10
タイの投資環境 184 地域別の概要 タイの地域分類 タイの地域区分には何通りかの分け方がある。人々の感覚では、タイ全土を北部、東北部、中 央部、南部の 4 つの地域に分ける場合もあるが、一般的には中央部をさらに東部、中部、西部、 バンコク首都圏に分類し、統計もこれら 7 地域の分類に基づき発表されている(図表 24-1)。 図表 24-1 タイの県名と所在地 1 チェンマイ Chiang Mai 2 チェンラーイ Chiang Rai 3 ナーン Nan 4 プレー Phrae 5 メーホーンソーン Mae Hong Son 6 ランパーン Lampang 7 ランプーン Lamphun 8 パヤオ Phayao 9 ターク Tak 10 スコータイ Sukhothai 11 ウッタラディット Uttaradit 12 ピサヌローク Phitsanulok 13 カンペンペット Kam Phaeng Phet 14 ピチット Phichit 15 ペッチャブーン Phetchabun 16 ナコンサワン Nakhon Sawan 17 ウタイターニー Uthai Thani 18 ブンカーン Bueng Kan 19 ノーンカーイ Nong Khai 20 ルーイ Loei 21 ウドンターニー Udon Thani 22 ノーンブアランプー Nong Bua Lam Phu 23 サコンナコン Sakon Nakhon 24 ナコンパノム Nakhon Phanom 25 ムクダーハーン Mukdahan 26 コーンケーン Khon Kaen 27 カーラシン Kalasin 28 マハーサーラカム Maha Sarakham 29 チャイヤプーム Chaiyaphum 30 ナコンラーチャシーマー Nakhon Ratchasima 31 ブリラム Buri Ram 32 スリン Surin 33 シーサケート Si Sa Ket 34 ローイエット Roi Et 35 ヤソートン Yasothon 36 ウボンラーチャターニー Ubon Ratchathani 37 アムナートチャルーン Am Nat Chareon 38 チャイナート Chai Nat 39 シンブリー Singburi 40 ロッブリー Lop Buri 41 サラブリー Saraburi 42 アーントーン Ang Tong 44 プラナコンシーアユタヤ Phra Nakhon Sri Ayuthaya 北部地方 東北地方 中部地方

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タイの投資環境

184

地域別の概要

タイの地域分類

タイの地域区分には何通りかの分け方がある。人々の感覚では、タイ全土を北部、東北部、中

央部、南部の 4 つの地域に分ける場合もあるが、一般的には中央部をさらに東部、中部、西部、

バンコク首都圏に分類し、統計もこれら 7 地域の分類に基づき発表されている(図表 24-1)。

図表 24-1 タイの県名と所在地

1 チェンマイ Chiang Mai

2 チェンラーイ Chiang Rai

3 ナーン Nan

4 プレー Phrae

5 メーホーンソーン Mae Hong Son

6 ランパーン Lampang

7 ランプーン Lamphun

8 パヤオ Phayao

9 ターク Tak

10 スコータイ Sukhothai

11 ウッタラディット Uttaradit

12 ピサヌローク Phitsanulok

13 カンペンペット Kam Phaeng Phet

14 ピチット Phichit

15 ペッチャブーン Phetchabun

16 ナコンサワン Nakhon Sawan

17 ウタイターニー Uthai Thani

18 ブンカーン Bueng Kan

19 ノーンカーイ Nong Khai

20 ルーイ Loei

21 ウドンターニー Udon Thani

22 ノーンブアランプー Nong Bua Lam Phu

23 サコンナコン Sakon Nakhon

24 ナコンパノム Nakhon Phanom

25 ムクダーハーン Mukdahan

26 コーンケーン Khon Kaen

27 カーラシン Kalasin

28 マハーサーラカム Maha Sarakham

29 チャイヤプーム Chaiyaphum

30 ナコンラーチャシーマー Nakhon Ratchasima

31 ブリラム Buri Ram

32 スリン Surin

33 シーサケート Si Sa Ket

34 ローイエット Roi Et

35 ヤソートン Yasothon

36 ウボンラーチャターニー Ubon Ratchathani

37 アムナートチャルーン Am Nat Chareon

38 チャイナート Chai Nat

39 シンブリー Singburi

40 ロッブリー Lop Buri

41 サラブリー Saraburi

42 アーントーン Ang Tong

44 プラナコンシーアユタヤ Phra Nakhon Sri Ayuthaya

北部地方

東北地方

中部地方

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第 24 章 地域別の概要

185

(出所)アジア経済研究所「アジア経済動向年報」を基に作成

図表 24-2 地域毎の面積、人口、名目 GDP(2017 年)

