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Local Venture 人と人をつなぐかけ橋になるために 創業事例集 No.33 Foundation Example Influencer ×

Loc Valentuer...Loc Valentuer人と人をつなぐかけ橋になるために 導いたベンチャー企業の成長地域のインフルエンサーが 創業事例集 No.33 ×

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Page 1: Loc Valentuer...Loc Valentuer人と人をつなぐかけ橋になるために 導いたベンチャー企業の成長地域のインフルエンサーが 創業事例集 No.33 ×

Local Venture人と人をつなぐかけ橋になるために

地域のインフルエンサーが

導いたベンチャー企業の成長

創業事例集

No.33Foundation ExampleInfluencer×

Page 2: Loc Valentuer...Loc Valentuer人と人をつなぐかけ橋になるために 導いたベンチャー企業の成長地域のインフルエンサーが 創業事例集 No.33 ×

人が人を支え、そしてよりよい社会はつくられていきます。そんな変化の根本を支えているのが、ベンチャー企業や中小企業の活動です。地域に根ざし、人々の豊かな暮らしのために新しいしくみや技術、発想などを必ず実現する。決意を胸に秘めた起業家の表情は、自信に満ちあふれていました。

描いた夢や目標が、人を、社会をよりよく変えていく。

北洋銀行地域産業支援部 担当部長宮内博さん

内灘町商工会主席経営指導員内潟浩一郎さん

【高度医療機器等販売・貸与】飯永一也さん

Case.1

【�航空宇宙機器部品製造】間戸朋之さん

Case.2

P.04

飯永さんは朴訥で寡黙な人ですが、やっていることが凄いんです。

情熱あふれる間戸社長から元気を

もらっています!

P.06

北海道

石川Lo

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Page 3: Loc Valentuer...Loc Valentuer人と人をつなぐかけ橋になるために 導いたベンチャー企業の成長地域のインフルエンサーが 創業事例集 No.33 ×

挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)とは資本性ローンは、創業・新事業の取り組みに必要な安定資金の確保と同時に、財務体質の強化を図ることができる融資制度です。本制度の特徴は、「無担保・無保証人」、「5 年 1ヵ月以上 15 年以内の期限一括返済」、「業績に応じた金利設定」といった点にあります。また、本制度による借入金は金融検査上自己資本とみなされるなど、ベンチャー企業などが利用しやすい制度設計になっています。

日本政策金融公庫では、ベンチャー企業の皆さまを資金面でサポートし、日本経済の持続的な成長につなげていきたいと考えています。創業企業向けの「新規開業資金」に加え、軌道に乗るまで一定期間を要する企業向けには「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)」をお取り扱いしています。

全国に張り巡らせたネットワークでベンチャー企業をサポートします。

小倉靖弘税理士事務所小倉靖弘さん

大阪産業創造館経営相談室 コンサルタント

森啓さん

【�生鮮食品卸・小売、飲食店】又江啓さん

Case.3

【�障がい者支援者向け eラーニングコンテンツ制作】志村駿介さん

Case.4

P.08

みんなの頼れる兄貴分。おいしい魚・野菜は又江さんにおまかせ!

障がい者支援の未来を担う志村さん。爽やかな笑顔が印象的です。

P.10

兵庫

大阪

Local Venture Influencer03

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Case.1 高度医療機器等販売・貸与

 個人的なことですが、注射が苦手です。だから採血なしで血液検査ができるメディカルフォトニクスさんの技術を知ったときは感動しました。もともと弊行は北海道大学の指定金融機関であり、北大の技術を民間でどのように活用するかをテーマに、北大発ベンチャーの創業を支援してきました。その過程で飯永さんと出会ったのですが、人間的な魅力に惚れこみました。人柄は朴訥で寡黙。しかしやっている内容は凄い。弊行の社外取締役である元札幌医大の学

長に技術的な評価を伺ったところ「これは売れる」とイチ押しでした。 ただ新規性はあるものの製品化はまだ。そこで長年のパートナーである日本政策金融公庫さんの資本性ローンを紹介。このローンの利点は無担保・無保証人、期限一括返済。「官」の公庫さん、「民」の弊行が連携して支援することで、適正なリスクをシェアできるメリットは大きい。雇用の創出、地域の活性化も期待でき、北海道はまだまだ捨てたものじゃないのです。

