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消化器外科救急疾患1年間の経験 ~手術適応も含めて~
高松赤十字病院 消化器外科 三木明寛
コーヒー飲みながら 聞いてください。 気軽にね。
Ⅰ.当科緊急手術概要
Ⅱ.腹部外科救急疾患 (1年間の症例提示を術中所見を踏まえてお話します)
Ⅲ.外科・救急研修のために
本日のお話
腹部救急画像診断の詳細については 金只先生のレクチャーで。
Ⅰ.当科緊急手術の概要
年度別緊急手術総数
当科緊急手術数は100件/年前後で推移していましたが 平成23年度からは140件/年以上と増加傾向にあります。
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平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年
平成25年度月別緊急手術数
平均12件/月程度の緊急手術をしています。
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1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
平成25年度緊急手術疾患内訳
1位 虫垂炎で約40% 2位 腸閉塞 3位 消化管穿孔 4位 胆嚢炎
やはり虫垂炎は多い!!
虫垂炎
腸閉塞
消化管穿孔
胆嚢炎
ヘルニア
膵炎
膿瘍
その他
外傷
穿孔 出血 炎症 腸閉塞
ヘルニア陥頓
代表選手
etc
外科的処置が必要な消化器疾患
Ⅱ.腹部外科緊急疾患
ー1年間に経験した代表疾患ー (手術適応なども含めて)
症例:26歳 男性
来院3日前より心窩部痛が出現した.その後、右下腹部に限局
した痛みとなった。近医にて虫垂炎の疑いで当院紹介。
既往歴、内服薬:特になし.
バイタルサインに特記すべき異常なし
腹部は平坦・軟、腸蠕動音微弱
圧痛・反跳痛あり、かかと落としにて疼痛の増強あり
採血;WBC 9800, CRP 1.9
その他は特記すべき異常値なし
(亜)急性虫垂炎.
[腹部CT]
糞石あり。虫垂最大径は14mm程度。
腹腔内に液体貯留は認めず。
【経過】 蜂窩織性虫垂炎の診断で虫垂切除術を施行。
術後2日目で退院した。
虫垂は充血、腫大が著明で蜂窩織性だった。
粘膜面では一部壊死性の変化もみられた。
症例:5歳 男児
近医より感染性腸炎の診断で当院紹介となり入院していた。
2日目に腹痛の急激な増悪、炎症高値を認め当科紹介。
既往歴、内服薬:特になし.
バイタルサインに特記すべき異常なし
腹部平坦・板状硬、腸蠕動音は聴取せず
圧痛著明、反跳痛は評価できず
採血;WBC 19800, CRP 30.4
穿孔性虫垂炎.
[腹部CT] 糞石あり。虫垂最大径は10mm程度。右傍結腸溝に腹水貯留を認める。 虫垂壁は強く造影されている。
【経過】 穿孔性虫垂炎、汎発性腹膜炎の診断で虫垂切除術、ドレナージを施行。
術後8日目で退院した。
虫垂根部に穿孔認めた。
アッペはおそろしい!!
〝手術は虫垂炎に始まり虫垂炎に終わる〟
・生涯罹患率7% (15人に1人)
特に小児と高齢者は診断が難しく、穿孔を起こしやすい
→腹痛を正確に訴えることができない、非特異性の腹痛が多いなどの理由で
診断が遅れる。
術式も虫垂切除から回盲部切除まで炎症の程度によってピンキリ
・手術適応の目安;画像検査にて以下の所見を伴う場合
①最大径≧10mm
②糞石を伴う
③穿孔、(膿瘍形成)
保存的に診る場合でも、入院加療をおすすめ(抗生剤+絶食による腸管安静)。
連日のエコー、採血フォローは必須!!
free-air、糞石あり 回盲部は「ぐちゃぐちゃ」
↓ 回盲部切除
3cmにまで腫大
虫垂切除←
症例:64歳 女性.
食後の腹痛で救急外来を受診した。
既往歴;関節リウマチ、リウマチ性肺炎、帝王切開3回
身体所見;
バイタルサインに特記すべき異常値なし
表情は苦悶様
腹部膨満・軟、強い間欠痛、圧痛著明
腹膜刺激兆候なし
採血;WBC 14000, CRP 2.75
ペンタジンには反応あり
癒着性イレウス
[腹部造影CT] 壁の造影効果は良好。 腹水を認める。 口径差の直前にはbubble様ガスを認める。 (small bowel feces)
ペンタジン投与後、一時的には疼痛改善も再度、強い疼痛の訴えあり手術適応とした。 術前CT通りの部位に強い狭窄あり。 (ほぼ閉塞しかけていた) 癒着剥離術を施行して終了した。
症例:34歳 女性.
