4
30 30 30 24 11 14 42 29 49 Quality Indicator Key Performance Indicator NPO法人TMAT(徳洲会医療救援隊)は昨年 4月に発生した熊本地震で、熊本県御船町で の医療救護活動に大きく貢献したとして藤木正 幸・御船町長から感謝状を受けた。都内の TMAT事務局に藤木町長自ら持参し、福島安義 TMAT理事長、鈴木隆夫・一般社団法人徳洲会 理事長に直接手渡した。 藤木町長名が記された感謝状以外に、同町 健康づくり支援課職員一同による熊本弁で綴られた感謝状、 さらに地元の地域包括支援センター職員や保健師らによる 寄せ書きも贈られた。藤木町長は事務局で約1時間、福島 理事長、鈴木理事長、野口幸洋TMAT事務局員と面談。震 災当時の様子を振り返りながらあらためてTMATに謝意を 示すとともに、町を挙げて復興に取り組んでいることを説 明した。福島理事長らは一日も早い復興を願うと同時に、 今後も国内外で災害が起こった際に医療支援活動を継続し ていく意向を伝えた。 TMATは熊本地震発災直後から支援体制を構築。 13日間で延べ125人(医師19人、看護師53人、薬 剤師9人、その他44人)の隊員が御船町、南阿蘇村、 熊本市南区の3地区で約1,700人を診療した。 湘南厚木病院、茅ヶ崎病院はそれぞれ EMIS 入 力訓練に参加(写真は茅ヶ崎病院) 右から鈴木理事長、藤木町長、福島理事長、野口・事務局員 (上)健康づくり支援課職員 から贈られた感謝状は熊本弁。 趣旨は「あなた方は熊本地震 の際に私たちの町の医療救護 活動で精力的に取り組んでい ただきました。すぐに来てい ただいた時は、神様が来ら れたように思いました。そして、必要な時を見極め、 さっと帰られた姿勢は本当に素晴らしかったと思います。また、『保健師さん休 んでください』との言葉をいただいた時は涙が出るくらい嬉しかったです。この 感謝状を贈って心からの感謝の意を表します」。(下)寄せ書きには、感謝の気 持ちを綴ったメッセージと TMAT 隊員らとの写真 地域災害拠点病院 白根徳洲会病院 ( 山梨県 ) 宇治徳洲会病院(京都府) 福岡徳洲会病院 岸和田徳洲会病院(大阪府) 中部徳洲会病院(沖縄県) 神奈川県災害協力病院 湘南鎌倉総合病院 湘南藤沢徳洲会病院 湘南厚木病院 茅ヶ崎徳洲会病院 徳洲会グループの地域災害 拠点病院と神奈川県災害協 力病院 29 病院名 所在地 札幌東徳洲会病院 北海道 湘南鎌倉総合病院 神奈川県 葉山ハートセンター 湘南藤沢徳洲会病院 南部徳洲会病院 沖縄県 中部徳洲会病院 JCI 認証取得済みの徳洲会 グループ病院 県災害協力病院に指定 徳洲会グループで計4病院 湘南厚木病院と茅ヶ崎徳洲会病院 JCI審査 命だけは平等だ 平成 29 7 31日 月曜日│ No. 1093 月曜日 7 31発行:一般社団法人徳洲会 〒102-0083 東京都千代田区麹町3-1-1 麹町311ビル8階 TEL:03-3262-3133 制作:一般社団法人徳洲会 編集室 〒102-0083 東京都千代田区麹町3-1-1 麹町311ビル8階 TEL:03-6272-3687 FAX:03-3263-8125  Email:news@tokushukai.jp No. 1093 31/JUL. 2017 ALL LIVING BEINGS ARE CREATED EQUAL

NPO法人TMAT 県災害協力病院に指定 · 災害拠点病院に準じる設備・機能をもち、被災者指定を受けた。同協力病院は県内の災害医療体制の充実を図るため、2014年湘南厚木病院(神奈川県)と茅ヶ崎徳洲会病院(同)は神奈川県災害協力病院の

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Page 1: NPO法人TMAT 県災害協力病院に指定 · 災害拠点病院に準じる設備・機能をもち、被災者指定を受けた。同協力病院は県内の災害医療体制の充実を図るため、2014年湘南厚木病院(神奈川県)と茅ヶ崎徳洲会病院(同)は神奈川県災害協力病院の

院は5月に実施されたE

MIS入力訓練に参加。

訓練に参加しEMIS入

力に携わった総務課の鳥

尾進朗職員は「入力項目

が多岐にわたりますので、

訓練を通じて操作に慣れ

ておくことは大切だと感

じました。今後は地域災

害拠点病院の茅ヶ崎市立

病院をはじめ地域の医療

機関との合同訓練にも取

り組んでいきたい」と意

気込む。

茅ヶ崎病院では徒歩や

自転車などで30分以内に

出勤可能な職員30人が、

EMISの入力方法を習

得している。

なお、徳洲会グループ

では5病院が地域災害拠

点病院の指定を受けてい

るほか、大規模災害の発

生時には国内外の被災地

で、職員がTMAT(徳

洲会医療救援隊)隊員と

して活動するなど災害医

療に力を入れている。

茅ヶ崎病院は海岸線から

直線で1・5㎞に立地し、

同院のすぐ北側をJRの

線路が走っている。南北

を海と線路にはさまれた

場所にあり、線路から海

側の市内救急告示病院は

同院のみ。津波による被

害に加え、クラスター(延

焼)火災の懸念がある地

域でもあり、災害拠点病

院など地域の関係機関と

の連携が重要だ。

こうしたなか茅ヶ崎病

のはEMIS(広域災害

救急医療情報システム)

