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徳之島地域 畑地かんがい営農ビジョン 大地の恵みを次世代へ!」 ~「亜熱帯性の気候」と「畑かん」で徳之島の農業がワイドに変わる!~ 「雨待ち農業からの脱却」 平成26年3月 徳之島地域総合営農推進本部

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徳之島地域 畑地かんがい営農ビジョン

「大地と水の恵みを次世代へ!」

~「亜熱帯性の気候」と「畑かん」で徳之島の農業がワイドに変わる!~

「雨待ち農業からの脱却」

平成26年3月

徳之島地域総合営農推進本部

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◆◆◆◆◆ 目 次 ◆◆◆◆◆

第1章 畑地かんがい営農ビジョンの策定の考え方 ・・・・・・・・・ 1

1 策定の趣旨 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

2 性格と役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

3 策定主体 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

4 計画期間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

第2章 徳之島地域の主な特性

1 畑かん施設の整備状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

2 農業の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

第3章 徳之島地域が目指す将来の姿 ・・・・・・・・・・・・・・・ 8

1 営農ビジョンの目標 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

2 推進品目の生産目標 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

第4章 畑地かんがい営農の課題と取組の方向性 ・・・・・・・・・・ 11

1 地域(畑かん)営農の仕組みづくり ・・・・・・・・・・ 11

2 畑かん営農を支える担い手の育成 ・・・・・・・・・・・ 14

3 畑かんを活用した生産性の高い産地づくり ・・・・・・・ 16

第5章 アクションプログラム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

1 策定の趣旨 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

2 推進期間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

3 取り組み方針 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

第6章 町別畑地かんがい営農の将来方向 ・・・・・・・・・・・・・ 32

1 徳之島町 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32

2 天城町 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39

3 伊仙町 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47

参考資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54

「イメージキャラクターについて」

※ ウギもんの「ウギ」とは,島の方言で「さとうきび」

※ 島を象徴する作物の精霊をイメージして描かれている

・体は基幹作物の「さとうきび」

・肩は高収益作物の「マンゴー」

・靴はかごしまブランド品目の「ばれいしょ(春一番)」

・手には魔法の杖「スプリンクラー」

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は じ め に

徳之島の農業は,さとうきびを基幹作物として,肉用牛,野菜等を組合せた複

合的な農業が行われています。一方,離島という立地条件や降雨の偏りが大きい

ことにより,夏場の干ばつや台風による潮風害を受けやすいため,天候頼みの不

安定な農業経営を強いられています。

このため,徳之島地域では,平成9年度より大規模畑地かんがい事業に取り組

んでおり,平成27年度には徳之島ダムが一部通水開始となり,今後,平成33

年度を目標に3,451haという広大な畑地にかんがい施設が整備されます。

この畑地かんがいの整備に伴い,計画的な水利用による生産性の向上や省力化

が図られるとともに,「亜熱帯性の気候」を生かした戦略的な園芸作物の生産拡

大はもとより,畑地かんがい受益農家の所得向上と地域経済の活性化が期待され

ています。

このような中,畑地かんがいを活用した地域農業の基本目標を明らかにし,受

益地でどのような農作物を栽培し,どのような営農体系を目指すか,関係機関・

団体はどのような支援を行うかなど,具体的な方向を示すことが重要であること

から,今般,「徳之島地域畑地かんがい営農ビジョン」を策定しました。

徳之島ダムの完成はチャンスです。この営農ビジョンの実現に向け,「長寿・

子宝」である徳之島の「島んちゅ」が,戦略的な畑地かんがい営農にチャレンジ

し,生産性の高い農業にチェンジする。そして「大地と水の恵みを次世代へ」つ

なぐ(紡ぐ)各種取組が継続的に実施され,受益農家が夢と誇りを持てる強い農

業の島となるよう,受益農家と関係機関・団体が一体となって取り組んでまいり

ますので,皆様のご理解とご協力をお願いします。

徳之島地域総合営農推進本部

本部長 大久保 明

(伊仙町長)

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1 策定の趣旨

徳之島地域は,さとうきび,ばれいしょ,肉用牛を基幹とする県内有数の畑作農業地帯

ですが,降水量のほとんどが梅雨期(5~6月)と台風常襲時に集中し,7~10月に干

ばつ被害がしばしば発生するため,安定生産の実現は困難な状況にあります。

今後,畑地かんがい(以下,畑かん)施設の整備に伴い,通水面積が飛躍的に拡大して

いく中,水利用による基幹作物の更なる生産性の向上や,持続的栽培が可能な高収益性作

物の計画的導入を図り,生産技術と農業経営の改善に積極的に取り組み,受益農家の所得

向上に資することが喫緊の課題となっています。

このような中,地域の振興方向や重点品目等を明らかにした「徳之島地域畑地かんがい

営農ビジョン」(以下,営農ビジョン)を策定し,受益農家と関係機関・団体が一体とな

って畑かん営農を積極的に推進します。

2 性格と役割

(1)この営農ビジョンは,畑かんを活用した地域農業の基本目標を明らかにし,受益地で

どのような農作物を栽培し,どのような営農体系を目指すかなど,具体的な方向を示

すものです。

(2)この営農ビジョンは,受益農家と関係機関・団体にとって,生産振興や経営改善の指

針となるものです。

(3)この営農ビジョンは,10年後の奄美群島のあるべき姿を描き,その実現へ向けた取

り組みの方向性を共有する「奄美地域将来ビジョン」と「奄美群島成長戦略ビジョン」

の農業振興とリンクするものです。

3 策定主体

徳之島地域総合営農推進本部

徳之島町,天城町,伊仙町

徳之島町農業委員会,天城町農業委員会,伊仙町農業委員会

あまみ農業協同組合徳之島事業本部,あまみ農業協同組合天城事業本部

南大島農業共済組合

南西糖業株式会社徳之島事業本部

徳之島用水土地改良区,徳之島土地改良区,伊仙町土地改良区

土地改良事業団体連合会徳之島支部

九州農政局徳之島用水農業水利事業所

鹿児島県(徳之島事務所農業普及課,農村整備課,農業開発総合センター徳之島支場,

中央家畜保健衛生所徳之島支所,徳之島高等学校)

