31
2017 6 月改訂(第 6 版) 日本標準商品分類番号 871143 医薬品インタビューフォーム 日本病院薬剤師会のIF記載要領(19989)に準拠して作成 抗リウマチ・鎮痛・解熱剤 日本薬局方 アスピリン アスピリン 「ホエイ」 Aspirin 粉末剤(結晶性) 格・含 1g 日局 アスピリン 1g 名:アスピリン 名:Aspirin 製造販売承認年月日 1985 8 6 薬価基準収載年月日 1950 9 1 1951 11 マイラン製薬株式会社 ファイザー株式会社 担当者の連絡先 電話番号・FAX 番号 IF 2017 6 月改訂の添付文書の記載に基づき改訂した。最新の添付文書情報は、PMDA ホームページ 「医薬品に関する情報」http://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/0001.html にてご確認ください。

日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

2017 年 6 月改訂(第 6 版) 日本標準商品分類番号 871143

医薬品インタビューフォーム 日本病院薬剤師会のIF記載要領(1998年9月)に準拠して作成

抗リウマチ・鎮痛・解熱剤

日本薬局方 アスピリン

アスピリン「ホエイ」

Aspirin

剤 形 粉末剤(結晶性)

規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン 1g

一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:Aspirin

製造販売承認年月日 1985 年 8 月 6 日

薬価基準収載年月日 1950 年 9 月 1 日

発 売 年 月 日 1951 年 11 月

製 造 販 売 元 マイラン製薬株式会社

販 売 ファイザー株式会社

担当者の連絡先

電話番号・FAX番号

本 IF は 2017 年 6 月改訂の添付文書の記載に基づき改訂した。最新の添付文書情報は、PMDA ホームページ

「医薬品に関する情報」http://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/0001.html にてご確認ください。

Page 2: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

IF 利用の手引きの概要 -日本病院薬剤師会-

1.医薬品インタビューフォーム作成の経緯

当該医薬品について製薬企業の医薬情報担当者(以下,MR と略す)等にインタビューし,当該医

薬品の評価を行なうに必要な医薬品情報源として使われていたインタビューフォームを,昭和 63

年日本病院薬剤師会(以下,日病薬と略す)学術第2小委員会が「医薬品インタビューフォーム」

(以下,IF と略す)として位置付けを明確化し,その記載様式を策定した.そして,平成 10 年日

病薬学術第3小委員会によって新たな位置付けと記載要領が策定された.

2.IF とは

IF は「医療用医薬品添付文書等の情報を補完し,薬剤師等の医療従事者にとって日常業務に必要

な医薬品の適正使用や評価のための情報あるいは薬剤情報提供の裏付けとなる情報等が集約され

た総合的な医薬品解説書として,日病薬が記載要領を策定し,薬剤師等のために当該医薬品の製薬

企業に作成及び提供を依頼している学術資料」と位置付けられる.

しかし,薬事法の規制や製薬企業の機密等に関わる情報,製薬企業の製剤意図に反した情報及び薬

剤師自らが評価・判断・提供すべき事項等は IF の記載事項とはならない.

3.IF の様式・作成・発行

規格は A4 判,横書きとし,原則として9ポイント以上の字体で記載し,印刷は一色刷りとする.

表紙の記載項目は統一し,原則として製剤の投与経路別に作成する.IF は日病薬が策定した「IF 記

載要領」に従って記載するが,本 IF 記載要領は,平成 11 年1月以降に承認された新医薬品から適

用となり,既発売品については「IF 記載要領」による作成・提供が強制されるものではない.ま

た,再審査及び再評価(臨床試験実施による)がなされた時点ならびに適応症の拡大等がなされ,

記載内容が大きく異なる場合には IF が改訂・発行される.

4.IF の利用にあたって

IF 策定の原点を踏まえ,MR へのインタビュー,自己調査のデータを加えて IF の内容を充実させ,

IF の利用性を高めておく必要がある.

MR へのインタビューで調査・補足する項目として,開発の経緯,製剤的特徴,薬理作用,臨床成

績,非臨床試験等の項目が挙げられる.また,臨時改訂される使用上の注意等に関する事項に関し

ては,当該医薬品の製薬企業の協力のもと,医療用医薬品添付文書,お知らせ文書,緊急安全性情

報,Drug Safety Update(医薬品安全対策情報)等により薬剤師等自らが加筆,整備する.そのための

参考として,表紙の下段に IF 作成の基になった添付文書の作成又は改訂年月日を記載している.

なお適正使用や安全確保の点から記載されている「臨床成績」や「主な外国での発売状況」に関す

る項目等には承認外の用法・用量.効能・効果が記載されている場合があり,その取扱いには慎重

を要する.

Page 3: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

< 目 次 >

Ⅰ. [概要に関する項目]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

Ⅱ. [名称に関する項目]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

Ⅲ. [有効成分に関する項目]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

Ⅳ. [製剤に関する項目]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

Ⅴ. [治療に関する項目]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

Ⅵ. [薬効薬理に関する項目]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7

Ⅶ. [薬物動態に関する項目]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

Ⅷ. [安全性(使用上の注意等)に関する項目]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

Ⅸ. [非臨床試験に関する項目]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19

Ⅹ. [取扱い上の注意等に関する項目] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20

ⅩⅠ.[その他]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21

ⅩⅡ.[文 献]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26

ⅩⅢ.[参考資料]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26

ⅩⅣ.[備 考]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26

Page 4: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:
Page 5: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 1 -

Ⅰ.〔概要に関する項目〕

1.開発の経緯

本品は Gerhardt(1853)及び Kraut(1869)らによって、サルチル酸あるいは

サリチル酸ナトリウムに塩化アセチルを作用させて創製されたもので、

Dreser(1898)が臨床に用いた。その後 Hoffmann(1900)がサリチル酸と無水酢

酸で作る方法の特許をとっている。第 3 改正日本薬局方(1906 年)以来収載さ

れている。アスピリンの名は salicylic acid の古い呼び名である acidum spricumに由来し、spricum はサリチル酸の原料であるサリチルアルデヒドを含む植物

spiraea u1maria(シモッケ)からきている。

2.製品の特徴

及び有用性

本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していな

い。重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー、出血(脳出血等の頭

蓋内出血、肺出血、消化管出血、鼻出血、眼底出血等)、中毒性表皮壊死融解

症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson 症候

群)、剥脱性皮膚炎、再生不良性貧血、血小板減少、白血球減少、喘息発作の

誘発、肝機能障害、黄疸、消化性潰瘍、小腸・大腸潰瘍等がある。

Page 6: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 2 -

Ⅱ.〔名称に関する項目〕

1.販売名

2.一般名

3.構造式又は示性式

4.分子式及び分子量

5.化学名

6.慣用名、別名、略号、

記号番号

7.CAS 登録番号

和 名 アスピリン「ホエイ」 洋 名 Aspirin 和 名 [日局] アスピリン [日局別名] アセチルサリチル酸 洋 名 Aspirin

分子式:C9H8O4 分子量:180.16 2-Acetoxybenzoic acid なし 50-78-2

Page 7: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 3 -

Ⅲ.〔有効成分に関する項目〕

1.有効成分の規制区分

2.物理化学的性質

3.有効成分の安定性

4.有効成分の確認試験

5.有効性成分の定量法

なし

(1)外観・性状 白色の結晶、粒、又は粉末で、においはなく、わずかに酸味が

ある。 (2)溶解性

エタノール (95)又はアセトンに溶けやすく、ジエチルエーテ

ルにやや溶けやすく、水に溶けにくい。 水酸化ナトリウム試液又は炭酸ナトリウム試液に溶ける。

(3)吸湿性 該当資料なし

(4)融点(分解点) 約 136°(あらかじめ浴液を 130°に加熱しておく )

(5)酸塩基解離定数 1 ) pka 3 .49( 25℃)

