9
1 LC/MS および UV 検出器を用いたフルーツジュース中に含まれる ポリフェノール類の分析 Evelyn Goh 1 , Antonietta Gledhill 2 1 Waters Pacific, Singapore, 2 Waters Corporation, Manchester, UK 目的 フルーツジュース中のポリフェノール類の検出、同定および定量 はじめに ポリフェノール類は緑茶やワイン、果実など、食品や清涼飲料水に含まれる 機能性成分として広く知られています。これらは心疾患や成人病を予防する上 で潜在的な役割を果たすことが報告されています 1,2,3 天然ポリフェノール化合物の分析では、従来の HPLC の分離能力では分離でき ない多くの夾雑化合物による妨害を受けます 4 。そのため長年にわたり、天然ポ リフェノール化合物分析は、非常に困難な課題となっていました。逆相クロマ トグラフィによるポリフェノール類の分離、同定を行う HPLC 条件では、1 分析 あたり1 時間以上かかるものもあります 5 近年、高分離能を有するACQUITY UPLC システムが開発され、より高品質なポリ フェノールの分析が可能になりました。これにより、ポリフェノール類の分析に おける分離能の向上と、分析時間の短縮が同時に達成されました 3,6,7 。製品を より早く出荷するためには、品質管理部門におけるサンプル処理能力の向上が 極めて重要です。分析時間の短縮は、このサンプル処理能力の向上を可能に しました。 ACQUITY UPLC H-Class システムは、HPLC としても使用することができ、且つ UPLC ® としての早さと性能を兼ね備えています。そのため、ACQUITY UPLC H-Class システムを導入することで、HPLC UPLC 1 システムで柔軟に切り替え て業務を効率化することができます。ACQUITY UPLC H-Class UV MS システムは、 QC におけるジュースサンプル分析のための、頑健性の高いソリューションを提供 します。 このアプリケーションノートでは、 ACQUITY UPLC H-Class システムによる、フルーツ ジュース中に含まれるポリフェノール化合物の検出と同定の高速分析条件を 紹介します。ACQUITY ® SQD による質量分析計での選択性を付加することで、 対象化合物の定量にかかる分析時間を大幅に短縮できます。 アプリケーションの利点 高速高分離分析によるフルーツジュース中に 含まれるポリフェノール類の検出、同定および 定量 ACQUITY UPLC ® の導入により、従来の HPLC 法では1 時間を越えていた分析時間を10 以下に短縮することが可能。これにより、品 質管理における1 システムあたりのサンプル 処理能力を向上 定量、ピーク分離の検証や化合物同定を行う ための UV MS スペクトル情報を有効活用 ウォーターズのソリューション ACQUITY UPLC H-Class システム ACQUITY UPLC PDA 検出器 ACQUITY SQD Empower ® ソフトウェア キーワード ポリフェノール類、フルーツジュース、     品質管理、 QC

LC/MS UV - Waters Corporation...LC/MSおよびUV検出器を用いた フ ルーツジュ ス中に含まれるポリ ェノ 類の分析 4 結果および考察 PDAおよびSQDを接続したACQUITY

