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NFC(Near Field Communication)を用いたAndroidスマートフォンによる授業出席管理システムの開発
Development of Attendance Management System by using Android Smartphonewith NFC(Near Field Communication)
© 1市村 匠， 2鎌田 真© 1Takumi Ichimura, 2Shin Kamada
1県立広島大学 経営情報学部 経営情報学科1Dept. of Management and Information Systems, Prefectural University of Hiroshima
2県立広島大学大学院 総合学術研究科 経営情報学専攻2Graduate School of Comprehensive Scientific Research, Prefectural University of Hiroshima
Abstract: Recently, the IC chip embedded cards have been widely used in our daily life. Especially, FeliCais well known card system, which is a contact-less RFID smart card system from Sony in Japan. Felica isused in electronic money cards such as Rakuten-Edy. The attendance management is a troublesome jobin a lecture, because the check of the number attendance requires the authentification of stundets. Wedeveloped the attendance management system with Android Smartphone, where the authentication of ICcard is not required the particular card reader, because Android smartphone (Android OS 2.3 and later)can use the technologies for NFC (Near Field Communication).
1 はじめに
NFC(Near Field Communication)は，13.56MHzの周波数を利用する通信距離 10cm程度の近距離無線通信技術で，NXPセミコンダクターズ，ノキア，ソニーの３社により構成されている ‘NFCフォーラム’で開発された．NFCは，ソニーが開発した Felicaの技術の一部を公開されている規格だけで開発することがで
きる．たとえば，Felicaにおいて暗号化を必要とする部分は NFCでは利用できないが，それ以外のオープンコマンドを用いたアプリケーションでは，NFCだけで開発することができる．Felicaを用いてアプリヶーションを開発する場合，専用の開発環境を整える必要
があったが，NFCのモジュール化によってアプリケーションを開発することが容易になり，NFCを用いた製品開発も可能となっている．さらに，Googleが提供している Androidスマートフォンでも，OSバージョン2.3以上であれば，NFCの機能がサポートされており，NFCを用いた様々なアプリケーション [2]が Androidplay storeでも公開されている．
ところで，大学講義において，出席を管理するため
に，教員側は様々な努力をしている．小さな紙ベースの
色付きカードを配布して，学生に ‘代返’を行えないようにしている．しかしながら，大講義室で行うような
講義であると，毎回出欠票の集計だけで，かなりの時
間がかかる．どうせ回収するなら，授業中に簡単な課
題を与え，回答させるなどの工夫もされているようで
ある．一方，磁気カードや ICチップ付きのカードを学生証として配布し，教室に入るときに専用端末で固有
の IDを読み取る方法 [3]も提案されている．リーダーとサーバが連動しており，授業終了後には，欠席した
学生のリストが教員側に提供されるシステムもある．
しかしながら，このようなシステムを大学が導入す
るためには，学生証などの身分証を磁気カードや ICチップ付きのカードに変更しなければならないことも
含め，高コストになる．大学によっては成績表などの
データをリンクさせ，管理させる機能も追加している
ところもあり，これを実現するためには学内セキュア
ネットワークを構築したサーバ・クライアントシステム
の構築が必要となる．また，コンピュータシステムの
利用方法だけでなく，カードの紛失なども個人情報保
護の観点から大学全体で利用規則を定める必要がある．
このような大規模なシステムを導入しなくても，授
業の出席管理を行うだけであれば，先に述べたGoogleAndroidスマートフォンを用いて簡単に非接触型のカードリーダーを開発することができる．また Androidアプリケーションとして誰でも容易に利用できると考え，
我々は，NFCによる Android スマートフォン出席管理システムを開発した．本論文では，その機能を説明
するとともに，ユーザである学生からの評価を報告す
る．なお，論文発表後にシステムをGoogle Play Storeから無料でダウンロードように設定するので，是非，
皆さんで使っていただいて，必要だと思われる機能を
SOFT SNSインテリジェントスマートフォンルーム [6]で議論したいと考えている．
2 NFCについてNFC(Near Field Communication)は，13.56MHzの
周波数を利用する通信距離 10cm程度の近距離無線通信技術で，‘NFCフォーラム’において開発された．NFCフォーラム仕様で定義されているNFCのデバイスは，3つのモードをサポートしている．これらは，“Card Emu-lation Mode”, “Peer-to-Peer Mode”, “Reader/WriterMode”である．
