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「職場の栄養改善」における ブロックチェーン技術を応用した栄養啓発活動 報告書 令和 2 3 16 特定非営利活動法人 国際生命科学研究機構

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「職場の栄養改善」における

ブロックチェーン技術を応用した栄養啓発活動

報告書

令和 2年 3月 16日

特定非営利活動法人 国際生命科学研究機構

要旨

目的:国際生命科学研究機構(ILSI Japan)ではカンボジアにおける栄養課題の解決に寄

与することを目指して日系電子部品工場において若い女性従業員を対象に「職場の栄養プ

ロジェクト」を実施してきた。昨年度実施した Phase 1 では栄養強化米の導入と、栄養に

関する啓発活動をを行ったが、栄養強化米によって血中の葉酸濃度は上昇し栄養強化の効

果は示唆されたものの、従業員の積極的な参加が得られにくく、栄養教育の効果はあまり見

られなかった。

今年度の Phase 2 では ILSI Japan と富士通総研との共同プロジェクトとして、栄養改善に

おける行動変容を目指した栄養啓発活動において、ICT による「トークンエコノミー」の応

用の有効性を検討することとした。

方法: 本共同プロジェクトでは、富士通総研はアプリケーションの開発、実施、結果解析を

担当、ILSI Japanは質問紙による解析を担当した。現地での試験実施は Phase 1同様 現

地の NPO RACHA (Reproductive and Child Health Alliance)に ILSI Japanが委託した。

定期的に 3者での会議を実施して情報交換を密におこなった。

カンボジアの日系電子部品工場に勤務する約 150 人の介入群と約 150 人のコントロール群

で実験を行った。介入群は、アプリケーションを使用して TAKE10!® に準じた食品分類に

沿って食事の記録を行う。1日に6項目(食材)以上を摂取した場合に、栄養に関するクイ

ズへの挑戦権を得ることができる。クイズに回答することで、デジタルコイン(社内コイン)

を獲得し、社内で用意されたインセンティブと交換することが可能となる。一方、コントロ

ール群は本アプリケーションを使用しない。介入期間は、2019 年 12 月末から 2020 年 2 月

末までの 2 か月間とした。介入群とコントロール群の両方に対して実施期間前後でアンケ

ートを実施し、効果を測定した。栄養クイズ 20 問および食・健康・労働に関する質問紙を

介入の前後に配布し、回収した。食・健康・労働に関する質問紙は、2018 年度に使用した

5 種類の質問紙から改変し簡略化した質問紙を用いた。

結果及び考察:スマホアプリを活用した栄養教育が女子工場従業員に対して可能であるの

かを検討するために、まず大学卒業以上程度の管理部門従業員を対象としたため、男女が混

合してしまい、関心を持ってもらうための健康課題の位置づけが幅広くなりすぎたと考え

られる。しかしながら、アプリケーションクイズは単に問題だけを提示するのではなく、栄

養に関する知識を提供しその上で内容理解の確認のためのクイズを設けたため、事前の集

合教育等が不要で、アプリケーションを通じて手軽に栄養に関する知識が得られることが

評価された。TAKE10!のアプリケーションにイラストを用い、クメール語で展開することに

より、ユーザーの理解を助けることができた。

これらの結果、短期間の介入ながらも食行動ステージが次のステージに進行した参加者が

現れた可能性が考えられる。今後は、特定の対象者に特化した栄養教育内容などバリエーシ

ョン展開を検討するとともに、スケールアップおよび期間を延長して実証していくことが

普及を促進させることにつながると考える。

目次

1 背景と目的 ........................................................................................................................ 1

2 実証実験の計画 ................................................................................................................. 1

2.1.1 概要 ................................................................................................................... 1

2.1.1 実証実験の方法 ................................................................................................ 2

2.1.2 本プロジェクトのターゲットについて ............................................................ 2

3 事前教育の実施 ................................................................................................................. 3

4 質問紙による調査の結果 .................................................................................................. 5

4.1 質問紙 ....................................................................................................................... 5

4.2 栄養クイズの結果 ..................................................................................................... 5

4.3 インタビュー(富士通総研報告書参照)結果 クイズについて ............................ 6

4.4 食・健康・労働に関する質問紙の結果 .................................................................... 7

