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福井大学 工学部研究報告 40 巻第 1 1992 3 架構支持型装置の地震応答と耐震設計 田川健吾事 白崎成人' 沢田常法撒 EarthquakeResponseof theEquipmentSupported by Fr ames anditsAseismicDesign KengoTAGAWA NaruhitoSHIRASAKI and Tu nenori SAWADA (ReceivedFeb.8 1992) Dyn nicinteraction betweenindustrial quipmentanditssupporting framesduring earthquakesshouldbetakenintoaccountfo 1' earthquake-resistantdesignofcomplex indust 1' ialstructures suchasblastfurnaces chemical reactorvessels 0 1' towers certain kinds of stacks and soon. This paper aims to examine the cffects of dynamic interaction onthe maximum b e shear distribution between equipmcnt and its supporting frames and on the consumption of induced vibratory energy during earthquakes.The random vibration theory is applied toobtaintheaveragepeakresponsesof simplified interactionmodelsplacedonabase which isbeing stimulated bygroundacceleration havingthe standard powerspectrum. The expected maximum values of the rocking moment in place of the base shear and the expected energy consumption are obtained as the function of dynamic characteristics of both components andthe in t . ermediate elements.These results arep 1' esented graphi- callyforconvenienceso todete 1' minetherationaldesign fo 1' cesfo 1' bothcomponents considering damping effects byinte 1' mediate elements. 1 .緒言 199 製鉄プラント、化学プラントなどで用いられる炉体、反応容器、あるいはスタックなどは、大型 装置になるとその周囲に鉄骨あるいは鉄筋コンクリート製の支持架構を配し、地震時水平力の一部 あるいは全部をそれに分担させる設計となっている。したがってこの種の架構支持型装置では、地 震時に、多かれ少なかれ装置本体と支持架構との間で動的相互作用が生じ、それによって装置およ び支持架構へのベースシャーの分布が影響を受ける。 しかしながらこの種の棲合構造の慣用的な耐震設計は、最初に系全体の地震時水平力を震度法な どにより求め、ついで、経験的に定まった一定比率を乗じて装置および支持架構の分担水平力を決定 し、これらにたいして各々の細部設計を行なうという単純な方法によっている現状であり、現在ま *環境設計工学科

架構支持型装置の地震応答と耐震設計 - CORE · 201 10: 装置の重心まわりの回転慣性 Ho: 装置の質量(有効質量) K:=:. :支持架構の水平剛性

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福井大学工学部研究報告

第40巻 第1号1992年 3月

架構支持型装置の地震応答と耐震設計

田川健吾事 白崎成人' 沢田常法撒

Earthquake Response of the Equipment Supported by Frames

and its Aseismic Design

Kengo TAGAWA, Naruhito SHIRASAKI, and Tunenori SAWADA

(Received Feb. 8, 1992)

Dyn出 nicinteraction between industrial quipment and its supporting frames during

earthquakes should be taken into account fo1' earthquake-resistant design of complex

indust1'ial structures such as blast furnaces, chemical reactor vessels 01' towers, certain

kinds of stacks, and so on. This paper aims to examine the cffects of dynamic interaction on the maximum b回 e

shear distribution between equipmcnt and its supporting frames and on the consumption

of induced vibratory energy during earthquakes. The random vibration theory is applied

to obtain the average peak responses of simplified interaction models placed on a base

which is being stimulated by ground acceleration having the standard power spectrum.

The expected maximum values of the rocking moment in place of the base shear and

the expected energy consumption are obtained as the function of dynamic characteristics

of both components and the int.ermediate elements. These results are p1'esented graphi-

cally for convenience so出 todete1'mine the rational design fo1'ces fo1' both components

considering damping effects by inte1'mediate elements.