第1章 畑地かんがい営農ビジョンの策定の考え方

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4 計画期間

この営農ビジョンの目標年度は,通水後,畑かん営農の定着が見込まれる概ね10年後

の,平成35年度とします。

なお,今回は,平成27年度の徳之島用水地区の一部通水開始に合わせて,営農ビジョ

ンを策定しますが,平成30年度には中間検証を行い,施設整備の進捗状況と社会情勢等

を見ながら,計画期間内に2期営農ビジョンとして,ビジョンの見直しを行うこともあり

ます。

また,2期営農ビジョンの検討に際しては,県営ダム受益地を取り込むことを視野に入

れています。

○通水時期と営農ビジョン策定・目標年度

通 水 時 期 計 画 期 間

一部通水開始 全面通水(目標) 策定年度 目標年度

徳之島町 平成27年度 平成33年度 平成25年度 平成35年度

天 城 町 平成27年度 平成33年度 平成25年度 平成35年度

伊 仙 町 平成27年度 平成33年度 平成25年度 平成35年度

※ 徳之島ダムの湛水試験やパイプラインの通水試験が順調に進捗すれば,一部区域では平成26年度

末に通水を開始する予定。

※ 全面通水とは,すべての受益地で給水栓を開けるとダムの水が利用できること。

○徳之島ダム受益地の範囲(ha)

町 名 耕地面積 受益面積 受益割合

徳之島町 2,330 1,068 46%

天 城 町 2,120 1,346 63%

伊 仙 町 2,430 1,037 43%

合 計 6,880 3,451 50%

可能性が広がる徳之島の広大な「大地」 豊富な「水」(徳之島ダム)

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1 畑かん施設の整備状況

徳之島地域では,平成9年度から大規模畑かん事業がスタート

年 度 25 26 27 28 29 30 31 32 33

国営事業 1期完了

一部通水開始

2期完了

県営事業

一部通水開始 通水面積を順次拡大 完了(目標)

配管面積 1,397 1,512 1,747 2,170 2,615 3,075 3,451 3,451 3,451

利用可能 0 0 836 1,192 1,510 1,911 2,321 2,922 3,451

※1 配管面積:給水栓取付管までの設置面積 徳之島事務所農村整備課

※2 利用可能:給水栓を開けると水が出る面積 (平成26年1月現在)

2 農業の現状

(1)農家構造の変化

全国的に農家が減少する中,徳之島地域においても,高齢化等を背景に農家が減少して

います。特に,主業農家や準主業農家の減少が著しく,自給的農家や副業的農家も減少傾

向にあり,生産力の脆弱化が懸念されます。

また,認定農業者や農業生産法人はやや横ばいから微減傾向にあり,高齢化の進行が農

家構造の変化を助長していることが伺えます。

今後,新規就農者の育成・確保や経営感覚の優れた認定農業者の法人化,他産業からの

参入促進等による担い手育成が不可欠です。

○農家数の推移 (単位:戸,%)

平成12年 平成17年 平成22年 22年/12年比

総農家数 3,355 2,901 2,713 80.9

自給的農家 303 285 274 90.4

販売農家 3,052 2,616 2,439 79.9

主業農家 1,168 868 881 75.4

準主業農家 561 482 437 77.9

副業的農家 1,323 1,266 1,121 84.7

資料:2010農林業センサス

※各農家数は,徳之島町,天城町,伊仙町の合計

第2章 徳之島地域の主な特性

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○販売農家の農業就業人口と高齢化 (単位:人,%)

平成12年 平成22年 65才以上農家

販売農家 65才以上 販売農家 65才以上 割合の増加率

人 口 人数 割合 人 口 人数 割合 (22年-12年)

徳之島町 1,469 825 56.2 1,076 589 54.7 -1.4

天 城 町 1,626 766 47.1 1,217 657 54.0 6.9

伊 仙 町 1,776 958 53.9 1,127 678 60.2 6.2

地 域 計 4,871 2,549 52.3 3,420 1,924 56.3 3.9

県 計 107,189 56,499 52.7 74,364 45,870 61.7 9.0

資料:2010農林業センサス

○認定農業者の推移 (単位:戸)

H14 H19 H20 H21 H22 H23 H24

計 個人 法人

徳之島町 69 96 107 116 117 118 117 109 8

天 城 町 102 99 121 125 132 132 103 101 2

伊 仙 町 85 145 145 128 113 158 158 154 4

合 計 256 340 373 369 362 408 378 364 14

出典:奄美農林水産業の動向(平成25年3月末現在)

(2)農業生産構造の現状

徳之島地域は,亜熱帯性の気候や広大な農地に恵まれ,さとうきび,ばれいしょ,肉用

牛を基幹作物とし,これら3品目や花き,果樹等を組み合わせた営農が展開されています。

特に,広い土地条件を背景に認定農業者や青年農業者の多くは,経営拡大を志向してお

り,さとうきびの大規模経営や肉用牛の多頭飼育農家が形成されつつあります。

また,冬季の温暖な気候や赤土という南西諸島特有の土壌特性を生かしたばれいしょは,

かごしまブランド産地指定も受けて,作付けは増加傾向であり,マンゴー,パッションフ

ルーツなどのトロピカルフルーツを生産する果樹農家やソリダゴなどの施設花き農家も育

ちつつあります。

ばれいしょの防除 面積拡大が進むマンゴ-

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○畑かん受益地内の作付状況 (単位:ha,%)