による円滑な情報伝達を

目的とした訓練だ。厚木

市や海老名市、大和市、

綾瀬市など県央地区にあ

りEMISに登録してい

る医療機関や市町村など

が参加した。

資材課の髙橋宏充係長

は「訓練ではマグニチュ

ード8・2の地震を想定

し、自院の被災状況や受

け入れ可能な患者数など

情報を入力しました」と

説明する。

30分以内の職員は修得

茅ヶ崎病院の山本隆之

事務長は「当院のある茅

ヶ崎市は約24万人の人口

を抱えていますが、地域

災害拠点病院が1病院

(茅ヶ崎市立病院)ある

だけで、これまで災害協

力病院はありませんでし

た。地域の災害医療体制

の充実のため、当院は指

定を受けることにしまし

た」と指定の背景を話す。

に位置付けられるなど、

地域の災害医療活動を担

う主要病院のひとつ。

「当院は地元のお祭りで

救護班を積極的に担当す

るなど、地域貢献を大切

にしています。県の災害

協力病院の指定を受ける

ことで院内の意識付けを

図り、地域災害拠点病院

(厚木市立病院)を中心

とする地域の災害医療体

制に協力していきたい」

(坪井敬治・総務課課長)

指定後、湘南厚木病院

は7月11日、県からの参

14年3月にスタート

した制度で、これまでに

42病院が指定。湘南厚木

病院と茅ヶ崎病院を含め

7病院が3月29日に新た

に指定を受け計49病院に

増加した。徳洲会グルー

プでは計4病院に増えた。

湘南厚木病院は以前か

ら「厚木市地域防災計画」

のなかで、被災地などか

ら搬送される重・中症者

を受け入れ、医療救護所

を支援する後方医療機関

災害協力病院は、耐震

性能や自家発電などに関

して災害拠点病院に準じ

る設備・機能を有し、災

害発生時に同拠点病院を

バックアップしたり連携

したりして傷病者の受け

入れや診療などを行うの

が役割。県が定めた指定

要件を満たすことで、県

知事から同協力病院とし

て指定を受ける。

湘南厚木病院(神奈川県)と茅ヶ崎徳洲会病院(同)は神奈川県災害協力病院の

指定を受けた。同協力病院は県内の災害医療体制の充実を図るため、2014年

3月に神奈川県が始めた制度。災害拠点病院に準じる設備・機能をもち、被災者

の救護活動を行うのが役割だ。徳洲会グループでは湘南鎌倉総合病院(同)、湘南

藤沢徳洲会病院(同)がすでに指定を受けており、計4病院に拡大。地域の災害

医療の充実・強化に一層貢献していく考えだ。

徳洲会グループは2日

にわたり湘南鎌倉総合病

院(神奈川県)で、JC

I(国際的な医療機能評

価)審査方法のバージョ

ンアップにともなうアッ

プデートミーティングを

開催した。認証取得済み

の6病院(表)と認証取

得を検討している4病院

から100人以上が参加

した。ミーティングでは

JCI本部から招

しょう

聘へい

した

コンサルタントが、新た

に加わった審査項目を中

心に、更新したバージョ

ンのポイントを解説。

具体的には、①患者ケ

ア(患者さん特有のアセ

スメント項目を定め、個

別のニーズに基づく治

療・ケアの計画立案)、

②外来患者の転倒防止対

策(外来患者さんも転倒

リスクを評価し介入を行

う)、③品質改善手法(病

院の戦略達成に向けたQ

I〈Quality Indicator

医療の質の指標〉やKP

I〈K

ey Performance

Indicator

=主要業績評価

指標〉の策定)、④世界

的に流行している感染対

策(世界で蔓延している

スーパー耐性菌への対策、

その他エボラ出血熱やS

ARSといった流行性疾

患対策など)、⑤電子カ

ルテシャットダウン時の

対応やカルテ記載時の医

療従事者によるコピー&

ペーストの対策(誤った

内容を一度コピーすると、

永続的に誤った内容が利

用され続けるリスクがあ

るため、一定のルールを

設ける)――など。

参加者からは「複数の

グループ病院が病院運営

や患者さんのケアについ

て“共通の言語(指標)”

で話せるようになり、さ

まざまなことが標準化で

きます。他病院の良い取

り組みを導入するための

仕組みづくりに向け絶好

の機会となりました」と

いった声が聞かれた。

TQM(徳洲会/トー

タルクオリティーマネジ

メント)プロジェクト事

務局や湘南鎌倉病院のJ

CI

プロジェクトコー

ディネーターを務める同

院の海老澤健太・国際医

療支援室係長は「今後、

認定更新を行う病院が増

えてくるため、JCIと

いうツールをより本質的

に理解し、安全で強固な

組織づくりに取り組んで

いきたいと考えています。

グループ全体の医療安全

や質の向上を目指してい

きたい」。新バージョン

は7月から適用。

NPO法人TMAT(徳洲会医療救援隊)は昨年4月に発生した熊本地震で、熊本県御船町での医療救護活動に大きく貢献したとして藤木正幸・御船町長から感謝状を受けた。都内のTMAT事務局に藤木町長自ら持参し、福島安義TMAT理事長、鈴木隆夫・一般社団法人徳洲会理事長に直接手渡した。藤木町長名が記された感謝状以外に、同町健康づくり支援課職員一同による熊本弁で綴られた感謝状、さらに地元の地域包括支援センター職員や保健師らによる寄せ書きも贈られた。藤木町長は事務局で約1時間、福島理事長、鈴木理事長、野口幸洋TMAT事務局員と面談。震災当時の様子を振り返りながらあらためてTMATに謝意を示すとともに、町を挙げて復興に取り組んでいることを説明した。福島理事長らは一日も早い復興を願うと同時に、今後も国内外で災害が起こった際に医療支援活動を継続していく意向を伝えた。

