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地方公共団体の風水害図上型防災訓練の 実施要領のあり方に関する 調査研究報告書 (平成21年度) 平成22年1月 総務省消防庁国民保護・防災部応急対策室

地方公共団体の風水害図上型防災訓練の 実施要領のあり方に関す … · は じ め に 平成20年度の図上型防災訓練マニュアル研究会では、風水害に係る防災力の向上を図

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地方公共団体の風水害図上型防災訓練の

実施要領のあり方に関する

調査研究報告書

(平成21年度)

平成22年1月

総務省消防庁国民保護・防災部応急対策室

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は じ め に

平成20年度の図上型防災訓練マニュアル研究会では、風水害に係る防災力の向上を図

るための教育研修のあり方について検討するとともに、全国の地方公共団体における風水

害対策及び図上型防災訓練の実態を調査、把握し、ステップアップ方式の訓練プログラム

の開発を試みる方針を定めました。また、風水害に関する用語、基本知識の習得を目的と

し、基礎講座を中心とした訓練プログラムを企画実施し、その有効性を検証しました。

本年度は、昨年度と同じ対象地域(3つの市区町)において、討論型図上訓練のあり方

の検討及びケーススタディによる検証を行いました。ケーススタディの実施に当たっては、

風水害時の内水氾濫・外水氾濫、都市型災害の特徴を反映し、地方公共団体の風水害防災

計画や災害対応マニュアルの作成に反映できるように、また組織全体の能力向上のための

図上シミュレーション訓練の企画実施にも繋がるように配慮しました。

今後、これらの成果を踏まえ、さらに改善を施すことで、より簡易で応用範囲が広い風

水害版の図上型防災訓練マニュアルの作成を目指す必要があります。

本報告は、風水害及び図上型防災訓練に関する豊富な知識と経験を有する学識経験者、

国の職員及び地方公共団体の職員により構成される「図上型防災訓練マニュアル研究会」

を設置し、数回の研究会を経てとりまとめたものです。本報告が図上型防災訓練の導入を

検討している地方公共団体の関係者の方々に広く活用されることを希望するものです。

平成22年1月

図上型防災訓練マニュアル研究会

座 長 吉 井 博 明(東京経済大学教授)

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地方公共団体の風水害図上型防災訓練の

実施要領のあり方に関する

調査研究報告書

目 次

第1章 調査研究の目的等

第1節 調査研究の目的 ········································· 1

第2節 調査研究項目 ··········································· 2

第3節 調査研究体制 ··········································· 3

第4節 調査研究スケジュール ··································· 5

第2章 風水害対策強化のための討論型図上訓練のあり方

第1節 風水害対策強化のための図上型防災訓練の必要性 ··········· 6

第2節 討論型図上訓練の手法 ································· 10

第3節 風水害対策強化のための討論型図上訓練のポイント ······· 14

第4節 ケーススタディの設計 ································· 21

第3章 市区町における討論型図上訓練の企画・実施

-伊佐市、神戸町及び中野区におけるケーススタディ-

第1節 鹿児島県伊佐市におけるケーススタディ

-住民と市職員を対象とした避難判断及び避難所運営に関する訓練-

1 伊佐市の風水害特性及び対策上の課題 ··················· 24

2 訓練目的の設定 ······································· 25

3 学習ポイント及び訓練方法の選定 ······················· 26

第Ⅰ部:避難判断に関する防災グループワーク

(1)防災グループワークの進め方の概要 ····················· 28

(2)防災グループワークの企画

ア シナリオ作成 ········································ 28

イ タイムスケジュール ·································· 32

ウ 参加者(訓練対象者)の編成 ·························· 32

(3)防災グループワーク実施の準備

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ア 配付資料 ············································ 35

イ 資器材、小道具 ······································ 35

ウ 会場設営 ············································ 36

(4)防災グループワークの実施

ア オリエンテーション<訓練説明> ······················ 36

イ 防災グループワークの開始・展開・まとめ・講評 ········ 37

(5)訓練効果の検証及び今後の課題について

ア 訓練目的(具体的学習ポイント)を踏まえた討論結果の分析 · 42

イ 参加者の感想 ········································ 44

ウ 防災担当者自ら企画実施する可能性及び課題について ···· 47

第Ⅱ部:「避難所運営」ゲームHUG(ハグ)

(1)HUG(ハグ)の進め方の概要 ························· 48

(2)HUG(ハグ)の企画

ア シナリオ作成 ········································ 49

イ タイムスケジュール ·································· 56

ウ 参加者(訓練対象者)の編成 ·························· 56

(3)HUG(ハグ)実施の準備

ア 配付資料 ············································ 58

イ 資器材、小道具 ······································ 58

ウ 会場設営 ············································ 59

(4)HUG(ハグ)の実施

ア オリエンテーション<訓練説明> ······················ 59

イ アイスブレイキング(簡単な自己紹介) ················ 60

ウ HUG(ハグ)の開始・展開・終了 ···················· 60

エ 参加者の感想及び訓練進行者による講評 ················ 62

(5)訓練効果の検証及び今後の課題について

ア 訓練のねらいを踏まえた討論結果の分析 ················ 63

イ 参加者の感想 ········································ 64

ウ 防災担当者自ら企画実施する可能性及び課題について ···· 66

第2節 岐阜県神戸町におけるケーススタディ

-町職員を対象とした「避難勧告等の判断・伝達マニュアル」の作成を目指した

防災ワークショップ-

1 防災ワークショップの実施背景

(1)神戸町における風水害の特性 ························ 67

(2)風水害対策上の課題 ································ 68

(3)訓練目的及び訓練方法の設定 ························ 68

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2 防災ワークショップの進め方の概要 ····················· 70

3 防災ワークショップの企画

(1)降雨状況などの前提条件の設定 ······················ 71

(2)進行プログラム(タイムスケジュール) ·············· 71

(3)訓練参加者(訓練対象者と関係機関職員)の編成 ······ 72

4 防災ワークショップの準備

(1)配付資料 ·········································· 74

(2)資器材、小道具 ···································· 74

(3)会場設営 ·········································· 75

5 防災ワークショップの実施

(1)オリエンテーション<訓練目的、実施方針等の説明> ·· 76

(2)防災ワークショップの開始・展開・まとめ ············ 76

6 訓練効果の検証及び今後の課題について

(1)参加者の感想 ······································ 86

(2)防災担当者自ら企画実施する可能性及び課題等について

·· 91

第3節 東京都中野区におけるケーススタディ

-防災関係機関を対象とした「図上シミュレーション訓練」の企画準備のための検討会-

1 検討会の実施背景

(1)中野区における風水害の特徴 ························ 93

(2)風水害対策上の課題及び対応型図上訓練の実施予定 ···· 94

2 検討会の企画

(1)検討会の開催要綱、次第 ···························· 94

(2)参加者の呼びかけ ·································· 96

3 検討会の準備

(1)配付資料 ·········································· 96

(2)資器材、小道具 ···································· 97

(3)会場設営 ·········································· 98

4 検討会の実施

(1)図上シミュレーション訓練についての説明 ············ 99

(2)中野区の降雨についての説明 ························ 99

(3)(各機関における)風水害対応についての説明 ······· 100

(4)図上シミュレーション訓練の実施に向けたポイントの検討

·· 103

5 検討会効果の検証及び今後の課題について

(1)検討結果の分析 ·································· 106

(2)参加者の感想 ···································· 106

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(3)防災担当者の感想 ································ 108

第4章 まとめと今後に向けて

第1節 まとめ

1 討論型図上訓練の効果 ································· 110

2 討論型図上訓練の企画実施及び評価・検証段階における留意点

··· 113

第2節 今後に向けて

1 討論型図上訓練の実効性を高めるために

(1)討論結果の防災対策への反映 ························· 116

(2)段階的、継続的に実施する ··························· 116

2 今後の調査研究の展開 ································· 116

参考文献・ホームページ ······································· 117

【参考資料】

1 ケーススタディにおける配付資料

1-1 伊佐市における防災グループワーク及び避難所運営ゲームHUG(ハグ)

1-1-1 伊佐市図上型防災訓練のプログラム ····························· 122

1-1-2 豪雨災害時の対応(グループワークの説明資料) ··········· 123

1-1-3 防災グループワークの記入用紙 ··································· 133

1-1-4 避難所運営ゲームHUG(水害版)の説明資料 ·············· 139

1-2 神戸町における防災ワークショップ

1-2-1 神戸町図上型防災訓練のプログラム ····························· 151

1-2-2 神戸町風水害図上型防災訓練の実施方針について ··········· 152

1-2-3 雨の素となる湿った空気が南から運ばれるメカニズム ····· 155

1-2-4 防災気象情報と避難勧告等の判断基準について ·············· 156

1-3 中野区における訓練企画準備のための検討会

1-3-1 都市部(中野区)の降雨について ································ 161

1-3-2 H22年度図上シミュレーション訓練に向けたポイントの検討 ··· 164

2 ケーススタディ後のアンケート調査票

2-1 伊佐市訓練におけるアンケート調査票 ······································ 173

2-2 神戸町訓練におけるアンケート調査票 ······································ 175

2-3 中野区訓練企画準備のための検討会におけるアンケート調査票 ····· 178

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3 図上型防災訓練マニュアル研究会 議事要旨

3-1 第1回図上型防災訓練マニュアル研究会議事要旨 ······················· 181

3-2 第2回図上型防災訓練マニュアル研究会議事要旨 ······················· 190

3-3 第3回図上型防災訓練マニュアル研究会議事要旨 ······················· 199

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第1章 調査研究の目的等

第1節 調査研究の目的

平成20年度の調査研究では、ステップアップ方式の訓練方法(図1-1-1参照)の開

発を提案するとともに、個人レベルの能力向上を図るため、風水害に関する用語、基本知

識の習得を目指す研修プログラムを企画、実施しました。

平成21年度は、前年度の調査研究結果を踏まえ、前年度と同じ対象市区町において、

部署(機能)別の能力向上を図るため、討論型図上訓練をケーススタディとして実施し、

市区町村自ら訓練を企画・実施できる手法の確立を目的に調査研究を行いました。

図1-1-1 効果的な図上型防災訓練への取り組み方の提案*注)

<*注:総務省消防庁、地方公共団体の風水害図上型防災訓練の実施要領のあり方に関する調査研

究報告書(平成20年度)、平成21年3月>

個人レベルの能力向上

(例:情報の読解力、意思決定能力) 自己学習型研修

(座学、イメージ・トレーニング)

討論型図上訓練

(ゲーム、ワークショップ)

対応型図上訓練

(図上シミュレーション訓練)

風水害防災力の向上に

必要な知識・能力

適用可能な訓練の

手法例

防災力の向上

部署(機能)別の能力向上

(例:災害対応マニュアルの作成)

組織全体の能力向上

(例:災害対策本部の運営)