(出所)National Economic and Social Development Board、Department of Provincial Administration より作成

タイの国土面積は約 51.3 万 km2(日本の約 1.4 倍)。バンコク首都圏は面積では国土の 1.5%の

広さしかないが、人口ではタイ全体の 23.5%、経済規模(名目 GDP)では同 46.4%を占めている。

また、中部や東部も面積や人口に比べて、経済規模の比率は高くなっている(図表 24-2)。

一方、面積の約 3 割ずつを占める東北部や北部は、経済規模では各々1 割弱に留まっている。

西部や南部も同様に、経済規模の比率は相対的に低くなっている。

大手製造企業の本社機能や金融機関が多く所在するバンコク首都圏や、製造企業の生産拠点が

多い中部や東部は、アジア通貨危機、世界金融危機時には経済規模の構成比が低下したが、1995

年以降、これら 3 地域でタイの名目 GDP の約 7 割を占める傾向が続いている。

60 サムットソンクラーム Samut Songkhram

46 ナコンパトム Nakhon Pathom 61 ラーチャブリー Ratchaburi

47 ノンタブリー Nonthaburi 62 ペッチャブリー Phetchaburi

48 パトゥムターニー Pathum Thani 63 プラチュワプキーリーカン Phachuap Khiri Khan

53 バンコク Bangkok

54 サムットサーコン Samut Sakhon 64 チュムポーン Chumphon

55 サムットプラカーン Samut Prakan 65 ラノーン Ranong

66 スラートターニー Surat Thani

49 ナコンナーヨック Nakhon Nayok 67 パンガー Phangnga

50 プラーチーンブリー Prachin Buri 68 クラビー Krabi

51 サケーウ Sa Kaeo 69 プーケット Phuket

52 チャチュンサオ Chachoengsao 70 ナコンシータマラート Nakhon Si Thammarat

56 チョンブリー Chon Buri 71 パッタルン Phatthalung

57 ラヨーン Rayong 72 トラン Trang

58 チャンタブリー Chanthaburi 73 パッタニー Pattani

59 トラート Trat 74 ソンクラー Songkhla

75 サトゥーン Satun

43 スパンブリー Suphan Buri 76 ヤラー Yala

45 カーンチャナブリー Kanchanaburi 77 ナラティワート Narathiwat

西部地方

南部地方

バンコク首都圏

東部地方

面積 人口 名目GDP

(㎢) (構成比) (1,000人) (構成比) (10億バーツ) (構成比)

全国 513,120 (100.0%) 67,654 (100.0%) 15,452 (100.0%)

バンコク首都圏 7,762 (1.5%) 15,931 (23.5%) 7,167 (46.4%)

中部 16,593 (3.2%) 3,138 (4.6%) 838 (5.4%)

東部 36,503 (7.1%) 5,707 (8.4%) 2,857 (18.5%)

西部 43,047 (8.4%) 3,598 (5.3%) 539 (3.5%)

北部 169,644 (33.1%) 11,400 (16.9%) 1,183 (7.7%)

東北部 168,855 (32.9%) 18,619 (27.5%) 1,496 (9.7%)

南部 70,715 (13.8%) 9,261 (13.7%) 1,371 (8.9%)

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タイの投資環境

186

県別の 1 人あたり GDP

図表 24-3 では、国家経済社会開発委員会(National Economic and Social Development Board)の

統計に基づいた県別の 1 人あたり GDP(2017 年)を階層別に表している。これに拠ると、1 人あ

たり GDP が相対的に高い地域は、バンコク首都圏、工業団地の多い東部、観光業が盛んなプーケ

ット等の南部の一部地域となっている。他方、相対的に低い地域は、ラオスやカンボジアの国境

に近い東北部、観光都市チェンマイや電子部品等の製造業が工業団地に進出しているランプーン

を除いた北部となっている。

図表 24-3 県別 1 人あたり GDP(2017 年)

(注)東北部のブンカーン県とノーンカーイ県は合算ベース (出所)National Economic and Social Development Board、IMF より作成

