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- 1 - NMR 緩和時間測定(T 1 T 2 T 日本電子製NMRの測定ソDeltaジ5で,緩和時間測定の手順をに概説する 緩和時間測定ではス機構を使用しないので,XY軸方向の磁場のシ調整を手動で行う. た,自身のサの90°ス幅も測定する これらの前準備手順については巻末参照 のこと(p.10~) この簡易アでは,縦緩和時間T 1 測定:反復回復法(Inversion Recovery)について始め に詳説し,そのの測定についてはそれに倣って略説する 縦緩和時間(ス-格子緩和時間)T 1 測定 (1) 縦緩和時間T 1 熱平衡状態からずらされた縦磁化が熱平衡状態へ戻るのに 必要な時間(正確には,熱平衡からのズが1/eになる時間 (⇒ 「時定数」))で,定量実験でのスキ間の待ち時間 (relaxation_delay)を決める目安もえる 分子で長く,分子が大きくなるにつれ短くなるが,さら に分子量が増すと再び長くなる(右図で,「分子相関時間」 τ C は,分子の運動しにくさ、般に分子量が大きいほど大き い値になる) 【ス-格子緩和】 RF照射により励起された核スが、格子系(=周りの原子分子の場) にエギを放出して元の熱平衡状態に戻る機構. 核スの吸収したエギが,格 子振動を通し熱的に逃げて放出される過程である (Ⅰ-2) Inversion Recovery(反転回復法)概要 核磁化が熱平衡値M 0 にあるとき,180°スをかければ,Mz = -M 0 となる それ降は,Blochの現象論方程式より, dMz/dτ = (M 0 -Mz)/T 1 Mz(τ) = M 0 {1-2exp(-τ/T 1 )} となり,180°スの後,時間τを経て掛けた90°スに続く信号強度でこれが読み出せる(連 続測定) Mz = 0(null)のとき, τ null / T 1 = ln2 T 1 = 1.44τ null 指数関数 対数: = -1/T 1 τ τ null -M 0 M 0 τ τ ln{Mz(τ)-M 0 } T 1 T 2 logT 1 logT 2 logτ C

NMR 緩和時間測定(T - 大阪大学analysis.sci.osaka-u.ac.jp/dl/delta5_relaxation-time-measurement.pdfnmr 緩和時間測定(t1 ,t2 ,t1ρ) 日本電子製NMRの測定ソフトDeltaバヸジョン5で,緩和時間測定の手順をㆌㄦに概説する

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- 1 -

NMR 緩和時間測定(T1

,T2

,T1ρ

日本電子製NMRの測定ソフトDeltaバージョン5で,緩和時間測定の手順を以下に概説する

緩和時間測定ではスピン機構を使用しないので,X・Y軸方向の磁場のシム調整を手動で行う. ま

た,自身のサンプルの90°パルス幅も測定する ⇒ これらの事前準備手順については巻末参照

のこと(p.10~)

この簡易マニュアルでは,縦緩和時間T1測定:反復回復法(Inversion Recovery)について始め

に詳説し,その他の測定についてはそれに倣って略説する

1 縦緩和時間(スピン-格子緩和時間)T1

測定

(1) 縦緩和時間T1

熱平衡状態からずらされた縦磁化が熱平衡状態へ戻るのに

必要な時間(正確には,熱平衡からのズレが1/eになる時間

(⇒ 「時定数」))で,定量実験でのスキャン間の待ち時間

(relaxation_delay)を決める目安も与える

低分子で長く,分子が大きくなるにつれ短くなるが,さら

に分子量が増すと再び長くなる(右図で,「分子相関時間」

τCは,分子の運動しにくさ、一般に分子量が大きいほど大き

い値になる)

【スピン-格子緩和】 RF照射により励起された核スピンが、格子系(=周りの原子・分子の場)

にエネルギーを放出して元の熱平衡状態に戻る機構. 核スピンの吸収したエネルギーが,格

子振動を通し熱的に逃げて放出される過程である

(Ⅰ-2) Inversion Recovery(反転回復法)概要

核磁化が熱平衡値M0にあるとき,180°パルスをかければ,Mz = -M

0となる

それ以降は,Blochの現象論方程式より,

dMz/dτ = (M0-Mz)/T

1 ⇒ Mz(τ) = M

0{1-2222exp(-τ/T

1)}

となり,180°パルスの後,時間τを経て掛けた90°パルスに続く信号強度でこれが読み出せる(連

続測定)

※ Mz = 0(null)のとき,

τnull

/ T1 = ln2 ⇒ T

1 = 1.44τ

null

指数関数 ⇒ 対数プロット:

傾き = -1/T1

τ

τnull

-M0

M0

τ

τ

ln{Mz(τ)-M0}

T1

T2

logT1

logT2

logτC

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(Ⅰ-3) 測定手順

パルス系列は,1H観測の場合,Global/relaxation/double_pulse.jxp

⇒⇒⇒⇒

設 定

・・・・ [auto_gain]: array測定では使用してはな

らない ※ レシーバGain値

は予め仮測定の段階でメモ(ま

たは記憶)しておく

・・・・ [recvr_gain]: 1H測定時に確定した値か

ら4を引いた値

・・・・ [scans]: 積算回数はデフォルトでよい

・・・・ [x_pulse]: 自身のサンプルで測定した90°パルス幅

・・・・ [relaxation_delay]: 経験上予想されるT1値の5倍程度以上~

10倍程度の値を入力する

※ 90°パルス→FID観測の後,次の180°パルスをかける

前に,核磁化が熱平衡値に達するようにする

⇔ 飽和回復法(次節参照)

・・・・ [tau_interval]: 10点程度array入力する

※ T1に比して十分に長い時間τ(τ

∞)でのデータを取るのが精度を上げるのに重要である

が,その結果,測定時間は長くなる. ただ,十分に長い時間(τ∞)付近に多数の測定点

を設定しても測定精度を上げることにはならない ⇒ 急激な変化(増大⇔減衰)のある

ところに多くの測定点を取るように設定する(p.1下図参考)

例えば,{(0.02, )0.05, 0.1, 0.2, 0.5, 1, 2, 5, 10(, 20)}のように,所謂「1-2-5-飛び」

や「1-3-飛び」等で設定してみたり,[ArrayType]で[Listed]の選択を外し,[Exponential]

を選択して使ってみたりしても便利である. Arrayの最大値(τ∞)は,経験上予想され

るT1値の10倍程度の値でよい([relaxation_delay]入力値程度)

(Ⅰ-4) 解析手順

[nD Processor]ウィンドウで開くと,1H用標準プロセスリストが自動適用されるので,まず,1

point 目のスライス・スペクトル・データ に対して,位相補正をする ※ 1 point 目,すな

わち180°パルスを打って極短時間しか経過していないスペクトルなので,全てのピークが負にな

る(下を向く)よう位相補正すればよい

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⇒⇒⇒⇒

その後,実行ボタン をクリックして2次

元表示にする

※ X軸側は,1H用標準プロセスリストが適

用されているのでスペクトル(ppm)であ

り,Y軸側は何らプロセス処理が適用され

ていないので,単に[tau_interval]の値で

並べただけである. これを等高線表示

(緑が正/赤が負)している

次に,[Data Slate]ウィンドウボタン を

クリックし,それ上にデータを表示させ直す

※ メ ニ ュ ー バ ー で [Expansion] →

[Linearize]を選択すると,ウィンドウ下

部に別ジオメトリで,スペクトルがarray

表示される(サンプルのδ/ppm付近を拡

大 しておくとよい)

⇒⇒⇒⇒

続いて,メニューバーで[Analyze]→[Curve Analysis]を選択し,立ち上がった[Curve Analysis]

ウィンドウのツールバーのボタン をその順でクリックしてマウスポインタが指形の変化し

(注) [Linearize]ジオメトリの X 軸(時間軸)

は,(リニアでも何でもなくて,)単に測定

順(昇順)に等間隔に並べただけである

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たのを確認し,その指形ポインタで先の[Data Slate]ウィンドウの2次元データ・ジオメトリの領

域をクリックすることでデータ取り込みする

近似計算式([Mode:])は,[Weighted Linear Inv. Recovery]を選択する

① [Pick]モード

[Pick]モードを使用する場

合は,サンプルのピークを

様々 マウスカーソルで抽出

して, ボタンをクリ

ックする(表示が に

変わる)ことにより[T1 = ]

の表示BOX内に回帰計算さ

れた計算結果の値を確認でき

なお,ウィンドウ下部のジ

オメトリに表示される緑の折

れ線が抽出したピークの実データであり,黒線が重み付け線形最小二乗法による回帰曲線(⇒

[Expression: ])である.