1

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第2節 調査研究項目

本調査研究における調査研究項目は、以下に示すとおりです。

1 討論型図上訓練のあり方の検討

討論型図上訓練の実施事例及び関連文献を収集し、討論型図上訓練の特徴及び実施方法

の分析、整理を行ったうえ、地方公共団体における討論型図上訓練のあり方について、取

りまとめました。

2 ケーススタディとしての討論型図上訓練の実施

上記1で取りまとめた要点を踏まえ、昨年度と同じ対象地域(3団体)をモデルとして、

実地に討論型図上訓練を企画・実施しました。これを基に、図上型防災訓練の企画、準備、

運営から訓練結果の評価・検証まで一連の過程における実施方法の効果を検証するととも

に、今後の課題と留意点の抽出を行いました。

3 調査研究報告CD-ROMの作成、普及

上記の結果については、調査研究報告(CD-ROM)として取りまとめ、地方公共団体に配

付することとしました。

2

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第3節 調査研究体制

本調査研究を推進するため、以下に示す「図上型防災訓練マニュアル研究会」を設置し

ました。

平成 21 年度図上型防災訓練マニュアル研究会 設置要綱

1.目的

風水害における実戦的な図上型訓練の市町村での実施促進を行うために、研究対

象市町村における図上型訓練のケーススタディを通じて、市町村自らが図上型訓練

の企画、立案から実施までを効果的、効率的に行う方法等について調査・検討・検

証し、報告書等の作成等を行い周知し、市町村長等をはじめとする地方公共団体職

員及び住民等の危機管理能力の向上を図ることを目的とする。

2.調査研究項目

研究会は、次に掲げる事項について調査研究する。

(1)調査研究の方針

(2)ケーススタディにおける図上型防災訓練の企画・準備・実施方法

(3)ケーススタディにおける図上型防災訓練の実施結果の評価・分析方法

(4)市町村自らが訓練を企画・準備・実施する際の留意点、課題等の整理

3.組織

(1)研究会の委員は、学識経験者及び関係行政機関の職員等の中から(財)消防科

学総合センター理事長が委嘱する。

(2)研究会の座長は、(財)消防科学総合センター理事長が委員の中から指名する。

4.運営

研究会における庶務は、(財)消防科学総合センターが行う。

5.雑則

この要綱に定めるもののほか、研究会の運営に関して必要な事項は座長が定め

る。

附則

この要綱は、平成21年5月28日から施行する。

3

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図上型防災訓練マニュアル研究会 名簿

1 委 員

( 座 長 )

吉井 博明* 東京経済大学教授

(学識経験者)

日野 宗門 Blog防災・危機管理トレーニング主宰

髙梨 成子* (株)防災&情報研究所代表

小村 隆史* 富士常葉大学環境防災学部准教授

秦 康範 山梨大学大学院医学工学総合研究部准教授

(関係機関)

大内 桂一 警察庁警備局警備課災害対策室課長補佐

中村 圭吾 国土交通省河川局砂防部砂防計画課課長補佐

貫名 功二* 国土交通省河川局防災課水防企画官

岡田 憲治* 気象庁予報部予報課気象防災推進室調査官

松島 史人 防衛省運用企画局事態対処課国民保護・災害対策室防衛部員

今井 康友 東京電力(株)総務部防災グループマネジャー

岩井 修 日本電信電話(株)技術企画部門災害対策室長(7月10日~)

(北口 隆也 前日本電信電話(株)技術企画部門災害対策室長:~7月9日)

(市区町村)

根本 宏太* 東京都中野区役所経営室防災分野災害対策担当係長

羽賀 昭雄* 岐阜県神戸町役場総務部総務課長

前田 健二* 鹿児島県伊佐市役所防災研修担当

(総務省消防庁)

武居 丈二 国民保護・防災部長(7月14日~)

(幸田 雅治 前国民保護・防災部長:~7月13日)

西浦 敬 国民保護・防災部防災課応急対策室長

細田 大造 国民保護・防災部防災課災害対策官

2 オブザーバー

倉野 康彦* 静岡県西部危機管理局危機管理課専門監

3 事 務 局

中越 康友* 総務省消防庁国民保護・防災部応急対策室地域情報把握専門官

安達謙太郎* 総務省消防庁国民保護・防災部応急対策室総務事務官

笠井 博之 国土交通省河川局防災課基準第一係長(10月9日~)

(橋本 亮 国土交通省河川局防災課水防企画係長(~10月8日)

田村 晃* (財)消防科学総合センター研究開発部調査研究第1課審議役

胡 哲新* (財)消防科学総合センター研究開発部調査研究第1課研究員

(注)* 印は、作業部会委員を兼ねた委員等

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*作業部会

本調査研究を推進するため、研究会のもとに「作業部会」を設置し、研究会と連携して

調査研究を進めました。作業部会は、研究会名簿に*印を付した学識経験者及び市区町委

員並びに事務局で構成しました。作業部会の役割は、以下のとおりです。

□モデル市区町における訓練方針、内容及び実施要領の作成

□現地における図上型防災訓練(ケーススタディ)の実施

□訓練結果の評価検証

第4節 調査研究スケジュール

調査研究のスケジュールは以下のとおりです。

・ 討論型図上訓練の実施事例及び関連文献の収集、分析、整理

・ 地方公共団体における討論型図上訓練のあり方の検討

○ 第1回研究会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 平成21年5月28日(木)

・ H21年度調査研究の基本計画について

・ H21年度図上型防災訓練ケーススタディの実施計画について

・ モデル市(鹿児島県伊佐市)の現地調査

・ 市区町村の特性に応じた訓練計画の検討、実施要領の作成

○ 第2回研究会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 平成21年7月29日(水)

・ 図上型防災訓練実施支援マニュアルの構成及び記述すべき内容について

・ H21年度図上型防災訓練ケーススタディの実施計画(骨子案)について

・ モデル町(岐阜県神戸町)の現地調査及び訓練実施要領の検討

・ ケーススタディの実施及び結果の分析

→ 鹿児島県伊佐市(9月15日実施)

→ 岐阜県神戸町 (9月29日実施)

→ 東京都中野区 (10月28日実施)

・ 報告書(案)の作成

○ 第3回研究会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 平成21年12月10日(木)

・ ケーススタディの実施状況及び結果の報告

・ 平成21年度調査研究報告書(案)の内容検討

・ 調査研究報告書の作成・印刷・製本、発送

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第2章 風水害対策強化のための討論型図上訓練のあり方

第1節 風水害対策強化のための図上型防災訓練の必要性

わが国では、台風、集中豪雨、局地的大雨等によって毎年犠牲者が発生しています。平

成21年も山口県防府市での土砂災害、兵庫県佐用町での洪水災害などで貴重な人命が失

われました。風水害による犠牲者を少しでも減らしていくためには、「危険に対峙して危な

い目に遭うよりも早めの避難」という方針を徹底させる必要があります。その方針の下、

住民の自助・共助の能力を高めるとともに、市区町村をはじめとする防災関係機関の情報

収集・伝達・分析能力や調整能力等を今後ますます高めていく必要があります。

そのためには住民や防災関係機関が効果的な訓練を積み重ねていくことが大切ですが、

特に図上型防災訓練は、災害イメージの醸成や対策の検証・見直し等に繋げやすいことか

ら、今後地方公共団体において積極的に取り組まれることが期待されます。過去の風水害

の教訓を踏まえ、表2-1-1及び表2-1-2に示すような目的やねらいを設定して図

上型防災訓練を積み重ねることで、風水害対策を効率的・効果的に強化できると考えられ

ます。

表2-1-1 訓練目的の例

① 地域の危険箇所、災害イメージの形成

☛ 非日常的で、起きるたびに顔が大きく異なる災害について、疑似体験できるのが図上型防災訓

練です。被害や災害対応イメージの形成は、討論型図上訓練で鍛えるべき最大の課題です。

② 基礎的情報読解力、情報処理能力の向上

☛ 災害対応能力の向上を図るには、職員の情報読解力や処理能力の向上が極めて重要です。風水

害に関わる情報には、防災気象情報、雨量や水位の観測値、(浸水エリア、浸水家屋数など)被害

想定、ハザードマップ、過去の災害経験・教訓などの要素があります。

【災害事例】

平成16年の新潟豪雨災害では、上流で雨が降り始めてから5~6時間後に下流で破堤が起

こってしまうという、非常に急激な事態の進展があった。そのような中、避難勧告を出す側(市

町村)は、適切なタイミングで出すことが非常に難しかった。災害後、発令のタイミングが悪

かったと指摘されたが、中小河川が5~6時間で破堤するというイメージがあれば、別の対応

をとれたかもしれない。

【災害事例】

2003年7月梅雨前線豪雨により、福岡市のJR博多駅周辺地区は浸水被害を受けた。

博多駅筑紫口にある博多都ホテルでは、過去の教訓を活かし、福岡市防災対策ホームページ

で公開されていた「リアルタイム雨量」・「水位情報」を活用して早期に止水板を設置し、事

実上被害を生じなかった。

<出典> 豪雨の災害情報学、牛山素行(2008年10月)

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③ 災害対応上の重要事項、問題・課題の抽出

☛ 想定される被害に対して、どのような活動を行う必要があるか、どのような問題、困難が予想

され、それにどのように対応すべきかを明確することによって、実戦的な災害対応イメージを育

むことができます。

④ 防災対策に取り組む動機付け

☛ 地域住民をはじめ、防災行政職員の行動に変化を起こし、それを長続きさせるために、「災害

イメージの形成」、「対応上の問題、課題の抽出」を通じて、「なぜ、現在の状態を変えなければな

らないのか」を理解させることができます。

⑤ 訓練参加者(関係機関)間の「顔の見える関係」づくり

☛ 災害対応は一つの機関で完結するものではなく、さまざまな機関との連携の下で行われるもの

です。討論型図上訓練において、関連部署、関係機関の要員が一緒に話し合いを経験すると、お

互いの組織がどの時点でどのような行動をとるのかが理解でき、連携のためにどのような情報共

有をすればよいのかなどが分かってきます。また、住民を巻き込んだ討論を行えば、自助・共助・

公助についての理解が深まり、災害時の連携のとれた対応に繋げることが可能となります。

⑥ 災害対応マニュアルの作成のきっかけ

☛ 災害対応の基本は地域防災計画に規定されています。討論型図上訓練の実施により、計画上の

課題を明らかにし、応急対応を実際に行う場合の留意点やポイント、具体的な行動手順等を明ら

かにした「災害対応マニュアル」の作成に繋げることが可能となります。

*地域防災計画とは別に、風水害対応に関するマニュアルを作成している自治体は、全体の35%(約

606団体)(※出典:2008年 地方自治体における風水害対策等に関する調査)に止まっていま

す。風水害対応マニュアルの作成促進という視点からも討論型図上訓練の実施、推進が重要と言えます。

【災害事例】

昭和57年7月の長崎水害の際、長崎海洋気象台が警報を出したのは、長崎市で大雨が降

り出す約2時間前の午後5時前だった。この日は金曜日で、午後5時前という発表時間は、

県庁、市役所、電力会社、ガス会社等防災関係機関の退庁時刻を考慮したものであった。早

めに警報を出すことで、それぞれの機関が事前に警戒体制を敷くことができるだろうと考え

たのである。しかしながら、その気象台の意図は必ずしも防災関係機関で理解されなかった

ようである。

<出典>災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 1982 長崎豪雨災害 平成 17年 3月

http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/kyoukun/rep/1982--nagasakiGOUU/index.html

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表2-1-2 風水害対策に係る訓練のねらいの例

① 危機対応体制の確立職員参集 □ 招集のタイミング

□ 参集規模

□ 連絡体制

□ 実効性

首長、幹部 □ 連絡体制

□ 代理規定

② 災害対策本部機能 □ 立地の安全性(被災リスク)

□ 非常用電源(発電機)の設置場所

□ 全体状況の把握

□ 不完全情報からの全体の状況予測

□ 情報途絶地域の把握

□ 地図の有効活用

□ 優先対応事項の選定

④避難勧告等の判断・伝達 □ 避難勧告等の判断・伝達マニュアル

危険エリアの明確化 □ 土砂災害 ・土砂災害警戒区域

□ 洪水 ・浸水想定区域

□ 高潮 ・過去の浸水実績

・河川の特徴に関する情報

・人的被害の危険性に関する情報

・地下街、アンダーパス、地下鉄等の把握

避難判断基準 □ 土砂災害(自主避難の呼びかけ、避難勧告、避難指示) □ 洪水

□ 高潮

判断に必要な情報 □ 種類 ・雨量、予測雨量(、実効雨量)

