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経営・会社情報 財務情報・投資家情報 事業と業績の概況 特集 メッセージ・ビジョン 「期待を超えて」成長を果たすために トヨタ グローバルビジョン トヨタ グローバルビジョン トヨタはこれまでにも、その時々の業界環境を取り巻くさまざまな環境に応じて経営改革を行ってきました。 新たなグローバルビジョンでは、2008 年以降のリーマン・ショックによる経営環境の悪化や一連の品質問題を 経験し、そこからの学びや反省を将来の成長につなげていくために、トヨタが目指す企業像や価値観を明確化 しています。これからはこのビジョンに基づき、全世界の各地域がミッションを定め、具体的な活動を行う「地 域主体」の体制で持続的成長を実現していきます。 グローバルビジョンは、トヨタの74 年の歴史の中 で脈々と受け継がれてきたモノづくりの精神である 「豊田綱領」「トヨタ基本理念」「トヨタウェイ」をベー スに、お客さまの期待を超えるクルマづくりや新たな モビリティ社会を提案しています。お客さまや社会と の共存共栄によって得られた収益で安定した経営基 盤を形成し、さらに豊かな地域社会づくりに貢献す るという好循環を実現することで持続的な成長を目 指します。 今回のビジョンでは、本社は大きな方向性の提示 と地域サポートを行い、世界中のお客さまの最も近 い場所にいる各地域が主体的に判断し、経営を進め ていきます。まさに「お客さま第一」と「現地現物」の 具現化です。さらに現場の情報を素早く伝え、経営 判断に活かし、その経営判断が社会にとって許容さ れるものか常にチェックできる等の狙いを踏まえ、マ ネジメントの仕組みも変更することにしました。 「地 域主体」で『お客さま第一主義』と『現 地 現物』をさらに進化させる ビジョンが目指すもの トヨタのビジョン経営は一本の木によって表現することができます。「木の根」にあるのは共通の価値観でありモノづくりの精神です。 「木の果実」は「もっといいクルマ」「いい町・いい社会」づくりへの貢献です。「木の幹」はお客さまに喜んでいただける商品の下支えと なる安定した経営基盤です。今後はこれら3つの要素を好循環させ、持続的に成長できるよう事業活動を推進していきます。 トヨタのビジョン経営 安定した経営基盤 トヨタ共通の価値観 木の根 木の幹 もっといいクルマ 果実 お客様の期待を超える クルマづくり 豊かな地域社会づくりへの貢献 新たなモビリティ社会への貢献 いい町・いい社会 果実 トヨタ基本理念 豊田綱領 トヨタウェイ “もっといいクルマ”の追求、“いい町・いい社会”づくりを 継続するために、長期目線で持続的に収益を確保 持続的成長 人々を安全・安心に運び、心までも動かす。 そして、世界中の生活を、社会を、豊かにしていく。 それが、未来のモビリティ社会をリードする、私たちの想いです。 一人ひとりが高い品質を造りこむこと。 常に時代の一歩先のイノベーションを追い求めること。 地球環境に寄り添う意識を持ち続けること。 その先に、期待を常に超え、 お客様そして地域の笑顔と幸せにつながるトヨタがあると信じています。 「今よりもっとよい方法がある」その改善の精神とともに、 トヨタを支えてくださる皆様の声に真摯に耳を傾け、 常に自らを改革しながら、高い目標を実現していきます。 トヨタ グローバルビジョン 会長メッセージ 社長メッセージ トヨタ グローバルビジョン 9 TOYOTA ANNUAL REPORT 2011

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経営・会社情報 財務情報・投資家情報事業と業績の概況特集メッセージ・ビジョン

「期待を超えて」成長を果たすために

トヨタ グローバルビジョン

トヨタ グローバルビジョン

 トヨタはこれまでにも、その時々の業界環境を取り巻くさまざまな環境に応じて経営改革を行ってきました。新たなグローバルビジョンでは、2008年以降のリーマン・ショックによる経営環境の悪化や一連の品質問題を経験し、そこからの学びや反省を将来の成長につなげていくために、トヨタが目指す企業像や価値観を明確化しています。これからはこのビジョンに基づき、全世界の各地域がミッションを定め、具体的な活動を行う「地域主体」の体制で持続的成長を実現していきます。  グローバルビジョンは、トヨタの74年の歴史の中