新規性、将来性のあるベンチャーを官民連携で支援

北洋銀行 地域産業支援部 担当部長

宮内博さんHiroshi Miyauchi

メディカルフォトニクス株式会社代表取締役

飯永一也さん Kazuya Iinaga

採血不要の血液検査技術で、

健康管理、医療の発展に貢献

Company Info

所在地:北海道札幌市北区創業年月:2015年2月事業内容: 高度医療機器等販売・貸与URL:https://www.med-photonics.com/

メディカルフォトニクス株式会社

Influencer

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【メディカルフォトニクスの歩み】

2015年2月

  

メディカルフォトニクス株式会社設立

2015年6月

  

北大ビジネス・スプリングへ移転

2015年7月

  

高度医療機器等販売業・貸与業

許可

  (札保医許可(機器)第5068号)

2016年6月

  

北大発ベンチャーに認定(第1号)

2016年8月

  

研究費、運転資金として

  

資本性ローンを利用

2017年8月

  

テレビ東京

  「主治医が見つかる診療所」で

  

紹介される

  

ベンチャーキャピタルの

  

ANRIおよび国立研究開発法人

  

科学技術振興機構(JST)から

  

総額1億円の資金調達

2018年2月

  

コラボ北海道に移転

 

痛い注射をせずに血液検査がで

きたら…。そんな願いを叶えてく

れる技術がいよいよ実用化される。

開発したのは北海道大学発のベン

チャー、メディカルフォトニクス株

式会社の代表取締役・飯永一也さん。

もともとは試薬メーカーのサラリー

マンだったが、親しい北大の教授と

話し合ったことから起業家魂に火が

ついた。「教授と研究の話をしてい

た時にアイデアを思いつき、実現可

能ではないかと起業を思い立ちまし

た」。

 

しかし、当時(2010年頃)は

東京暮らし。有休を取り、自腹で北

大まで通い可能性の実証を続けるも

のの、安定を捨てる勇気がなかった。

しかし「ここで諦めたら後悔する。

なんとしてでもこのアイデアを世に

送り出したい」と、2014年退社。

「妻は仕方がないと思っていたので

しょうね。反対はしませんでした」

と苦笑するものの、家族のサポート

が背中を押したことは間違いない。

 

現在取り組んでいるのは、採血せ

ずに血中の脂質を測定する技術およ

び装置の開発。教授が長年研究して

いた生体内の光散乱理論を基盤とし

たもので、人体に無害な近赤外光を

照射し、体内を透過して出てきた光

を分析することで採血なしに脂質が

測定できる。

 

通常、血中脂質を検査するには医

療機関で採血する必要があるが、こ

の非侵襲(注射針などで生体を傷つ

けない)脂質測定器装置を用いれ

ば、肌の上に装着するだけで測定可

能だ。2019年には研究者向けの

脂質測定器の販売を開始する予定だ

が、目指すゴールはそこではない。

 

例えば、心筋梗塞や動脈硬化の危

険性が高いといわれる食後高脂質症

は、空腹時に1回採血する健康診断

では発見が難しい。しかし腕時計の

ように装着して手軽に測定できれば

早期発見、予防につながるはずだ。

「24時間測定可能なら、体の中の変

化を意識せず、タイムリーに管理す

ることが可能です。そうすることで

今まで分からなかったものが見えて

くる。それができることを多くの方

に知ってほしい」と飯永さんは力強

く語る。将来的には日常的な健康管

理など、健康づくりに貢献するサー

ビスの提供までも見据えている。

北海道大学発の

ベンチャーとしてスタート

採血することなく、

血中脂質を測る方法を開発

 「起業当初はとにかく資金がなく、

北洋銀行の宮内さんに相談したとこ

ろ資本性ローンを紹介されました」。

大企業からすでに引き合いは来てい

たが、売上も実績もない現状ではど

こも資金を貸してくれない。「早い

ステージであったにもかかわらず、

きちんと評価していただき、手を差

し伸べてくれたことには本当に感謝

しています」と飯永さん。

 

無担保・無保証人、期限一括返済

であることもベンチャーには大きな

メリットだ。「これから起業する人

にはありがたい制度です」。

 

さらに同社は、ベンチャーキャピ

タルのANRIおよび国立研究開

発法人

科学技術振興機構(JST)