2日前に腹痛で救急外来を受診した。CTでは明らかな所見なく帰
宅となっていたが再度腹痛増強あり受診。経過観察入院となって
いた。入院後、持続性の激しい腹痛が出現し精査を行った。
既往歴:小学生時に虫垂切除
身体所見:
BP 88/61 HR 51 BT 34.2 SpO2 94(mask4L) 表情は苦悶様、持続性の激しい腹痛
腹部平坦・軟、反跳痛なし
腸蠕動は聴取されず
絞扼性イレウス(腸管壊死を伴う). [腹部造影CT]
造影効果は認めるがwash-out不良の小腸を認める。
著明な腸管浮腫・腸間膜浮腫を認める。
【経過】 開腹時に血性混濁腹水あり小腸壊死が認められたため壊死小腸を150cmほど切除。術後下痢症状を認めたが、経過良好にて退院。
2日前には特に所見は認めなかった… (軽度の小腸拡張、腸炎??)
この状態では死亡率も高くなる!! ・極度の脱水(腸液、腹水にとられる) ・敗血症(腸管壁バリアーの破綻) ・DIC(壊死物質の再潅流)
術後も短腸症候群になるとQOL下がる! ・頻回の水様下痢 ・栄養障害
症例: 76歳 女性.
腹部膨満、嘔気・嘔吐にて救急外来受診.
既往歴;特になし
身体所見;
バイタルサインに特記すべき所見なし
腹部膨満、軟 自発痛なし、腹部全体に圧痛を認める
嘔吐あり
採血;WBC14000、CRP2.1
大腸癌による閉塞性イレウス.
[腹部CT]
S状結腸に狭窄あり、強く造影されており腫瘍を疑う。
それより口側腸管の拡張を認め、盲腸径は98mm。
【経過】 S状結腸癌による閉塞性イレウスと診断した。腸管切迫破裂の危険が
高い状況であり、緊急ストマ造設(横行結腸)を施行した。
1か月後に腫瘍切除、ストマ閉鎖を施行して退院となった。
番外編: イレウス管自己抜去による腸重積.
[腹部CT]
小腸重積を認める.
【経過】 内ヘルニアにて緊急手術を行った患者.術中に腸管減圧のためにイレウス管挿入したが、術後イレウス管自己抜去後より腹痛あり精査にて
腸重積症と判明。緊急開腹し壊死腸管切除を行った.
「イレウス」も様々
①機械性腸閉塞・・・器質的病変により物理的に腸管が閉塞して起こる通過障害
・単純性→血行障害を伴わない
・複雑性→血行障害を伴う
②機能性腸閉塞・・・麻痺性・痙攣性により起こる通過障害
*緊急手術となるのはほとんど複雑性イレウス、もしくは切迫破裂
研修医の先生へ
腸閉塞を見たらその(成因)を必ず探る。
・ 術後の癒着(最多)
・ 内ヘルニア、炎症(肝周囲炎、骨盤腹膜炎など)腫瘍、捻転、腸重積、
胆石イレウス、食餌性など
・ イレウスと診断したなら、最低でもNGチューブは入れておきましょう!
グレーゾーンの手術適応は難しい!
①身体所見から
・強い持続痛(ペンタジン不応例、頻回使用例)
・虚血を伴う場合は、自覚症状に比して腹膜刺激症状はでないこともあるので注意
・腸管壊死、穿孔に伴う腹膜炎では腸蠕動の消失
②血液検査から
・乳酸値、CK、アシドーシス。強い絞扼で還流障害ある場合はデータに反映されない
こともある
③CT所見から
複雑性イレウスを示唆する所見
・血流障害を伴う(壁造影効果の消失、他部位と比較して低下、腸間膜浮腫)
・closed-loopを伴う
腸管切迫破裂を示唆する所見
・盲腸径≧8~9cm(かつ、閉塞部位やバウヒン弁機能もチェック!)