※ 定量測定などで設定する積算の待ち時間は,ここで回帰計算される様々なサンプルのピーク位置

でのT1値のうち最も長いものを採用するようにする(その値の3~5倍が待ち時間)

② [Peak]モード

[Peak]モードを使用する

場合は,あらかじめピークモ

ード でスレッショルドや

ノイズレベルなどを設定して,

ピーク検出 をすませてお

選択モード でT1を計算

すべきピークを複数選択して

おき(⇒ 色が青転),

ボタンをクリック操作するこ

とで,その操作毎にピークの

δ/ppm位置順にフィッティングされていく

←←←← このこのこのこの△△△△位置位置位置位置のピークのピークのピークのピーク

のののの TTTT1111

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(Ⅱ-2) Saturation Recovery(飽和回復法)概要

反転回復法では始めに180°パルスを用いるが,この方法では始めに飽和パルスを照射し磁化を

飽和させる(縦磁化を0にする). その後回復(回復時刻τ)してくる縦磁化を,続く90°パル

ス印加で信号強度として読み出し(連続測定),

Mz(τ) = M0{1-exp(-τ/T

1)}

にフィットすることでT1を決める.

反転回復法と違い,初期磁化としての熱平衡磁化が必要でないため,繰り返し時間を短く設定でき

るメリットがある

(Ⅱ-3) 測定手順

パ ル ス 系 列 は , 1H 観 測 の 場 合 ,

Global/relaxation/sat_recovery.jxp

設 定

・・・・ [auto_gain]: 使用しない

・・・・ [recvr_gain]: 1H測定時に確定し

た値から4を引いた値

・・・・ [scans]: 積算回数はデフォルトで

よい

・・・・ [x_pulse]: 自身のサンプルで測定

した90°パルス幅

・・・・ [relaxation_delay]: デフォルトで

よい

・・・・ [tau_interval]: 10点程度array入

力する

リストする時間の選び方は,(Ⅰ-3)と同

様の考え方でよい

(Ⅱ-4) 解析手順概要

(Ⅰ-4)同様,まず位相補正をする

[Data Slate] ウ ィ ン ド ウ で 表 示 さ せ な お し て ,

[Expansion]→[Linearize]でarray表示し,問題ないと確認

できたら,さらに,[Curve Analysis]ウィンドウで開き直

近 似 計 算 式 ([Mode:]) は , [Weighted Linear Sat.

Recovery]

τ

90°

飽和パルス

M0

τ

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なお,計算結果は[T1ρ = ]

と記載されるが,回帰曲線

([Expression: ])は同じ関

数形を使用しており,T1に置

き換えて考えて問題ない

2 横緩和時間(スピン-スピン緩和時間)T2

測定

(1) 横緩和時間T2

まさにFID信号そのものであり,感度を決める大きな要因である(短くなるにつれ,スペクトルの

ピーク線幅が広くなり,感度低下する)

低分子では長く,高分子では短い(T1のように中程度の分子量で極小値を持つということはなく,

単調減少). ただ,高分子でも内部運動が速いところでは長くなる例もある

一般的には,縦緩和よりも短い(T1 > T

2 あるいは T

1 ≫ T

2)

【スピン-スピン緩和】 各核スピンがラーモア歳差運動する過程でその位相を失っていく機構.

各スピンの歳差運動の位相が,近傍の各スピン(同じ分子中の他の核スピン等)どうしの互い

の磁場の不均一な揺れ(不均一性/揺動磁場)を感じあって,次第にコヒーレント状態からラ

ンダム状態に戻る過程である(各スピン間でラーモア歳差運動の回転速度に徐々にずれが生じ

ていき,各「スピン」の向きに広がりが生じて,その総ベクトル和である横「磁化」が減衰し

ていく)

(2) Car-Purcell-Meiboom-Gill 法 概要

① スピンエコー法(②で,n=1)

最初の90°パルスで横磁化をつくり,τの間に緩和させて,180°パルスで位相反転させ,スピ

ンエコーさせて,その際の信号強度を測る

信号強度 ∝ exp(-2τ/T2)

τ τ

M0

τ

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② CPMG法(①のn回繰返し)

τを短くして,分子の拡散が起きないうちに(磁場の均一性が低いと,分子の拡散によって一見緩

和のような現象を起こす),180°パルスで戻す

信号強度 ∝ f(n) = exp(-2τn/T2)

(3) 測定手順

パ ル ス 系 列 は , 1H 観 測 の 場 合 ,

Global/relaxation/cpmg.jxp

このパルス系列は,上述(2)-②のような

1回の測定でエコーを作るための180°パ

ルスと信号のサンプリングを交互に行うの

(エコートレイン中のシグナルをすべて観

測)ではなく,上述の n をarrayし連続測

定をかけるものである

設 定

・・・・ [auto_gain]: 使用しない

・・・・ [recvr_gain]: 1H測定時に確定した値から4を引いた値

・・・・ [scans]: 積算回数はデフォルトでよい

・・・・ [x_pulse]: 自身のサンプルで測定した90°パルス幅

・・・・ [relaxation_delay]: T1値の10倍程度以上の値

・・・・ [tau_step]: 通常はコチラの値を固定入力する

※ τは~0.1[ms]程度以上の値(180°パルス幅の数倍よりも短くしたりしない)

