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44 DECEMBER 2008 1. はじめに 生活時間のデータ分析で昨今,研究者の間 で関心が高まっていることとして,同じ生活行 動の中でもその底流にある気分,また行動に費 やしている時間に対する価値意識に違いはない のだろうか,さらに,意識や気分と生活行動と の関連性をどう検証すればよいか,といった点 がある 1) 。今回この検証の試みのひとつとして, 曜日別の生活時間の違いと,気分の違いに関 連性があるのどうか,分析してみることにした。 NHK国民生活時間調査の最新調査(2005 年)では,平日・土曜・日曜だけでなく,月曜 日から金曜日の曜日別集計データがある 2) 。さ らに,翌 2006 年には曜日別の気分・イメージ などを探った「曜日意識に関する調査」を実施 しており,生活時間と意識調査,両者のデータ をつき合わせて分析することができる。 この生活時間の曜日別分析は,今回初めて 行う内容ではない。本誌でも生活時間の曜日 差を丹念に分析し,基本的な知見を整理した 先行論文がいくつか掲載されてきた 3) 。このう ち三矢(1993)は「生活時間は,休日制度や勤 務形態など,外部の要因によって規定される面 が大きく,とりわけ“休日”は人びとの生活行動 や曜日のイメージ形成の両方に大きくかかわっ ている」との結論を出している。そこで今回の 分析は,この結論を踏まえ,「継続的に就労し て“休日”がある」有職者,そして「一定の“休日” を持たないが,家事を担っている」主婦,「一定 の“休日”を持たないし,家事も主には担って いない」無職の 3 層における生活時間と気分の 曜日差の検証に焦点を当て,より具体的に生活 行動と気分の関連性を探ることにしてみる。 また本稿は,あえて平日各曜日のデータの 分析に重点を置き,より細かな違いに注目して いきたいと考えている。データの面でみると, 2005年調査の月曜日から金曜日にかけての データはあまり公になっていないうえ,先に紹 介した先行論文でも,「土曜,日曜の生活時間 は平日と異なるが,平日の各曜日間の違いはあ まりない」(三矢(1993))ため,平日・土曜・日 曜間の分析が中心となっていたためである。 今回分析に用いた調査の概要は下記のとお りである。 2005 年国民生活時間調査 時  期 :2005 年 10 月11日(火)~24 日(月) 相  手 :全国 10 歳以上の国民 12,600 人 方  法 :配付回収法 (15分刻みの時刻目盛り日記式) 有効数 (率) :7,718 人(61.3%) 曜日に関する意識調査・2006 時  期 :2006 年 3月9日(木)~12 日(日) 相  手 :全国 20 歳以上の男女 2,000 人 方  法 :個人面接法 (オムニバス調査) 有効数 (率) :1,341 人(67.1%) 平日でも曜日で異なる生活時間と気分 世論調査部(視聴者調査) 中野佐知子/ 諸藤絵美

平日でも曜日で異なる生活時間と気分 - NHK...睡眠 100 7:26 100 7:08 100 7:11 100 7:06 100 7:15 100 7:13 0:20 食事 100 1:46 100 1:45 100 1:47 99 1:44 100 1:48 100

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44  DECEMBER 2008

1. はじめに生活時間のデータ分析で昨今,研究者の間

で関心が高まっていることとして,同じ生活行動の中でもその底流にある気分,また行動に費やしている時間に対する価値意識に違いはないのだろうか,さらに,意識や気分と生活行動との関連性をどう検証すればよいか,といった点がある1)。今回この検証の試みのひとつとして,曜日別の生活時間の違いと,気分の違いに関連性があるのどうか,分析してみることにした。

NHK国民生活時間調査の最新調査(2005年)では,平日・土曜・日曜だけでなく,月曜日から金曜日の曜日別集計データがある2)。さらに,翌2006年には曜日別の気分・イメージなどを探った「曜日意識に関する調査」を実施しており,生活時間と意識調査,両者のデータをつき合わせて分析することができる。

この生活時間の曜日別分析は,今回初めて行う内容ではない。本誌でも生活時間の曜日差を丹念に分析し,基本的な知見を整理した先行論文がいくつか掲載されてきた 3)。このうち三矢(1993)は「生活時間は,休日制度や勤務形態など,外部の要因によって規定される面が大きく,とりわけ“休日”は人びとの生活行動や曜日のイメージ形成の両方に大きくかかわっている」との結論を出している。そこで今回の

