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そこが知りたかった! 制吐剤の処方解析と患者指導
中信がん薬薬連携ワーキンググループ 第2回勉強会
2016/09/29
相澤病院 薬剤管理情報センター 鶴川百合
本日の内容
支持療法の重要性
悪心・嘔吐の原因
催吐性リスクに応じた制吐剤
悪心・嘔吐に対するアプローチ
患者指導
がん薬物療法の目的は?
その真の目的は・・・
治癒?
延命?
症状緩和?
再発予防?
化学療法の目的≠「抗がん剤を投与」
化学療法の有効性 A群:治癒が期待できる B群:延命が期待できる
急性骨髄性白血病、 急性リンパ球性白血病、 ホジキンリンパ腫、 非ホジキンリンパ腫(中・高悪性度)、 胚細胞腫瘍、絨毛がん
乳がん、卵巣がん、 小細胞肺がん、大腸がん、 多発性骨髄腫、膀胱がん、 非ホジキンリンパ腫(低悪性度)、 慢性骨髄性白血病、骨肉腫
C群:症状改善が 期待できる
D群:抗がん剤の効果は あまり期待できない
軟部組織腫瘍、頭頸部がん、 食道がん、子宮がん、 非小細胞肺がん、胃がん、 前立腺がん、膵がん、 脳腫瘍、腎がん
悪性黒色腫、 肝がん、 甲状腺がん
•A群:治癒が期待できる
– 血液悪性腫瘍、一部の薬物療法高感受性固形がん
– 薬物療法によってのみ完全治癒が期待できる場合、その目的は根治・治癒となる
•B群:延命が期待できる
– 薬物療法により、明らかな生存期間の延長が 期待できる
•C・D群:症状改善が期待できる/効果が低い
– 多くの進行固形がんにおいては薬物療法のみで 治癒を目指すことは困難
– 目的は、症状緩和、生存期間の延長
化学療法の有効性
CDDP+強力支持療法 1985-1990
CDDP+支持療法 1980-1984
CDDPなし 1965-1979
(国立がんセンター)
生
存
率
100%
50
0 5年
胚細胞腫の治療成績の推移
支持療法の重要性
術前化学療法(Neo-adjuvant Chemotherapy)
根治的手術を目的にした化学療法 ダウンステージングを行うことで切除を可能に
縮小手術により、正常組織の機能温存が可能
美容的な目的(乳房温存)
腫瘍に対する薬物療法の感受性を評価できる
副作用の考え方は? 全身状態良好
根治的手術により、治癒を目指した治療
適切な投与量・スケジュールを遵守するために、
ある程度副作用を許容しながら治療を行う
副作用の考え方(化学療法の分類別)
術後補助化学療法(Adjuvant Chemotherapy)
術後の再発予防を目的とした化学療法
手術後の微小転移を根絶し、治癒率向上
対象は再発高危険群
なるべく早期に治療開始
副作用の考え方は?
一定期間のみ投与(手術による全身状態考慮)
目的は治癒率向上、再発予防
適切な投与量・スケジュールを遵守するために、
ある程度副作用を許容しながら治療を行う
副作用の考え方(化学療法の分類別)
抗がん剤投与量と予後との関連
Bonadonna G, et al. N Engl J Med. 1995: 332: 901-906
<術後補助化学療法(CMF)の投与量と予後との関連>
切除不能・再発に対する化学療法
延命を目的とした化学療法
化学療法のみでは根治・治癒は不可能
再発を繰り返すこともしばしば
がんに伴う症状を緩和し、がんとの共存を目指す
副作用の考え方は?
ゴールの見えない治療(治療の終わりはどこ?)
全身状態はあまり良くない場合が多い
日常生活が強く影響を与え、QOLの維持を
困難にしてしまうような重い副作用は回避すべき
副作用がつらい場合は減量・休薬を考慮
副作用の考え方(化学療法の分類別)
発熱、感染症、脱水、
栄養障害、臓器障害
抗がん剤の減量
治療スケジュールの延期
抗がん治療効果の減弱
治療率↓、緩和↓、延命↓
中長期的な問題点
がん薬物療法に伴う副作用の問題点
発熱、感染症、脱水、
栄養障害、臓器障害
入院・入院期間延長 QOL低下
コスト増
治療関連死
短期的な問題点
悪心・嘔吐
治療に伴う不快な
体験の記憶
→治療意欲低下
QOL低下
症状の持続
→脱水
電解質異常
低栄養
これらを訴える患者さんへの適切なアプローチとは?
