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脳波のフラクタル解析を用いたメントール配合シャンプーの感性評価 (キーワード:脳波、フラクタル次元解析、感性評価、爽快感、メントール、シャンプー) 橋本公男,上田俊吾(サンスター(株)研究開発部),丸山貴司,中川匡弘(長岡技術科学大学工学部) 569-1044 大阪府高槻市上土室5-30-1,Tel.072-694-7788/Fax.072-695-0766 (お問い合わせ先) E-mail : [email protected] はじめに 実験方法と解析手法 実験結果 まとめ シャンプーの主な構成成分 ①洗浄成分 泡が立ち、頭皮の皮脂を洗い流す成分. ②コンディショニング成分 毛髪に付着し、保護・保湿する成分. ③皮膚感覚を満足度させる「何か」. 爽快感・清涼感を訴求した爽快系シャンプーの開発 課題点:爽快感や清涼感の評価 ・個人の好みが影響し、アンケートによる評価が困難. ・実際の感覚と一致しない. 本研究の概要と目的 清涼剤(l-メントール)配合量が異なるシャンプーにおいて、 「爽快感」、「清涼感」、「リラックス」の3種類の感性に 感性フラクタル次元解析手法 EFAM : E motion F ractal A nalysis M ethodを適用し、感性計測を行いました.さらに、 実際に市販されている製品についても爽快感の 感性評価を行いました. 爽快感、清涼感の付加 清涼剤(l-メントール)の配合 1 サンスタートニックシリーズの変遷 ※サンスタートニックシリーズ(図1)は、1968(昭和43年)の発売以来40年もの間、男性を 中心として根強い支持のある製品となっている。 フラクタル次元解析手法& 感性フラクタル次元解析手法 脳波のフラクタル次元の推定には、分散の スケーリング特性を用いたフラクタル次元推定法を 用い、感性の定量化には感性フラクタル次元解析手法 を用いました.図2に解析の流れを示します. 3 皮膚感覚再現手法 4 リファレンス想起補助画像 (左:爽快感、右:清涼感) 5 実験の流れ シャンプー希釈液塗布 0 180 脳波測定 0 900 アンケート実施 sec被験者が「爽快感」*などの イメージを思い浮かべる 脳波を測定 (リファレンス) 感性のイメージを フラクタル分析し分類 感性のモデル化→学習部として使用 (感性マトリクスの設定) 被験者が実際に サンプル刺激を受ける 脳波を測定 脳波をフラクタル分析し モデルと比較 感性の分類と評価 モデル化のフロー 測定のフロー *測定したい感性を自由に設定できる 2:実験・解析の流れ 測定条件 実験手法 :耳の下にシャンプー希釈液を塗布し、洗髪後の皮膚感覚 を再現した手法.(図3被験者 健康な成人男性8サンプル :①清涼剤配合量が異なるAE5種類 l-メントール 配合量:0.0 %、0.5 %、1.0 %、1.5 %、2.5%) ②サンスタートニック スカルプシャンプー(’0609年発売) 実験の流れ ⅰ)アンケート評価結果(図66 アンケート評価 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 A:0.0% B:0.5% C:1.0% D:1.5% E:2.5% 8 清涼感 ⅱ)感性評価結果 各感性の感性出力値(図79)とアンケート評価値との類似性(図10※類似性:-11の値をとり、1に近いほど似ているという解釈. 10 アンケート結果と感性解析結果の類似度 7 爽快感 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 A:0.0% B:0.5% C:1.0% D:1.5% E:2.5% 9 リラックス 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 A:0.0% B:0.5% C:1.0% D:1.5% E:2.5% 1 2 3 4 5 6 7 A:0.0% B:0.5% C:1.0% D:1.5% E:2.5% ( ) 感覚を感じる早さ 感覚の強さ 感覚の持続時間 1 2 3 4 5 A:0.0% B:0.5% C:1.0% D:1.5% E:2.5% ( ) 爽快感 清涼感 快適感 全体的な感覚の好み ⅰ)アンケート評価 l-メントールの配合量が多い程、爽快感、清涼感のアンケート評価値も高くなることが確 認されました.快適感は、0.01.5%にかけて、l-メントール 配合量が多くなるとアンケー ト評価値も高くなるが、 2.5%で低くなり、清涼剤による皮膚刺激が強すぎると不快感が 引き起こされる可能性が示唆されました. ⅱ)感性評価結果 爽快感:アンケート結果と類似した結果が得られました. 清涼感:アンケート結果との関係は認められなかった. リラックス:アンケート結果との関係はやや認められた. 全体的な好み:爽快感・リラックス(感性解析結果)と全体的な 好み(アンケート評価)との間に高い類似性が認められました. ’06年処方(従来品)と’09年発売処方(発売 品)に対してこの手法を適用しました.その結果、 従来品に比べて発売品の方が、高い爽快感が実 現できたことが明らかになりました(図11). 12 2009年春発売トニックシリーズ 11 製品における評価 0 0.2 0.4 0.6 0.8 従来品 発売品 EFAMを用いた 感性解析の 有用性を示した. 今後の展望 メントール配合シャンプー使用時の感性を 理解することで、消費者の満足度を高める 処方開発を行います. 中川 匡弘 教授

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脳波のフラクタル解析を用いたメントール配合シャンプーの感性評価 (キーワード:脳波、フラクタル次元解析、感性評価、爽快感、メントール、シャンプー)

橋本公男,上田俊吾(サンスター(株)研究開発部),丸山貴司,中川匡弘(長岡技術科学大学工学部)

〒569-1044 大阪府高槻市上土室5-30-1,Tel.072-694-7788/Fax.072-695-0766

(お問い合わせ先)

E-mail : [email protected]

はじめに

実験方法と解析手法

実験結果

まとめ

シャンプーの主な構成成分 ①洗浄成分

泡が立ち、頭皮の皮脂を洗い流す成分.