TMATは熊本地震発災直後から支援体制を構築。13日間で延べ125人(医師19人、看護師53人、薬剤師9人、その他44人)の隊員が御船町、南阿蘇村、熊本市南区の3地区で約1,700人を診療した。

湘南厚木病院、茅ヶ崎病院はそれぞれEMIS入力訓練に参加(写真は茅ヶ崎病院)

右から鈴木理事長、藤木町長、福島理事長、野口・事務局員

(上)健康づくり支援課職員から贈られた感謝状は熊本弁。趣旨は「あなた方は熊本地震の際に私たちの町の医療救護活動で精力的に取り組んでいただきました。すぐに来ていただいた時は、神様が来ら

れたように思いました。そして、必要な時を見極め、さっと帰られた姿勢は本当に素晴らしかったと思います。また、『保健師さん休んでください』との言葉をいただいた時は涙が出るくらい嬉しかったです。この感謝状を贈って心からの感謝の意を表します」。(下)寄せ書きには、感謝の気持ちを綴ったメッセージとTMAT隊員らとの写真

地元の保健師ら寄せ書きも

熊本地震での医療救護活動

御船町長から感謝状

NPO法人TMAT

EMIS入力訓練へ参加

地域災害拠点病院白根徳洲会病院 ( 山梨県 )宇治徳洲会病院(京都府)福岡徳洲会病院岸和田徳洲会病院(大阪府)中部徳洲会病院(沖縄県)

神奈川県災害協力病院湘南鎌倉総合病院湘南藤沢徳洲会病院湘南厚木病院茅ヶ崎徳洲会病院

徳洲会グループの地域災害拠点病院と神奈川県災害協力病院

加依頼を受け

「県央地域災害

医療対策会議の

平成29年度災害

時医療情報伝達

訓練」に初参加。

今回実施した

病院名 所在地札幌東徳洲会病院 北海道湘南鎌倉総合病院

神奈川県葉山ハートセンター湘南藤沢徳洲会病院南部徳洲会病院

沖縄県中部徳洲会病院

表 JCI 認証取得済みの徳洲会グループ病院

県災害協力病院に指定徳洲会グループで計4病院

湘南厚木病院と茅ヶ崎徳洲会病院

アップデート

ミーティング

徳洲会グループ

新バージョン学ぶ

JCI審査

徳 洲 新 聞徳 洲 新 聞 生い の ち

命だけは平等だ❶ 平成 29 年 7月31日 月曜日 │ No.1093

月 曜 日7月31日

発行:一般社団法人徳洲会  〒102-0083 東京都千代田区麹町3-1-1 麹町311ビル8階  TEL:03-3262-3133制作:一般社団法人徳洲会 編集室  〒102-0083 東京都千代田区麹町3-1-1 麹町311ビル8階 TEL:03-6272-3687 FAX:03-3263-8125  Email:[email protected]

No.109331/JUL. 2017

ALL LIVING

BEINGS ARE CREATED EQUAL

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健康友の会が交流 バスツアーに117人名古屋徳洲会総合病院

副看護部長研修は9領

域にわたる講義と実習の

後、面接を実施。翌年、

合格者に修了証を授与す

る。第1クールの講義を

7月6日から3日間、都

内で行った。

一般社団法人徳洲会看

護部門の佐々木和子部長

の開会挨拶に続き、遊佐

千鶴・常務理事が登壇。

「皆さんは徳洲会の看板

を背負い、期待されてこ

こに集まっています。期

待に沿えるよう頑張って

ください」と激励し、「人

材育成①」をテーマに講

義。理念に基づく人材育

成や経営の大切さなどを

強調した。

このあと鈴木隆夫理事

長が「徳洲会が目指す医

療と経営」と題し講義。

徳洲会草創期の苦労話を

交えグループ発展の歴史

を概説。医療の質の考え

方などをレクチャーし、

「理念実践のため真し

摯し

取り組んできたからこそ

今日の徳洲会があるので

す」と語りかけた。初日

最後は福島安義・副理事

長が「医療安全」をテー

マに講義した。

2日目以降、安富祖久

明・副理事長が「徳洲会

の原点」と題し講義をし

たほか、「徳洲会看護部

の方針・目標」、「診療情

報・情報管理」、「財務管

理」、「看護倫理」、「看護

管理の実際」などをテー

マに担当者がそれぞれ講

師に立った。

回参加者が集まり、リピ

ーターも少なくない。参

加者からは「リフレッシ

ュできました」、「ふだん

動かさない関節や筋肉を

動かしてスッキリしまし

た」など好評だ。

笠原助産師は「マタニ

ティ・ヨガは深い呼吸を

しながら、おなかの赤ち

ゃんと対話するとても

“優しい時間”です。医

師の許可を受けた方のみ

を対象とし、助産師の視

点で安全に留意して行い

ますので、安心してご参

加ください」とアピール

している。

変適していると感じまし

た。助産師の知識や経験

を生かしたレッスンがで

きると思い、インストラ

クターの資格を10年に取

得しました」と話す。

参加費は500円で、

同院で妊婦健診を受けて

いる妊婦さんは無料。毎

共愛会病院(北海道)