(6)分配係数 2 ) クロロホルム -水, 2.0

(7)その他の主な示性値 血漿蛋白結合性 :90%(サリチル酸濃度 100μg/ml 以下 )

約 75%(サリチル酸濃度 400μg/ml 以上 ) 湿った空気中で徐々に加水分解してサリチル酸及び酢酸になる。 日局「アスピリン」の確認試験による

(1)鉄キレート呈色反応 (2)サリチル酸生成反応、酢酸・酢酸エチル臭の確認

日局「アスピリン」の定量法による

0.25mol/L 硫酸による中和滴定

Page 8: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 4 -

Ⅳ.〔製剤に関する項目〕

1.剤形

2.組成

3.懸濁剤、乳剤の分散

性に対する注意

4.各種条件下における

安定性

5.調製法及び溶解後の

安定性

6.他剤との配合変化

7.混入する可能性のあ

る爽雑物

8.溶出試験

9.生物学的試験法

10.製剤中の有効成分の

確認試験法

(1)剤形の区分及び性状

白色の結晶、粒又は粉末で、においはなく、わずかに酸味がある。

(2)製剤の物性

該当資料なし

(1)有効成分(活性成分)の含量

1g 中 日局 アスピリン 1g (2)添加物

なし

該当資料なし

Ⅲ. [有効成分に関する項目 ]参照

該当しない

配合が好ましくない薬剤

・ 1 週間以内に湿潤 :

安息香酸ナトリウムカフェイン、サリチル酸ナトリウムテ

オブロミン、炭酸水素ナトリウム、ヘキサミン

・品質、保存条件により 1 週間以内に湿潤 :

アミノ安息香酸エチル、アミノピリン、アンチピリン、ス

ルピリン

・ 1 週間以内に変色 :

ジギタリス製剤、ヨウ化物 ・品質、保存状態によって 1 週間以内に変色するもの:

硫酸鉄 ・その他の配合変化

フェノバルビタールナトリウム、ヨウ化カリウム、鉄、水

酸化物、炭酸塩、ステアリン酸塩

該当しない

該当しない

該当しない

Ⅲ. [有効成分に関する項目 ]参照

Page 9: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 5 -

11.製剤中の有効成分の

定量法

12.力価

13.容器の材質

14.その他

Ⅲ. [有効成分に関する項目 ]参照

該当資料なし

内袋:ポリエチレン

外装:紙箱

該当資料なし

Page 10: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 6 -

Ⅴ.〔治療に関する項目〕

1.効能・効果

2.用法及び用量

3.臨床成績

1.関節リウマチ、リウマチ熱、変形性関節症、強直性脊椎炎、関

節周囲炎、結合織炎、術後疼痛、歯痛、症候性神経痛、関節痛、

腰痛症、筋肉痛、捻挫痛、打撲痛、痛風による痛み、頭痛、月

経痛

2.下記疾患の解熱・鎮痛

急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)

3.川崎病 (川崎病による心血管後遺症を含む )

1.の効能・効果に対し

通常、成人にはアスピリンとして、 1 回 0.5~ 1.5g、 1 日 1.0~4.5g を経口投与する。 なお、年齢、疾患、症状により適宜増減する。ただし、上記の

最高量までとする。

2.の効能・効果に対し

通常、成人にはアスピリンとして、1 回 0.5~ 1.5g を頓用する。 なお、年齢、疾患、症状により適宜増減する。ただし、原則とし

て 1 日 2 回までとし、1 日最大 4.5g を限度とする。また、空腹時の投与は

避けさせることが望ましい。 3.の効能・効果に対し

急性期有熱期間は、アスピリンとして 1 日体重 1kg あたり 30~50mg を 3 回

に分けて経口投与する。解熱後の回復期から慢性期は、アスピリンとして 1日体重 1kg あたり 3~5mg を 1 回経口投与する。なお、症状に応じて適宜増

減する。

<用法・用量に関連する使用上の注意>

1.原則として川崎病の診断がつき次第、投与を開始することが望ましい。3)

2.川崎病では発症後数ヵ月間、血小板凝集能が亢進しているので、川崎病

の回復期において、本剤を発症後 2~3 ヵ月間投与し、その後断層心エ

コー図等の冠動脈検査で冠動脈障害が認められない場合には、本剤の投

与を中止すること。冠動脈瘤を形成した症例では、冠動脈瘤の退縮が確

認される時期まで投与を継続することが望ましい。3)4)

3.川崎病の治療において、低用量では十分な血小板機能の抑制が認められ

ない場合もあるため、適宜、血小板凝集機能の測定等を考慮すること。

該当資料なし

Page 11: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 7 -

Ⅵ.〔薬効薬理に関する項目〕

1.薬理学的に関連のあ

る化合物又は化合物

2.薬理作用

アセトアミノフェン、フェナセチン、アミノピリン、イソプロピ

ルアンチピリン、エテンザミド、スルピリン、ミグレニン、イン

ドメタシン、イブプロフェン、フェニルブタゾン。

パラアミノフェノール誘導体、ピラゾロン系化合物、ピラゾール

系化合物、

アントラニール酸系化合物、フェニル酢酸系化合物、インドール

系化合物

1.作用部位

中枢神経系、末梢

2.作用機序

酸性非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)。プロスタグランジン

生 合 成の 律速 酵素 であ る シク ロオ キシ ゲナ ー ゼ (COX)を 阻 害

し、プロスタグランジンの産生を抑制することにより、抗炎症

作用、解熱作用、鎮痛作用を現す。構成型 COX(COX-1)と誘導

型 COX(COX-2)に対する選択性はない。他の酸性非ステロイド

性抗炎症薬とは異なり、非可逆的に COX 活性を阻害し、 COX-1

に対する選択性が高いので、消化器系に対する副作用があらわ

れやすい。 5 )

Page 12: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 8 -

Ⅶ.〔薬物動態に関する項目〕

1.血中濃度の推移・測定

(1)血中濃度推移

ヒトにアスピリンを経口投与

したとき、血漿中未変化体濃

度は 15~ 25 分後に最高値に

達し、2 時間後に血漿中より消

失する。血漿中の未変化体の

半減期は静脈内あるいは経口

投与したときも同じである。2 )

サリチル酸の血中濃度半減期は、 300~ 650mg 投与時は 3.1~ 3.2時間、 1g 投与時は 5 時間、 2g 投与時は 9 時間と投与量により増

加する。 1 )

(2)中毒症状を発現する血中濃度 6 )

投与

経路 投与

量 T1/2

(min) AUC(μg・ min/ml)

静脈 650mg

14.0~19.5 904~956

経口 650mg

15.0~19.0 620~687

Page 13: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 9 -

2.薬物速度論的パラメ

ータ

3.吸収

4.分布

5.代謝

6.排泄

7.透析等による除去率

該当資料なし

小腸上部

該当資料なし

アスピリンは主として小腸上部から速やかに吸収され、血中での

消 失 も 速 い 。 1.2g を 内 服 す る と 2 時 間 後 の 血 漿 中 濃 度 は

2mg/100mL 以下である。体内の各種組織 (血清、肝、腎 )で加水分

解されてサリチル酸と酢酸を生じる。例えば 0.65g を投与すると、

1 時間後の血漿中アスピリンは全サリチル酸の約 30%である。代

謝産物はサリチル酸ナトリウムの場合と同様で、グリシン抱合体

(約 50% )、グルクロン酸抱合体 (約 25% )、水酸化体のゲンチジ

ン酸 (4~ 8% )、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,3,5-トリヒドロキシ

安息香酸などである。ゲンチジン酸は解熱鎮痛作用を有してい

る。

リウマチ患者は正常人に比べてゲンチジン酸の排泄が多 <、グリ

シン抱合体が少ない。アスピリンはプロスタグランジン生合成酵

素のシクロオキシゲナーゼを非可逆的にアセチル化して阻害す

る。 5 )