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1

LC/MSおよびUV検出器を用いたフルーツジュース中に含まれるポリフェノール類の分析Evelyn Goh1, Antonietta Gledhill2

1Waters Pacific, Singapore, 2Waters Corporation, Manchester, UK

目的

フルーツジュース中のポリフェノール類の検出、同定および定量

はじめに

ポリフェノール類は緑茶やワイン、果実など、食品や清涼飲料水に含まれる

機能性成分として広く知られています。これらは心疾患や成人病を予防する上

で潜在的な役割を果たすことが報告されています 1,2,3。

天然ポリフェノール化合物の分析では、従来のHPLCの分離能力では分離でき

ない多くの夾雑化合物による妨害を受けます4。そのため長年にわたり、天然ポ

リフェノール化合物分析は、非常に困難な課題となっていました。逆相クロマ

トグラフィによるポリフェノール類の分離、同定を行うHPLC条件では、1分析

あたり1時間以上かかるものもあります 5。

近年、高分離能を有するACQUITY UPLCシステムが開発され、より高品質なポリ

フェノールの分析が可能になりました。これにより、ポリフェノール類の分析に

おける分離能の向上と、分析時間の短縮が同時に達成されました 3,6,7。製品を

より早く出荷するためには、品質管理部門におけるサンプル処理能力の向上が

極めて重要です。分析時間の短縮は、このサンプル処理能力の向上を可能に

しました。

ACQUITY UPLC H-Classシステムは、HPLCとしても使用することができ、且つ

UPLC®としての早さと性能を兼ね備えています。そのため、ACQUITY UPLC

H-Classシステムを導入することで、HPLCとUPLCを1システムで柔軟に切り替え

て業務を効率化することができます。ACQUITY UPLC H-Class UV MSシステムは、

QCにおけるジュースサンプル分析のための、頑健性の高いソリューションを提供

します。

このアプリケーションノートでは、ACQUITY UPLC H-Classシステムによる、フルーツ

ジュース中に含まれるポリフェノール化合物の検出と同定の高速分析条件を

紹介します。ACQUITY® SQDによる質量分析計での選択性を付加することで、

対象化合物の定量にかかる分析時間を大幅に短縮できます。

アプリケーションの利点

■■ 高速高分離分析によるフルーツジュース中に

含まれるポリフェノール類の検出、同定および

定量

■■ ACQUITY UPLC®の導入により、従来のHPLC

法では1時間を越えていた分析時間を10分

以下に短縮することが可能。これにより、品

質管理における1システムあたりのサンプル

処理能力を向上

■■ 定量、ピーク分離の検証や化合物同定を行う

ためのUVやMSスペクトル情報を有効活用

ウォーターズのソリューション

ACQUITY UPLC H-Class システム

ACQUITY UPLC PDA検出器

ACQUITY SQD

Empower®ソフトウェア

キーワード

ポリフェノール類、フルーツジュース、    

品質管理、QC

Page 2: LC/MS UV - Waters Corporation...LC/MSおよびUV検出器を用いた フ ルーツジュ ス中に含まれるポリ ェノ 類の分析 4 結果および考察 PDAおよびSQDを接続したACQUITY

2LC/MSおよびUV検出器を用いたフルーツジュース中に含まれるポリフェノール類の分析

試料サンプルとして市販の7種のフルーツジュース

製品と、11種のポリフェノール標準品を分析

しました。

前処理ジュースサンプルはそれぞれ 孔径 0.45 μm の

フィルターでろ過し、等量の水で希釈しました。

LC条件LCシステム: ACQUITY UPLC H-Class移動相A: 0.1%酢酸水溶液移動相 B: 0.1%酢酸 / アセトニトリル溶液

MS条件MS システム:  ACQUITY SQDイオン化法:  ESIキャピラリー電圧: 3.0 kVサンプルコーン電圧: 30 Vエクストラクションコーン電圧: 3.0 Vソース温度: 150℃脱溶媒温度: 500℃脱溶媒ガス: 1000 L/hrコーンガス: 20 L/hrスキャンレンジ: 50-650 m/z