・気象予警報、土砂災害警戒情報

・河川水位、河川監視カメラ映像

・洪水予警報、避難判断水位情報、危険水

位情報等

□ 情報殺到時における情報の優先順序の選別(情報のトリアージ)情報の収集・整理・分析体

地下に設置していると、浸水してしまった際に被害を受け、電源を確保できず本部機

能が麻痺してしまうことがある。

優先順序の選別をすること(トリアージ)なく個々の通報に順次対応していくと、大量

の情報が殺到する事態に対応不能に陥ってしまい、全体状況が把握できなかったり、

より重要な被害現場に対応できなくなってしまう。大災害モードに切り替えた対応体制

とすることが必要。

1時間に数百件の通報などの状況が起り得る。様々な情報が1ヶ所に殺到しないよう、

種類に応じて連絡先を振り分けて指定するなどの工夫が必要。

収集した個々の情報を地図に書き込もうとしていくと、大量の情報が殺到するときに対

応できなくなってしまう。災害規模に応じ必要な情報のまとまりに整理して記載すること

や、活用する地図の縮尺スケールを切り替えるなどして、被害状況全体を効果的に

把握できるようにすることが必要。

8

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□ 入手先 ・関係機関(ホットライン、FAX)

・関係機関防災情報システム

・インターネット(ホームページ)

・職員による警戒巡視

・住民からの通報

避難場所 □ 避難所の立地の安全性 ・水没危険、土砂災害危険の回避

避難ルート □ 危険エリア通過の回避

伝達方法 □ 伝達文の内容

□ 伝達手段及び伝達先の設定

⑤ □ 避難支援プラン ・情報伝達手段の確認

・避難支援手段の確認 等

⑥ 関係機関との連携 □ 関係機関の明確化

□ 関係機関との情報共有

□ 顔の見える関係づくり

⑦ 避難所の設置・運営 □ 避難所の設置・運営マニュアル

⑧ 報道機関との連携 □ 能動的な情報の発信

□ 発信する情報内容の整理

⑨ □ 「正常化の偏見」と「経験の逆機能」の打破

□ ハザードマップの共有

□ 行政の対応内容の範囲と限界の理解

□ 自助行動の促進

(風水害対策訓練のねらいに係る参考文献)

・「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」(平成18年3月) 災害時要援護者の避難対策に関する検討会

・「災害危機管理論入門-防災危機管理担当者のための基礎講座-」(平成20年4月) 吉井博明、田中淳

洪水、高潮においては、避難所に避難しようとする途上でり災してしまうこともある。場

合によって自宅等の上層階に避難することが安全・有効な手段であることも考慮が必

要。

防災行政無線、携帯電話メール配信システム、コミュニティFM、広報車、自主防災

会長等を起点とした連絡網による伝達など、多様な対象に確実に伝達できるよう複合

的・効果的な伝達手段の確保に留意が必要。

・「地方公共団体における総合的な危機管理体制の整備に関する検討会 平成20年度報告書」(平成21年3月) 総務省消防庁

・「地方公共団体の地域防災力・危機管理能力評価指針の策定調査報告書」(平成15年3月) 総務省消防庁

災害時要援護者の避難支

住民とのリスクコミュニケー

ション

・河川管理者(国交省、県河川課等)

・気象台

・県の防災担当

・消防

・警察

・土木部局

・下水道局 ※内水氾濫関係

・社会福祉協議会

・高齢者福祉施設

・医療関係者

・関係企業 等

市町村の各部局や消防、警察、都道府県等の関係機関が認識している危険エリア・

箇所はどこであるかや、風水害においてどの段階でどういった行動を行うのかについ

て、相互に理解しているか。

住民が避難勧告、避難指示の「空振り」を許容してくれるか。

・「避難勧告等の判断、伝達マニュアル作成ガイドライン」(平成17年3月) 集中豪雨時における情報伝達及び高齢者等の避難支援に関

する検討会

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第2節 討論型図上訓練の手法

図上型防災訓練には表2-2-1に例示するようにさまざまな方法があります。

表2-2-1 図上型防災訓練の例

一般的な名称 方 法 参考となるホームページ

状況予測型図上

訓練

訓練進行者による簡単な状況付与の下で、参加者一人一

人に具体的な災害状況等を経過時間ごとに予想させ、それ

をシナリオ代わり(前提)にしたときに、どのような意思

決定と役割行動が求められるかを答えさせる形式の訓練。

地域防災実戦ノウハウ(24)

以降【日野宗門氏】

http://www.isad.or.jp/

(財)消防科学総合センター

目黒メソッド

一人で行うイメージトレーニング。「目黒巻」という災

害発生時の自分を主人公とした物語を描くための記入様

式を埋めながら、発災時のイメージを深めるもの。

東京大学目黒公郎研究室

http://risk-mg.iis.u-tokyo.

ac.jp/meguromaki/meguro

maki.html

災害図上訓練D

IG(ディグ)

5~10人程度のグループ単位で行う。大きな地図をグ

ループ全員で囲み、地域で起きる災害についてイメージト

レーニングを行うもの。

災害図上訓練DIGのページ

【富士常葉大学小村隆史氏】

http://www.e-dig.net/

0101.html

防災グループワ

ーク

訓練進行者による簡単な状況付与の下で、具体的な災害

状況や必要とされる対策等を数名のグループ単位で検討

させ、また発表させることによって認識の共有化を図るも

の。

防災ワークショ

ップ

方法は防災グループワークと同様。参加者の討論を通じ

て、何らかの成果物(防災計画、マニュアル、防災マップなど)

を作りあげることを主目的とするもの。

防災クロスロー

5人程度のグループで行うゲーム。カードに記された災

害後に起こるさまざまなジレンマを抱える問題について、

自分ならどうするかを決め YES 又は NO の意思表示をし、

お互いの意見を出し合うもの。

WEB CROSSROAD

【慶應義塾大学吉川肇子氏】

http://maechan.net/cross

road/news.html

避難所運営ゲー

ム(HUG)(ハ

グ)

数人のグループで行うゲーム。避難者の年齢、性別、国

籍やそれぞれが抱える事情が書かれたカードを、避難所に

みたてた平面図にどれだけ適切に配置できるか、また避難

所で起こるさまざまな出来事にどう対応していくかを模

擬体験するもの。

避難所運営ゲーム HUG

【静岡県西部危機管理局】

http://www.pref.shizuoka.

jp/bousai/seibu/hug/inde

x.html

訓練企画準備の

ための検討会

市区町村関係部局、消防、警察、都道府県、国(国土交

通省工事事務所、気象台等)等の防災関係機関が集まり、

図上型防災訓練の企画準備について検討を行うもの。関係

者の認識の共有や確認を行うことができ、図上型訓練の一

つととらえることができる。

図上シミュレー

ション訓練

実際の災害時に近い場面を設定し、訓練参加者が与えら

れた役割で災害を模擬的に体験する。付与される災害状況

を収集・分析・判断するとともに、対策方針を検討するな

ど、災害対処活動を行う訓練。

市町村による図上型防災訓

練の実施支援マニュアル【消

防庁】H20.4.28報道発表参照

http://www.fdma.go.jp/

災害救助図上シミュレーシ

ョン訓練実施マニュアル【日

本赤十字社】

http://www.jrc.or.jp/vcm

s_lf/saigaikyugo-10.pdf

10

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これらを思考の主体(個人・集団)によって分類すると、表2-2-2のとおり整理す

ることができます。基本的には、表2-2-1に掲げた訓練例の内、「状況予測型図上訓練」

と「目黒メソッド」は個人レベルで考えていく「自己思考方式」に、それ以外のものはグ

ループで検討を行う「集団思考方式」に分けられます。さらに、「集団思考方式」は、グル

ープで与えられたテーマ(問題)について検討して理解を深めていく「討論型」と、参加

者が災害時の対応状況を模擬的に体験しながら問題を洗い出していく「対応型」に分類で

きます。

表2-2-2 図上型防災訓練の分類(思考の主体の観点から)

分類 訓練手法の特徴 訓練例

自己思考方式

一定の前提条件に基づき、個人で

災害イメージ、対策等を考え、学習

するスタイルである。

� 状況予測型図上訓練*注

� 目黒メソッド*注

集団思考方式

討論型

訓練進行者の下で、一定のルール

に従って、グループで議論を進める

ことにより、アイデア(地域の防災

マップ、防災対策等)を出すスタイ

ルである。

� 災害図上訓練DIG

� 防災グループワーク

� 防災ワークショップ

� 防災クロスロード

� 避難所運営ゲーム(HUG)

(ハグ)

� 訓練企画準備のための検

討会

対応型

訓練を統括するコントローラーの

進行のもとで、プレイヤーは与えら

れる役柄を演じ、ある組織の運用を

模擬的に体験することにより、組織

の運営計画や体制上の問題を洗い出

し、共有するスタイルである。

� 図上シミュレーション訓練

*注:「状況予測型訓練」、「目黒メソッド」は自らの検討結果をグループ内で発表し合うなど討論型

で実施することもできます。

本年度の調査研究では、この内「討論型」に絞り、風水害対策の強化に結びつく図上型

訓練のあり方について検討します。討論型図上訓練は、実施目的、実施方法などが異なり

ますが、いずれも「参加者主体の討論」を中心に実施するという点では共通です。その特

徴としては以下の点が挙げられ、特に①及び②の利点を考慮すると、風水害対策の強化に

結び付けやすいと考えられます。

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①組織や集団における意識や情報の共有を図る上で効果的な手法であること

討論型図上訓練は、訓練進行者(講師等)からの一方的な知識伝達ではなく、参加者

が自ら参加、体験、議論し、グループ討論や発表の中で何かを学びあったり創り出した

りする訓練進行者(講師等)と参加者間、あるいは参加者相互のやりとりを中心とする

手法です。学習を通じて、組織や集団(自主防災組織や住民グループ等)における意識

や保有している情報の共有・理解促進を効果的に図ることができます。

②実戦的な計画(マニュアル)の作成・見直しに繋げやすい手法であること

討論型図上訓練は①の特徴を持つため、訓練の具体的なテーマとして計画(マニュア

ル)に規定された特定の項目を設定することで、そのテーマについての参加者間の理解

が深まり、実戦的な計画・マニュアルの作成・見直しに繋げることができます。

③訓練の成否が訓練進行者(講師等)に依存する側面があること

討論型図上訓練は訓練進行者(講師等)により進められますが、訓練の成否は、訓練

進行者(講師等)が持つ知識・経験・話術・調整力等に依存する側面を有します。

一方、それぞれの討論型図上訓練は、表2-2-3に示すように実施目的、訓練進行者

に求められる専門知識・能力、付与内容の詳細度、備えている演出要素(ゲーム性など)等

によって特性が異なります。したがって、市区町村には、これらの特性と当該市区町村に

おける防災対策の優先順位を考慮して、求められる訓練の種類を選択し実施していくこと

が望まれます。

表2-2-3 討論型図上訓練の選択の視点(例)

選択の視点 特徴 訓練例

実施目的別

計画、方針(案)などについて、関係者の意

見交換を踏まえて、意見調整を行う。

� 訓練企画準備のための

検討会

災害イメージ、対応すべき事項、対応上の

問題・課題を抽出し、共有する。

� 災害図上訓練DIG

� 防災グループワーク

� 防災クロスロード

� 避難所運営ゲーム(HUG)

(ハグ)

参加者の討論を通じて、何らかの成果物

(防災計画、マニュアルなど)を作りあげる。

� 防災ワークショップ

制約別 訓練進行者に求めら

れる専門知識・能力

・一定の専門的知識

や経験が求められ

る。

� 防災グループワーク

� 防災ワークショップ

� 訓練企画準備のための

検討会

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・講習やテキストで学

ぶことで実施可能。

� 災害図上訓練DIG

� 防災クロスロード

� 避難所運営ゲーム(HUG)

(ハグ)

付与内容の詳細度等

被害及び対応(人々

の動き等)に関する

仮想的な状況

概略的状況設定 � 防災グループワーク

� 防災ワークショップ

� 災害図上訓練DIG

詳細な状況設定 � 避難所運営ゲーム(HUG)

(ハグ)