該当資料なし

該当資料なし

Page 14: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 10 -

Ⅷ.〔安全性(使用上の注意等)に関する項目〕

1.警告内容とその理由

2.禁忌内容とその理由

3.効能効果に関連する

使用上の注意とその

理由

4.用法・用量に関連する

使用上の注意とその

理由

添付文書に記載なし

【禁忌(次の患者には投与しないこと)】

1.川崎病を除く効能又は効果に使用する場合

(1)本剤又はサリチル酸系製剤に対し過敏症の既往歴のある患者

(2)消化性潰瘍のある患者〔胃出血の発現又は消化性潰瘍が悪化するおそ

れがある。〕(ただし、「慎重投与(14)」の項参照)

(3)重篤な血液の異常のある患者〔血小板機能障害をおこし、血液の異常

を更に悪化させるおそれがある。〕(「副作用」の項参照)

(4)重篤な肝障害のある患者〔肝障害を更に悪化させるおそれがある。〕

(5)重篤な腎障害のある患者〔腎障害を更に悪化させるおそれがある。〕

(6)重篤な心機能不全のある患者〔腎のプロスタグランジン生合成抑制作

用により、浮腫、循環体液量の増加がおこり、心臓の仕事量が増加す

るため、心機能を更に悪化させるおそれがある。〕

(7)アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤等による喘息発作の誘

発)又はその既往歴のある患者〔重篤なアスピリン喘息発作を誘発さ

せることがある。〕

(8)出産予定日 12 週以内の妊婦(「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項

参照)

2.川崎病(川崎病による心血管後遺症を含む)に使用する場合

(1)本剤又はサリチル酸系製剤に対し過敏症の既往歴のある患者

(2)消化性潰瘍のある患者〔胃出血の発現又は消化性潰瘍が悪化するおそ

れがある。〕(ただし、「慎重投与(14)」の項参照)

(3)出血傾向のある患者〔出血を増強するおそれがある。〕

(4)アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤等による喘息発作の誘発)

又はその既往歴のある患者〔喘息発作を誘発するおそれがある。〕

(5)出産予定日 12 週以内の妊婦(「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項

参照)

添付文書に記載なし

Ⅴ.〔治療に関する項目〕参照

Page 15: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 11 -

5.慎重投与内容とその

理由

6.重要な基本的注意と

その理由及び処置方

慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)

(1)消化性潰瘍の既往歴のある患者〔消化性潰瘍を再発させることがある。〕

(2)血液の異常又はその既往歴のある患者〔血液の異常を悪化又は再発させる

おそれがある。〕

(3)出血傾向のある患者(効能・効果 1.及び 2.の場合)〔血小板機能異常がおこ

ることがあるため、出血傾向を助長するおそれがある。〕

(4)肝障害又はその既往歴のある患者〔肝障害を悪化又は再発させるおそれが

ある。〕

(5)腎障害又はその既往歴のある患者〔腎障害を悪化又は再発させるおそれが

ある。〕

(6)心機能異常のある患者〔腎のプロスタグランジン生合成抑制作用により、浮

腫、循環体液量の増加がおこり、心臓の仕事量が増加するため、心機能を更

に悪化させるおそれがある。〕

(7)過敏症の既往歴のある患者

(8)気管支喘息のある患者〔気管支喘息の患者の中にはアスピリン喘息患者も

含まれており、それらの患者では重篤な喘息発作を誘発させることがあ

る。〕

(9)高齢者〔「重要な基本的注意」及び「高齢者への投与」の項参照〕

(10)妊婦(ただし、出産予定日 12 週以内の妊婦は禁忌)又は妊娠している可能

性のある婦人(「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照)

(11)小児(「重要な基本的注意」、「小児等への投与」の項参照)

(12)アルコール常飲者〔消化管出血を誘発又は増強することがある。 (「相互

作用」の項参照)。〕

(13)手術、心臓カテーテル検査又は抜歯前 1 週間以内の患者〔手術、心臓カテ

ーテル検査又は抜歯時の失血量を増加させるおそれがある。〕(「重要な基

本的注意」の項参照)

(14)非ステロイド性消炎鎮痛剤の長期投与による消化性潰瘍のある患者で、本

剤の長期投与が必要であり、かつミソプロストールによる治療が行われて

いる患者〔ミソプロストールは非ステロイド性消炎鎮痛剤により生じた消

化性潰瘍を効能・効果としているが、ミソプロストールによる治療に抵抗

性を示す消化性潰瘍もあるので、本剤を継続投与する場合には、十分経過

を観察し、慎重に投与すること。〕

重要な基本的注意

(1)サリチル酸系製剤の使用実態は我が国と異なるものの、米国においてサリ

チル酸系製剤とライ症候群との関連性を示す疫学調査報告があるので、本

剤を 15歳未満の水痘、インフルエンザの患者に投与しないことを原則とす

るが、やむを得ず投与する場合には慎重に投与し、投与後の患者の状態を十

分に観察すること。

〔ライ症候群:小児において極めてまれに水痘、インフルエンザ等のウイル

ス性疾患の先行後、激しい嘔吐、意識障害、痙攣(急性脳浮腫)と肝臓ほか諸

臓器の脂肪沈着、ミトコンドリア変形、AST(GOT)・ALT(GPT)・LDH・

CK(CPK)の急激な上昇、高アンモニア血症、低プロトロンビン血症、低血

糖等の症状が短期間に発現する高死亡率の病態である。7)〕

(2)解熱鎮痛剤による治療は原因療法ではなく対症療法であることに留意する

こと。

Page 16: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 12 -

7.相互作用

(3)慢性疾患(関節リウマチ、変形性関節症等)に対し本剤を用いる場合には、次

の事項を考慮すること。

1)長期投与する場合には、定期的に臨床検査(尿検査、血液検査及び肝機能

検査等)を行うこと。また、異常が認められた場合には減量、休薬等の適

切な措置を講じること。

2)薬物療法以外の療法も考慮すること。

(4)急性疾患に対し本剤を用いる場合には、次の事項を考慮すること。

1)疼痛、発熱の程度を考慮し投与すること、

2)原則として同一の薬剤の長期投与を避けること。

3)原因療去があれはこれを行うこと。

(5)患者の状態を十分観察し、副作用の発現に留意すること。過度の体温下降、

虚脱、四肢冷却等があらわれることがあるので、特に高熱を伴う小児及び

高齢者又は消耗性疾患の患者においては、投与後の患者の状態に十分注意

すること。

(6)感染症を不顕性化するおそれがあるので、感染による炎症に対して用いる

場合には適切な抗菌剤を併用し、観察を十分に行い慎重に投与すること。

(7)他の消炎鎮痛剤との併用は避けることが望ましい。(「相互作用」の項参照)