は妊娠15週以降の妊婦さ

んを対象にマタニティ・

ヨガを開催している。ヨ

ガは、ゆったりとした呼

吸やさまざまな姿勢の組

み合わせにより、心身の

緊張を緩和。自律神経の

バランスが整えられ、妊

娠期に表れやすい不安定

な気持ちを静めたり、分ぶ

娩べん

時に役立つ呼吸法など

が身に付いたりする。

開催は毎月第3金曜日

の午後1時30分から1時

間。開始は2016年9

月で、講師は同院の笠原

視砂子助産師が務めてい

る。全国でヨガ教室など

を運営するスタジオ・ヨ

ギーの公認マタニティヨ

ガインストラクターでも

ある。

「趣味で始めたヨガをと

おして、深い呼吸でリラ

ックスし気持ちを整える

ことが、妊婦さんには大

一般社団法人徳洲会看護部門は今年度の副看護部長

研修を開始した。看護管理者に必要な知識や心構え

を身に付けたり、徳洲会の理念や原点を再確認する

ことなどが狙い。聴講生4人を含む22人が参加した。

り遂げるという信念が、若者を

引き付け、北米型救急医療を日

本に普及させたのです。

「患者さんのための医療」とい

う信念に、誰よりも熱心に取り

組む姿勢があるからこそ、仲間

たちを呼び寄せることができま

した。今後も徳洲会は変わり者

の彼らを理解し、寛容し、後押

しし続ける組織でありたいので

す。徳洲会にとって「異端者」

とは、同時に真の「挑戦者」で

もあるからです。

まさに青木は人生を前向きに

生ききった挑戦者でもあった

今年5月に45歳で亡くなった

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)

の青木豪た

志し

・前事務部長も、自

分の夢に人生をかけた一人でし

た。彼は同院を日本一、アジア

一の病院にする夢をもって、す

べての業務に対し真し

摯し

な態度で、

いつも打開策を模索していまし

た。がんセンターをはじめ先進

医療センター、外傷センターも

彼の夢でした。しかし10年前、

病魔が彼を襲います。小腸に悪

性腫瘍が見つかった後、何度も

手術を受けたものの、がんは広

がり、全身転移と闘いながら業

務を続けました。私たちに想像

もできない痛みに耐えながら、

弱音を吐くことなく、夢の舞台

から決して降りることをしませ

んでした。彼はまさに人生を前

向きに生ききりました。彼には

夢だけが、一瞬でも病の不安や

苦痛を忘れさせるものでした。

彼の心の中にある日本一の病

院の姿、最高の経営力をもった

病院の姿を、愛する家族に「『こ

れが、お父さんのつくった病院

NASA(米航空宇宙局)の

「アポロ計画」により1969年、

アームストロング船長が人類で

初めて月面に足跡を残しました。

その三十数年前、カリフォル

ニア工科大学(Caltech

)で、ロ

ケットが大好きな学生たち、宇

宙に憧れたいわばオタクたちが、

密かにロケット燃料を開発して

いました。度重なる実験と失敗

を繰り返す彼らは、仲間内で「決

死隊」と揶や

ゆ揄され、学生の間で

も有名でした。ある時、実験中

に爆発事故が発生。大学側はこ

れを処罰しなかったばかりか山

中に研究施設をつくり、彼らが

思う存分、研究できるよう粋な

計らいをしたのです。これが後

にジェット推進研究所(JPL)

となり、その後、NASAの母

体となったのです。

夢の実現に取り組む学生の失

敗を寛容に受け止め、後押しす

る理解者がいたからこそ、新た

な技術を世界に先駆けて発展さ

せることができたのです。JP

L初代施設長は学生たちを擁護

した教授であり、2代目は失敗

を重ねた学生のひとりでした。

世の中を変えるのはいつも「変

人たち」です。ずば抜けた集中

力をもち、異常な執念を燃やし

目的に向かう「挑戦者」と言っ

てもいいでしょう。彼らは一様

に一匹狼的で、わがまま、気難

しい跳ねっ返りたちです。官僚

的組織のなかでは、それを嫌う

リーダーは少なくありません。

ところが徳洲会は、そうした組

織とは大きく異なります。

 

44年前、医療界の常識にとら

われず、「生命だけは平等だ」

という理念と、24時間救急をや

だ』と見せたい」と、命が燃え

尽きる直前、間に合わないと知

りながら私に話してくれました。

彼が亡くなる1週間前に仲間

に残したメールに「本当に湘鎌

および患者さんのために尽くし

てきて良かったと思う。湘鎌を

通して、地域に貢献する日本一

の病院・組織をつくることのど

真ん中にいられ、仕事ができた

ことを誇りに思うよ。仕事、や

りがいを取り上げられた俺の無

念は、お前たちが少しでも晴ら

してくれな……」。彼の思いは

職員たちに受け継がれています。

夢追い人の青木は挑戦者を育む

上司でもありました。

世界一の病院にする夢こそ

私たちの最大の力の根源に

〈キリマンジャロ(5895m)

は氷河に覆われた山で、アフリ

カの最高峰と言われている。そ

の西の山頂はマサイ語で“ヌガ

イエ・ヌガイ(神の家)”と呼

ばれているが、その近くに、干

からびて凍りついた一頭の豹の

屍が横たわっている。それほど

高いところで、豹が何を求めて

いたのか、説明しえた者は一人

もいない〉(ヘミングウェイ著

『キリマンジャロの雪』)

私は豹の屍に青木の姿が重な

ります。頂上(神の家)の手前

で倒れた豹。青木もまた、湘南

鎌倉病院を世界一の病院にする

夢半ばで力尽きましたが、夢こ

そが私たちの最大の力の根源で

す。私は若い人に、いつも呼び

かけます。「チャンスがあった

ら一歩でも高みに登りなさい」

と。見える世界が変わり広がる

からです。皆で頑張りましょう。

名古屋徳洲会総合病院の「健康友の会」は6月24日、日帰り温泉バスツアーを開催。バス2台で総勢117人が参加した。今年の目的地は下呂温泉の山形屋(岐阜県)。露天風呂でのんびりし

