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平成22年9月21日発行
No.283秋田県総合教育センター支援班児童生徒支援グループTEL018(873)7205
「いじめは、どの学校にも、どの学級にも、どの子どもにも起こりうる」
北教育事務所 指導主事 松尾 弘
いじめが絡んだ大変痛ましい事件が度々報道されている。岐阜県では、中学1年生の女子生徒が同じ学校の2年生の女子生徒や男子生徒合わせて5人に、椅子に縛り付けられて服を脱がされ、裸を動画撮影されるなどのいじめを受け、その画像は他の生徒にもメール送信されていた。川崎市では「いじめられた友人を救えなかった」と遺書を残し、自身もいじめられていた中学3年生の男子生徒が自殺する事件があった。卑劣ないじめという行為は、時にはかけがえのない命までも奪ってしまう。
文部科学省の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」が毎年度末に実施されているが、その集計をしているといつも気になることがある。それは、いじめの認知件数には学校、あるいは市町村によって大きな格差があり、特に、件数は“0”と回答している学校がとても多いことである。各校におけるいじめの認知件数は果たして信憑性のある数字なのだろうかと疑問を抱いてしまう。蛇足になるが、この調査によるいじめの定義は、平成18年度に「一定の人間関係のある者から、心理的・物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」と変更されている。これはいじめられた子どもの立場に立って、いじめを認知しやすいようにしたためである。いじめがない、あるいは少ないに越したことはないが、学校として努力すべきことは、いじめの事実をしっかり把握し、一刻も早く被害に遭っている子どもを救うことである。
さて、国立教育政策研究所生徒指導研究センターから、昨年は『生徒指導支援資料 いじめを理解する』、今年は『生徒指導支援資料2 いじめを予防する』が各校に配布されているが、活用が図られているだろうか。まだの学校は是非活用してほしい。まずは『いじめを理解する』の自己点検シートを使い、教職員一人一人がいじめに対する認識を自己点検することから始める。その後、話合いを通して教職員全員が共通の認識をもち、共通の目線でいじめの問題に取り組んでいく体制を構築する。さらに、『いじめを予防する』の中の「問題事象の未然防止に向けた生徒指導の取り組み方」を使って、未然防止に焦点を当てた取り組みを充実させていくというものである。
この資料には、いじめ追跡調査の結果として、小学4年生から中学3年生までの6年間に、加害と被害を含めていじめと無関係でいられる子どもは1割しかいないと報告されている。「いじめは、どの学校にも、どの学級にも、どの子どもにも起こりうる」ことを肝に銘じるとともに、事後的に対応するという発想から、いじめが起きにくい学級や学校をつくるという未然防止に向かう必要があること、さらに、個別の子どもを念頭において教育を行うだけではなく、全体に対する働き掛けを中心にしていく必要があることが強調されている。それは、その時点でいじめに巻き込まれている子どもだけを問題と考えるのではなく、どの子どももいじめに巻き込まれる可能性があり、今は関係なくともいずれは巻き込まれる、と危機感をもって教育を行うことが本当の意味での未然防止につながるからである。
改めて自分の学校、学級の子どもを見つめ直したとき、見過ごしてしまっているいじめはないだろうか?
・Eメール相談:[email protected] ・電話相談と来所申込み:018(873)7206・児童生徒支援グループホームページ: http://www.akita-c.ed.jp/~cjid/・「生徒指導だより」の回覧,または増刷しての配布をお願いします。
積 極 的 な 生 徒 指 導 の 推 進 を~子どもの自己有用感の醸成を通して~
中央教育事務所 指導主事 田口 武美
生徒指導は,問題行動等への対応だけでなく,子ども一人一人の人格のより良き発達を目指すものです。すべての子どもの学校生活が有意義で,充実したものになるためには,子どもの自己有用感を醸成するなど,積極的な生徒指導を推進することが大切です。
「自己有用感」とは,「人の役に立ててよかった」「必要とされていると感じた」「大変だったけど楽しかった」など,他者とのかかわりの中で自らが感じ取る肯定的な感覚です。子どもが自己有用感を獲得すると,少々面倒だったり大変だったりしても,自ら進んで他者や社会とかかわろうとする,他者に対する配慮や集団に対する責任感をもち,きまりを守って行動しようとするなどの姿となって表れます。
子どもの自己有用感を醸成するためには,授業や諸活動において,子どもが活躍したり他者から認められたりする場や機会を意図的に設定し,全教職員が子ども一人一人に適切にかかわることなどが必要です。次に挙げる場や機会の設定例を参考にして,自己有用感の醸成の一層の充実を目指すことが大切です。(1) 授業や学級の係活動等で
・多様な考えに触れながら,新たな見方や考え方に気付いたり,新たな知識を獲得したりする学習活動や人の役に立っていることを実感できる係活動や当番活動 など
(2) 異学年交流で・全校縦割り班による遠足,運動会等の学校行事での下級生のお世話をする場面や下
級生が上級生に「あこがれ」の気持ちを抱くことができる,修学旅行や職場体験等の体験発表会 など
(3) 校種間の異年齢交流で・小学6年生からの質問に中学生が答えたり,小学生が中学生と一緒に部活動を体験
したりする中学校体験入学や小・中合同体育祭での縦割りチーム活動 など(4) 地域における体験活動で
・幼稚園や保育所などで年少者のお世話をしたり,地域の企業等で働く人と共に活動したりする職場体験や町内や老人福祉施設などで,自分のできることを実践しながら年長者と触れ合う奉仕体験活動 など
「お母さん 大丈夫(ノープロブレム)!」の相談情報が新しくなりました
不登校児童生徒の対応として出されていた「お母さん 大丈夫(ノープロブレム)!」が一部,改訂されました。センターのホームページ,児童生徒支援グループのサイトからダウンロードできます。不登校児童生徒の対応で苦慮している保護者や先生方の一助になれば幸いです。ご活用ください。
公開講演のお知らせ
※聴講を希望される方は,センターホームページから「公開講演聴講申込書」をダウンロードし,申し込んでください。多数の参加をお待ちしております。
「心を育てる生徒指導 教師のメンタルヘルス」
講師 明治大学文学部 教授 諸富 祥彦 氏日時 平成22年9月28日(火) 14:45~16:15場所 秋田県総合教育センター講堂