品目名 徳之島町 天城町 伊仙町 計 構成比

さとうきび 643 891 546 2,080 56.8

飼料作物 172 332 276 780 21.3

野菜 224.1 193.2 292.6 709.9 19.4

ばれいしょ 212 178 283 673 18.4

にんじん 0.9 3.8 0.6 5.3 0.1

しょうが 3.1 5.3 2.7 11.1 0.3

かぼちゃ 0 0.3 1.7 2.0 0.1

さといも 2.8 0.8 0 3.6 0.1

にがうり 0.6 0.1 1.0 1.7 0.05

オクラ 0 0 1.2 1.2 0.03

実えんどう 0.2 0 0.7 0.9 0.02

さやいんげん 0.2 0.3 0 0.4 0.01

枝豆 0 0 0 0 0

にんにく 1.6 2.8 0.2 4.6 0.1

トマト 0.4 0 0.3 0.7 0.02

その他野菜 2.3 1.8 1.2 5.3 0.1

花き 1.0 0.2 0.1 1.3 0.04

ソリダゴ 0.6 0 0 0.6 0.02

トルコギキョウ 0 0 0 0 0

グラジオラス 0.1 0 0 0.1 0

その他花き 0.3 0.2 0.1 0.6 0.02

果樹 12.1 13.4 3.6 29.1 0.8

マンゴー 2.8 6.3 2.5 11.6 0.3

パッションフルーツ 0.1 2.0 0 2.1 0.1

たんかん 8.4 4.3 0.5 13.2 0.4

パイナップル 0.4 0.1 0.4 0.9 0.02

ドラゴンフルーツ 0.2 0.3 0.2 0.7 0.02

その他果樹 0.2 0.4 0 0.6 0.02

工芸作物 5.4 23.8 22.7 51.9 1.4

茶 0.6 13.3 0.3 14.2 0.4

ごま 1.0 8.0 17.2 16.2 0.7

落花生 1.1 0.7 4.7 6.5 0.2

その他工芸作物 2.7 1.8 0.5 5.0 0.1

その他 0.7 8.8 0.5 10.0 0.3

総計 1,058.3 1,462.4 1,141.5 3,662.2 100

徳之島用水地区作付調査データ(平成24年度実施)

※総計は,さとうきびやばれいしょ,飼料作物等の輪作により,受益面積とは一致しない。

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○畑かん受益地内の作付調査

平成24~25年に,徳之島ダム受益

地(3,451ha)の夏・冬作の作付調査を

行いました。

基幹作物である「さとうきび」(57%),

「飼料作物」(21%),「ばれいしょ」

(18%)」の3品目で,全体の96%を

占め,その他品目は僅か4%程度です。

(3)畑かん営農に対する受益農家の意識

平成25年6月から平成26年3月にかけて,畑かん整備の事業説明会等で,延べ

802人の受益農家を対象に,水利用に関するアンケート調査を行いました。

事業説明会等への平均参加率が約2割と低く,受益農家への出会督励や残り8割の方々

への理解促進活動が課題となっています。

「水を利用したいですか?」

という質問に対し,89%が

全てもしくは一部の畑で利用

したいと回答しているものの

,11%は迷っているもしく

は利用しないと回答。

「農業経営を引き継ぐ後継者

はいますか?」という質問に

対し,70%がいないもしく

は未定と回答。

水利用を迷っている要因の

一つとなっています。

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「水が来ることで,期待している

ことは何ですか?」 という質問に

対し,「収量が増える」,「発芽率が

よくなる」など,大半の方々が水利

用の効果について認識されているこ

とが伺えます。

しかし,「多様な作物に挑戦でき

る」,「農業が変わる,若い人が頑張

れる」と回答した割合が低く,将来

の展望が見出せていない状況が伺え

ます。

(複数回答による集計)

「水が来るうえでの不安,不満は

何ですか?」という質問に対し,「工

事負担金,経常賦課金が高い」とい

う回答が68%。

「借地のため,施設を設置できな

い」という回答が19%で,施工同

意率向上の課題となっています。

(複数回答による集計)

「農家の工事負担金は,95%以

上補助されることを知ってました

か?」という質問に対し,27%の

方が「聞いたことがない」と回答。

受益農家への畑かん整備に対する

一層の理解促進活動が求められてい

ます。

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畑かん営農の将来像(将来のイメージ)

○基幹作物であるさとうきびと飼料作物の生産性向上が図られ,「亜熱帯性の気候」と

「畑かん」を生かした園芸作物の生産が拡大しています。(農業産出額50%アップ)