た後は、全員そろって昼食会。病院スタッフと健康友の会の役員が登壇して挨拶し、食事を楽しみながら親睦を深めた。その後は飛騨川に沿った道をバスで走り、自然豊かな景色を堪能。「道の駅美濃白川ピアチェーレ」などに立ち寄って、お土産を買い、充実した1日を過ごした。同会は病院が立地する地域の方々が、安心・安全に暮らせる医療・

福祉に貢献することを目的に設立した住民参加の組織。季節ごとにさまざまなイベントを行い、好評を博している。今後は8月に介護施設などの見学、10月に秋の歩け歩け大会を予定。総勢117人が参加し楽しいバスツアーを満喫

聴講生を含め計22人が参加

リピーターが出るなど好評なマタニティ・ヨガ(中央が笠原助産師)

「若者よ、チャンスがあれば1歩でも高みへ」

徳洲会にとり“異端者”は真の“挑戦者”「患者さんのための医療」に引き付けられ

次世代育成で22人研鑽

インスト

ラクター

共愛会病院の助産師

副看護部長の研修

マタニティ・ヨガ好評

徳 洲 会看護部門

鈴す ず

木き

隆た か

夫お

一般社団法人徳洲会理事長

徳 洲 新 聞生い の ち

命だけは平等だ 平成 29 年 7月31日 月曜日 │ No.1093 ❷

Page 3: NPO法人TMAT 県災害協力病院に指定 · 災害拠点病院に準じる設備・機能をもち、被災者指定を受けた。同協力病院は県内の災害医療体制の充実を図るため、2014年湘南厚木病院(神奈川県)と茅ヶ崎徳洲会病院(同)は神奈川県災害協力病院の

MEPモニタリングを実

施。術前に麻痺のある患

者さんでも、術中MEP

モニタリングが有効とな

る可能性を示唆した。

緊張型頭痛と頚椎変性

「Cervical degenerative index for the evaluation of tension type head-ache

」(緊張型頭痛患者

さんにおける頚椎変性度

合いの評価)。自院の症

例を対象に、頚部の筋肉

の圧痛を確認したり頚椎

のアライメント(並び)な

術中MEPモニタリング

「Intraoperative motor-

evoked potential (MEP)

monitoring during spi-

nal surgery in patients w

ith less than MM

T 2/5 preoperative m

otor pal-sy

」(術前に徒手筋力テ

スト〈MMT〉5分の2

以下の運動麻ま

痺ひ

が見られ

た患者さんに対する脊髄

手術中の運動誘発電位

〈MEP〉モニタリング)。

MMT5分の2の患者さ

ん26人を対象に、術中の

頚椎前方再手術の要諦

「頚椎前方除圧手術後、

隣接椎間病変に対する頚

椎前方除圧再手術のコ

ツ」。5年間で行った頚

椎前方除圧手術78例のう

ち、術後に隣接する椎間

に病変を来し、頚椎前方

再手術を実施した4例を

報告。

再手術時の動画を供覧

しながら、食道損傷など

の合併症を防ぎ、通常の

頚椎前方除圧術として手

術ができるポイントを解

説した。

術の実績を紹介し、短時

間かつ低侵襲で治療しう

る有用性を訴えた。

SAHの原因として鑑別

「頭蓋頚椎移行部動静脈

瘻ろう

の5例」。頭蓋頚椎移

行部動静脈瘻は頭部と首

injury

」(頭蓋頚椎後部の

治療戦略)。頭蓋頚椎後

部の異常は見逃しやすく、

かつ術式も多岐に分かれ

る。106例の外傷のな

かで37例に手術を行い、

全例で骨の融合に成功し

たことを報告。的確な骨

折のタイプの診断と適切

な外科治療の重要性を強

調した。

一般演題でも「骨粗鬆

症性椎体骨折に対する経

皮スクリューを用いた多

椎間固定術」と題し発表。

骨が脆弱なため難しいと

される骨こ

粗そ

鬆しょう

症しょう

性椎つ

体たい

折の手術で、経皮スクリ

ューを用いた多た

椎つい

間かん

固定

BDHQとは、食品や栄養素の摂取状況を詳細に調べるための質問票を中心としたシステム。質問票を用い、まず牛乳や鶏肉など食材、揚げ物や炒め物など料理といった70以上の項目の摂取頻度を答えてもらい、最近1カ月の食習慣を明らかにする。高齢の方は自分で記入するのが大変であるため、外来で管理栄養士がマンツーマンでヒアリング。質問票を分析センターに送付すると、1週間ほどで分析結果が返送される。分析結果には30種以上の栄養素の摂取量が算出され、高血圧、脂質異常症、肥満それぞれに対して平均的な日本人の摂取量との比較やアドバイスなどを記載。同院は10人前後の被験者を集めて、分析結果をもとに集団栄養指導を実施し、具体的にどのように食習慣を改善していくか個別に助言している。前島恵理・管理栄養士は「集団で栄養指導をすることで、自分の食生活を客観的に見ることができます。栄養指導前後で明らかに参加者の食に対する意識が高まっています」と効果を実感する。昨年8~10月で集団栄養指導に31人が参加。うち14人が採血検査をした結果、HbA1cの改善が6人、中性脂肪と血圧の改善がそれぞれ4人と一定の効果を認めた。また、同院の栄養指導件数もアップ。患者さんの空いている時間にヒアリングするため、待ち時間対策にもつながっている。この取り組みを始めて1年近くが経ち、集団栄養指導も20回

を超えた。今後の課題として重井香織・管理栄養士は「集団栄養指導に参加した患者さんに対して半年後に再度BDHQを実施するなど、追跡調査ができると良いと思います」と、継続して島の方々の健康を守っていく考えだ。

