52
NEJM 2019;380(14):1305-1315 2019.5.21 田口

NEJM 2019;380(14):1305-1315 2019.5•試験中に指摘された全てのDVT •PE •全てのVTE •DVTによる合併症 •全ての血栓症による合併症 •28日時点での死亡

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NEJM 2019;380(14):1305-13152019.5.21田口 愛

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VTE (venous thromboembolism)

凝固能亢進

血流停滞

血管内皮障害

Virchow‘s triad

薬物的予防・低分子ヘパリン・未分画ヘパリン

物理的予防・弾性ストッキング

・間欠的空気圧迫法(IPC)

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【Introduction】

ü静脈血栓塞栓症(DVT, PE含む)は重症疾患の合併症のひとつである

ü未分画/低分子ヘパリンの使用によりDVT発生は50%軽減する。

⇒重症患者への抗血栓薬の使用を推奨。

üしかし、血栓予防薬を使用しても重症患者の5-20%ではDVTを発症してしまう・・・

Arch Intern Med 2001;161:1268-79

Chest 2013;144:152-9Crit Care Med 2002;30:771-4Chest;2015:148:1224-30

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Lancet 2013, 382: 516–24

【Objective】急性脳卒中患者にIPCを使用することでDVTが減少するか、予後が変わるか

【Design】多施設共同ランダム化比較試験【Patients】UKの94施設 2876人 2008/12~2012/9【method】発症後3日以内、身体機能低下、身辺動作の自立度低下ありの急性脳卒中患者をIPC群とIPCなしの群に割り付け【Primary outcome】大腿部or下腿部に発生した症候性/無症候性DVT【Secondary outcome】死亡・IPCによる合併症

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結果:・IPC使用によりDVT発生が1/3減少・介入後30日以内の死亡率には有位差なし・皮膚障害はIPC群で多い

抗血栓薬治療を受けたのは24%

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【Objective】 IPCと抗血栓薬(ヘパリン)の併用は、いずれか単独療法と比べてVTEを減少させるか

【Dsign】 15RCT+7CCT (CRS, MEDLINE, CINALH, AMED) 2016/5まで【Population】術後患者、外傷患者、ICU患者【Intervention】 IPC単独 vs IPC+抗血栓薬、

抗血栓薬単独 vs IPC+抗血栓薬【Outcome】 PE, DVT, bleeding

Øevidenceの質をhigh/moderate/low/very low qualityで評価

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IPC vs IPC + 抗血栓薬

IPC+抗血栓薬はIPC単独と比べてü PE発症は有意差なしü DVT発症を減少させるü Bleeding / major bleeding を増加させる

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抗血栓薬+IPC は抗血栓薬単独と比べてü PE発症は減少ü DVT発症は有意差なしü 出血リスクも有意差なしだがvery low evidence

抗血栓薬 vs 抗血栓薬+ IPC

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ü過去のRCTではmechanical thrombophyraxisとして弾性ストッキングの影響を除外したデザインとなっていない、抗血栓薬の使用が適切量でないなどlimitationがある

üIPCのDVT予防効果についてstrong evidenceが確立していない

ü抗血栓薬+IPCはDVT予防において相乗/相加効果となるのだろうか?

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今回の論文

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Objective

DVT予防の抗血栓薬(未分画/低分子ヘパリン)投薬患者に対して

IPC併用は近位下肢DVT発生を減らすことができるのか検証

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Methods

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<Trial design>

ü多施設ランダム化試験

ü施設:4ヵ国(サウジアラビア、カナダ、オーストラリア、インド)、20施設のICU

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<Patients> ~Inclusion criteria~

・medical/surgical/trauma ICU在室・施設の属する地域が基準とする年齢による成人

・体重≧45kg・ICU滞在期間が72時間以上と予測されている・抗血栓薬使用が可能である

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<Patients> ~exclusion criteria~

・IPC装着から24時間以上経過・ICU入室から48時間以上経過・低分子/未分画ヘパリン以外の抗血栓薬治療中・IPC装着・下肢エコー実施が不可

(熱傷、裂傷、皮膚感染症、ドレッシング剤で保護中、急性虚血、四肢切断後、コンパートメント症候群、閉塞性動脈硬化症、骨折、足背動脈に動脈ライン)

・低分子/未分画ヘパリンを治療量で投薬・妊婦

・治療制限がある/余命≦7日/緩和ケア・アレルギー

・IVCフィルター留置中

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<Randomization>

ü抗血栓薬+IPC or 抗血栓薬 only の両群1:1に割り付け

üブロック置換法を用いてコンピューターでランダム化

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<Trial intervention>ü介入群・device

chamber数:mluti >single 、丈:大腿>膝下を推奨

・IPC使用は18時間/日以上、8時間ごとにIPCを着脱し皮膚を観察

・中止基準

DVT or PE発症、皮膚潰瘍/虚血発症、ICU退室、IPC開始から28日が経過/治療が緩和へ方針転換

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<Trial intervention>

üControl 群抗血栓薬使用を中止となった時にIPC使用は可能

ü両群とも

弾性ストッキングの使用は不可

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<Measurement>ü割り付けられてから48時間後以内に初回下肢エコー、以後1週間に2回DVT検索のための下肢エコーを施行