1 .緒言

199

製鉄プラント、化学プラントなどで用いられる炉体、反応容器、あるいはスタックなどは、大型

装置になるとその周囲に鉄骨あるいは鉄筋コンクリート製の支持架構を配し、地震時水平力の一部

あるいは全部をそれに分担させる設計となっている。したがってこの種の架構支持型装置では、地

震時に、多かれ少なかれ装置本体と支持架構との間で動的相互作用が生じ、それによって装置およ

び支持架構へのベースシャーの分布が影響を受ける。

しかしながらこの種の棲合構造の慣用的な耐震設計は、最初に系全体の地震時水平力を震度法な

どにより求め、ついで、経験的に定まった一定比率を乗じて装置および支持架構の分担水平力を決定

し、これらにたいして各々の細部設計を行なうという単純な方法によっている現状であり、現在ま

*環境設計工学科

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で相互作用を伴う動的応答をもとにした水平力分担割合が検討されたことはなく、合理的な耐震設

計方法は不明のままに残されてきた。

一方、装置と支持架構のように互に使用材料、構造形式が著し〈異なり、したがって両者の動力

学特性の差が大きい場合には、地震時に両者を結ぶ部材を介して相互作用が生じやすく、むしろ積

極的にこの相互作用を利用し、両者の聞に適当な制震ダンパーを設ける等の方法で構造全体を効率

よく制震構造とすることができる。

本論文は、架構支持型装置のこのような特徴に注目して、動的相互作用と地震時分担水平力およ

び動的相互作用と制震効果の関係について理論的に検討したもので、実装置(高炉)の振動実験、

地震観測および応答解析に関する既往研究(')の結果をもとに、簡単な動的解析用モデルとそのパ

ラメータ範囲を設定し、ガウスランダム過程にもとづく統計的理論解析を実施した。得られた結果

をもとに、装置と支持架構および両者を結ぶ相互作用パネの動力学特性の種々の組合せに対して、

総合的な出力として各々の要素に期待される地震時最大転倒モーメントを選び、その分担比および

ダンパーによる制震効果を与える図表を作成したものである。

2.動的解析モデル

架構支持型装置には大別して、図.1に概念的に示す 2種類がある。

装置のみでは地震時に自立できないものをVessel、装置自体自立するが地震時水平力の一部を支

持架構に分担きせるものを、 Stackで代表させている。

これらを動的解析用の基本的な力学モデルに置換すると、各々に対応して図.2 となる。ここ

では炉体、容器などの装置は側体と仮定している。

Vessel Stack

図.1 架構支持型装置

(a) (b)

図.2架構支持型装置の力学モデル

K I

図.2 のモデルの自由度として、図中に示すように装置のピン支点回りの口、ソキンゲ (θ) と架

構の地盤に対する相対変位 (Us)をとると、運動方程式はいずれの場合も(1 )式となる。

lHsol門+(L+KI-KIH1)凡(「HS0!Ho 1 E J IθI l卜-KrH,K1H,2+Kel lθ10 HoHo 111

Hs:支持架構の質量(有効質量)

一一一(1)

h:装置のピンまわりの回転慣性、 IE=Io+HoHo2 一一一一一---------一一一一一一一一一一一一(2)

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10:装置の重心まわりの回転慣性

Ho:装置の質量(有効質量)

K:=:. :支持架構の水平剛性

Ks:装置の回転剛性

KI: 両者を結ぶ相互作用バネの水平剛性

UG:基礎地盤の水平地震加速度。"は時間に関する 2回微分を表す。

なお(1 )式では簡単のために減衰項を無視している。さらにモデル化を進めるために(3 )式を

導入する。

ぼ)=(;lu::J 一ーーー・ーーーーーーーーー(3)

ここに UE:相互作用バネが装置にとりつく点の装置の水平変位。(3 )式を(1 )式に代入し

て変数を変換すると、

、、,ノa“『aJ'E、、G

Hnu

、1Eligi--J

'

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A

rl--司lit-

、Ill--111la/

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、、azaEE--'zzlEtej'E

nUMn

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(

~: i02+Ho之

HE=IE/H,2=Mo -H ,~ 一一一一一一一一一(5)

Ho H,2 f=(MoHoH,)/h=一一一ーで ----------一一ーー(7)

H, io"'+Ho"'

KE=Ke/H12 一一一一一一一一一一一 (6)

( 4 )式は、図.3 の並列 2質点モデルの運動 r-UE r-US

震動 UGにたいして(7 )式で与えられる入力

効率 fを有するものである。(5 )、 ( 7 )

