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●問合先/県の企業振興課 電話 095-895-2637 は常に高度な技術が求められて いたといいます。そのため、透か し彫りなど、ほかの産地では到 底作れないと思われるような製 品が熟練した名工たちの手に よって生まれたのです。また、江 戸期の細く繊細な筆づかい、明 治期の薄くて軽い卵殻手など、 美しさが際立っているものが多 いのも、三川内焼の特徴です。 1598 (慶長3)年、平戸藩主松浦 鎖信公が、平戸で窯を焼かせた ことが起源とされています。その 後、さらに良質な材料を求めて 東へ移り、 1637 (寛永14)年に 現在の三川内町に平戸御用窯と して定着しました。開窯以来、三 川内焼は朝廷や将軍家への献 上品を多く作り日用品から室内 装 飾品にいたるまで、陶工たち 食器でした。現在も波佐見で は、日々の暮らしの中で普段か ら活用できるようなうつわ、そし て使いやすく機能的な食器が作 られています。美しい白磁を中 心に、モダンなデザインや暮らし に彩りを与えてくれそうな新しい 感覚のものまで、手ごろな価格 で良質なやきものが作られてい るのです。 今からさかのぼること約400年。 1599(慶長4)年、波佐見町の3所に登窯が築かれたのが波佐 見 焼のはじまりといわれていま す。江戸時 代に生まれた、簡素 な染付けが 施された「くらわん か碗」は、丈夫で割れにくく厚手 で、「磁器は高級で手の届かな いもの」という当時の考えを覆 す、庶民の食文化を支えた日常 優美さと異国情緒豊かな色彩 を持つ、全国的にも有名ならっ きょう型のこま。その形は南方か ら中国を経て、長崎に渡 来した ものといわれています。青(緑)、 赤、黄、白(生地の色)、黒の色 使いは、中国の陰陽五行説に影 響されています。先端には鋭い 剣が打ち込まれていて、 2人以上 でぶつけ合って楽しむ喧嘩ごま として遊ばれています。 長崎の 焼き物。 数百年の歴史を誇る、 波佐見焼と三川内焼。 日常食器や献上品など、 それぞれの辿ってきた 歴史は違いますが、 今なおその技術は 受け継がれ、 現代の暮らしに 馴染む素敵な やきものが生まれ 続けています。 長崎の 手仕事。 長崎県には、 昔から伝えられてきた 伝統の 技術があります。 大陸の玄関口として、 海外との交流を 通じて栄えてきた 歴史と文化、 風土が複雑に 絡み合いながら、 独特の手仕事の 技が磨かれてきました。 Traditional Cra fts in Nagasaki 日本三大土人形に数えられる 古賀人形。 1592 (文禄元)年には じまり、 400年以上の歴史を持ち ます。「西洋婦人」や「阿茶さん」 といった鎖国時代に居留してい た外国人などをモチーフにした 長崎らしいデザインと、独特の 土の素朴さ、大胆な色使いが特 徴です。全部で90種類ほどある 古賀人形の型は、江戸時代から 代々伝わるもの。新しい型は 作っておらず、大 切に受け継が れています 。現 在 古 賀 人 形を 作っているのは、十九代目の 小 川憲一さんただ一人です。粘 土こねから窯焼き、彩色まで、全 て一人で手作業で行い、一つ一 つ大切に作られています。 写真右●阿茶さん/優しい表情が癒さ れる阿茶さんは、江戸時 代に長崎にい た唐人さんがモチーフになってます。寂し さを紛らわせるためにチャボを抱っこし た姿だそうです 写真上●コンプラ瓶/江戸時 代、醤油 や酒を入れて輸出していたという「コン プラ瓶」。どっしりとしたフォルムはヨー ロッパ人による注文といわれています 写真下●染付霊芝文碗/江戸中期のく らわんか碗。厚手のフォルムに素朴な絵 付けの、庶民のための器です (ともに波佐見町 蔵) 写真右●染付菊秋草文瓶(18世紀)/ 日本画のような美しい絵付けは、献上品 としての格式の高さがうかがえます 写真左●染付雀竹文大皿(18C中)/ 少し黄みがかった気品ある白地に、細く 繊細な筆づかいで描かれた染付けが美 しい (ともに佐世保市 蔵) Nagasaki Meguri : A Guidebook to Nagasaki 24 23 Naga Pottery & saki Handicrafts