1万ドル以上

5,000ドル以上 1万ドル未満

4,000ドル以上 5,000ドル未満

3,000ドル以上 4,000ドル未満

2,000ドル以上 3,000ドル未満

2,000ドル未満

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第 24 章 地域別の概要

187

地域別の経済動向

地域別 GDP 構成比

2017 年の名目 GDP を基にすると、地域毎の内訳はバンコク首都圏で 46.4%、中部が 5.4%、東

部が 18.5%、西部が 3.5%、北部が 7.7%、東北部が 9.7%、南部が 8.9%となる(図表 24-4)。2000

年以降の推移は、バンコク首都圏の構成比は 01 年の 51.4%をピークに低下し、洪水の影響のあっ

た 11 年から 12 年は 43.5%にまで低下したが、その後は再び上昇し、46%半ばで推移している。

洪水前の 10 年と 17 年との構成比を比較すると、バンコク首都圏の構成比は 44.2%から 46.4%へ

と 2.2%ポイント上昇し、それ以外では、東部が 18.2%から 18.5%へ 0.3%ポイント上昇しているが、

他の 5 地域の構成比は低下している。

バンコク首都圏の重要性が増したこともあり、タイ全国の名目 GDP に占める比率を地域と産業

のマトリックスで見ても、製造業や第 3 次産業を中心に、バンコク首都圏の各産業の規模が大き

いことが窺える。その他の地域で比率が高いのが「第 1 次産業」での北部、東北部、南部、「製造

業」の東部、中部、東北部、「卸売・小売業」の東部、「教育・科学技術」の東北部である。

図表 24-4 地域別にみた名目 GDP の産業別構成比(全国=100%)

(注)タイ全国の GDP に占める比率が 1.2%を上回っている産業・地域を黄色、0.5%を下回っている産業・

地域は青色でシャドーしている (出所)National Economic and Social Development Board より作成

全国バンコク

首都圏中部 東部 西部 北部 東北 南部

全体 100.0% 46.4% 5.4% 18.5% 3.5% 7.7% 9.7% 8.9%

第1次産業 8.3% 0.4% 0.4% 1.2% 0.6% 1.9% 1.9% 2.0%

第2次産業 35.2% 12.1% 3.4% 12.3% 1.3% 1.9% 2.5% 1.7%

鉱業 2.5% 0.0% 0.1% 1.7% 0.1% 0.3% 0.1% 0.2%

製造業 27.2% 10.3% 2.9% 9.2% 0.8% 1.1% 1.8% 1.0%

公益業 3.0% 0.7% 0.3% 1.1% 0.3% 0.2% 0.2% 0.2%

建設業 2.6% 1.1% 0.1% 0.3% 0.1% 0.3% 0.4% 0.3%

第3次産業 56.5% 33.9% 1.7% 5.0% 1.5% 3.9% 5.3% 5.2%

卸売・小売 15.5% 9.3% 0.6% 1.9% 0.4% 1.0% 1.3% 1.0%

ホテル・レストラン 5.3% 3.1% 0.0% 0.5% 0.1% 0.2% 0.1% 1.3%

運輸・倉庫 5.7% 3.7% 0.2% 0.6% 0.1% 0.2% 0.2% 0.6%

情報・通信 2.3% 2.1% 0.0% 0.1% 0.0% 0.1% 0.1% 0.1%

金融 7.5% 5.1% 0.2% 0.4% 0.2% 0.5% 0.7% 0.5%

不動産 2.4% 1.0% 0.1% 0.2% 0.1% 0.3% 0.4% 0.3%

公共・防衛 7.6% 4.9% 0.3% 0.6% 0.2% 0.5% 0.6% 0.6%

教育・科学技術 5.9% 2.4% 0.2% 0.4% 0.2% 0.7% 1.4% 0.5%

その他 4.2% 2.5% 0.1% 0.3% 0.1% 0.4% 0.5% 0.3%

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タイの投資環境

188

図表 24-5 地域別にみた名目 GDP の産業別構成比(各地域を 100%とした場合)