ン科の辻量平主任(理学

療法士)、検査科の田邉

誠・臨床検査技師の5人。

辻主任と田邉・臨床検査

技師がロジスティクス

(物資調達や調整業務な

ど)を担当する。

また同院は2チーム目

を結成するのに合わせて

DMAT専用車両を導入。

「搬送用人工呼吸器や生

体情報モニター、ポータ

ブル型超音波画像診断装

置、除細動器などの医療

機器や医薬品などを搭載

喜界徳洲会病院(鹿児島県)は2016年8月からBDHQ(簡易型自記式食事歴法質問票)を用いた栄養状態

改善に取り組んでいる。これにより患者さんの食に対する意識が高まり、外来栄養指導件数もアップ、今後も継続し島民の方々の健康を守っていく方針だ。

高齢者の頭蓋頚椎損傷

「Characteristics and treatm

ent results of elderly patients w

ith craniovertebral junction injury

」(高齢者におけ

る頭蓋頚け

椎つい

損傷の特徴と

治療結果)。高齢者の転

倒・転落骨折が多く見ら

れ、今後も高齢化が進む

ことから、自院で実施し

た頭蓋頚椎損傷104例

を、70歳以上と70歳未満

に分けて検証。

両群で骨折のタイプが

異なることや、治療では

高齢者のほうが、骨が弱

いため手術時に頚椎をよ

り強く固定することなど

を説明。

難しい脊髄外科治療解説

今回、徳洲会関係者の

なかで、唯一シンポジウ

ムで発表。テーマは「Treat-

ment strategy for cra-

niovertebral junction

のつなぎ目の動脈静脈の

間に異常な通路ができる

血管の病気。くも膜下出

血(SAH)や脊髄の静

脈性高血圧による急性脊

髄障害で発症するが、罹り

患かん

率は低い。

自院の頭蓋頚椎移行部

動静脈瘻5例を報告し、

「SAHで発症する症例

が多く、SAHの原因と

して鑑別診断に挙げるべ

き」とした。災

害拠点病院目指す

DMAT2チーム目結成

大     垣徳洲会病院

しています」と、1チー

ム目の日本DMAT隊員

である若松祐義・総務課

職員は説明している。

BDHQで栄養状態改善

栄養指導件数もアップ

喜界徳洲会病院 日本脊髄外科学会学術集会

徳洲会5病院14演題

アジアスパイン定例会議も

第32回日本脊せ

髄ずい

外科学会学術集会が大阪府で開かれ、徳洲会グループは14演題を

発表した。集会の共通メインテーマは「Division and Integration for the Future

」(将

来への分業と融合)。第8回アジアスパイン定例会議も同時開催のため、英語によ

るセッションも行われた。主に口頭発表の概要を紹介する。

渡辺剛史湘南鎌倉病院脳神経外科部長

権藤学司湘南鎌倉総合病院(神奈川県)副院長兼脳神経外科

主任部長

田中雅彦湘南鎌倉病院脳神経外科部長

北原功雄千葉徳洲会病院副院長兼

脳脊髄神経外科センター長

吉村政樹八尾徳洲会総合病院(大阪府)脳神経外科医長

田中聡東京西徳洲会病院

脳脊髄腫瘍センター長兼脳神経外科部長

大垣徳洲会病院(岐阜

県)は日本DMAT(厚

生労働省が認めた専門的

な研修・訓練を受けた災

介護老人保健施設あい

の郷(埼玉県)は入所者

さん向けの恒例行事とし

て、うどん打ち体験を実

施、好評を得ている。今

年は6月10日に開催した。

スタッフがうどん粉と

塩水をこねて用意した“う

どん玉”を、入所者さんが

麺棒で伸ばし包丁で切る

作業を楽しんだ。麺は調

理室でゆでて参加者らに

振る舞われ、入所者さん

や通所リハビリテーショ

ンの利用者さんら約14

0人が舌鼓を打った。

害派遣医療チーム)2チ

ーム目を結成した。同院

は地域医療の充実ととも

に災害時にも一層の地域

貢献を果たすため、地域

災害拠点病院の指定を目

指している。日本DMA

T結成はその一環。20

15年9月に1チーム目

を結成しており、2チー

ムとも岐阜DMATとし

ての登録も行っている。

昨年12月に兵庫県災害

医療センターで行われた

研修に参加し、日本DM

AT隊員として登録を行

ったのは整形外科の仙石

昌也医長、看護部の中村

百合看護師、城川康之看

護師、リハビリテーショ

同施設のある羽生市近

辺では各家庭で手づくり

のうどんを打つ習慣があ

ることから、経験豊富な

入所者さんは「こうやる

んだよ」と手本を見せな

がら率先して取り組んだ。

支援相談員の長島大介

主任は「入所者さんに季

節感を感じていただける

よう、通年でさまざまな

行事を企画し、スタッフ

全員が全力で行うことを

大切にしています」。

うどん打ち体験が好評

老健あいの郷

どをX線で調べたりした。

その結果、全例で頚部

のいずれかの筋肉に圧痛

点を認めたほか、アライ

メントの評価を頭痛群と

非頭痛群で比較すると、

頭痛群では正常頚椎前ぜ

彎わん

が有意に少なかったこと

が判明。不適切な頚部の

姿勢が影響している可能

性を指摘し、姿勢を正す

ようアドバイスを送るこ

とで頚椎の疾患予防につ

ながるとした。

専門医訓練施設に

徳洲会2病院承認

会場では、同学会が今

年度認めた認定医、指導

医、専門医訓練施設が公

表され、徳洲会グループ

では八尾病院の吉村医長

が新規の認定医、専門医

訓練施設では新規で千葉

病院、更新で湘南鎌倉総

合病院(神奈川県)が承

認された。任期はいずれ

も7月1日~2021年

6月30日まで。

千葉病院の北原副院長

は「全国に実質40超しか