PDA検出器条件

UVレンジ: 210 nm-400 nm(抽出波長: 280 nm,305 nm)サンプリングレート: 20ポイント /秒フィルタータイムコンスタント: 高速

データの取得および処理は全てEmpower2ソフトウェアで行いました。

実験方法 データ取り込みと処理条件

ACQUITY UPLC H-Classシステムによるポリフェノール分析の事例として、2つの

条件を紹介します。条件1は分離を優先した条件で、サンプルのキャラクタリゼー

ションを目的としたフィンガープリンティングに適しています。条件2は、QCラボ

で行われる日常的な対象ポリフェノール類の定量用に推奨の条件であり、分析室

の生産性向上を目的として分析時間をより短縮しています。

条件1

カラム:ACQUITY UPLC HSS T3 2.1×100 mm 1.8 μm

カラム温度:45℃

流量:0.65 mL/min

サイクルタイム:15.0 min

条件2

カラム:ACQUITY UPLC HSS T3 2.1×50 mm 1.8 μm

カラム温度:45℃

流量:0.80 mL/min

サイクルタイム:7.0 min

今回、分析対象となる11種類のポリフェノール化合物の選択イオンレコー

ディング(SIR)取得条件の開発は IntelliStartTM機能により自動で行いました。

IntelliStartでは化合物の基本情報を入力するだけで、Table1に示すようなプレ

カーサーイオンの決定やコーン電圧の最適化を自動的に行うことができます。

Time (min) %A %B

Initial 99 1

1.0 99 1

10.0 70 30

12.0 5 95

12.1 99 1

15.0 99 1

Time (min) %A %B

Initial 99 1

0.5 99 1

4.0 70 30

5.5 5 95

5.6 99 1

7.0 99 1

Page 3: LC/MS UV - Waters Corporation...LC/MSおよびUV検出器を用いた フ ルーツジュ ス中に含まれるポリ ェノ 類の分析 4 結果および考察 PDAおよびSQDを接続したACQUITY

3

Fig.1. EmpowerソフトウェアによるMS条件の設定

Table 1. MS分析パラメーター

Compound m/z Polarity Cone voltage (V)

Arbutin 271.2 – 30

Gallic acid 169.1 – 30

5-hydroxymethyl-2-furaldehyde (HMF)

127.1 + 20

Chlorogenic acid 353.3 – 25

Catechin 289.3 – 40

Caffeic acid 179.1 – 30

Epicatechin 289.2 – 35

p-Coumaric acid 163.1 – 25

Ferulic acid 193.1 – 30

Phloridzin 435.5 – 40

t-Cinnamic acid 147.1 – 25

LC/MSおよびUV検出器を用いたフルーツジュース中に含まれるポリフェノール類の分析

高い再現性で定量するために、デュエルタイムは各クロマトグラムピークにおいて、少なくとも15ポイント

以上を確保するように最適化されています。ジュースサンプル中のポリフェノール成分の定量は、各ポリフェ

ノール成分の検量線を用いて算出します。

Fig.1に Empowerソフトウェアでセットアップした、いくつかのMSメソッドを示しました。

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4LC/MSおよびUV検出器を用いたフルーツジュース中に含まれるポリフェノール類の分析

結果および考察

PDAおよび SQDを接続したACQUITY UPLC H-Classシステムによる分析で、11種類のポリフェノール成分が

10分間で分離しました。波長280nmで抽出したクロマトグラムと、11成分のSIRクロマトグラムの重ね書き

を Fig.2に示しました。

Fig.2. シングル分析により同時取り込みした、10ppm標準混合試料のPDAおよびMS(SIR)のデータ

各ポリフェノール標準品のリテンションタイム(条件1及び条件2)と、条件1で分析を行った際にMS検出器で

検出された各ピークのリテンションタイムおよび面積値の6回繰り返し注入における相対標準偏差を Table2

に示しました。

Arb

utin -

1.2

98

Gallic

Acid

- 1

.402

HM

F -

2.6

76

Chlo

rogenic

Acid

- 4

.687

Cate

chin

- 4

.758

Caff

eic

Acid

- 4

.960

Epic

ate

chin

- 5

.654

p-C

oum

aric A

cid

- 5

.980

Feru

lic A

cid

- 6

.690

Phlo

ridzin

- 8

.496

t-C

innam

ic A

cid

- 9

.414

AU

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

Minutes

1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 7.00 8.00 9.00 10.00

4.7

37

5.0

05

4.8

07

6.0

23

6.7

31

1.3

94

1.2

81

2.6

38

5.7

02

8.5

32

9.4

44

Inte

nsity

0.0

2.0x106

4.0x106

6.0x106

8.0x106

1.0x107

1.2x107

1.4x107

Minutes

1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 7.00 8.00 9.00 10.00

12

3

4

5 6

7

8 9

10

11MS (SIR)

3 4

5

6

7

8

9

10 11

1

2PDA(280nm)

12

3

4

5 6

7

8 9

10

11MS (SIR)

12

3

4

5 6

7

8 9

10

11MS (SIR)

3 4

5

6

7

8

9

10 11

1

2PDA(280nm)