分析は,この結論を踏まえ,「継続的に就労して“休日”がある」有職者,そして「一定の“休日”を持たないが,家事を担っている」主婦,「一定の“休日”を持たないし,家事も主には担っていない」無職の3層における生活時間と気分の曜日差の検証に焦点を当て,より具体的に生活行動と気分の関連性を探ることにしてみる。

また本稿は,あえて平日各曜日のデータの分析に重点を置き,より細かな違いに注目していきたいと考えている。データの面でみると,2005年調査の月曜日から金曜日にかけてのデータはあまり公になっていないうえ,先に紹介した先行論文でも,「土曜,日曜の生活時間は平日と異なるが,平日の各曜日間の違いはあまりない」(三矢(1993))ため,平日・土曜・日曜間の分析が中心となっていたためである。

今回分析に用いた調査の概要は下記のとおりである。

● 2005 年国民生活時間調査時  期 : 2005 年10月11日(火)~24日(月)相  手 : 全国 10 歳以上の国民 12,600 人方  法 : 配付回収法(15 分刻みの時刻目盛り日記式)有効数(率) : 7,718 人(61.3%)

● 曜日に関する意識調査・2006時  期 : 2006 年 3 月 9 日(木)~ 12 日(日)相  手 : 全国 20 歳以上の男女 2,000 人方  法 : 個人面接法(オムニバス調査)有効数(率) : 1,341 人(67.1%)

平日でも曜日で異なる生活時間と気分

世論調査部(視聴者調査) 中野佐知子/諸藤絵美

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2. 生活時間の曜日差「継続的な仕事の有無」が,生活行動にどの

程度,曜日差をあたえているのだろうか。有職者・主婦・無職別に主な行動の行為者率と時間量を曜日ごとにまとめた(表1)4)。

有職者の生活時間では,仕事を中心に若干の差がみられた。木曜日は,仕事の行為者率・全員平均時間とも多く,通勤の行為者率も高い。その一方で,社会参加とレジャー活動の時間量は短いのが特徴である。次いで起床在宅時間に注目すると,長い日は火曜日で,短い日

は金曜日だった。火曜日は通勤の行為者率が低めである。一方,在宅時間の短い金曜日は,仕事のつきあいの行為者率が高く,マスメディア接触の行為者率は低いという特徴がある。

主婦については,休日である土曜・日曜の前後で曜日差がみられた。月曜日は睡眠の時間量が長いのに対し,火曜日は起床在宅,マスメディア接触,テレビの時間量が長い。一方,金曜日は起床在宅時間が短く,レジャー活動の時間量がやや長めである。

無職では,月曜日のレジャー活動の行為者率が低いほかは,曜日差はほとんどみられなかった。

表1 主な行動の行為者率・時間量(有職者・主婦・無職)

【 有職者 】月曜(1,210 人) 火曜(1,217 人) 水曜(1,236 人) 木曜(1,247 人) 金曜(1,182 人) 平日(6,092 人) 曜日差

行為者率 *%

全員平均時間**時間 分

行為者率%

全員平均時間時間 分

行為者率%

全員平均時間時間 分

行為者率%

全員平均時間時間 分

行為者率%

全員平均時間時間 分

行為者率%

全員平均時間時間 分

全員平均時間時間 分

睡眠 100 7:05 100 7:07 100 7:03 100 7:04 100 7:04 100 7:05 0:04食事 99 1:30 100 1:32 99 1:31 99 1:30 100 1:31 99 1:31 0:02仕事 88 7:28 88 7:25 88 7:25 92 7:46 89 7:31 89 7:31 0:21仕事のつきあい 7 0:08 8 0:09 6 0:08 8 0:10 10 0:13 8 0:10 0:05家事 54 1:46 55 1:48 55 1:47 53 1:39 52 1:38 54 1:43 0:10通勤 73 0:56 71 0:55 74 0:56 78 1:01 76 0:59 75 0:57 0:06社会参加 5 0:05 5 0:05 5 0:06 4 0:04 5 0:07 5 0:06 0:03レジャー活動 31 0:46 29 0:39 31 0:47 29 0:36 31 0:45 30 0:42 0:11マスメディア接触 94 3:51 94 3:46 94 3:41 94 3:39 92 3:36 94 3:43 0:15テレビ 89 2:53 88 2:53 89 2:52 89 2:48 88 2:43 89 2:50 0:10新聞 45 0:19 40 0:16 44 0:18 44 0:17 44 0:18 43 0:18 0:03起床在宅 98 6:34 98 6:42 98 6:34 97 6:14 97 6:06 98 6:26 0:36