トレードオフ的な状況 � 防災クロスロード

討論すべき計画・方針(案) � 訓練企画準備のための

検討会

ゲーム的要素の有無別

有り � 災害図上訓練DIG

� 避難所運営ゲーム(HUG)

(ハグ)

� 防災クロスロード

無し � 防災グループワーク

� 防災ワークショップ

� 訓練企画準備のための

検討会

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第3節 風水害対策強化のための討論型図上訓練のポイント

討論型図上訓練の必要性を踏まえ、市区町村において訓練の実施を検討する場合、どの

ような点がポイントになるでしょうか。企画準備から訓練実施後の評価・検証に至る基本

的な流れは図2-3-1に示すとおりですが、それぞれ1~3に挙げる点を考慮する必要

があります。

図2-3-1 討論型図上訓練の基本的な流れ

1 訓練の企画準備

討論型図上訓練の企画準備作業の内容は、概ね次のとおりです。

■訓練目的、対象者の明確化

○訓練目的

○訓練対象者

■訓練プログラムの作成

○訓練シナリオ

③ 振り返り

① オリエン

テーション

訓練進行者 ② グループ討論

結果発表 コメント

訓練参加者

訓練の企画準備

訓練の実施

訓練の評価・検証

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○学習ポイント

○タイムスケジュール

○グループ編成が必要な場合の留意事項

■会場の設営

■関係者への事前説明

それぞれの留意点は以下のとおりです。

(1)訓練目的、対象者の明確化

訓練の企画の第一歩は、まず、目的と対象者を明確にすることです。これに応じて表2

-2-3も参考にしながら訓練手法を選択します。それぞれの市区町村の実情やニーズに

照らして、柔軟かつ適切に訓練目的・対象者を具体化します。

ア 訓練の目的

訓練目的についてはいくつかの観点があります。表2-1-1および表2-1-2の例

示を参考にして訓練目的を具体化する必要があります。

イ 訓練対象者

訓練対象者としては、次のとおり考えられます。

・防災担当部署の職員:

市区町村の職員の場合、一般に異動が伴います。防災担当部署の職員も、「防災担当者」

とはいえ必ずしも防災や危機管理のノウハウを熟知しているとは限りません。経験の浅い

職員であっても適切な災害対応ができるよう、平常時から訓練を実施し、対応能力を鍛え

ておくことが極めて重要です。もちろん、身に付けた防災の知識は異動した新たな部署で

も役立ちます。

・他の部署の職員:

大災害時には、避難所の設置・運営、物資の調達・配布、応急仮設住宅の建設、り災証

明の発行等平常時とは異なるさまざまな業務が市区町村に発生し、防災を主担当とする部

署の職員だけでなく全ての職員が災害対策業務に携わることになります。災害時に迅速か

つ的確な対応ができるよう、平常時において防災担当部署以外の職員を対象とした訓練を

行うことが求められます。

【事例】

・ 防災担当部署以外の職員を対象に訓練を実施する場合、防災担当部署の職員

は企画側になることから訓練対象とならないことが多いが、この点を明確に

しておかないと誤解や混乱を起こしやすい。あらかじめ訓練対象者が誰かを

明確に設定して実施する必要がある。

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・地域住民(自主防災組織等)

地域全体としての災害対応能力の向上を図るためには、自助・共助・公助の考え方を踏

まえ、地域防災の担い手である地域住民(自主防災組織等)を対象とした訓練を行うこと

が極めて重要です。

(2)訓練プログラムの作成

ア 訓練シナリオ

討論型図上訓練を成功させるには、「いかに参加者の討論を誘導し、盛り上げていくか」

が最大のポイントとなります。そのためには、討論のきっかけとなる「訓練シナリオ」を

十分に検討しておく必要があります。

訓練で仮想する季節、日時、台風の発生、降雨状況等の前提条件や、その後の被害の展

開を設定する際に、当該市区町村における過去の災害記録のほか、洪水ハザードマップな

どの資料をできる限り活用し、訓練の目的に沿って想定する風水害の規模、様相等の概括

的状況を作成します。その際、国土交通省(河川事務所)、気象庁(気象台)などの関係機

関からの知見を得たうえ、作成するとさらに有効なものになるでしょう。

☛ 気象庁が発表する注意報、警報について

☛ 土砂災害警戒情報について

【関係機関】

どの場合においても、気象庁(気象台)、国土交通省(河川事務所)、都道府県、消

防、警察などの関係機関との連携して行うことで、より大きな効果が期待できます。

① 平成16年に相次いだ気象災害で避難が遅れて多くの高齢者が犠牲になったことを踏ま

えて、発表タイミングは、より確実に人命を守ることを意識したものになっている。

② 平成21年現在の気象注意報や警報は複数の市区町村をまとめた区域に対して発表され

ているが、平成22年からは市区町村単位で発表される。これにより、市区町村の防災

担当者が、自分たちの自治体が警戒の対象となっていることを明確に認識することがで

きるようになる。

③ 警報や注意報を発表する指標には、土砂災害では土壌中に溜まっている雨量、洪水では

上流部に降った雨も考慮した、災害とより密接な関係がある指数を取り入れている。

④ 気象庁のホームページは発表中の注意報や警報が掲示されているほか、注意報や警報の

意味を理解したり、気象や防災に関する自己学習もできるようになっている。

大雨警報発表中に、さらに雨が降り続いて土砂災害発生の危険度が高まった時に、市町村長

が避難勧告等を発令する際の判断や住民の自主避難の参考となるよう、都道府県と気象台が共

同で、市町村名を特定して発表する情報。

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☛ 計画づくりを目的とした訓練シナリオを作成する際に、最悪のシナリオを念頭に

置いて被害想定を行っておく必要があります。

イ 学習のポイント

シナリオにおいて、学習ポイントを設定します。この際に、過去の災害事例(表2-3

-1参照)を活用し、災害対策上の問題、教訓などをできる限り反映するようにします。

また、それぞれの学習ポイントについて、訓練における進行者のコメントや講評のポイン

ト等も事前に用意しておくと進行を円滑化することができます。

表2-3-1 学習ポイントの設定における参考例

事項 問題事例 優良事例 訓練進行者のコメント

避難所へ行く道が被災 避難所に行く道が全部

浸かってしまい、行けな

かった。

避難所被災 避難所1階の水位は膝

上までとなり、2階には

トイレがないので、他の

避難場所へ移動した。

避難所自体を水没か

ら守るための防災設

計が必要である。

機能不備 体育館に人が多くて歩

くのは大変だった。

椅子も車椅子もなくて

いる場所がない。

おむつを替えるところ

がない。

避難所は、障害者と

高齢者には特別の

部屋が用意してお

り、恵まれていた。

要援護者・乳幼児に配

慮した部屋の設置

救護・健康・災害生活

相談コーナーの設置

広報用掲示版・安否確

認伝言板等の避難者

用情報コーナー設置

トイレの問題 トイレの水が出なくて、

ひどい汚臭で使えない。

障害者対応のトイレも

なし。

高齢者用ポータブ

ルトイレを設置し

たのが効果的であ

った。

障害者用のトイレが

必要である。

ある程度の仮設トイ

レ備蓄が必要である。

【シナリオ作成における考え方の一例】

風水害における行政対応でよくある失敗パターンは、「どうせたいしたことはないだろう」

と事態を楽観視し(「正常化の偏見」)、対応が後手に回るというものです。

この失敗パターンを、訓練で参加者に体験させるためには、最初は内水氾濫を設定し、ある

時点から集中豪雨が降り止まず破堤の危険が出てくる、というように徐々に危険性を高めなが

ら最悪ケースへ発展させていくシナリオを設定すると効果的だと考えられます。

*「正常化の偏見」:目の前に危険が迫ってくるまで、その危険を認めようとしない人々の

心理傾向、つまり「危険を無視する心理」を指す。

『地域防災データ総覧 風水害編[改訂版]』,2001 年 3 月,(財)消防科学

総合センター p104

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トイレが使えないため

飲食をがまんする。

尿のにおい止めの

薬は準備していた。

非常用トイレの個人

備蓄を推進すべき。

ペットの問題 犬を連れて来る住民が

おり、フンも鳴き声もた

まらない。

避難所等でペットの世

話をしてもらえないの

で、避難ができなかった

という市民がいた。

ペットの持ち込みな

どを事前に決めてお

く必要がある。

【参考】

1.災害時における障害者支援に関する提言 ~東海豪雨災害による被災状況等調査をもとに~、社会

福祉法人 AJU自立の家、平成14年3月

2.大災害時の市町村の初動と住民の避難行動 平成16年新潟豪雨、福井豪雨、豊岡水害、新潟県中

越地震時の避難行動研究、吉井博明、2005年7月

ウ タイムスケジュール

訓練目的及びそれに応じたシナリオを踏まえ、図2-3-1に示す訓練の基本的流れに沿

って、訓練実施のタイムスケジュールを組み立てていきます。

エ グループ編成が必要な場合の留意事項

参加者全員が同じテーマについて議論してもらうような編成もあれば、参加者をいくつ

かのグループに分け、それぞれ異なるテーマについて議論してもらうような編成もありま

す。グループ分けを行う際には、地域ごと、役割分担ごとの配慮も必要となります。さら

に、討論が参加者の意識、経験、知識などに大きく左右されるため、参加者個々の経験な

どを配慮してグループ編成を行う必要もあります。

行政職員を対象とした訓練を行う場合には、当該市区町村職員のほかに、国土交通省(河

川事務所)、気象庁(気象台)、都道府県などの関係機関の方々に参加してもらい、アドバ

イザー等として、助言や指導を得ると効果的です。

(3)会場の設営

討論型図上訓練は、準備が比較的簡単で、経費的負担も少ない訓練です。参加者人数に

見合った広さの会議室、講堂等を確保し、中には机・椅子、ホワイトボード、必要に応じ

てパソコン・プロジェクターなどの機材を設置し、訓練関係者の動線を考慮し、グループ

間のスペースを確保したうえ、お互いに動きの支障とならないように、レイアウトしてお

きます。

また、討論型図上訓練においては、地図の活用が重要です。災害リスク、被害発生時の

様相などは、その地域の有り様と極めて密接な関係を持っているからです。訓練のテーマ、

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グループ参加者の所在地域などを配慮し、地図の種類、範囲(エリア)、スケールを決め、

準備しておきます。

そのほか、訓練中の作図作業などに使用する蛍光ペン、サインペン、付箋、模造紙、メ

モ用紙などを適宜に用意する必要があります。これらの小道具は、実際の災害時も活用で

きるので、普段から用意しておくと良いでしょう。

(4)関係者への事前説明

訓練実施前に、訓練目的、方法等について、関係者への事前説明を行います。この段階

では、大まかな訓練概要を理解させることを重視し、訓練シナリオの詳細設定などは、特

定の担当者に示す程度でよいでしょう。

2 訓練の実施段階

討論型図上訓練は、前述した図2-3-1の流れで進めます。

(1)オリエンテーション

「なぜ、このような訓練を行う必要があるのか」、「どのような目的で、どのように実施

するのか」などについて、その背景、目的(期待されていること)、実施方法を参加者に説

明します。ここで説明することが参加者のモチベーションを左右することになります。

(2)グループ討論

ア 雰囲気作り

事前に作成した「訓練プログラム」に沿って、訓練進行者の下で行うこととなりますが、

場合によっては、討論に入る前に、訓練に関する説明のみならず、アイスブレイキング(氷

を溶かす)という手法を活用して、参加者の自己紹介や机、地図の設営など全員で自ら行

うなどにより、参加者同士のコミュニケーションが円滑にできるように、雰囲気作りを心

がけることが重要です。

イ 討論への導入

討論テーマを再度確認し、10分か20分など、時間を限定して討論を始めるように指

示します。

参加者全員から、自由な意見を引き出すために、「・・・は何か?」といった堅苦しい言

葉ではなく、口語体で質問をし、討論へ導入していく必要があります。

ウ 討論の活発化

討論を行うグループ内の参加者に「グループリーダー」「書記」などの役割分担を決めて

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おくと、討論の活発化に繋がります。

訓練途中、討論が不活発になったり、活発であっても訓練目的から外れたり、または一

部の参加者だけで討論を進めてしまっているような場合に、訓練進行者による誘導や調整

が必要となります。

エ 関係機関との意見交換の促進

訓練進行者は適宜、関係機関に対して、質問したり、コメントを求めたりするようにし

ます。このことにより、関係機関からの助言や情報交換が容易になります。

(3)振り返り(グループ発表と司会者による講評)