○コスト競争力のある生産性の高い農産物の生産が,徳之島のブランド化や地域全体の

活性化を牽引しています。

○経営体や法人,農業者組織等が育成されるとともに,女性の農業経営への参画により

新たな雇用が創出されるなど,受益農家が夢と誇りを持てる強い農業が展開されてい

ます。

○「長寿・子宝」である徳之島の「島んちゅ」が,戦略的な畑かん営農にチャレンジす

るとともに,「大地と水の恵みを次世代へ」つなぐ(紡ぐ)各種取組が展開されてい

ます。

◆基幹作物であるさとうきびと野菜,花き,果樹の園芸作物や肉用牛を組み合わせた複合

経営を基本に,高品質で低コストな生産体制の整った戦略性の高い産地が形成されてい

ます。

◆さとうきびの単収向上が図られ,営農集団を中心とした地域営農(農作業受委託)が進

展し,生産・加工・販売まで地域に根ざした事業が活発に行われ,地域経済を支えてい

ます。

◆飼料作物の水利用と耕畜連携による土づくりで単収向上が図られ,土地利用率が向上し

ています。また,地域の飼料作物生産を担う「コントラクター」が育成されるとともに,

「TMRセンター」の活用などにより,飼料自給率が向上しています。

◆ばれいしょやにんじん,かぼちゃ,しょうがなどの露地野菜は,水利用による単収向上

と安定生産,流通効率化のための施設整備,契約・直販・加工事業などの販売力の強化

により,徳之島農産物のブランド化が確立されています。

◆施設園芸団地(マンゴー,ソリダゴ等)の整備が進み,付加価値の高い集約的な営農

が展開され,ばれいしょに続くブランド産地が形成されています。

第3章 徳之島地域が目指す将来の姿

にんじん栽培 マンゴー研修会しょうが栽培

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◆認定農業者の確保や法人化が推進され,経営感覚の優れた多くの経営体が育成されてい

ます。また,若い人材が農業に呼び込まれ,女性の農業生産活動や地域づくりへの積極

的な参画がなされています。

◆長寿・子宝の島ならではの食育と地産地消の活動が展開され,高齢農業者も生涯現役で

取り組めるような生産・販売(直売所向けなど)環境が整備されています。

◆郷友会をはじめ沖縄・海外も含めた群島内外との交流促進やICT(情報通信技術)を

活用した徳之島農産物ブランドの情報発信が展開されています。

◆「美農里館」や「百菜」などを中核とした6次産業化,農商工連携による各種ツーリズ

ムなども活性化しています。

1 営農ビジョンの目標

○畑かん受益地における推進品目

分 類 工芸作物 畜 産 野 菜 花 き 果 樹

基幹品目 さとうきび 飼料作物 ばれいしょ

戦略品目 茶 にんじん ソリダゴ マンゴー

ごま しょうが

かぼちゃ

★基幹品目:地域経済の中心品目及びかごしまブランド品目など主要品目であり,安定

した生産量確保を継続的に図るべき品目

★戦略品目:市場競争力強化による生産拡大及び付加価値を高めることが期待され,

重点で伸ばす品目(基幹3品目に続く品目として,重点的に推進する品目)

○今後の検討品目

分 類 工芸作物 畜 産 野 菜 花 き 果 樹

検討品目 落花生 さといも トルコギキョウ パッションフルーツ

薬用作物※1

未成熟豆類※2

スプレーギク たんかん

コーヒー にがうり グラジオラス パパイヤ

その他野菜※3

★検討品目:10年以内に検討しつつ,段階的に推進を図る品目

※1 薬用作物は,島あざみ,まあざく,山人参など

※2 未成熟豆類は,枝豆,実えんどう,さやいんげんなど

※3 その他野菜は,スイートコーン,オクラ,パプリカ,トマト,ナスなど

◆上記以外の品目についても,実需者ニーズなどを的確に捉え,需要動向に対応した

新品目の検討・産地化を図ることとしています。

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2 推進品目の生産目標

今後の畑かん営農推進にあたり,下記のとおり目標を設定し,目標達成に向けて関

係機関・団体はもとより,受益農家と一体となって取り組みます。

(1)推進品目(基幹・戦略品目)の生産目標 (単位:ha,% )

項 目 作付面積

現状※1

目標(H35) 目標/現状

さとうきび 2,080 2,427 116

飼料作物 780 646 83

ばれいしょ 673 603 90

しょうが 11 43 390

にんじん 5 30 600

かぼちゃ 2 21 1,050

ソリダゴ 0.4 2 500

マンゴー 11 22 200

茶 14 36 257

ごま 26 52 200

※1 現状は,平成24年度作付調査データ

(2)経営体の育成目標

モデル経営類型 現 状 育成目標 1戸あたり延べ 延べ作付 農業所得

(戸数)※1

(戸数)※2

作付面積(ha) 面積計(ha) 目安

家族経営 55戸 278戸 0.3~10.5 1,816

さとうきび専作 11戸 35戸 10.5 368

肉用牛専作 10戸 19戸 6.8 129

施設果樹専作 4戸 13戸 0.3 4 350万円

野菜専作 0戸 24戸 3.1~3.9 83 ~

さとうきび+露地野菜 11戸 78戸 4.2~8.7 504 540万円

さとうきび+肉用牛 12戸 50戸 9.0 450

肉用牛+露地野菜 3戸 43戸 3.7~5.2 196

施設花き+露地野菜 1戸 9戸 1.6~7.6 26

さとうきび+茶 3戸 7戸 8.0 56

法人経営 5法人 12法人 0.6~19.5 136

肉用牛専作 3法人 5法人 15.0 75 1,000

施設果樹専作 1法人 4法人 0.6 2 万円

さとうきび+肉用牛 1法人 3法人 19.5 59

計 1,952

※1 現状の戸数等は,認定農業者のうちモデル経営類型に該当する経営者数

※2 育成目標は,モデル経営類型で設定した1戸あたり延べ作付面積を達成する経営者数

※ 施設果樹・花きの作付面積は施設の実面積で,延べ作付面積ではない

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1 地域(畑かん)営農の仕組みづくり

現状と課題

(1)畑かん整備(基盤整備)