で脈々と受け継がれてきたモノづくりの精神である「豊田綱領」「トヨタ基本理念」「トヨタウェイ」をベースに、お客さまの期待を超えるクルマづくりや新たなモビリティ社会を提案しています。お客さまや社会との共存共栄によって得られた収益で安定した経営基盤を形成し、さらに豊かな地域社会づくりに貢献するという好循環を実現することで持続的な成長を目指します。

 今回のビジョンでは、本社は大きな方向性の提示と地域サポートを行い、世界中のお客さまの最も近い場所にいる各地域が主体的に判断し、経営を進めていきます。まさに「お客さま第一」と「現地現物」の具現化です。さらに現場の情報を素早く伝え、経営判断に活かし、その経営判断が社会にとって許容されるものか常にチェックできる等の狙いを踏まえ、マネジメントの仕組みも変更することにしました。

「地域主体」で『お客さま第一主義』と『現地現物』をさらに進化させる

ビジョンが目指すもの

トヨタのビジョン経営は一本の木によって表現することができます。「木の根」にあるのは共通の価値観でありモノづくりの精神です。「木の果実」は「もっといいクルマ」「いい町・いい社会」づくりへの貢献です。「木の幹」はお客さまに喜んでいただける商品の下支えとなる安定した経営基盤です。今後はこれら3つの要素を好循環させ、持続的に成長できるよう事業活動を推進していきます。

トヨタのビジョン経営

安定した経営基盤

トヨタ共通の価値観木の根

木の幹

もっといいクルマ果実

お客様の期待を超えるクルマづくり

豊かな地域社会づくりへの貢献新たなモビリティ社会への貢献

いい町・いい社会果実

トヨタ基本理念豊田綱領 トヨタウェイ

“もっといいクルマ”の追求、“いい町・いい社会”づくりを継続するために、長期目線で持続的に収益を確保

持続的成長

人々を安全・安心に運び、心までも動かす。

そして、世界中の生活を、社会を、豊かにしていく。

それが、未来のモビリティ社会をリードする、私たちの想いです。

一人ひとりが高い品質を造りこむこと。

常に時代の一歩先のイノベーションを追い求めること。

地球環境に寄り添う意識を持ち続けること。

その先に、期待を常に超え、

お客様そして地域の笑顔と幸せにつながるトヨタがあると信じています。

「今よりもっとよい方法がある」その改善の精神とともに、

トヨタを支えてくださる皆様の声に真摯に耳を傾け、

常に自らを改革しながら、高い目標を実現していきます。

トヨタ グローバルビジョン

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会長メッセージ社長メッセージトヨタ グローバルビジョン

9TOYOTA ANNUAL REPORT 2011

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経営・会社情報 財務情報・投資家情報事業と業績の概況特集メッセージ・ビジョン

地域別の戦略的位置づけと重点的取り組み

中国・新興国・その他 中国・新興国は今後の成長市場として、ブランドイメージ向上に取り組み、特に中国においては環境車や多様なモビリティへの取り組みなどを強化します。アジア・オセアニアについては世界戦略車(IMV)や新開発の小型車など、新興市場のニーズに即応した商品の継続投入や、域内外の拡大市場に対応した供給戦略の推進など、より一層の現地化と高生産性、高効率な開発・生産準備のグローバル拠点として育成していきます。さらに中近東、アフリカ、中南米地域は、各地域のお客さまに求められる、それぞれの国で「私の車」と呼ばれるような車の提供を目指していきます。

地域主導の経営の推進2015年

【トヨタ・レクサス販売台数】営業利益率

5%(1兆円程度)

早期に実現2011年3月期

756万台

4,682億円

2010年3月期

729万台

1,475億円

ドル/ユーロ93円/131円 86円/113円 85円/110円

【連結営業利益】

【為替】

「安定した経営基盤」の確立 成長戦略

持続的成長750万台

(前提)

 地域を主体とした事業戦略の着実な実行のために、品質向上、原価低減、人材育成の3つの基本機能をより一層強化し、品質とコストが両立する安定した経営基盤の確立を目指します。それらを早期に実現するために経営体制の変更も実施しました。取締役会のスリム化、意思決定階層の削減、海外事業体が現地で意思決定するための地域本部長の配置、社外の声をフィードバックするための外部有識者の活

用、現地のマネジメントを推進する「常務理事の新設」などを実現し、本社から地域への大幅な権限委譲と現地での効率的な事業運営に取り組みます。 その結果として、「1ドル85円、販売台数750万台」という厳しい環境下においても「連結営業利益率5%、1兆円程度の営業利益」「単独営業利益の黒字化」を早期に達成できる磐石な経営基盤を構築していきます。

