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JAPAN LIFELINE TVI MARKETING REPORT Vol.047 年齢:70 歳男性 主訴:労作時胸痛 診断:労作性狭心症 冠危険因子:高血圧、糖尿病、慢性腎臓病(eGFR42) LAD#675% LMT入口部からLAD#6 just proximalへNobori 3.5×15mm(TERUMO)を留置。LMTより少しだけ突出してstentは 留置された。以後、外来通院。 労作時の胸痛を主訴に受診。冠動脈造影を行った(Fig. 1)。LMT-LADステント内再狭窄を認めなかったがステント遠位側の #6 distalに高度狭窄を認め、虚血の責任病変と判断し、ad hoc PCIを施行。ガイドワイヤー Runthrough NS Floppy (TERUMO)は病変末梢まで通過したが、IVUS Eagle Eye(VOLCANO)はLMT入口部で通過しなかった。ステントス トラットをガイドワイヤーが縫っている可能性を考え、治療を中止した。 再度、十分なインフォームドコンセントの上、再治療をおこなった。右橈骨動脈アプローチにて、6Fr. JL-4 ST Hyperion (ASAHI INTECC)を使用した(Fig. 2)。ガイディングカテーテルをフローティングさせ、ガイドワイヤー SION(ASAHI INTECC)をナックル形状でステント内を通過した。ステントの外側からの通過の可能性は低い状態と判断した。 ターゲット病変情報 経過・手技手順・方法 Fig. 1 Fig. 2 内藤 貴之 先生 (あおもり協立病院 内科) 吉町 文暢 先生  (東海大学医学部付属病院 循環器内科) LMTより突出して留置されたステント内のデバイス通過に 5.5Fr. GuideLiner V2 が有用であった 1 例

LMTより突出して留置されたステント内のデバイス … LIFELINE TVI MARKETING REPORT 2015-05-10-02 1. LMTより少しだけ大動脈内にステントが突出した状態での、LADへのインターベンションを行った。2

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JAPAN LIFELINE TVI MARKETING REPORT Vol.047

年齢:70歳男性 主訴:労作時胸痛 診断:労作性狭心症冠危険因子:高血圧、糖尿病、慢性腎臓病(eGFR42)

LAD#6:75%

LMT入口部からLAD#6 just proximalへNobori 3.5×15mm(TERUMO)を留置。LMTより少しだけ突出してstentは留置された。以後、外来通院。労作時の胸痛を主訴に受診。冠動脈造影を行った(Fig. 1)。LMT-LADステント内再狭窄を認めなかったがステント遠位側の#6 distalに高度狭窄を認め、虚血の責任病変と判断し、ad hoc PCIを施行。ガイドワイヤー Runthrough NS Floppy (TERUMO)は病変末梢まで通過したが、IVUS Eagle Eye(VOLCANO)はLMT入口部で通過しなかった。ステントストラットをガイドワイヤーが縫っている可能性を考え、治療を中止した。再度、十分なインフォームドコンセントの上、再治療をおこなった。右橈骨動脈アプローチにて、6Fr. JL-4 ST Hyperion(ASAHI INTECC)を使用した(Fig. 2)。ガイディングカテーテルをフローティングさせ、ガイドワイヤー SION(ASAHI INTECC)をナックル形状でステント内を通過した。ステントの外側からの通過の可能性は低い状態と判断した。

ターゲット病変情報

経過・手技手順・方法

Fig. 1

Fig. 2

内藤 貴之 先生 (あおもり協立病院 内科)吉町 文暢 先生 (東海大学医学部付属病院 循環器内科)

LMTより突出して留置されたステント内のデバイス通過に5.5Fr. GuideLiner V2が有用であった1例

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Fig. 5 Fig. 6

Fig. 4

バルーン canPass 2.5 × 15mm(Japan Lifeline)をステント内に通過させようとしたが、通過しなかった (Fig. 3)。次に5.5Fr. GuideLiner V2(Japan Lifeline)を単独でステント内の通過を試みたが、通過できなかった。ガイディングカテーテルからGuideLiner V2を出し、long tip形状とすることで LMT入口部へのエンゲージの角度を適宜変更しつつ、なるべく LMTと同軸とし、バルーンの通過に成功した (Fig. 4)。なるべくガイドカテーテルを LMTと同軸を保ち、わずかにバルーンをGuideLiner V2内に入れたまま、4気圧程度の低圧で拡張しつつGuideLiner V2を押し込み、それと同時にバルーンをデフレートしたところ、GuideLiner V2をステント内に挿入できた (Fig. 5)。ステントの変形は透視上認めなかった。モニターの圧はダンピングせず、その後の手技は LMT内にGuideLiner V2を置いたまま、前拡張、ステント留置と、通常の手技を行うことが可能であった。Targetとなる病変を同バルーンで拡張した (Fig. 6)。