保存治療開始後も日々の症状の変化に注意。 チューブドレナージにても症状の改善乏しいときは手術を考慮。 ⇒ 4~7日。粘っても2週間まで。 チューブ抜去の目安は500ml/day以下が一般的。
金只先生のスライドより拝借しました。
バウヒン弁について
いろいろなclosed-loop
早ければ腸管切除せずにすむ!
発症後8時間以降での手術所見。 脱水、ショック 腹膜炎、敗血症、DIC (穿孔、再潅流障害などによる) →一気に死亡率上昇する。
発症後4時間程度での手術所見。
色調悪い部分あるが切除せず。
→2日後には経口摂取可。
症例:61歳男性.
突然の上腹部痛にて当院緊急搬送となった.
既往歴;特になし
身体所見;
表情は苦悶様
体温38度以上、その他のバイタルサインに特記すべき所見なし
腹部膨満・硬、上腹部に圧痛++反跳痛++
嘔吐あり
WBC 12200、 CRP 0.67、その他のデータに特記所見を認めず。
上部消化管穿孔性腹膜炎.
[腹部CT]
肝表面、肝下面にかけてのfree air、腹水貯留を認める.
十二指腸球部に壁欠損、炎症所見、fluid・airを認めた。
【経過】 十二指腸潰瘍穿孔による急性汎発性腹膜炎が疑われ緊急手術。
十二指腸球部前壁穿孔が認められ大網充填術を行った.
大網充填・被覆術
症例:86歳男性.
近医で肺炎加療中に偽膜性腸炎を発症。
腹部膨満、腹痛増強ありCFにて精査したところ穿孔を認め、
当院へ救急搬送となった。
既往歴;CABG,AAA術後
身体所見;
体温37度台、その他のバイタルサインに特記所見を認めず。
腹部膨満、下腹部に筋性防御あり、圧痛は軽度で反跳痛なし。
採血;
WBC14600、CRP24.8
下部消化管穿孔性腹膜炎.
[腹部CT]
腹腔内に大量のfree airあり。
腹水は肝表面に少量を認めた。
【経過】 緊急開腹にてS状結腸穿孔あり。3横指ほどの大穴。 ハルトマン手術を施行した。
偽膜性腸炎の写真
S状結腸に3横指ほどの大穴あり。腹腔内への便汁漏あり。
特に偽膜形成の著明な部分に穿孔を認めた。
消化管穿孔は非常に厄介 ・原因さまざま(炎症、潰瘍、腫瘍、憩室、閉塞、異物など) ・穿孔部を術前に同定することが困難(上部or下部で切開部も術後の方針も違う) ・敗血症、腹膜炎、DICでみるみる状態悪化 発症~6時間・・・腹膜刺激期、6時間~・・・細菌性腹膜炎期 →早急な初期対応が迫られる。術後も挿管、透析など集中治療を要する。 ・死亡率は上部20%、下部50%と患者に説明している 腹膜刺激症状あればまずCT →free-airを見つけたらすぐ手術必要。 できれば、、、 コンサルト時に術前の検査一式もオーダーお願いします (血型・クロスマッチも含めた採血、血ガス、心電図、胸部レントゲンなど)
症例:62歳男性.
数日前から40℃台の熱発を認めた. 近医にて抗生剤治療受けたが
改善認められないため内科受診.
既往歴;特になし.
身体所見;
BP 100/66 HR 100 BT 38.4 SpO2 94(RA)
患者は苦悶様表情
右季肋部を中心に疼痛あり.
WBC 17000 , CRP 14.3
肝胆道系酵素に異常はみられず
壊死(疽)性胆嚢炎
[腹部CT]
胆嚢に全周性壁肥厚、浮腫性変化。周辺には毛羽立ちがみられる.
胆石を伴う。一部、胆嚢壁に造影欠損部を認める。
【経過】 胆嚢摘出術を施行した。経過良好にて退院。
症例:96歳女性.
