49
2.7.2 臨床薬理試験 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 65 of 220 プラゾール 40mg を併用投与した時の安全性及び忍容性、並びにリオシグアト及び M-1 の薬物動 態をリオシグアト 2.5mg 単独投与時と比較した。 投与 A:0 日目の朝 9:00 頃リオシグアト 2.5mg 即放錠を空腹時単回経口投与 投与 B:オメプラゾール 40mg(20mg 腸溶錠 2 錠)4 日間反復投与(-4~-1 日目)後、 0 日目の朝 7:00 頃オメプラゾール 40mg を投与し 2 時間後(9:00 頃)にリオシグアト 2.5mg 即放錠を空腹時単回経口投与。 投与 A 及び B の間に 72 時間以上の休薬期間を設けた。 リオシグアトの血漿中濃度推移を図 2.7.2.2-33に示し、薬物動態学的パラメータを表 2.7.2.2-39にまとめた。また、リオシグアトの AUC 及び Cmax について、オメプラゾールとの併用 投与時及びリオシグアトの単独投与時の比(オメプラゾールとの併用投与時/リオシグアト単独 投与時)の点推定値(最小二乗平均)及びその両側 90%信頼区間を表 2.7.2.2-40にまとめた。 図 2.7.2.2-33 オメプラゾールとの併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ アトの血漿中濃度推移(幾何平均値) 引用元:5.3.3.4.1 PH-35196 の Table 14.4/1 表 2.7.2.2-39 オメプラゾールとの併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ アトの薬物動態学的パラメータ 〔幾何平均値/%CV(範囲)〕 a 中央値(範囲) 引用元:5.3.3.4.1 PH-35196 の Table 14.4/2、Table 14.4/3

N3 - 医薬品医療機器総合機構...2.7.2 臨床薬理試験 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 72 of 220 図 2.7.2.2-37 クラリスロマイシン併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 65 of 220

プラゾール 40mg を併用投与した時の安全性及び忍容性、並びにリオシグアト及び M-1 の薬物動

態をリオシグアト 2.5mg 単独投与時と比較した。

投与 A:0日目の朝 9:00 頃リオシグアト 2.5mg 即放錠を空腹時単回経口投与

投与 B:オメプラゾール 40mg(20mg 腸溶錠 2 錠)4 日間反復投与(-4~-1 日目)後、

0日目の朝 7:00 頃オメプラゾール 40mg を投与し 2時間後(9:00 頃)にリオシグアト

2.5mg 即放錠を空腹時単回経口投与。

投与 A及び Bの間に 72時間以上の休薬期間を設けた。

リオシグアトの血漿中濃度推移を図 2.7.2.2-33に示し、薬物動態学的パラメータを表

2.7.2.2-39にまとめた。また、リオシグアトの AUC 及び Cmaxについて、オメプラゾールとの併用

投与時及びリオシグアトの単独投与時の比(オメプラゾールとの併用投与時/リオシグアト単独

投与時)の点推定値(最小二乗平均)及びその両側 90%信頼区間を表 2.7.2.2-40にまとめた。

図 2.7.2.2-33 オメプラゾールとの併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

アトの血漿中濃度推移(幾何平均値)

引用元:5.3.3.4.1 PH-35196 の Table 14.4/1

表 2.7.2.2-39 オメプラゾールとの併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

アトの薬物動態学的パラメータ 〔幾何平均値/%CV(範囲)〕

a 中央値(範囲)

引用元:5.3.3.4.1 PH-35196 の Table 14.4/2、Table 14.4/3

Page 2: N3 - 医薬品医療機器総合機構...2.7.2 臨床薬理試験 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 72 of 220 図 2.7.2.2-37 クラリスロマイシン併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 66 of 220

オメプラゾールとの併用投与時には単独投与時と比較してリオシグアトの平均 Cmaxは 35%低下、

及び平均 AUC は 26%減少し、リオシグアトのバイオアベイラビリティの低下が認められた。リ

オシグアトの消失半減期は単独投与時及び併用投与時でそれぞれ 7.9 時間及び 9.0 時間(幾何平

均値)であった。

リオシグアトとオメプラゾールを併用投与しても M-1 の曝露量には大きな影響はみられなかっ

た。すなわち、オメプラゾールとの併用により M-1 の平均 Cmaxは 7%増加、平均 AUC は 3%減少

したのみであった。また、単独投与時及び併用投与時における消失半減期はそれぞれ 14.2 時間

及び 13.6 時間で、ほとんど変化しなかった。

結論として、オメプラゾール 40mg との併用によりリオシグアトのバイオアベイラビリティが

低下することが明らかになった。

表 2.7.2.2-40 オメプラゾール併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグアト

の AUC 及び Cmaxの比に対する点推定値(最小二乗平均)及びその両側 90%信頼

区間(ANOVA)

引用元:5.3.3.4.1 PH-35196 の Table 14.4/5

2.7.2.2.3.1.2 水酸化アルミニウム/水酸化マグネシウムとの薬物相互作用試験〔試験

11890(5.3.3.4.2 PH-35362)参照〕

本試験は健康成人男性被験者 12 名を対象とした無作為化非盲検クロスオーバー試験で、マー

ロックス®懸濁剤 10mL とリオシグアト 2.5mg 即放錠を併用投与した時の安全性及び忍容性、並び

にリオシグアト及び M-1 の薬物動態をリオシグアト 2.5mg 単独投与時と比較した。

投与 A:朝 8:00 頃リオシグアト 2.5mg 即放錠を空腹時単回経口投与

投与 B:マーロックス®70mval 懸濁剤 10mL を単回経口投与後、速やかに(朝 8:00

頃)リオシグアト 2.5mg 即放錠を空腹時単回経口投与。

投与 A及び Bの間に 5日以上の休薬期間を設けた。

リオシグアトの血漿中濃度推移を図 2.7.2.2-34に示し、薬物動態学的パラメータを表

2.7.2.2-41にまとめた。また、リオシグアトの AUC 及び Cmax について、マーロックス®との併用

投与時及びリオシグアトの単独投与時の比(マーロックス®との併用投与時/リオシグアト単独

投与時)に対する点推定値(最小二乗平均)及びその両側 90%信頼区間を表 2.7.2.2-42にまと

めた。

マーロックス®との併用投与時には単独投与時と比較してリオシグアトの平均 Cmax は 56%低下、

平均 AUC は 34%減少し、リオシグアトのバイオアベイラビリティの低下が認められた。また、

マーロックス®との併用投与時におけるリオシグアトの消失半減期は 8.6 時間で、単独投与時の

5.9 時間と比較して延長した。

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 67 of 220

マーロックス®との併用投与により M-1 の曝露量も影響を受け、リオシグアト単独投与時と比

較して、Cmaxは 44%低下し、AUC は 33%減少した。また、単独投与時及び併用投与時における M-

1 の消失半減期はそれぞれ 12.2 時間及び 14.2 時間(幾何平均値)であった。

図 2.7.2.2-34 マーロックス®との併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグア

トの血漿中濃度推移(幾何平均値)

引用元:5.3.3.4.2 PH-35362 の Table 14.4/1

表 2.7.2.2-41 マーロックス®併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグアトの

薬物動態学的パラメータ 〔幾何平均値/%CV(範囲)〕

Parameter Unit 2.5 mg riociguatalone

2.5 mg riociguatwith Maalox

AUC g*h/L 465.9/68.2 (110.7-1110) 309.6/87.2 (52.13-693.9) Cmax g/L 80.78/38.4 (34.82-134.4) 35.47/57.1 (13.26-69.90)tmax

a h 1.000 (0.7500-2.000) 2.500 (1.500-4.000)t1/2 h 5.893/44.4 (1.903-9.376) 8.616/53.8 (2.478-16.79)

a 中央値(範囲)

引用元:5.3.3.4.2 PH-35362 の Table 14.4/2、Table 14.4/3

表 2.7.2.2-42 マーロックス®併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグアトの

AUC 及び Cmaxの比に対する点推定値(最小二乗平均)及びその両側 90%信頼区

間(ANOVA)

Ratio Analyte Parameter Estimated ratio(%)

90% confidenceinterval (%)

Riociguat plus Maalox / Riociguat AUC 66.45 [ 56.21 ; 78.55]Riociguat alone Cmax 43.91 [ 33.96 ; 56.77]

引用元:5.3.3.4.2 PH-35362 の Table 14.4/5

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 68 of 220

結論として、マーロックス®との併用により消化管からのリオシグアトの吸収量が減少及び吸

収速度が低下し、リオシグアトのバイオアベイラビリティが低下することが明らかになった。そ

れに伴った M-1 の曝露量の減少も認められた。

2.7.2.2.3.2 代謝及び排泄過程における薬物相互作用

非臨床試験の結果から、リオシグアトの M-1 への代謝には CYP1A1、CYP3A4、CYP2C8、及び

CYP2J2 が関与すること、及び能動的排泄過程に P-gp/BCRP が関与していることが示された。リ

オシグアトはこれらの酵素やトランスポーターを阻害又は誘導する薬物との併用により薬物相互

作用を受ける可能性があることから、以下の薬剤との薬物相互作用試験を実施した。

ケトコナゾール:CYP3A4 の強力な阻害薬。CYP2J22)、CYP1A13)及び CYP2C84)も阻害す

る。さらに、P-gp40)及び BCRP5)の強力な阻害薬でもある。

クラリスロマイシン:CYP3A4 の強力な阻害薬であり、軽度から中等度の P-gp 阻害薬

である40)。

ミダゾラム:CYP3A4 基質40)である。

2.7.2.2.3.2.1 ケトコナゾールとの薬物相互作用試験〔試験 11261(5.3.3.4.3 PH-

35000)参照〕

本試験は健康成人男性被験者 16 名(喫煙被験者 3 名、非喫煙被験者 13 名)を対象とした無作

為化非盲検逐次デザイン試験で、ケトコナゾール 1 日量 400mg をあらかじめ 4 日間反復投与した

後、リオシグアト 0.5mg 即放錠とケトコナゾール 400mg を併用投与した時の安全性及び忍容性、

並びにリオシグアト及び M-1 の薬物動態をリオシグアト 0.5mg 単独投与時と比較した。

投与 A:標準朝食を摂取後(8:00 頃)、リオシグアト 0.5mg 即放錠を単回経口投与

投与 B:ケトコナゾール 1日量 400mg(200mg 錠 2錠)を 4日間反復投与(-4~-1 日

目)し、その後、標準朝食を摂取後(0日目 8:00 頃)、ケトコナゾール 400mg を投

与して、リオシグアト 0.5mg 即放錠を単回経口投与。

ケトコナゾールとの併用投与時のリオシグアト及び M-1 の薬物動態学的パラメータをリオシグ

アト単独投与時と比較した。また、併用投与日とその前日(ケトコナゾール単独投与最終日)の

ケトコナゾールの薬物動態を比較した。

なお、被験者 16 名中 14 名に対しては、同意取得後、ケトコナゾール及びリオシグアトの代謝

酵素である CYP3A5 の遺伝子多型(変異型 *1 及び*3)について検査した。

リオシグアト及び M-1 の血漿中濃度推移を図 2.7.2.2-35及び図 2.7.2.2-36にそれぞれ示し、

薬物動態学的パラメータを表 2.7.2.2-43及び表 2.7.2.2-44にそれぞれまとめた。また、リオシ

グアトの AUC 及び Cmaxについて、ケトコナゾールとの併用投与時及びリオシグアトの単独投与時

の比(ケトコナゾールとの併用投与時/リオシグアト単独投与時)の点推定値(最小二乗平均)

及びその両側 90%信頼区間を表 2.7.2.2-45にまとめた。

Page 5: N3 - 医薬品医療機器総合機構...2.7.2 臨床薬理試験 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 72 of 220 図 2.7.2.2-37 クラリスロマイシン併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 69 of 220

ケトコナゾールとの併用投与時には単独投与時と比較してリオシグアトの平均 Cmaxは 46%上昇、

平均 AUC は 150%増加し、リオシグアトの曝露量に増加が認められた。また、リオシグアトの消

失半減期は単独投与時の 7.3 時間から併用投与時には 9.2 時間に延長し、みかけの全身クリアラ

ンスは 6.1L/h から 2.4L/h に低下した(幾何平均値)。

同意を得られた被験者 14 名を対象として CYP3A5 の遺伝子多型検査を実施したが、リオシグア

トの薬物動態と CYP3A5 の遺伝子型に明らかな関連性はみられなかった(5.3.3.4.3 PH-35000

16.1.10 参照)。

リオシグアトの尿中排泄量はリオシグアト単独投与時には投与量の 7.9%で、ケトコナゾール

との併用投与時には 17.1%であった(算術平均値)が、腎クリアランスはそれぞれ 0.41L/h 及

び 0.38L/h で(幾何平均値)、腎クリアランスに対するケトコナゾール併用投与による影響はみ

られなかった。

図 2.7.2.2-35 ケトコナゾールとの併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

アトの血漿中濃度推移(幾何平均値及び標準偏差)

引用元:5.3.3.4.3 PH-35000 の Table 14.4/1

表 2.7.2.2-43 ケトコナゾール併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグアト

の薬物動態学的パラメータ 〔幾何平均値/%CV(範囲)〕

a 中央値(範囲);b 算術平均±標準偏差(範囲)

引用元:5.3.3.4.3 PH-35000 の Table 14.4/2、Table 14.4/3

Page 6: N3 - 医薬品医療機器総合機構...2.7.2 臨床薬理試験 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 72 of 220 図 2.7.2.2-37 クラリスロマイシン併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 70 of 220