強い収益基盤の構築と経営体制の変更

ビジョンの実現を確実なものとするために

収益成長イメージ

日本 日本については、レクサスやハイブリッドなどの高付加価値商品をはじめ、3列シート車や軽自動車などを含め、高度な先進技術・改善力に基づいた日本ならではのモノづくりと、お客さまに満足いただける商品提供に取組んでいきます。

北米 北米についてはより一層の自立化を推進し、カムリなどの車種については北米をグローバルセンターと位置付け、北米における開発から生産・他国への供給まで一貫体制の構築を目指します。さらに昨年5月の電気自動車開発におけるテスラモーターズとの提携や、高度なIT技術・IT産業との協業を通じた「未来のモビリティ社会」づくりにも取り組みます。

欧州 成熟したクルマ文化をもつ欧州市場は、厳しい競争環境の中で技術を磨くと同時に、グローバルな商品企画を行う中心拠点と位置付けています。魅力あるクルマづくりで、欧州のお客さまにご満足いただける最適な商品の開発で、「強いブランドの構築」を目指します。

トヨタ グローバルビジョン

ビジョン達成に向けた役割・実施事項

地域ミッション

地域目標・経営計画

グローバルビジョン

期待

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会長メッセージ社長メッセージトヨタ グローバルビジョン

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期待を超えるトヨタの商品力で、日欧米と新興国の販売比率を50:50へ

各地域のお客様が求めるクルマづくり

 トヨタは、これまで「お客さま第一」「現地現物」「良品廉価」を基本に、トヨタが考える「いいクルマ」を追求してきました。新たなビジョンのもとでは、世界のお客さまのニーズ、社会が求める価値、そしてトヨタの先端技術を融合することで、お客さまの期待を超え、感動をもたらす「もっといいクルマ」を目指します。 さらにその「クルマ」を最適なタイミングでお届けするために、新興市場では市場拡大に応じた生産能力の拡大、先進国では市場の構造変化に合わせた生産車種の見直しや為替変動に強く、柔軟で効率的な生産体制の再構築・最適化に取り組みます。

 各地域の必要性や規模に応じて、グローバルで生産体制の最適化を進めます。日本は引き続き、モノづくりの中核的な役割を担うべく、最先端技術を活かした高付加価値商品の生産を行います。欧米は既存工場の稼働率を向上させ、現有生産施設の最適化に取り組みます。さらに新興国については、必要性に応じて能力増強のための投資時期と規模を検討していきます。 販売戦略については、今後ますます社会に求められる環境車は、日米欧だけでなく新興国にも展開しま

す。また新興国を中心に世界戦略車や小型車など現地生産モデルの販売強化にも取り組みます。このような取り組みを通じて、日米欧と新興国の販売比率を、現在の60対40から、2015年には50対50として、バランスのよい事業構造を実現していきます。

「新興国」で販売を伸ばしバランスのよい収益構造へ

生産・販売体制の強化

 より安心・安全で、お客さまが求めるクルマを開発すべく、現地が主体的にクルマづくりに参画する体制を整備し、デザイン、感性品質(お客様が実際に見る、触る、使うことで感じる質の良さ)を大幅に向上させることを目指します。

 ハイブリッド車については 2015年までに約10車種の新型車を投入します。その中には燃費 40km/L 以上の小型ハイブリッド車も含まれ、まさに「期待を超える」商品力を発揮することとなる予定です。同時にプラグインハイブリッド(PHV)、電気自動車(EV)、燃料電池自動車

( FCV)などの次世代環境車を全

方位で開発し、市場ニーズにいつでも対応できる体制を整えます。ガソリンエンジンについてもさらなる燃費向上に向け、高効率ガソリンエンジンの開発を進めます。

環境車のラインアップ充実

環境車の充実と日本発プレミアムブランドの世界展開へ

商品力の強化

 日本発の「真のグローバルプレミアムブランド」として、走行性、デザイン、技術などあらゆる点でトヨタの独創性が活かされたレクサスは、テレマティクスなど次世代の情報通信機器の搭載で、さらにきめ細かな顧客サービスを実現し、日本ならではの高付加価値と先進性を追求します。フルラインアップで新興国を含めた全世界へと展開します。