従来，日本で流通していた ICチップは，カードと，Reader/Write端末に限定されていた．NFCは，カードの形状に自由度を持たせ，テレビや PCなどに搭載することが可能となっている．また，シールタグとし
て提供することも可能で，その用途の広がりを見せて
いる．
図 1は，世界で利用されていた ICチップの種類を利用出きるように，NFCフォーラムでまとめられた規格の概略を示している．
3 NFCによるAndroidスマートフォン出席管理システム
本節では，開発した NFCによる Androidスマートフォン出席管理システム “授業でタッチ”の機能について説明する．
3.1 開発した機能
• 受講者名簿大学では，履修期間が終了すると，履修者一覧表
が提供される．そのデータのうち，学籍番号，名
前，メールアドレスを保存した CSVファイルを作成し，Androidスマートフォンの SDカードに保存する．
• 固有 IDの読み取りFelicaカードには，IDmと呼ばれる固有の番号が割り当てられている．IDmは 8byteの数字で構成され，トレーサビリティと個体識別を目的として
ICチップに書き込まれており，1枚の ICチップに対して 1個の番号が割り当てられる．
• 学生登録CSVファイルから，学籍番号，名前，メールアドレスを読み込み，スマートフォンのカメラ機能で
写真を撮影する．
• メール送信授業に欠席した学生には，授業終了時に欠席したこ
とを本人に通知する．さらに，欠席理由をGoogleドキュメントのフォーム機能で登録することも可
能である．
• 集計作業出席者・欠席者の一覧表を作成し，ファイルに保
存する．
• 学生削除受講を取りやめた者を削除する．
• 出席管理Bluetoothを用いてファイルを PCなどに転送する．特定の PCと認証した後，該当するファイルのみを転送する．
図 2は，開発したシステムを起動した画面である．学生が ICチップ付きのカードをかざすと，図 3のような画面が表示される．もし，かざしたことがないカード
がタッチされると，図 4のような画面が表示され，学生の情報を登録することができる．
図 5は，登録されている学生のリストである．「学籍番号」，「名前（漢字）」，「名前（かな）」，「メールアド
レス」が保存されている CSVファイルをあらかじめ用意し，該当するクラスの CSVファイルを SDカードから読み込ませることができる．
図 7は，欠席した学生へ電子メールで「欠席したこと」を通知することができる．このとき，授業の内容，
配布資料などのリンク情報をメールに記入しておくと，
欠席した学生のサポートも行えるようになる．
3.2 学生の Felicaカード
広島で流通している交通系 ICカードには，JR西日本が提供する ICOCAと，広島ローカルの交通機関が利用できるのPASPYがある．なお，フリーソフトで知られている “felicalib.dll”[4]は，32ビット用Windowsでのみ動作するものなので，64ビットには対応していない．また，ICOCAとPASPYは仕様が異なり，felicalibでは PASPYを読み取ることができなかった．なお，上記の交通系 ICカードを所有していない学生は，無料で発行されるカードを紹介するなどして，各自で ICカードを用意してもらう．
NFC ForumType 1 Tag
NFC ForumType 2 Tag
NFC ForumType 3 Tag
NFC ForumType 4 Tag
Japanese(Felica)
NFC CardReadrer/
Writer
Android2.3
ISO/IEC 14443A96Bytes to 2KB
ISO/IEC 14443A48Bytes to 2KB
ISO/IEC 14443Up to 32Kbytes
図 1: NFC Forum Tag Types
4 まとめIDmを利用することで，学生が欠席した場合は，出
席登録ができない．また，授業の最初に出席をとるの
で，遅刻することも難しい．このことにより，学生の
出席率が高くなり，遅刻も減少することが見込まれる．
利用状況としては，Androidスマートフォンを用いた出席管理アプリケーションなので，高い関心をもって
いる学生が多くいた．一方，教員が知っている情報と，
IDm の知識を提供したことで，個人情報の利用範囲を理解して学生もシステムを利用している．なお，本
システムで利用している Android スマートフォンは，この出席管理システム専用で，学内専用のWiFiを利用して外部には情報が漏洩しないネットワークで利用
されている．一般に利用するためには，セキュリティ
に注意する必要がある [5]．本システムは Google PlayStoreで公開している．図 8を Android OS 2.3以降のスマートフォンならばダウンロードした後，無料で利
用できる．
参考文献[1] SONY, “NFC に つ い て”,
http://www.sony.co.jp/Products/felica/NFC/index.html (2012/06/02)
[2] touchRL, ”touch!ATND”,https://play.google.com/store/apps/details?id=org.touchrl.atnd (2012/06/02)
[3] 杉山達彦，泉隆，竹内淳，関根好文，“ICカードを用いたオンライン出席管理システム”，第２回３学会共催大会，第 38回ファジィ・ワークショップ，PP.129-130(2012)
[4] felicalib, http://felicalib.tmurakam.org/
図 8: ダウンロード用 QRコード
(2012/06/02)[5] 市村匠，“安全な Androidアプリの選び方‐セキュリティと確認方法-”, 公財）広島市産業振興センター第１回 Android研究会資料，http://sns.j-soft.org/community/6/video/20425
[6] SOFT SNS 研 究グ ル ープ，“イン テ リジェン ト Smartphone”, http://sns.j-soft.org/community/6(2012/06/12)
連絡先〒 734-8558広島市南区宇品東一丁目 1-71県立広島大学 経営情報学部
市村 匠
E-mail: [email protected]
図 2: 初期画面 (起動時) 図 3: 登録学生表示 図 4: 初期登録
図 5: 学生リスト表示 図 6: CSVファイル読み込み 図 7: 電子メール送信
