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ＮＩＣＵにおける看護師現任教育
北里大学看護キャリア開発・研究センター
新生児集中ケア認定看護師教育課程
専任教員 岡 園代
今日の内容
看護職者の現在の教育体制
現在求められている教育とは
～今回のネオフォーラムのアンケート結果～
Ｎ＝39
技能習得に関するドレファスモデルの看護への適応
第1段階 初心者レベル（Novice）第2段階 新人レベル（Advanced Beginner）第3段階 一人前レベル（Competent）第4段階 中堅レベル（Proficient）第5段階 達人レベル（Expert）
パトリシア ベナー，ベナー看護論，医学書院，1992
臨床看護実践能力習熟段階制クリニカルラダー
目的
①看護師の臨床実践能力を評価し、能力向上への動機づけとし、教育的サポートの基準にする。
②看護師の職務満足度を向上させる。
③看護師の個々のキャリア開発に役立てる。
④人事考課、配置転換、給与等への資料とする。 など(石川福江他：北里大学病院における院内教育の実際，小児看護，1998，21(3)，ｐ．316-325)
当院看護部の教育方針
看護の専門職業人としての臨床実践能力を高め、患者ケアの質的向上を図ること
現任教育・・新人教育・現任者教育・看護研究の３つの柱
臨床看護実践能力習熟段階制クリニカルラダー
新人レベル・・・
レベルⅠ
一人前レベル・・・
レベルⅡ
中堅レベル・・・
レベルⅢ
達人(エキスパート)レベル・・・
レベルⅣ
(初心者レベル・・・学生)
1996年1月～
小島恭子他：専門職としてのナースを育てる看護継続教育クリニマルラダー、マネージメントの実際医歯薬出版株式会社 2006
～継続教育をなぜ行わなければならないか～
保健師助産師看護師法 第２８条の２
「保健師、助産師、看護師及び准看護師は、免許を受けた後も、臨床研修その他の研修を受け、その資質の向上を図るように努めなければならない。」
「看護職者は、常に、個人の責任として継続学習による能力の維持・開発に努める」
(日本看護協会倫理綱領 条文８項)
新人看護師臨床研修制度 １
2009年12月「新人看護職員研修ガイドライン」が提示2010年4月新人看護職員研修制度が努力義務化
新人看護師臨床研修 ２
研修のデザインには、インストラクション・デザインプロセスで最も有名なＡＤＤＩＥ（アディー）モデルを活用
新人看護師臨床研修制度 ３
継続教育の基準 ver.22012年4月公益社団法人日本看護協会
研修により、新人看護職員の離職率は若干の改善がみとめられた。・普及が十分でない・他医療機関との連携・医療安全からみた看護技術の評価
などの課題が示唆された。
新人看護職員の臨床実践能力の向上に関する検討会 2004
★・・1年以内に経験し修得を目指す
項 目Ⅱ・・指導のもとでできるⅠ・・できる
実際の臨床看護実践能力習熟段階クリニカルラダーについて～北里大学病院ＮＩＣＵの試みを交えて～
共通項目 評価 レベルⅠ北里大学病院看護部
臨床看護実践能力習熟段階 レベルⅠ
看護部共通到達レベル
１．① 日常生活援助のための基本的技術・態度を身につけ、リーダーの指示のもとベットサイドケアが安全・確実にできる。
② 患者ケアを通して看護観を深めることができる。
２．チームメンバーの役割と責任を果たすことができる。
３．専門職業人としての責任を自覚することができる。
４．看護研究に関心を持つことができる。
臨床看護実践能力習熟段階 レベルⅠ
チェック項目99項目
小島恭子他：専門職としてのナースを育てる看護継続教育クリニマルラダー、マネージメントの実際医歯薬出版株式会社 2006
共通項目 評価 レベルⅡ北里大学病院看護部
臨床看護実践能力習熟段階 レベルⅡ
看護部共通達成レベル
１．看護過程をふまえた個別的看護ケアが実践できる。
２．状況に応じたリーダーシップが発揮できる。
３．院内研修を看護実践に生かせる。
４．課題を研究的に取り組みことができる。
ＮＩＣＵでの具体的な取り組み
臨床看護実践能力習熟段階 レベルⅡＮＩＣＵ看護レベルⅡ 重点目標
レベルⅡ-１Ⅰ．基本的看護ケアを応用し個別的な看護ケアが実践できる。