レクサスの世界展開

・成長の牽引役・大市場を支える技術拠点

中国

・高度な先進技術・改善力に 基づいた日本ならではの ものづくり

日本

・これまで以上の自立化・IT産業との協業による 未来のモビリティ社会

北米

・それぞれの国で「私の車」と 呼ばれるようなクルマの提供

中南米・アフリカ・中近東・IMV・新開発小型車の グローバル開発/生産 準備拠点

アジア・オセアニア

・小型車のグローバル企画 センターとしてよりよい商品 づくりに貢献

欧州

グローバル販売比率

日米欧

50%新興国

50%2015年販売計画

日米欧

60%新興国

40%2010年販売実績

地域バランスの良い事業構造を実現

トヨタ グローバルビジョン

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経営・会社情報 財務情報・投資家情報事業と業績の概況特集メッセージ・ビジョン

次世代の街づくりに貢献し、自動車産業の未来を拓く

未来を動かす「モビリティ社会」の実現に向けて

 トヨタは、「もっといいクルマ」づくりに加え、「いい町・いい社会」づくりへの貢献を、新たなグローバルビジョンにおいてお客さまに約束しています。低炭素で快適なクルマ社会、人の移動支援や医療介護支援を行うパーソナルロボットの早期実用化など新しいライフスタイルの提案、HVなど次世代環境車など環境技術の普及、インフラと協調した安全なクルマ社会など、快適で生活しやすい街づくりに貢献し、「いい町・いい社会」の一員として受け入れられる「企業市民」となることを目指します。

 トヨタは、ITを駆使して電力需給をコントロールし、電力の安定供給と省エネルギーを実現する新しい電力網「スマートグリッド」を活用することが、低炭素社会の実現に向けた大きな一歩となるととらえています。トヨタのスマートグリッドでは、次世代環境車(PHV,EV)における充電コントロールと、トヨタホームが開発中の「スマートハウス」(太陽光発電や蓄電池、電力消費を効率的に制御する機能を搭載)をつなげ、これを段階的に広げていくことで、次世代の大きな環境都市「スマートコミュニティ」をつくることを目指しています。 すでに昨年には、この「クルマ」「家」「情報」をつないでデータを管理、情報を統合的にコントロールす

るトヨタ独自のシステム「トヨタスマートセンター」を開発し、この9月からは、豊田市での「スマートグリッド」の実証実験が開始されます。トヨタは、今後も事業化に向けたシステムの実証実験や異業種との連携を進め、各地域の経済や社会状況に応じた新たな商品やサービスの提供を目指していきます。

スマートグリッドで、次世代の環境都市「スマートコミュニティ」づくりに貢献

次世代車技術の開発

 トヨタでは、「エネルギーの多様化」「CO2削減(地球温暖化防止)」「大気汚染防止」の3つを環境技術開発の重要なテーマと位置付けています。その考え方をベースに、まずは販売車両の多数を占める従来型エンジン車の燃費向上に取り組んでいます。さらに各種エコカー開発に必要な要素技術を含む「ハイブリッド(HV)技術をコア技術」として、次世代環境車の開発に取り組んでいます。 エコカーは普及することではじめて環境への貢献となります。どのような環境車が望ましいかを決める

のはお客さまであり、用途、性能、価格などお客さまにとって最適なエコカーを選んでいただけるよう、プラグインハイブリッド(PHV)、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)などを含め、次世代環境車については全方位で開発を進めていきます。

トヨタの環境技術開発の考え方

新規事業戦略

人々と商品、サービスがつながる

新たなモビリティ社会づくりの一端を担う

人人人人 品品品品品、、、、サササササササ がががが人人人人人々々々々々々々々々とととととと商商商商商商商商品品品品品品 サササササササササーービビビビビビビスススススがががががががつつつつつつななななななながががががががるるるるるががががつつつつつつななななななながががががががるるるるるなななななな

新新新新新新新新新新たたたたたたたななななななモモモ テテテテティィィィィ 会会づづづづづくくくくりりりりりりのののののののィィィィィィ社社社社社社社会会会会会会会会づづづづづくくくくくりりりりりののの新新新新たたたたたななななななモモモモモビビビビビビリリリリテテテテ端端端端端端ををををををを担担担担担担担担担担うううう一一一一端端端端端端端端

人々と商品、サービスがつながる

新たなモビリティ社会づくりの一端を担う

新しい ライフスタイル

低炭素で快適な    クルマ社会

 インフラと協調した安全なクルマ社会

環境技術の普及

をご参照ください。

▼詳細は こちら

トヨタ グローバルビジョン

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会長メッセージ社長メッセージトヨタ グローバルビジョン

12TOYOTA ANNUAL REPORT 2011