3日前からの嘔気と腹痛に増悪を認め、発熱も伴うようになったため受診した。 既往歴;特になし 身体所見; 高度の亀背 BT37.2 BP130/70 HR110 右季肋部に腹膜刺激症状を認めた 採血; WBC15000、CRP40.7、T-Bil1.5、AST62、ALT45
[腹部CT] 冠状断で腫大した胆嚢が足側に下垂していた。 胆嚢壁の造影効果は減弱し、頸部は烏嘴状の狭小像を認めた。 軸位断で胆嚢頸部に渦巻き像を認めた。
【経過】 胆嚢摘出術を施行した。術後3日間の集中治療を要したが、 その後は順調に回復し退院した。
胆嚢捻転(大網裂孔ヘルニア陥頓)
三木明寛、石川順英、森岡広嗣、吉谷新一郎、廣瀬哲朗、西平友彦日本臨床外科学会誌 74(6),1676-1679.2013
『大網裂孔ヘルニアに捻転を伴って陥頓した浮遊胆嚢の1例』
壊死が進行して壊疽性変化を伴っていた
急性胆嚢炎の診断フローチャート
胆嚢炎治療のガイドラインは
昨年かわりました
(が、緊急手術の対象は大きな変化なし。)
緊急手術適応とされているのは、 胆嚢捻転・肝膿瘍・気腫性胆嚢炎・壊疽性胆嚢炎・化膿性胆嚢炎 胆嚢周囲膿瘍などの高度な局所合併症を有する場合。 (↑従来までは重症であった病態) ただし、重症胆嚢炎(循環・意識・呼吸・腎・肝障害、血小板低下)では まずドレナージ。 その他は抗生剤などによる初期治療やドレナージ。 炎症が落ち着いてから待機的に胆嚢摘出術を選択することが一般的。
いろいろな胆嚢炎
肝膿瘍 胆嚢周囲膿瘍
胆嚢穿孔に伴う胆汁性腹膜炎 (肝表面が炎症性に強く造影されている)
胆嚢捻転、壊疽
壊死性胆嚢炎
症例;76歳男性.
受診4時間前からの右鼠径部痛と膨隆のため受診。
既往歴;特になし
発熱なし
バイタルサインに特記所見なし
腹部やや膨満、軟
右鼠径部に鶏卵大の膨隆、強い圧痛
嘔気などの腹部症状は特になし
右鼠径ヘルニア陥頓
【経過】徒手整復は疼痛強く危険と判断し、同日緊急手術施行した。
小腸壊死しており切除。
感染の危険ありメッシュ使用せず。筋肉筋膜縫合にてヘルニア門の修復。
[腹部CT] 右鼠径部に小腸の口径差~脱出を認めた。
早急な手術準備するも 手術時には発症後6時間経過していた。。。
鼠径ヘルニア陥頓の治療 ・問診、身体所見が重要
(いつから→golden-timeは4~8時間、痛みの程度、イレウス症状、局所の皮膚症状)
→そのまま還納すべき状態かの判断につながる。
(ほかにも、血液検査、造影CT、エコーなどで一般的な虚血の所見をチェック)
・無理な還納は腸管穿孔、腹膜炎を惹起する。
用手還納禁忌とされている兆候;
①局所皮膚の発赤、著名な疼痛・圧痛
②炎症反応高値
③造影効果の低下、蠕動の消失
無理はしない!!
還納できても基本的に入院が必要(遅発性に穿孔することがある)。
→準緊急で手術予定。
ヘルニア門が大きければ 脱出しても症状はない ↓ 見た目は派手でも 待機手術でOK.
よくある主訴; 「近頃、なんかキ○タマが腫れるんです」 「放置していたらこんなんなりました」
慌てるなかれ!
ヘルニアもいろいろ
・鼠径ヘルニア
・大腿ヘルニア
・閉鎖孔ヘルニア
・腹壁瘢痕ヘルニア
・臍ヘルニア
・Spigelianヘルニア
・・・などなど
嵌頓臓器は小腸>>S状結腸、大網、卵巣など
注意すべきヘルニア:閉鎖孔ヘルニア
・死亡率5~10%.
・やせ型の高齢女性に多く、”skinny old lady hernia”と呼ばれる.
・ヘルニア門が小さく、靭帯の間隙のため締め付けが非常に強い。
→容易に陥頓する。一度嵌ると抜けない!!
・腸管の一部が嵌頓するRichter型ヘルニアが多い.
→不完全閉塞のため診断の遅れにつながり、腸管壊死を伴う。
理学所見:イレウス(小腸閉塞)の所見
Howship-Romberg sign: 特異的!
大腿内側・股関節・膝に放散する痛み.
大腿の後方進展で増悪する
CTで診断は容易だが見落としがち!!