7 H,

」式より、 H1/Hoが大きくなりかつ ioが小さく ////,ググ//%手ζ/////////グ

なると、 HEは小さく、 fは大きくなる。 図.3等価並列 2質点モデル

図.3の並列 2質点モデルを地動水平加速度 UGにたいして動的解析し、両質点の変位振幅のピ

ーク値、すなわち!UE! peak、IUsl peak が得られたとする。図ー 2に示す元の架構支持型装置の

耐震設計にあたって基本的な量を、各質点の基礎部に働く転倒モーメントのピーク値に選ぶ。すな

わちこれらの値を各々!TE I peakおよび ITsl peakとすると、これらは(9 )式で与えられる。

方程式に外ならない。

図.3 において、装置に対応する質点 HEは

( 5 )式で与えられる等価質量を有し、水平地

I TEI peak=Ke !θI peak=H1KEIUE/peak

!Tsl peak=H1Ks!Usl peak 一-(9)

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また、構造全体の全転倒モーメントのピーク値 ITALLI peakは(10)式となる。

I TAL L I peak= I Ko e +H, UsKsl peak=H 1 I UEKdUsKsl peak --一一一一一-----------------一一一---・ E・-一一(10)

したがって架構支持型装置への全地震入力は(10)式を動的相互作用の大小に対して吟味すればよ

いし、それの装置と支持架構への分布割合は(9 )式と(10)とから(11 )式のように得られる。

|TE I peak KEIUE!peakQElpeak

ITALLlpeak IUEKE+UsKslpeak :QE+Qslpeak

一一一一一一一一(11)

!T sl peak Ks I Us I peak i Qs I peak

ITALLlpeak IUEKE+UsKs!peak IQE+Qslpeak

ここに、 IQE! peak、IQslpeakは、図 .3に示す等価並列 2質点系モデルにおげる各々 Eおよび S

質点の最大層せん断力(ベースシヤ)のピーク値を示す。

3.統計的手法による地震応答解析

図3に示す等価並列2質点モデルの運動方程式の(4 )式において、

mE=fE, ms十 kE十 ks十 kr=品5 mS恥 lo,y=iE,ωC2=主

とおいて無次元化すると、

、、EJ

内,ι'・4,,‘、G

・1・1、!

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、、hEtha--EEEE,J

O

Y

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4

A

H

V

,fS161'ili--

(12)式の右辺を Oとおいて固有円振動数を求めると

Q) ,2. (;、 221 , UI ~=一一[ y+kE+kr(1+kE)(1+y)干J1 r +kE+kr (1 +kE) (1 + r)] 2-4 r (kdk工(1+kE)2]]

ω02 -2 Y 一(13)

ここに ω,,ω2は符号と同順。

p次固有振動モード Xpおよび(12 )式右辺の外力項にたいする p次刺激係数 βpは、

kr O+kE) XP= CeE) p=i: ,¥,ハ・ 1. 、'" /...ーし λ2 一一一一一一ー--------一一一一一----------一一一一-----------(14)

A5

-色Llli ー旬ーー・ーー--・ー-----------ーー司一一ー----------ーーーーーー---ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・ーーーーーーーーーーーーーーー--町-----(15)P=i+rxp2

さて、図.3 に示す等価並列 2質点モデルが、ランダムな外乱をうけて定常振動域にあるとすると、

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各質点の二乗平均応答 Uu2 は (16)式で表わすことができる。

CXl

而2=L1S11(iω))2G2(ω)dω 一ーーーー一-------一ー(16)

ここに Su(iω) は U 質点変位の地動加速度に対する周波数伝達関数で (17)式で表される。

n uJ p'" S u(iω) = L-_ (φup)---

P=l ト告す2hp出一(17)

ここに φup: p次刺激関数、装置と支持架構に関して各々 βpXEおよびβpXsと表わされる。

hp p次減衰定数

ωp: (13)式で与えられる p次固有円振動数

n 採用する振動次数、今の場合 n=2。

またG2(ω)としては、金井による地動加速度のスベクトル密度(むを利用すると、 ( 18)式で表わ

すことができる。

G

一一-------一一一ー(18)

