世代電子カルテICPC-2とは?

International Classification of Primary Care 2nd editionプライマリケア国際分類 第2版

・ICDを元に外来診療向けに作成 (ICD10と互換性有り)・愁訴(受診理由)、症状、診療行為、治療行為、診断に いたる一連の記録が可能(SOAP形式での入力が前提)・健康問題についての継続性を重視・患者指向型の情報収集システム・保険請求に使用している国もある(オランダなど)

7 Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

ICPC-2の構造章 (第1の軸): 臓器別の17の章を持つ軸要素(第2の軸): 7つの要素を持つ軸

A B D F H K L N P R S T U W X Y Z1234567

章要素

臓器別の17の章を持つ軸

7つの要素を持つ軸

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Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

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A:全体及び部位不特定 general and unspecifiedB:血液、造血器、リンパ系、脾臓 bloodD:消化器  digestiveF:眼  eyeH:耳  hearingK:循環器  circulatoryL:筋骨格  locomotionN:神経  neurologicalP:心理、精神  psychologicalR:呼吸器  respiratoryS:皮膚  skinT:内分泌、代謝、栄養  endocrineU:泌尿器  urologicalW:妊娠、育児、家族計画  pregnancyX:女性性器(乳房を含む)  female genitalY: 男性性器  male genitalZ:社会問題  social problems

Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

要素の軸1:症状および愁訴    例 A03:発熱、D09:嘔気、R05:咳2:診断及び予防行為   例 -30:診察、-45:健康教育/指導3:投薬、治療、治療行為 例 -34:血液検査、-50:投薬4:結果         例 -60:検査/診療行為の結果5:各種書類       例 -62:各種書類の作成 6:紹介と他の受診理由  例 -63:経過観察のための受診7:診断/疾患      例 H71:急性中耳炎、K75:急性心筋梗塞

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Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

ICPC-2の各要素とSOAPの対応は?

1:症状および愁訴2:診断及び予防行為3:投薬、治療、治療行為4:結果5:各種書類6:紹介と他の受診理由7:診断/疾患

1:症状および愁訴

7:診断/疾患

2:診断及び予防行為3:投薬、治療、治療行為4:結果5:各種書類6:紹介と他の受診理由

受診理由

診断病名 介入(検査、治療)

診察行為

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診断病名介入(検査、治療)

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11 Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

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ICPC-2における健康問題のとらえ方

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Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

多くの電子カルテでは...@ABC$DE

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この入力をどうするか

13 Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

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ICPC-2対応の電子カルテでは...@ABC$DE

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診療の継続性を重要視できるか

Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

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QR=RS*ITU:;<=$VW1.倦怠感と咳を訴えて外来初診.診察の上で急性上気道炎と考え薬を処方

2.3日後発熱も見られ、親戚で肺炎の方がいて自分も不安になり再診.  胸部レントゲンと採血をおこない肺炎の診断で薬を処方.

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15 Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

ICPC-2とICD10の関係A48 その他の細菌性疾患,他に分類されないもの  A48.1 レジオネラ症<在郷軍人病>J10 インフルエンザウイルスが分離されたインフルエンザ  J10.0 肺炎を伴うインフルエンザ,インフルエンザウイルスが分離されたJ11 インフルエンザ,インフルエンザウイルスが分離されないもの  J11.0 肺炎を伴うインフルエンザ,インフルエンザウイルスが分離されないJ12 ウイルス肺炎,他に分類されないもの  J12.0 アデノウイルス肺炎   J12.1 RSウイルス肺炎   J12.2 パラインフルエンザウイルス肺炎   J12.8 その他のウイルス肺炎   J12.9 ウイルス肺炎,詳細不明J13 肺炎レンサ球菌による肺炎J14 インフルエンザ菌による肺炎J15 細菌性肺炎,他に分類されないもの  J15.0 肺炎桿菌による肺炎   J15.1 緑膿菌による肺炎   J15.2 ブドウ球菌による肺炎   J15.3 B群レンサ球菌による肺炎   J15.4 その他のレンサ球菌による肺炎   J15.5 大腸菌による肺炎   J15.6 その他の好気性グラム陰性菌による肺炎   J15.7 マイコプラズマ肺炎   J15.8 その他の細菌性肺炎   J15.9 細菌性肺炎,詳細不明J16 その他の感染病原体による肺炎,他に分類されないもの  J16.0 クラミジア肺炎   J16.8 その他の明示された感染病原体による肺炎J18 肺炎,病原体不詳  J18.0 気管支肺炎,詳細不明   J18.1 大葉性肺炎,詳細不明   J18.2 臥床<沈下>性肺炎,詳細不明   J18.8 その他の肺炎,病原体不詳   J18.9 肺炎,詳細不明

ICPC-2における肺炎包含(ICPC-2原版で記載)・細菌性およびウィルス性肺炎・気管支肺炎・インフルエンザ肺炎・レジオネラ症・肺[臓]炎

 類語(分類委員会で拡張中)在郷軍人病インフルエンザ気管支肺炎ウイルス性気管支肺炎肺炎連鎖球菌性気管支肺炎肺炎球菌肺炎原発性異型肺炎原発性非定型肺炎細菌性肺炎エンテロバクター肺炎クレブシェラ肺炎大腸菌肺炎シュードモナス肺炎肺炎桿菌肺炎非定型肺炎クラミジア肺炎小児肺炎カタル性肺炎クループ性肺炎大葉性肺炎乳児肺炎敗血症性肺炎肺炎

ICD10における肺炎

R81:肺炎R99:その他の呼吸器疾患   (嚥下性肺炎)

27項目以上有り変換可能

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Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

受診理由と診断・介入を結びつける意義

「症状・所見・介入」⇔「診断」の関連性

治療介入(薬剤・検査)の頻度・種類・効果

介入(薬剤・検査)と副作用の関連性

長期フォロー中の合併症の発生率

1.受療者・医療者にとって

17 Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

受診理由と診断・介入を結びつける意義

多施設の情報集積による疾患動向の迅速な把握

治療に対する医療者・地域間のコスト比較

真の地域における疾病罹患状況の把握

診療情報から新たな診療ガイドライン・EBMの作成

→日常診療を入力するだけで宝の山ができる

2.国全体にとって

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Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

ICPC-2を使う際に問題となりうる点ICPC-2の記載・入力方法に慣れるのに時間がかかりうる

他の電子カルテに比べ入力の手間が多い可能性

そもそもICPC-2対応電子カルテがまだ運用されていない

個人情報保護法とのからみ(全てコード化して対応)

19 Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

開発途中の画面(S1の入力)

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Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

開発途中の画面(A1の入力)

21 Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

開発途中の画面(エピソード)

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Kenichi SatoPOS医療学会’05.6.10~11

最後に電子カルテ市場はまだまだ発展途上である

そのような中、真に国民の健康増進に役立つような電子カルテが求められている

医療に関わる者・機関が利害関係を抜きにして共同して実用化に持っていくことが理想

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