●受益農家に対して畑かん整備計画を情報提供中であり,水利用向上に向けた意識が少

しずつ高まりつつあります。

●しかしながら,計画的な作付や増収などの水利用効果に対する理解,散水器具等の種

類や特徴,取り扱いについての知識は十分浸透しているとはいえない状況です。

●このため,あらゆる機会を捉えて,畑かんに関する情報を提供し,受益農家の畑かん

整備に対する理解を深める必要があります。

●湧水の多い地区については,畑かん導入を躊躇している受益農家が多く,湧水対策が

求められています。

(2)組織育成(水管理組合,営農振興組織等)

●ローテーションブロックに基づく水利用や器具管理などが実践できる水管理組合の育

成支援が必要です。

●高齢化等に伴う既存県営ダム受益地内の水管理組合の弱体化により,ブロックローテ

ションが守られていない地区があるため,徳之島ダムの水管理組合の設立と併せて,

既存水管理組合の組織再編・強化と散水ルールの再構築が必要です。

●徳之島ダム受益地内の水管理組合の設立にあたっては,受益農家の意見として,管理

者の指導と施設管理の徹底を求める意見が多く,公平な水利用システムの構築が求め

られています。

●さとうきびは,ハーベスタ営農集団や大規模農家を核として,地域農業者が連携しな

がら,地域内の受託作業や営農活動などの機能的な活動を行える組織,集団を計画的

に確保するために,合意形成,生産技術,組織運営面で継続的な支援が必要です。

将来のイメージ

○「長寿・子宝」である徳之島の「島んちゅ」が,戦略的な畑かん営農にチャレ

ンジするとともに,「大地と水の恵みを次世代へ」つなぐ(紡ぐ)ための仕

組みが確立されています。

◆徳之島ダムや畑かんを島の財産として認識し,受益農家及び関係機関・団体

を含めた推進体制が整備されています。

◆地域の話し合い活動の推進や研修会等を通じた理解促進と人材育成が図ら

れ,水管理組合等の組織が結成されています。

第4章 畑地かんがい営農の課題と取組の方向性

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●JA共販品目は,生産部会での組織活動は行われていますが,JA共販外品目は支援

が十分とは言えません。今後,地域や品目単位での営農・生産組織も必要です。

(3)簡易な基盤整備(その他基盤整備)

●ハウス施設や果樹・花き栽培においては,必ずしも防風対策が十分でなく,安定生産

のためには防風対策への理解促進と対応策の検討が必要です。

●受益地内では,未舗装道路も多数存在するため,荷傷み・路面浸食防止や災害防止,

農作業機械の事故防止対策として舗装事業導入等を検討する必要があります。

●施設園芸の推進にあたっては,ほ場・畑かん整備と施設整備を一体的に検討し,受益

農家の意見を踏まえる必要があります。

取組の方向性

畑かん施設の整備に伴い,畑かんを活用した営農の普及・拡大を図るため,受益農家及

び関係機関・団体を含めた推進体制を整備・充実するとともに,地域の話し合い活動や推

進品目の展示,散水器材研修会等を通じて,受益農家の水利用に対する理解を深めます。

また,地域によって畑かん通水時期が異なることから,通水計画を示した上で,通水前

から事業完了まで,段階に応じたきめ細やかな広報・普及活動を行うとともに,水利用営

農組織等の育成を行います。

(1)受益農家及び関係機関・団体を含めた推進体制の整備・充実と人材育成

①推進体制の整備・充実

●徳之島地域総合営農推進本部を中心とした推進活動の強化

(ヒト・モノ・カネ・情報の流動化促進)

●技術・経営指導者の確保・育成

②ワーキングチームの設置と解決方策の実践

●流通販売対策

●農地流動化推進対策

●施設園芸拡大対策 など

③地域リーダーの育成

●畑かん推進員,畑かんマイスター等の設置 など

(2)地域の話し合い活動の推進や

研修会等を通じた理解促進

①地域の話し合い活動の推進

●地区別「畑かん営農を語ろ会」

(意見交換会,ビジョン検討会)の開催

②畑かん営農への理解促進

●勉強会等の開催

(マニュアル化,畑かん事業進捗状況の情報提供 など)

農家リーダーとの話し合い活動

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●散水器材取扱研修会等の開催(散水方法の紹介及び実演 など)

●地域リーダー(畑かん推進員,畑かんマイスター等)と一体となった推進

●水利用効果の情報提供

●水利用技術の実証及び展示

●次世代を担う子どもたちへの理解促進活動

(3)水利用営農組織等の育成

●徳之島用水土地改良区の運営支援

●水管理組合等の組織育成支援 など

【参考】 「畑かん営農確立のための取組体制図」

散水器材取扱研修会集落(農家代表)との話し合い活動

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2 畑かん営農を支える担い手の育成

現状と課題

(1)人・農地プラン

●「人・農地プラン」が「とりあえずのプラン」になっていることから,地域での話し

合い活動を継続し,地域の意向を反映した実行性のあるプランを作成する必要があり

ます。

また,畑かんモデル地区や水土里サークル活動実践地区などをベースにした範囲でプ

ランを作成するなどの工夫も必要です。

(2)新規就農者の支援体制

●新規就農者等の営農確立への支援体制が不十分であり,体系的な研修や広域研修施設

の必要性などを協議していく必要があります。また,青年就農給付金制度等を活用し,

経営確立に向けた支援強化が必要です。

(3)認定農業者・法人等の育成

●高齢化や施策のメリットを感じてもらえず再認定を受けない農家もいるなど,認定農

業者数は,近年減少傾向にあります。一方,今後,規模拡大志向農家を中心に法人化

に向けた支援が必要です。

取組の方向性

農家の高齢化,農家戸数の減少等に対応し,受益農家の経営意向を把握した上で,経

営の発展段階に応じた経営体の育成を支援します。

(1)人・農地プランや農地中間管理機構との連携強化(農地集積)