討論型図上訓練では、話し合った内容をまとめ、参加者が共有しておくことが大事です。

また、話し合った「内容」だけでなく、話し合いの「プロセス」についても気づいたこと

を話し合っておくことが必要です。

災害対応では必ずしも正解が一つであるとは限らないため、講評においては、過去の災

害対応における成功例・失敗例も学ぶことができると良いでしょう。

3 訓練の評価・検証段階

「訓練の目的が達成されたかどうか」を把握し、次のステップに繋げていくためには、

訓練効果の評価・検証が重要不可欠です。参加者の感想を聞いたり、アンケート調査を行

ったりします。また、訓練での討論結果を整理・分析して、記録に残し、今後の有効活用

を図ることも必要です。

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第4節 ケーススタディの設計

第1節~第3節を踏まえ、市区町村において手がけやすい討論型図上訓練を検討するた

め、3つの市区町でケーススタディを行うこととしました。対象は、平成20年度の調査

研究でケーススタディの対象とした東京都中野区、岐阜県神戸町及び鹿児島県伊佐市です。

対象地域の概況、目的、実施方法等は次のとおりです。

1 ケーススタディ対象地域の概況

ケーススタディ対象地域の概況は表2-4-1のとおりです。

表2-4-1 ケーススタディ対象地域の概況

鹿児島県伊佐市 岐阜県神戸町 東京都中野区

位置 鹿児島県の北部 岐阜県の濃尾平野北西部 東京23区の西部

人口(高齢率) 30,821 人(35%) 20,371 人(23%) 300,497 人(20%)

世帯数 14,403 6,394 176,456

面積 392.36 km2 18.77 km2 15.59km2

人口密度 79 人/ km2 1,082 人/ km2 19,275 人/ km2

地域類型 中山間地域 (高齢化、過疎地域)

平野型農村地域 人口密集地域 (都市型)

風水害類型

集中豪雨が多発

• 内水、外水氾濫

• 土砂災害(急傾斜、土

石流、地すべり)

台風による豪雨、集中豪雨

が多発

• 内水、外水氾濫

局地的な豪雨が多発

• 内水、外水氾濫

• 土砂災害(急傾斜)

過去最大の風水

害の概要

(戦後)

平成18年7月鹿児島県北

部豪雨災害:

・死者 3名(土砂災害によ

り2名、避難途中流され 1

名)

・住宅全壊 14 棟、半壊 206

棟、床上浸水 86 棟(旧大

口市と旧菱刈町の合計)

・河川の溢水、道路決壊

昭和34年9月伊勢湾台風:

・全壊 17 棟、半壊 25 棟

・床下浸水80棟、町内15%

のエリアが冠水

・河川の溢水、破堤

平成17年9月水害:

・住宅床上浸水 770 棟、床下

浸水 472 棟

・集中豪雨による内水氾濫、

護岸崩壊

図上型防災訓練

経験の有無

(不定期的)あり

(県防災研修センターの出前

講座などで実施)

なし

(定期的)あり

(毎年5月に風水害図上シミュ

レーション訓練実施)

風水害対策上の

課題

・土砂災害による被害への

対策の強化

・要援護者の避難誘導体

制の強化

・住民の避難意識の向上

・避難路、避難所の安全

性の確保

・避難勧告・指示の発令基

準が未策定。

・防災行政無線戸別受信機

未設置地区への避難勧告

等の伝達方法の整備。

・防災関係機関との連携を

図った訓練があまり実施さ

れていない。

・風水害対応マニュアルを作

成しているがその実効性の

検証が不十分

・防災担当者の異動により

H17 年災の経験者がほとん

どいない。

注:人口・面積は、全国市町村要覧(平成21年版)によるものです。

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2 ケーススタディにおける訓練の目的設定

3市区町の特性を踏まえ、表2-4-2に示すとおり訓練目的を設定しました。

表2-4-2 ケーススタディにおける訓練目的の設定

訓練目的

伊佐市

➾ 住民による適切な避難行動を図るため

• 災害イメージの形成

• 応急対策活動のイメージ形成

• 普段準備しておくべき事項の抽出

➾ 「避難所運営マニュアルの作成」に向けて、

• 避難所運営の模擬体験

• 避難所運営上の課題の抽出

神戸町

➾ 「避難勧告等の判断・伝達マニュアルの作成」に向けて、

• 災害イメージの具体化

• 求められる行政対応及び住民対応の明文化、共有化

• 関係機関との「顔の見える関係」づくり

中野区

➾ H22年度の風水害図上シミュレーション訓練の企画・実施に向けて

• 参加機関の顔合わせ

• 図上シミュレーション訓練の企画に当たって必要な被害状況等の想定、

想定される被害内容によって異なる関係機関の対応、対策実施上のポイ

ントの検討

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3 ケーススタディの実施日程、方法等

3市区町におけるケーススタディの実施日程、実施方法等は表2-4-3のとおりです。

表2-4-3 ケーススタディの実施日程、方法等

伊佐市 神戸町 中野区

①実施日程 2009年9月15日(火) 2009年9月29日(火) 2009年10月28日(水)

②訓練名称 ・防災グループワーク

・避難所運営ゲーム(HUG)

(ハグ)

防災ワークショップ 訓練企画準備のための

検討会

③訓練対象者 ・防災担当以外の職員

・地域住民

・防災担当以外の職員 ・防災担当職員

④訓練時間 13:00~17:00 計 4 時間 13:00~16:00 計 3 時間 13:30~15:30 計2時間

⑤基本的流れ 第Ⅰ部:防災グループワーク

(約2時間)

①水害に関する講義及び訓

練方法の説明 (約40分)

②演習:(3場面ごとに以下の

流れの繰り返し)

・前提条件と質問提示(約5分)

・参加者討論、発表 (約15分)

・進行者によるコメント(約5分)

(-----休憩(約 10 分)-----)

第Ⅱ部:避難所運営ゲーム

(HUG)(ハグ)

(約2時間)

①進め方及びゲームの前提

条件の説明 (約30分)

②演習:

・時間に追って、状況付与カ

ードを提示し、参加者が討

論しながら避難者の配置を

決定していく。 (約60分)

・参加者の感想等の発表

(約10分)

・進行者によるコメント(約10分)

①訓練目的、実施方針、前提条

件等の説明

(15分)

②演習:(2つの議題ごと)

---------------------

議題1(被害想定):

・趣旨・方法の説明 (5分)

・グループ作業、発表 (30分)

・質疑及び関係機関によるコメント

(10分)

議題2(行うべき対応行動):

・趣旨・方法の説明 (5分)

・関係機関による情報解説(30 分)

・グループ作業、発表 (25分)

・質疑及び関係機関によるコメント

(15 分)

---------------------

・総括(訓練全体の振り返り)

(15 分)

①検討会の趣旨、狙い

等の説明 (10分)

②図上シミュレーション

訓練とは (10 分)

③都市部(中野区)の降

雨について (10 分)

④水害時の災害対応に

ついて (30 分)

・中野区役所

・東京都第三建設事務

・中野・野方両警察署

・中野・野方両消防署

⑤H22年度図上シミュ

レーション訓練に向け

たポイントの検討

(60 分)

⑥訓練進行者

東京経済大学

教授 吉井 博明

静岡県西部危機管理局危機

管理課

専門監 倉野 康彦

富士常葉大学

准教授 小村 隆史

(株)防災&情報研究所

代表 高梨 成子

気象庁予報部予報課気

象防災推進室

調査官 岡田 憲治

⑦市区町及び

関係機関から

の参加者

市職員:11名

民生委員:14名

各校区代表:14名

消防団:20名

消防本部:2名

計:61 名

町職員:17名

消防団:2名

国土交通省:2名

岐阜地方気象台:2名

県:2名

消防署:1名

計:26名

区役所職員:6名

東京都:1名

警察署:2名

消防署:3名

計:12名

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第3章 市区町における討論型図上訓練の企画・実施

-伊佐市、神戸町及び中野区におけるケーススタディ-

第1節 鹿児島県伊佐市におけるケーススタディ ―住民と市職員を対象とした避難判断及び避難所運営に関する訓練―

1 伊佐市の風水害特性及び対策上の課題

(1)風水害特性

地域防災計画などを踏まえ、伊佐市の風水害に係る特性を整理すると下表のとおりです。

表3-1-1 伊佐市における風水害に係る特性

① 気象特徴

鹿児島県北部に位置

し、面積が広く支流も多

くある。

雨量的には、年間を通

じて梅雨時が一番多い

台風は多くないが、(川

内川周辺に)集中豪雨

が多く,災害を起こす

気象原因となっている。

② 過去における主な災害

事象

床上床下浸水、住家流失、半壊、全壊

田畑の冠水、流失、埋没

農業、学校等の施設被害

道路橋梁損壊、鉄道不通、停電、電話不通

河川堤防損壊、がけ崩れ

死者、重症、軽傷

* 平成18年7月鹿児島県北部豪雨災害では、伊佐市(旧菱刈

町、大口市)に多大なる被害を受けた。主な被害状況を以下

のとおり示す。

人的被害死者 2名

住宅被害全壊6棟、半壊150棟、一部破損11棟、

床上浸水11棟、床下浸水103棟

非住家被害全壊3棟

浸水によるボート救出者数38人

③ 地域防災計画等にお

ける風水害被害想定

100年に1回の確率で発生する大雨を想定している。

④ 浸水予測(ハザードマップ) 川内川の堤防が決壊し、最大浸水深が5m以上。

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(2)風水害対策上の課題

伊佐市総務課防災担当者との打合せ等により、まず風水害対策上の課題について検討し

ました。検討結果は表3-1-2のとおりです。

表3-1―2 伊佐市における風水害対策上の課題

① 平成18年災

害の教訓*注) 内水被害による浸水被害が殆どであった。

行政の自主避難、避難勧告等の呼びかけは的確に行われたが、呼び

かけに応じなかった住民が多かった。

避難所は設置したが、そこに行くまでに問題があった。(安全な避難所

はどこか、避難所へどう案内するかが分からなかった。)

避難所の運営において混乱が起こった。(入り込みの車が多くて出られ

なくなったことや、地元ではない避難民をどうするかが問題になった)

要援護者の避難をどうすべきか。

② 今後の風水害

対策における

課題

内水被害だけでなく、土砂災害による被害への対策の強化

要援護者の避難誘導体制の強化

避難路避難所の安全性確保(浸水や土砂災害の危険対策)

住民の避難意識の向上

河川の安全対策

*注:平成18年7月鹿児島県北部豪雨災害

2 訓練目的の設定

表3-1-2から、伊佐市においては「住民による適切な避難行動」及び「適切な避難

所運営」が主な課題となっていることが分かります。

地震と風水害の場合とでは、災害の発生形態と住民の避難行動に違いがあります。地震

の場合は一瞬にして被害の大半が発生し、住居が引き続き居住可能か否かがそのときの避

難行動の判断基準となります。

これに対して水害の場合は、気象注意報、警報から始まり、河川の増水、道路冠水、内

水による床下浸水や土砂崩れの発生等、時々刻々と状況が変化しながらいつのまにか思わ

ぬ被害に拡大していくのが特徴です。避難行動については、その時の降雨状況や浸水の水

位・流速等によって避難行動を慎重に見極める必要があるなど、判断が難しい要素があり

ます。

そこで、伊佐市のケーススタディにおいては、主に地域住民を訓練対象とし、次の事項

を訓練目的としました。

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• 住民による適切な避難行動を図るための、災害イメージの形成、応急対策活動のイメ