3 4

5

6

7

8

9

10 11

1

23 4

5

6

7

8

9

10 11

1

2PDA(280nm)

Retention times (min) % RSD for Method 1 (MS)

Peak Compound Method 1 Method 2 Retention time Peak area

1 Arbutin 1.30 0.57 0.10 0.26

2 Gallic acid 1.40 0.64 0.06 0.20

3 5-hydroxymethyl-2-furaldehyde (HMF) 2.68 1.23 0.19 0.26

4 Chlorogenic acid 4.69 2.12 0.29 0.37

5 Catechin 4.76 2.13 0.29 0.37

6 Caffeic acid 4.96 2.22 0.27 0.34

7 Epicatechin 5.65 2.45 0.22 0.31

8 p-Coumaric acid 5.98 2.59 0.20 0.27

9 Ferulic acid 6.69 2.84 0.17 0.24

10 Phloridzin 8.50 3.39 0.13 0.18

11 t-Cinnamic acid 9.41 3.78 0.11 0.75

Table 2. リテンションタイムと再現性結果

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5

Inte

nsity

0

1x10 6

2x10 6

3x10 6

Minutes

1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00

MS (SIR)3

4

7

62.6

82

4.6

94

4.8

98

4.9

67

5.5

43

AU

0.00

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

0.12

1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00

PDA (280 nm)

3

4

657

Inte

nsity

0

1x10 6

2x10 6

3x10 6

1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00

MS (SIR)3

4

7

62.6

82

4.6

94

4.8

98

4.9

67

5.5

43

AU

0.00

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

0.12

1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00

PDA (280 nm)

3

4

657

2.6

82

4.6

94

4.8

98

4.9

67

5.5

43

AU

0.00

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

0.12

1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00

PDA (280 nm)

2.6

82

4.6

94

4.8

98

4.9

67

5.5

43

AU

0.00

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

0.12

1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00

PDA (280 nm)

3

4

657

SIR (Catechin)

SIR (HMF)

SIR (Caffeic acid)

SIR (Chlorogenic acid)

SIR (Catechin)

SIR (HMF)

SIR (Caffeic acid)

SIR (Chlorogenic acid)

Minutes

リンゴ、ミカン(2種)、ベリー、グァバ、マンゴーおよびライムの7種の市販のジュースについて、ポリフェ

ノール含量を測定しました。

一例として、条件1を使用して分析したリンゴジュースの結果を Fig.3に示しました。

Fig.3. リンゴジュースにおけるポリフェノール分析のUVクロマトグラムとMS重ね書きクロマトグラム

リンゴジュース中のポリフェノール類は、Fig3の PDAクロマトグラムを Empowerソフトウェアにより解析する

ことで、簡単に同定、定量することができます。

LC/MSおよびUV検出器を用いたフルーツジュース中に含まれるポリフェノール類の分析

Page 6: LC/MS UV - Waters Corporation...LC/MSおよびUV検出器を用いた フ ルーツジュ ス中に含まれるポリ ェノ 類の分析 4 結果および考察 PDAおよびSQDを接続したACQUITY