指導者へ主体的に相談しながらメンバーの役割を発揮する
指導者の指導を受け、受け持ち看護師として個別性をとらえた看護過程が展開できる。
Ⅱ．状況に応じたリーダーシップが発揮できる
(夜勤帯を中心に)Ⅲ・日々の業務において問題意識を持つ。
(研究的視点をもつ)
臨床看護実践能力習熟段階 レベルⅡＮＩＣＵ看護レベルⅡ 重点目標
レベルⅡ-２Ⅰ．基本的看護ケアを応用し個別的な看護ケアが実践できる。
メンバーの役割を発揮する
受け持ち看護師として個別性をとらえた看護過程が展開できる。
Ⅱ．状況に応じたリーダーシップが発揮できる。
Ⅲ．院内外の研修を看護実践に生かせる。
Ⅳ．研究的視点で物事を考えることができる。
臨床看護実践能力習熟段階 レベルⅡ-１
チェック項目43項目
北里大学病院看護部
臨床看護実践能力習熟段階 レベルⅡ-２
チェック項目42項目
北里大学病院看護部
クリニカルラダーレベルⅡ～ＮＩＣＵ病棟での運用～
レベルⅠの達成は卒後１年修了時がほとんどである。
レベルⅡの時期が最も重要である。
長い期間・・・ＮＩＣＵ病棟では独自に前半と後半に分けて、目標を設定することで道標が提示できる。
基本的日常生活援助技術・看護手順を身につけたのちの、個別性を重視した看護過程に専門性が色濃くある。
受け持ち看護師を経験していくことで看護の醍醐味を知り、のめり込み、看護観を培い続けていく正の連鎖に入っていくと対象との非言語的なコニュケ―ション、家族の変容の大きな波を楽しいと感じていく。
新生児看護の特徴 １
生理学的適応を助けるケア
・24時間体制の他職種との協働を基にした
集中ケア
・新生児の形態機能、病態生理に基づく看護介入
神経行動学的発達を助けるケア
・ディベロップメンタルケア
・痛みへのケア
家族中心のケア
横尾京子：ネオネイタルケア増刊号．2004．3
新生児看護の特徴 ２
看護基礎教育での知識・実習に教育機関に差がある。
周産期の特性
家族形成期である。
親が親になっていくプロセスを始めたばかりである。
親‐子関係が始まったばかりである。
ＮＩＣＵ看護の特性
直接的な看護技術提供者との非言語的なコミュニケーション能力(知識と技能)の開発
看護の対象にかならず家族がいる。
ちょっと見方は変わりますが・・・
コンピテンシー
「個々の職務においてヒトが効果的なパフォーマンスを示し、成果を生み出していくための総合的な能力要件のこと」
コンピテンシー・アプローチ
「ただ単に「あれを知っている」「あのスキルがある」というよりも、「行動を通して、知っていること、身につけていることを用いて何かを生み出す力」ということに力点を置いて、総合的な能力特性を把握し、明確化していくこと」
私たち、看護師のコンピテンシーって???松下 博宣：看護経営学第４版 看護部門改造計画のすすめ， 日本看護協会出版会 ２００６年
一般看護師のコンピテンシー
日経ヘルスケア・松下博宣：看護危機を乗り切るナーシングストラテジー，ｐ251，日経ＢＰ社，1991
共通項目 評価 レベルⅢ
北里大学病院看護部
臨床看護実践能力習熟段階 レベルⅢ
看護部共通達成レベル
１．-①プライマリーナースとしての役割実践ができる。
(自律・権限・責任)-②専門領域における看護実践の役割モデルとなれる。
２．あらゆる場面でのリーダーシップが発揮できる。
３．後輩および看護学生に対して指導的に関わる。
４．看護研究を通して専門看護を深める。
臨床看護実践能力習熟段階 レベルⅢ
チェック項目39項目
北里大学病院看護部
小島恭子他：専門職としてのナースを育てる看護継続教育クリニマルラダー、マネージメントの実際医歯薬出版株式会社 2006
クリニカルラダーレベルⅢ(Ⅱ-2)新人教育の実地指導者という役割
新人教育の組織体制プリセプターシップ、チューターシップ(エルダー制)、メンターシップ、チーム支援型などなど
実地指導者・・・新人看護師に対して、臨床実践に関する実地指導、評価等を行う。
看護職員として必要な基本的知識、技術、態度を有し、教育的指導が出来る者であることが望ましい。
( 厚生労働省 新人看護職員研修ガイドライン 2011年2月)
最も大切な人材・・・・役割モデル
～実地指導者の役割を通して1～
教育体系・・・ＯＪＴ(On-the-Job Training)・ＯＦＦ-ＪＴ(Off-the-Job Training)