Naga saki Pottery & Handicrafts...Naga Pottery & saki Handicrafts Title 23p_24p Created Date 11/29/2018 3:09:57 PM

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Page 1: Naga saki Pottery & Handicrafts...Naga Pottery & saki Handicrafts Title 23p_24p Created Date 11/29/2018 3:09:57 PM

●問合先/県の企業振興課 電話 095-895-2637

三川内焼

は常に高度な技術が求められていたといいます。そのため、透かし彫りなど、ほかの産地では到底作れないと思われるような製品が熟練した名工たちの手によって生まれたのです。また、江戸期の細く繊細な筆づかい、明治期の薄くて軽い卵殻手など、美しさが際立っているものが多いのも、三川内焼の特徴です。

1598(慶長3)年、平戸藩主松浦鎖信公が、平戸で窯を焼かせたことが起源とされています。その後、さらに良質な材料を求めて東へ移り、1637(寛永14)年に現在の三川内町に平戸御用窯として定着しました。開窯以来、三川内焼は朝廷や将軍家への献上品を多く作り日用品から室内装飾品にいたるまで、陶工たち

食器でした。現在も波佐見では、日々の暮らしの中で普段から活用できるようなうつわ、そして使いやすく機能的な食器が作られています。美しい白磁を中心に、モダンなデザインや暮らしに彩りを与えてくれそうな新しい感覚のものまで、手ごろな価格で良質なやきものが作られているのです。

今からさかのぼること約400年。1599(慶長4)年、波佐見町の3か所に登窯が築かれたのが波佐見焼のはじまりといわれています。江戸時代に生まれた、簡素な染付けが施された「くらわんか碗」は、丈夫で割れにくく厚手で、「磁器は高級で手の届かないもの」という当時の考えを覆す、庶民の食文化を支えた日常

優美さと異国情緒豊かな色彩を持つ、全国的にも有名ならっきょう型のこま。その形は南方から中国を経て、長崎に渡来したものといわれています。青(緑)、赤、黄、白(生地の色)、黒の色使いは、中国の陰陽五行説に影響されています。先端には鋭い剣が打ち込まれていて、2人以上でぶつけ合って楽しむ喧嘩ごまとして遊ばれています。

長崎の焼き物。数百年の歴史を誇る、波佐見焼と三川内焼。日常食器や献上品など、それぞれの辿ってきた歴史は違いますが、今なおその技術は受け継がれ、現代の暮らしに馴染む素敵なやきものが生まれ続けています。

長崎の手仕事。長崎県には、昔から伝えられてきた伝統の技術があります。大陸の玄関口として、海外との交流を通じて栄えてきた歴史と文化、風土が複雑に絡み合いながら、独特の手仕事の技が磨かれてきました。

Tradit iona l Cra f ts in Nagasa k i

日本三大土人形に数えられる古賀人形。1592(文禄元)年にはじまり、400年以上の歴史を持ちます。「西洋婦人」や「阿茶さん」といった鎖国時代に居留していた外国人などをモチーフにした長崎らしいデザインと、独特の土の素朴さ、大胆な色使いが特徴です。全部で90種類ほどある古賀人形の型は、江戸時代から代々伝わるもの。新しい型は作っておらず、大切に受け継がれています。現在古賀人形を作っているのは、十九代目の小川憲一さんただ一人です。粘土こねから窯焼き、彩色まで、全て一人で手作業で行い、一つ一つ大切に作られています。

古賀人形

写真右●阿茶さん/優しい表情が癒される阿茶さんは、江戸時代に長崎にいた唐人さんがモチーフになってます。寂しさを紛らわせるためにチャボを抱っこした姿だそうです

写真上●コンプラ瓶/江戸時代、醤油や酒を入れて輸出していたという「コンプラ瓶」。どっしりとしたフォルムはヨーロッパ人による注文といわれています写真下●染付霊芝文碗/江戸中期のくらわんか碗。厚手のフォルムに素朴な絵付けの、庶民のための器です(ともに波佐見町 蔵)

写真右●染付菊秋草文瓶(18世紀)/日本画のような美しい絵付けは、献上品としての格式の高さがうかがえます写真左●染付雀竹文大皿(18C中)/少し黄みがかった気品ある白地に、細く繊細な筆づかいで描かれた染付けが美しい(ともに佐世保市 蔵)

佐世保独楽

波佐見焼

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