から総額1億円の資金調達を実施。

「この1億円の呼び水となったのが

資本性ローンだと思うんです。結果

を出し、企業としての価値を上げ

るためにも最初の融資である資本性

ローンは大変効果がありました。公

庫さんと宮内さんには本当に感謝し

ています」。頑張ることはもちろん

大事だが、人との縁をもっと大切に

したいと笑顔で語る飯永さんの挑戦

は今後も続く。

資本性ローンは

ベンチャーの味方

肌の上に機器を装着することで血中脂質の検査が可能な脂質測定器。これにより注射針で採血することなく、簡単に血液情報が得られます。

Local Venture Influencer l Case.105

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Case.2 航空宇宙機器部品製造

 主翼部品を手掛けていたボーイング787の完成が遅れてしまい、新たな開発に投資する資金が乏しくなったことから、融資の相談を受けました。先行投資型のビジネスモデルであるため、資金繰りを安定させる観点から、期限一括返済の資本性ローンをご紹介しました。開発期間が長いものの、量産後にはしっかりとした売り上げが見込めるので、この返済方法が経営スタイルにあうのではないかと

感じました。また、継続的な開発に耐えうる財務体質にする必要もあったため、資本性ローンを自己資本とみなせる点もメリットになると考えました。 日本の航空産業を支える技術基盤を持ち、大企業とも取引がある東興産業さんの動向は、商工会も大いに注目しています。地元企業の元気は、地域の元気にもつながりますので、今後ますますの活躍を期待しています。

Company Info

所在地:石川県かほく市創業年月:1986年2月事業内容:航空宇宙機器部品製造URL:http://www.to-ko.co.jp/

東興産業株式会社

東興産業株式会社代表取締役

間戸朋之さんTomoyuki Mato

東興産業さんの活躍は、地域の活性化にもつながる

内灘町商工会 主席経営指導員

内潟浩一郎さんKoichiro Uchikata

最先端技術で、

世界が認める部品を

作り続けたい

Influencer

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石川県かほく市。目の前に田んぼ

が広がる里山のふもとに東興産業株

式会社はある。従来かほく市は、ゴ

ム紐などの繊維産業で栄えた都市で

あり、東興産業の前身も繊維を生業

としていた。転換期が訪れたのは今

から30年ほど前。「当時は両親が2

人で繊維工場をやっていたのです

が、とあるつながりから現在の業務

をやってみないかという誘いがあっ

たんです。ただ、親父は体の調子が

あまりよくなく、充分に働ける状態

ではなかったので、長男である私が

工場を引き継ぐことになりました。

軌道に乗るまではずっと田んぼを耕

していたんですよ」と代表取締役の

間戸朋之さんは笑う。こうして、遠

くから蛙の鳴き声が聞こえてくる長

閑な風景におよそ似つかわしくな

い、航空宇宙機器部品の製造を主事

業とする東興産業が誕生した。

 

新事業をスタートさせてからは

試行錯誤の連続だった。間戸さん

の根底にあったのは„なにくそ根

性“だ。「最初は実績がなかったの

で、どんな仕事でも引き受けてい

きました。できないことも、どう

すればできるかを考えて、形ある

ものとして5つ6つ提案する。そ

の努力の積み重ねで、取引先から

の信用を得ることができ技術を磨

くこともできました」。そうした取

り組みの成果か、現在は有名な大

企業との取引を実現している。

 

東興産業が製造しているのは、航

空機や軍事用の部品がほとんど。企

業や軍事の機密に触れる重要事項な

ので詳細は紹介できないが、請け負

う仕事のすべてに共通しているのは

„非常に高い品質が求められること“

と„開発期間が長いこと“である。

手のひらに収まるほどの小さな部品

でも、特殊素材を使った特別な加工

技術、強度など、さまざまな要求が

あり、決して一筋縄ではいかない。

また、開発期間は1年、2年は当た

り前、中には5〜6年かかるものも

ある。「開発が終わって、量産が始

まるまでは売り上げが発生しません

し、数千万円単位の機械への先行投

資も必要になってきます。また、こ

の業界も技術革新が進んでいますの

で、その進展にあわせてアクション

を起こしていかなければ自分たちの

未来はありません。開発によりどん

どん体力が奪われるなかで、ご紹介

いただいた資本性ローンは財務体質

を強化できる融資ですので、とても

助かりました」。

 