(8)高齢者及び小児には副作用の発現に特に注意し、必要最小限の使用にとど

めるなど慎重に投与すること。

(9)手術前 1 週間以内にアスピリンを投与した例では失血量が有意に増加した

との報告 8)があるので、術前の投与は慎重に行うこと。

(10)川崎病の急性期に対して投与する場合には、適宜、肝機能検査を行い異常

が認められた場合には減量、休薬等の適切な措置を講ずること。

(11)川崎病患者(川崎病による心血管後遺症を含む)に対して長期間投与する

場合には、定期的に臨床検査(尿検査、血液検査及び肝機能検査等)を行う

こと。また、異常が認められた場合には減量、休薬等の適切な措置を講ず

ること。

併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子

クマリン系抗凝固剤

ワルファリンカリウ

クマリン系抗凝固剤の作用

を増強し、出血時間の延長、

消化管出血等を起こすこと

があるので、クマリン系抗凝

固剤を減量するなど慎重に

投与すること。

本剤は血漿蛋白に結合し

たクマリン系抗凝固剤と置

換し、遊離させる。また、本

剤は血小板凝集抑制作用、

消化管刺激による出血作用

を有する。

血液凝固阻止剤

ヘパリン製剤

ダナパロイドナトリ

ウム

第Xa 因子阻害剤

リバーロキサバン等

抗トロンビン剤

ダビガトランエテ

キシラートメタン

スルホン酸塩等

トロンボモデュリン

アルファ等

これら薬剤との併用により、

出血の危険性が増大するお

それがあるので、観察を十分

に行い、注意すること。

本剤は血小板凝集抑制作

用を有するため、これら薬

剤との併用により出血傾向

が増強されるおそれがあ

る。

Page 17: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 13 -

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子

血小板凝集抑制作用を有する

薬剤

チクロピジン塩酸塩

シロスタゾール

クロピドグレル硫酸塩

トロンボキサン合成酵素

阻害剤

オザグレルナトリウム

プロスタグランジン E1 製

剤、E1及びI2 誘導体製剤

ベラプロストナトリウム

サルポグレラート塩酸塩

イコサペント酸エチル等

これら薬剤との併用により、

出血の危険性が増大するお

それがあるので、観察を十分

に行い、注意すること。

本剤は血小板凝集抑制作

用を有するため、これら薬

剤との併用により出血傾向

が増強されるおそれがあ

る。

血栓溶解剤

ウロキナーゼ

t-PA 製剤等

糖尿病用剤

ヒトインスリン

トルブタミド等

臨床症状:糖尿病用剤の

作用を増強し、低血糖を

起こすことがある。

措置方法:糖尿病用剤を

減量するなど慎重に投与

すること。

機序:本剤は血漿蛋白に

結合した糖尿病用剤と

置換し、遊離させる。ま

た、本剤は大量で血糖降

下作用を有する。

メトトレキサート メトトレキサートの副作

用(骨髄抑制、肝・腎・消

化器障害等)が増強され

ることがある。

本剤は血漿蛋白に結合

したメトトレキサート

と置換し、遊離させる。

また、本剤はメトトレキ

サートの腎排泄を阻害

すると考えられている。

バルプロ酸ナトリウム 臨床症状:バルプロ酸ナ

トリウムの作用を増強

し、振戦等を起こすこと

がある。

機序:本剤は血漿蛋白

に結合したバルプロ酸

ナトリウムと置換し、

遊離させる。

フェニトイン 総フェニトイン濃度を

低下させるが、非結合型

フェニトイン濃度を低

下させないとの報告が

あるので、総フェニトイ

ン濃度に基づいて増量

する際には臨床症状等

を慎重に観察すること。

本剤は血漿蛋白に結合

したフェニトインと置

換し、遊離させる。

副腎皮質ホルモン剤

ベタメタゾン

プレドニゾロン

メチルプレドニゾロ

ン等

臨床症状:サリチル酸中

毒を起こすことが報告

されている。

機序は不明。

併用時に、副腎皮質ホ

ルモン剤を減量する

と、サリチル酸系製剤

の血中濃度が増加した

との報告がある。

Page 18: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 14 -

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子

リチウム製剤 臨床症状:類薬(インド

メタシン等)でリチウム

中毒を起こすことが報

告されている。

機序:類薬(インドメタ

シン等)は腎のプロス

タグランジン生合成を

抑制し、腎血流量を減

少させることにより、

リチウムの腎排泄を低

下させる。

チアジド系利尿剤 類薬(インドメタシン

等)でチアジド系利尿剤

の作用を減弱させるこ

とが報告されている。

機序:類薬(インドメタ

シン等)は腎のプロス

タグランジン生合成を

抑制し、チアジド系利

尿剤の作用を減弱させ

ることがある。

乳酸ナトリウム 本剤の作用が減弱され

ることがある。

機序:乳酸ナトリウム

により尿がアルカリ性

となり、サリチル酸の

尿中排泄が増加し、血

中濃度が治療領域以下

になることがある。

炭酸脱水酵素阻害剤

アセタゾラミド等

臨床症状:アセタゾラミ

ドの副作用を増強し、嗜

眠、錯乱等の中枢神経系

症状、代謝性アシドーシ

ス等を起こすことが報

告されている。

機序:本剤は血漿蛋白

に結合したアセタゾラ

ミドと置換し、遊離さ

せる。

尿酸排泄促進剤

プロベネシド

ベンズブロマロン

これらの薬剤の作用を

減弱させることがある。

サリチル酸製剤は尿酸

の排泄を抑制すること

が知られているため、

これら薬剤の効果が減

弱すると考えられる。

インドメタシン、

ジクロフェナクナ

トリウム等

(1)これら薬剤の血中濃

度を低下させるおそ

れがある。

(2)消化器系の副作用を

増強させるおそれが

ある。

(3)出血及び腎機能低下

を起こすことがあ

る。

(1)本剤との併用によ

り、これら薬剤の血

漿蛋白結合部位から

の遊離置換によると

考えられる。

(2)機序不明。

(3)作用機序は不明。

オキシカム系消炎

鎮痛剤

ピロキシカム等

両剤又は一方の薬剤の

副作用の発現頻度を増

加させるおそれがある。

機序不明。

スリンダク 消化器系の副作用の発

現率が上昇する。また、

スリンダクの活性代謝

物(スルフィド体)の血

中濃度が低下する。

機序不明。

Page 19: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 15 -

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子

イブプロフェン

ナプロキセン

ピロキシカム

本剤の血小板凝集抑制作用

を減弱するとの報告があ

る。

血小板のシクロオキシゲ

ナーゼ-1(COX-1)と本剤

の結合を阻害するためと

考えられる。

ドネペジル塩酸塩 消化性潰瘍を起こすこ

とがある。

コリン系が賦活され胃

酸分泌が促進される。

β-遮断剤

プロプラノロール塩

酸塩等

アンジオテンシン変換

酵素阻害剤

カプトプリル等

降圧作用が減弱すること

がある。

本剤がプロスタグラン

ジン生合成を抑制する

ことにより、プロスタグ

ランジンを介した降圧

効果を減弱させる。

ループ利尿剤

フロセミド等

(1)これら薬剤の利尿作

用を減弱させるおそ

れがある。

(2)サリチル酸中毒が発

現するおそれがある。

(1)本剤が腎のプロスタ

グランジン生合成を

抑制することにより、

これら薬剤の作用を

減弱させるためと考

えられる。

(2)腎の排泄部位におい

て両剤の競合が起こ

り、サリチル酸誘導体

の排泄が遅れるため

と考えられる。

ニトログリセリン ニトログリセリンの作用

を減弱させるおそれがあ

る。

本剤がプロスタグラン

ジン生合成を抑制する

ことにより、ニトログリ

セリンの血管拡張作用

を減弱させる。

タクロリムス水和物

シクロスポリン

腎障害が発現することが

ある。

腎障害の副作用が相互

に増強されると考えら

れる。

ザフィルルカスト ザフィルルカストの血漿

中濃度が上昇することが

ある。

機序不明。

Page 20: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 16 -

8.副作用

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子

プロスタグランジン D2、

トロンボキサン A2 受容

体拮抗剤

セラトロダスト

ラマトロバン

ヒト血漿蛋白結合に対す

る相互作 用の検討 (in vitro)において、本剤によ

りこれら薬剤の非結合型

分率が上昇することがあ

る。

これら薬剤が本剤と血

漿蛋白結合部位で置換

し、遊離型血中濃度が上

昇すると考えられる。

選択的セロトニン再取

り込み阻害剤(SSRI) フルボキサミンマレ

イン酸塩

塩酸セルトラリン等

皮膚の異常出血(斑状出

血、紫斑等)、出血症状(胃

腸出血等)が報告されて

いる。

SSRI の投与により血小

板凝集が阻害され、本剤

との併用により出血傾

向が増強すると考えら

れる。 アルコール 消化管出血が増強される

おそれがある。

アルコールによる胃粘

膜障害と本剤のプロス

タグランジン合成阻害

作用により、相加的に消

化管出血が増強すると

考えられる。

本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない。

(1)重大な副作用(頻度不明)

