30
L3 B ミクロカノニカル統計と熱力学 前回 L3A のまとめ をエネルギーが  の間にある状態数とすると、 エントロピー は ボルツマン公式 と与えられる。熱力学第1法則から W(U )dU U U + dU S(U ) S(U )= k log W(U ) ( S U ) V = 1 T ( S V ) U = p T

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Page 1: L3 B ミクロカノニカル統計と熱力学...L3 B ミクロカノニカル統計と熱力学 前回 L3A のまとめ をエネルギーが の間にある状態数とすると、

L3 B ミクロカノニカル統計と熱力学前回 L3A のまとめ

  をエネルギーが    の間にある状態数とすると、

エントロピー は ボルツマン公式

と与えられる。熱力学第1法則から

W(U)dUU U + dU

S(U)

S(U) = k log W(U)

(∂S∂U

)V =1T

(∂S∂V

)U =pT

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n次元単位球の体積  の求め方

まず、n次元単位球の表面積を   とすると

vn

Sn

vn = Sn ∫1

0rn−1dr =

Sn

n

r

O dr

rとr+dr の間の体積は Snrn−1dr次のスライドで

Sn =2πn/2

Γ(n /2)を示すので

vn =Sn

n=

πn/2

Γ(n /2 + 1)xΓ(x) = Γ(x + 1)

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π1/2 = ∫∞

0dxe−x2

ガウス積分

をn 乗して

πn/2 = ∫∞

0dx1dx2…dxn e−(x2

1+x22+⋯+x2

n) = Sn ∫∞

0drrn−1e−r2

=Sn

2 ∫∞

0dqqn/2−1e−q =

Sn

2Γ(

n2

)

Sn =2πn/2

Γ(n/2)

r2 = q と置くと、

S2 = 2π S3 =2π3/2

Γ(3/2)=

2π3/2

Γ(3/2)=

2π3/2

π1/2/2= 4π

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例:Nこの調和振動子

ハミルトニアン Hは

H =N

∑i=1

[p2

i

2m+

mω2q2i

2]

pi = 2mExi, qi =2E

mω2yi

H ≤ E の領域 はΓ相空間内の

と置くと、

N

∑i=1

(x2i + y2

i ) ≤ 1 2N次元単位球体の中になる。

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の領域 ΓH ≤ E にある状態数 はΩ0(E)

Ω0(E) = ∫ ΠNi=1

dpidqi

h= (

2Eωh

)N ∫∑i (x2i +y2

i ≤1)ΠN

i=1dxidyi

2N次元単位級の体積は

v2N = ∫∑i (x2i +y2

i ≤1)ΠN

i=1dxidyi =πN

Γ(N + 1) だから

Ω0(E) = (2Eωh

)Nv2N = (2Eωh

)N πN

Γ(N + 1)= (

Eℏω

)N 1N!

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ボルツマン公式により、エントロピーは

S(E) = k log W(E) ≈ k log Ω0(E) = k log[(E

ℏω)N 1

N!]

ここで スターリングの公式 log N! ≈ N log N − N を用いると

S(E) = k log W(E) ≈ Nk(logE

Nℏω− 1)

となり、確かに示量的な量になっている。

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ここで熱力学第1法則により

1T

=∂S(E)

∂E=

NkE

したがって内部エネルギー E=Uに対して

U = E = NkTこれは、1自由度あたり エネルギー が2Nこの自由度に等しく配

分されたものである。

kT2

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等分配率:1自由度あたり の内部エネルギーkT2

2原子分子の比熱  重心自由度3、回転の自由度2

Cv =∂E∂T

=Nk(3 + 2)

2=

5Nk2

Cp = Cv + Nk =7Nk

2

γ =Cp

Cv=

75

= 1.40

したがって、断熱係数(比熱比)は

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25

CP CV

γ=CP/CVJK-1mol-1 JK-1mol-1

JK-1kg-1 JK-1kg-1

1 He 4 4.002620.78 5/2R 12.47 3/2R

1.665192 3116

2 O2 32 31.88929.33 7/2R 21.01 5/2R

1.40919.8 658.8

3

CO2 44 44.01037.14 28.83

1.29843.9 655.1

NH3 17 17.30135.48 27.17

1.312051 1570

CH4 16 16.04335.74 27.43

1.302228 1710

- CP - CV = R

https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title= &oldid=64411726

2017 6 11 ( ) 07:57 UTC

-

単原子分子について はよく合っている

2原子分子も

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疑問:振動の自由度1は勘定に入らないのか?

答え:振動のエネルギースケール:1200 K

回転の------- : 120K

常温300Kでは 振動のエネルギーは励起されない。

これを理解するには量子力学が必要

量子力学では、等分配則はなりあたっていない!