ここに γgは表層地盤の卓越円振動数。 hgはスペクトルの山の形を定める値。 Bは一定値

である。(17)式より、

、、,,,ω

〆't、、

uap

(ι ワL

門U3u

争P

HU

φ

nH「¥d

、IJ

‘4nu亙円

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‘、nr nv

ハノム

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u

争n守山

p

L、、,Jω

.、.‘〆

'E、、HU

S

一(19)

1 .‘A Q)p

Z 2pp(ω)= 一之 ,.2 (1-む玄)2+4hp2む玄

1(1-~玄)(l-4?)+4Mhq4こ-liωpωqωpωq Z 2pq(ω) = ,. 2 之 2

1(1-与コ)2+4hp2 ~~21 ((1-士コ)2+4hq2与云iw -¥2. AL._2 u)- 1 1/1 W pωpωq-' wq

ーーー・司,ーーーーー(20)

いま CXl

λ2pp=joZ PP2〈ω)G2(ω)dω

C幻

λ2昨らZげ (ω)G2(ω)dω

、hi-fi-r

率達伝己向同

--ーーーーー一(21)

;相互伝達率

とおくと、 (19 )式と(16 )式より二乗平均応答は

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n n uuhf争2削 ω)λ2pp+~ ~争 upφuqλ2pq

P q p (p土q)

ーーーーーーーー一一---(22)

と与えられる。

田治見 (2)によれば、ランダム入力がガウス分布則に支配される場合には、応答のピーク値の期

待値は二乗平均値と一定の比率を保つ。このことから、

E [l QE j peakLE[IQsl peakLE[1 QdQs 1 peakl

j QE2 j QS2 - ft志τ一ー一一-(23)

ここに Eト]は期待値を表わす。

したがって (11)式の最大転倒モーメントの期待値の比は、結局(24)となる。

k

kE212φePλ ♀pp+25φEP争 eqλ2pqlp q (p牢u

f(kEφEP+φsp) 2λ2pp+ f f (kE争 EP+φsp)(kE争叩φsq)λ2pqP ,p,

q (t土q)

一川崎

1J一a

-U品一

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P4 λ

円U25

φ

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nM品門ヨ

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守、

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D-nr z

λ

nu--5

φ

nzp

f(kEφEP+争 sp)2λ2附 ff(kE争 EP+争 sp)(kEφ 司 +φsq)λ2pqp ,p q

(t;q) ---(24)

(17 )式における各次の減衰定数としては、既往の研究 ( 3)により、構造物の構成要素により異な

る減衰特性を有する各部別減衰系にたいして、いわゆるBigg'sの方法 (4)が十分な精度で適用でき

るごとがわかっている。 Bigg'sの方法を構成要素単位で展開すると (25)式となる。

~\φpj) T [hpjKj] (φpj) jlpEkEXp♀+hps+hP1kI(1+kE) (1-Xp)2ωO ι

hp=F lφpj) T [Kj 1 !φ 州国

1+γXp主 (に)ー 一一一一一一一一一一一(25)

ここに ゆ pjl はp次モードにおける j要素分を示し、 hpj はp次固有振動における J要素の減

衰定数である。添字 T は転置を示す。

構造全体の地震応答を低減させる目的で、相互作用パネに制震ダンパーを付与する場合には、制

震ダンパーを含む相互作用バネの減衰定数を、各次モードごとに評価して (25)式を適用すればよい。

4.パラメータ設定

モデル系の形状および動力学特性比の範囲については、現実の支持型装置の動力学的特牲を十分

カバーするものとし、以下のように定めた。

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ωdω。=0.1"'-10.0,K工/(Ks+KE)=0.1",-10.0,Hl/Ho=HE/Hs=0.1"'-10.0, io/Ho=0.1"'-1.0

パラメータf、Yは各々定義から以下のように表わされる。

Hc. H,2 , Ho HE HoHo2 1+ (icJHo) 2 f=~- (一一一τ)ーー IU ¥ 2, γ-= -H, 'io2+Ho2J-H, 1+(io/Ho)2' f -Ms区H,2--1 一 (26)