ケトコナゾールとの併用投与時にはリオシグアト単独投与時と比較して M-1 の平均 Cmaxは 49%

低下、平均 AUC は 24%減少した(幾何平均値)。消失半減期は単独投与時及び併用投与時でそ

れぞれ 16.2 時間及び 18.3 時間(幾何平均値)であった。M-1 の尿中排泄量は単独投与時には

15.0%で、併用投与時には 10.2%(算術平均値)で、腎クリアランスはそれぞれ 0.77L/h 及び

0.64L/h であった(幾何平均値)。

図 2.7.2.2-36 ケトコナゾール併用投与時及びリオシグアト単独投与時における M-1 の血漿中

濃度推移(幾何平均値/標準偏差)

引用元:5.3.3.4.3 PH-35000 の Table 14.4/1

表 2.7.2.2-44 ケトコナゾール併用投与時及びリオシグアト単独投与時における M-1 の薬物動

態学的パラメータ 〔幾何平均値/%CV(範囲)〕

a 中央値(範囲);b 算術平均±標準偏差(範囲)

引用元:5.3.3.4.3 PH-35000 の Table 14.4/2、Table 14.4/3

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 71 of 220

表 2.7.2.2-45 ケトコナゾール併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグアト、

M-1及びケトコナゾールの AUC及び Cmaxの比に対する点推定値(最小二乗平均)

及びその両側 90%信頼区間(ANOVA)

引用元:5.3.3.4.3 PH-35000 の Table 14.4/4.1

リオシグアトの AUC について、ケトコナゾール併用投与時とリオシグアト単独投与時の比は、

非喫煙者では 2.29 倍、喫煙者では 3.65 倍で、ケトコナゾール併用投与の影響は喫煙被験者にお

いてより顕著であった。また、非喫煙被験者のなかで検討しても、みかけの全身クリアランスが

高い被験者においてより顕著な影響がみられた。

結論として、CYP 分子種及び P-gp/BCRP の阻害剤であるケトコナゾールとの併用により、リオ

シグアトの平均 Cmaxは 46%上昇、平均 AUC は 150%増加し、薬物相互作用が認められた。また、

ケトコナゾールとの併用により M-1 の平均 Cmaxは約 49%低下し、平均 AUC は 24%減少した。リ

オシグアトはケトコナゾールの薬物動態に影響しなかった。

2.7.2.2.3.2.2 クラリスロマイシンとの薬物相互作用試験〔試験 13284(5.3.3.4.4

PH-36280)参照〕

本試験は健康成人男性被験者 14 名(喫煙被験者 4 名、非喫煙被験者 10 名)を対象とした無作

為化非盲検クロスオーバー試験で、クラリスロマイシン 500mg をあらかじめ 1 日 2 回 4 日間投与

した後、リオシグアト 1.0mg 即放錠と併用投与した時の安全性と忍容性、並びにリオシグアト及

び M-1の薬物動態をリオシグアト単独投与時と比較した。

投与 A:0日目の朝 8:00頃リオシグアト 1.0mg即放錠を単回経口投与

投与 B:クラリスロマシン 500mg(1錠)を 1日 2回 4日間反復投与(-4~-1日目)

後、0日目の朝 8:00頃、クラリスロマイシン 500mg投与に引き続きリオシグアト

1.0mg即放錠を単回経口投与。

被験者には治験薬投与の 30 分から 5 分前の間に標準朝食を摂取させた。なお、投与 A 及び B

の間には 14日間以上の休薬期間を設けた。

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タイプライターテキスト
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*新薬承認情報提供時に修正(修正前:空腹時)
GDQPF
タイプライターテキスト
*
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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 72 of 220

図 2.7.2.2-37 クラリスロマイシン併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

アトの血漿中濃度推移(幾何平均値/標準偏差)

引用元:5.3.3.4.4 PH-36280 の Table 14.4/1

クラリスロマイシン 500mg を 1 日 2 回 4 日間投与した後、リオシグアト 1.0mg 即放錠と単回併

用投与した時のリオシグアトの血漿中濃度推移を図 2.7.2.2-37に、M-1 の血漿中濃度推移を図

2.7.2.2-38に示し、薬物動態学的パラメータをそれぞれ表 2.7.2.2-46及び表 2.7.2.2-47にまと

めた。また、リオシグアトの AUC 及び Cmaxについて、クラリスロマイシンとの併用投与時及びリ

オシグアト単独投与時の比(クラリスロマイシンとの併用投与時/リオシグアト単独投与時)の

点推定値(最小二乗平均)及びその両側 90%信頼区間を表 2.7.2.2-48にまとめた。

クラリスロマイシンとの併用投与時には単独投与時と比較してリオシグアトの AUC は 41%増

加したが、Cmaxに有意な変化はみられなかった。同様に M-1 も AUC のみ 19%増加した。リオシグ

アトの腎クリアランスに明らかな変化はみられなかったが、クラリスロマイシン併用投与時にお

ける M-1 の腎クリアランスは単独投与時と比較して 18%低下した。

結論として、CYP3A4 の強力な阻害剤で P-gp を軽度から中等度阻害するクラリスロマイシンと

リオシグアトの薬物動態相互作用は中等度であることが示された。リオシグアトの腎クリアラン

スはほとんど影響を受けなかったことから、クラリスロマイシンを併用投与した時の影響は P-

gp に対する排泄過程の阻害より、むしろ CYP3A4 に対するリオシグアトの代謝過程の阻害に起因

していると考えられる。

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 73 of 220

図 2.7.2.2-38 クラリスロマイシンとの併用投与時及びリオシグアト単独投与時における M-1

の血漿中濃度推移(幾何平均値/標準偏差)

引用元:5.3.3.4.4 PH-36280 の Table 14.4/1

表 2.7.2.2-46 クラリスロマイシンとの併用投与時及びリオシグアト単独投与時における血漿

中リオシグアトの薬物動態学的パラメータ 〔幾何平均値/%CV(範囲)〕

a 中央値(範囲);b 算術平均±標準偏差(範囲)

引用元:5.3.3.4.4 PH-36280 の Table 14.4/2、Table 14.4/3

Page 10: N3 - 医薬品医療機器総合機構...2.7.2 臨床薬理試験 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 72 of 220 図 2.7.2.2-37 クラリスロマイシン併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 74 of 220

表 2.7.2.2-47 クラリスロマイシンとの併用投与時及びリオシグアト単独投与時における M-1

の薬物動態学的パラメータ 〔幾何平均値/%CV(範囲)〕

a 中央値(範囲);b 算術平均±標準偏差(範囲)

引用元:5.3.3.4.4 PH-36280 の Table 14.4/2、Table 14.4/3

表 2.7.2.2-48 クラリスロマイシンとの併用投与時及びリオシグアト単独投与時のリオシグア

ト及び M-1 の AUC 及び Cmaxの比に対する点推定値(最小二乗平均)及びその両

側 90%信頼区間(ANOVA)

引用元:5.3.3.4.4 PH-36280 の Table 14.4/5.1

2.7.2.2.3.2.3 ミダゾラムとの薬物相互作用試験〔試験 14982(5.3.3.4.5 PH-36597)

参照〕

本試験は健康成人男性被験者 22 名(喫煙被験者 10 名及び非喫煙被験者 12 名)を対象とした

無作為化非盲検クロスオーバー試験で、ミダゾラムの薬物動態に及ぼすリオシグアト併用投与の

影響を検討した。さらに、その際の安全性及び忍容性についても評価した。

投与 A:朝 8:00 頃ミダゾラム 7.5mg を空腹時単回経口投与

投与 B:リオシグアト 2.5mg を 1 日 3 回 3日間反復投与(-3~-1 日目)後、0日目の

朝 8:00 頃ミダゾラム 7.5mg を空腹時単回経口投与し、その後リオシグアト 2.5mg を

1 日 3回投与。

投与 A及び Bの間に 10日間以上の休薬期間を設けた。

ミダゾラムの AUC、AUC(0-tlast)及び Cmax について、リオシグアトとの併用投与時及びミダゾラ

ム単独投与時の比(リオシグアトとの併用投与時/ミダゾラム単独投与時)の 90%信頼区間は

それぞれ 96.95~121.1%、98.40~121.0%、及び 88.90~116.5%で、いずれも生物学的同等性

の範囲(80~125%)内であった(表 2.7.2.2-49 参照)。

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 75 of 220

表 2.7.2.2-49 リオシグアト併用投与時及びミダゾラム単独投与時のミダゾラム及び 1-ヒドロ

キシミダゾラムの AUC 及び Cmaxの比に対する点推定(最小二乗平均)及びその

両側 90%信頼区間(ANOVA)

Analyte Parameter Estimated ratio (%) 90% confidence interval (%)Midazolam AUC 108.37 [96.95 ; 121.13]

AUC(0-tlast) 109.11 [98.40 ; 120.98]Cmax 101.76 [88.90 ; 116.48]

1-hydroxy-midazolam AUC 88.96 [80.72 ; 98.05]AUC(0-tlast) 90.20 [81.66 ; 99.64]Cmax 92.65 [76.08 ; 112.82]

引用元:5.3.3.4.5 PH-36597 の Table 14.4/49

ミダゾラムをリオシグアトと併用投与した時と単独投与した時の 1-ヒドロキシミダゾラムの

AUC の比に対する 90%信頼区間は 80.72~98.05%、AUC(0-tlast)の比に対しては 81.66~99.64%

であった。1-ヒドロキシミダゾラムの Cmaxの比に対する 90%信頼区間の下限は 76.08%で、同等

性範囲の下限をわずかに下回った。

ミダゾラムは CYP3A4 の基質であり、CYP3A4 阻害薬との併用によりミダゾラムの薬物動態は著

しく変化することが知られているが、ミダゾラム及び 1-ヒドロキシミダゾラムの薬物動態にリ

オシグアト併用投与の影響はみられなかったことから、リオシグアトは CYP3A4 活性に影響しな

いものと結論された。

2.7.2.2.3.3 薬力学的薬物相互作用

2.7.2.2.3.3.1 ワルファリンとの薬物相互作用試験〔試験 11918(5.3.3.4.6 PH-35468、

5.3.2.3.12 PH-36263)参照〕

本試験は健康成人男性被験者を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験6)で、R-ワルファリン及び S-ワルファリンの薬物動態及び薬力学的効果 〔プロトロンビン時間

(PT)、凝固因子Ⅱ、Ⅶ、及びⅩ〕、安全性及び忍容性に及ぼすリオシグアト併用投与の影響を

検討した。実薬投与時にはリオシグアト 2.5mg を、プラセボ投与時にはプラセボをそれぞれ 1 日

3 回 10 日間投与し、いずれにおいても投与 7 日目にワルファリン(Coumadin®:ワルファリン

Na)25mg を単回経口投与した。両投与時の間には 17 日間の休薬期間を設けた。また、同意が得

られた被験者に対しては、CYP3A4、CYP3A5、CYP2C9、及び VKORC1 の遺伝子型を検査した。

リオシグアト及び M-1 の薬物動態に及ぼすワルファリンの影響を検討するため、ワルファリン

投与日及びその前日のリオシグアト及び M-1 の薬物動態を評価した。

PK

リオシグアト 2.5mg 又はプラセボを 1 日 3 回 10 日間反復投与し、その 7 日目にワルファリン

25mg を単回投与した時の血漿中 R-ワルファリン及び S-ワルファリンの薬物動態学的パラメータ

を表 2.7.2.2-50に、ワルファリン投与日及びその前日における血漿中リオシグアトの薬物動態

学的パラメータを表 2.7.2.2-51にまとめた。また、リオシグアト及び M-1 の AUCτ,ss 及び Cmax,ssについて、ワルファリン併用投与時とリオシグアト単独投与時の比の点推定値及び 90%信頼区

Page 12: N3 - 医薬品医療機器総合機構...2.7.2 臨床薬理試験 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 72 of 220 図 2.7.2.2-37 クラリスロマイシン併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 76 of 220

間、並びに R-ワルファリン及び S-ワルファリンの AUC 及び Cmax について、リオシグアト併用投

与時とワルファリン単独投与時の比の点推定値(最小二乗平均)及び 90%信頼区間を表

2.7.2.2-52にまとめた。

リオシグアトは、定常状態でワルファリンの薬物動態に影響を及ぼさなかった。R-ワルファリ

ン又は S-ワルファリンの AUC 及び Cmaxについて、リオシグアトとの併用投与時とワルファリン単

独投与時の比を検討したところ、いずれについても比の 90%信頼区間は生物学的同等性の範囲

(80~125%)内であった。

ワルファリンとの併用投与によりリオシグアトの Cmax,ss は 16%低下したが、AUCτ,ss に影響は

みられなかった。また、ワルファリンは M-1 の薬物動態に影響を及ぼさなかった。

表 2.7.2.2-50 リオシグアト併用投与時及びワルファリン単独投与時における R-ワルファリン

及び S-ワルファリンの薬物動態学的パラメータ 〔幾何平均値/%CV(範

囲)〕

a 中央値(範囲)