自由度   3     2     1

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C̄V,trans =32

R C̄V,rot = R

C̄V,vib = R ( Θvib

T )2 e−Θvib/T

(1 − e−Θvib/T)2

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状態数   の直観的な意味 W(E)孤立系にエネルギー Eを与えるときに可能な状態の総数

例  長さ の部品が こ鎖状に繋がれている。a N

前進する部品の数を 交代するを前進する部品の数を とるときに、

場合の数は

     

n+ n−

W(n+, n−) =N!

n+!n−!n+ + n− = N

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鎖の長さ   を固定

するとx = a(n+ − n−)

n+ =N + x

a

2, n− =

N − xa

2S(x)/k = log W(n+, n−) ≈ N log N − n+ log n+ − n− log n−

≈ N[log 2 −x2

2a2N2] xを小さいとして

テーラー展開

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ここで、熱力学第1法則

dE = TdS − Fdx

から鎖に働く力Fは

F =∂S∂x

= − NkTx

a2N2= − Kx

K =kT

a2Nここに はフックの法則のバネ定数である

久保亮五   ゴム弾性の理論

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チャットで ご質問をどうぞ

10分休憩

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熱力学第2法則  孤立系のエントロピーは増大する

 エネルギー E1とE2を持つ2つの系が熱的

に接触しているが全体としては孤立系であると しよう。それぞれの状態数をW1(E1)とW2 (E2)とする。   全体の状態数Wtot(E1+E2) はその積になる。

Wtot(E1+E2) =W1(E1)W2 (E2)

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したがって、エントロピー  は加法性

  

S = k log W

Stot(E1 + E2) = S(E1) + S(E2)

をみたす。エネルギー保存則:  E1 + E2 = const .

から δE1 = − δQ, δE2 = δQ 1から2へ だけ熱が流れるδQ

0 ≤ δStot =∂S1

∂E1δE1 +

∂S2

∂E2δE2

孤立系のエントロピーが増大する

(1T2

−1T1

)δQ=

ことから、 ならば δQ ≥ 0

すなわち、熱は高温側から低温側へと流れる。

E1 E2δQT1 ≥ T2

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まとめハミルトニアン で与えられるミクロな

力学から出発して、状態数をエネルギー の関数

H(q, p)E

Ω0(E) = ∫H≤E

dpdqh

として求める。 ボルツマン公式によりエントロピー はS

≈ W(E)

S(E) = k log W(E)と与えられる。熱力学第1法則から

∂S∂E

=1T

が内部エネルギー を温度Tの関数として与える。E = U

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Home work # 4一個の調和振動子のミクロカノニカル統計を述べよ

H(q, p) =p2

2m+

mω2q2

2

Ω0(E) = ∫H≤E

dpdqh

=E

ℏω

S(E) = k log W(E) = k logE

ℏω

∂S∂E

=1T から E = kT

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まとめ

理想気体

S(E, V ) = kN[logVN

+32

logEN

+ const.]

調和振動子

S(E) = Nk logE

ℏω

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エントロピーの直感的理解熱力学的定義 (温度 の熱浴から準静的に熱 を取り込むとき)

統計力学的定義

は可能な状態数

 

T d′ Q

dS =d′ QT

S(E) = k log W(E)W

      エントロピー増大

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ボルツマンが1906年に過ごしたイタリアにあるドウィーノ海岸

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Humpty Dumpty sat on a wall,Humpty Dumpty had a great fall.All the king's horses and all the king's menCouldn't put Humpty together again.

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宇宙は熱死に向かうのか?No!  増大するのは孤立系のエントロピー

 宇宙は孤立系ではなく、解放系である。  重力があるから      生物の進化は熱力学第2法則に反している     のではないか? No! 生物は環境系の中に生きている。  言い換えるとエントロピー を環境系に排泄している。

  参考:「生命とは何か?」E.シュレーディンガー

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  E.シュレーディンガーは、生物が生きるための手段として環境から「負エントロピー」を絶えず摂取しているためだと説明する。つまり、生物が生存することによって生じるエントロピーを負エントロピーによって相殺することで、エントロピーの水準を一定に保持しているのである。

地球外生命を探索する時代 に読んでいただきたい古典

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?

https://www.youtube.com/watch?v=mGDJO2M7RBg

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情報エントロピーについて2進法で書かれた このビット列があり、そのうち こが1だとしよう。

すなわち

 確率  で1   で

場合の数は二項係数

N m

0110010100011101010100101000101010100010101001

p :=mN

1 − p 0

W(m, N ) =N!

m!(N − m)!

だけある。 スターリングの公式:  を用いると、log N! ≈ N log N − N

S/k = log W ≈ N log N − (N − m)log(N − m) − m log m= NH(p) H(p) = − p log p − (1 − p)log(1 − p)

情報エントロピーと熱力学的エントロピーは関係あるのだろうか?

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