6
124循環制御第25巻第2号(2004) 心疾患を合併する高血圧の治療 濱田希臣*,重松裕二** はじめに 高血圧は左室への持続的な圧負荷に対し,初期 には壁厚の増加が不十分なため,壁応力は高値と なる.しかし,壁厚の増加により,壁応力は正常 化し,初期に認められる後負荷不適合は矯正され る.すなわち,心肥大の形成は負荷に対する合目 的な適応現象と考えられてきた.しかし,最近の 多くの研究は,心肥大は生体にとって必ずしも有 利な適応ではなく,心血管系の合併症の危険率の 増大を招く有害な反応でもあることを明らかにし ている1~4).したがって,心肥大が重症化する前に 心肥大の退縮をはかることは,高血圧患者の予後 障訣 礎盤 響騨》鞭趣嚇掴ツ髄 V5 V6 腸内簸灘 難灘 騨隷 を改善する上で必須の治療戦略である.しかしな がら,高血圧の発症に際し,高血圧の病期の進展 と血中の様々な体液性因子の変化については多く 報告されているが,心肥大に関与する物理的な刺 激因子についての検討は少ない.本稿では,高血 圧患者の心肥大に関与する物理的刺激因子と高血 圧患者が左心機能低下に至り心不全を発症する機 序とその治療戦略について概説する. 高血圧性心肥大の物理的刺激因子 図1は両側の腎血管狭窄に伴う高血圧患者の病 期進展に伴う心エコー図と心電図の変化を示した ものである.(A)は初診時の心エコー図と心電図 B.心不全発症時 @ yC.正常時 LVM == left ventricular mass V5 血1薄粥轟 難購 鑓二 鷲灘藷讐 ’撚三灘、甑べ 図1 高血圧性心肥大に伴う心エコー図と心電図の変化 *市立宇和島病院内科 副院長 ** 、媛大学医学部第二内科 助教授 Presented by Medical*Online

LVM == left ventricular mass 難灘 騨隷jsccm.umin.jp/journal_archive/1995.1-2009.2/2004/002502/... · 2011. 1. 14. · LVM == left ventricular mass V5 駆 血1薄粥轟

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124循環制御第25巻第2号(2004)

心疾患を合併する高血圧の治療

濱田希臣*,重松裕二**

はじめに

 高血圧は左室への持続的な圧負荷に対し,初期

には壁厚の増加が不十分なため,壁応力は高値と

なる.しかし,壁厚の増加により,壁応力は正常

化し,初期に認められる後負荷不適合は矯正され

る.すなわち,心肥大の形成は負荷に対する合目

的な適応現象と考えられてきた.しかし,最近の

多くの研究は,心肥大は生体にとって必ずしも有

利な適応ではなく,心血管系の合併症の危険率の

増大を招く有害な反応でもあることを明らかにし

ている1~4).したがって,心肥大が重症化する前に

心肥大の退縮をはかることは,高血圧患者の予後

響障訣

嚥ハ

ぞぷ  じ

肺 禍

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響騨》鞭趣嚇掴ツ髄

  V5 V6腸内簸灘

難灘騨隷

を改善する上で必須の治療戦略である.しかしな

がら,高血圧の発症に際し,高血圧の病期の進展

と血中の様々な体液性因子の変化については多く

報告されているが,心肥大に関与する物理的な刺

激因子についての検討は少ない.本稿では,高血

圧患者の心肥大に関与する物理的刺激因子と高血

圧患者が左心機能低下に至り心不全を発症する機

序とその治療戦略について概説する.

高血圧性心肥大の物理的刺激因子

 図1は両側の腎血管狭窄に伴う高血圧患者の病

期進展に伴う心エコー図と心電図の変化を示した

ものである.(A)は初診時の心エコー図と心電図

B.心不全発症時

   き

  

@鞠製欝

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C.正常時

LVM == left ventricular mass

  V5    駆

血1薄粥轟   難購 鑓二

    羅

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図1 高血圧性心肥大に伴う心エコー図と心電図の変化

*市立宇和島病院内科 副院長

**、媛大学医学部第二内科 助教授

Presented by Medical*Online

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第13回循環器セラピューティック・フォーラム『合併症を伴った高血圧の治療』 125

O.8

O.7

O.6

5   4   3

0   0   0

左室相対壁厚

O.2

O.1

B

FM

.AD1

 Aoo

・。品用

評』

   口

◎◎

◎口口『

口/凹

ォ△翻

  

@ 

m

   9  C◎一一一一一一

キ一

y=O.002x十〇.166

r=O.701

p〈O.Ol

D

A:正常左室

B:求心性リモデリング

C:求心性肥大

D=遠心性肥大

 O正常対照群  本態性高血圧症

 △1群 ロII群 ◎III群

 F=female

 M=male

50 100 150 200 250 300     左室心筋重量係数(glM2)

図2 高血圧患者における左室相対壁厚と左室心筋重量係数の関係

であるが,既に心肥大を発症している.肥大の進

展とともに壁運動は低下し心不全を発症した(B).