代表でありながら、日々社員と一

緒に手を動かし、時には徹夜作業を

することもあるという間戸さん。今

後の会社のビジョンについて尋ねて

みると、「今の品質水準を保ちなが

ら新たなチャレンジもしていきたい

と思っています。日本で培った技術

は、世界でも高く評価されますので、

海外で勝負してみるのが夢」と、間

戸さんは前を見据える。

繊維業から

航空宇宙機器部品製造業へ

金属の断面を美しく切断するワイヤーカット放電加工機。工場内には高額な工作機械が数多く設置されており、ほとんどの機械が高い稼働率をキープしている。

素材置き場には、加工用の合成樹脂やゴム・スポンジが大量に保管されている。

長期間の開発に耐えられる

体力が必要だった

【東興産業の歩み】

1986年2月

  繊維業から

  航空宇宙機器部品製造業へ転換

  東興産業株式会社を設立

1992年10月

  工場設立

2001年7月

  業務拡大により工場を増設

2007年10月

  新たな機械の導入により

  新工場を設立

2008年11月

  ボーイング787主翼用の

  GFRP(注)の機械加工を受託

2014年

  世界トップレベルの品質を保証する

  ISO9001:2008

  and

AS9001C認証取得

2016年10月

  運転資金および

  加工機械購入資金として

  資本性ローンを利用

(注)

ガラス繊維強化複合材料

Local Venture Influencer l Case.207

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Case.3 生鮮食品卸・小売、飲食店

 「和田商店」に足を運ぶたび、「お客様もスタッフもなんだか楽しそうだな」と感じます。あの商店街随一の活気はおそらく、又江さんの“売り切り”スタイルのおかげでしょう。売り切りなら、お客様は新鮮な食材を安く手に入れることができるし、スタッフは仕事のめどが立つうえ、何より達成感があります。そして買った野菜や魚を自宅まで車で届けるサービスを始めたのも和田商店はとても早かった。つねにお客様の側に立ち、“いま何が必要か”

を見極め、すぐに実行に移せる力こそ又江さんの魅力です。 「魚カード」もそんな又江さんの眼力が光るアイデア。ぜひとも形にしてほしいと資本性ローンを紹介しました。新事業の取り組み時に利用できる資本性ローンは、かねてから「流通を変えたい」と熱く語る又江さんのような挑戦者にはピッタリだと思います。これからも持ち前のバイタリティで、神戸市民の食卓をおいしい魚と野菜で彩ってほしいです。