4.5 プレゼンティーズム ............................................................................................... 10

5 今後の課題及び展望 ......................................................................................................... 11

5.1 今後の展望 .............................................................................................................. 12

別添資料 ................................................................................................................................. 1

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1 背景と目的

国際生命科学研究機構(ILSI Japan)ではカンボジアにおける栄養課題の解決に寄与する

ことを目指して日系電子部品工場において若い女性従業員を対象に「職場の栄養プロジェ

クト」を実施してきた。昨年度実施した Phase 1 では栄養強化米の導入と、栄養に関する

啓発活動をを行ったが、栄養強化米によって血中の葉酸濃度は上昇し栄養強化の効果は示

唆されたものの、従業員の積極的な参加が得られにくく、栄養教育の効果はあまり見られな

かった。

今年度の Phase 2 では ILSI Japan と富士通総研との共同プロジェクトとして、栄養改善に

おける行動変容を目指した栄養啓発活動において、ICT による「トークンエコノミー」の応

用の有効性を検討することとした。

2 実証実験の計画

2.1.1 概要

富士通総研株式会社が開発した TAKE10!®1アプリケーションによって、利用者が食事で

摂取した TAKE10!®の食品カテゴリを記録し、スタンプが貯まり、そのスタンプを 6 枚収

集することで、コインにアクティベイトする権利が得られ、栄養クイズに回答することによ

りコインがインセンティブに交換できる。

このアプリケーションにより、従業員の食事内容を把握し、より多様な食材をとるよう誘

導するとともに、基本的な栄養・衛生に関する知識も提供している。

そのため、従業員のスマートフォンによる食事記録の仕組みを提供するとともに、データ

の記録や栄養クイズに回答することで、デジタルコイン(日系電子部品企業社内コイン)を

付与し、フルーツや商品券に変えられるというインセンティブプログラムを導入している。

これにより、栄養改善の実現において大きな課題である栄養リテラシーの向上、食生活に関

する行動変容の実現を目指す。

1 TAKE10!®アプリケーションは、TAKE10!®プログラムの TAKE10!食生活チェックシー

トを基に作成した。

本チェックシートは、東京都健康長寿医療センター研究所と特定非営利活動法人国際生命

科学研究機構(ILSI お Japan)の共同研究の成果物である。(http://take10.jp)

2

図 1 アプリケーションのユーザーインターフェイス(UI)(言語はクメール語)

(左:食事記録画面、中:栄養教育クイズ画面 右:コインの支払い画面)