6LC/MSおよびUV検出器を用いたフルーツジュース中に含まれるポリフェノール類の分析

Empowerソフトウェアでは単に保持時間の一致を見るだけでなく、PDAのUVスペクトルライブラリー機能

を使用することで、化合物同定においてより信頼性の高い解析が可能です。HMF(ピーク3)の解析事例を

示します。Fig.4はHMF標準品と、リンゴジュースから検出されたHMF標準品と同じリテンションタイムの

ピークのインデックスプロットを示しています。HMFとリンゴジュース中のピーク3のUVスペクトルの合致に

よりリンゴジュース中から検出されたHMFの同定結果を検証することができます。

HMF StandardApple Juice

HM

F -

2.6

82

Chlo

rogenic

Acid

- 4

.694

Cate

chin

- 4

.898

Caff

eic

Acid

- 4

.967

Epic

ate

chin

- 5

.543

AU

0.00

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

Minutes

1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00

PDA (280 nm) 34

6

5

7

HM

F -

2.6

82

Chlo

rogenic

Acid

- 4

.694

Cate

chin

- 4

.898

Caff

eic

Acid

- 4

.967

Epic

ate

chin

- 5

.543

AU

0.00

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

Minutes

1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00

PDA (280 nm) 34

6

5

7

Apple Juice

2.6

82

AU

0.000

0.010

0.020

0.030

Minutes2.50 2.55 2.60 2.65 2.70 2.75 2.80 2.85

2.6

42

AU

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

Minutes

2.50 2.55 2.60 2.65 2.70 2.75 2.80 2.85

2.643 Extracted

284.0

AU

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

nm

250.00 300.00 350.00

2.682 Extracted

284.0

357.5 385.1

AU

0.000

0.010

0.020

0.030

nm

250.00 300.00 350.00

Time Time

WavelengthWavelength

2.6

82

0.000

0.010

0.020

0.030

Minutes2.50 2.55 2.60 2.65 2.70 2.75 2.80 2.85

2.6

42

AU

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

Minutes

2.50 2.55 2.60 2.65 2.70 2.75 2.80 2.85

2.643 Extracted

284.0

AU

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

nm

250.00 300.00 350.00

284.0

357.5 385.1

AU

0.000

0.010

0.020

0.030

nm

250.00 300.00 350.00

Time Time

WavelengthWavelength

Fig.4. スペクトラムインデックスプロットによる、リンゴジュースサンプル中から同定されたHMFの同定結果の確認

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7

さらに質量分析計による高選択性を活用することで、更なる情報を取得できます。これは品質管理者がデータ

を判断し、化合物を同定、定量するにあたり、より高い信頼性を与えます。Fig.5から、MSで検出されたHMFピー

ク(ピーク3)は、ジュース中のポリフェノール同定結果の信頼性も高めています。

Fig.5中のリンゴジュースの結果にある囲いはUVとMSクロマトグラムの違いを示しました。

Fig.5. ACQUITY SQD が、PDAと比較してより特異性を与えることの一例

UVにおいて保持時間をもとに同定されたカテキン(ピーク5)はMSでは検出、定量されませんでした(赤枠部参

照)。UV単独での同定は、ポリフェノール成分のアサインミスにより、フルーツジュース中において誤った結果

へと導く可能性があります。より高い選択性を持つACQUITY SQDを使用することで、PDA単独データによる診断

よりも、より高い信頼性を得ることができます。

ACQUITY SQDはすでにEmpowerソフトウェアで制御しているACQUITY UPLC H-Classを使用しているQCラボに

簡単に導入することができます。Empowerユーザーは追加トレーニングなしにMSの利点を得ることができます。

IntelliStart(Empowerに構成するMSソフトウェア)はSQDのセットアップとシステムモニタリングを容易にします。

さらに、IntelliStartは新しい化合物のSIRチャンネルのメソッド開発を自動化することができます。

HM

F

Inte

nsity

0

1x106

2x106

3x106

Minutes

1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00

MS (SIR)

3

4

7

6

SIR (Catechin)

SIR (Chlorogenic acid)

SIR (Caffeic acid)

SIR (Catechin)

SIR (Chlorogenic acid)

SIR (Caffeic acid)

4.6

94

4.8

98

4.9

67

AU

0.00

0.02

0.04

0.06

Minutes4.70 4.80 4.90 5.00

Minutes4.70 4.80 4.90 5.00

4

5 6

4

6

Catechin (Peak 5) identified in UV is not detected in MS

MS

PDA

4.6

94

4.8

98

4.9

67

Minutes

4.70 4.80 4.90 5.00

Minutes4.70 4.80 4.90 5.00

4

5 6

4

6

Catechin (Peak 5) identified in UV is not detected in MS

MS

PDA4

5 6

4

6

Catechin (Peak 5) identified in UV is not detected in MS

4

5 6

4

6

Catechin (Peak 5) identified in UV is not detected in MS

MS

PDA

HM

F -

2.6

82

Chlo

rogenic

Acid

- 4

.694

Cate

chin

- 4

.898

Caff

eic

Acid

- 4

.967

Epic

ate

chin

- 5

.543

AU

0.00

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

Minutes

1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00

PDA (280 nm)3

4

6

5

7

HM

F -

2.6

82

Chlo

rogenic

Acid

- 4

.694

Cate

chin

- 4

.898

Caff

eic

Acid

- 4

.967

Epic

ate

chin

- 5

.543

AU

0.00

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

Minutes

1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00

PDA (280 nm)3

4

6

5

7

LC/MSおよびUV検出器を用いたフルーツジュース中に含まれるポリフェノール類の分析

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8LC/MSおよびUV検出器を用いたフルーツジュース中に含まれるポリフェノール類の分析