悪心/嘔吐の分類 •急性 acute emesis
– 投与後24時間以内に出現
•遅発性 delayed emesis – 24時間後から約1週間程度持続
•予期性 anticipatory nausea and vomiting – 抗がん薬のことを考えただけで誘発
•突発性 breakthrough nausea and vomiting – 制吐薬の予防的投与にも関わらず発現
(制吐薬適正使用ガイドライン 2015年10月【第2版】 日本癌治療学会/編より引用 )
平滑筋 細胞
迷走神経 終末
延髄 (冠状断面)
腸クロム 親和性
(EC)細胞
セロトニン
迷走神経 終末
迷走神経 求心路
迷走神経 遠心路
アセチル コリン
5-HT3受容体
セロトニンおよびセロトニン受容体経路 CTZ
“嘔吐中枢” 孤束核
急性症状に関与
平滑筋 細胞
迷走神経 終末
迷走神経 遠心路
アセチル コリン
延髄 (冠状断面)
CTZ “嘔吐中枢” 孤束核
サブスタンスPおよびNK1受容体経路
サブスタンスP
1. DeVane CL. Pharmacotherapy. 2001;21(9):1061–1069.
2. Hargreaves R. J Clin Psychiatry. 2002;63(suppl 11):18–24.
3. Hesketh PJ et al. Eur J Cancer. 2003;39(8):1074–1080.
4. Hesketh PJ. Support Care Cancer. 2001;9(5):350–354.
NK1受容体
急性/遅発性症状に関与
嘔吐メカニズムと制吐剤の主な作用点
嘔吐中枢
SP
SP
腸クロム親和性細胞
抗悪性
腫瘍剤
サブスタンスP
サブスタンスP
NK1受容体
NK1受容体
5‐HT3受容体
セロトニン
中枢性経路
末梢性経路(消化管)
悪心・嘔吐
求心性迷走神経
×
×
5-HT3拮抗薬 ×
悪心・嘔吐の
予防
化学受容器引金帯(CTZ)
イメンドⓇ
イメンドⓇ
5-HT3拮抗薬
パロノセトロン(アロキシ) 作用時間が長く、遅発性にも有効
→day2以降の5-HT3拮抗薬は不要
5-HT3拮抗薬の副作用
便秘 ex.ラモセトロン(イリボー) →これが原因で悪心増強の可能性もあり
→便通の確認は重要
制吐剤の副作用
(制吐薬適正使用ガイドライン 2015年10月【第2版】 日本癌治療学会/編より引用 一部改変)
5-HT3受容体拮抗薬
NK1受容体拮抗薬 デキサメタ
ゾン
フェノチアジン系
ベンゾジアゼピン系
主な副作用 便秘
頭痛
しゃっくり
便秘
頭痛
注入部位反応*
*プロイメンド注
誘発感染症
感染症の増悪
不眠症
消化性潰瘍
錐体外路
症状
眠気
めまい
発現頻度は低いが重篤な副作用
QT延長
ショック、アナフィラキシー
皮膚粘膜眼症候群
アナフィラキシー
高血糖 遅発性ジスキネジア
悪性症候群
オランザピン→糖尿病に禁忌
抗がん剤の催吐リスク分類
抗がん剤の催吐性リスク分類
(制吐薬適正使用ガイドライン 2015年10月【第2版】 日本癌治療学会/編より引用 一部改変)
高度催吐リスクの化学療法
高度催吐リスク >90%
①アンスラサイクリン系+α
<乳がん> • AC療法:ドキソルビシン+シクロホスファミド
• EC療法:エピルビシン+シクロホスファミド
• FEC100療法:エピルビシン+CPA+5-FU
医師診察
治療実施の指示
イメンド125mg内服
←1時間待ち→
制吐剤の前投薬
5分点滴
アロキシ0.75mg
DEX 9.9mg
生食50mL
エピルビシン
15分点滴
注意)血管痛、血管外漏出、尿など体液の着色
シクロホスファミド
30分点滴
生食
フラッシュ
5-FU
5分点滴
赤い点滴=アンスラサイクリン
◆組み合わせの治療は催吐リスク高度 例外)
悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫) CHOP療法;シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、PSL
THP-COP療法;ドキソルビシンの代わりにテラルビシン
•高用量のプレドニン内服 5日間
→デカドロンなしでも吐き気起こりにくい
→イメンド併用時の減量はしない(治療目的、相互作用無し) •リツキシマブ併用の場合