②コンディショニング成分

毛髪に付着し、保護・保湿する成分.

③皮膚感覚を満足度させる「何か」.

爽快感・清涼感を訴求した爽快系シャンプーの開発

課題点:爽快感や清涼感の評価

・個人の好みが影響し、アンケートによる評価が困難.

・実際の感覚と一致しない.

本研究の概要と目的 清涼剤(l-メントール)配合量が異なるシャンプーにおいて、

「爽快感」、「清涼感」、「リラックス」の3種類の感性に

感性フラクタル次元解析手法

(EFAM : Emotion Fractal Analysis Method)

を適用し、感性計測を行いました.さらに、

実際に市販されている製品についても爽快感の

感性評価を行いました.

爽快感、清涼感の付加 清涼剤(l-メントール)の配合

図1 サンスタートニックシリーズの変遷

※サンスタートニックシリーズ(図1)は、1968年

(昭和43年)の発売以来40年もの間、男性を

中心として根強い支持のある製品となっている。

フラクタル次元解析手法&

感性フラクタル次元解析手法 脳波のフラクタル次元の推定には、分散の

スケーリング特性を用いたフラクタル次元推定法を

用い、感性の定量化には感性フラクタル次元解析手法

を用いました.図2に解析の流れを示します.

図3 皮膚感覚再現手法

図4 リファレンス想起補助画像

(左:爽快感、右:清涼感)

図5 実験の流れ

シャンプー希釈液塗布

0 180

脳波測定

0 900

アンケート実施

(sec)

被験者が「爽快感」*などの

イメージを思い浮かべる

脳波を測定

(リファレンス)

感性のイメージを

フラクタル分析し分類

感性のモデル化→学習部として使用

(感性マトリクスの設定)

被験者が実際に

サンプル刺激を受ける

脳波を測定

脳波をフラクタル分析し

モデルと比較

感性の分類と評価

モデル化のフロー 測定のフロー

*測定したい感性を自由に設定できる

図2:実験・解析の流れ

測定条件 実験手法 :耳の下にシャンプー希釈液を塗布し、洗髪後の皮膚感覚

を再現した手法.(図3)

被験者 : 健康な成人男性8名

サンプル :①清涼剤配合量が異なるA~Eの5種類

(l-メントール 配合量:0.0 %、0.5 %、1.0 %、1.5 %、2.5%)

②サンスタートニック スカルプシャンプー(’06、 ’09年発売)

実験の流れ

ⅰ)アンケート評価結果(図6)

図6 アンケート評価

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

A:0.0% B:0.5% C:1.0% D:1.5% E:2.5%

 高 感性出力 低 →

図8 清涼感

ⅱ)感性評価結果

各感性の感性出力値(図7~9)とアンケート評価値との類似性(図10) ※類似性:-1~1の値をとり、1に近いほど似ているという解釈.

図10 アンケート結果と感性解析結果の類似度

図7 爽快感

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

A:0.0% B:0.5% C:1.0% D:1.5% E:2.5%

 高 感性出力 低 →

図9 リラックス

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

A:0.0% B:0.5% C:1.0% D:1.5% E:2.5%

 高 感性出力 低 →

1

2

3

4

5

6

7

A:0.0%

B:0.5%

C:1.0%

D:1.5%

E:2.5%

 高

(

評価値

)

低 →

感覚を感じる早さ

感覚の強さ

感覚の持続時間

1

2

3

4

5

A:0.0%

B:0.5%

C:1.0%

D:1.5%

E:2.5%

 高

(

評価値

)

低 →

爽快感

清涼感

快適感

全体的な感覚の好み

ⅰ)アンケート評価 l-メントールの配合量が多い程、爽快感、清涼感のアンケート評価値も高くなることが確

認されました.快適感は、0.0~1.5%にかけて、l-メントール 配合量が多くなるとアンケー

ト評価値も高くなるが、 2.5%で低くなり、清涼剤による皮膚刺激が強すぎると不快感が

引き起こされる可能性が示唆されました.

ⅱ)感性評価結果 ① 爽快感:アンケート結果と類似した結果が得られました.

② 清涼感:アンケート結果との関係は認められなかった.

③ リラックス:アンケート結果との関係はやや認められた.

④ 全体的な好み:爽快感・リラックス(感性解析結果)と全体的な

好み(アンケート評価)との間に高い類似性が認められました.

’06年処方(従来品)と’09年発売処方(発売

品)に対してこの手法を適用しました.その結果、

従来品に比べて発売品の方が、高い爽快感が実

現できたことが明らかになりました(図11).

図12 2009年春発売トニックシリーズ

図11 製品における評価

0

0.2

0.4

0.6

0.8

従来品 発売品

高←

爽快感→

EFAMを用いた

感性解析の

有用性を示した.

今後の展望

メントール配合シャンプー使用時の感性を

理解することで、消費者の満足度を高める

処方開発を行います. 中川 匡弘 教授