Company Info

所在地:兵庫県神戸市垂水区創業年月:2004年3月事業内容:�生鮮食品卸・小売、�

飲食店URL:http://www.agaru.co.jp/

株式会社担英未来

情熱を持った挑戦者には、資本性ローンを紹介することで応援

小倉靖弘税理士事務所

小倉靖弘さんYasuhiro Ogura

株式会社担英未来代表取締役

又江啓さん Kei Matae

新しい食の流通プラットフォームを

構築したい

Influencer

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【担英未来の歩み】

2004年3月

  個人事業の

  青果店(和田商店)を開業

2008年1月

  株式会社担英未来へ法人化

2008年2月

  鮮魚店(和田商店)をオープン

2014年2月

  垂水商店街に

  レストランをオープン

2016年11月

  「魚カード」の開発にあたり、

  資本性ローンを利用

2017年6月

  実績が認められ、

  イオンモール神戸南に

  「神戸垂水青果」を出店

 買い物客でにぎわう垂水商店街。

そのなかでもひときわ威勢のいい声

が飛び交う鮮魚店がある。それが「和

田商店」だ。「スタッフがよく声を

出しているのは、店頭に立っていた

頃の私のマネだと思います」と笑う

のは、垂水駅前に鮮魚店と青果店、

レストランを展開する株式会社担英

未来の代表取締役・又江啓さん。

 和田商店での会話に耳を傾けてみ

ると、その声がただのにぎやかしで

ないことはすぐに分かる。「シンプ

ルに塩焼きがいいよ」など、買った

魚に合わせて、おいしい食べ方を教

えている。「魚は種類が多く、旬に

よって味も大きさも変わります。そ

こでよりベストな調理法をお客様に

説明できるのが、対面販売である小

売りの強みです」。

 又江さんは飲食店をはじめ病院や

幼稚園等への、青果と鮮魚の卸売り

も行っている。冷凍の骨抜き魚では

なく、骨を抜いた状態の鮮魚を届け

たところ、これがおいしいと大好評。

小売りと卸売りの両方を行っている

会社だからこそ、きめ細かなオー

ダーにも応えることができた。

 しかし卸売りは小売りと違ってお

客様とのコミュニケーションが取り

づらく、魚について納得のいく説明が

難しい。知名度は低いが抜群におい

しい„幻の魚“も、知識を持たない

人にはその価値は伝わらない。そこ

で水産物に関する知識を的確に伝え

る手段が必要だと考えた又江さんは

あるアイデアを思いつく。それが「魚

カード」だ。魚カードには、写真の他、

産地や旬、歴史、調理方法等を記載

している。これを納入先である飲食

店等に無償で提供し、魚の価値を伝

え、販売量の拡大を図る。飲食店等

は、客席にそのまま魚カードを出し、

来店客にも情報を提供することがで

きる。また二次元バーコードをスマー

トフォンで読み込むと専用WEBサ

イトに飛び、漁の様子や調理例など

の映像を見ることもできる。「魚カー

ドを渡すことで、初めて見る魚でも

安心して注文できるようになります

し、珍しい魚が食べられる店として

他店との差別化もできます」。

 魚カードを実現するにあたり、税

理士から提案されたのが日本政策金

融公庫の資本性ローンだった。魚

カードが浸透するまでにはある程度

の時間がかかると考えていた又江さ

んにとって、期限一括返済はまさに

お客様と会話しながら

販売できるのが小売りの強み

レストラン「AeB」で扱う魚や野菜は当然、和田商店のもの。季節ごとの食材をメインに、神戸らしいイタリア料理が楽しめるお店です。

「魚カード」で珍しい魚を

もっと流通させたい

渡りに船だったという。「しかも借入

金が自己資本とみなされるなんて、

中小企業にとっては非常に魅力的で

した。融資が決まったときは、背中

を力強く押された気がしました」。

 融資を受けた後も順調に事業を拡

大させている。神戸市中央卸売市場

に隣接した場所にオープンしたイオ

ンモール神戸南のなかに、「神戸垂

水青果」を出店させたのだ。出店の

際にもまとまった資金が必要になっ

たが、民間の金融機関からも調達す

ることができた。「資本性ローンを

利用したことで、その後の資金調達

もしやすくなったと感じています」

と又江さん。

 直売所の繁盛ぶりからも分かるよ

うに、いま食の流通経路は大きな変

化を迎えようとしている。「生産者

と消費者、両方にメリットがある新

しい流通の形をつくりたい」と話す

又江さん。よりおいしい魚や野菜が

手軽に手に入る未来をつくるため、

和田商店には今日も明日も、威勢の

いい声が響く。

目標は生産者と消費者を

直接つなぐこと

「仕事をするうえで大切なもの」を尋ねると、又江さんは「仲間」と即答。従業員をどれほど信頼しているかは表情を見れば分かります。

Local Venture Influencer l Case.309

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Case.4 障がい者支援者向けeラーニングコンテンツ制作

 大阪府が主催する「大阪起業家スタートアッパービジネスプランコンテスト」の受賞をきっかけに、Lean on Meの志村さんと出会いました。第一印象は「純粋な人」。その印象は話せば話すほど強まる一方で、「障がい者にやさしい社会をつくりたい」という純粋な想いこそ、ビジネスの原動力になっているのだと実感します。より良い情報をキャッチするために、常にアンテナを広く張ってい

る方で、資本性ローンに関しても「こういうのがあるのだけれど、どう思いますか」と志村さんの方から相談してくれました。もちろん私としても大賛成。出資に近い性質がある資本性ローンは、志村さんのような有能な若手起業家にピッタリの制度だと思います。会社をさらに大きくし、障がい者と社会をつなぐ屈強なかけ橋になられることを期待しています。

Lean on Meは障がい者と社会をつなぐかけ橋になる

大阪産業創造館 経営相談室コンサルタント

森啓さんSatoru Mori

株式会社Lean on Me代表取締役

志村駿介さん Shunsuke Shimura

すべては障がい者にやさしい

街づくりのために

Company Info

所在地:大阪府高槻市創業年月:2014年4月事業内容: 障がい者支援者向け

eラーニングコンテンツ制作URL:https://leanonme.co.jp/

株式会社Lean on Me

Influencer

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【Lean

on

Meの歩み】

2013年9月

  障がい者支援施設に就職

  研修がない状況に驚き、

  自らマニュアルを作成

2014年4月

  株式会社Lean

on

Meを設立

2015年4月

  教育プログラムを学ぶため

  米オレゴン州に1ヵ月間留学

2016年4月

  eラーニングコンテンツの

  プロトタイプが完成し、施設に試験導入

  その後本格導入へ

2016年7月

  「大阪起業家

  スタートアッパービジネス

  プランコンテスト」で受賞

2017年9月

  システム開発等の資金として

  資本性ローンを利用

 