引用元:5.3.3.4.6 PH-35468 の Table 14.4/2.1、 Table 14.4/3.1

表 2.7.2.2-51 ワルファリン併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグアトの

薬物動態学的パラメータ 〔幾何平均値/%CV(範囲)〕

Parameter Unit Riociguat without Coumadin

Day 05dRiociguat with Coumadin

Day 06d

AUC,ss g*h/L 346.8/123.6 (67.43-1715) 331.9/145.3 (29.92-1524)Cmax,ss g /L 87.69/69.3 (40.33-323.5) 73.63/105.1 (8.426-264.2)tmax,ss

a h 1.500 (0.5000-5.000) 1.250 (0.5000-5.000)t1/2 h 3.088/71.9 (0.9938-11.31) 3.375/62.4 (1.350-8.053)

a 中央値(範囲)

引用元:5.3.3.4.6 PH-35468 の Table 14.4/2.1、 Table 14.4/3.1

Parameter Unit Coumadin with riociguatn=22

Coumadin with placebon=22

R-warfarinAUC mg*h/L 59.55/30.3 (39.10-94.97) 59.35/29.0 (36.81-100.9)Cmax mg/L 1.231/16.4 (0.8426-1.576) 1.237/18.2 (0.8439-1.770)tmax

a h 1.000 (0.5000-5.000) 1.000 (0.5000-5.000)t1/2 h 39.79/24.9 (27.72-66.79) 40.77/19.3 (29.28-57.29)S-warfarinAUC mg*h/L 40.761/23.5 (25.64-61.12) 40.99/25.2 (26.73-61.42)Cmax mg/L 1.251/15.3 (0.9042-1.613) 1.262/18.2 (0.8942-1.775)tmax

a h 1.000 (0.5000-5.000) 1.000 (0.5000-3.000)t1/2 h 29.47/20.8 (21.82-46.64) 30.10/18.9 (23.11-40.74)

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 77 of 220

表 2.7.2.2-52 リオシグアト及び M-1 の AUCτ,ss及び Cmax,ssの比(ワルファリン併用投与時/リ

オシグアト単独投与時)、並びに R-ワルファリン及び S-ワルファリンの AUC 及

び Cmaxの比(リオシグアト併用投与時/ワルファリン単独投与時)の点推定値

(最小二乗平均)及び 90%信頼区間(ANOVA)

a AUCτ,ss=AUC(120-127)又は AUC(144-151)

引用元:5.3.3.4.6 PH-35468 の Table 14.2/5.1

PD

リオシグアト 2.5mg 又はプラセボを 1 日 3 回反復投与 7 日目にワルファリン 25mg を単回経口

投与した時のプロトロンビン時間の推移を図 2.7.2.2-39に示し、プロトロンビン時間と、凝固

因子Ⅱ、Ⅶ、及びⅩの活性に関する薬力学的パラメータを表 2.7.2.2-53に、そのプロトロンビ

ン時間及び凝固因子Ⅶ活性に関する AUC(0-96)の比(リオシグアト併用投与時/ワルファリン単

独投与時)に対する点推定(最小二乗平均)及びその両側 90%信頼区間を表 2.7.2.2-54にまと

めた。

図 2.7.2.2-39 リオシグアト併用投与時及びワルファリン単独投与時におけるプロトロンビン

時間推移(幾何平均値)

引用元:5.3.3.4.6 PH-35468 の Table 14.2/1.1

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2.7.2 臨床薬理試験

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表 2.7.2.2-53 リオシグアト併用投与時及びワルファリン単独投与時における薬力学的パラ

メータ 〔AUC(0-96)、幾何平均値/%CV(範囲)〕

Test Unit Coumadin with riociguatAUC(0-96)

Coumadin with placeboAUC(0-96)

Prothrombin time s∙h 1227/18.2 (1011-1874) 1242/18.0 (1005-1953)Factor II % activity %∙h 7179/12.6 (5546-8714) 7282/14.1 (5176-9260)Factor VII % activity %∙h 3943/39.3 (1496-6382) 3812/39.7 (1402-6079)Factor X % activity %∙h 5704/15.5 (4075-7303) 5915/17.5 (4262-7673)

引用元:5.3.3.4.6 PH-35468 の Table 14.2/2.1

表 2.7.2.2-54 プロトロンビン時間及び凝固因子Ⅶ活性に関する AUC(0-96)の比(リオシグア

ト併用投与時/ワルファリン単独投与時)の点推定値(最小二乗平均)及び

90%信頼区間(ANOVA)

引用元:5.3.3.4.6 PH-35468 の Table 14.2/3.1

ワルファリン 25mg 単独投与時には一過性の PT 延長、INR 上昇、凝固因子Ⅱ、Ⅶ、及びⅩ活性

の低下が認められた。このワルファリンの薬力学的効果は、リオシグアト 2.5mg 1 日 3 回反復投

与による定常状態においても変わることはなかった。したがって、リオシグアトとワルファリン

との間に薬力学的相互作用は認められなかった。

結論

リオシグアトとワルファリンの間に重大な薬力学的及び薬物動態学的相互作用は認められな

かった。

2.7.2.2.3.3.2 アスピリン®(アセチルサリチル酸)との薬物相互作用試験〔試験

14204(5.3.3.4.7 PH-36360)参照〕

本試験は健康成人男性被験者 15 名を対象とした無作為化非盲検クロスオーバー試験7)で、アス

ピリン®単回投与時における出血時間及び血小板凝集に及ぼすリオシグアトの影響、並びにリオ

シグアトの薬力学的効果(心拍数、血圧)、薬物動態、安全性及び忍容性に対するアスピリン®

の影響を検討した。

投与 A:-1日目投与なし、0日目リオシグアト 2.5mg 投与

投与 B:-1日目アスピリン®500mg 投与、0日目アスピリン®500mg 投与

投与 C:-1日目アスピリン®500mg 投与、0日目アスピリン®500mg 及びリオシグアト

2.5mg 併用投与

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 79 of 220

各投与の 0日目は、被験者は投与後 4時間絶食を保った。

PK

アスピリン®との併用投与時及びリオシグアト単独投与時における血漿中リオシグアト及び

M-1 濃度推移を図 2.7.2.2-40及び図 2.7.2.2-41に示し、リオシグアト及び M-1 の AUC 及び Cmax並びに非結合型分率について、アスピリン®併用投与時とリオシグアト単独投与時の比(アスピ

リン併用投与時/リオシグアト単独投与時)の点推定値(最小二乗平均)及び 90%信頼区間を

表 2.7.2.2-55及び表 2.7.2.2-56にまとめた。

図 2.7.2.2-40 アスピリン®併用投与時及びリオシグアト単独投与時における血漿中リオシグア

ト濃度推移(幾何平均値/標準偏差)

引用元:5.3.3.4.7 PH-36360 の Table 14.4/1

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 80 of 220

図 2.7.2.2-41 アスピリン®併用投与時及びリオシグアト単独投与時における血漿中 M-1 濃度推

移(幾何平均値/標準偏差)

引用元:5.3.3.4.7 PH-36360 の Table 14.4/1

表 2.7.2.2-55 リオシグアト及び M-1 の AUC 及び Cmaxに関する比(アスピリン®併用投与時/リ

オシグアト単独投与時)の点推定値(最小二乗平均)及び 90%信頼区間

引用元:5.3.3.4.7 PH-36360 の Table 14.4/5.1

表 2.7.2.2-56 リオシグアト及び M-1 の非結合型分率に関する比(アスピリン®併用投与時/リ

オシグアト単独投与時)の点推定値及び 90%信頼区間

引用元:5.3.3.4.7 PH-36360 の Table 16.1.9/1.2

アスピリン®併用投与時とリオシグアト単独投与時における血漿中リオシグアト及び M-1 濃度

推移はよく類似していた。

リオシグアトの AUC 並びに M-1 の AUC 及び Cmaxに関しては、いずれの比(アスピリン®併用投

与時/リオシグアト単独投与時)の 90%信頼区間も生物学的同等性の範囲(80~125%)内に含

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 81 of 220

まれていたが、リオシグアトの Cmax に関する比についてのみ、わずかに生物学的同等性の範囲か

らの下限逸脱が認められた。

リオシグアトの in vivo 非結合型分率に及ぼすアスピリン®500mg 併用投与の影響は、併用投

与後 1 時間、すなわちサリチル酸がおよそ Cmaxに達する時点でわずか 19%の非結合型分率の増加

であり、それに伴ってリオシグアトの Cmaxは 15%減少した。併用投与後 8 時間では、たん白結合

に及ぼす影響は認められなかった。その時点で、血漿中サリチル酸濃度はすでに Cmaxの約 40%以

下に大きく減少していることが知られている。

このわずかな薬物動態学的相互作用以外に、PKの変動は観察されなかった。

PD

血小板機能に及ぼすリオシグアト及びアスピリン®単独投与、並びに併用投与の影響を検討す

るため、出血時間、血小板凝集能、及び血漿中トロンボキサン B2(TXB2)濃度を調べた。出血時

間は Surgicutt® Adult I 装置を用いて測定8,9)し、血小板凝集能は、クエン酸処理した血漿にコ

ラーゲン又はアラキドン酸を加えて血小板凝集計で測定した。

出血時間の測定結果を表 2.7.2.2-57に、血小板凝集能の測定結果を図 2.7.2.2-42に示した。

表 2.7.2.2-57 リオシグアト 2.5mg をアスピリン®と併用及び単独経口投与し 4時間後に測定し

た出血時間(分)の差に対する最小二乗平均及びその 95%信頼区間(投与前値

で補正)

引用元:5.3.3.4.7 PH-36360 の Table 14.2/1.3

アスピリン®とリオシグアトの併用投与時の出血時間は、アスピリン®単独投与時に比べて出血

時間を有意に延長することはなく、臨床的に重要な変化も示さなかったが、リオシグアト単独投

与時と比べると有意に延長した。

リオシグアト単独投与後、コラーゲン又はアラキドン酸刺激による最大血小板凝集能はほとん

ど変化しなかった。アスピリン®単独及びアスピリン®とリオシグアト併用投与では、アラキドン

酸刺激による平均最大血小板凝集能が 1%未満に低下し、コラーゲン刺激による平均最大血小板

凝集能は約 10%低下した。

アスピリン®単独及びアスピリン®とリオシグアト併用投与時に、血漿中 TXB2 濃度は著しく低

下した。

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2.7.2 臨床薬理試験

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図 2.7.2.2-42 コラーゲン刺激(上図)及びアラキドン酸刺激(下図)による最大血小板凝集

能(平均値/標準偏差)

引用元:5.3.3.4.7 PH-36360 の Table 14.2/2.2

結論

アスピリン®との併用は、リオシグアト及び M-1 の PK に臨床的に重要な影響を及ぼすことはな

かった。アスピリン®は予測どおり血小板凝集能に影響を及ぼしたが、リオシグアトとの併用で

その影響が増大することはなかった。リオシグアト単独投与は、今回の PD 評価結果によれば、

血小板凝集能に何ら影響を及ぼさなかった。

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2.7.2 臨床薬理試験

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2.7.2.2.3.3.3 ニトログリセリンとの薬物相互作用試験〔試験 14360(5.3.3.4.8 PH-

36542)参照〕

本試験は、健康成人男性被験者(40~60 歳、6 名)を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対

照クロスオーバー試験で、リオシグアト 2.5mg 錠及びニトログリセリン 0.4mg 舌下錠を併用した

時の安全性、忍容性、及び薬力学的相互作用について検討し、リオシグアト及び M-1 の薬物動態

に及ぼす影響についても調べた。

ニトログリセリンは以下のタイミングで同一被験者に 4回投与する予定であった:

1 日目(1d):リオシグアト又はプラセボ投与の 24 時間後(投与間隔 24時間)

3 日目(3d):リオシグアト又はプラセボ投与の 8時間後(投与間隔 8時間)

6 日目(6d):リオシグアト又はプラセボ投与の 4時間後(投与間隔 4時間)

9 日目(9d):リオシグアト又はプラセボ投与の 1時間後(投与間隔 1時間)

ニトログリセリンの投与は、観察結果への日内リズムの影響を最小にするために、常に午前中

の同じ時刻とした。

被験者数は 1 群 6 名とし、各 3 名にリオシグアト及びプラセボをクロスオーバー法により投与

した。

本試験は、第 I コホートの投与期間中に中止した。その理由は、6 日目の投与間隔 4 時間でニ

トログリセリンを投与した際、その 6 分以内にリオシグアト先行群及びプラセボ先行群の各 1 名

計 2 名の被験者が重度の失神を起こしたことによる。この有害事象及びリオシグアトとニトログ

リセリン併用による著しい薬力学的効果によって、第 I コホートの最終投与(9 日目投与間隔 1

時間)は取り止めた。6 日目の途中で中止したので、完了した両コホートの 1 日目(投与間隔 24

時間)及び 3日目(投与間隔 8時間)のデータを解析した。

PK

PK 結果は、これまでの試験で得られているデータと一致し、血漿中リオシグアトはニトログ

リセリンとの薬力学的相互作用を評価するに十分な濃度であった。

PD

リオシグアト又はプラセボを投与した 24 時間後及び 8 時間後にニトログリセリンを投与した

時の坐位収縮期血圧の変動を図 2.7.2.2-43に示し、リオシグアト又はプラセボを投与した 8 時

間後にニトログリセリン投与した時の血圧及び心拍数の変化量に対する分散分析結果を表

2.7.2.2-58にまとめた。

リオシグアト 2.5mg 錠単回投与の 8 時間後にニトログリセリン 0.4mg 舌下錠を単回投与したと

ころ、坐位収縮期血圧がニトログリセリン単独投与時より著しく低下し、その低下は統計学的に

有意であった。この有意な低下は、リオシグアトとニトログリセリンの投与間隔が 24 時間の場

合は認められなかった。この結果はリオシグアト及びニトログリセリンの併用による相加的な血

管拡張作用を示している。

リオシグアトとニトログリセリンの投与間隔が 4 時間の場合には、前述のような著しい薬力学

的相互作用に起因する重篤な有害事象が認められた。

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 84 of 220

図 2.7.2.2-43 ニトログリセリン投与後の坐位平均収縮期血圧

ニトログリセリン投与前及び投与後 4時間までの血圧変動を示す。ニトログリセリンはリオシグアト又はプラセ

ボ投与の 24 時間後(左図)及び 8時間後(右図)に投与した。投与前値はニトログリセリン投与前 30 分以内に

測定した坐位収縮期血圧の平均値である。

引用元:5.3.3.4.8 PH-36542 の Table 14.2/1

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2.7.2 臨床薬理試験

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表 2.7.2.2-58 リオシグアト又はプラセボ投与 8時間後にニトログリセリンを投与した時の血