2.1.1 実証実験の方法

カンボジアの日系電子部品工場に勤務する約 150 人の介入群と約 150 人のコントロール

群で実験を行った2。介入群は、アプリケーションを使用して TAKE10!® に準じた食品分

類に沿って食事の記録を行う。1日に6項目(食材)以上を摂取した場合に、栄養に関する

クイズへの挑戦権を得ることができる。クイズに回答することで、デジタルコイン(社内コ

イン)を獲得し、社内で用意されたインセンティブと交換することが可能となる。一方、コ

ントロール群は本アプリケーションを使用しない。介入群とコントロール群の両方に対し

て実施期間前後でアンケートを実施し、効果を測定した。

2.1.2 本プロジェクトのターゲットについて

なお、本プロジェクトは、計画当初は、母子保健における栄養の重要性を考慮し、20 歳

前後の女性をターゲットにしていた。しかしながら、アプリケーションを用いた初の試みと

いうこともあり、英語の理解度が高くコントロールがしやすいという観点から、男女・年齢

に幅があるスタッフレベルが協力企業の希望により選定された。

今後は利用者拡大により本来のターゲットを対象とすることを目指し、今回は本来のタ

ーゲットではないという制約があるものの、トークンエコノミーの有効性を確認すること

を主眼に実験を実施することとした。

2 ただし、アンケートの回収数はこの数とは一致していない。

3

3 事前教育の実施

事前教育は、介入群とコントロール群を複数のグループに分けて行った。はじめにプロジ

ェクトの概要及び栄養改善の取組みについて説明を行い、さらに、介入群にはアプリケーシ

ョンの使用方法の説明も行った。説明に際しては、スライド資料を用いたプレゼンテーショ

ン、紙媒体の操作方法マニュアル、及び、アプリケーション使用方法についての動画を用い

た。

参加者にはその場でアプリケーションにログインをしてもらい、食事の記録を体験させ

ることで、使用方法の定着を図った。

また、食堂でインセンティブの交換を実験する場を設け、栄養クイズに答えることで集め

たスタンプをコインに替え、インセンティブに交換するまでの一連のプロセスを試行した。

図 2 実証実験を行った際の食堂の風景

図 3 事前教育を行った際のプレゼンテーションと参加者の様子

4

図 4 事前教育を行った際のインセンティブ交換の様子

5

4 質問紙による調査の結果

4.1 質問紙

栄養クイズ 20 問および食・健康・労働に関する質問紙を介入の前後に配布し、回収した。

食・健康・労働に関する質問紙は、2018 年度に使用した 5 種類の質問紙から改変し簡略化

した質問紙を用いた。

4.2 栄養クイズの結果

栄養クイズの回答の回収率は、Baseline において、160 部(介入群:137、コントロール群:

23)であり、53.3%であったが、コントロール群の回収率が極めて低かった。Baseline お

よび End line の両方の回答が得られたのは、介入群 70 部(51.1%)、コントロール群 6 部

(26.1%)とさらに低いものであった。

Baseline において、食の多様性、欠食の影響、ヨウ素添加塩、食品衛生に関するクイズの

正答率は、両群ともに高く、一定の理解を得ていると考えられる。

若い女子従業員に理解を深めてもらいたいビタミンやミネラルの重要性については、認識

が十分ではないことが示された。

表1 介入前の群別栄養クイズの正答率及び正答スコア(20 点満点)

表 2 には、介入後の結果を示した。約 1~2 か月の介入ではあったが、介入群において、ス

栄養クイズスコア 介入群 8.8 1.9 10.0 1.1

Type of Q Answer a b c d all 正答率 a b c d all 正答率

食の多様性 C a 67 0 1 2 70 95.7 6 0 0 0 6 100.0

欠食の影響 C b 1 49 18 2 70 70.0 0 5 1 0 6 83.3

エネルギー供給源 W c 13 3 13 41 70 18.6 1 0 3 2 6 50.0

筋肉・体を作る W b 7 32 20 11 70 45.7 0 3 0 3 6 50.0

体の調子を整える W d 6 1 46 17 70 24.3 0 0 3 3 6 50.0

VA C b 35 14 9 12 70 20.0 2 3 1 0 6 50.0

ヨウ素 C c 5 2 63 0 70 90.0 1 0 5 0 6 83.3

鉄 C c 8 7 35 20 70 50.0 1 1 3 1 6 50.0

亜鉛 C a 26 4 2 38 70 37.1 2 0 1 3 6 33.3

葉酸 W b 14 26 9 21 70 37.1 0 4 1 1 6 66.7

たんぱく質 C b 9 20 3 38 70 28.6 0 3 0 3 6 50.0

脂質 W b 19 30 8 13 70 42.9 2 2 0 2 6 33.3

炭水化物+VB1 C d 11 23 23 13 70 18.6 0 2 2 2 6 33.3

VB群 C b 42 18 8 2 70 25.7 2 1 2 1 6 16.7

VC C c 49 5 7 9 70 10.0 2 0 1 3 6 16.7

VD C b 3 49 11 7 70 10.0 1 3 1 1 6 16.7

カルシウム W a 8 24 3 35 70 11.4 0 1 0 5 6 0.0

食塩 W d 12 3 8 47 70 67.1 2 1 0 3 6 50.0

食品衛生 C d 1 2 1 66 70 94.3 0 0 0 6 6 100.0

5S-Sort C c 33 6 18 13 70 25.7 3 0 2 1 6 33.3

コントロール群

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コアが平均 8.8 から平均 9.9 へと上昇した。VA、ヨウ素、鉄、葉酸、たんぱく質、食塩、5

S などの正答率が上昇した。

表2 介入後の群別栄養クイズの正答率及び正答スコア(20 点満点)