解熱鎮痛薬+抗ヒスタミン薬の前投薬 1日分
◆脱毛リスクも高度
◆血管外漏出注意;起壊死性
高度催吐リスク >90% ②シスプラチン <外来でも用いられるレジメン例>
がん種 併用抗がん剤
小細胞
肺がん
エトポシド
イリノテカン
非小細胞
肺がん
ドセタキセル
ペメトレキセド
胃がん TS−1
膀胱がん ゲムシタビン
③その他 •膵臓がんのFOLFIRINOX •大腸がんのFOLFOXIRI •ホジキンリンパ腫のABVD(ダカルバジンを含む)など
デキサメタゾン 9.9mg パロノセトロン 0.75mg
生食 50mL
併用抗がん剤
MgSO4 含有 補液 500mL
マンニトール 300mL
シスプラチン 60-80mg/㎡ 生食250mL
補液 500mL
5分
30分
30分
60分
60分
Day1-3 アプレピタント内服 Day2-3 デキサメタゾン 8mg内服
中等度催吐リスクの化学療法
中等度催吐リスクの例
◆カルボプラチン →肺がんや膀胱がん、婦人科がんの組み合わせ治療
遮光
◆イリノテカン →下痢、脱毛
FOLFIRI、IRIS(大腸がん)
◆オキサリプラチン →冷感刺激、末梢神経障害
FOLFOX、XELOX(大腸がん) SOX(胃がん、大腸がん)
◆内服もあり →イマチニブ、クリゾチニブ、テモゾロミドなど
軽度催吐リスクの化学療法
最小度催吐リスクの化学療法
軽度催吐リスクの例
◆ドセタキセル →浮腫;予防としてデカドロン(8mg/日 3日分など)、利尿剤
関節痛;NSAIDs投与
爪、皮膚症状
◆パクリタキセル →過敏反応、アルコール含有
末梢神経障害、関節痛
◆ゲムシタビン →膵臓がん、胆管がんのkey drug
◆内服 →TS−1、UFT、カペシタビン、アレクチニブ、スニチニブなど
最小度催吐リスクの例
◆多くの分子標的薬 →リツキシマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ
トラスツズマブ など
◆内服 →ゲフィチニブ、エルロチニブ、ソラフェニブなど
代わりに分子標的薬特有の副作用に注意
前回のおさらい
<テスト55さん 男性>
ティーエスワン配合OD錠T20 6T2×朝夕食後 14日分
デカドロン錠4mg 2T2×朝昼食後 2日分
ファモチジンD錠20mg 2T2×朝夕食後 2日分
今回の症例
<テスト55さん 男性> 3週間後
ティーエスワン配合OD錠T25 4T2×朝夕食後 14日分
イメンドカプセルセット 1セット
デカドロン錠4mg 1T1×朝食後 2日分
ファモチジンD錠20mg 2T2×朝夕食後 2日分
なにがおこっているのでしょうか?
患者さんにはどのように説明しますか?
症例2についてもお考えください。
中等度催吐リスクの化学療法
適正使用ガイド TS-1 単独投与の場合
有害事象共通用語基準 ver4.0 日本語訳JCOG版
Grade 1 Grade 2 Grade 3 Grade 4 Grade 5
•軽症 •治療を要さない
•中等症 •最小限/局所的/非侵襲的治療を要する •身の回り以外の日常生活動作の制限
•重症または医学的に重大であるが、ただちに生命を脅かすものではない •入院期間の延長 •身の回りの日常生活動作の制限
•生命を脅かす •緊急処置を要する
•有害事象による死亡
JCOGホームページ:有害事象共通用語基準 v4.0 日本語訳JCOG版より抜粋
(NCI Common Terminology Criteria for Adverse Events)
Grade(重症度)の定義
悪心・嘔吐の重症度分類 (CTCAE ver.4.0) Grade 1 Grade 2 Grade 3 Grade 4
悪心 摂食習慣に 影響のない 食欲低下
顕著な体重減少 脱水または栄養 失調を伴わない 経口摂取量の減少
カロリーや水分の 経口摂取が不十分;経管栄養/TPN/入院を要する
ー
嘔吐 24時間に1〜 2エピソード*の嘔吐
24時間に3〜5 エピソードの嘔吐
24時間に6エピソード以上の嘔吐;
TPNまたは入院を要する
生命を脅かす;
緊急処置を要する
JCOGホームページ:有害事象共通用語基準 v4.0 日本語訳JCOG版より抜粋
*1エピソード:5分以上間隔が空いたもの
グレードは治療継続の目安
Grade1 Grade2 Grade3
日常生活への支障あり→病院への連絡を勧める!