1)ショック、アナフィラキシー:ショック、アナフィラキシー(呼吸困難、

全身潮紅、血管浮腫、蕁麻疹等)があらわれることがあるので、観察を十

分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行う

こと。

2)出血

脳出血等の頭蓋内出血:脳出血等の頭蓋内出血(初期症状:頭痛、悪心・

嘔吐、意識障害、片麻痺等)があらわれることがあるので、観察を十分に

行い、このような症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を

行うこと。

肺出血、消化管出血、鼻出血、眼底出血等:肺出血、消化管出血、鼻出

血、眼底出血等があらわれることがあるので、観察を十分に行い、この

ような症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこ

と。

3)中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘

膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、剥脱性皮膚炎:中毒性表皮壊死

融解症、皮膚粘膜眼症候群、剥脱性皮膚炎があらわれることがあるので、

観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には投与を中止し、

適切な処置を行うこと。

4)再生不良性貧血、血小板減少、白血球減少:再生不良性貧血、血小板減

少、白血球減少があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常

が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

5)喘息発作の誘発:端息発作を誘発することがある。

6)肝機能障害、黄疸:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP 等の著しい上昇を

伴う肝機能障害や黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、

異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。

Page 21: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 17 -

9.高齢者への投与

10.妊婦、産婦、授乳婦等へ

の投与

7)消化性潰瘍、小腸・大腸潰瘍:下血(メレナ)を伴う胃潰瘍・十二指腸

潰瘍等の消化性潰瘍があらわれることがある。また、消化管出血、腸

管穿孔を伴う小腸・大腸潰瘍があらわれることがあるので、観察を十

分に行い、異常が認められたた場合には投与を中止し、適切な処置を

行うこと。

(2)その他の副作用

頻度 種類

頻度不明

消 化 器 食欲不振、胸やけ、悪心・嘔吐、胃痛、腹痛、胃腸障害、

便秘、下痢、食道炎、口唇腫脹、吐血、胃部不快感等

過 敏 症注 1) 蕁麻疹、発疹、浮腫、鼻炎様症状等

血 液注 2) 貧血、血小板機能低下(出血時間の延長)等

皮 膚 そう痒、発汗

精神神経系注 3) めまい、頭痛、興奮等

肝 臓 AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇

腎 臓 腎障害

循 環 器 血圧低下、血管炎、心窩部痛

呼 吸 器 気管支炎

感 覚 器 耳鳴、難聴、角膜炎、結膜炎

そ の 他注 4) 過呼吸、代謝性アシドーシス、けん怠感、低血糖等

注 1)このような症状があらわれた場合には、投与を中止すること。

注 2)異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

注 3)このような症状があらわれた場合には、減量又は投与を中止すること。

注 4)このような症状があらわれた場合には、減量又は投与を中止すること。

(血中濃度が著しく上昇していることが考えられる。)

高齢者では副作用があらわれやすいので、少量から投与を開始するなど患者

の状態を観察しながら慎重に投与すること。(「重要な基本的注意(8)」の項

参照)

(1)出産予定日 12 週以内の妊婦には投与しないこと。〔妊娠期間の延長、動

脈管の早期閉塞、子宮収縮の抑制、分娩時出血の増加につながるおそれ

がある。海外での大規模な疫学調査では、妊娠中のアスピリン服用と先

天異常児出産の因果関係は否定的であるが、長期連用した場合は、母体

の貧血、産前産後の出血、分娩時間の延長、難産、死産、新生児の体重減

少・死亡などの危険が高くなるおそれを否定できないとの報告がある。

また、ヒトで妊娠末期に投与された患者及びその新生児に出血異常 9)が

あらわれたとの報告がある。さらに、妊娠末期のラットに投与した実験

で、弱い胎児の動脈管収縮が報告されている 10)。〕

(2)妊婦(ただし、出産予定日 12 週以内の妊婦は除く)又は妊娠している可能

性のある婦人には、治療上の有益性が危険を上回ると判断される場合に

のみ投与すること。〔動物実験(ラット)で催奇形作用 11)があらわれたと

の報告がある。妊娠期間の延長、過期産につながるおそれがある。〕

(3)授乳中の婦人には本剤投与中は授乳を避けさせること。〔母乳中へ移行

することが報告されている。〕

Page 22: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 18 -

11.小児等への投与

12.臨床検査結果に及ぼす

影響

13.過量投与

14.適用上及び薬剤交付時

の注意

15.その他の注意

16.その他

(1)解熱・鎮痛及び抗炎症剤として用いる場合:低出生体重児、新生児、乳

児、幼児又は小児には副作用の発現に特に注意し、必要最小限の使用に

とどめるなど慎重に投与すること。〔小児等に対する安全性は確立して

いない。〕(「重要な基本的注意」の項参照)

(2)小児等では、副作用があらわれやすいので、患者の状態を観察しながら

慎重に投与すること。川崎病の治療において、肝機能障害の報告がある

ので、適宜肝機能検査を行い、注意すること。(「重要な基本的注意」の

項参照)

(3)15 歳未満の水痘、インフルエンザの患者に投与しないことを原則とする

が、やむを得ず投与する場合には、慎重に投与し、投与後の患者の状態を

十分に観察すること。(「重要な基本的注意」の項参照)

(4)本剤投与中の 15 歳未満の川崎病の患者が水痘、インフルエンザを発症し

た場合には、投与を中断することを原則とするが、やむを得ず投与を継

続する場合には、慎重に投与し、投与後の患者の状態を十分に観察する

こと。(「重要な基本的注意」の項参照)

添付文書に記載なし

徴候と症状:耳鳴、めまい、頭痛、悪心・嘔吐、消化管出血・潰瘍、難

聴、軽度の頻呼吸等の初期症状から血中濃度の上昇に伴い、重度の

過呼吸、呼吸性アルカローシス、代謝性アシドーシス等の酸塩基平

衡障害、痙攣、昏睡等の中枢神経系障害、心血管虚脱、呼吸不全等

が認められる。

処置:催吐、胃洗浄を行い、その上で活性炭や下剤を投与する。ブドウ糖

輸液などにより体液と電解質のバランスの維持を図る。小児の高熱

には、スポンジ浴を行う。炭酸水素ナトリウムの静脈注射などによ

りアシドーシスを補正すると共に尿のアルカリ化を図る。重篤な場

合、血液透析、腹膜灌流などを考慮する。

服用時:本剤は空腹時の投与は避けることが望ましい。

(1)In vitro の試験において、アスピリン等のグルクロン酸抱合により代謝さ

れる薬剤が抗ウイルス剤(ジドブジン)のグルクロン酸抱合を阻害したと

の報告がある。

(2)非ステロイド性消炎鎮痛剤を長期間投与されている女性において一時的

な不妊が認められたとの報告がある。

該当しない

Page 23: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 19 -

Ⅸ.〔非臨床試験に関する項目〕

1.一般薬理

2.毒性 1)

局所刺激作用:皮膚、粘膜をかなり刺激する。

利胆作用:肝臓に作用して胆汁分泌を促進する。

嘔吐作用

精神・神経作用

呼吸興奮作用

(1)急性毒性:LD50 ラット(経口) ♂ 4350 ㎎/㎏ ♀4650 ㎎/㎏

マウス(経口) ♂ 3500 ㎎/㎏ ♀3270 ㎎/㎏

(2)生殖発生毒性試験

成熟初妊ラット(Wister 系)を用い、妊娠第 9 日よリ 330 ㎎、660 ㎎/㎏経口

投与した場合、330 ㎎/㎏で奇形仔が認められ、と<に 6 日間の投与群にお

いては奇形発生率は 12.1%、骨格異常は 0.6%であった。奇形としては外脳

症、脳りう、せきついひ裂、無(小)眼球、`こうがいひ裂であった。

660 ㎎/㎏では母獣の死亡率が比較的高率で、胎仔の吸収浸軟率は極めて高

<、生存仔全例に形態の異常が認められた。

Page 24: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 20 -

Ⅹ.〔取扱い上の注意等に関する事項〕

1.有効期間又は使用期

2.貯法・保存条件

3.薬剤取扱い上の注意

4.承認条件

5.包装

6.同一成分・同効薬

7.国際誕生年月日

8.製造販売承認年月日

承認番号

9.薬価基準収載日

10.効能・効果追加、用法

用量変更追加等の年

月日及びその内容

11.再評価結果年月日及

びその内容

12.再審査期間

13.長期投与の可否

14.厚生省薬価基準収載

医薬品コード

15.保険給付上の注意

5 年

(外箱等に表示の使用期限内に使用すること)