(注)構成比が「全国」を 2%ポイント上回っている産業・地域を黄色、2%ポイント下回っている産業・地域

を青色でシャドーしている (出所)National Economic and Social Development Board より作成

8%1%

7% 7%18%

25%20% 22%

35%

26%

62% 67%39% 24%

26% 20%

56%

73%

31% 27%

44%51% 55% 58%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

全国

バンコク

首都圏

中部

東部

西部

北部

東北

南部

第1次産業 第2次産業 第3次産業

全国バンコク首都圏

中部 東部 西部 北部 東北 南部

全体 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0%

第1次産業 8.3% 0.8% 6.9% 6.5% 18.0% 24.8% 19.6% 22.1%

第2次産業 35.2% 26.1% 62.1% 66.6% 38.5% 24.5% 25.6% 19.7%

鉱業 2.5% 0.0% 2.7% 9.2% 2.3% 3.3% 0.9% 2.5%

製造業 27.2% 22.1% 52.8% 49.9% 23.5% 14.7% 18.7% 11.7%

公益業 3.0% 1.6% 5.1% 6.0% 9.0% 2.2% 1.9% 2.4%

建設業 2.6% 2.3% 1.5% 1.5% 3.6% 4.2% 4.2% 3.1%

第3次産業 56.5% 73.2% 31.0% 26.9% 43.5% 50.7% 54.8% 58.2%

卸売・小売 15.5% 20.0% 11.0% 10.1% 11.2% 13.7% 13.4% 11.7%

ホテル・レストラン 5.3% 6.6% 0.5% 2.8% 3.7% 2.4% 1.3% 14.2%

運輸・倉庫 5.7% 7.9% 3.5% 3.4% 4.2% 2.5% 2.4% 7.1%

情報・通信 2.3% 4.4% 0.4% 0.3% 0.5% 0.7% 0.6% 0.6%

金融 7.5% 11.0% 2.9% 2.1% 4.9% 6.9% 7.7% 5.1%

不動産 2.4% 2.2% 1.8% 1.2% 3.1% 3.9% 4.6% 3.0%

公共・防衛 7.6% 10.5% 4.7% 3.1% 6.5% 6.2% 5.8% 6.8%

教育・科学技術 5.9% 5.2% 3.9% 2.4% 5.8% 9.4% 14.2% 6.2%

その他 4.2% 5.4% 2.3% 1.6% 3.7% 5.1% 4.9% 3.4%

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第 24 章 地域別の概要

189

地域別の産業構造の特徴

①バンコク首都圏(2017 年名目 GDP 構成比:46.4%)

バンコク首都圏は、タイの GDP の約半分が集中している。産業別では、他地域に比べて第 3 次

産業の比率が高い。人口が多いため、特に「卸売・小売」、「運輸・倉庫」、「金融」、「公共・防衛」

産業が経済を牽引している。

②中部(同:5.4%)

中部の特徴は、製造業を中心とした第 2 次産業の比率が 62.1%と、全国平均(35.2%)を大幅

に上回っていることにある。製造業の中でも構成比が高まっている自動車産業(主に自動車部品

メーカー)や家電メーカーが集積している影響が表れている。

③東部(同:18.5%)

東部は、中部以上に第 2 次産業の構成比が高い(66.6%)。製造業の中でも構成比が高まってい

る自動車産業(主に完成車メーカー)や化学産業が集積している影響が表れている。

④西部(同:3.5%)

西部の特徴は、バンコク首都圏に比較的近いにも拘らず、第 1 次産業の構成比が 18.0%と全国

平均(8.3%)を上回っていることにある。また、第 2 次産業の構成比は 38.5%だが、この内の 9.0%

を公益業が下支えしており、製造業の育成は遅れている。

⑤北部(同:7.7%)

北部の特徴は、第 1 次産業の構成比が 24.8%と全国平均(8.3%)を大幅に上回っていることに

ある。ランプーン県を中心に小型高付加価値の電子部品産業が多く進出しているが、アクセス(陸

運、空運)が他地域に比べて劣ることもあり、北部は第 1 次産業(主に農林業)が中心である。

⑥東北部(同:9.7%)

東北部の産業構成は北部と同様に第 1 次産業(19.6%)の比率が高い。また、第 3 次産業の「教

育・科学技術」の比率が相対的に高いことも特徴的である。コーンケーン県やナコンラーチャシ

ーマー県の製造業比率は 3 割前後で全国平均を上回るが、他は 2 割未満と工業化は遅れている。

⑦南部(同:8.9%)