【 主婦 】月曜(302 人) 火曜(307 人) 水曜(299 人) 木曜(297 人) 金曜(310 人) 平日(1,515 人) 曜日差

行為者率%

全員平均時間時間 分

行為者率%

全員平均時間時間 分

行為者率%

全員平均時間時間 分

行為者率%

全員平均時間時間 分

行為者率%

全員平均時間時間 分

行為者率%

全員平均時間時間 分

全員平均時間時間 分

睡眠 100 7:26 100 7:08 100 7:11 100 7:06 100 7:15 100 7:13 0:20食事 100 1:46 100 1:45 100 1:47 99 1:44 100 1:48 100 1:46 0:04仕事 7 0:21 6 0:13 7 0:15 10 0:21 5 0:11 7 0:16 0:10仕事のつきあい 0 0:00 1 0:00 1 0:01 1 0:01 2 0:02 1 0:01 0:02家事 100 6:58 99 7:14 100 7:05 100 6:56 100 6:57 100 7:02 0:18通勤 2 0:01 3 0:02 3 0:02 2 0:02 1 0:00 2 0:01 0:02社会参加 15 0:20 13 0:18 15 0:20 9 0:16 14 0:23 13 0:19 0:07レジャー活動 46 1:12 51 1:12 49 1:10 53 1:20 56 1:33 51 1:17 0:23マスメディア接触 97 5:43 99 6:24 98 5:50 98 5:45 98 5:45 98 5:54 0:41テレビ 95 4:33 97 5:07 95 4:39 95 4:35 96 4:30 95 4:41 0:37新聞 54 0:24 57 0:23 58 0:28 60 0:29 59 0:26 58 0:26 0:06起床在宅 98 12:59 99 13:27 99 12:50 99 12:50 98 12:24 99 12:54 1:03

【 無職 】月曜(345 人) 火曜(357 人) 水曜(353 人) 木曜(325 人) 金曜(336 人) 平日(1,716 人) 曜日差

行為者率%

全員平均時間時間 分

行為者率%

全員平均時間時間 分

行為者率%

全員平均時間時間 分

行為者率%

全員平均時間時間 分

行為者率%

全員平均時間時間 分

行為者率%

全員平均時間時間 分

全員平均時間時間 分

睡眠 99 8:21 100 8:23 99 8:15 100 8:11 100 8:09 100 8:16 0:14食事 99 1:48 100 1:51 100 1:53 100 1:51 99 1:51 100 1:51 0:05仕事 8 0:16 11 0:20 11 0:24 10 0:23 11 0:26 10 0:22 0:10仕事のつきあい 1 0:01 1 0:01 1 0:02 1 0:01 0 0:00 1 0:01 0:02家事 73 2:34 73 2:34 75 2:36 76 2:32 74 2:44 74 2:36 0:12通勤 1 0:01 2 0:02 2 0:01 2 0:01 2 0:02 2 0:02 0:01社会参加 10 0:17 12 0:17 10 0:15 10 0:16 13 0:20 11 0:17 0:05レジャー活動 53 1:48 56 1:46 62 1:56 61 2:05 61 2:00 58 1:55 0:19マスメディア接触 97 7:09 98 7:14 98 6:46 99 6:40 97 6:50 98 6:56 0:34テレビ 93 5:34 95 5:41 94 5:24 96 5:21 95 5:26 95 5:29 0:20新聞 61 0:38 60 0:38 64 0:40 60 0:39 61 0:44 61 0:40 0:06起床在宅 98 12:08 98 12:08 97 11:49 99 11:42 99 11:50 98 11:56 0:26

■は平日(月曜~金曜の平均)にくらべて統計的に高い,■は低いことを示す(信頼度 95%)* 行為者率 ・・・1 日の中で,ある行動を 15 分以上した人が全体の中で占める割合 ** 全員平均時間 ・・・ その行動をしなかった人も含めた全員の平均時間