看護は、ＯＪＴの占める割合が高く、学習にも効果的である。
「職場で学ぶということは、学習者が、熟達者や先輩の仕事を手伝いながら一方的に教えられるのではなく、「自ら学ぶ」存在である。職場は、相互に知識や情報を交換し、コミュニケーションし、学び合う共同体である。」(看護管理者テキスト第2版 看護における人的資源活用論 日本看護協会出版会，2012)
～実地指導者の役割を通して2～
ミルトン・メイヤロフ 「ケアの本質 生きることの意味」
他者の成長をたすけることとしてのケア
「ケアとは自分がしてあげたいことをすることではなく、相手の成長したいというニーズに応答しつつ、学習者が自ら成長し自己実現していくことを支援することであり、相互関係を通して互いに成長し自己実現することである。」
(下山節子他，新時代の看護マネージメントとリーダーシップ，ナーシングビジネス201２夏季増刊，メディカ出版)
「ケアする人は忍耐強い。なぜならば、相手の成長を信じるからである。」
～ＯＪＴ(ON-THE-JOB TRAINING)を通して1～
指導者として、教育的な関わり
態度を学ぶ
コーチング・・・基本的な考え方(コーチングマインド)①その人に必要な答えはその人の中にある。
②答えをみつけるには、パートナーが必要である。
③人は誰でも、可能性に満ちている。(髙木光恵，看護師のためのコーチング入門、ナーシングビジネス，2012，vol.6 no10 p.8-41、メ
ディカ出版)
本学では、「説明する(ガイダンス)」「手本を示す(モデリング)」「やらせてみる(プラクティス)」「評価する(フィードバック)」を推進の基本ステップとしている ©Kenji、Kanazu
やってみせいってきかせてさせてみて
ほめてやらねば人はうごかじ
ＢＹ 山本五十六
～実地指導者の役割を通して３～
サポートの効果
実地指導者の活動を教育担当者(上位責任者)、同僚からのサポートにより、振り返ることができる。
例えば・・・・
うまくいったこと、困ったこと
うまくいかなかったことなどなど・・・
⇒「中堅レベル看護師には帰納的に教えるのがもっとも効果的である」
(パトリシアン ベナー，ベナー看護論新訳版 2008，医学書院)
⇒体験を物語る・・・「リーダーは自らの体験をもとに自分自身の言葉で語ることによって、共感と共鳴を広めることができる」⇒シンクロニシティ(共時性、共起性)(松下博宣，医療経営士テキスト 創造するリーダーシップとチーム医療，2010，ｐ．57-63)
臨床看護実践能力習熟段階 レベルⅣ
看護部共通達成レベル
１-①専門看護師として役割モデルとなり専門性を発揮で
きる。
-②創造的な看護実践を展開できる。
２．看護単位における課題を明確にし、目標を示しながら管理行動がとれる。
３．看護単位における教育的役割がとれる。
４．管理および専門看護分野における研究開発を行い、変革の推進者となれる。
共通項目 評価 レベルⅣ
北里大学病院看護部
スペシャリストとは・・・
スペシャリスト看護師
優れた知識・訓練・技術を実践する中で、看護の質の向上に多大な影響力を持つ者
対象にわかる言葉を選んでわかりやすく説明できるほどの
患者の日常生活の感覚や予備知識が必要とされるコミュニケーション能力を有している
看護管理テキスト：日本看護協会出版会
全クリニカルラダー共通態度評価表
9項目
責任感積極性協調性規律性守秘義務共感性自制心礼節
健康管理
小島恭子他：専門職としてのナースを育てる看護継続教育クリニマルラダー、マネージメントの実際医歯薬出版株式会社 2006
クリニカルラダーの評価
クリニカルラダー評価委員会
ラダーレベルⅠ、Ⅱはセクション毎
ラダーレベルⅢ、Ⅳについて委員会で実施
個人の能力評価と能力向上への動機づけを目的としているため、自発的に能力認定へエントリー(自己申請)されるべきものである。
全員が達人レベルに達するわけではなく、その必要もない。
エンカレッジするものである
看護師現任教育の鍵を握るものは・・・
役割モデルの存在
ＮＩＣＵでの看護に夢中になっている人
教育=共育の考え方
忍耐
目指すビジョン・理念の明確化
組織風土の変容・キャリア構築構想などなど
看護管理者の腕の見せどころ