南部は、農林業に加え漁業も盛んなため、第 1 次産業の構成比が 22.1%と北部に次いで高い。

また、観光都市も多いため、「ホテル・レストラン」の構成比(14.2%)は全国平均(5.3%)を大

幅に上回っている。

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タイの投資環境

190

賃金水準

2012 年末以前のタイでは、県毎に 低賃金が異なっていた。76 県のデータが揃った 94 年 4 月

時点では 高水準の県は 低水準の県の 1.22 倍だったが、両者の格差は徐々に拡大し、12 年末時

点には 1.35 倍となっていた。

2013 年 1 月より日額の 低賃金は一律 300 バーツ(約 1,000 円)となったが、17 年 1 月より再

び地域の格差が生じている。18 年 4 月の改定では、 低賃金は 308 バーツ(1,053 円)、310 バー

ツ(1,060 円)、315 バーツ(1,077 円)、318 バーツ(1,088 円)、320 バーツ(1,094 円)、325 バー

ツ(1,112 円)、330 バーツ(1,129 円)の 7 段階となった。 も高い 330 バーツとなったのは東部

のラヨーン県、チョンブリー県の 2 県と南部のプーケット県の計 3 県で、バンコク首都圏の 6 県

と東部のチャチュンサオ県の計 7 県が 325 バーツとなっている(図表 24-6)。

図表 24-6 県別にみた 低賃金(2019 年 6 月)

330 バーツ/日

325 バーツ/日

320 バーツ/日

318 バーツ/日

315 バーツ/日

310 バーツ/日

308 バーツ/日

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第 24 章 地域別の概要

191

近年の地域別投資動向

BOI で認可された投資案件(Application Approved)の投資額を地域別にみると、バンコク首都

圏を含んだ中部と多くの工業団地がある東部に集中している。2013 年から 18 年までの 6 年間の

累計では、中部は約 1 兆 400 億バーツ(約 3.5 兆円)と全体の 23%を、東部は約 2 兆 2,600 億バ

ーツ(約 8 兆円)と同 49%を占めている。

東北部には、 もバンコクに近いナコンラーチャシーマー県に工業団地があり、2013 年から 16

年までは年間 500 億~800 億バーツ(約 1,700 億円~2,700 億円)の投資額が認可されていた。17

年と 18 年は、タイ全体の FDI 認可額減少を受け、東北部への FDI 認可額もそれぞれ 140 億バー

ツ(約 480 億円)となっている。13 年から 18 年までの 6 年間の累計では、東北部の比率は 9.4%

と 1 割弱を占めているが、北部、西部、南部はそれぞれ全体の 1 割にも満たない。

図表 24-7 地域別にみた BOI 投資申請額(認可ベース)

(注)2012 年以前は地域別のデータがないため、「ゾーン制」で表示

2013 年以降の「Central」にはバンコク首都圏も含まれる (出所)BOI 資料より作成

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タイの投資環境

192

外資企業の関心が高い工業団地の分布

タイには現在、約 80 の工業団地が存在し、この内の 55 ヵ所はタイ工業団地公社(IEAT)によ

って開発・管理されている(民間との合弁での運用管理を含む)。これらの工業団地は主に中部か

ら東部にかけての地域に多く立地している(図表 24-8)。中でも東部のラヨーン(図表中⑫)、チ

ョンブリー(同⑪)、チャチュンサオ(同⑩)、中部のアユタヤ(同④)に多くの工業団地が立地

している。

工業団地の中で日系企業が多いのは、アマタシティ・チョンブリー工業団地(同⑪)、イースタ

ン・シーボード工業団地(同⑫)、バンプー工業団地(同①)が挙げられる。日系企業の多くは中

部から東部に進出しているが、北部ランプーンの北部工業団地や東北部のナコンラーチャシーマ

ーのスラナリ工業団地にも日系企業が多い。

図表 24-8 タイ国内の工業団地分布図

(出所)各種資料より作成

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第 24 章 地域別の概要

193

【参考】地域別気候

タイは熱帯性モンスーン気候で、非常に暑く雨が多いが、南北の地域ではやや違いがある。北

部のチェンマイは山岳地帯ということもあり、バンコクやプーケットに比べると 低気温がやや

低めで、過ごしやすくなっている。

図表 24-9 地域別の気温と降水量(2018 年)

(出所)気象庁「世界の天候データツール」より作成

<バンコク> <チェンマイ>

0

50

100

150

200

250

0

5

10

15

20

25

30

35

40

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

降水量(右軸) 平均最高気温 平均最低気温

(℃) (mm)

0

50

100

150

200

250

300

350

0

5

10

15

20

25

30

35

40

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

降水量(右軸) 平均最高気温 平均最低気温

(℃) (mm)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0

5

10

15

20

25

30

35

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

降水量(右軸) 平均最高気温 平均最低気温

(℃) (mm)

0

100

200

300

400

500

600

700

0

5

10

15

20

25

30

35

40

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

降水量(右軸) 平均最高気温 平均最低気温

(℃) (mm)