腎臓の自家移植により,血圧値は正常化し,左室

肥大の完全な退縮と左心機能も正常化した(C).

したがって,高血圧患者の治療と管理に関し,速

やかな降圧により左室肥大を退縮させ得るならば,

左心機能を改善させることも可能であることを示

している.図2は左室相対壁厚と左室心筋重量係

数の関係を正常対象者および高血圧患者で見たも

のである.心不全の発症のない患者では両指標は

良好な相関を示し,高血圧の進展に伴う代償機転

としての心肥大の重要性が示唆された.しかしな

がら,左室心筋重量係数が20091m2を超えると両

指標の相関は破綻し,後負荷不適合のため心不全

を発症する.したがって,左室心筋重量係数が

200g!m2辺りが高血圧性心肥大の限界と考えられる.

 後負荷の代表としては,収縮末期壁応力と最大

収縮期壁応力が臨床応用されている.収縮末期壁

応力は左室収縮期心機能と良好な逆相関が,また

最大収縮期壁応力は冠予備能と良好な逆相関のあ

る5)ことが知られている.図3は図2で示した高血

圧患者が高血圧の病期の進展に伴い,収縮末期壁

応力,最大収縮期壁応力,相対的壁厚,左室拡張

末期径および左室収縮末期径,さらに左室心筋重

量がどのように変化するのかを見たものである.

図のように,左室壁厚,左室内径および左室心筋

重量が正常対象者と差のない高血圧群では最大収

縮期壁応力の著しく高いのが特徴であり,最大収

収縮末期

 壁応力

(dynes/cm2)

120

劉OUI:ZtZ-EZ.IZユ_

o[ヨ[う

 きを

最大収縮期

 壁応力

(dynes/cm2)

左室相対

 壁厚

250

謝0一一ユ_

[::ゴ

 オを

i,ol”1‘lab.[:][i[]E)

       70左室拡張末期径 60

  (囮)  50       40左室収縮末期径       30  (a)       20  (mm) 10       0

費*

左室心筋重量

 係数 (gyM2)

30025020015010050

 0

★禽

*de

        正常血圧 1群  II群  III群

        対照群  L本態性高血圧症」

図3 正常対照群,心肥大のない高血圧患群(1),心

  肥大を有する高血圧群(II)および心不全の既

  往を有する高血圧群(III)の各指標の比較

  scp〈O.Ol, ”p〈O.OOI

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126 循環制御第25巻第2号(2004)

縮期壁応力が高血圧性心肥大の物理的刺激因子の

大きな原因の一つと考えられる.壁厚の増加によ

り,最大収縮期壁応力は正常化するが左室心筋重

量の増加とともに左室収縮期心機能は悪化する.

事実今回対象とした高血圧患者全体の収縮末期壁

応力と左室内径短縮率は極めて良好な負の相関が

認められた.さらに,心不全患者では左室内径の

増加とともに収縮末期壁応力が著しく増悪する,

この理由としては,左室リモデリングに伴う左室

心筋の質の変化,すなわち心筋細胞/間質細胞の体

積率の低下も大きく関与していることも間違いは

ないと思われる.高血圧の病期の進展に伴う心電

図上のR波の増加と陰性T波の出現6)は心肥大に

伴う心筋虚血の関与のあることを示唆している.

高血圧性心肥大の冠血流量に及ぼす影響

 Poleseら7)は,冠灌流圧の減少と冠血流量の変化

について検討し,正常者,心肥大のない高血圧患

者では血圧が低下しても冠血流量は殆ど変化しな

いが,心肥大を有する高血圧患者では血圧がある

値以下になると冠血流量は急激に低下することを

報告している.すなわち,心肥大を残したまま血

圧を低下させると心筋虚血が進展する可能性のあ

ることを指摘している.