ない訓練施設に、徳洲会

から2施設入っている意

義はとても大きい」と強

調。「今回、学会で複数

の徳洲会病院が発表した

ように、今後もグループ

病院が切せ

磋さ

琢たく

磨ま

して良い

医療を提供するとともに、

医師の教育をしっかり行

っていきたい」と意欲を

見せていた。

医療機器や医薬品を搭載するDMAT専用車両

麺棒で上手にうどんを伸ばす入所者さん

集団栄養指導では分析結果の活用法をレクチャー

BDHQを実践する前島・管理栄養士(右)と重井・管理栄養士

徳 洲 新 聞徳 洲 新 聞 生い の ち

命だけは平等だ❸ 平成 29 年 7月31日 月曜日 │ No.1093

Page 4: NPO法人TMAT 県災害協力病院に指定 · 災害拠点病院に準じる設備・機能をもち、被災者指定を受けた。同協力病院は県内の災害医療体制の充実を図るため、2014年湘南厚木病院(神奈川県)と茅ヶ崎徳洲会病院(同)は神奈川県災害協力病院の

ジャンルごとに10点、20

点、30点の問題を用意。

参加者がジャンルと点数

を指定し、提示された問

題に対し全員が一斉に回

答を掲げ、すぐに答え合

わせをした。趣向を凝ら

した難問に会場は盛り上

がりを見せた。

最後も増井部長が「軽

傷頭部・頚け

部ぶ

外傷CTい

つ取るの?

取らないの?」

をテーマに講義。会場を

A・Bブロックに分け、

提示された症例がCT適

応ならAブロック、適応

外ならBブロックに移動

して、楽しみながら学ん

だ。意見が分かれたのは

小児のCT適応。ヒント

が出されるたびにブロッ

ク間を移動する人もいた。

増井部長は、小児は被ば

くの問題を考慮する必要

があるとし、データを示

しながら説明した。

すべての講義を終え、

全員に修了証を配布して

閉会。札幌市内の徳洲会

グループ外の病院から参

加した初期研修医(1年

目)は、札幌東病院で研

修中の大学の同期に誘わ

れたことを明かし、「札

幌東病院の楽しさが伝わ

りました。神経救急を学

ぶ機会は少ないのですが、

明日から使える知識が満

載で、とても勉強になり

ました」と満足した様子。

録係役に分かれ、評価リ

ストをもとにヒアリング

した。その際、リストの

順に施行する、患者さん

を誘導しない(何度も同

じ命令を繰り返さない)

など注意点が与えられた。

医師役はリストをもとに

「今日は何月何日ですか」、

「頭を動かさずに私の指

を目で追ってください」

など自分で考えた質問や

指示を投げかけ、理解を

深めた。

3つ目のプログラムは、

松田医師が「麻ま

ひ痺患者の

CT(コンピュータ断層

撮影)/MRI(磁気共

鳴画像診断)ピンポイン

ト指摘読影術」と題し講

義。医療面接と身体所見

から画像を推定できるこ

と、また画像所見と発症

時間の関係も推定できる

ことを目的とした。参加

SENCEは

Sapporo East

Tokushukai Hos-pital N

eurologic Course for Em

er-gency

の頭文字を

取って命名。めま

いや脳卒中などは、

脳神経外科や神経

内科の専門医でな

くとも初期対応を

求められるケース

がある。そこで札

幌東病院の増井部

長がコースディレ

クターとして、神

経救急を体系的に

学べるプログラム

を考案。研修医を

メインに薬剤師、医学生

なども対象とし2012

年から毎年開催している。

第4回から導入した

E-learning

を今回も活用。

参加者は事前にインター

ネット動画サイトのYou

Tubeにアップされた講

義動画を閲覧、学習して

本番に臨んだ。当日は実

技などのグループワーク

に時間を割き、より理解

を深めることができた。

講師は同院救急科の増

井部長、佐藤洋祐医師、

松田律史医師(ともに後

期研修5年目)、松本悠

医師(後期研修3年目)

が担当。今回は前回まで

と比べ、講師陣に若い医

師を立てた。増井部長は

「プログラムが成熟して

きたので、誰が講師を務

めても大丈夫です。各講

師がベースの内容に自分

なりのアレンジを加えて

臨んでいます」と明かす。

増井部長の開会挨拶の

後、まずは佐藤医師が「画

像に頼らない、明日から

使えるめまい診察伝授」

をテーマに、医師役、患

者さん役、指導医役に分

かれてグループワークを

実施。患者さん役と指導

医役には、あらかじめシ

ナリオを提示。医師役が

これに対応して、めまい

の診察方法を学んだ。眼

振を確認する時に装着す

るフレンツェル眼鏡は本

物が用意され、代表者が

実際に装着して感想を語

るひと幕もあった。

続いて、松本医師が「こ

んな時は何点?~NIH

SSのトラブルシュータ

ー」をテーマにグループ

ワーク。NIHSSとは

脳卒中の重症度評価基準。

医師役、患者さん役、記

者は提示された症例をも

とに脳のアトラス(断面

図)に推定病変を書き込

み、松田医師が各症例を

解説した。

明日から使える知識修得

4つ目のプログラムは

増井部長が「ERから専

門医へつなぐ脳卒中治療

アップデート」と題し、

クイズ形式で講義を行っ

た。「血圧管理」、「スコ

アリング」、「手術適応」、

「くすり」、「その他」の

埼玉西武ライオンズの森慎二投手コーチが今年6月、毒性の強い溶血性レンサ球菌(溶連菌)の感染による敗血症で亡くなった。体調の不調を訴えたのは、亡くなるわずか3日前だった。「劇症型溶血性レンサ球菌感染症は“人食いバクテリア”とも呼ばれ、手足の壊