●地域の話し合い活動等への支援

将来のイメージ

○経営体や法人,農業者組織等が育成されるとともに,女性の農業経営へ参画により

新たな雇用が創出されるなど,農家が夢と誇りを持てる強い農業が展開されていま

す。

◆認定農業者の確保や法人化が推進され,経営感覚の優れた多くの経営体が育成さ

れています。また,若い人材が積極的に参入し,女性の農業生産活動や地域づく

りへの積極的な参画がなされています。

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●認定農業者等の経営改善意欲の高い農家の規模拡大や法人化への誘導

●大規模経営体のネットワーク等の構築

●人・農地プランや農地中間管理機構との連携強化による農地利用集積や雇用確保対策

の支援

●地図情報化(水土里情報システムの活用)の確立に向けた支援

(2)新規就農者の支援体制の充実・強化

●新規就農者の就農前から就農後の経営が安定するまでの町,JA,農業普及課等の営

農及び経営指導や町営農センター等における支援体制の充実・強化

●農地の斡旋・利用調整等,農地の確保に係る取組を進めるなど,円滑な就農を促進

(3)認定農業者・法人等の育成支援

●認定農業者(志向農家を含む)の育成・支援

●女性農業者の経営・地域活動参画支援

●農業生産法人(志向農家を含む)の育成・支援

●農業者組織(地域営農集団)等の育成・活動促進

●健康や長寿につながる高齢者農業への支援

担い手女性との意見交換会青年クラブ等異業種交流会

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3 畑かんを活用した生産性の高い産地づくり

主な振興方策

広大な畑地,亜熱帯性の気候,畑かんを活用した低コストで生産性の高い産地づくり

を推進します。

①さとうきびや肉用牛,露地野菜等との複合経営の確立を促進するとともに,栽培技術の

高位平準化,ハウス・省力機械の導入等を推進し,単収,品質向上や安定出荷を図り

ます。

②安心・安全で品質の良い農産物を安定的に出荷(定時・定量・定質)できる戦略性の高

い産地づくりと,ばれいしょに続く,野菜,花き,果樹のブランド産地づくりを推進

します。

③生産者の経営安定を確保するため,流通・販売対策の強化や地産地消・6次産業化の取

組を促進するとともに,生産・加工・流通・消費に至る一体的な施策の展開を促進し

ます。

④商工業や観光業など異業種との連携も視野に入れながら,地域資源を活用した高付加価

将来のイメージ

○基幹作物であるさとうきびと飼料作物の生産性向上が図られ,「亜熱帯性の気候」と「畑

かん」を生かした園芸作物の生産が拡大しています。(農業産出額50%アップ)