 冠血流量を非観血的に定量測定することは容易

ではなく,これまで高血圧患者の心肥大の程度と

冠血流の関係を検討した報告は少ない.我々は,

タリウム心筋シンチグラフィと心エコー図から冠

血流量の定量が可能なこと,その値が観血的検査

値と良好な相関のあること,またこれまでに報告

されてきた冠血流量とも矛盾のないことを報告し

た8).図4の上段は冠血流量と左室心筋重量の関係

を,下段は単位心筋当たりの冠血流量と左室心筋

重量の関係をみたものである8>.図のように冠血流

量と左室心筋重量の間には極めて良好な正相関が

認められる.しかしながら,単位心筋当たりの冠

血流量と左室心筋重量の間には負の相関が存在し,

心肥大の進展とともに心筋虚血の進展することが

明らかである.表1は安静時の冠血流量に及ぼす

予測因子として年齢,体表面積,左室心筋重量,

心拍数,収縮期血圧,拡張期血圧および心拍数と

収縮期血圧からなる2重積の各指標を用いて多変

量解析した結果である8).安静時の冠血流量に及ぼ

imvminl

 500 450 400 350冠

血300流250量200 150 100  50

  0

%鍵

o

o

y= O.598x十101.188

n= 50

r= 0827p〈 O.OOOI

(g)

O 100 200 300 400 500 600 700

     左室心筋重量

(ml/min/100gl

 250単

心200筋

当 150た

 100の

血 50流

量  0

  o   %coも。解

Y=1233.OssxOi4s4

血=50

r=O.686

p〈O.OOO1

oo

                (g)  O 100 200 300 400 500 600 700

        左室心筋重量

図4 高血圧患者における冠血流量と左室心筋重量

  (上)および単位心筋当たり冠血流量と左室心

  筋重量(下)の関係

  (文献8より引用)

表1 冠血流量の独立した規定因子(多変量解析)

説明変数 回帰係数  標準誤差 t値 P値年齢

体表面積

左室心筋重量

心拍数

収縮期血圧

拡張期血圧

二重積

O.509

一4.355

O.649

57.716

0.116

5.666

2,606

1.763

0.036

一1.716

-O.781

 4.377

 0.390

 1.405

-2.470

-0292

O.0996

0.4428

0.OOO2

0.7003

0.1735

0.0214

0.7731

冠血流量=0.509(左室心筋重量)一4.355(拡張期血圧)+30.986 R==O.852, R2=O.727

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第13回循環器セラピューティック・フォーラム『合併症を伴った高血圧の治療』 127

す予測因子としては左室心筋重量と拡張期血圧が

有意な指標であり,中でも左室心筋重量が最も強

い因子であった.

 単位心筋当たりの冠血流量と左室心筋重量の間

に負の相関が存在したことより,高血圧患者の単

位心筋当たりの冠血流量が左室心機能にどのよう

に影響しているのかを検討したのが図5である9).

上段は収縮期心機能として左室中壁短縮率を,下

段は拡張期心機能として等容拡張時間を単位心筋

当たりの冠血流量と比較したものである.単位心

筋当たりの冠血流量と収縮期心機能は正相関を,

拡張期心機能は負の相関を示した.これら心機能

に及ぼす影響を年齢,心拍数,収縮期血圧,拡張

期血圧,左室心筋重量係数,相対的壁厚および単

位心筋当たりの冠血流量を用いた多変量の因子で

検討した結果,両指標に共通して影響を及ぼして

いるのは単位心筋当たりの冠血流量と拡張期血圧

のみであり,特に単位心筋当たりの冠血流量が最

中壁短縮率

30

25

20

15

10

5

(%)

o

o

    む 。。。(iif’

        o     O Io  oo

m◎o

y=O.077x十9.236

r=o.66g, p〈o.oool

o

 O 50 100 150 200 250  単位心筋当たりの冠血流量(m1/mh1/1009)

大の要因であった.

 図6は正常者,心不全の既往のない高血圧患者,

および心不全の既往を有する高血圧患者の単位心

筋当たりの冠血流量を比較したものである.心不

全の既往を認める高血圧患者の単位心筋当たりの

冠血流量は他の2群に比較し明らかな低値を示し

た.心不全を発症する高血圧患者の多くは心電図

上陰性T波を有している.図7は高血圧患者の陰

性T波が心房ペーシングで消失することを示した

ものである.心房ペーシングで冠血流量は3~4倍

に増加しており,この増加が陰性T波の消失に密

接に関与しているものと考えられる.すなわち,

高血圧患者では高血圧の進展とともに左室肥大が

進展し,左室の必要とする冠血流量も増大する.

しかし,単位心筋当たりの冠血流量は低下し,そ

の結果左室の心機能は心筋虚血の為に徐々に低下

し,やがて心不全を発症するものと考えられる.