患者指導 点滴当日の、吐き気(悪心)や嘔吐は,脳の中にある神経が刺激されることでおこります。点滴当日は、吐き気を抑える薬の投与が行われています。しかし、点滴当日以降も悪心・吐き気・嘔吐が強い場合の対応もございますので,遠慮せずお申し出下さい。
嘔気・嘔吐の予防
今回の点滴治療で、吐き気などの症状が強くでた場合は、次回から、抗がん剤治療を受ける日は食事の量を少なめにしたり、治療の数時間前は食べないようにするなどの工夫で、軽減できることがあります。(特に乳製品は消化時間が長いので、控えたほうが良いでしょう) 体を締め付ける衣服は避けたほうが良いでしょう。
嘔気・嘔吐が起きたとき
安静を心がけ、横向きに寝て体を内側に曲げると良いでしょう。また冷たい水や番茶、レモン水でうがいをしたり、氷やキャンディーなどを口に含むと効果的です。
においに敏感になっている場合には、花や香水などのにおいが強いものを避け、また室内の換気をよくして、リフレッシュすると良いでしょう。
ゆっくりと腹式呼吸を行うことで嘔気が楽になることがあります。
患者指導
食事の工夫
無理せず食べられるものを探し、食事はゆっくりと時間をかけたり、少量ずつ可能な範囲で食べると良いでしょう。 料理では、特に揚げ物、煮物、煮魚や焼き魚など
は避けることで、嘔気を軽減することもあります。また料理は冷やしたり、冷まして食べることで,あたたかいものより、においが軽減し食べやすくなることがあります。
市販の栄養補助食品などで、少量でもカロリーや栄養素を補うことができるものがあるので、試してみても良いでしょう。 食事ごとに吐いてしまうような激しいとき
は、1~2食、食事は差し控えてみましょう。この場合も水分はできるだけとりましょう。
【食べやすい食品の例】
卵豆腐、茶碗蒸し、絹ごし豆腐、ゼリー、プリン、シャーベット
お粥、煮込みうどん、雑炊、野菜のスープ煮 ,ビスケット
クラッカー、クッキー
→大鵬薬品HP 「サバイバーシップ」で検索
今回の症例
<乳がん30歳代さん 女性>
イメンドカプセルセット 1セット
デカドロン錠4mg 2T 2×朝昼食後 3日分
ファモチジンD錠20mg 2T 2×朝夕食後
3日分
ジプレキサ錠2.5mg 1T 1×寝る前
4日分
ロラゼパム錠0.5mg 1T
治療前日夜と当日朝 2回分
あなたなら、どう考えますか?
Aレジメン(初回)を施行予定の患者
悪心/嘔吐のリスクが高いのはどっち?
20歳女性 60歳男性
悪心・嘔吐の発現に影響する 主なリスク因子
若年者(50歳未満)
女性
アルコール常用なし
乗り物酔い
妊娠に伴う嘔吐経験(つわり)
前治療にて悪心・嘔吐あり
副作用への不安 Roila F, et al. Ann Oncol, 17:20-28, 2006
Navari RM. J Support Oncol, 1: 89-103, 2003
悪心・嘔吐とは…
本当に薬が原因?
(N Engl J Med 2016;374:1356-67.)
難治性
予期性
突発性
予期性
Key word→「抗がん剤をやる前から」気持ち悪い
• 最善の対策は患者に悪心・嘔吐を経験させないこと
支持療法は適切か?
その人の吐き気のリスクはどうか(過去の経験など)
• ベンゾジアゼピン系抗不安薬が有効
ロラゼパム 1回0.5~1.5mg 治療前夜と治療当日1~2時間前に内服
アルプラゾラム 治療前夜から1日2~3回服用 1回0.2~0.8mg
オランザピンの効果 • 過去に化学療法の施行歴がなく, シスプラチン ≥70mg/m2もしくはシクロホスファミド 600mg/m2 +ドキソルビシン
60mg/m2を使用する化学療法を予定している患者 380例を対象としたDB-
RCT.
• デキサメサゾン + アプレピタント/ホサプレピタント + 5-HT3受容体阻害薬に加えて, オランザピン 10mg/d vs
Placebo群に割り付け, 4日間継続
・嘔吐/悪心の頻度を比較
• ECOG PS 0-2
• Cr≤2.0mg/dL, AST,ALT≤3ULN,
Neu≥1500/µL, 重度の認知機能障害(-
), 中枢神経疾患(-), 他の抗精神病薬の使用(-), 不整脈やコントロール不良のCHF既往(-)などを満たす群
(N Engl J Med 2016;375:134-42.)