圧及び心拍数の変化量に対する分散分析結果

Parameter Treatment LS mean Point estimator 95% confidence limits

P value

"Riociguat minusplacebo"

Lower Upper

Maximum decrease in seated systolic blood pressure (mmHg)

Placebo -5.72 -11.18 -16.61 -5.75 0.0125Riociguat -16.90

Maximum decrease in seated diastolic blood pressure (mmHg)

Placebo -7.12 -8.17 -24.22 7.87 0.1597Riociguat -15.29

Maximum increase in seated heart rate (BPM)

Placebo 8.23 9.64 -24.66 43.95 0.3500Riociguat 17.88

Mean change in seated systolic blood pressure (mmHg)

Placebo 2.86 -6.84 -14.65 0.98 0.0639Riociguat -3.97

Mean change in seated diastolic blood pressure (mmHg)

Placebo 5.60 -12.52 -22.03 -3.02 0.0297Riociguat -6.92

Mean change in seated heart rate (BPM)

Placebo -3.11 2.79 -6.31 11.89 0.3184Riociguat -0.32

引用元:5.3.3.4.8 PH-36542 の Table 14.2/3

結論

薬力学的相互作用に起因した重大な降圧効果が生じたことから、リオシグアトとニトログリセ

リンの併用投与は推奨できない。

2.7.2.2.3.3.4 シルデナフィルとの薬物相互作用試験〔試験 11917(5.3.3.4.9 PH-

36136)参照〕

本試験は、症状が過去 6 週間安定しており、シルデナフィル 20mg を 1 日 3 回服用中の肺動脈

性肺高血圧症(PAH)患者 7 名を対象とした非盲検非対照試験10)で、シルデナフィルとリオシグ

アトを併用した際の安全性及び忍容性、並びにリオシグアトと M-1 の薬物動態に及ぼす影響を調

べた。さらに、シルデナフィル 20mg 投与 3 時間後にリオシグアト 0.5mg、さらに 2 時間後にリ

オシグアト 1mg を投与した際の肺及び全身血行動態に及ぼす影響についても調べた。

被験者は PAH で入院中の患者とし、リオシグアト投与後の検査は、PAH の診断で定期的に行っ

ているものを利用した。

Page 22: N3 - 医薬品医療機器総合機構...2.7.2 臨床薬理試験 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 72 of 220 図 2.7.2.2-37 クラリスロマイシン併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 86 of 220

PK

リオシグアト及びシルデナフィルの薬物動態はいずれも予測した範囲内であり、これまでに報

告されている単独投与時のデータから逸脱するものではなかった。したがって、シルデナフィル

20mg 1 日 3 回投与による PAH 治療中にリオシグアト 1mg を投与しても臨床的に重要な薬物動態

学的相互作用は起こらないことが示された。

PD

リオシグアト投与前後の Swan-Ganz カテーテル法による血行動態パラメータの変化を表

2.7.2.2-59にまとめた。

投与前値と比べて、シルデナフィル 20mg は平均 PAPmean(-4.4mmHg)、PVR(-140dyn*s*cm-5)、

SBP(-12.6mmHg)、及び SVR(-410dyn*s*cm-5)を低下させ、平均 CO を 0.64L/min、心拍数を

6bpm 増加させた。このうち、SBP、SVR、及び COの変化は統計学的に有意であった。

シルデナフィル治療中にリオシグアトを投与しても PAPmean及び PVR に有意な変化は観察されず、

SBP、SVR、及び CO に有意な影響を及ぼさなかった。リオシグアト 1mg 投与後に平均 DBP に有意

な減少(-3.1mmHg)を、リオシグアト 0.5mg 投与後に平均 HR に有意な増加(+3.4bpm)を認め

たが、臨床的に重要な変化ではなかった。

シルデナフィル及びリオシグアト投与後の血液ガスパラメータ(PaO2、PaCO2、PvO2、SaO2、及

び SvO2)に臨床的に重要な変動はみられなかった。

Page 23: N3 - 医薬品医療機器総合機構...2.7.2 臨床薬理試験 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 72 of 220 図 2.7.2.2-37 クラリスロマイシン併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 87 of 220

表 2.7.2.2-59 リオシグアト投与前後の Swan-Ganz カテーテル法による血行動態パラメータの

変化 a

a 圧又は抵抗の測定項目では最大の減少又は最小の増加、心拍出量及び心拍数では最大の増加又は最小の減少

* 有意水準 5%で統計学的に有意

主要な 2つの PD パラメータの結果は太字で表示

引用元:5.3.3.4.9 PH-36136 の Table 14.2/3

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 88 of 220

結論

過去 6 週間の症状が安定しておりシルデナフィル 20mg を 1 日 3 回投与中の肺動脈性肺高血圧

症を有する被験者において、シルデナフィルの既知の血行動態効果が観察された。リオシグアト

0.5mg 及び 1mg を単回併用投与すると SBP の低下などの全身循環パラメータに相加的な効果が認

められたが、統計学的に有意な変化ではなかった。PAPmean及び PVR などの肺循環パラメータに及

ぼす相加的効果は数値的にさらに低かった。

2.7.2.2.4 その他の試験

2.7.2.2.4.1 肺高血圧症患者を対象とした Proof of Concept 試験〔試験 11874

(5.3.4.2.1 PH-34730)参照〕

本試験は、PAH、CTEPH、又は ILD(間質性肺疾患)に伴う肺高血圧症(PH)と診断された成人

患者を対象とした非無作為化非盲検試験で、非プラセボ対照用量漸増試験(パート A)及び群間

比較試験(パート B)から成る11)。リオシグアトの評価には、日ごろ行われる原疾患の定期的な

診察結果を利用した。

パート A では、リオシグアトの経口液剤を用い、グループ 1(2 名)には 1 時間の間隔を空け

て 0.5mg→1mg→1mg(計 2.5mg)を、グループ 2(2 名)には同様に 1mg→2mg→2mg(計 5mg)を

漸増投与し、リオシグアトの安全性、忍容性、及び薬力学的効果を評価した。5mg まで増量した

時点で 1 名の被験者に著しい血圧低下が認められたため、パート B での最高用量は 2.5mg とした。

パート B では、群間比較により、リオシグアト 2.5mg(グル-プ 1、10 名)及び 1mg(グルー

プ 2、5名)の安全性、忍容性、薬物動態及び薬力学的効果を評価した。

各被験者には、血管を最大限に拡張させる目的で一酸化窒素(10~20ppm)の 10 分間短期吸入

(iNO)を行い、その間に血行動態及びガス交換の評価を各 2 回行った。吸入終了 50 分後に再度

血行動態及びガス交換を 2 回ずつ評価し、血行動態が NO 吸入前の値に戻ったことを確認した後

にリオシグアトを投与した。

両パートとも、リオシグアトは早朝空腹時に投与した。

PK

血漿中リオシグアト濃度は、リオシグアト 2.5mg 及び 1mg 投与後 0.25~1.5 時間(個別値の範

囲)で最大血漿中濃度に達し、10~12 時間(幾何平均値)の消失半減期で減少した。リオシグ

アト及び M-1 の AUC 及び Cmaxに用量比例性が認められた。リオシグアトの AUC には著しい個体間

変動が認められた(図 2.7.2.2-44及び表 2.7.2.2-60 参照)。

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2.7.2 臨床薬理試験

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図 2.7.2.2-44 リオシグアト 2.5mg 及び 1mg を経口液剤として単回投与した時の血漿中リオシ

グアト濃度推移(幾何平均値/標準偏差)

引用元:5.3.4.2.1 PH-34730 の Table 14.4-1

表 2.7.2.2-60 リオシグアト 2.5mg 及び 1mg を経口液剤として単回投与した時の血漿中リオシ

グアトの薬物動態学的パラメータ〔幾何平均/%CV(範囲)〕

Parameter Unit 2.5 mg(n=10)

1 mg(n=5)

AUC g*h/L 1411/39.2 (597.5-3121) 602.3/14.9 (456.5-749.6)AUCnorm kg*h/L 44.44/45.9 (13.23-88.62) 40.59/10.7 (33.78-46.75)Cmax g/L 119.4/16.1 (74.69-172.4) 59.43/5.85 (53.49-65.05)Cmax,norm kg/L 3.758/17.9 (2.480-5.370) 4.005/10.4 (3.513-5.152)tmax

a h 0.500 (0.250-1.500) 0.750 (0.500-1.500)t1/2 h 11.65/38.6 (4.680-28.58) 9.953/8.56 (8.737-12.14)

a 中央値(範囲)

引用元:5.3.4.2.1 PH-34730 の Table 14.4-2、Table 14.4-3

PD

リオシグアト 2.5mg 及び 1mg 単回投与時には、PAPmean、SBP、PVR、及び SVR の有意な低下、並

びに心係数の有意な上昇がみられた。これらは臨床的にも有意な変化であった。2.5mg 群と 1mg

群の間に臨床的に意味のある差は認められなかった(表 2.7.2.2-61)。

投与量に関わらず、リオシグアト投与時には NO 投与時よりも SBP、PVR、及び SVR は低下し、

心係数は上昇した。PAPmean についてもリオシグアト投与時の方が NO 投与時よりも低下していた

ものの、統計学的な有意差は認められなかった(P=0.0546 及び 0.0538)(表 2.7.2.2-62)。

これらの薬力学的効果と血漿中リオシグアト濃度との間には有意な相関関係が認められた(表

2.7.2.2-63及び図 2.7.2.2-45を参照)。

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 90 of 220

PK/PD モデリングの結果は2.7.2.2.5.2に記載した。

表 2.7.2.2-61 リオシグアト 2.5mg 及び 1mg の経口液剤を単回投与した時の PAPmean、SBP、PVR、

SVR、及び心係数に及ぼす影響に対する点推定値(最小二乗平均)及び 95%信

頼区間

引用元:5.3.4.2.1 PH-34730 の Table 14.2-5

表 2.7.2.2-62 リオシグアト 2.5mg 及び 1mg の経口液剤を単回投与した時の PAPmean、SBP、PVR、

SVR、及び心係数に及ぼす最大効果におけるリオシグアトと NOの差に対する点

推定値(最小二乗平均)及び 95%信頼区間

引用元:5.3.4.2.1 PH-34730 の Table 14.2-5

Page 27: N3 - 医薬品医療機器総合機構...2.7.2 臨床薬理試験 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 72 of 220 図 2.7.2.2-37 クラリスロマイシン併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 91 of 220

表 2.7.2.2-63 PAPmean、SBP、PVR、SVR、及び心係数と、血漿中リオシグアト濃度の間のスピア

マン相関の統計量

引用元:5.3.4.2.1 PH-34730 の Table 14.4-7

図 2.7.2.2-45 平均 PVR、SVR、及び血漿中リオシグアト濃度との相関関係

血漿中リオシグアト濃度は下へ向かって増加

引用元:5.3.4.2.1 PH-34730 の Table 14.2/3、Table 14.4-1

結論

本試験の結果、sGC 刺激薬であるリオシグアト投与時に、肺高血圧症患者の主な血行動態パラ

メータに改善が認められ、肺高血圧症患者の血行動態に対する有用性が示された。

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 92 of 220

2.7.2.2.4.2 骨代謝に及ぼすリオシグアトの影響〔試験 13790(5.3.4.1.1 PH-36405)

参照〕

本試験は、健康成人男性被験者 16 名(いずれも非喫煙者)を対象とした無作為化二重盲検プ

ラセボ対照クロスオーバー試験で、骨吸収及び骨形成マーカーに及ぼすリオシグアト反復投与の

影響と、リオシグアトの安全性、忍容性、及び薬物動態について検討した。

各期とも 4 日間の順応期、14 日間の投与期間及び 3 日間の投与後観察期の計 21 日から成り、

これを 3 週間以上の休薬期間をおいた 2 期クロスオーバー法により実施した。なお、リオシグア

ト 2.5mg の 1 日 3 回投与時に散見される消化不良発現によって盲検性が損なわれることを避ける

目的で、いずれの期にも投与期間中を通してラニチジン 150mg を 1 日 1 回投与した。また、運動

不足による骨吸収の増加現象を避けるため、被験者には入院期間中も日常活動に準じた標準的な

運動を課した。

PK

初回(0 日目)及び最終(13 日目)投与後、リオシグアトは速やかに吸収され、tmax の中央値

は 2 時間(範囲:1~5 時間)であったが、定常状態に達している最終投与時におけるリオシグ

アトの Cmax 及び AUC(0-7)は初回投与時と比較してそれぞれ 97%及び 133%増加した(表

2.7.2.2-64)。定常状態におけるリオシグアトの平均尿中排泄率は投与量の 16.0%であった。

初回投与時及び最終投与時のリオシグアトの薬物動態は予測どおりであり、試験 11258

(5.3.3.1.3 PH-34400 参照)の成績と類似していた。

表 2.7.2.2-64 リオシグアト 2.5mg 初回朝投与時(Day 0)及び最終朝投与時(Day 13)のリオ

シグアトの薬物動態学的パラメータ 〔幾何平均値/%CV(範囲)〕

a 中央値(範囲)