等容拡張時間

(msec)

 640

 560

 480冠

血 400

璽320里

 240

150

125

100

75

50

25

諸。轟。.

     o co。。69。躍。

y=一〇.30sx十137.013

r= 一〇.s7g, p 〈o.oool

  o

   O 50 100 150 200 250    単位心筋当たりの冠血流量(mi/㎡n/1009)

図5 高血圧患者における左室中壁短縮率と単位心

  筋当たり冠血流量(上)および左室二藍拡長時

  間と単位心筋当たり冠血流量(下)の関係

  (文献9より引用)

単位心筋当たりの冠血流量

160

00

8

1/min)

琿      騨 1醐h

IrP<α001一「

@             国■

刷      ■

i

鰭霧

 『

リ  1繍       1

d …

@      i

正常血圧対照群

(ml/min/lOOg)

320

280

240

200

160

120

80

40

心不全(→心不全(+)

高血圧症

p〈O.OOI 7

LP‘O・OOi1

図6

 o   正常血圧 心不全(→ 心不全(+)

    対照群          高血圧症

心不全の既往の有無による冠血流量と単位心

筋当たりの冠血流量の比較

撚難鍵難、

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128循環制御第25巻第2号(2004)

       前

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図7高血圧患者の心電図に及ぼす心房ペーシングの効果

(%) 100

 90  80  ⑳

心血管系事故のない生存率

左室肥大(一)群

p=O.013

左室肥大(+)群

(%) 100

90

@80 70 60 50

心血管系事故のない生存率

退縮(+)群

p=O.002

退縮(一)群

 oo am 40 -”   O 100 200 300 400 500 O 100 200 300 400 500       経過観察期間(週)              経過観察期間(週)

図8 高血圧患者の心血管事故および生存率に及ぼす左室肥大の影響(文献4より引用)

高血圧性心疾患治療薬の選択

 図8は心肥大の有無と心血管系事故の関連,さ

らに降圧治療により心肥大が退縮した群としなか

った群における心血管事故による生存率を比較し

たものである4).心血管事故の発症率ならびに生存

率とも圧倒的に心肥大の悪影響が伺える.これま

で述べてきたように,高血圧に伴う心肥大には必

然的に心筋虚血の悪影響がもたらされる.さらに,

MIBG心筋シンチグラフィを用いた検討では心肥

大の進展とともに心縦隔比は低下し,平均洗い出

し率は増加することが明らかになっている10).こ

のことは心肥大の進展とともに左室心筋のカテコ

ラミン動態の異常が促進されることを意味してい

る.これらの結果,心肥大の進展とともに心血管

事故が増加するものと考えられる.高血圧患者の

冠血流量の予備能力の改善には,血管内皮機能等

の改善によることも必要ではあるが,降圧による

左室心筋重量の減少を図ることが最も有効な手段

と思われる.表2はWorld Health Organization-

International Society of Hypertensionによる高血圧

管理ガイドラインを示したものであるが11),2003

年に発表されたEuropean Society of Hypertension-

European Society of Cardiologyによる高血圧管理ガ

イドライン12)と大きな変化はない。この表はこれ

までに蓄積されたevidenceに基づいた治療戦略を

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第13回循環器セラピューティック・フォーラム『合併症を伴った高血圧の治療』 129

表2 合併症などによる降圧薬選択指針

薬剤の種類 強制適応 適応可能 絶対的禁忌 禁忌の可能性

利尿薬 心不全

高齢者

収縮期高血圧

糖尿病 痛風 脂肪代謝異常

性機能維持希望の男性

β遮断薬 狭心症

心筋梗塞後

 頻脈性不整脈

心不全

妊娠

糖尿病

気管支喘,E、

慢性閉塞性肺疾患

心プロツク

脂肪代謝異常

運動選手

高身体活動の患者

ACE阻害薬 心不全

      左室機能障害

      心筋梗塞後

       糖尿病性腎症

妊娠

高カリウム血症

両側腎動脈狭窄

Ca拮抗薬  狭心症

      高齢者

      収縮期高血圧

末梢血管障害 心ブロック うっ血性心不全

α遮断薬 前立腺肥大症 耐糖能異常

脂肪代謝異常

起立性低血圧

AH受容体 ACE阻害薬による咳 心不全拮抗薬

妊娠

両側腎動脈狭窄

高カリウム血症

示している.したがってこれらの薬剤を選択する

ことは当然ではあるが,これらの薬剤を使用し適

確に降圧を図ることが何よりも重要であろう.さ

らに,患者一人ひとりの心血管事故を防ぐには,

治療および管理を行っている.医師の治療による病

態の変化を適確に評価する能力も極めて重要であ

る.高血圧患者の病態の変化は聴診および心電図

という基本手技を中心とした評価法で十分可能で

ある.医師の循環器領域における基礎的評価方法

の再認識が患者の予後を大きく左右することを念

頭に入れ日常診療にあたる必要がある.

文 献

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