ージ形成及び、普段準備しておくべき事項の抽出

• 「避難所運営マニュアル」の作成に向けての、避難所運営の模擬体験及び、避難所

運営上の課題の抽出

※ ここでの「避難所運営マニュアル」とは、避難所運営について、地域防災計画に基

づき、より具体的な行動手順、ポイント及び留意点などを明示するものです。

3 学習ポイント及び訓練方法の選定

2で設定した訓練目的を踏まえ、伊佐市ケーススタディにおける具体的な学習ポイント

を表3-1-3のとおり設定しました。

参加者にこれらの学習ポイントを習得してもらうためには、討論型図上訓練の一種であ

る「防災グループワーク注1」と「避難所運営ゲームHUG(ハグ)注2」が有効と考えました。

これらの手法はこれまで主に地震を対象として行われており、今回のケーススタディにお

いては、風水害を対象としたものとして新たに企画、実施することとしました。

表3-1―3 伊佐市ケーススタディにおける学習ポイント及び訓練方法の選定

ア 災害イメージの形成

• 地域でどのような災害が起きるのか • 避難所でどのような問題や課題があるのか

イ 応急対策活動のイメージ形成

• 市からの呼びかけ(避難準備と避難勧

告)に対する住民の対応イメージ

• 避難所運営のイメージ

ウ 普段準備しておくべき事項(被害軽減策の明確化)

(ア) 住民の避難意識の向上

• 早期避難決定の重要性

• 空振りを許容する態度

• 避難開始タイミングの判断

(イ) 日頃から避難に備えた準備

• 情報収集(入手)の手段

• 地域内での避難誘導支援、共助

(ア) 避難所運営マニュアルの作成

• 避難者リストの作成

• 避難者の適正配置

• 食事や飲料水、毛布等の提供

• 病人対応や救助要請への対応

• 避難所の環境整備

• その他

方法

防災グループワーク

(訓練プログラムの第1部 2時間)

避難所運営ゲームHUG(ハグ)

(訓練プログラムの第2部 2時間)

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注1: 防災グループワーク:簡単な状況付与の下で、具体的な災害イメージや、災害対策

的内容及び手順を身につけることを目的とし、東京経済大学吉井博明教授により

考案された討論型図上訓練手法の一つです。訓練参加者は、特に限定されず、住

民、災害ボランティア、企業や自治体の災害対策担当者等の様々な人を対象とす

ることが可能です。

注2: 避難所運営ゲームHUG(ハグ):避難所運営を皆で考えるための一つのアプローチ

として、静岡県西部危機管理局の倉野康彦氏が開発したもので、ゲーム参加者が

避難者を体育館や教室に見立てた平面図にどれだけ適切に配置できるか、また避

難所で起こる様々な出来事にどう対応していくかを模擬体験するゲームです。HUG

は避難所(Hinanzyo)、運営(Unei)、ゲーム(Game)の略で、英語で抱きしめる

という意味で、避難者をやさしく受け入れる避難所のイメージです。当初は、自

主防災組織、自治体職員等を対象に開発されましたが、最近では害ボランティア、

教職員、中高生などに拡大するとともに、静岡県では県防災士養成講座や新規採

用職員の研修教材としても活用されています。

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第Ⅰ部:避難判断に関する防災グループワーク

(1)防災グループワークの進め方の概要

簡単な場面設定・状況付与の下で、グループで議論して、被害予想や対応決定などを行

います。状況付与ごとにグループの代表が討論結果を発表し、訓練進行者が講評を加える

という流れを繰り返して進めていきます(図3-1―1参照)。

図3-1―1 防災グループワークの進め方のイメージ

(2)防災グループワークの企画

ア シナリオ作成

訓練目的、学習ポイントを決めてから、次に、訓練のシナリオを作成しました。

(ア)訓練における前提条件の設定

訓練で仮想する季節、日時、台風の発生、降雨状況等の前提条件の設定について、これ

まで伊佐市で多大な被害をもたらした「平成18年7月鹿児島県北部豪雨災害」を上回る

豪雨の発生を想定することにしました。具体的には、以下のとおり前提条件を設定しまし

た。

③ 訓練進行者からの質問

(例:土砂災害警戒情報を知

ったときにどのように対応しま

すか?)

④ グループ討論

⑤ 討論結果の発表

① 場面設定

(例:避難呼びかけ段階)

② 状況付与

(例:テレビで気象台

から土砂災害警戒情報

が出された)

⑥ 訓練進行者による講評 ⑦ 次の場面設定へ移す

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(イ)場面ごとの状況設定

上記の前提条件に沿って、訓練で想定する場面ごとの状況を設定しました。この際、過

去の被害状況や災害時に各機関(気象台、県、市役所)から出される情報に関する資料を

加味して設定を行いました(表3-1―4参照)。

表3-1―4 防災グループワークにおける場面ごとの状況設定

場面設定 状況付与

場面Ⅰ:

自主避難の呼びかけ段階

a. 今日は、平成22年7月23日(金)の午後1時。あなたはいつもと同じ場所にい

た。

b. 3日前(7月20日)から梅雨前線が九州南部に停滞。南の海上には動きの遅い

台風があり、前線の活動が活発になっている。

c. 雨は降ったり止んだりの状態が続いており、ときどき激しく降っている。

d. 昨日(7月22日)の午後10時、鹿児島地方気象台は、出水伊佐地方に大雨洪

水注意報を発表。

e. 今朝になって雨が急に激しくなり、気象台は午前10時、出水伊佐地方に大雨洪

水警報を発表。市は防災行政無線(同報系)でこの情報を流すと同時に、「低地

での浸水害や土砂災害に十分注意するよう」呼びかけている。

f. そしてつい30分ほど前の12時30分、気象台は「鹿児島県北部では猛烈な雨と

なっており、平成18年災害を上回る豪雨になる恐れがあります。これから夜にか

けて雷を伴った猛烈な雨が降ることが予想されます。土砂災害、浸水害、河川

の氾濫には十分警戒してください」という大雨に関する情報を出し、県民に厳重

な警戒を呼びかけた。

g. 市役所は、防災行政無線(同報系)を通じて、この情報をくり返し流すと同時に

「今後の気象情報に注意し浸水害や土砂災害に十分に警戒してください。ま

た、早めの自主避難をお願いします」と呼びかけた。

伊佐市訓練における前提条件の設定

a. 今日は、平成22年7月23日(金)の午後1時。あなたはいつもと同じ場所に

いた。

b. 3日前(7月20日)から梅雨前線が九州南部に停滞。南の海上には動きの遅

い台風があり、前線の活動が活発になっている。

c. 雨は降ったり止んだりの状態が続いており、ときどき激しく降っている。

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場面Ⅱ:

避難準備の呼びかけ段階

a. 午後1時30分に、あなたは、テレビで気象台から土砂災害警戒情報*が出され

たことを知った。 *土砂災害警戒情報:大雨警報発表中に、さらに雨が降り続いて土砂災害発

生の危険度が高まった時に、市町村長が避難勧告等を発

令する際の判断や住民の自主避難の参考となるよう、都

道府県と気象台が共同で、市町村名を特定して発表する

情報。

b. 続いて、防災無線の放送から「降り続く大雨のため伊佐市では過去数年間でも

っとも土砂災害の危険性が高まっています。今後の気象情報には厳重に注意し

早めの避難をしてください」という放送が流れた。

c. さらに10分ほどすると、防災無線から「昨夜からの大雨により川内川の水位が上

昇し、今後、浸水が始まる恐れがあります。このため市内全地区に対して避難準

備情報を出しました。お年寄りなど、避難に時間がかかる方は直ちに近くの避難

所に避難してください。自治会、地域のみなさんは援護が必要な方の支援をお

願いします」という放送が繰り返された。

d. 低地はあちこちで水に浸かり始めている。

場面Ⅲ:

避難の呼びかけ段階

a. 午後1時~2時までの1時間にさらに90mm の大雨が降り、市は午後2時30分、

市内全域に避難勧告を発令した。

b. 防災行政無線(同報系)からはくり返し、避難の呼びかけがなされている。テレ

ビラジオでも伊佐市全域に避難勧告が出されたことが放送されている。

c. 低地には至る所で水が溜まり、一部の道路は数十 cm程冠水している

d. 空は真っ暗で、ときどき雷がとどろいている。

(ウ)質問事項の設定

訓練の前提や概括的状況付与に対して、場面ごとの具体的学習ポイントを明確にしたう

え、参加者への質問事項を設定しました(表3-1-5参照)。

表3-1-5 場面ごとの学習ポイント及び質問事項

場面 具体的学習ポイント 質問事項

場面Ⅰ: 自主避難の呼びかけ段階 主な作業内容: 被害想定

住民向け: ① 災害イメージの形成 • どこでどういう被害がいつ起きそうなのかの想定

• 情報入手の方法 ② 応急活動のイメージ形成• 避難の前にやるべきこと

住民向け: a. あなたは平日の午後1時頃はいつもどこにいるか? b. あなたは、気象台からの大雨に関する情報をどのような

ルートから入手すると思うか? c.「平成18年災害を上回る豪雨」に襲われた場合、あなた

の地区では、最悪の場合、どこで、どのような被害が発生すると思うか?

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職員向け: ① 災害イメージの形成 • 市域のどこでどのような

災害が起きるかの想定 ② 応急活動のイメージ形成• 情報収集の重要性

職員向け: a.「平成18年災害を上回る豪雨」に襲われた場合、市内で特に警戒すべき箇所(複数)はどこだと思うか?

b. この段階で、市全体の被災状況を的確に把握するためには、どのような対応が必要だと思うか?

場面Ⅱ: 避難準備の呼びかけ段階 主な作業内容: 市による避難準備情報の発令に伴う住民の対応行動予測

① 応急活動のイメージ形成• 近所の人と誘い合って、早めの避難が重要

• すぐに情報を入手できず、避難の際手助けが必要な要援護者の存在

• 災害時要援護者の誘導には時間がかかる

• 災害時要援護者の避難状況及び必要な対応

② 普段できる被害軽減策 • 空振りを許容する • 災害イメージを頭に入れ

ておくこと

住民向け: a. あなたは土砂災害警戒情報と避難準備情報をほぼ同時

に知ったときにどのように対応するか? b. あなたがお住まいの地区の住民は、すぐにこの情報を入手できると思うか? 情報をすぐには入手できない人はどのような人だと思うか?

c. 避難の際手助けが必要な方は、あなたの地区に何人くらいいるか? これらの方を避難誘導するためにどうするか? また、これらの人が全員避難を完了するには、どのくらいの時間がかかると思うか?

職員向け: a. (避難準備情報+土砂災害警戒情報)段階で実際に避

難するのはどのような住民の方だと思うか? b. この段階では、避難所に市全体として何人くらいの方が来ると思うか?

c. この段階では、災害時要援護者のほとんどは避難すると思うか? 避難準備情報に加えて、市としてはどのような追加的な働きかけが必要だと思いうか?

d. 災害時要援護者のほとんどが避難を完了するためには、どのくらいの時間がかかると思うか?

場面Ⅲ: 避難の呼びかけ段階 主な作業内容: 市による避難勧告発令に対する住民等の対応行動予測

① 避難しない住民の存在 ② 避難路が冠水し危険な状態になったときの対応

③ 避難路が冠水した場合の市の避難呼びかけの内容

④ 日頃から避難路安全性のチェック

住民向け: a. あなたの地区の人はすぐに避難すると思うか?

すぐに避難しない人が何人くらいいると思うか? 避難しない理由は何だと思うか?

b. あなたが近所の人と一緒に避難しようとしたら、道路(避難路)がひざ近くまで(50cm くらい)冠水し、水の流れも速く危険そうであった場合、あなたはどうするか?

職員向け: a. 市民のほとんどはすぐに避難すると思うか?