(26)式に上記の形状および動力学特性比の範囲を代入すると、 f、Yの変域としては、たかだか

f =0.1"'-10.0, r =0.1"'-10.0 とすれば良いことがわかる。

減衰定数については、通常鉄筋コンクリート構造物および鉄骨構造物の応答解析によく用いられ

る値〈引を、装置および支持構造の減衰定数として採用し、各々、 hE=0.02、hs=O.Ol(周波数に関

し一定)とし、両者を結ぶ相互作用バネに関しては、この部分に制震ダンパーを設置して、地震入

力エネルギーの消費効率を調べる目的から、 hr=0.01'""0.20(周波数に関し一定)と変化させた。

上限の hr=0.20は、相互作用パネの弾塑性ヒステリシスによる等価減衰を最大限期待して、文献 (8'

を参考にして定めた。

( 18)式に現れる表層地盤のパラメータ γgおよび hgについては、既往研究、けを参考にして、

実地震波の平均的な応答に可及的に一致するように選ぶことにし、各々 γg=8πおよびhg=0.4と定

めた。今回の解析モデルで表.1に示す 15波の実地震波による応答の平均値を求め、定常ランダ

ム理論による理論値と比較した結果を図 .5に示す。図中黒マークが実地震波応答の平均値で、線

分は理論値である。図 .5をみると、両者の傾向はよく合っているものの、値そのものについては、

相互作用パネ比 Lが 0.1あたりまでは比較的一致度は良いか、それ以下では必ずしも良くない。

また 15波の平均値にたいする変動係数をみると、しが 0.1以下では急に大きくなり、相互作用が

表.1 実地震波パターン

i地震波パターン T (sω| N !Max.gal

新潟(NS) 30.00 1500 155.000

新潟(EW) 1500 159.000

|東松山(NS) 70.00 7000i 67.490

東松山(EW) 69.92 6992 112.640

八戸(NS) 120.00 12000 224.950

八戸(EW) 120.00 12000 182.930

十勝沖 40.00 4000 145.313

宮城県沖 24.08 2408 286.787

日向灘 40.00 4000 124.009

東京101(NS) 11.40 570 74.000

大阪205(EW) 16.60 830 25.000

埼玉(NS) 17.00 850 5.540

Port Is1and(EW) 15.00 1500 4.940

EL-CENTRO(NS) 29.00 2900 323.000

TAFT(EW) 30.00 3000 147.000

コO.6 〈

← ¥ w 0.4

nuuAMu-

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E

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O. 2

O. 8

=0.6 〈

← ¥ ωO. 4

←4

O. 2

O. 0

1.0ωE/ωS 10.0

図 .5 1 5実地震波の平均応答との比較

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206

卓越してくると、応答は地震波の周波数特性にたいしてより敏感となっていることが判る。本研究

の入力地震波としては、前述のように表層地盤を介して基盤ヘオ、ワイトノイズ入力させているので、

表層地盤の周波数特性と実地震波のそれとの差の影響がやや額著に出ているものと思われる。

5 .動的相互作用と最大転倒モーメント分布特性

図.6は(24 )式で与えられる装置あるいは支持架構の最大転倒モーメントの系全体に対する比を

みたもので、横軸には装置と支持架構の固有周期の比をとり、相互作用パネ剛性比(kr)をパラメ

ータにとって描いたものである。これらの図はいずれも装置と支持架構の質量あるいは回転慣性に

係わるパラメータの Yと fの組合せに対して求められる。

装置の最大転倒モーメン卜比と支持架構の最大転倒モーメント比とは一般に、

|TEI peak ITslpeak '-と1.0I T A L L I peak' I T A L L I peak ==

一一ーーー(27)