引用元:5.3.4.1.1 PH-36405 の Table 14.4/2、Table 14.4/3

PD

平均血漿中 cGMP 濃度はリオシグアト投与期間中に 48.6%増加した(5.67nmol/L→

8.24nmol/L)。cGMP の平均尿中排泄量は 136%増加した。

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 93 of 220

リオシグアト投与後の血行動態の変動には脈拍数の反射的増加が含まれており、初回投与 24

時間後には 8.3bpm の増加が認められたが、14 日間投与後の増加数は 3.6bpm に減弱した。投与

前の SBP は 114.8mmHg で、初回投与 24 時間後に 4.2mmHg 低下し、最終投与後に 10mmHg 低下した。

これらの効果は血管拡張及び全身血管抵抗の減少によるものである。

本試験の薬力学的効果に関する主要評価項目である CTX の平均尿中排泄量は、リオシグアト投

与期間中 8.3%と、有意に増加した(P<0.0001)。CTX は糸球体濾過のみによって排泄されるの

で、この増加は糸球体濾過の増加によって起った可能性が考えられた。そこで、クレアチニンク

リアランスで補正した CTX の尿中平均排泄量を比べたところ、リオシグアト群とプラセボ群で有

意な差はみられなかった。さらに、リオシグアトは血清中平均 CTX 量、尿中平均 NTX 排泄量、及

びクレアチニンクリアランスで補正した尿中平均 NTX 排泄量に有意な影響を及ぼさなかった。し

たがって、リオシグアトは CTX 及び NTX などのマーカーによって測定される骨吸収に影響しない

と考えられた。

骨形成マーカーである PINP、bAP、及びオステオカルシンの血清中濃度は、リオシグアトに

よって、それぞれ 5.5%、12%、及び 8.3%と、有意に減少した。リオシグアトは血清中の平均

PTH 量には影響しなかった。

リオシグアトは腎機能のパラメータに直接影響することが明らかになっている。2.5mg の初回

投与直後(0~4 時間)、カルシウム、ナトリウム、カリウム、及びクレアチニンの尿中排泄量

が増加した。この増加は、輸入細動脈の拡張及び濾過圧の増加によって起こる糸球体濾過の増加

の結果と考えられ、これにより平均クレアチニンクリアランスは 7.5%増加した(P<0.001)。

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 94 of 220

表 2.7.2.2-65 薬力学的パラメータにおける主要因子「投与」に関する ANCOVA 結果の要約

引用元:5.3.4.1.1 PH-36405 の Table 14.2/2

14 日間の投与期間中を通して、リオシグアトはカルシウムの尿中排泄量を 1 日あたり

0.97mmol(約 40mg)増加し、これはプラセボ群と比較して 22%の増加に相当した(P<0.0001)。

この影響は生物学的に重要なものと考えられる。24 時間平均尿量及び 24 時間あたりのナトリウ

ム及びカリウムの尿中排泄量は、リオシグアト群とプラセボ群で有意な違いはなかった。

血清中の平均カルシウムは 0.03mmol(1.2%)、血清中の尿酸は 27.5μmol/L(7.9%)、及び

クレアチニンは 5.1μmol/L(5.4%)と、有意に減少した(それぞれ P=0.0007、P<0.0001、及

び P<0.0001)。これらの値はすべて正常範囲内であった。

リオシグアト投与後 48~72 時間で、赤血球数(-0.15T/L、-3.17%)、ヘマトクリット

(-0.01、-3.57%)、ヘモグロビン(-5g/L、-3.56%)は有意に減少した。これは、6~7 日後

に起こる網状赤血球数の有意な増加に繋がるものであった。リオシグアトは MCV、MCH、及び

MCHC に影響を及ぼさなかった。全血清総たん白及び血清アルブミンはそれぞれ 1.5%及び 1.1%

減少した。これらの観察所見が、特に互いに同じ傾向を見せていることは、なにか共通の原因が

根底にあることを示している。すなわち、健康成人男性においてリオシグアトなどの血管拡張剤

を投与した結果、血管内容量の増加により血液希釈が起こった可能性がある。血液希釈の影響を

考慮して、血清アルブミン値を用いて血清/血漿中の測定パラメータを補正した。この補正に

よって、数値は少し変化するものの、質的には同じ結果であった。

血清アルブミン値を用いた補正により、血清カルシウム濃度のリオシグアト群とプラセボ群の

差は 0.016mmol/L すなわち 0.69%減少した(P=0.0107)。これは生物学的に重要なことではな

いと考えられる。

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2.7.2 臨床薬理試験

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結論

全般的にリオシグアトの薬物動態は、健康被験者に 2.5mg を 1 日 3 回投与した過去の試験で得

られた結果と一致した。

リオシグアトは腎機能に直接影響を及ぼし、クレアチニンクリアランスの増加、すなわち GFR

を増加させる。14 日間の投与期間中にリオシグアトは、プラセボと比較してカルシウムの尿中

排泄を 0.97mmol(約 40mg)増加させ、統計的に有意差が認められた。しかしながら、血清中カ

ルシウム濃度は正常範囲内を推移していたことから、この差は臨床的に重要なものとは考えられ

なかった12)。

CTX 及び NTX などのマーカーを測定した結果、骨吸収に及ぼすリオシグアトの直接的な影響は

みられなかった。また、破骨細胞及び骨芽細胞に対する直接的な影響も示唆されなかった13)。

2.7.2.2.5 健康被験者及び患者集団を対象とした母集団 PK/PD 評価

はじめに:リオシグアトの PK/PD 特性及びその PK/PD 特性の個体間変動と関連する共変量を評

価するために、健康被験者及びリスクの高い特殊な患者集団(2.7.2.3.3)から得られた全デー

タを用いて解析を行った。この解析に加えて、第Ⅱ相及び第Ⅲ相試験のデータに基づく母集団

PK/PD 解析も実施し、先の結果を確認するとともに、今回の適応となる患者集団において、第 I

相試験の結果から予測できない知見について探索した。血漿中濃度と薬力学的効果の関係は第Ⅲ

相試験において広範に探索したので、2.7.2.3.6に記載する。

以下に事前に計画したリオシグアトの母集団 PK/PD 解析のストラテジーと目的を示す:

2.7.2.2.5.1:まず PK 及び PK/PD 構造モデルを、成人健康男性被験者を対象とした反復投与

用量漸増試験(5.3.3.1.4 PH-34881 参照)から得られた多数点採血のデータを基に構築し

た。使用したデータは、リオシグアト及びその代謝物 M-1 の血漿中濃度と、リオシグアトの

薬理作用に関連した薬力学的効果、すなわち収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、及び

心拍数(HR)であった。

これらの結果から、十分にコントロールされた健康被験者におけるリオシグアトの PK/PD 特

性に対する有益な知見を得ることができた(5.3.3.5.2 PH-35222 参照)。さらにモデルを

用いて、腎障害又は肝障害患者における PK/PD について理解を深めるための情報を得た。

2.7.2.2.5.2及び2.7.2.2.5.3:選択した試験実施施設において、肺高血圧症患者のサブグ

ループを対象に多数点採血を実施する代わりに、第Ⅱ相試験(5.3.5.2.1 PH-35772 参照)

及び慢性血栓塞栓性肺高血圧症と肺動脈性肺高血圧症患者の全第Ⅲ相試験(5.3.5.4.1

A62510、5.3.5.4.2 A62511、5.3.5.1.1 A62508、5.3.5.1.2 A62509 参照)における患者の

少数点採血のデータを用いて PK/PD 解析を実施し、各々の投与方法における曝露量、及び PK

及び PD パラメータの個体間及び個体内変動を推定し、これら特定の患者集団におけるリオ

シグアトの PK/PD に影響を及ぼす可能性がある共変量(年齢、性別、体重、腎機能、併用薬

など)について評価した。

患者の PK/PD を健康被験者の PK/PD と比較した(2.7.2.3.1.6参照)。リオシグアトの曝露

量に影響を及ぼす可能性がある患者の共変量は薬物動態特性や薬力学的効果に及ぼす内因的

要因の影響を包括的に検討した第Ⅰ相試験で得られた結果と関連するものであった

(2.7.2.3.3参照)。

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 96 of 220

リオシグアトの血漿中濃度の post-hoc 推定値から AUC、Cmax、及び Ctroughを算出し、これらが

有効性や安全性の臨床評価項目の結果と関連しているかどうかを検討した(2.7.2.3.6.3参

照)。

2.7.2.2.5.4:リオシグアト開発の過程で、主に小児の臨床試験を計画するにあたっての情

報を得るために実施した生理学的薬物動態(PBPK)モデルと他のモデルの構築、及びシミュ

レーションについて本項に簡潔にまとめる(5.3.3.5.9 PH-36401、5.3.3.5.5 PH-36403、

5.3.3.5.6 PH-36458 参照)。

方法:非線形混合効果モデル(NONMEM)を使ってリオシグアトの母集団 PK 及び PD モデルを構

築した。このモデルでは、様々な基本的な Goodness-of-fit(GOF)プロットの視覚的評価(母

集団及び個別推定値と実測値の関係、誤差と推定値又は投与後時間との関係、すべての固定効果

及び変量効果パラメータの度数分布)、目的関数値(OFV)、及びパラメータ推定値の正確性を

評価した。モデル選択に用いた主な基準は OFV の差であった。構造モデルに組み入れられた共変

量を含む変数は、尤度比検定(およそカイ二乗分布に従う OFV の差で評価)で事前に規定された

有意基準を満たせば、最終モデルに組み入れた。

バリデーション:バリデーションは、構築した PK/PD モデルの妥当性、耐久性、及び予測精度

を評価するためのものであり、患者を対象とした試験を開始する前に計画した。それは以下の内

容から成る:

VPC (visual predictive check)及びブートストラップ法による内部バリデーション

評価の一貫性のチェック:実施した PK/PD 解析の妥当性/頑健性を他の適応症となる

肺高血圧患者集団を対象とした独立した PK/PD 評価(PH-COPD: 5.3.4.2.2 PH-

36363;PH-ILD: 5.3.4.2.3 A55138 参照)と比較することで検討する。他の適応症と

なる患者集団を対象とした試験は本申請の範囲外ゆえ詳細は記載しない(5.3.5.4.9

PH-36428、5.3.5.4.10 PH-36704 参照)

第Ⅰ相試験データとは独立した第Ⅱ相及び第Ⅲ相試験から得た、リオシグアトの曝露

量に対する共変量の影響に対してモデルを横断して評価する(2.7.2.3.3、2.7.2.3.4

参照)。

2.7.2.2.5.1 第Ⅰ相試験における母集団 PK/PD

3 つの試験により、第Ⅰ相試験データの PK/PD 解析を実施した:

PK/PD 試験 12489(5.3.3.5.2 PH-35222 参照):健康成人男性被験者を対象とした反

復投与用量漸増試験である試験 11260(5.3.3.1.4 PH-34881 参照)から得られたデー

タを用いた探索的母集団 PK/PD 解析

PK/PD 試験 14362(5.3.3.5.4 PH-36427 参照):腎障害(クレアチニンクリアランス

を指標とした)の影響を評価した試験 11915(5.3.3.3.2 PH-36285 参照)及び肝障

害(Child Pugh 分類)の影響を評価した試験 11916(5.3.3.3.4 PH-36317 参照)か

ら得られたデータを用いたリオシグアトの探索的母集団 PK/PD 解析 ― 予備的検討

PK/PD 試験 15593(5.3.3.5.7 PH-36852 参照):腎障害(クレアチニンクリアランス

を指標とした)の影響を評価した試験 15000 及び試験 11915(5.3.3.3.3 PH-36745、

5.3.3.3.2 PH-36285 参照)及び肝障害(Child Pugh 分類)の影響を評価した試験

Page 33: N3 - 医薬品医療機器総合機構...2.7.2 臨床薬理試験 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 72 of 220 図 2.7.2.2-37 クラリスロマイシン併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 97 of 220

15001 及び試験 11916(5.3.3.3.5 PH-36744、5.3.3.3.4 PH-36317 参照)から得られ

たデータを用いたリオシグアトの探索的母集団 PK解析

2.7.2.2.5.1.1 健康成人男性被験者における母集団 PK〔PK/PD 試験 12489(5.3.3.5.2

PH-35222)参照〕

方法:試験 11260(5.3.3.1.4 PH-34881 参照)は第Ⅰ相、単施設、プラセボ対照、クロス

オーバー、無作為化、単盲検試験で、健康男性にリオシグアト(BAY 63-2521)を段階的に増量

して反復投与したときのリオシグアトの安全性、薬力学、及び薬物動態を検討した。

リオシグアトは 5 段階の用量(0.5、1.0、1.5mg 1 日 3 回、2.5mg 1 日 2 回、及び 2.5mg 1 日

3 回)を 1 群あたり 12 名の健康男性被験者に投与した。各用量の段階は 2 投与期からなり、1 投

与期間は 10 日間で、被験者はリオシグアトあるいはプラセボの投与を受けた。2 投与期の間に

は 7 日間以上の休薬期間を設けた。試験の詳細は2.7.2.2.1.4に記載した。

本解析の主要目的は以下のとおりであった:

リオシグアトの血漿中濃度と、薬理作用に関連する薬力学的効果(収縮期血圧:SBP、

拡張期血圧:DBP、心拍数:HR)に関するデータを用いて、リオシグアト及びその代

謝物 M-1 に対する構造 PK及び PK/PD モデルを構築すること

本試験集団で得たリオシグアト及び代謝物 M-1 の薬物動態と薬力学パラメータにおけ

る個体間及び個体内変動を評価すること

適切である場合、リオシグアト及び代謝物 M-1 の PK/PD に影響を及ぼす可能性がある

共変量を評価すること。

PK/PD モデル化の結果:リオシグアト及び代謝物 M-1 の最終 PK モデルは、いずれも経口 2 コ

ンパートメントモデルであり、健康男性被験者 60 名から得られたリオシグアト及び代謝物 M-1

の有効な血漿中濃度データ、それぞれ 2116 及び 2193 ポイントに基づいて構築された。さらに、

5457 ポイントの SBP と DBP のデータ及び 5459 ポイントの HR のデータを PK/PD モデルの作成に

用いた。試験を通して、リオシグアト及び代謝物 M-1 の各薬物動態に時間依存的あるいは用量依

存的な変化はなかった。共変量をモデルに組み込んでも、そのフィッティングの改善は認められ

なかった。吸収速度定数に対する個体内変動は大きく、信頼できる値ではなかった。リオシグア

トのクリアランスにおける個体間変動は比較的高かったが(母集団平均 5.4L/h;IIV:64%)、

代謝物 M-1 では中程度であった(2.1L/h;23%)。

リオシグアトの血漿中濃度と薬力学的パラメータ R:R=(2×DBP+SBP)÷HR の関係を、EC50 の

代表値 31μg/L 及び 1 日目 26%から 10 日目 16%に減少した Emaxの代表値を用いて、直接効果コ

ンパートメント Emaxモデルで示した。

結論:リオシグアト及びその代謝物 M-1 の薬物動態は、いずれもリオシグアトの一次吸収に伴

う 2-コンパートメントモデルで示された。リオシグアトあるいは代謝物 M-1 の薬物動態学的パ

ラメータに用量や時間に依存した変化はなかった。クリアランスの個体間変動はリオシグアトで

比較的高く、代謝物 M-1 では中程度であった。薬物動態及び薬力学モデルは、データが少なく、

モデル化に問題があったことから、予備的なものと考える。

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 98 of 220

2.7.2.2.5.1.2 腎及び肝障害における母集団 PK〔PK/PD 試験 14362 及び PK/PD 試験

15593(5.3.3.5.4 PH-36427、5.3.3.5.7 PH-36852)参照〕

方法:試験 11915(5.3.3.3.2 PH-36285 参照)及び試験 15000(5.3.3.3.3 PH-36745 参照)

は同じデザインで実施し、リオシグアトの薬物動態に及ぼす腎障害の影響について検討した。た

だし、試験 15000 では非喫煙者のみを登録した。

試験は、単施設、非無作為化、非対照、非盲検デザインで実施し、クレアチニンクリアランス

に従って層別した軽度から重度の腎障害を有する被験者を対象に、リオシグアト及びその代謝物

M-1 の薬物動態を評価した。治験薬はリオシグアト 1.0mg 即放錠を用い、単回経口投与した。試

験 11915 では重度の腎障害を持つ被験者群に対して 0.5mg を投与した。

腎障害の程度は治験薬投与 2~14 日前に測定したクレアチニンクリアランス(CLCR)によって、

80mL/min 超(健康被験者)、50~80mL/min(軽度)、30~50mL/min 未満(中等度)、30mL/min

未満(重度)とした。腎障害被験者 3 群の平均年齢及び体重のばらつきは、それぞれ±10 歳及

び±10kg 以内であった。試験 11915 及び試験 15000 の薬物動態解析対象集団は、それぞれ 32 名

及び 31 名であった。

試験 11916(5.3.3.3.4 PH-36317 参照)及び試験 15001(5.3.3.3.5 PH-36744 参照)は同じ

デザインで実施し、リオシグアトの薬物動態に及ぼす肝障害の影響について検討した。ただし、

試験 15001 では非喫煙者のみを登録した。

試験は、単施設、非無作為化、非対照、非盲検デザインで実施し、Child Pugh 分類グレード A

及び B に従って層別した軽度及び中等度の肝障害を有する被験者を対象に、リオシグアト及びそ

の代謝物 M-1 の薬物動態を評価した。治験薬はリオシグアト 1.0mg 即放錠を用い、単回経口投与

した。いずれの試験にも被験者 32名が組み込まれ、すべてが薬物動態解析対象集団になった。

肝障害の程度は治験薬投与の 1~2 週間以内に評価して、Child Pugh A 群、Child Pugh B 群に

分け、それぞれの試験ごとに、それぞれの群と年齢、体重、性別がマッチした健康被験者群 A 及

び B を対照群とした。

試験の詳細はそれぞれ2.7.2.2.2.2及び2.7.2.2.2.3に記載した。

両解析の主要目的は以下のとおりであった:

腎障害及び肝障害患者を対象にリオシグアト 1.0mg を単回経口投与した試験 11915 及

び試験 11916 から得られた血漿中及び尿中データを用いて、リオシグアト及びその代

謝物 M-1 に対する構造 PKモデルを構築すること(5.3.3.5.4 PH-36427 参照)。

腎障害及び肝障害患者を対象にリオシグアト 1.0mg を単回経口投与した試験 11915 及

び試験 11916、試験 15000 及び試験 15001 から得られた血漿中及び尿中データを用い

たリオシグアト及びその代謝物 M-1 に対する構造 PK モデルも構築すること。

(5.3.3.5.7 PH-36852 参照)。

本試験集団で得たリオシグアト及び代謝物 M-1 の薬物動態学的パラメータにおける個

体間及び個体内変動を評価すること。

適切である場合、リオシグアト及び代謝物 M-1 の PK/PD に影響を及ぼす可能性がある

共変量を、特にクレアチニンクリアランス及び Child Pugh 分類に焦点を当てて評価

すること。

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 99 of 220

PK/PD モデル化の結果:共変量を組み入れた構造 PK モデルを PK/PD 試験である試験 14362 の

データから作成し、試験 15593 におけるさらなる評価の際の基本モデルとした。以下に記載した

PK/PD 試験 15593 の結果は、全 4 試験から得られたデータを基に解析したものである。試験別に

解析した結果と全試験を併合して解析した結果に違いはみられなかった。

試験 11915 及び試験 11916 の解析(PK/PD 試験 14362)から得た構造モデルに基づいて、試験

15000 及び試験 15001 から得たデータを加えて、リオシグアト及びその代謝物 M-1 に対する併合

構造モデルを作成した。図 2.7.2.2-46に示すように、モデルはリオシグアトと代謝物に対する

2-コンパートメントモデルである。リオシグアトと代謝物 M-1 の両物質のクリアランスは、腎排

泄パート〔濾過(それぞれ CRFP、CRFM)と分泌(それぞれ CRSP、CRSM)〕及び非腎排泄パート

(それぞれ CLNP、CLNM)に分けており、リオシグアトの非腎排泄パートについては、さらに代

謝物への代謝パート(CNPM)と、残りの非腎排泄パート(CNPX)に分けて解析した。試験 15000

及び試験 15001 のデータも用いた最終モデルのパラメータを表 2.7.2.2-66にまとめた。

図 2.7.2.2-46 構造モデル(試験 15593)

引用元:5.3.3.5.7 PH-36852 の Figure 2.2-1

リオシグアト及び代謝物 M-1 の腎臓での濾過速度は、被験者ごとのリオシグアト及び代謝物

M-1 の非結合型分率と、糸球体濾過速度(GFR)に相関する被験者ごとの投与前のクレアチニン

クリアランス(CRM0=GFR・fu)との積から算出した。

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 100 of 220

表 2.7.2.2-66 最終薬物動態モデルの母集団推定値(試験 15593)

Parameter Mean

estimate

RSE

[%]aInter-

individual

variability

CV[%]b

RSE

[%]aDescription

KA [1/h] 3 fix n.a. 66.0 21.8 absorption rate

K13 [1/h] 0.00906 29.8 n.a. n.a. pre-systemic metabolism

Riociguat

CRSP [L/h] 0.0685 15.5 90.1 26.1 clearance due to renal secretion

CNPM [L/h] 1.20 9.8 75.8 14.0 clearance due to metabolism to M1

CNPX [L/h] 0.338 14.7 50.1 24.2 clearance due to other non-renal

mechanisms

FU63 on CNPX 51.9 22.7 n.a. n.a. percent change in CNPX per unit FU63

difference to the median (3.2%)c

V2/WGHT [L/kg] 0.214 4.4 18.8 19.7 central volume of distribution per kg

body weight

FU63 on V2 15.5 27.1 n.a. n.a. percent change in V2 per unit FU63

difference to the median (3.2%)d

Q2 [L/h] 2.57 9.5 n.a. n.a. intercompartmental clearance

V6/WGHT [L/kg] 0.132 6.3 41.8 22.9 peripheral volume of distribution per

kg body weight

M-1

CRSM/CRM0/FU60

[L/h / (mL/min*%)]

0.00119 8.4 57.0 21.4 clearance due to renal secretion per

unit creatinine clearance at baseline

[mL/min] and per unit fraction unbound

of BAY 60-4552 at baseline [%]e

CLNM [L/h] 1.76 5.9 30.5 30.0 non-renal clearance

CRC0 on CLNM

[% / (mL/min)]

0.744 22.6 n.a. n.a. percent change in CLNM per unit CRC0

difference to the median (75 mL/min)f

V3/WGHT [L/kg] 0.108 8.9 32.7 24.1 central volume of distribution per kg

body weight

Q3 [L/h] 12.2 6.6 n.a. n.a. intercompartmental clearance

V7/WGHT [L/kg] 0.428 4.0 peripheral volume of distribution per

kg body weight

LAG [h] 0.220 4.5 36.3 21.4 absorption lag time

SIGMA [%] 17.9 6.5 n.a. n.a. proportional residual error plasma

SIGMA [%] 41.4 9.1 n.a. n.a. proportional residual error urine

a:相対標準誤差:推定値のパーセントで表示

b:分散の平方根として計算した変動係数(ほぼ CV%に等しい)

c:代表値 CNPX= 0.338 (θ4)*(1+0.519 (θ17)*(FURiociguat - median FURiociguat)

d:代表値 V2= 0.214 (θ5)*body weight*(1+ 0.154 (θ16)*(FURiociguat - median FURiociguat))

e:代表値 CRSM=0.001 (θ8)*FUM1(BAY60-4552)*CRM0

f:代表値 CLNM=1.76 (θ9)*(1+0.007(θ15)*(CRC0-medianCRC0))

c、d、e、fについての詳細は試験報告書の付録 16.3.1 を参照

n.a.:データなし

引用元:5.3.3.5.7 PH-36852 の Table 2-1

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 101 of 220

腎障害患者を対象とした試験(試験 11915、試験 15000)及び肝障害患者を対象とした試験

(試験 11916、試験 15001)から得たデータを併合して新たなデータセットとした。試験 15593

(試験 15000、試験 15001)の解析における最終モデル及び試験 14362(試験 11915、試験

11916)の解析で同定した共変量に基づいて、リオシグアト及び代謝物 M-1 の薬物動態学的パラ

メータを全被験者で再計算した。併合試験解析におけるパラメータの推定値は個々の試験の解析

に基づいた推定値と大きな違いはなかった。

リオシグアトのクリアランスは、その代謝物 M-1 への代謝(CNPM)が主であり、CNPM の代表

値は 1.2L/h であった。このクリアランスのばらつきは大きく、少なくとも部分的には共変量で

ある「喫煙の有無」が関与しており、喫煙はリオシグアトの代謝物 M-1 への変換を増大した(代

謝物 M-1 への代謝による平均 CL 推定値は非喫煙者で 1.2L/h、喫煙者で 4.3L/h)(5.3.3.5.7

PH-36852 参照)。

非腎クリアランス(CNPX)の代表値は、最終モデルでは 0.34L/h で、非結合型分率に比例して

いる。代謝物 M-1 の非腎クリアランスは、代表値は最終モデルでは 1.76L/h で、投与前のクレア

チニンクリアランスに比例する。リオシグアトの全身クリアランス(CLP)は 1.91L/h で、腎濾

過(CRFP 0.17L/h)、腎分泌(CRSP 0.07L/h)、非腎クリアランス(CNPX 0.50L/h)、及び代謝

物 M-1 への代謝(CNPM 1.2L/h)の合計である。

肝機能に対するバイオマーカー(アルブミン、ビリルビンなど)及び Child Pugh 分類はリオ

シグアト及び代謝物 M-1 のクリアランスに何ら影響しないことがわかった。

結論: PK/PD 試験 14362(5.3.3.5.4 PH-36427 参照)で構築したモデルを基本モデルとして、

試験 11915(PH-36285)、試験 11916(PH-36317)、試験 15000(PH-36745)及び試験 15001

(PH-36744)のデータを用いて、リオシグアト及び代謝物 M-1 に対する構造モデルを構築した。

リオシグアト及び代謝物のクリアランスは腎排泄パート(濾過と分泌)と非排泄パートに分け、

リオシグアトの非腎排泄パートではさらに代謝物への代謝パートと残りの非腎パートに分けて解

析した。リオシグアトのクリアランスは代謝物 M-1 に代謝される過程が主であり、代謝物 M-1 へ

の代謝パートは腎や肝の状態に関係なくばらつきが大きかった。しかし、Child Pugh A 及び B

の被験者では、そのばらつきは小さかった。

リオシグアト及び代謝物 M-1 の腎クリアランスは主にクレアチニンクリアランスを指標とした

腎機能によって決まる。よって中等度及び重度の腎障害によって、腎クリアランスは、明らかな

影響を受ける。しかしながら、全身クリアランスに対する腎クリアランスの割合は、リオシグア

トで 10%未満、代謝物 M-1 で 20%程度と小さいため、全身クリアランスに対する腎障害の影響は

わずかであり、曝露量の変化は中程度であると考える。リオシグアトの全身クリアランスの推定

値は 1.9L/h であった。

肝機能に対するバイオマーカー(アルブミン、ビリルビンなど)及び Child Pugh 分類はリオ

シグアト及び代謝物 M-1 のクリアランスに何ら影響しないことがわかった。

試験 11915、試験 11916、試験 15000、及び試験 15001 を併合したデータを用いて構築した最

終モデル(5.3.3.5.7 PH-36852 参照)に基づいて得た薬物動態学的パラメータの推定値は、

PK/PD 試験 14362 で得た推定値(5.3.3.5.4 PH36427 参照)と大きく異なることはなかった。

従って、モデルの妥当性が示された。

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 102 of 220

2.7.2.2.5.2 第Ⅱ相試験における母集団 PK/PD〔PK/PD 試験 12653(5.3.3.5.3 PH-

36006)、PK/PD 試験 15597(5.3.3.5.1 PH-36856)参照〕

2 つの試験の肺高血圧症患者のデータを対象に母集団 PK/PD 解析を行った:

PK/PD 試験 12653(5.3.3.5.3 PH-36006 参照)は、POC 試験 11874 及び第Ⅱ相試験

12166 の二重盲検期に得られたデータに基づいた肺高血圧症患者におけるリオシグア

トの探索的母集団 PK/PD 解析

PK/PD 試験 15597(5.3.3.5.1 PH-36856 参照)は、拡大投与期を含む第Ⅱ相試験

12166 の全体から得られたデータに基づいた肺高血圧症患者におけるリオシグアトの

探索的母集団 PK/PD 解析。

方法:試験 12166(5.3.5.2.1 PH-35772 参照)は第Ⅱ相、多施設共同、非無作為化、非盲検、

非対照試験で、肺高血圧症患者におけるリオシグアトの安全性、忍容性、薬物動態、及び薬力学

を検討した。治験薬は末梢の収縮期血圧に応じて 1.0~2.5mg 1 日 3 回を漸増反復投与した。そ

の後オープンラベル拡大投与期を、リオシグアトの開発を断念するか、あるいはリオシグアトが

所管官庁によって正式に承認されるまで継続することとした。リオシグアトの用量は医学的必要

性に応じて 0.5mg ずつの調節することを可能とし、1 日用量を最低 0.5mg 1 日 3 回~最高 2.5mg

1 日 3回とした。

試験 11874(5.3.4.2.1 PH-34730 参照)は非無作為化、非盲検、用量漸増(パート A)及び群

間比較(パート B)POC 試験で、肺高血圧症患者におけるリオシグアト液剤単回投与の安全性、

忍容性、薬物動態、並びに肺と全身の血行動態及びガス交換への影響を検討した(2.7.2.2.4.1

参照)。

PK/PD 試験 12653 の PK/PD モデリング結果:

本解析の主要目的は以下のとおりであった:

試験 12166(5.3.5.2.1 PH-35772 参照)及び試験 11874(5.3.4.2.1 PH-34730 参

照)から得られた血漿中濃度データと薬理作用に関連する薬力学的効果(収縮期血

圧:SBP、拡張期血圧:DBP、心拍数:HR)に関するデータを用いて、リオシグアト及

びその代謝物 M-1 に対する構造 PK及び PK/PD モデルを構築すること。

本試験集団で得たリオシグアト及び代謝物 M-1 の薬物動態学的と薬力学的パラメータ

における個体間及び個体内変動を評価すること。

適切である場合、リオシグアト及び代謝物 M-1 の PK/PD に影響を及ぼす可能性がある

共変量を評価すること。

試験 11874 の母集団 PK 解析はデータ数が少ないことから探索的なものとして行った。モデル

は一次吸収を伴う 2-コンパートメントモデルで、アダプティブデザインの試験をシミュレート

するために用いた。そのモデルと予測値は、試験 12166 の結果とよく一致した。

試験 12166 を対象とした最終モデルは、リオシグアト及び代謝物 M-1 それぞれに対する 1-コ

ンパートメントモデルであり、見かけのクリアランス、見かけの分布容積、及び一次吸収速度定

数をパラメータとしたものであった。解析は患者 75 名から得られたリオシグアトの 1356 ポイン

トの血漿中濃度データ及び代謝物 M-1 の 1354 ポイントの血漿中濃度データを用いて実施した。

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 103 of 220

リオシグアト及び代謝物 M-1 の PK は二重盲検期の 3 ヵ月間にわたり、時間あるいは用量依存的

に変化することはなかった。年齢及びビリルビンは試験 12166 においてリオシグアトのみかけの

クリアランスと逆相関する共変量としてモデルに組み込まれた。ボセンタンの併用は、共変量の

可能性があるとして検討したが、事前に規定しておいた有意水準には達しなかった。喫煙の有無

はリオシグアトのクリアランスの増大と相関すると思われた。全般的にリオシグアトの PK パラ

メータのばらつきは中程度から大きいもので、特に吸収速度とクリアランスのばらつきが大き

かった。表 2.7.2.2-67にリオシグアトの最終 PKモデルにおける母集団推定値をまとめた。

表 2.7.2.2-67 試験 12166 におけるリオシグアトの最終 PK モデルに対する母集団推定値

Parameter Mean

estimate

RSE

[%]a

Inter-

individual

variability

CV[%]b

RSE

[%]a

Description

KA [1/h] 2.15 6.2 111.4 21.5 absorption rate

CL [L/h] 1.82 5.8 45.3 17.2 clearance

V [L] 29.8 5.0 41.4 26.1 volume of distribution

bilirubin on CL 2.92 12.0 n.a. n.a. percent decrease/increase in CL per

unit bilirubin [0.1 mg/dL] at

baseline greater/less than the

median (0.9mg/dL)

age on CL 1.6 29.9 n.a. n.a. percent decrease/increase in CL per

year greater/less than the median

(63 years)

SIGMA [%] 35.9 10.9 n.a. n.a. proportional residual error

a:相対標準誤差:推定値のパーセントで表示

b:分散の平方根として計算した変動係数(ほぼ CV%に等しい)

引用元:5.3.3.5.3 PH-36006 の Table 4-1

Page 40: N3 - 医薬品医療機器総合機構...2.7.2 臨床薬理試験 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 72 of 220 図 2.7.2.2-37 クラリスロマイシン併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 104 of 220

表 2.7.2.2-68 試験 12166 における代謝物 M-1 の最終 PKモデルに対する母集団推定値

Parameter mean

estimate

RSE

[%]a

Inter-

individual

variability

CV[%]b

RSE

[%]a

Description

KA [1/h] 0.177 14.1 89.2 27.9 absorption rate

CL [L/h] 0.037

WGHT

3.6 31.0 16.9 clearance

V [L] 1.31

WGHT

8.2 44.7 26.8 volume of distribution

bilirubin on

V

5.82 18.9 n.a. n.a. percent increase/decrease in V per

unit bilirubin [0.1 mg/dL] at

baseline greater/less than the

median (0.9mg/dL)

SIGMA [%] 33.5 11.4 n.a. n.a. proportional residual error

a:相対標準誤差:推定値のパーセントで表示

b:分散の平方根として計算した変動係数(ほぼ CV%に等しい)

引用元: 5.3.3.5.3 PH-36006 の Table 4-2

代謝物 M-1 の PK を解析した結果、ビリルビンは分布容積と逆相関する共変量であった。また、

代謝物 M-1 の見かけのクリアランス及び分布容積は患者の体重と線形的な関連が認められた。全

般的に、代謝物 M-1 の薬物動態学的パラメータのばらつきはリオシグアトより小さかった。表

2.7.2.2-68に代謝物 M-1 の最終 PKモデルにおける母集団推定値をまとめた。

PK/PD 試験 15597 の PK/PD モデリングの結果:

本解析の主要目的は以下のとおりであった:

試験 12166(5.3.5.2.1 PH-35772 参照)のデータから構築したリオシグアト及びそ

の代謝物 M-1 に対する既存の PK モデル及び PK/PD 関係について、本試験の拡大投与

期から得られたデータを用いて確認すること。

上述した PK/PD 試験 12653 で構築したモデルを用いて、試験 12166 の拡大投与期から得られた

データを解析し、post-hoc 推定値を求めた。リオシグアト及び代謝物 M-1 の PK パラメータに関

する母集団推定値、個体間変動、及び残差変動は主要治療期(5.3.3.5.3 PH-36006 参照)の

データから推定された値に固定した。共変量モデルは変えなかった。リオシグアト及び代謝物

M-1 の両方で post-hoc 推定値は全試験期間での実測値と、それぞれよく一致し、薬物動態モデ

ルの妥当性が確認された(図 2.7.2.2-47)。さらに、モデルはより長期の治療に対しても予測

できたことが示された。

はじめの 3 ヵ月間のデータに基づいた PK/PD 試験 12653 で示したように、試験の全期間をとお

しても、リオシグアト及び代謝物 M-1 の PK に時間あるいは用量依存的な変化はみられなかった。

Page 41: N3 - 医薬品医療機器総合機構...2.7.2 臨床薬理試験 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 72 of 220 図 2.7.2.2-37 クラリスロマイシン併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 105 of 220

喫煙者のクリアランスは非喫煙者に比べて高かった(図 2.7.2.2-48)。表 2.7.2.2-69に試験

12166 の拡大投与期における PK パラメータをまとめた。

図 2.7.2.2-47 試験 12166 の主要治療期及び拡大投与期におけるリオシグアトの血漿中濃度の

予測値と実測値

引用元:5.3.3.5.1 PH-36856 の Figure 2.3-1

CL

[L

/h]

0

1

2

3

4

5

6

7

w/o bosentanN=50

with bosentanN=20

non-smokerN=53

smokerN=6

図 2.7.2.2-48 試験 12166 の主要治療期及び拡大投与期における喫煙者及び非喫煙者、並びに

ボセンタン併用及び非併用患者におけるリオシグアトの見かけのクリアランス

の post-hoc 推定値の箱ひげ図

引用元:5.3.3.5.1 PH-36856 の Figure 11.1-2

Page 42: N3 - 医薬品医療機器総合機構...2.7.2 臨床薬理試験 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 72 of 220 図 2.7.2.2-37 クラリスロマイシン併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 106 of 220

表 2.7.2.2-69 試験 12166 の主要治療期及び拡大投与期におけるリオシグアト反復投与後のリ

オシグアト及び代謝物 M-1 の PK パラメータ(幾何平均/幾何標準偏差、中央値

[範囲])

Dose [mg] 1.5

(n=77)

2.0

(n=79)

2.5

(n=413)

Riociguat

AUCa

[g*h/L]

678 / 1.62

592 [263 - 3094]

1036 / 1.48

1023 [520 - 2671]

1233 / 1.56

1209 [497 - 3549]

Cmax

[g/L]

104 / 1.51

97 [45 - 399]

149 / 1.45

146 [76 - 364]

180 / 1.47

173 [ 77 - 491]

Ctroughb

[μg/L]

64 / 1.81

52 [21 - 371]

103 / 1.56

102 [49 - 296]

122 / 1.72

123 [39 - 377]

t1/2c

[h]

10 / 1.79

9 [6 - 57]

10 / 1.49

9 [5 - 21]

11 / 1.61

10 [4 - 28]

M1 (BAY 60-4552)

AUCa

[g*h/L]

566 / 1.47

592 [283 - 901]

813 / 1.28

874 [542 - 1088]

864 / 1.41

897 [423 - 1801]

Cmax

[g/L]

73 / 1.46

77 [36 - 115]

103 / 1.28

111 [69 - 137]

110 / 1.42

113 [54 - 226]

Ctroughb

[μg/L]

67/1.47

69 [34 - 110]

99/1.29

106 [63 - 134]

103 / 1.41

100 [51 - 223]

t1/2c

[h]

21 / 1.57

21 [9 - 63]

26 / 1.4

25 [14 - 53]