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46  DECEMBER 2008

て,仕事のつきあいの行為者率が高い。さらに19時30分~ 21時にかけて,レジャー活動の行為者率が高い一方で,テレビの行為者率は低く,

“花の金曜日”を楽しんでいる様子がうかがえる。一方,主婦で曜日差があるのは夕方までの時

間帯である。主婦の半数が夕方に家事を始めるのは,月曜日と火曜日は16時,水曜日以降が16時30分であり,曜日差が生じるのは家事の合間ということがうかがえる。起床在宅時間の長い火曜日は,14時30分~16時の午後の時間帯で在宅率が高く(図1-2),テレビの行為者率も朝と昼と夕方のいくつかの時間帯で高くなっている。一方,起床在宅時間の短い金曜日は,10時~14時にかけて在宅率が低く,レジャー活動の行為者率は12時~14時30分にかけて高くなっている。主婦が外出を楽しむのは金曜の昼前後に多いことがうかがえる。

例外的に,月曜日は夜間にも曜日差があり,起床在宅率が22時30分以降で低くなっている。月曜日の睡眠の行為者率をみると,22時以降で高く,有職者と同様,早寝の人がやや多いといえる。

無職については,曜日別の行為者率や時間量では曜日差がほとんどなかったが,30分ごとの起床在宅率をみると,若干曜日差がうかがえた(図1-3)。週の前半の月曜日と火曜日の午前・午後で高く,後半の木曜日の昼から夕方,金曜日の午前などで低くなっている。一方,レジャー活動の行為者率は,木曜日の朝から昼,金曜日の朝などで高くなっている。この結果からは,週の前半は自宅にいて,後半は外出したり,自分の時間を楽しんだりしていることがうかがえる。ただし,無職は仕事や家事などに拘束されることが比較的少ないせいか,曜日差のある時間帯は午前・午後にばらつきがあった。

また,起床在宅時間やテレビ視聴時間の曜日差(最大値から最小値を引いたもの)をみると,主婦では,起床在宅で1時間3分,マスメディア接触で41分,テレビで37分と,有職者や無職とくらべて差が大きい。主婦の場合,月曜日は睡眠を多くとる日,火曜日は自宅でゆっくりする日,金曜日はレジャーの日というように,曜日によってめりはりが若干うかがえる。一方,有職者は,休日前の木曜日,金曜日に一定の傾向があり,金曜日は仕事のつきあいが多い日,その前日の木曜日は仕事をする人が多い日という色合いが強い。

3. 時間帯別にみた曜日差次に,行為者率や全員平均時間で曜日差のあ

る行動を中心に,30分ごとの平均行為者率をみることで,時間帯別の曜日差を検証する。起床在宅の30分ごとの平均行為者率を図1にまとめた。

はじめに有職者について,起床在宅時間の長い火曜日の在宅率をみると(図1-1),8時30分~14時30分にかけて他の曜日より高めである。仕事の行為者率・時間量の多い木曜日は,9時~10時30分,12時~13時の起床在宅率が低くなっている。次に,夜間の起床在宅率に注目すると,月曜日は19時30分~ 22時で高い一方で,金曜日は18時30分~ 22時30分が低くなっており,週の後半になるほど,夜間の起床在宅率が低くなることが読み取れる。図表は省略したが,このほかの行動においても曜日差は夜間でみられた。有職者の半数は,平日の8時30分から17時30分にかけて仕事をしており,曜日差が生じやすいのは自由時間がとれる夕方以降であるからだろう。たとえば,月曜日では23時30分~ 24時の睡眠の行為者率が高くなっていて“早寝”である。一方,金曜日では,18時以降の時間帯は全

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1009080706050403020100

(%)

時2423222120191817161514131211109876543210

月曜日火曜日水曜日木曜日金曜日

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(%)

時2423222120191817161514131211109876543210

月曜日火曜日水曜日木曜日金曜日

月曜日 8 7 4 1 2 2 2 2 2 4 11 27 49 69 83 87 87 84 77 71 60 57 56 58 71 72 68 64 59 61 64 62 64 67 77 83 84 87 90 90 87 88 86 85 69 58 34 19火曜日 10 8 5 3 2 2 2 1 4 5 13 28 54 72 84 90 90 83 78 73 65 57 54 60 70 71 66 65 62 65 68 69 66 70 77 82 86 88 91 91 89 89 87 84 75 67 44 27水曜日 16 12 7 5 2 1 2 1 3 4 12 25 48 68 81 87 86 79 71 66 58 53 51 55 66 67 66 61 58 56 56 57 59 64 73 81 87 90 92 91 90 89 85 83 70 61 45 32木曜日 14 9 6 4 2 1 2 2 3 5 13 22 50 69 85 89 89 84 77 72 59 55 50 51 64 66 67 63 54 55 57 57 60 61 69 79 86 90 89 87 86 88 87 85 74 63 41 27金曜日 10 7 3 3 2 2 1 1 1 2 10 21 43 66 82 89 89 84 73 68 53 49 46 51 60 62 59 57 54 55 54 56 56 60 69 76 86 88 88 90 89 89 86 84 73 66 42 27