の関係があるので両者は相補的でない。当然のことながらしが小さくなると、各々のピーク値の

和は1.0を超過する傾向が強くなる。

これらの図より、両者の最大転倒モーメント比の傾向に関していくつかの興味ある点が読取れる。

(a) kr=lOの曲線は、相互作用バネが十分大きくて、いわゆる剛床仮定が成立すると考えられる場

合の分担比に近い。 kI~ O. 3になると、動的相互作用の影響が大となり、最大転倒モーメント比は

この剛床仮定値から明らかにはなれ、もはや剛床仮定は成立しないとみるべきである (E."。

(b)最大転倒モーメント比が剛床仮定値から離れる度合いは、 ωE/ω5>1.0の領域では、装置の支

持架構に対する有効質量比にあたる γfが小さいほど大きくなる。逆に ωdωsく1.0の領域では

rfが大きいほど大きくなる。

(c)剛床仮定値からの事離の方向は、各々の系が独立であるとした場合の分担比、つまり質量比の

方向である。しかし kIがよほど小さくならないと独立時の分担比とはならない。

(d) k工く 0.3で、かっ両者の固有振動数が互に近い場合、すなわち ωdωsキ1.0の近傍では両者

の動的相互作用が顕著に現れ、最大転倒モーメント比の傾向が急変し、予想外の過大な転倒モーメ

ントを受ける可能性がある。ごれは不十分な連結によって生じる地震被害例(pounding),丹、の 1原

因を説明するものと考えられる。

図 .6に示す一連の図表を耐震設計に用いる場合、全体系に加わる全地震力は、例えば全体系の

固有周期などから設計震度(引の形で与えられるものとする。装置と支持架構の最大転倒モーメン

トを各々 (Tdmaxおよび (T5)maxとすると、これらは次式で与えられる。

ω 恥 trimHiαi1 , 山恥ι(早川ii 一(28)

ここに抗、 Hiは各質点の重量および地盤面からの高さ、 αiは設計震度である。

最大ベースシヤは、一般には本図表からは直接読取れないが、上で求めた最大転倒モーメントから、

水平力の加力点の高さを仮定して、この高さで除すことによって推定することができる。

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207

1.0

0.8

ーミι0.6 〈

ト¥ 的 0.4

←4

0.2

ーーー一 kl・0.04--ー kl-0.06 kl =0. 10

一一一:kl =0.30 kl = 1. 00 kl = 10.0

固1.0

0.8

トA言。.6

←吋¥ 同 0.4

ωE/ωs

回一 kl-0.04 --: kl・0.06・一一 kl眠 o.10 -一 kl・O.30

kl -1. 00 -一一 kl・10.0

1.0

0.8

-.l 司0.6

ト¥ ∞ 0.4

← 0.2

10.0

ωE/ωs

-rDFD-

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Page 10: 架構支持型装置の地震応答と耐震設計 - CORE · 201 10: 装置の重心まわりの回転慣性 Ho: 装置の質量(有効質量) K:=:. :支持架構の水平剛性

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210

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図 .6最大転倒モーメント分担比(その4) (E:装置、 S:支持架構、 ALL:全体系)