⇒ [tau_step]は~0.2[ms]程度以上の値

・・・・ [delay_list]: 通常はコチラの値をarray入力する(10点程度)

~2τn

τ τ

[loop_number] = [delay_list] / [tau_step] の関係にある

[tau_interval]:τ(表示値であり,設定値ではない)

[loop_number]:n(表示値) 最小値は2程度以上の値とする

[calc_delay]: = [delay_list](表示値)

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(4) 解析手順概要

信号強度 ∝ exp(-[delay_list]/T2)

近 似 計 算 式 ([Mode:]) は , [Weighted

Linear Spin Lock]

測定法は”Spin Lock”ではなくcpmgで

あるが,回帰曲線([Expression: ])は同じ

関数形を使用しており,問題ない

※ [Expression: ]で,t → [delay_list] に対

応している

3 スピン-格子緩和時間T1ρ

測定

(1) スピン-格子緩和時間T1ρ

スピンロックした磁化の緩和. T1は静磁場に平行な縦磁化の緩和時間であるのに対して,T

は照射磁場に平行な横磁化の緩和時間である

いいかえれば,実験室系でのスピン-格子緩和時間がT1なのに対して,回転系でのそれがT

1ρとな

(2) スピンロッキング概要

最初の90°パルス(90x)直後に,局所磁場よりも強度の大きい90°位相シフトした高周波(y)

を照射すると,磁化は照射磁場方向に固定される. スピンロックされた状態では,局所磁場による

横磁化のT2緩和は起こらず,照射磁場との擬熱平衡に向かって緩和する

スピンロックを時間τだけ行ったあとの横磁化の大きさを観測(連続測定)し,

信号強度 ∝ exp(-τ/T1ρ

)

にフィットすることでT

1ρを決める

y

τ

90°x M0

τ

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(3) 測定手順

パ ル ス 系 列 は , 1H 観 測 の 場 合 ,

Global/relaxation/spinlock.jxp

設 定

・・・・ [auto_gain]: 使用しない

・・・・ [recvr_gain]: 1H測定時に確定し

た値から4を引いた値

・・・・ [scans]: 積算回数はデフォルトで

よい

・・・・ [x_pulse]: 自身のサンプルで測定した90°パルス幅

・・・・ [relaxation_delay]: T1値の10倍程度以上の値

・・・・ [x_spinlock_time]: 10点程度array入力する

※ スピンロックの照射パワーが大きすぎたり,照射時間が長すぎたりすると,プローブやサンプル

が破損することがある. また,十分な[relaxation_delay]を取るようにする(上記)

(4) 解析手順概要

信号強度 ∝ exp(-[x_spinlock_time]/T1ρ

)

近似計算式([Mode:])は,[Weighted Linear Spin

Lock]

計算結果は[T2 = ]と記載されるが,回帰曲線

([Expression: ])は同じ関

数形を使用しており,T1ρ

に置

き換えて考えて問題ない

以上

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参 考 90度パルス幅の確認

1 シム調整

① サンプルに対して,通常の測定と同じように,グラジエントシム調整機構([Gradient Shim]

)をZ1~Z4に対して行う

② [Z1/Z2/Z3/Z4]のシムを手動でさらに調整

③ ロック信号(2H核)の強度値([Lock Meter])をそのときのロック・ゲイン値([Lock Gain])と

ともにメモ(または記憶)したのち,スピナーをOFFする ※ 何割くらい強度が落ちたか?

④ [Shim Groups]から,[Z1/Z2/X/Y]を選択し手動でシム調整

⑤ 同じく,その1つ下の[X/XZ/Y/YZ]も調整. なお,XZ,YZに調整を加えるので,それに伴い

Z1, Z2も交互に再調整を続ける

⑥ そのさらに1つ下の[X/X2/Y/Y2]も調整

⑦ 以上の4グループのシム調整で,スピナーを止める前

のロック信号の強度値の9割以上にまで回復するのを目

指す(最低8割)

2 1H核の仮測定

パ ル ス 系 列 は , Global/structure elucidation/

single_pulse.jxp を選択する

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【注意】 通常使う[proton.jxp]シーケンスでは,これから説明するarray測定(連続測定)で不

具合が起こる場合があると報告されている

① ゲイン値の調査

測定条件::::

[Header]タブ::::

[auto_gain] ✓

[force_tune] ✓

[Acquisition]タブ::::

[x_points] [x_resolution] が,0.2 [Hz] を切る最小の値(2の巾乗)