1009080706050403020100

(%)

時2423222120191817161514131211109876543210

月曜日火曜日水曜日木曜日金曜日

月曜日 12 10 6 5 4 3 2 2 3 5 9 19 37 50 55 45 34 25 22 18 16 14 14 15 21 20 18 16 15 15 15 16 18 20 23 30 38 47 54 61 66 69 70 71 64 60 40 27火曜日 14 11 7 5 3 3 2 2 3 4 10 19 37 50 56 46 35 27 23 21 18 16 15 16 22 22 19 18 17 16 16 17 17 19 23 30 40 47 54 59 63 67 70 70 65 60 42 29水曜日 15 11 7 5 3 3 2 2 3 4 9 18 36 50 56 47 35 25 21 19 16 15 15 15 20 20 17 16 15 14 13 15 16 18 23 31 40 47 54 58 62 66 69 69 65 60 46 31木曜日 14 11 7 5 3 3 2 2 3 4 8 18 36 49 53 44 32 23 18 15 14 13 13 13 17 17 16 14 14 14 15 15 15 16 21 27 36 43 53 58 63 66 67 67 63 57 41 29金曜日 14 12 7 6 3 2 1 1 2 3 8 16 38 51 52 43 31 23 19 17 14 13 13 13 19 19 17 16 14 14 14 15 16 18 21 27 36 42 49 53 57 60 63 64 60 57 41 30

■は平日(月曜~金曜の平均)にくらべて統計的に高い, ■は低いことを示す(信頼度 95%)

図1-1 起床在宅の 30 分ごとの平均行為者率(有職者)

図1-2 起床在宅の 30 分ごとの平均行為者率(主婦)

図1-3 起床在宅の 30 分ごとの平均行為者率(無職)

月曜日 8 7 6 3 3 3 3 2 4 7 14 22 40 56 70 76 79 74 68 64 60 58 59 63 72 73 65 61 56 57 61 63 66 71 78 83 86 88 88 88 86 84 69 63 49 38 21 13火曜日 6 5 3 3 2 1 1 1 3 5 13 20 41 57 72 78 80 78 71 64 59 59 59 62 75 74 67 65 60 58 60 60 67 73 76 79 84 88 87 89 86 85 73 64 47 37 20 14水曜日 5 3 2 2 2 2 3 3 4 6 14 20 38 58 72 77 80 77 71 66 58 55 56 61 71 72 65 59 56 53 52 55 60 67 74 82 83 86 88 88 84 83 72 65 48 36 20 13木曜日 6 4 3 3 3 3 4 4 4 6 11 19 36 55 73 82 84 81 71 65 55 51 53 59 65 65 59 55 50 50 50 49 58 63 71 77 85 88 88 87 87 87 77 68 52 41 20 13金曜日 7 6 4 4 3 3 5 4 4 7 13 20 39 58 76 80 80 77 68 57 47 44 49 57 70 71 65 61 53 53 55 58 62 65 77 81 85 87 88 88 86 85 74 68 48 41 22 13

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4. “気分”の曜日差続いて,2006年に実施した「曜日に関する意

識調査」の結果から,曜日の気分の差がどの程度あるのかを探る。

まずは国民全体の月曜日から日曜日までの気分の結果を図2に示す。これは,月曜日から日曜日までのそれぞれの曜日について,選択肢であげたもののうちあてはまる気分について,いくつでも答えてもらったものである。曜日別に特徴をみると,月曜日は「身が引きしまるような気分」,土曜・日曜では「趣味や遊びなどに少しでも多く時間をさきたい気分」とそれぞれ20%以上が回答している。このほか,「仕事や家事・勉強などに少しでも多く時間をさきたい気分」は平日寄り,「束縛から解放されたような気分」や「誰かといっしょに過ごしたい気分」は土曜・日曜寄りの気分であることもわかる。一方で,火曜日~金曜日にかけては半数前後の人が「あてはまるものはない」としており,曜日イメージが希薄である。1993年に実施した同様の調査(「曜日意識についての調査」)でも同じ質問がされている