ほとんどの市民が避難した場合、避難所は満員で入れなくならないか?

b. 避難しない市民は、どのくらいいると思うか? その理由は何だと思うか?

c. 市民から電話で「避難しようとしたら、道路(避難路)がひざ近くまで冠水している。それでも、避難勧告にしたがって避難した方がよいのか」と聞かれた。あなただったら、どう答えるか?

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イ タイムスケジュール

防災グループワークのタイムスケジュールを、表3-1-6のとおりに設定しました。

表3-1-6 伊佐市防災グループワークの実施タイムスケジュール

時 刻 項目 内 容

13:00~13:40

(40分) 開会

○ 開会挨拶

○ オリエンテーション

• 近年の豪雨災害などの写真と説明

• 訓練の進め方等説明

13:40~14:10

(30分)

訓練

○ 場面Ⅰ:平成18年7月鹿児島県北部豪雨災害を上回る

豪雨が降ったとした場合の地区の被害想定

状況付与→質問→グループ討論→発表→講師コメント

• 状況付与(講師): 1分

• 質問(講師): 1分

• グループでの検討: 20分

(グループごとに司会者、発表担当者、記録係を決める。

ただし、場面ごとに役割分担を交代する)

• 検討結果発表:グループごとに1~2分

14:10~14:40

(30分)

○ 場面Ⅱ:市による避難準備情報の発令に伴う住民の対

応行動予測 (20分)

状況付与→質問→グループ討論→発表→講師コメント

• 手順は同上

14:40~15:00

(20分)

○ 場面Ⅲ:市による避難勧告発令に対する住民等の対応

行動予測 (15分)

状況付与→質問→グループ討論→発表→講師コメント

• 手順は同上

ウ 参加者(訓練対象者)の編成

①参加者の編成

訓練参加者の編成では以下のポイントを配慮しました。

○ 訓練参加者は、避難所運営にかかわる関係職員数名のほか、主に地域住民(地区の

代表、民生委員、地域に在住している防災リーダーになる可能性のある人、消防団)

を中心としました。 ○ 風水害における避難問題を解決するには、消防団による誘導が重要となるので、消

防団員の参加を求めました。

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伊佐市防災担当者の呼びかけにより、14小学校校区(伊佐市全体計15校区)の住民

及び避難所運営にかかわる市職員等、合計61人の参加者を編成することができました。

詳細は表3-1-7のとおりです。

表3-1-7 伊佐市防災グループワークの参加者

区分 内訳 人数

① 民生委員(14名) - 14名

② 地区代表(14名)

大口校区コミュニティ代表 1名

大口東校区コミュニティ代表 1名

牛尾校区コミュニティ代表 1名

山野校区コミュニティ代表 1名

平出水校区コミュニティ代表 1名

羽月校区コミュニティ代表 1名

羽月西校区コミュニティ代表 1名

羽月北校区コミュニティ代表 1名

曽木校区コミュニティ代表 1名

針持校区コミュニティ代表 1名

本城校区公民館活動推進委員会代表 1名

湯之尾校区公民館活動推進委員会代表 1名

菱刈校区公民館活動推進委員会代表 1名

田中校区公民館活動推進委員会代表 1名

③ 伊佐市消防団(20名) - 20名

④ 伊佐湧水消防組合(2名) - 2名

⑤ 伊佐市職員 (11名)

西太良地区コミュニィ避難場所担当 2名

曽木地区青少年自立自興会館避難場所担当 2名

本城地区集会施設地区コミュニィ避難場所担当 2名

福祉事務所 2名

総務課 3名

合計 61名

33

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②グループ分け

今回の防災グループワークでは、実際に住んでいる地区の被害を想定し、住民の行動を

予測するため、できるだけ同じ地域に住む住民(5~7人程度)でひとつのグループを作

るようにしました。

また、市職員だけのグループを2つ編成し、特定の地区でなく、地域全体の被害や住民

の行動を予測させるようにしました。

グループ分けの結果は図3-1-2のとおりです。

図3-1-2 伊佐市防災グループワークにおけるグループ分け

行政グループI:計7人

• 伊佐市職員(福祉事務所)2人

• 伊佐市職員(総務課)3人

• 伊佐湧水消防組合2人

住民グループD:計6人

• 羽月西校区コミュニティ代表1人

• 羽月北校区コミュニティ代表1人

• 民生委員2人、消防団2人

住民グループB:計7人

• 牛尾校区コミュニティ代表1人

• 山野校区コミュニティ代表1人

• 民生委員3人、消防団2人

行政グループH:計6人

• 曽木地区青少年自立自興会館避難場所担

当2人

• 西太良地区コミュニィ避難場所担当2人

• 本城地区集会施設地区コミュニィ避難場所担

当2人

住民グループE:計6人

• 曽木校区コミュニティ代表1人

• 針持校区コミュニティ代表1人

• 民生委員2人、消防団2人

住民グループC:計6人

• 平出水校区コミュニティ代表1人

• 羽月校区コミュニティ代表1人

• 民生委員1人、消防団3人

住民グループA:計8人

• 大口校区コミュニティ代表1人

• 大口東校区コミュニティ代表1人

• 民生委員3人、消防団3人

住民グループF:計7人

• 本城校区公民館活動推進委員会代表1人

• 湯之尾校区公民館活動推進委員会代表1人

• 民生委員1人、消防団4人

住民グループG:計8人

• 菱刈校区公民館活動推進委員会代表1人

• 田中校区公民館活動推進委員会代表1人

• 民生委員2人、消防団4人

34

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(3)防災グループワーク実施の準備

ア 配付資料

訓練で配付した資料は、以下のとおりです。資料には、訓練開始前に配付しておく資料

(事前配付)と訓練の途中で配付する資料(途中配付)を用意しました。なお、訓練中、

地域防災計画、ハザードマップ等の各種資料の使用は原則禁止としました。

イ 資器材、小道具

準備した資器材と小道具類は表3-1-8のとおりです。

表3-1-8 準備した資器材・小道具

番号 資器材・小道具の内訳 数量

△ 1 パソコン

訓練方法や、被害想定状況、災害写真等の

説明 1式

△ 2 プロジェクター

△ 3 スクリーン

4 説明用パワーポ

イント

◎ 5 地図 グループ別に書き込み可能なもの 1枚/G

◎ 6

蛍光ペン

(地図上の書き

込み用)

●(薄い青):浅い浸水、冠水箇所(床下浸

水、通行可能だが冠水した道路、田畑)

●(濃い青):深い浸水・冠水箇所(床上や通

行不能な道路、深く冠水した田畑)

●(茶色):土砂災害(崖崩れ、土石流など)

色別に

2本ずつ/G

◎ 7 サインペン 黒●と赤● 色別に

1本ずつ/人

◎ 8 ポストイット 黄色●と桃色●

(注意事項、備考を書き、地図に張り付ける)

色別に

1冊ずつ/G

○ 伊佐市図上型防災訓練のプログラム(事前配付) (※参考資料1-1-1参照)

○ 訓練参加者名簿(事前配付)

○ 防災グループワークの記入用紙(途中配付) (※参考資料1-1-3参照)

35

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◎:他の市町村で実施する場合でも必ず用意すべきもの

△:他の市町村で実施する場合、必要に応じて用意するもの(より効果的な訓練が可能

となるが、なくても支障なく訓練が可能)

ウ 会場設営

訓練参加者人数に見合った広さの施設「大口元気こころ館」において、会場を設営しま

した。

I H G

舞   台

C B A

F E D

図3-1―3 防災グループワークの会場配置図

写真3-1-1 会場設営の様子

写真3-1-2 小道具の準備

(4)防災グループワークの実施

表3-1-6のタイムスケジュールに基づいて、訓練関係者による簡単なあいさつの後に、

訓練に関する説明(オリエンテーション)から開始しました。

ア オリエンテーション<訓練説明>

36

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訓練進行者が、参加者に対して、訓練に関する以下の事項を盛り込んだ説明を行いまし

た。説明の詳細は、配付資料(参考資料1-1-2)を参照ください。

イ 防災グループワークの開始・展開・まとめ・講評

(ア)状況付与及び質問の読み上げ

オリエンテーションの後、事前に作成した付与状況及び質問事項(表3-1―5参照)を、

場面ごとに参加者に提示し、読み上げました。参加者に確実に理解させるため、事前に準

備した資料(参考資料1-1-2参照)を読み上げの直前にグループごとに配付しました。

(イ)回答方法の説明

次に、参加者に対し、地図、付箋、記入用紙等への記入方法を説明しました。

(ウ)役割分担の決定

上記の説明を終え、参加者に以下の役割分担を指示しました。なお、役割は、場面ごと

に交代するようにしました。

○ グループリーダー:グループでの討論を進行させ、結果をとりまとめる役割

○ 発表担当者:グループ討論の結果を会場で発表する役割

○ 記録係:グループ討論の結果を地図へ書き込み、またはメモする役割

(エ)グループ討論及び討論結果の発表

役割が決まったら、訓練進行者の進行のもと、グループごとの参加者が与えられた「状

○ 訓練進行者の自己紹介

○ 最近の豪雨災害の特徴及び災害事例(課題と教訓)の紹介

○ 大規模風水害に対応するための図上型防災訓練の効用

○ 図上型防災訓練の種類、今回実施するグループワークの特徴及び進め方

写真3-1-3 グループワークの司会者によるオリエンテーション

37

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況付与」及び「質問事項」について、グループで討論を行いました。また、会場全体で共

有できるように、場面ごとに討論結果をまとめた上、発表してもらいました。

写真3-1-4 役割分担を決定する様子 写真3-1-5 グループ討論

写真3-1-6 討論結果の書き込み 写真3-1-7 討論結果の発表

38

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(オ)訓練進行者による講評

場面ごとの学習ポイントやグループでの討論結果などを踏まえ、訓練進行者による講評

を行いました。表3-1-9に、場面ごとの討論結果の例及び訓練進行者による講評のポ

イント(詳細は参考資料1-1-2参照)を示します。

表3-1-9 場面ごとの討論結果の例及び講評ポイント

グループごとの検討結果(例示)及び講評ポイント <場面Ⅰ>

住民向け 行政職員向け

a.あなたは平日の午後 1 時頃はいつもどこにい

ますか。

b. あなたは、気象台が出した、12 時 30 分発表

の「平成18年災害を上回る豪雨になる恐れがある」

という大雨に関する情報をどのようなルートから入

手すると思いますか?

検討結果の例:

○ テレビ、ラジオ、防災無線、携帯電話

○ 消防による呼びかけ

○ 建設課や農林課等による巡回

○ 地元区長、消防団等に連絡確認

c.「平成 18 年災害を上回る豪雨」に襲われた場

合、あなたがお住まいの地区では、最悪の場合、ど

こで、どのような被害が発生すると思いますか?

(地図への書き込み)

a.「平成 18 年災害を上回る豪雨」に襲われた場合、

市内で特に警戒すべき箇所(複数)はどこだと思いま

すか?(地図への書き込み)

b.この段階で、市全体の被災状況を的確に把握す

るためには、どのような対応が必要だと思いますか?

検討結果の例:

○ 建設課や農林課等による巡回

○ 地元区長等に連絡確認

○ 地元消防団に連絡確認

講評ポイント:

○ 情報入手の重要性

• 危険な兆候があれば、緊急情報がすぐ

に得られるようにしておくこと

講評ポイント:

① 災害イメージを持つことが重要

• 平成 18 年鹿児島県北部豪雨災害

をふり返る

• 防災マップの活用

• 災害はいつも急に襲ってくるので、

正確な予想は困難

② 避難の前にやるべきことがある

• 水に浸かったら困るもの(例:車、

貴重品等)を安全なところに移す

講評ポイント:

○ 市全体の災害をイメージできるか。

• 同時多発が多い。

• 想定通りには起きない被害について、

情報収集が重要。

• 災害状況は常に変化する。

• 情報が入ってこないところに特に注意

する。

• 想定される被害を念頭に置きながら情

報を収集し、入ってきた情報で全体被

害のイメージを絶えず修正し、正しい

被災イメージに基づき対応を判断。

講評ポイント:

○ 対応事項をマニュアル化し、訓練し

ておくこと。

• 電話による情報収集手順

• パトロールのルート

• ・・・

39

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グループごとの検討結果(例示)及び講評ポイント <場面Ⅱ>

住民向け 行政職員向け

a.あなたは土砂災害警戒情報と避難準備情報をほ

ぼ同時に知ったときにどのように対応しますか?