死し

を引き起こして死に至ることもあります。国立感染症研究所(感染研)は手足の腫れなど感染が疑われる症状が出た場合、すみやかに医療機関の受診を呼びかけているほどです」と湘南鎌倉総合病院(神奈川県)感染管理対策室の佐藤守彦医長。感染研のデータによると、感染者数は2014年が273人だったのに対し、15年は8月9日までで279人に上り、調査を始めた1999年以降、最多となった。都道府県別に見ると東京都が44人と最も多い。東京都感染症情報センターは17年7月23日までの都の感染者数は48人と発表。「風邪によく似た病気ですが、劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、レンサ球菌という風邪のウイルスとは異なる細菌による病気です。細菌とはウイルスと違って自己複製能力をもち、抗生物質が有効なものを指します。通常はレンサ球菌に感染してものどの痛みや皮膚の感染症程度にとどまりますが、森コーチのように急激に症状が進行する重篤な疾患となることもあります」(佐藤医長)発症すると数日以内に血管や神経などが壊死し、あちこちの臓器に障害を起こして、ショック症状になり死亡することが多い。日本でも毎年、発症者が報告され、このうち約30%が死亡。きわめて致死率の高い感染症と言える。子どもから大人まで広範囲の年齢層に発症し、とくに30歳以上の大人に多いのが特徴のひとつ。劇症型溶血性レンサ球菌感染症の原因のひとつとなるのは「A群溶血性レンサ球菌」で、しばしばのどや皮膚に見られる細菌。のどや皮膚に、この菌をもっていても、何の症状もない場合もある。「この病気は急速に進行します。白血球毒素が白血球を減少させるので、抵抗力が弱ってしまいます。健康な人でも、まれに劇症型を発症することがありますが、発症リスクが高いのは、がん、糖尿病、慢性心疾患、慢性呼吸器疾患のような基礎疾患をもつ人などです」(佐藤医長)初期症状は発熱、突然発症する激痛、めまい、インフルエンザのような症状、錯乱状態、体に広い範囲で出る紅斑など。時間との勝負になるので、体調を崩したら早期の受診が必要だ。

千葉徳洲会病院の北原功雄・副院長兼脳脊せ き ず い

髄神経外科センター長らは6月2日、カザフスタンの病院で脳神経外科ライブ手術を実施した。これは世界脳神経外科連盟(WFNS)の開発途上国への技術援助の一環で、カンボジア、ベトナムに引き続き今回で3カ国目。

患者さんは67歳女性で巨大な前交通動脈瘤

りゅう

があり、半球間裂からのアプローチでクリッピング術(クリップで動脈瘤をはさむ手術)を実施した。動脈瘤は破裂すると即死の可能性もある。今回の症例は破裂寸前の状態だった。

大きな動脈瘤に隠れた穿せんつう

通枝し

を傷つけると、意識障害や認知障害が出てしまうため、手術の難易度は高い。北原副院長が選んだ半球間裂アプローチは、動脈瘤までの到達は難しいが、到達すると広い視野を確保できるため、穿通枝を傷つけずにクリッピングできる。現地の医師からは「こんなアプローチ法は見たことがない」と感嘆の声が上がっていた。さらに、北原副院長はクリッピングしやすくする手技も披露。

日本から持参したバイポーラ(双極凝固器)を使って動脈瘤を圧縮したり、動脈瘤に入ってくる血液を遮断した後、動脈瘤自体の血液を吸引して小さくしたりと、正確で安全性の高い手術を行った。日本から看護師2人が同行し、手術をサポート。1人は手術台や手術器具のセッティング、1人は器械出しを現地の看護師に指導しながら行った。手術の様子は別室でも映像をとおして30人以上が見学したが、手術が終了すると「ブラボー」と歓声が湧き起った。また、手術室には現地のテレビ局のカメラも入り、後日、ニュースで放映された。北原副院長は「開発途上国の医師は方法を知らないだけで、指導すればできるようになります」と現状を説明し、さらに「私が指導した各国の医師が難易度の高い手術を行い、世界中の患者さんを救うことにつながれば嬉しいです」とにっこり。今後は11月にケニア、12月にベトナム(2回目)でライブ手術を予定。「また手術を見たいと思っていただけるのは、友好の証しだと思います」と北原副院長はアピールする。

発症者30%が死亡との報告も

国内の感染者数が過去最多人食いバクテリアの恐怖

北原・千葉徳洲会病院副院長

カザフスタンでライブ手術

カザフスタンでも最高難度の手術に奏功

現地スタッフと北原副院長(右)らが手術後に記念撮影

札幌東徳洲会病院は6月17日、第6回SENCEを開催した。これは増井伸高・

救急科部長が考案した教育プログラムで、めまいや脳卒中など神経救急領域の診

療センスを身に付けることが目的。同院内外の医師、薬剤師らに加え学生12人を

含む42人が参加し、スキルの習得に励んだ。

神経救急の診療センス養う

札 

幌 

徳洲会病院

第6回SENCE開催

札幌東病院内外から42人が参加し研鑽

コースディレクターの増井部長

めまいの診察を解説する佐藤医師

麻痺患者の画像診断を解説する松田医師

グループワークでアドバイスする松本医師(右)

大盛り上がりのクイズ形式の講義

徳 洲 新 聞生い の ち

命だけは平等だ 平成 29 年 7月31日 月曜日 │ No.1093 ❹

世界脳神経外科連盟の技術援助