室温保存

特になし

なし

500g

1853 年

製造販売承認年月日:1985 年 8 月 6 日 承認番号 :16000AMZ03805000 1950 年 9 月 1 日

2005 年 10 月

1994 年 9 月

可:下記の効能に対し、いずれも 30 日

・関節リュウマチ、若年性関節炎

・関節症

・強直性脊椎炎 1143001X1015

Page 25: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 21 -

ⅩⅠ.〔その他〕 ライ症候群とサリチル酸系製剤の使用について(医薬品等安全性情報 No.151について) (1)はじめに ライ症候群は,昭和 38年にオーストラリアの病理学者 Reyeにより最初に報告された症候群であり 1),主として小

児においてインフルエンザ,水痘等のウイルス性疾 患に罹患した後,嘔吐,意識障害,けいれん等の急性脳症

の症状を呈し,肝臓ほか諸臓器の脂肪沈着,ミトコンドリア変形を伴い,GOT,GPT,LDH,CPKの急激な上昇,高ア

ンモニア及び低プロトロンビン血症,低血糖症といった症状が1週間程度発現する病態であり,その発生はまれで

あるが,予後は不良である。昭和 57年,米国においてサリチル酸系製剤,特にアスピリンの使用とライ症候群の関

連性を疑わせる疫学調査結果が報告された 2),3)。調査結果を受け,米国では,アスピリンとライ症候群の関連

性を明らかにするには,更なる調査が必要であるとし,CDC(Center for Disease Control and Prevention),FDA

(Food and Drug Administration)等による合同研究班において調査が行われた。

一方,我が国においては,米国での疫学調査結果を受け,安全対策の見地から,インフルエンザや水痘罹患時のサ

リチル酸系製剤使用とライ症候群との関連について,昭和 57年以降,厚生省医薬品情報 4)や医薬品副作用情報

5)の発行,使用上の注意の改訂及びドクターレターの配布等 6)の措置を講じ医療関係者や一般消費者への注意喚

起を図ってきた 7)。また,これと並行して,我が国におけるライ症候群発生とサリチル酸系製剤との関連性を明ら

かにするため,「Reye症候群に関する調査研究」(昭和 57年度~平成元年度)及び「重篤な後遺症をもたらす原因

不明の急性脳症と薬剤との関係に関する調査研究」(平成2年度~平成8年度)として研究班を組織し,基礎的,

臨床的及び疫学的に継続した調査研究を行ってきた。

このほど,研究班による一連の調査研究が終了したこと,海外でもいくつかの新しい文献,提言があることを踏ま

え,中央薬事審議会副作用第二調査会において,ライ症候群とアスピリンを含むサリチル酸系製剤との関係につい

て考察を行った。

(2)アスピリンの使用とライ症候群の発症の関係について

1)米国における疫学調査結果

昭和 55年から昭和 57年にかけて米国でライ症候群に関する4つのケース・コントロール・スタディーが行わ

れ,その結果,ライ症候群患者ではライ症候群を発症しなかった患者に比べ,インフルエンザ,水痘などの先行疾

患罹患時に,アスピリン等のサリチル酸系製剤が使用されている割合が有意に高いという報告がなされた。これら

の報告に対し,先行疾患の重症度の点で,ライ症候群の患者と対照群の患者とのマッチングが不適切であるなどの

批判があった。このような批判を踏まえ,CDC,FDA等による合同研究班は昭和 59年2月から5月の間にパイロット

スタディーを実施し,昭和 60年に結果を公表した。このパイロットスタディーでは,30例のライ症候群の患者と

145例の対照群についてのケース・コントロール・スタディーが行われた。対照群は,ライ症候群患者と同じ病院に

入院した者,同じ救急室に収容された者,患者と同じ学校の生徒,電話番号から無作為に抽出した者の4つの母集

団から,それぞれライ症候群患者と同じ年齢,人種でマッチした先行疾患を有する者が選ばれた。ライ症候群の患

者群と対照群との間で,インフルエンザ等の先行疾患罹患時におけるサリチル酸系の製剤の使用率を比較したとこ

ろ,いずれの対照群と比較しても,ライ症候群患者の群でサリチル酸系製剤の使用率が 90%以上になっており,有

意に高いという結果が得られた(表1)8)。さらに CDC,FDA等の合同研究班により,昭和 60年1月から昭和 61

年5月にかけて本調査が実施され,昭和 62年4月に結果が公表された。この調査では,27例のライ症候群の患者群

(男 14例,女 13例,平均年齢 11.0歳)と年齢,人種及びライ症候群発症前の先行疾患の種類,発症時期を一致さ

せた 140例の対照群(男 72例,女 68例,平均年齢 10.6歳)が比較され,アスピリンを服用していた者はライ症候

群の患者群では 93%,対照群で 29%であり,アスピリンとライ症候群との間に強い疫学的関連性が見られるとされ

ている。また,ライ症候群患者群の,サリチル酸系製剤総使用量と1日平均投与量は,それぞれ対照群に比して多

く,有意の差が見られており(P=0.0052,P=0.0015)(表2),サリチル酸系製剤の1日使用量が 20mg/kg/日以

上の者がライ症候群患者では 67%に対し対照群では 22%で,アスピリン使用量がライ症候群患者群では対照群に比

べ多いことが認められている 9)。

2)日本における疫学調査結果

米国での調査結果に対し,日本ではアスピリンの投与量が少ないこと,ライ症候群の発症数もかなり少ないこと,

ライ症候群の発症年齢分布が大きく異なっていることなど両国間でのアスピリンの使用状況とライ症候群の発生状

況が明らかに異なっており,我が国において独自にアスピリンの使用とライ症候群との関連性を明らかにすること

が必要とされたため,厚生省では研究班を組織し,日本におけるライ症候群患者の全容を把握すべく,小児診療を

行っている全国の小児専門医療機関(約 1400施設)を対象として疫学調査を中心に調査研究を行ってきた。昭和 59

年度から開始された「Reye症候群に関する調査研究」の結果,日本におけるケース・コントロール・スタディーで

は,各群間に有意差は認められず,ライ症候群とサリチル酸系製剤との疫学的関連性は見られなかった(表3)。

Page 26: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 22 -

なお,対照群患者は,ライ症候群患者の性,年齢,先行疾患の症状をマッチさせて選ぶようライ症候群の報告のあ

ったそれぞれの施設に依頼した。その後,調査研究が平成元年度まで続けられたが,ライ症候群の発生メカニズム

について,ライ症候群とインフルエンザ等の感染症との関連性の検討が不十分であること,小児におけるライ症候

群と先天性代謝異常症との鑑別診断の不確実性が存在していることなどいくつかの問題点が指摘され,因果関係を

明らかにするためには,更に調査研究を継続する必要があるとされた。これを受けて,平成2年度から平成8年度

まで「重篤な後遺症をもたらす原因不明の急性脳症と薬剤との関係に関する調査研究」が実施されたが,昭和 60年

に使用上の注意の改訂やドクターレターの配布等の安全対策が講じられた結果,アスピリンの幼小児への使用が激

減し,ライ症候群患者でアスピリンを使用した例がほとんど見られなくなったこともあり,疫学的な手法を用い

て,ライ症候群の発症とアスピリン使用との関連性を明らかにすることはできなかった。なお,我が国において,

昭和 59年度から昭和 63年度までに研究班に報告のあったライ症候群の患者と急性脳症の患者との発症前の医薬品

の使用状況を比較すると,ライ症候群においてアスピリンの使用が多い(確定ライ症候群 33.3%(7/21),臨床的

ライ症候群 20%(13/65),急性脳症0%(0/32))という結果が出ている 12)が,当調査会においてこの結果に