○コスト競争力のある生産性の高い農産物の生産が,徳之島のブランド化や地域全体の活

性化を牽引しています。

◆基幹作物であるさとうきびと野菜,花き,果樹の園芸作物や肉用牛を組み合わせた複

合経営を基本に,高品質で低コストな生産体制の整った戦略性の高い産地が形成さ

れています。

◆さとうきびの単収向上が図られ,営農集団を中心とした地域営農(農作業受委託)が

進展し,生産・加工・販売まで地域に根ざした事業が活発に行われ,地域経済を支

えています。

◆ばれいしょやにんじん,かぼちゃ,しょうがなどの露地野菜は,水利用による単収向

上と安定生産,流通効率化のための施設整備,契約・直販・加工事業などの販売力

の強化により,徳之島のブランド化がより一層確立されています。

◆飼料作物の水利用と耕畜連携による土づくりで単収向上が図られ,土地利用率が向上

しています。また,地域の飼料作物生産を担う「コントラクター」が育成されると

ともに,「TMRセンター」の活用などにより,飼料自給率が向上しています。

◆施設園芸団地(マンゴー,ソリダゴ等)の整備が進み,付加価値の高い集約的な営農

が展開され,ばれいしょに続くブランド産地が形成されています。

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値型の農業を推進します。

⑤畑かん受益地における推進品目は,

●水利用効果が高い

●収益性が高い

●農地の高度利用が図れる

●各生産振興計画等での位置づけがある

などや作付状況,地域の実情(ゾーニングなど)を考慮して推進していきます。

(1)さとうきび

現状と課題

●高齢化の進行により農家戸数が年々減少傾向にあります。

●ハーベスターによる収穫率が高まり,省力化は進んでいるものの,収穫後の肥培管理

の遅れにより株出し栽培での萌芽率が低下し,収量も低下傾向にあります。

●気象災害(台風,干ばつ)や病害虫被害,イノシシ食害,雑草等により生産量が不安

定です。

●水利用による増収効果が高いことは実証されていますが,広報や指導が不十分なため,

さらなる理解促進を図る必要があります。

●収穫後の管理作業に十分な労働力や機械装置を投入できず,十分な生育量を確保でき

ない農家が増えているため,早期に株揃え作業や植付ができる作業チームを設立し,

適期作業による増収を図る必要があります。

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取組の方向性

●水利用による適期作付・肥培管理による単収向上と計画的な生産

●排水対策,客土・心土破砕・堆肥や土壌改良材の投入による土層改良で単収を向上

●地域営農を推進し,植付けから肥培管理,収穫作業と機械化一貫体系を確立

●ハーベスター営農集団を核とした多様な管理作業の出来る機能集団,組織を育成

(2)飼料作物

現状と課題

●現在,ローズグラスが大部分を占めていますが,コスト低減や農地の有効活用を視野

に入れた年間を通じた作付け体系の検討が必要です。

●水利用による単収向上と安定生産が十分に理解されておらず,理解促進を図る必要が

あります。

●安定生産のための労働力確保が必要です。

●平成22年度に導入された飼料用さとうきび(品種:しまのうしえ)は,収量性も高

く,地域適応性も高いことから,安定生産,面積確保・団地化,機械作業体系の確立

など総合的な指導が必要です。

取組の方向性

●水利用による単収向上と安定生産による自給粗飼料の確保

●効率的な飼料作付け体系の構築

●地域未利用資源などと混合飼料化(TMR)することによる飼料自給率の向上とコスト低減

●飼料の安定供給に向けたコントラクターの育成

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(3)野菜

現状と課題

①ばれいしょ

●平成24年5月に「かごしまブランド産地」の指定を受け,消費地から信頼される

産地づくりに取り組んでいます。また,県野菜価格安定対策事業への加入及び加入

量拡大により,市場の価格変動に対応できる体制づくりに取り組んでいます。

●水利用により,ばれいしょの萌芽の安定や塊茎肥大に大きな効果が期待できます。

●ばれいしょを基幹とする大規模農家の育成を支援し,足腰の強い産地育成・確立に

取り組んでいます。

②にんじん

●3月下旬~4月出荷を対象に全量契約取引がなされており,単価が安定しています。

●水利用効果が高く,発芽率向上や塊根肥大が図れ,単収向上と今後の産地拡大が期

待できます。

③かぼちゃ

●春の作型は,高単価の期待できる時期(5月上旬)に出荷でき,しかも,果実肥大

に水利用効果の高い品目です。さらに,抑制の作型は,台風対策が不可欠ですが,

全量契約取引がなされており単価が安定しています。

●貯蔵して,国産の少ない3月に出荷することも考えられます。両作型とも,交配時

期の天候に左右されやすく,生産が不安定な課題はありますが,優良品種の検討や

作式改善がなされれば,産地拡大が期待できます。

③しょうが

●水利用効果の高い品目ですが,連作障害が出やすく,毎年のほ場の確保が課題であ

り,「さとうきび等との輪作体系」を基本に導入します。また,強風や根茎腐敗病に

より減収することが多く,その対策の徹底も課題です。

●販売は,民間業者による契約栽培が大部分を占めているため,地域内販売体制や販

路拡大の検討が必要です。

④さといも

●過去に栽培が盛んな時期もありましたが,市況の低迷や水晶イモの発生等による作

柄不安定により,ほとんどが自家用や個販となっています。今後,産地拡大に向け

て,有望育成品種の導入等も見据えた検討が必要です。

※ ばれいしょ,にんじん,しょうがについては,「かごしまの農林水産物認証」を取得

し,消費地への安心・安全な農産物の生産・供給に取り組んでいます。

取組の方向性

●効果的な水利用によるばれいしょ,にんじん,かぼちゃ,しょうが等露地野菜の産地

育成

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●栽培技術の高位平準化に向けて,関係機関・団体が一体となった受益農家の育成

●水利用による単収向上と適期作付による計画的生産

●亜熱帯性の気候を生かした有利販売が可能な作型の推進

(ばれいしょ;2~4月,にんじん;4月出荷,かぼちゃ;5月等)