4.3 インタビュー(富士通総研報告書参照)結果 クイズについて

今回の対象者は、20 代から 30 代の男女混合であり、関心の高い分野についてもばらつきが

あることが推察される。しかしながら、栄養クイズの内容は、基礎的な入門編の問題であり、

同じ問題を無作為に繰り返し提示するプログラムになっていたために、短期間ながら効果

が認められたと考える。

表 5 クイズは難しかったか

1.Quizzed difficult? Pattern

A B C D E 総計

Difficult 0 - 0 3 1 4

Easy 5 - 5 2 2 14

Very easy 0 - 0 0 0 0

総計 5 - 5 5 3 18

平均 標準偏差 平均 標準偏差

クイズスコア 介入群 9.9 2.4 8.7 1.0

Type of QAnswer a b c d all 正答率 a b c d all 正答率

食の多様性 C a 66 0 2 2 70 94.3 6 0 0 0 6 100.0

欠食の影響 C b 2 56 10 2 70 80.0 0 6 0 0 6 100.0

エネルギー供給源 W c 11 5 10 44 70 14.3 0 1 1 4 6 16.7

筋肉・体を作る W b 5 34 22 9 70 48.6 0 3 2 1 6 50.0

体の調子を整える W d 7 4 41 18 70 25.7 0 0 3 3 6 50.0

VA C b 31 26 6 7 70 37.1 3 0 1 2 6 0.0

ヨウ素 C c 5 0 65 0 70 92.9 1 0 5 0 6 83.3

鉄 C c 5 3 48 14 70 68.6 1 1 4 0 6 66.7

亜鉛 C a 22 1 2 45 70 31.4 3 0 0 3 6 50.0

葉酸 W b 9 31 14 16 70 44.3 2 0 2 2 6 0.0

たんぱく質 C b 9 30 1 30 70 42.9 0 1 0 5 6 16.7

脂質 W b 19 34 10 7 70 48.6 1 3 1 1 6 50.0

炭水化物+VB1 C d 8 38 15 9 70 12.9 0 3 3 0 6 0.0

VB群 C b 40 14 14 2 70 20.0 3 1 2 0 6 16.7

VC C c 46 6 7 11 70 10.0 4 1 0 1 6 0.0

VD C b 3 60 1 6 70 8.6 0 6 0 0 6 0.0

カルシウム W a 11 14 5 40 70 15.7 0 2 0 4 6 0.0

食塩 W d 7 3 7 53 70 75.7 2 0 2 2 6 33.3

食品衛生 C d 0 0 1 69 70 98.6 0 0 0 6 6 100.0

5S-Sort C c 26 3 32 9 70 37.1 3 0 2 1 6 33.3

コントロール

7

表 4 クイズは生活に役立つか

2.Quizzes useful in life (Free comment)

Yes

1. Get knowledge and know about vitamin,

2. Balance food

Yes, it is very useful and benefit to staff and can be shared and spreaded to families or

friends

It is useful for her life and taking proper food

Useful:

Help eat the right types of food

Help us healthy and good eating habits

Yes, help monitor what have been eaten

Benefit as it can track on our health through food consumption and nutritious

ingredients after eating.

Easy and benefit

Food dietary which improve health

Harmful food

Yes, it is very useful.

It makes me to adapt and eat the right food regimen related to health.

Yes, it is very useful for my life. Those indicates the right food to feed our body need. It

tells the knowledge of nutrition levels. Avoid eating food that can geopardize our body.

It is so helpful for her life as well as the family

Yes, it's useful (5 people)

表 4 の結果から、栄養クイズをアプリケーションの中に入れ込むことの有用性について、

理解を得ることができたことが推察される。

4.4 食・健康・労働に関する質問紙の結果

回収率は、Baseline において、133 部(介入群:86、コントロール群:47)であり、44.3%

であったが、コントロール群の回収率が低かった。Baseline および End line の両方の回答

が得られたのは、介入群 53 部(61.6%)、コントロール群 6 部(12.8%)とさらに低いもの

であった。

8

図5 介入群 53 名の食欲について

図6 コントロール群 6 名の食欲について

食欲のあまりない人の割合が、34%~71%と高い傾向があり、欠食などの可能性が推察され

る。

9

図7 食品摂取頻度スコア(30 点満点)

図8 TAKE10!食品群の多様性得点(10 点満点)