ü下肢エコー:総大腿静脈(1cmおき)、大腿静脈3ヶ所(近位/中間/遠位)、膝窩静脈、膝窩静脈分岐部を圧迫して観察

分岐部

https://allabout.co.jp/gm/gc/452876/

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ü下肢エコーは放射線科医が読影

üDVTの定義として、下肢エコーで静脈圧迫し、部分的にor完全に圧迫できないこととする

<Measurement>

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割り付け

IPC群

Control群ICU入室から48時間以内

超音波① 超音波②

2回/1週間

DVT+ 介入前よりDVTを発症していた

以後繰り返し

≦48時間

超音波③

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<Primary outcome>

2回目以降の下肢エコーで指摘された近位下肢DVT

・ICU 退室,・死亡,

・完全な移動能力の回復,

・試験 28 日目のいずれか早い時点までに指摘

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•初回エコーで指摘されたDVT(試験開始以前に発症していたとみなす)•試験中に指摘された全てのDVT• PE•全てのVTE• DVTによる合併症•全ての血栓症による合併症• 28日時点での死亡

<Secondary outcome>

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<Statistical analysis>

Sample size・5%はfollow upで離脱、5%は介入前よりDVTを発症していると仮定し

・IPC併用はヘパリン単独(7%でDVT発症)群より3%DVT発症を減らせる

⇒検出力を80%、有意水準5%としてsample size2000人と算出。

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<Statistical analysis>•中間解析:677名(33%), 1334名(66%)のfollow up終了時

•有意水準:p<0.048 (O’Brien-Fleming型)

•修正ITT解析:ランダム化を受け、同意を得られない/データ不十分を除く症例

• PPS解析:割り当てられたinterventionを実施し、かつ1度は下肢エコー検査を受けた症例

• Χ2乗検定を行い相対リスク(95%CI)を算出

•一般化線形混合モデルを用いて修正相対リスクを算出

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<Statistical analysis>

• DVT発生と時間の関係をKaplan-Meier曲線とCox比例ハザードモデルで解析

•欠損値の補充、多重検定は行わず

•解析ソフト:SAS, version 9.4

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Results

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9513例:Inclusion criteria を満たさず

Study patients

16053

2535

2027名登録

3963例:exclusion criteriaに該当

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n=991

IPC使用群 Control群

n=1012

割り付け後

除外基準により除外

ITT解析:991

19例:IPC施行なし22例:下肢エコーなし

6例:IPC施行22例:下肢エコーなし

ITT解析:1012例

34例:初回エコーでDVT指摘

27例;初回エコーでDVT指摘

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患者背景

2群間で患者背景に大差なし

年齢 57歳男性 6割BMI 29ICU入室前・救急 50%・一般病棟 30%・手術 10% ・他院 8%

APACHEⅡscore 20入室分類・内科 80%・外科 14%・外傷 7%機械換気 66%昇圧剤 35%ヘパリン 未分画58%

低分子42%鼠径部CVC 15%Random化前にIPC装着 10%

BMI高い

救急患者が多い

内科が多い

補助換気の割に昇圧剤は多くない

比較的若い

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患者背景 ~DVT risk factors~

・リスク因子なし 40%・3ヵ月以内の入院歴 22%・48時間以内に手術を受けた 9%・入院前からの固定化された麻痺 10%・活動性の悪性腫瘍 (6ヵ月以内 9% )・急性脳卒中 4%・VTE既往 1%

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Intervention

IPC群において・IPC装着は98%・1日22時間・大腿丈を推奨したが79%が膝丈を使用

介入期間中央値は両群とも7日間

IPC以外の血栓予防・弾性ストッキング(≦1%)・治療量のヘパリン(6%)・抗血小板薬(40%)2群間で差なし

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Intervention

両群とも、97%は最低1回は下肢エコーを受けたICP群は平均3.5日、Control群は平均3.8日間隔で下肢エコーを受けた

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Primary outcome ~近位下肢DVT発生~

PreexitingのDVTは除外

ü DVT(近位)発症4%、介入後8-9日で発症

ü 2群間に有位差なしRandom effect補正後も有位差はなし

修正ITT解析 PPS解析

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Primary outcome ~Kaplan-Meier曲線~

Control群

IPC群

修正ITT解析、PPS解析ともに28日までのDVT(近位)未発症の確率は有意差なし

観察日数DVT未発症数

DVT

未発症

確率

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Control群の方がDVT少ない

IPC群の方がDVT少ない

・未分画ヘパリンの方がDVT発症率は高い・鼠径CVC挿入中の場合14%程度・昇圧剤使用の方がDVT発生率高い(7%)