ついて改めて検討した結果,疫学調査に必要な情報が必ずしも十分得られなかったことから各患者の先行疾患時の

状態が十分把握されておらず,ライ症候群の患者と急性脳症の患者の先行疾患の重症度等の点でマッチングが不十

分であったり,また,先行疾患に対する治療方法等にバイアスが生じている可能性もあり,この結果からライ症候

群とアスピリンとの関連性を明らかに結論付けるには無理があると考えられる。

(3)アスピリン使用の減少とライ症候群発症の関係について

1)米国の状況

米国では,アスピリンとライ症候群の発症に関する疫学調査結果が報告された後,小児のインフルエンザ等へのア

スピリンの使用を控えるキャンペーンが行われ,また,昭和 61年及び昭和 63年に添付文書の改訂の措置などが行

われたことに伴い,ライ症候群の発症は減少した。CDCが行ったライ症候群サーベイランスによると米国でのライ症

候群の報告数は,昭和 56年には年 221例 13)であったのに対し,昭和 61年には 101例 14),平成元年には 25例

15)であった。最近(平成6年)になって,米国の小児病院ではアスピリンによると疑われるライ症候群が再び増

加してきており,再度注意喚起が必要であるとする報告がある 16)。

2)日本の状況

日本におけるライ症候群発症の状況は,「Reye症候群に関する調査研究」「重篤な後遺症をもたらす原因不明の急

性脳症と薬剤との関係に関する調査研究」により明らかにされている。これらの調査では,全国の大学附属病院,

国公私立病院,その他の小児専門医療機関約 1400施設を対象に,ライ症候群を含む原因不明の急性脳症患者の来院

経験の有無に関する一次調査(アンケート調査)が行われ,その結果,「経験有り」と回答した医師に対してその

患者の症状,検査所見等の詳細を求める二次調査を行い,詳細報告を研究班で評価した後,各症例を米国 CDCと同

様の診断基準に基づいて,急性脳症,ライ症候群(臨床的ライ症候群及び確定ライ症候群)及びその他に分類し集

計解析が実施された。昭和 57年のライ症候群とサリチル酸系製剤に関する米国の疫学調査結果についての医薬品副

作用情報等の発行や,昭和 60年の使用上の注意の改訂・ドクターレターの配布を行った後のライ症候群発生報告数

の経年変化については,研究班においては,調査票の回収率をもとにライ症候群の発症数を推定し,その結果,平

成元年度以後になって明らかに減少したとしており,その減少にはサリチル酸系製剤の使用頻度の減少が何らかの

役割を果たしたように考えられるとしているが 17),回収率が昭和 58年,59年度では 11.0%で,その他の年度に

おいては 30~50%と大きな差があること,また,昭和 58年,59年度とそれ以後では調査方法に相違があること,

一方で報告された患者数においての比較(表4)においても明確な減少傾向は認められていないことから全体とし

て減少傾向がうかがえるが,年によって増減があることから明確に減少してきているとは言い難いと考えられる。

また,アスピリンが小児に対してほとんど使用されなくなった後でも,ライ症候群の報告が依然として見られるこ

と,他方において,インフルエンザ様疾患の流行とライ症候群の患者報告数を平成4年~5年及び平成6年~7年

において月別に比較したところ,いずれにおいてもインフルエンザ様疾患は2月をピークとして発生しており,こ

れと同時期にライ症候群の患者報告数が増加する傾向が認められること(図)から,ライ症候群はアスピリンの使

用とは無関係にインフルエンザ感染それ自体か,あるいはそれに不明の因子が加わることによって発症する可能性

があるように考えられる。

(4)最近の動向

ライ症候群とアスピリンの関連性については,各国における報告に相違が見られる 18),19),20)ことから,長

期間にわたり各国で専門家による検討が続けられている。また,国際的に,ライ症候群の臨床的病態 21)や発症メ

カニズムの研究 22)が進むにつれて,昭和 55年に設定された CDC診断基準のみでは,先天性の代謝異常症等が除外

しきれないことが指摘されており,その確定診断の困難さについて論争が続けられている。他方,米国小児科学会

は,米国におけるこれまでの調査について総合的なレビューをした結果,「米国においては,アスピリンの使用と

ライ症候群発症の危険性との間にほぼ間違いなく因果関係がある」という論文を本年7月に掲載しており 23),米

国内における調査研究の一応の総括が行われている。

Page 27: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 23 -

(5)まとめ

米国では,ライ症候群とサリチル酸系製剤の使用の間に疫学的な関連性が示されたが,我が国の調査ではライ症候

群発症とサリチル酸系製剤の使用との間に疫学的な関連性は明らかにされなかった。この原因としては,米国の疫

学調査結果ではアスピリンの使用量の増加とともに危険性が増すとされているが 24),我が国の小児でのアスピリ

ンの使用量は通常 10~20mg/kg/日,最大でも 20~30mg/kg/日程度であり,米国でのライ症候群患者のアスピリン使

用量 26.4mg/kg/日(中央値)(表2)に比べて低いこと,また,日本と米国ではアスピリンの1人当たりの消費量

に十倍以上の差があったこと,さらには,米国に比べて日本でのライ症候群の発生数が非常に低かったことなどに

より,疫学的な関連性が明らかとならなかった可能性が考えられる。また,米国では,小児へのアスピリンの使用

が減少することに伴いライ症候群が著しく減少したが,我が国では米国で見られたような明確な減少は見られなか

った。なお,米国ではライ症候群の好発年齢層が 10代であったのが,ライ症候群の減少後は好発年齢層が低下し,

日本のライ症候群の発症状況に近づいている。このように,日米の疫学調査結果が異なったものになったのは,日

米のアスピリンの使用状況の差が結果に反映されたものと考えられる。以上考察したとおり,我が国においてライ

症候群発症とサリチル酸系製剤の使用との間に疫学的な関連性は明らかにされていないが,我が国とサリチル酸系

製剤の使用実態が異なるものの,米国小児科学会における総合的なレビューも踏まえ,我が国においてもサリチル

酸系製剤の小児への使用のあり方について今後も注意を払っていく必要がある。

(6)今後の安全対策について

ライ症候群の発症とその使用における関連性については,アスピリン以外のサリチル酸系製剤では必ずしも明らか

ではないが,他のサリチル酸系製剤がアスピリンと類似の構造を有していることなどから,これらアスピリン以外

のサリチル酸系製剤についても念のためにサリチル酸系製剤とライ症候群との関連性について,使用上の注意の改

訂等により改めて一層の注意喚起を行い,所要の措置を講じることが適当と考えられる。

1)アスピリン等のサリチル酸系薬剤を含有する医療用医薬品について

1.アスピリン,アスピリン・アスコルビン酸,アスピリンダイアルミネート,サリチル酸ナトリウム,サザピリン

のいずれかを含有する医薬品について使用上の注意の「重要な基本的注意」に記載されているライ症候群に関する

記述内容について以下のとおり改訂する。

(現行)

サリチル酸系製剤とライ症候群との因果関係は明らかではないが,関連性を疑わせる疫学調査報告がある。15歳未

満の水痘・インフルエンザの患者にやむを得ず投与する場合には,慎重に投与し,投与後の患者の状態を十分に観

察する。

[ライ症候群:小児において極めてまれに水痘,インフルエンザ等のウイルス性疾患の先行後,激しい嘔吐,意識

障害,けいれん(急性脳浮腫)と肝ほか諸臓器の脂肪沈着,ミトコンドリア変形,GOT,GPT,LDH,CPKの急激上

昇,高アンモニア血症,低プロトロンビン血症,低血糖症等の症状が短期間に発現する高死亡率の病態である]