Lean

on

Meには、「私にも

たれていいよ」や「私に寄り添って」

という意味がある。この言葉を社名

に掲げ、障がい者支援に関わる事業

を中心に展開しているのが、株式会

社Lean

on

Meの代表取締役・

志村駿介さんだ。現在28歳、若手起

業家と呼ばれる年齢だが、志村さん

と障がい者支援の関わりは長く、深

い。「弟がダウン症で、母は障がい

者支援施設に勤めていましたから、

障がい者との関わりは私にとって生

活そのもの。障がい者の役に立ちた

いという思いは、ずっと以前から抱

いていました」。

 

起業する前は障がい者支援施設に

勤務していた志村さんだが、業界の

実態に愕然としたという。研修やマ

ニュアルが無く、新人に対して適切

な教育が行われていないのだ。「施

設としても教育が不要だとは思って

いません。ただ24時間稼働していて、

加えてほとんどの施設が万年、人手

不足ですから、教育に割く時間も人

手も無いのが現状。そこで私が考え

たのが、スマートフォンやパソコン

を利用して安全面や法律などを体系

的に学べる„eラーニング“でした」。

 

障がい者支援者の教育を変える

必要性を感じた志村さんはLean

on

Meを創業。eラーニング用

のコンテンツを開発するため各施設

へのヒアリングを始め、創業の翌年

には、障がい者支援の先進地域であ

る米オレゴン州に渡り、教育プログ

ラムを学んだ。

 

そして2016年にeラーニン

グコンテンツのプロトタイプが完

成。施設への試験導入が決まったう

え、eラーニング研修が「大阪起

業家スタートアッパービジネスプラ

ンコンテスト」で受賞と、志村さん

に追い風が吹きはじめた。この波に

乗ってさらに導入施設を増やしたい

ところだったが、ある課題があった。

そう、資金調達だ。「eラーニング

はコンテンツ開発に資金が必要で、

マネタイズが後回しになりがちなビ

ジネス。そこで活用させていただい

たのが日本政策金融公庫の資本性

ローンです。資本性ローンは期限一

括返済で借入期間中の返済は利息だ

けでいいので、キャッシュフローが

安定する点が非常に助かりました。

その後、複数の施設への導入が決定

し、資本性ローンがチャンスをくれ

たように感じました」。

 

資本性ローンはそのメリットの大

きさから、起業家仲間の間で話題に

上ることが多いという。「当社に融

資が下りたということは、eラー

ニングの社会的価値を認めていただ

けたようで、私の自信にもつながり

ました」と志村さんは胸を張る。

 

障がい者支援への熱い思いと同様

に、志村さんを支えているのがテニ

スだ。じつは志村さんは、あの錦織

圭選手と同じアメリカのアカデミー

に留学していたほどの腕前の持ち

主。現在は経験を活かし、知的障が

い者を対象にしたテニス教室を開催

している。「eラーニングにしても、

テニス教室にしても、根っこの部分

は同じで、障がい者にやさしい街づ

くりのために頑張っています。最終

的には、街中で困っている障がい者

を見かけたときに、手を差し伸べて

くれる人が増えればいいですね」と

志村さんは語る。

困っている人に差し伸べる

手をもっと増やしたい

教育プログラムは、障がい者支援施設へのヒアリングを重ね、現場の声を汲み取りながら作成。教材の内容は多岐にわたる。

Lean on Meでは知的障がい者を対象としたテニス教室「Special Tennis」を開催。「障がい者と地域との関わりをつくりたい」と志村さん。

eラーニングが

施設の支援者教育を変える

資本性ローンが

行動するチャンスをくれた

Local Venture Influencer l Case.411

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●事業資金に関するお問合せは、事業資金相談ダイヤル(フリーダイヤル)

0120-154-505または、最寄りの支店までお願いします。行こうよ!公庫

事業資金相談ダイヤル

®

(行こうよ!公庫)

0120-154-505

日本公庫 検 索

https://www.jfc.go.jp/

平成30年6月

日本政策金融公庫国民生活事業では、全国152支店のネットワークを活かし、全国15ヵ所に設置している「創業支援センター」、全国6ヵ所に設置している「ビジネスサポートプラザ」および全支店に設置している「創業サポートデスク」において、ベンチャー企業・地域に根付いた企業の皆さまからのご相談をお受けしております。

全国152支店のネットワークでベンチャー企業や地域に根付いた企業をバックアップ