が,当時と比べほとんど傾向に変化はない 5)。この曜日ごとの気分差についても,有職者・

主婦・無職でどの程度違いがあるものかをみてみたい。生活時間と同様,月曜から金曜までの平日の間の違いに注目する(図3)。なお,この調査の有職者のうち土曜日が休日の人は45%,日曜日が休日である人は67%であるのに対し,月曜日~金曜日が休日の人は1 ~ 4%であった。

まず有職者は,同じ平日でも週の初めから週末にかけて回答の増減がある気分がいくつかある。「身が引きしまるような気分」は月曜日にダントツで高く,「明日のために力をとっておきたい気分」も月曜日や火曜日で高めである。逆に,「明日のことは気にかけず力を出しきれる気分」や「束縛から解放されたような気分」「誰かといっしょに過ごしたい気分」は金曜日で高く,

「ちょっと一息つけるような気分」も週末に向かうにつれ高めになる。緊張感がみなぎる週初めから週末に向かって徐々にリラックスしていくような気分のバイオリズムが読み取れよう。とはいえ,週の中日である火曜日~木曜日は「あてはまるものはない」人が半数弱を占めており,有

職者でもイメージが比較的薄い曜日といえる。

主婦の場合は,「身が引きしまるような気分」が月曜日で高く,「明日のことは気にかけず力を出しきれる気分」が金曜日で高い点は有職者と共通しているが,このほか「仕事や家事・勉強などに少しでも多く時間をさきたい気分」や「ひとりで過ごしたい

ひとりで過ごしたい気分

あてはまるものはない

誰かといっしょに過ごしたい気分

束縛から解放されたような気分

ちょっと一息つけるような気分

身が引きしまるような気分

明日のことは気にかけず力を出しきれる気分

明日のために力をとっておきたい気分

仕事や家事・勉強などに少しでも多く時間をさきたい気分

趣味や遊びなどに少しでも多く時間をさきたい気分

8

7

3

23

5

3

2

5

(39)

14

6

7

4

5

5

3

3

4

(51)

12

6

6

5

5

10

3

4

3

(49)

12

6

7

4

4

8

3

4

4

(50)

11

7

6

12

4

11

8

6

4

(42)

9

21

4

8

3

16

13

11

6

(32)

8

24

15

4

3

13

11

12

8

(27)

〈月曜〉 〈火曜〉 〈水曜〉 〈木曜〉〈金曜〉 〈土曜〉 〈日曜〉

8

図 2 曜日別の気分(複数回答・%)

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気分」が月曜日で高めである。主婦にとっては,家族を仕事や学校に送り出す週明けの月曜日が,やや特別な1日となるようだ。

無職は,平日の間の気分の差はほとんどない。有職者や主婦にとっては特徴的な月曜日や金曜日においても,「あてはまるものはない」との回答が6割前後を占める。このように平日の間の気分の曜日差についても,有職者や主婦では若干の差があるものの,無職はほとんどない,といった生活時間と同様の傾向となった。

5. “気分”と連動する生活のリズムここまで生活時間と曜日ごとの気分の

両方の側面から平日の曜日差をみてきたが,どちらにおいても有職者と主婦では曜日差が若干認められた一方,無職ではほとんど認められなかった。特に起床在宅時間やテレビ視聴時間は,有職者よりむしろ主婦で曜日差が大きかった。また時間帯別にみると,主婦や無職は起床在宅時間やレジャー活動時間が日中で曜日差が大きいのに対し,有職者は夜間に差が認められた。

上述の結果が何を示唆するのか,考察してみたい。まず曜日差があった有職者について,生活時間と気分の特徴を曜日ごとにまとめてみよう。<月曜>-週の始まり-夜は早めに帰宅-「身が引きしまる」<火曜>-週 2日目-日中を含め起床在宅率が高め-「明日のために力をとっておく」<水曜>-週の中日-生活時間・気分ともに特徴が少ない<木曜>-週 4 日目-仕事をしている人が多い-やや「一息」が増える

<金曜>-週末-夜の帰宅が遅く,レジャー・仕事のつきあいが多い-「一息」「解放」「明日のことは気にかけない」

土曜や日曜を休日にする者からみれば,きわめて常識的な関係である。つまり,気分の曜日差は,平日と休日との位置関係にもとづいた週サイクルにより規定されており,それゆえ平日・休日がはっきり分かれている有職者で差があり,無職で差がないのである。三矢は“休日”が生活時間や曜日イメージを大きく特徴づけるとした