Fig. 3

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Fig. 7

Fig. 9

Fig. 8

Nobori 3.0× 18mmは若干抵抗はあったが、GuideLiner V2からステントデリバリーシステムを進めながらそれに沿わせて、GuideLiner V2を進めつつ、匍匐前進の要領でステントデリバリーに成功した (Fig. 7,8)。ステント留置した後、ステントバルーンで LMTのステントもあわせて追加拡張した。最終造影では良好な拡張が得られ、手技を終了した (Fig. 9)。ステントが変型していないことを確認してから終了した。

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2015-05-10-02

1. LMTより少しだけ大動脈内にステントが突出した状態での、LADへのインターベンションを行った。2. 1回目のPCIではガイドワイヤーがステントストラットを縫って通過している可能性を否定できず、戦略の変更が必要

と考え、手技を中止した。3. この場合pushabilityだけを得るために太いカテーテルの使用を行うと、ステントは変形・破損し、LMTに大きなアク

シデントが起こる可能性もある。既に挿入されているステントには負担をかけずに治療を進める必要があると考え、今回のシステムにした。

4. 今回使用した細いGuideLiner V2は上記の多彩な作用を有し、当症例および6Fr.ガイディングカテーテルを用いたPCIには有用であろうと考える。

評価・コメント

1. GuideLiner V2の先端をガイディングカテーテルから出すことにより、あたかもshort tipからlong tip形状へとプリシェイプ形状を変化させることが可能である。冠動脈とガイディングカテーテルを同軸状に保つ良いポジショニングを見つける手段の一つである。本症例では、balloonを挿入させるためにはこのテクニックが必要であった。

2. 2.0mmバルーンを拡張しながら操作することでバルーンとGuideLiner V2が一体化してGuideLiner V2をLMT内に安全に挿入することが可能であった。5.5Fr.と通常より細身のGuideLiner V2を選択したために、より安全にこの作業はできた。

3. 新たに末梢にステント挿入を行う為にはGuideLiner V2をLMT内に挿入しておく必要があった。さもなければLMTに挿入されたステントedgeに接触して新たなステントは損傷してしまうことが予想された。5.5Fr. GuideLiner V2の外径は0.063inch(1.60mm)と通常のGuideLiner V2の外径の0.067inch(1.70mm)にくらべて細い。Deep insertionしておく子カテシステムとして、より細いシステムは虚血を起こす可能性が減る。本症例でも圧のダンピングは認めず、安心して作業を進めることができた。

4. 新規ステントを末梢に挿入するときにもGuideLiner V2は有用であった。子カテは内側からガイディングカテーテルの厚さを増すことでガイディングカテーテル自体を補強する効果と、細身の5.5Fr. GuideLiner V2をさらにDeep insertionすることにより、ステントのデリバリーが安全にできた。

考察

術者紹介

東海大学医学部付属病院 循環器内科 准教授

吉町 文暢 先生

1990年 弘前大学医学部卒業1994年 弘前大学医学部大学院薬理学教室卒業1994年 八戸市立市民病院 循環器内科勤務1999年 青森厚生病院 検査部長2002年 弘前大学医学部附属病院 第二内科助手2004年 青森県立中央病院 循環器科副部長2008年 青森県立中央病院 循環器科部長2013年 東海大学医学部付属病院 循環器内科准教授

■所属・資格医学博士/認定内科専門医/循環器専門医/日本心血管インターベンション治療学会指導医/中国天津泰達国際心血管医院客員教授スレンダークラブジャパン事務局代表

術者紹介

あおもり協立病院 内科 医長

内藤 貴之 先生

1999年 弘前大学医学部卒業1999年 津軽保健生活協同組合健生病院 研修医2002年 あおもり協立病院 内科2008年 長野中央病院 循環器研修2009年 あおもり協立病院 内科医長

■所属・資格日本内科学会/日本循環器学会/日本心臓病学会/日本心血管インターベンション治療学会/日本下肢救済足病学会

術者紹介(左から吉町先生、内藤先生、磯島先生、澤岡先生)