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211

6 .動的相互作用と制震効果

図 .7は、相互作用パネに制震ダンパー機能を付与した場合に、最大応答が低減する様子をみた

もので、装置と支持架構の固有振動数の比 (ωdω5)の関数となる等価並立 2質点系全体のベー

スシャー〈以下全ベースシャーと呼ぶ。)が、相互作用バネの減衰定数により全体的にどの程度低

下するかを調べた。縦軸の全ベースシャーは、基盤への地震入力が 1galの場合の、規準質量(10t

on)の系が受けるベースシャー(単位tonf)を示しており、図中の 5本の曲線は相互作用バネの剛

性比(k工)に対応するものである。これらの図はいずれも装置と支持架構の質量あるいは回転慣牲

に係わるパラメータの Yと fの組合せに対して求められる。

相互作用バネの減表定数(hr)が大きくなるにつれて、全ベースシャーは ωdω5キ1.0の部分

を除く ωdωsの全領域でイ1&下するが、低下の度合いは、しにより大幅に異なることがわかる。つ

まり krが十分大と目される、つまり剛床仮定が成立つと考えられる kr=10.0の場合は、 hrが大き

くなっても全ベースシャーはほとんど低下せず、 h工は k工が十分に小さい場合に効果があることが

わかる。

図 .8は、 krによって hIの効果がどのように変るかを見たものである。つまり七=10.0のとき

の全ベースシャーを常に1.0としてしく 10.0の場合の全ベースシャーを表わした。このようにする

と hによる全ベースシャーの低下の効果が、 krに応じて ωε/ω5の変域上で、明かとなる。図 .8

の各図はいずれも装置と支持架構の質量あるいは回転慣性に係わるパラメータの Yと fの組合せ

に対して求められる。 これらの図から以下の傾向が読みとれる。

(a)ω dω5=1. 0近辺を除き、その他の広い範囲で hrによる全ベースシャーの大きな低減効果がみ

られる。効果の少ない ωdω5の幅は k工によって異なり、一般に k工が小さいほどこの幅は狭くな

る。

(b) h工が大きくなるにつれて全ベースシャーの低減効果は大きくなるが、傾向としては h工=0.05

に至るまでに効果が急に大きくなり、パラメータの組合せにもよるが、全ベースシャーは半分近く

まで減少する。それ以上 h工をさらに大きくしても効果は少ない。

(c) krの全ベースシャーの低減効果に及ぼす影響についてみると、必ずしも Lが小さいほど効果

が大きいとは限らず、全般について kr=0.30あたりに最適値がある。

(d) f、Yの組合せについてみると両者の積が1.0から遠く離れない限り、目だった変化はないが、

1.0から離れるにつれ低減効果は、 ωdω5=1. 0近辺を中心に少なくなる。

図 .9は全ベースシャーの低減効果が最大となる k工について調べたものである。図の縦軸には

先の図と同様に kr=10.0のときで規準化した全ベースシャーをとり、横軸に kIをとってこの全ベ

ースシャー比の変化を詳しく調べた。図をみると、特殊なパラメータの組合せを除き、 kr=O.1"'-O.

3の範囲で最小値をとることが判る。また上述のように、 hrが大きくなるほど低減効果は大きくな

るが、 h1 = 0 . 05 -... 0 . 10でほぼ飽和する様子がわかる。

図 .7-9に示す図表からは、装置と支持架構との聞に適当な制震ダンパーを設けることにより、

構造全体に作用する地震入力を低減させようとする場合に、相互作用バネ剛性を最適に選ぶうえで

必要なデータを読み取ることができる。

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図 .7 全ベースシャーの誠意傾向

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一一一 h.・0.05-:b.・0.07一一 h.・0.10-一・・ hl・0.15

1.0

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1.6

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図 .9 全ベースシャーの低減率と相互作用ばね剛性

10. 0 1.0

kr O. 1

0.0 0.04

Page 20: 架構支持型装置の地震応答と耐震設計 - CORE · 201 10: 装置の重心まわりの回転慣性 Ho: 装置の質量(有効質量) K:=:. :支持架構の水平剛性

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7.結論

炉体、容器などの回転慣性の大きい産業装置とその支持架構からなる架構支持型装置の耐震設計

は、従来から極くおおまかな仮定のもとで設計の基礎となる分担水平力がきめられきたが、本研究

の結果、両者の動的相互作用を考慮して統計的に期待される最大転倒モーメントの分担割合が、両

者の動力学特性および両者を結ぶ相互作用パネの剛性の関数として与えられ、合理的に分担水平力

を求めることが出来るようになった。また、より積極的にこの動的相互作用を利用して、装置と支

持架構の聞に制震ダンパーを挿入し振動エネルギーを低減させる制震構造の試みに対して、相互作

用パネの最適な剛性、必要なダンパーの容量、あるいは両者の固有周期比を与える図表を与えるこ

とが出来た。今後これらの成果をもとに、この種並立形の構造系に一般的に使用できるアクティブ

制震構造の研究に取組む予定をしている o

なお本研究は文部省平成3年度科学研究費補助金、研究題目「構成要素の振動特性の差を利用し

た構造物の制震構法の研究」によった。

文献

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mic Design, Proc. of the 5th Chilean Conf. on Seismolo-gy and Earthquake Engi neering,2,

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(2)田治見宏:耐震理論に関する基礎的研究、東京大学生産技術研究所報告8-4、(1959)、l

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(6)田川健吾、島川孝志:剛床仮定に必要な最小床剛性そのl、一層床の場合、日本建築学会講演

梗概集(1990)、631

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(9)Hudson,D.E.,Equivalent Viscous Friction for Hysteretic Systems with Earthquake like

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