0

10

20

30

40

50

60

70

0

10

20

30

40

50

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70

0

10

20

30

40

50

60

70

趣味や遊びなどに

少しでも多く時間を

さきたい気分

仕事や家事・勉強などに

少しでも多く時間を

さきたい気分

明日のために力を

とっておきたい気分

明日のことは気に

かけず力を

出しきれる気分

身が引きしまる

ような気分

ちょっと一息つける

ような気分

束縛から解放された

ような気分

誰かといっしょに

過ごしたい気分

ひとりで過ごしたい

気分

あてはまる

ものはない

〈有職者〉

〈主婦〉

〈無職〉

月曜 火曜 水曜 木曜 金曜

(%)

(%)

(%)

図 3 平日各曜日の気分(有職者・主婦・無職)

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が,平日においても, “休日との位置関係”が若干の曜日差を形成しているといえよう。生活行動と気分の関連性においては,曜日の気分にあわせる形で生活時間の曜日差が生み出されているといえるかもしれない。月曜日はこれから始まる1週間に備えるため早く帰宅し,金曜日は休日前の解放感から自宅外で遊ぶのである。

ではなぜ,職業を持たない主婦の曜日差が大きいのだろうか。主婦は原則有職者である夫や子どもなど家族と同居している。おそらくそうした家族の生活時間により自分の生活時間がある程度規定される一方で,日中などは自らの裁量で過ごせる時間も長いのであろう。始業時刻や終業時刻など,仕事を中心に生活時間の大半が定時化している有職者よりも,時には家族の都合,時には自分の気分などで,弾力的に変わる要素が多いのかもしれない。

放送との関係でみると,今回明らかになったような生活時間と気分の曜日差は,テレビ番組を編成するうえでも有効な情報となる。また,決まった曜日・時間に放送されるテレビ番組は,気分の曜日差を形づくるひとつの要素として考えられるかもしれない。実際,「曜日に関する意識調査・2006」の結果によると,「『○○○』という番組が放送されているので,『今日は△曜日だ』と思うこと」が「よくある」「ときどきある」人は70%にのぼるのである。

6.生活行動と気分の関係を“直接測る” 今回は曜日別データがあった2つの調査結果

から生活行動と気分の関係を考察してみたが,やはり双方の直接的な関係を検証するには至っていない。たとえば,有職者・主婦・無職を問わず,金曜日には在宅率が低い時間帯があった

が,では外出してレジャーなどを楽しむ時間だけが「束縛から解放」「ちょっと一息」という気分と直結しているのか,判断は難しい。有職者であれば仕事,主婦であれば家事といった拘束時間ですら,他の曜日とは異なる気分で過ごしていることも想像できよう。そこで,1日というスパンでの人びとの気分の変動を生活時間調査の手法で測ることができれば,気分と生活行動のより直接的な関連性を知るよすがとなるのでは,と考えた。1日の“気分”を測定するためには,その定義や分類の考え方が大きな課題となるが,今年10月,私たちなりに定義した生活時間と気分の両方をひとつの調査票で測定する調査を実施した。私たちはこの調査から,特にテレビ視聴を中心としたメディア利用と気分の関連性をさまざまな角度から検証することにしている。現在は集計中であり,主な結果は本誌2009年4月号で報告したいと考えている。

(なかの さちこ / もろふじ えみ)

注:1)中野佐知子「生活時間と意識の関連は明らかに

できるか」『放送研究と調査』2008 年 1 月号など。2)2005 年国民生活時間調査の結果については,

吉田理恵・中野佐知子・渡辺洋子「日本人の生活時間・2005」『放送研究と調査』2006 年 4 月号を参照のこと。

3)近年のものとしては,・ 三矢惠子「“休日”が変える曜日のイメージ

と生活」『放送研究と調査』1993 年 9 月号・ 牧田徹雄「生活時間の曜日別比較分析」同

1997 年 2 月号4)生活時間の曜日差を生じさせる原因として,そ

の日の天候による影響も考えられよう。参考までに今回の調査の月曜日~金曜日の天候は,月曜日・火曜日で「ほとんど1日中,雨が降った」という人が 2 割弱あったが,水曜日~金曜日はほぼ晴天に恵まれていた。

5)結果の詳細は,3)の三矢論文を参照のこと。