Primary outcome ~Subgroup analysis~

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・サウジアラビア人が圧倒的に多い(77%)・施設ごとに人数の偏りがある・site 4でDVT発生が多いがIPC群と

control群には有意差なし

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Secondary outcome

皮膚障害(NPUAP分類)圧迫消退しない発赤2.5%部分潰瘍0.5%下肢虚血1%

DVT(遠位/近位)5%Pre-exiting DVT 3%PE 1%

死亡28日15%90日26%

有位差なし

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Sensitivity analysis

DVT診断の基準を調整

初回エコーの有無をDVT陽性/陰性とするか

初回/follow upのエコーを受けた人に絞る

IPC使用時間を22時間で区切り分類

ICU滞在14日以上に絞る

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結果のまとめ

• 2群間の患者背景は等しい• primary outcome近位下肢DVTの発生率に差なし

• secondary outcomePE含め静脈血栓発症率に差なし皮膚障害/下肢虚血発生率に差なし死亡率に差なし

u抗血栓薬とIPCを併用してもDVT/VTE発症率は変わらない。

u皮膚障害/下肢虚血といったIPCの合併症の発生率も上げない。

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Discussion

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•今回の結果DVT予防の抗血栓薬投薬中の重症患者に対して、IPCを併用することは、観察期間28日内においてDVT、VTE、死亡率に影響しない。

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• Control群のIPC使用は最小限でcross over は少ない。修正ITT解析でもprimary outcome に有意差を認めていない。

• 弾性ストッキング着用も控え(<1%)、IPC・ヘパリン以外の抗血栓作用の影響を少なくした。

研究の背景として不足する点はなさそう...

⇒抗血栓薬投薬中の重症患者に対してIPC併用によるDVT予防効果は支持されない。

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• CLOT3 trial ではIPC装着による皮膚障害は3.1%

(vs 1.4% in control群)

•今回のPREVENT trialではIPC装着による皮膚障害はcontrol群と差を認めなかった

(IPC群2.5% vs Control群2.2%)

その理由としてCLOT3 trial に比べて PREVENT trial では・年齢:20歳程度若い(76歳 vs 57歳)⇒元々皮膚の状態が良い、潰瘍ができにくいといった背景の差があるのかもしれない

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Limitation• Control群でのDVT発生率は4%と低い

(Sample size設定時はControl群7%と仮定していた)

⇒今回の結果だけではIPC併用によるDVT予防効果の可能性を否定できない

• Interventionの特性上盲検化ができなかった

•初回, follow upのエコー検査が超音波技師のスケジュール上施行できない症例があった

•施設によって使用したIPCが異なった

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Conclusion

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まとめ

抗血栓薬投薬中の重症患者に対して

IPC併用はDVT予防効果を上げない

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Editorial良かった点

ü患者背景が多様であり、ICU患者を対象としては妥当である。ü本研究は盲検化されていないがbiasを生じる可能性が低い

(研究の目的は隠したRCTである/IPC装着の遵守率が高い

/cross overが少ない/follow up離脱は3%のみ)

Primary outcomeに有位差が出なかったことについてü Control群のDVT発生率が少ないためか(仮定では7%、実際は4%)

ü 重症外傷患者(PREVENT studyでは8%)では有位差が出るかも

課題

ü抗血栓薬が禁忌の患者(PREVENT stydyでは除外)に対しIPC単独のDVT予防効果は確立したものがない

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批判的吟味

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• 焦点が明確な課題設定ICU入室中、DVT予防の抗血栓薬投薬患者にIPC装着はDVT発生を減らす

ことができるか

• 設定された課題への研究方法4ヵ国20のICUでのランダム化比較試験

• 患者の割り付けブロックランダム化

• 研究対象者、現場担当者、研究解析者の盲検化患者、医療者、超音波技師には非盲検化

• エントリーした研究対象者の適切な評価97%の患者がprimary outcomeの判定を受けた

研究の同意が得られないorデータ不十分者以外をmodified ITT解析

• 介入以外の治療の同等性弾性ストッキング使用は控え、抗凝固/抗血小板薬使用に両群差なし

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• 研究対象者数は十分か検出力80%、5%の離脱、5%のpre-existingDVTを仮定

→sample size 2000人

• 結果の表示primary outcome:相対リスク比、Kaplan-Meier曲線で示した

本研究の最重要結果

DVT予防の抗血栓療法とIPC併用はICU入室患者のDVT発生率を低下させない

• 結果の正確性Sensitivity analysisを行っても結果に矛盾はなし

• 結果の妥当性 (当院ICU患者と比較)年齢:57歳(67歳)、BMI:29(22)、救急+内科患者:80%(術後患者84%)

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私見

〇抗血栓薬とIPCを併用してもDVT/VTE発症率は変わらない。→過剰な医療の適切化、医療費の削減につながる可能性がある

• アジア人は白人に比べてVTEリスクが低いとされるがアラブ人とのVTEリスク差は不明である。本研究をそのまま日本人に当てはめられるかは疑問。

• 当ICUではVTE予防プロトコールに準じて、静脈血栓症既往患者に対して抗凝固+機械的予防を選択している。

⇒本研究ではVTE既往患者でのIPC併用による解析はされておらず現在の当院の予防策からIPCを外す根拠には乏しい。今後の研究に期待。