22 / 1.57

22 [7 - 59]

a:投与間隔τ=7~8時間(1日 3回)での AUCτ

b:次の投与前(投与間隔である 7~8時間経過後)

c:投与間隔内で算出

引用元:5.3.3.5.1 PH-36856 の Table 2.3-1

得られた PK パラメータ(AUC、Cmax、Ctrough)と最も意義のある PD パラメータである 6 分間歩

行距離(6MWD)、肺血管抵抗(PVR)、全身血管抵抗(SVR)、心拍出量(CO)、平均肺動脈圧

(PAPmean)、及び NT-proBNP(図 2.7.2.2-49~図 2.7.2.2-52)の投与前値からの変化量を比

較して PK/PD の関係を評価した。なお、拡大投与期では 6MWD と NT-proBNP のみを評価した。こ

れらのパラメータの関係を、個々のデータあるいは疾患(PAH、CTEPH)、最終的な被験者ごとの

用量、喫煙の有無、ボセンタン併用ごとなど、群データとして、グラフを用いて探索的に解析し

た。定量的解析は PK 及び PD データの不足や大きいばらつき、及び試験 12166 の被験者数(主要

治療期及び拡大投与期)が少ないことにより実施できなかった。

Page 43: N3 - 医薬品医療機器総合機構...2.7.2 臨床薬理試験 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 72 of 220 図 2.7.2.2-37 クラリスロマイシン併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 107 of 220

diagnosis PAHCTEPH

Pu

lmon

ary

va

scula

r re

sis

tan

ce

cha

ng

e [

dyn

*s*c

m-5

]

-1000

-900

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

100

200

AUC [µg*h/L] after 12 weeks

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

図 2.7.2.2-49 12166 試験の主要治療期にリオシグアトを 12週間(84 日間)投与したときの肺

血管抵抗と血漿中濃度(AUC)の変化

引用元:5.3.3.5.3 PH-36006 の Section 14.2.7.1

diagnosis PAHCTEPH

Syste

mic

va

scula

r re

sis

tance c

ha

ng

e [

dyn*s

*cm

-5]

-2000

-1000

0

1000

2000

AUC [µg*h/L] after 12 weeks

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

図 2.7.2.2-50 12166 試験の主要治療期にリオシグアトを 12週間(84 日間)投与したときの全

身血管抵抗と血漿中濃度(AUC)の変化

引用元:5.3.3.5.3 PH-36006 の Section 14.2.7.1

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 108 of 220

図 2.7.2.2-51 12166 試験の主要治療期にリオシグアトを 12週間(84 日間)投与したときと投

与する前の 6分間歩行距離と肺血管抵抗

引用元:5.3.3.5.3 PH-36006 の Section 14.2.4.4

diagnosis PAHCTEPH

6-m

inute

walk

dis

tance

change [m

] after

12 w

eeks

-100

0

100

200

300

Pulmonary vascular resistance change [dyn*s*cm-5] after 12 weeks

-1000 -900 -800 -700 -600 -500 -400 -300 -200 -100 0 100 200

図 2.7.2.2-52 12166 試験の主要治療期にリオシグアトを 12週間(84 日間)投与したときと投

与する前の 6分間歩行距離と肺血管抵抗の変化

引用元:5.3.3.5.3 PH-36006 の Section 14.2.5.3

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 109 of 220

結論:第Ⅱ相反復投与試験(5.3.5.2.1 PH-35772 参照)におけるリオシグアト及びその主代

謝物 M-1 の濃度は、単純な直線性の 1-コンパートメントモデルでよく記述できた。主要治療期

3 ヵ月間のリオシグアト及び代謝物 M-1 の PK に時間あるいは用量依存的な変化はみられなかっ

た。PK パラメータのばらつきは中程度から大きいもので、特にリオシグアトの吸収過程とクリ

アランスに関して認められた。拡大投与期において、予測値と実測値は、リオシグアト及び代謝

物 M-1 の両モデルでそれぞれよく一致し、PK モデルの妥当性が確認された。さらに、モデルは

より長期の治療に対しても予測できたことが示された。リオシグアトの血漿中濃度と PD パラ

メータとの関係もばらつきが大きいと思われた。PK/PD の関係に対する定量的解析は、PK 及び

PD データの不足、大きなばらつき、及び試験 12166 の被験者数(主要治療期及び拡大投与期)

が少ないことにより実施できなかった。

2.7.2.2.5.3 第Ⅲ相試験における母集団 PK/PD〔13817 PK/PD 試験(5.3.3.5.8 PH-

36960)参照〕

方法:試験 12934(PATENT-1:5.3.5.4.1 A62510 参照)は国際多施設共同、二重盲検、無作

為化、プラセボ対照試験で、肺動脈性肺高血圧症患者における有効性、安全性、忍容性、及び薬

物動態を検討した。その後、継続して実施した拡大投与の試験 12935(PATENT-2:5.3.5.4.2

A62511 参照)は国際多施設共同、オープンラベル、一群デザインであった。試験 11348

(CHEST-1:5.3.5.1.1 A62508 参照)は国際多施設共同、二重盲検、無作為化、プラセボ対照試

験で慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者における有効性、安全性、忍容性、及び薬物動態を検討した。

その後、継続して実施した拡大投与の試験 11349(CHEST-2:5.3.5.1.2 A62509 参照)は、国際

多施設共同、オープンラベル、一群デザインであった。

4 つの試験すべてにおいて、リオシグアトは(0.5)、1.0、1.5、2.0、又は 2.5mg 即放錠を 1

日 3 回 12 週間(PATENT)あるいは 16 週間(CHEST)、二重盲検下で用量ステップに応じて、経

口投与した。二重盲検試験終了後、それぞれ拡大投与試験に移行した。拡大投与試験では、リオ

シグアトの用量を患者個々の医学的必要性に応じて調整した。二重盲検試験でプラセボ投与を受

けていた患者に対しては、拡大投与試験の来院 1 日目からリオシグアトの投与することができ、

1.0mg 1 日 3 回から開始して、被験者ごとに用量漸増した。

PK/PD モデリングの結果

本解析の主要目的は以下のとおりであった:

4 つの第Ⅲ相試験、PATENT-1(試験 12934)、PATENT-2(試験 12935)、CHEST-1(試

験 11348)、CHEST-2(試験 11349)から得られた血漿中濃度データと血行動態パラ

メータ及び 6分間歩行距離(6MWD)に関するデータを用いて、リオシグアト及びその

代謝物 M-1 に対する構造 PK モデル及びリオシグアトに対する PK/PD モデルを構築す

ること

本試験集団で得たリオシグアト及び代謝物 M-1 の PK パラメータにおける個体間及び

個体内変動を評価すること

リオシグアト及び代謝物 M-1 の薬物動態に影響を及ぼす可能性がある共変量を評価す

ること。

最終モデルはリオシグアト及び代謝物 M-1 それぞれに対する経口 1-コンパートメントモデル

であり、見かけのクリアランス、見かけの分布容積、及び一次吸収速度定数をパラメータとした

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2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 110 of 220

ものであった(表 2.7.2.2-70)。吸収相での血漿中濃度データが少なかったことにより、吸収

速度定数は以前に第Ⅱ相試験のデータから推定した値に固定した(2.7.2.2.5.2 参照)。

解析は 4 試験における年齢 18~80 歳の 642 名の男性及び女性患者から得られた 5245 ポイント

のリオシグアト、及び 5246 ポイントの代謝物 M-1 の血漿中濃度データに基づいた。

試験の全期間をとおして、リオシグアト及び代謝物 M-1 の PK に時期あるいは用量依存的な変

化はみられなかった。

表 2.7.2.2-70にリオシグアトの最終 PKモデルにおける母集団推定値をまとめた。

表 2.7.2.2-70 リオシグアトの最終 PK モデルに対する母集団推定値(13817 試験)

Parameter Mean

estimate

RSE

[%]a

Inter-

individual

variability

CV[%]b

RSE

[%]a

Description

KA [1/h] 2.17

(fixed)

n.a. n.a. n.a. absorption rate

CL [L/h] 1.81 2.2 41.2 7.3 clearance

V [L] 32.3 1.8 25.0 17.2 volume of distribution

WGHT on V [%] 0.619 14.9 n.a. n.a. percent increase/decrease in V per kg

body weight greater/less than the

median (68 kg)

SMOK on CL

[%]

120 17.5 n.a. n.a. percent increase in CL in smoker

BOSE on CL

[%]

35.6 17.6 n.a. n.a. percent increase in CL during

bosentan co-medication

bilirubin on CL

[%]

13.6 15.2 n.a. n.a. percent decrease/increase in CL per

unit ongoing bilirubin greater/less

than the median (0.58 mg/dL)

CRC0 on CL

[%]

0.394 15.1 percent increase/decrease in CL per

unit creatinine clearance at baseline

greater/less than the median

(81.2 mL/min)

Residual error

[%]

34.2 3.8 n.a. n.a. proportional residual error

a:相対標準誤差:推定値のパーセントで表示

b:分散の平方根として計算した(ほぼ CV%に等しい)

n.a.:データなし

引用元:5.3.3.5.8 PH-36960 の Table2.3-1

クリアランスに関する共変量、すなわち腎機能を反映するクレアチニンクリアランス、肝胆系

排泄能を反映するビリルビン、喫煙の有無、及びボセンタンの併用をモデルに組み込んだところ、

クリアランスの個体間変動が約 48%から約 41%に減少した。喫煙者及びボセンタン併用患者は

非喫煙者及びボセンタンを併用していない患者に比べてクリアランスが高く、それは CYP1A1 又

Page 47: N3 - 医薬品医療機器総合機構...2.7.2 臨床薬理試験 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 72 of 220 図 2.7.2.2-37 クラリスロマイシン併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 111 of 220

は CYP3A4 の誘導によるものであった(図 2.7.2.2-53)。これは過去の試験で得られた結果と一

致していた。

さらに、体重を分布容積の共変量として組み込んだところ、分布容積の個体間変動が約 27%

から 25%に減少した。

PATNET-1 及び PATENT-2

CL

[L

/h]

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

non-smokerwithout bosentan

N=267

smokerwithout bosentan

N=18

non-smokerwith bosentan

N=117

CHEST-1 及び CHEST-2

CL

[L

/h]

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

non-smokerwithout bosentan

N=229

smokerwithout bosentan

N=7

non-smokerwith bosentan

N=0

図 2.7.2.2-53 第Ⅲ相 PATENT 及び CHEST 試験における喫煙の有無とボセンタン併用におけるリ

オシグアトの見かけのクリアランスを post-hoc 推定した箱ひげ図

水平線:中央値、ボックス:25~75 パーセンタイル、垂直線:5~95 パーセンタイル

引用元: 5.3.3.5.8 PH-36960 の Figure 2.3-1

Page 48: N3 - 医薬品医療機器総合機構...2.7.2 臨床薬理試験 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 72 of 220 図 2.7.2.2-37 クラリスロマイシン併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 112 of 220

代謝物 M-1 の PK を解析した結果においても、クレアチニンクリアランスはクリアランスに対

する共変量として、ビリルビンと体重は分布容積に対する共変量としてモデルに組み込まれた

(表 2.7.2.2-71)。クレアチニンクリアランスを共変量としてモデルに組み込むことで、CL の

個体間変動(IIV)は 42%から 37%に減少した。体重を共変量としてモデルに組み込むことで、

分布容積(V)の IIV は、51.8%から 50.0%に減少した。“吸収”(リオシグアトから M-1 の生

成過程)のパラメータについて信頼性のある推定は、利用できる情報やデータが少なかったため

にできなかった。

表 2.7.2.2-71に代謝物 M-1 の最終 PK モデルに関する母集団推定値をまとめた。

表 2.7.2.2-71 代謝物 M-1 の最終 PKモデルに対する母集団推定値(13817 試験)

Parameter Mean

estimate

RSE

[%]a

Inter-

individual

variability

CV[%]b

RSE

[%]a

Description

Ka [1/h] 0.258

(fixed)

8.7 62.9 16.3 absorption rate

CL [L/h] 3.16 1.6 37.3 7.4 Clearance

V [L] 124 4.5 52.1 9.7 volume of distribution

WGHT on V

[%]0.735 24.6 n.a. n.a. percent increase/decrease in V per kg

body weight greater/less than the

median (68 kg)

bilirubin on V

[%]

12.7 21.6 n.a. n.a. percent decrease/increase in V per

unit ongoing bilirubin greater/less

than the median (0.58 mg/dL)CRC0 on CL

[%]

0.68 7.9 n.a. n.a. percent increase/decrease in CL per

unit creatinine clearance at baseline

greater/less than the median

(81.2 mL/min)

Residual error

[%]32 4.3 n.a. n.a. proportional residual error

a:相対標準誤差:推定値のパーセントで表示

b:分散の平方根として計算した変動係数(ほぼ CV%に等しい)

n.a.:データなし

引用元: 5.3.3.5.8 PH-36960 の Table 2.3-2

リオシグアトの血漿中濃度の post-hoc 推定値から、安全性及び薬物動態解析対象集団の各患

者における AUC、Cmax、及び Ctroughを、二重盲検試験と拡大投与試験におけるすべての来院日で算

出した。

リオシグアトの曝露量(AUC、Cmax、Ctrough)と、意義のある薬力学パラメータである 6 分間歩

行距離(6MWD)、肺血管抵抗(PVR)、全身血管抵抗(SVR)、心拍出量(CO)、平均肺動脈圧

Page 49: N3 - 医薬品医療機器総合機構...2.7.2 臨床薬理試験 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 72 of 220 図 2.7.2.2-37 クラリスロマイシン併用投与時及びリオシグアト単独投与時におけるリオシグ

2.7.2 臨床薬理試験

Bayer Yakuhin, Ltd. Page 113 of 220

(PAPmean)、及び NT-proBNP の投与前値からの変化量との関係は個々のデータあるいは疾患/試

験(PAH、CTEPH)、二重盲検試験での被験者ごとの最終用量、喫煙の有無、ボセンタンの併用、

及び WHO 機能分類ごとなど、群データとして、グラフを用いて探索的に評価した。