食品摂取頻度スコア並びに食の多様性得点の結果から、食の多様性が低い割合が高いこと

が示された。今回の短期介入では、行動変容に至ることは困難であった。

10

図9 Baseline における食行動に関する行動ステージ

図10 End line における食行動に関する行動ステージ

コントロール群の人数が少なく、比較が困難であるが、介入群において、アプリを使用した

栄養教育の介入により、関心期から準備期へ、準備期から実行期へ移行した参加者がいたこ

とが推察される。

4.5 プレゼンティーズム

プレゼンティーズムとは、欠勤することなく出勤はしているものの、身体的・精神的な不調

0%

33%

50%

17%

0%

End lineにおけるコントロー

ル群の食行動ステージ

1: 無関心期

2: 関心期

3: 準備期

4: 実行期

5: 維持期

11

により、職務遂行能力(パフォーマンス)が落ち込んでいる状態を表す、新しい国際的な概

念である。絶対的プレゼンティーズムと相対的プレゼンティーズムがある。絶対的プレゼン

ティーズムとは、過去 28 日間の回答者自身の仕事上のパフォーマンスを反映しており、相

対的プレゼンティーズムとは、一般的な同僚と比較して回答者自身の仕事上のパフォーマ

ンスがどの程度かを表している。

今回の介入期間が、約1~2か月間と短期であったため、プレゼンティーズムのスコアに及

ぼす影響は認められなかった。

表5 介入前後の群別プレゼンティーズムスコア

5 今後の課題及び展望

5.1 今後の課題

スマホアプリを活用した栄養教育が女子工場従業員に対して可能であるのかを検討するた

めに、まず大学卒業以上程度の管理部門従業員を対象としたため、男女が混合してしまい、

関心を持ってもらうための健康課題の位置づけが幅広くなりすぎたと考えられる。

しかしながら、アプリケーションクイズは単に問題だけを提示するのではなく、栄養に関す

る知識を提供しその上で内容理解の確認のためのクイズを設けたため、事前の集合教育等

が不要で、アプリケーションを通じて手軽に栄養に関する知識が得られることが評価され

たと考えられる。

また、TAKE10®のカテゴリはイラストを用いて分かりやすくしていたことも評価された。

自身がどのカテゴリを摂取したかも色のトーンで明示するよう設計しており、使い勝手の

面(いわゆるユーザーインターフェイス)は重要な観点であると言える。

さらに、クメール語対応した点も評価されており、今後他地域へプロジェクトを展開させる

場合には、現地の言語を用いることで親和性をもたらすと考えられる。

これらの結果、短期間の介入ながらも食行動ステージが次のステージに進行した参加者が

現れた可能性が考えられる。

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また、インタビューの結果、アプリケーションの要望として下記の点が挙げられているため、

今後の機能拡充の観点として、優先的に採用することで利用率の向上につながると考えら

れる。

➢ 食事内容から栄養バランスや、ビタミンなど情報の拡充する

➢ クイズのバラエティを増やす

クイズの難易度に関するインタビューでは、約 8 割が簡単だったと回答している

ことから、難易度を変えたクイズを多数用意して幅広い知識の獲得を促進する

➢ 個人にカスタマイズされた情報を提供する

利用者の食事内容の傾向や、改善すべきことなど利用者に合わせたメッセージが

表示させる

5.2 今後の展望

今回の短い期間では健康面の変化や労働生産性向上に対する効果まで明確に測定はでき

なかったが、期間を長く設定して実施することが望ましい。自身の健康のために栄養に関す

る知識を身に着けたいと思っている人もおり、そうした人に積極的に働きかけ、その人を中

心に波及効果的に周りの従業員へも栄養への意識が高まれば、企業全体として業務面での

効果が期待される。

本アプリケーション利用により、ゲーム感覚で楽しみながら、健康な食生活についての知

識が向上することが評価されていることから、自身の栄養の摂取状況に関心をもつ習慣の

きっかけとして期待できる仕組みである。

通信事情や機能性などアプリケーションの設計上の課題が見えてきたことから、今回の

経験を足掛かりにし、本来のターゲットである若い女性が中心のオペレーターでの実施を

目指し、よりスケールを大きくして、栄養改善に対する効果を科学的に立証するとともに、

労働生産性改善にも効果があることを示し、他工場にも展開することを目指す。

別添資料

1. 栄養クイズ 20 問

2. 食・健康・労働に関する質問紙