[scans] 1

測定中にウィンドウ上部右にある[Info]部に履歴表示される確定し

たレシーバ・ゲイン値([Gain Value])をメモ(または記憶)しておく

② シム調整具合の確認

測定が終了すると,[1D Processor]ウィンドウが立ち上がるので,内部基準(TMS等)や溶

媒の既知のピークなどを見て,シム調整が適切かどうか確認する(調整不足なら再調整)

③ 位相調整

プロセス・リスト中に[machinephase]があれば,それを選択して削除 し,代わりに

[AutoPhase]アイコン をクリックして,必要があればさらに手動で位相を微調整した後,プ

ロセス実行ボタン をクリックする

【参考】 [Machine Phase]は,スペクトルのピークの線形によらず,測定条件に基づいた計算

だけから位相を求めているため,これから実施しようとしているarray測定をサポートし

ていない

⇒⇒⇒⇒

【注意】 この[1D Processor]ウィンドウはあとで使うので閉じない こと

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3 1H核の90°パルス幅の確認

右図で,信号強度が正にもっとも大きい(核磁

化を真横に倒す)パルス幅で照射するのが90°パ

ルスだが,実際のパルス幅の確認では,変化に乏

しく(=1階微分係数(傾き)が小さい)正確な

値を判断しにくい90°パルスではなく,その前後

での変化が大きく正確な値を判断しやすい360°

パルス(null point)のパルス幅の値を確認する ⇒

その値に割り算(÷4)して90°パルスを求める

【参考】 同じ”null”でも,核磁化が熱平衡状態に対して反転していて縦緩和の待ち時間を考慮

しないといけない180°パルスより,核磁化が1回転する360°パルス付近をarray測定

した方が,待ち時間の設定を短くできるメリットがある

① 測定条件(先の測定との相違点)

[Header]タブ:::: [auto_gain] ✓をはずす

⇒ はずさないとアラーム発報し,エラーになる(array スキャンごとにゲ

イン値が変わると,スキャンごとの信号強度を比較することに意味をなさ

なくなるから)

[force_tune] ✓をはずす

⇒ 先の仮測定でこのサンプルに対する1H核のチューニングは済んでいる

[Instrument]タブ:::: [recvr_gain] 2-①でメモ(記憶)しておいたレシーバ・ゲイン値(標

準サンプルの45°パルスのときの値)から4を引いた値

を入力する

[Pulse]タブ:::: [x_angle] 45[deg] ⇒ 90[deg]に変更

[x_90_width]リンクをクリックし,あらたに

立ち上がる[Set x_90_width]ダイアログ

BOXで,Array Type の[Listed]の✓✓✓✓をは

ずし,新たに出現するグループBOXの選択

肢から[Linear]を選択●する

続いて,Start,Stop,Stepに360°パ

ルス幅を狙った値を入力し(10点程度になるように),Set Valueボタンをク

リックする ⇒ [x_90_width]入力BOXに,数値ではなく関数が入力される

⇒⇒⇒⇒ ⇒⇒⇒⇒

90° 180 270 360°

この例では,後の参考のため

に,非常に広い範囲の値と粗

い Step を入力している

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- 13 -

② アレイ測定開始( ▶▶▶▶ Submit Job ボタンをクリックする)

③ 位相設定

測定終了後に[nD Processor]ウィンドウが立ち上がるので,このX軸プロセスリストに,2-

③で位相を合わせておいた[1D Processor]ウィンドウのプロセスリストを右クリックによりド

ラッグ&ドロップしてコピーする ⇒ この操作により,プロセスリストが上書きされる

([Machine Phase]が,位相設定値で置き換わる)

④ 360°パルス幅の確認 ⇒ 90°パルス幅の求値

実行ボタン をクリックして2次元表示にする

※ X軸側は,1H用標準プロセスリストが適用されているのでスペクトル(ppm)であり,Y軸側は

何らプロセス処理が適用されていないので,単に[x_90_width]の値で並べただけである. こ

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れを等高線表示(右図では,黒が正/赤が負)

している

次に,[Data Slate]ウィンドウボタン をク

リックし,それ上にデータを表示させ直す

※ メニューバーで[Expansion]→[Linearize]

を選択すると,ウィンドウ下部に別ジオメト

リで,スペクトルがarray表示される(サン

プルのδ/ppm付近を拡大 しておくとよ

い)

ポ イ ン タ バ ー の

[Pick]ポインタ を使

って360°パルス幅を

判断し(null point),

その値を4で除すこと

で90°パルス幅を求め

【注意】溶媒や基準物

質などのピークで

null point を判断し

ない

以上