化学療法後~120時間における悪心(-)は有意にオランザピン併用群で多い結果
120hにおけるNNTは6.5
(N Engl J Med 2016;375:134-42.)
オランザピンの効果
悪心・嘔吐へのアプローチ
化学療法施行時(オピオイド使用時)の悪心・嘔吐
≪陥りやすい落とし穴≫
化学療法(オピオイド)による影響を前提
薬剤の関連が強いかどうかだけに注目
薬剤の影響が「ある程度仕方がない」という考え
真の原因を見逃す可能性
基本的なアプローチの重要性を再確認
病歴の聴取
•1つの方法
– OPQRSTに注目して聴取
O :Onset(発症様式:突然か、緩徐発症かなど)
P :Palliative/Provocative factor(増悪・寛解因子)
Q :Quality/Quantity(症状の性質)
R :Region/Radiation/Related symptom (場所・拡散の有無、関連症状)
S :Severity(強さ)
T :Temporal characteristics(時間経過、日内変動)
O: 発症様式
病歴 可能性のある診断
発症様式
急性 胆嚢炎、食中毒、胃腸炎、薬剤、膵炎
徐々に GERD、胃麻痺、薬剤、代謝性疾患、妊娠
噴出するような嘔吐 頭蓋内圧亢進(悪心を伴わず)
症状のタイミング
朝食前 アルコール、頭蓋内圧上昇、妊娠、尿毒症
食事中または食直後 精神的要因(消化性潰瘍や幽門狭窄は否定的に)
食後1~4時間後 消化性潰瘍、消化管の悪性腫瘍、胃麻痺
継続している 転換性障害、うつ
不規則 うつ
「Resident」 vol.7 No.1より一部改訂
SPIRITS 試験
Koizumi W, et al. Lancet Oncol 2008; 9:215-221
化学療法との関係は…?
S-1による悪心・嘔吐の発現時期(胃癌の使用成績調査)
悪心・嘔吐の発現は1 週目が一番多く、その後徐々に減少 4 週間以内の発現例は全体(n=734 例)の72.3% 初発までの中央値は10 日(n=593 例)
P: 増悪・寛解因子
増悪・寛解因子 可能性のある診断
体動、頭位変換で増悪 前庭器系
経口摂取により増悪、嘔吐後に嘔気が軽減 消化管閉塞(通過障害)
経口摂取により症状改善 胃・十二指腸潰瘍
胸やけ、臥床で増悪 逆流性食道炎
朝に増悪 中枢神経系、頭蓋内占拠病変
•Palliative/Provocative factor(増悪・寛解因子)
「Resident」 vol.7 No.1より一部改訂
R: 関連(随伴)症状
関連性状 可能性のある診断
頭痛、神経学的異常 頭頸部疾患
めまい、難聴、耳鳴り 内耳疾患
多飲、多尿、痩せ、発汗、意識障害 代謝性疾患
月経、性器出血 妊娠、婦人科疾患
項部硬直 髄膜炎(感染、がん性)
失神、早期満腹感 自律神経異常
腹部蠕動音の低下、腹部膨満、硬便、しぶり腹 便秘
便秘、疝痛 消化管閉塞
右季肋部痛 胆嚢、肝疾患
心窩部痛、背部痛 膵炎
発熱、下痢 胃腸炎
•Region/Radiation/Related symptom(関連症状)
「Resident」 vol.7 No.1より一部改訂
悪心・嘔吐へのアプローチ
OPQRSTなどの方法により病歴を聴取
薬剤が原因であると考えた場合…
病歴聴取より得た情報と合わない、
もしくは矛盾する部分がないか?
薬剤による悪心・嘔吐の可能性 ➔ 原因薬剤を挙げる
ジゴキシン 抗がん剤 抗アルツハイマー病薬
NSAIDs 抗てんかん薬 SSRI、SNRI
エリスロマイシン 抗菌薬 ビタミンD製剤
オピオイド 抗不整脈薬 リチウム
テオフィリン 経口避妊薬 抗パーキンソン病
まとめ
1. 目標: 発現予防と過不足のない適切な治療
2. 制吐薬の選択は予定する抗がん薬の催吐制リスク、過去の制吐療法の効果、患者背景因子を考慮
3. 各種制吐薬特有の副作用を考慮
4. がん治療に直接起因しない悪心・嘔吐の原因
5. 自己管理に関する患者教育・指導
6. 生活・環境における工夫や整備
7. がん治療の一環;多職種連携の
チーム医療での実施が重要
(制吐薬適正使用ガイドライン 2015年10月【第2版】 日本癌治療学会/編より引用 一部改変)
ご清聴ありがとうございました