疑ってかからないと診断困難!
必ず骨盤部まで撮影するよう依頼。
一度見たら忘れない
油断大敵! 両側のこともあります
番外編; Spigelianヘルニア陥頓
[腹部造影CT]
左腹壁に腸管脱出認められる.
【経過】 用手的整復困難。
ヘルニア根治術(UHS法)施行した.
ウルトラプロヘルニアシステムを用いた嵌頓スピーゲルヘルニアの1例 森岡広嗣(日本腹部救急医学会雑誌 )
症例;71歳女性.
午前2時に突然発症した激烈な腹痛を訴え救急車で搬送された.
慢性心房細動、高血圧症にて近医通院加療している.
既往歴;慢性心房細動
身体所見;
血圧 239/146 心拍数84,不整 体温37.0 SpO2 97%(mask3L)
苦悶様表情
全体に強い疼痛、臍周囲で一番強い.
腹部は軽度膨隆、圧痛あり. 筋性防御は明らかでない
腸蠕動音は減弱.
WBC 19700 CRP 0.82mg/dL
[腹部造影CT]
SMA起始からすぐに造影欠損あり → 血栓(塞栓)の存在を疑う。
急性上腸間膜動脈閉塞症
Ao
SMA
確定診断に必要な検査⇒ 腹部造影CT / 血管造影
[腹部造影CT]
AortaからSMAを追っていくと、途中で造影されなくなり、塞栓の存在
が疑われる.
腸管虚血が造影低下で推定できる
場合もある.
[血管造影] 診断のGold-standard.
【経過】 血管造影で閉塞を確認し、SMA血栓症と診断された.内科にて緊急血栓溶解療法施行した.CTにて全腸管虚血壊死が疑われ緊急開腹したがTreitz靭帯以下の腸管壊死が認められそのまま閉腹した.POD2に死亡した.
もうひとつのAMIー急性腸間膜虚血
死亡率60~80%!!
AFの患者では必ず考慮に入れる!
腹痛の割には理学所見に乏しいのが特徴. 圧痛・筋性防御(-)
腸管が壊死するといったん痛みは軽減する
原因別にみると
• 動脈塞栓症(50%) – ほとんどがSMA。
• 動脈血栓症(25%) – 粥状硬化性病変。比較的緩徐に発症, 根部に多い
• 静脈血栓症(5%) – 凝固線溶異常・門脈圧亢進などが背景にある
• 非閉塞性腸管虚血(Nonocclusive Mesenteric Ischemia:NOMI 20%)
- 心不全や循環血液量低下に対して、腸間膜動脈の血管収縮が起こる
- ジゴキシンや利尿薬、カテコラミン使用中の患者はhigh-risk!
- 基礎疾患が重篤なため死亡率も高い。
症例;16歳男性.
原付バイク走行中にフェンスに激突し、当院ER救急搬送された.
既往歴;特記事項なし.
身体所見;
BP 106/59 HR 74 BT 36.9 SpO2 96(RA)
患者は苦悶様表情、下腹部は圧痛あり.
採血;
WBC 22000, CRP 0.10mg/dL以下, Hb15.6, Hct44.0, eGFR100.7
亣通外傷による多発外傷.
[腹部造影CT]
脾臓断裂. 周囲に出血と思われるfluidあり、Morison窩まで
Fluidが及んでいる.腎粉砕している.
日本外傷学会脾損傷分類:typeⅡ
日本外傷学会腎損傷分類:typeⅢc
【経過】 泌尿器科合同にて緊急脾/左腎臓摘出施行.術中出血量は5000mlであった.
術後経過は良好で退院。
脾臓 CTでは脾臓周囲にfluidがあるな・・・ 肝表面にもfluidあるな、結構出血しているな。やばいな!!!
左腎臓 左腎臓はボロボロだな。 粉々になっていそう・・・。 腎損傷の分類はⅢ型かもな。
Ⅲ.外科・救急研修のために
腹部外科救急疾患は多数あります。 典型例から非典型例まできりがありません。 まずはcommonな腹部救急疾患に 慣れてください。 画像の読影がkeyだと思います。
研修医の先生へ
外科の醍醐味は画像診断でああでもない
こうでもないと悩んだものを
実際目で見ること、手で触れることができる!
ことではないでしょうか。
御静聴ありがとうございました。