(改訂案)

サリチル酸系製剤の使用実態は我が国と異なるものの,米国においてサリチル酸系製剤とライ症候群との関連性を

示す疫学調査報告があるので,本剤を 15歳未満の水痘,インフルエンザの患者にやむを得ず投与する場合には,慎

重に投与し,投与後の患者の状態を十分に観察する。

[ライ症候群:以下現行と同じ]

2.サリチルアミド又はエテンザミドを含有する医薬品についてサリチルアミド,エテンザミドについては,他のサ

リチル酸系薬剤と異なり代謝によりサリチル酸を生じないが,一層の安全対策の観点からこれらの成分についても 1

の改訂案と同様の記載を行う。

2)アスピリン等のサリチル酸系薬剤を含有する一般用医薬品について

サリチルアミド及びエテンザミドを含有するかぜ薬,解熱鎮痛剤の使用上の注意に,現行のアスピリンを含有する

一般用医薬品と同様の使用上の注意を記載する。なお,アスピリン等のサリチル酸系薬剤を含有するかぜ薬,解熱

鎮痛剤の承認基準については,今後,改定を検討する。

Page 28: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 24 -

〈参考文献〉

1)Reye RDK., et al.:Encephalopathy and fatty degeneration of the viscera:adisease entity in

childhood. Lancet, 2:749-752(1963)

2)CDC:Follow-up on Reye Syndrome-United States. MMWR, 29:321-322(1980)

3)CDC:Reye Syndrome-Ohio, Michigan. MMWR, 29:532, 537-539(1980)

4)厚生省医薬品情報 No.9(1982)

5)医薬品副作用情報 No.53(1982),同 No.72(1985)

6)厚生省医薬品情報 No.10(1985)

7)医薬品副作用情報 No.81(1986),同 No.86(1987) 8)Hurwitz ES., et al.:Public Health Service Study on Reye’s Syndrome and Medications, Report of the

Pilot Phase, The New Engl. J. Med., 313(14):849-857(1985)

9)Hurwitz ES., et al.:Public Health Service Study of Reye’s Syndrome and Medications, Report of the

Main Study, JAMA, 257(14):1905-1911(1987)

10)Reye症候群に関する調査研究 昭和 59年度研究事業報告書

11)Reye症候群に関する調査研究 昭和 60年度研究事業報告書

12)Reye症候群に関する調査研究 平成元年度研究事業報告書

13)CDC:National Surveillance for Reye Syndrome-1981:Update, Reye Syndrome and Salicylate Usage.

MMWR, 31(5):53-56, 61(1982)

14)CDC:Reye Syndrome Surveillance-United States, 1986. MMWR, 36(41):689-691(1987)

15)CDC:Reye Syndrome Surveillance-United States, 1989. MMWR, 40(5):88-90(1991)

16)Poss WB., et al.:A Reemergence of Reye’s Syndrome, Arch Pediatradolesc Med, 148:879-882(1994)

17)重篤な後遺症をもたらす原因不明の急性脳症と薬剤との関係に関する調査研究 平成8年度研究事業報告書

18)Hall SM., et al.:Preadmission antipyretics in Reye’s syndrome. Archives of Disease in Childhood,

63:857-866(1988)

19)Orlowski JP., et al.:Reye’s syndrome:a case control study of medication use and associated

viruses in Australia. Cleveland Clinic Journal of Medicine, 57(4):323-329(1990)

20)Gladtke E., et al.:Monatsschr Kinderheilkd, 135(10):699-704(1987)

21)Hardie RM., et al.:The changing clinical pattern of Reye’s syndrome 1982-1990. Archives of

Disease in Childhood. 74:400-405(1996)

22)吉田一郎:Reye症候群におけるミトコンドリア異常. 小児内科,30(9):1190-1993(1998)

23)Ralph E., Kauffman MD.:Reye’s Syndrome and salicylate Use. American Academy of Pediatrics(1998)

24)Pinsky MPH., et al.:Reye’s Syndrome and Aspirin. JAMA, 260(5):657-661(1988)

表1 米国パイロットスタディーの結果

調査期間 サリチル酸系製剤の使用率(使用者数/患者数)

1984/2

~1984/5

ライ症候群

患者群

対照群

小 計

入 院

対照群

救急室

対照群

学 校

対照群

電 話

対照群

93%

(28/30)

46%

(66/145)

23%

(5/22)

28%

(7/25)

59%

(24/41)

51%

(30/57)

表2 ライ症候群とサリチル酸系製剤の使用量(米国の本調査結果より)

サリチル酸系製剤総使用量

(mg/kg)

サリチル酸系製剤

1日平均使用量(mg/kg/日)

ライ症候群

最少値 最大値

4.1 ~ 534.1

中央値 74.3

最少値 最大値

4.1 ~ 89.0

中央値 26.4

対照群 2.4 ~ 357.1

中央値 24.5

2.5 ~ 51.0

中央値 11.1

Page 29: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 25 -

表3 日本における調査結果

昭和 56年 10月~昭和 57年3月

サリチル酸系製剤及び合剤の使用率 10)

(使用者数/患者数)

昭和 58年4月~昭和 60年3月

サリチル酸系製剤及び合剤の使用率 11)

(使用者数/患者数)

確定ライ症候群*1 25.0%

(1/4)

33.3%

(3/9)

臨床的ライ症候群*2 34.6%

(9/26)

25.0%

(3/12)

対照群 53.8%

(7/13)

16.2%

(6/37)

* 1:肝生検で組織の脂肪沈着を確認したライ症候群*2:組織の脂肪沈着を確認するための肝生検をしていな

いライ症候群

* 表4 ライ症候群患者の年度別発生報告数 (年度)

昭和 58 59 60 61 62 63 平成元 2 3 4 5 6 7

臨床的ライ症候群 9 16 21 17 16 9 11 9 12 7 5 16 10

確定ライ症候群 4 2 7 6 9 2 7 1 2 2 0 1 1

ライ症候群合計 13 18 28 23 25 11 18 10 14 9 5 17 11

(注)表中の数値は2次調査結果による

Page 30: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

- 26 -

ⅩⅡ.〔文献〕

1.引用文献

2.その他の参考文献

1)JPDI 2011 2)加藤隆一:医薬品の比較生体内動態 VolⅠ, p11 3)日本小児循環器学会:川崎病急性期治療のガイドライン 2003 4)日本循環器学会,日本心臓病学会,日本小児科学会,日本小児循環器学会, 日本胸部外科学会合同研究班:川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関す るガイドライン:Circulation Journal 67(Suppl.IV) 2003;1111-1173

5)第十七改正日本薬局方解説書:C-94,廣川書店,2016 6)辻本他:medicina vol22 no5 (1985) 7) Reye,R.D.K.,et al.:Lancet,ii,749(1963) 8) Harris,W.H.:JAMA,246(24),2808(1981) 9) Stuart,M.J.et al.:N.Engl.J.Med.,307(15),909(1982) 10)門間和夫ほか:小児科の進歩,2,95(1983) 11)長浜萬蔵ほか:先天異常,6,20(1966)

ⅩⅢ.〔参考資料〕

主な外国での発売状況

ⅩⅣ.〔備考〕

その他の関連資料

Page 31: 日本薬局方 アスピリン「ホエイ」 Aspirin...形 粉末剤 (結晶性) 規 格・含 量 1g 中 日局 アスピリン1g 一 般 名 和 名:アスピリン 洋 名:

文献請求先・製品情報お問い合わせ先 ファイザー株式会社 製品情報センター

〒151-8589 東京都渋谷区代々木 3-22-7 学術情報ダイヤル 0120-664-467

FAX 03-3379-3053 製造販売元

マイラン製薬株式会社

〒541-0053 大阪市中央区本町 2 丁目 6 番 8 号

販売 ファイザー株式会社

〒151-8589 東京都渋谷区代々木 3-22-7

MIF13D029D