●地帯・土壌区分ごとに,適した品目の推進

ばれいしょ;赤土の排水良好な土壌,風の強いほ場は防風対策の徹底

にんじん ;砂土~砂壌土,pH6前後の排水良好なほ場

かぼちゃ ;土目は選ばないが,pH6前後の排水良好な土壌,

防風対策が確実にとれるほ場

しょうが ;水持ちがよく,pH6前後の排水対策のとれるほ場,

防風対策が確実にとれるほ場

(4)花き

現状と課題

花きは,農家の高齢化等に加え近年の価格低迷により,栽培面積が減少傾向にあり

ます。

施設花き(ソリダゴ,トルコギキョウ)の面積拡大にあたっては,施設整備にかか

る投資額が大きいため,団地化及び補助事業の活用など計画的な取組が必要です。

①ソリダゴ

●戦略的産地振興支援事業の導入品目であり,産地化を図っています。

●基本の栽培技術及びJAを通した販売・組織体制が確立されており,現在島内で生

産されている花きの中で,唯一周年出荷体制が整っています。

●生産拡大にあたっては,技術を高位平準化し,高品質・安定生産を行うことで,単

価を向上させ,収益性を改善する取組が必要です。

②トルコギキョウ

●天城町農業センターにおいて新規栽培者育成が進み,生産が拡大しつつあります。

●栽培技術の定着と生産者の組織化及び販売対策の強化が課題です。

③グラジオラス

●基本的な栽培技術は確立されているものの,球根養成と切り花生産の一貫体系の確

立や球根の消毒,貯蔵,労力面などの課題があります。

●市場では安定した需要があり,ソリダゴ同様JAを通した販売・組織体制が確立さ

れています。

●露地品目で施設整備が不要であることから,新規導入や規模拡大がしやすく,島内

ではさとうきび等との輪作品目としても有望です。

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④スプレーギク

●露地栽培での基本的な栽培技術は定着していますが,組織化した販売体制はなく,

個人で市場へ直接出荷しているため,生産を拡大するためには組織化や販売体制の

検討が必要です。

取組の方向性

①畑かんを活用した適切な水管理による高品質安定生産技術の定着・普及

②生産・販売組織の育成及び強化

③新規栽培農家の確保・育成

●施設花き:ソリダゴ,トルコギキョウ

・団地化及び補助事業の活用など施設整備に関する

計画的な取組の強化

●露地花き:グラジオラス,スプレーギク

・他品目との輪作等,島内での栽培体系検討

・水利用による安定生産

(5)果樹

現状と課題

①マンゴー

●年々面積拡大が図られていますが,新規導入の場合,施設整備や成園化までの期間

の投資額が大きいため,計画的な推進及び個別の重点的な指導が必要です。

●既存の受益農家では,

①高齢化に伴い,被覆資材の張り替えが難しい。

②樹の樹齢が進むにつれ着果,生産が不安定。

③受益農家間の技術レベルに差が見られる。

等の課題が発生しており改善が必要です。

●販売にあたっては,物産館やネット販売,共販等新たな取り組みが見受けられます。

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H4 H8 H13 H18 H23

(a) 花き栽培面積の推移

ソリダゴへのかん水

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②たんかん

●近年の台風被害により落果等の被害が発生しています。また,生産管理の対応が不

十分で隔年結果の発生が見受けられます。

●生産量の年次間格差は,経営の不安定に直結することから,適地栽培が不可欠です。

●ゴマダラカミキリムシ等の被害により,樹勢低下や枝の枯れ込み等が見受けられる

ことから,一斉防除等の有効な対策が必要です。

●生産販売組織は,任意組織(徳之島町柑橘生産組合)が存在しますが,市場や個販

での販売が主であり,JA共販はほとんどありません。

③パッションフルーツ

●開花期の受粉作業が必要となるため,単一作型での面積拡大に限界があります。

●生産・販売的には安定した品目であるため,新規の導入,作型の分散による個別面

積の拡大と産地化に伴う共販組織への誘導が必要です。

④パパイヤ,グアバ,ドラゴンフルーツ

●試作検討が実施されており,今後,亜熱帯性の気候を生かし,適地性が高く販売優

位性のある品目の産地化を検討していく必要があります。

取組の方向性

●マンゴー,たんかん等の熱帯・亜熱帯果樹の産地拡大

●安定生産技術の普及・定着

●生産・販売組織の育成

●農地流動化や施設導入のための団地化や補助事業の

計画的取組み強化

●水利用による安定生産

(6)工芸作物

現状と課題

①茶

●平成14年度にさとうきびと複合経営が可能なべにふうき茶が導入され,平成16年

よりアサヒ飲料・JA茶業による契約販売(10年契約)がなされてきました。しか

し,平成25年末に契約が切れたため,販路ルートを開拓する必要があります。

●サンルージュ茶については,平成22年に大手メーカーと協定を締結し,作付目標

10ha(平成25年度末)に向けて取り組んでいます。今後,茶樹の成園化に伴い,

生産量が増加するため,加工施設の整備・販売ルートの確保を検討する必要があり

ます。

拡 大 が 期 待 さ れ る 平 張 施 設

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●潮風害や干ばつ等の気象災害により幼木園の生育が進まない茶園も見られ,多くの

受益農家が早期通水を望んでいます。

②ごま,落花生

●夏季の収入源として期待できる品目ですが,播種,植え付け時期が4月~6月で梅

雨時期と重なるため,排水対策を十分に行う必要があります。

●ごまは,JA及び民間業者との契約栽培が中心です。

●落花生は,地元業者,JAなどとの取引が行われています。

③薬用作物(まあざく,島あざみ等)

●伊仙町や徳之島町で導入が進められていますが,水利用を含む栽培技術については

確立されていません。

●現在,契約栽培主体ですが,生産・販売・加工体制を確立する必要があります。

取組の方向性

①茶

●機能性や亜熱帯性の気候を生かした茶産地の育成

●水利用による安定生産(幼木園の早期成園化)

②ごま,落花生

●さとうきび(夏植え)の前作やばれいしょの後作として,ごまや落花生の推進

●水利用による計画的作付けと安定生産

③薬用作物(まあざく,島あざみ等)

●栽培技術(水利用含む)の検討・確立

●関係組織・団体等の連携による販路開拓

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(t)(ha) 栽培面積と生産量の推移(見込み)

サンルージュ

そうふう

べにふうき

荒茶生産量

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(7)流通・販売

現状と課題

●「ばれいしょ」は,かごしまブランド産地指定品目であるJA共販と民間業者を介して

の販売があります。

●未成熟豆類(枝豆,実えんどう等)やオクラなどは契約販売も見受けられます。

●平成26年度からの奄美群島振興交付金の創設による鹿児島までの輸送コストの軽減支

援策を活用した販売戦略を検討・構築していく必要があります。

●冷蔵コンテナ等を活用した集出荷施設を計画的に整備し,推進品目の拡大を図る必要が

あります。

取組の方向性

●生産者が安心して取り組める販売体制及び産地体制の構築

●消費者のニーズ把握による島外への販売・発信及び販路開拓

●契約取引の拡大と産地体制の整備

●島内食料自給率向上を目指した多品目野菜栽培による地産地消の推進と集出荷施設(冷

蔵庫及び保冷庫等)の整備

●6次産業化の推進及び島内の商工観光業との連携による加工品販売

●付加価値を高める一次加工や商品開発への多角的農業経営の促進

●農業の異業種連携で付加価値を生み出す「医福食農連携」の促進

●グリーンツーリズムによる新たな所得確保や雇用機会の創出(農家民宿や農家レストラ

ン等の拡大)

【参考】 「畑かん営農の振興フロー図」

(8)その他

現状と課題

●既存補助事業を活用しつつ,施設整備等の補助事業等の検討を進めることで,水利用率

の高い施設園芸の拡大を図る必要があります。

取組の方向性

●各種施策(既存の関連補助事業)の情報収集

●施策提言等に向けた検討