Compound Apple Orange

(Brand 1)

Orange

(Brand 2)

Berries Guava Mango Lime

Arbutin 13.71

Gallic acid 0.31 10.46 0.54 11.39

5-hydroxymethyl-2-furaldehyde (HMF)

2.12 0.48 2.10 12.94 6.49

Chlorogenic acid 23.75 2.52 1.42 1.34

Catechin 7.47

Caffeic acid 2.29 0.47

Epicatechin 0.16 0.50 0.35 8.35

p-Coumaric acid 0.19

Ferulic acid

Phloridzin

t-Cinnamic acid

Table 3. MSにより同定、定量されたフルーツジュースサンプル中の化合物リスト、単位はppmまたはmg/L

MSシステムでは、分析対象物となる各化合物のSIRチャンネルをモニターすることができます。ACQUITY SQD

のSIRチャンネルをモニターすることで、高い選択性の検出が可能となり、各分析サンプル中から指定したポリ

フェノールの分子関連イオンをモニターすることで、その有無を容易に確認することができます。

質量分析計の高い選択性はターゲットとマトリックスの分離を可能とし、その結果、分析時間をより短縮

することができます。ターゲット化合物のみを定量するための分析時間は10分から4分(条件2)に縮まり

Fig.6に示すようにサンプル処理能力が大幅に向上しています。

MSにより同定および定量されたジュースサンプル中のポリフェノール化合物をTable3に示しました。

.

Inte

nsi

ty

0.0

2.0x106

4.0x106

6.0x106

8.0x106

1.0x107

1.2x107

1.4x107

Minutes1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 7.00 8.00 9.00 10.00

1

2

3

4

5 6

7

89

10

11

Standard(10 min)

AU

0.0

2.0x106

4.0x106

6.0x106

8.0x106

1.0x107

1.2x107

Minutes

0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 7.00 8.00 9.00 10.00

Standard(4 min)

Inte

nsity

0

2x106

4x106

6x106

8x106

Minutes

1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 7.00 8.00 9.00 10.00

Berry juices(4 min)

12

3

4

56

7

8

9

10

11

Fig.6. MS検出器の利用によるサンプル処理能力の向上に伴う分析時間の短縮

1.) arbutin, 2.) gallic acid, 3.) HMF, 4.) chlorogenic acid, 5.) catechin, 6.) caffeic acid, 7.) epicatechin, 8.) p-coumaric acid, 9.) ferulic acid, 10.) phloridzin, and 11.) t-cinnamic acid.

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結論

今回のレポートでは、ACQUITY PDAとACQUITY SQD を接続した

ACQUITY UPLC H-Classはフルーツジュースに含まれるポリフェ

ノール類の分離、検出、同定及び定量を可能にしました。

■■ EmpowerソフトウェアとACQUITY UPLC H-Classを使用することで、

HPLCの操作性はそのままに、高い分離性能とUPLCの処理能力

を得ることができます。

■■ EmpowerソフトウェアによるACQUITY PDA検出器での測定では

保持時間の一致のみでなく、UVスペクトルライブラリーによる

一致を加えることで、より信頼性の高い化合物同定を行うこと

ができます。IntelliStartを装備したACQUITY SQDを使用するこ

とで、ユーザーは容易にMSスペクトル情報を得ることができ

ます。この検出器は、分析室における定量、データ診断および

化合物確認をサポートします。

総括して、PDAとMS検出器を併用することで、ルーチンQC分析

を行っているQCラボに相補的な利益をもたらします。

参考文献

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