○ 避難準備をする、家族等人連絡

○ 地区内で連絡を取り合って避難する

○ 独居老人等要援護者に連絡をとり避難させる

○ 自治会長との連絡

○ 準備→避難→公民館(約束事)

○ 無線で情報伝達(予定)→小学校

○ 自治会のところに行って、無線(有線)で放送

○ 早目の避難を呼びかける

b.あなたがお住まいの地区の住民は情報をすぐに

は入手できない人がいるとしたら、それはどのような

人だと思いますか?

○ 高齢者、独居老人、寝たきりの人

○ 耳の遠い人、体の不自由な人

○ 無線のない地域の住民

c.避難の際手助けが必要な方を避難誘導するため

にどうしますか?

○ 個別訪問←担当

○ 消防サポーター女性必要

○ 自主防災組織で役割を決定

○ 集落で手助けする

d.これらの人が全員避難を完了するには、どのくら

いの時間がかかると思いますか?

○ 30 分~1時間、1時間~2時間

○ 時間は設定できない

a.(避難準備情報+土砂災害警戒情報)段階で

実際に避難するのはどのような住民の方だと思い

ますか?

○ 被災経験のある方、避難したことのある方

○ 歩ける方(近い人)

b.この段階では、避難所に市全体として何人くら

いの方が来ると思いますか?

○ 約 100 名

c.災害時要援護者の方は(避難準備情報+土砂

災害警戒情報)が出た段階でほとんど避難すると思

いますか?

○ 思わない

d.避難準備情報に加えて、市としてはどのような

追加的な働きかけが必要だと思いますか?

○ 校区や消防団等による確認

○ 地域の支援者に協力を求める

○ 自主防災組織、消防団等で担当を決めて各要

援護者を支援する

e.災害時要援護者のほとんどが避難を完了する

ためには、どのくらいの時間がかかると思います

か?

○ 想定できないが、かなり時間がかかるとみてい

講評ポイント:

○ 早めの避難が重要。

○ 空振りを許容する態度が安全を守る。

○ 災害イメージ、特に土砂災害警戒区域や

冠水危険のある避難路を頭に入れておく。

○ 近所の人と誘い合って避難、要援護者の

誘導も

○ 災害時要援護者の中には避難を拒否する

人がいるかもしれない→説得方法や近くへ

の退避も考える。

講評ポイント:

○ 災害時要援護者の誘導は意外に時

間がかかる。

○ 災害時要援護者の中に避難を拒否

する人への説得方法や近くへの退避

を考える。

○ 市は災害時要援護者の避難状況等

を迅速に把握し、場合によっては誘導

を支援する方法も考えておく。

講評ポイント:

○ 災害時要援護者の誘導は意外に時間がか

かる。

40

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グループごとの検討結果(例示)及び講評ポイント <場面Ⅲ>

住民向け 行政職員向け

a.あなたがお住まいの地区の人はすぐに避難すると

思いますか?

○ ほとんどの人がすぐに避難はしない。

○ 18 年災害で体験した人は自主避難もありうる。

○ 過去災害に遭った方はすぐに避難すると思う。

b.地区の住民ですぐには避難しない人が何人くらい

いると思いますか?

○ 1割程度(A地区)

○ 8割~9 割(B地区)

○ 7割くらい(C地区)

c.避難しない理由は何だと思いますか?

○ トイレの心配

○ 子どもとの連絡

○ 人の迷惑をかける。

○ 危険地帯にいないから。

○ 自分の家が安全だと思っている。

○ これまでに避難したことがない。

○ 高い所にいるから、大丈夫と思うから。

d.あなたが近所の人と一緒に避難しようとしたら、道

路(避難路)がひざ近くまで(50cm くらい)冠水し、水の流

れも速く危険そうです。そうなったら、あなたはどうします

か?

○ すぐに引き返す。

○ 高い場所を探して一時避難、ロープ等を準備。

○ 一緒に避難。

○ 引き返して、本部等に連絡して救助を求める。

○ 近くの高台・近所の 2階

○ 自宅待機(救助を頼んで)

○ 無理をしないで。

a.市民のほとんどはすぐに避難すると思いま

すか?

○ ほとんどの人が避難できないと思う。

○ 避難所が遠い所の人は避難しない。

b.ほとんどの市民が避難した場合、避難所は

満員で入れなくなりませんか?

○ 入れなくなる

○ 避難所の確保、人口からいって圧倒的に足り

ないので対策が必要。

c.避難しない市民の方は、どのくらいいると思

いますか?

○ 50%~70%

d.その理由は何だと思いますか?

○ 今まで被害にあっていない人は今度も大丈

夫という安心感から。

e.市民から電話で「避難しようとしたら、道路

(避難路)がひざ近くまで冠水している。それで

も、避難勧告にしたがって避難した方がよいの

か」と聞かれました。あなただったら、どう答えま

すか?

○ 2階建であれば 2階に避難

○ 高齢者だけでなく、若い方も避難できる状況

ではないと思うので、自宅に危険因子がなけ

れば自宅に待機し助けを待つよう対応する

講評ポイント:

○ 避難しない住民は少なくない。理由は色々。

○ 避難路が冠水し危険な状態になったときの対

応も考えておく。

• 安全な避難路/近くの高い建物等

• 日頃から避難路の安全性をチェックしておく

講評ポイント:

○ 避難しない住民は少なくない。理由は色々。

講評ポイント:

○ 避難しない住民は少なくな

い。理由は色々。

講評ポイント:

①避難路が冠水すると、危険な状態

になることを理解しておく。

• 道路と側溝や田んぼの境目がわか

らなくなることが多い。

• 避難途中で流れに足を取られ転倒

する危険もある。

②避難路が冠水した場合の避難呼び

かけの内容を考えておくことが必要。

• 例えば、2階もしくは近くの2階以上

の建物への退避や避難

41

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(5)訓練効果の検証及び今後の課題について

今回伊佐市において実施した防災グループワークの有効性について、以下の観点と方法

により検証しました。

① 訓練目的を達成できたかどうか(→学習ポイントと訓練結果との比較分析)

② 参加者の感想(→調査票によるアンケート)

③ 本ケーススタディの最終的目標(地方自治体の防災担当者が自ら企画実施できるこ

と)は達成可能かどうか(→防災担当者への意見聴取)

それぞれの検証結果を以下にまとめます。

ア 訓練目的(具体的学習ポイント)を踏まえた討論結果の分析

参加者の討論結果または訓練進行者による講評内容を用いて、事前の企画段階で訓練目

的に応じて定められた学習ポイントと照らし合い、目的の達成状況を分析しました。結果

を表3-1-10のとおりです。

表3-1-10 訓練目的の達成状況の分析結果

場面設定 具体的学習ポイント 参加者の討論結果または

講師による講評内容(ポイント)

訓練目的の達

成判断

場面Ⅰ:

自主避難の呼

びかけ段階

主な作業内容:

被害想定

住民向け:

① 災害イメージの形成

• どこでどういう被害がい

つ起きそうなのかの想定

• 情報入手の方法

② 応急活動のイメージ形成

• 避難の前にやるべきこと

① 災害イメージの形成

• 地図上で被害想定の書き込みがで

きた。

• 情報入手について、参加者から、

テレビ・ラジオ、防災無線、携帯電

話などの方法が挙げられた。

② 応急活動のイメージ形成

• 避難前にやるべきことについて、講

師からのコメントがあった。

職員向け:

① 災害イメージの形成

• 市域のどこでどのような

災害が起きるかの想定

② 応急活動のイメージ形成

• 情報収集の重要性

① 災害イメージの形成

• 地図上で市全体の被害想定の書

き込みができた。

② 応急活動のイメージ形成

• 参加者から、市全体の被災状況を

把握する(情報収集)ための方法が

取り上げられた。また、講師から情

報収集の重要性及びこれらの対応

事項をマニュアル化し、訓練してお

くとのコメントがあった。

42

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場面Ⅱ:

避難準備の呼

びかけ段階

主な作業内容:

市による避難

準備情報の発

令に伴う住民

の対応行動予

① 応急活動のイメージ形成

• 近所の人と誘い合って、

早めの避難が重要。

• すぐに情報を入手でき

ず、避難の際手助けが

必要な要援護者の存在

• 災害時要援護者の誘導

には時間がかかる。

• 災害時要援護者の避難

状況及び必要な対応

② 普段できる被害軽減策

• 空振りを許容する。

• 災害イメージを頭に入れ

ておくこと

① 応急活動のイメージ形成

• 参加者から、地区内で(要援護者

等に)連絡を取り合って避難するな

どの意見があった。

• 参加者から、災害時要援護者の具

体像が取り上げられた。

• 参加者から、災害時要援護者の誘

導に長く2時間もかかるとの意見が

あった。

• 参加者から、災害時要援護者は、

(避難準備情報と土砂災害警報情

報が出た段階で)殆ど避難しない。

自主防や、消防団等による支援が

必要との意見があった。また、講師

から、市は災害時要援護者の避難

状況等を迅速に把握すべきとのコ

メントがあった。

② 普段できる被害軽減策

• 講師から、空振りを許容する態度が

安全を守るとのコメントがあった。

• 講師から、事前に土砂災害警戒区

域や冠水危険のある避難路を頭に

入れておくことや、事前に災害時要

援護者の誘導支援方法を考えてお

くとのコメントがあった。

場面Ⅲ:

避難の呼びか

け段階

主な作業内容:

市による避難

勧告発令に対

する住民等の

対応行動予測

① 応急活動のイメージ形成

• いろいろな理由で、避難

しない住民が存在する。

• 避難路が冠水し危険な

状態になったときの対応

② 普段できる被害軽減策

• 日頃から避難路の安全

性のチェックをしておく。

• 市による避難呼びかけの

内容を事前に考えてお

く。

① 応急活動のイメージ形成

• 参加者から、「自分の家が安全だと

思う」などの理由で、殆どの人が避

難しないとの意見があった。

• 講師から、避難路が冠水した場合

の危険性に関するコメントがあっ

た。また、参加者から、避難路が冠

水し危険な状態になったときに、

「近所の2階建や高い場所を探す」

などの対応行動が挙げられた。

② 普段できる被害軽減策

• 講師から、日頃から避難路の安全

性をチェックしておくことや、市は避

難路が冠水した場合の避難呼びか

けの内容を考えておく必要性に関

するコメントがあった。

以上の整理、分析を踏まえ、今回実施した伊佐市防災グループワークは、事前のねらい

とおりに目的が達成できたと考えられます。

43

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イ 参加者の感想

防災グループワークを実施した後に、参加者に対して以下の視点を盛り込んだ調査票(参

考資料2-1参照)により、感想を記してもらいました。

① 訓練の難易度(参加者の知識レベルに合っているかどうか)

② 訓練プログラムを気に入っていたか(会場、資機材等の訓練環境はどうだったか、訓

練時間は適切だったか、参加して良かったか、今後の必要性など)

③ 訓練において何を学習したか?(災害イメージの形成ができたか、印象に残ったキー

ワードとは何か)

アンケートの集計結果は以下のとおりです(N:有効回答数)。

(ア)防災グループワークについて、内容的に難しかったですか?

N=43 0人

(0%)

2人

(5%)

32人

(74%)

7人

(16%)

2人

(5%)

(イ)風水害イメージへの理解を深めるために役立ちましたか?

N=43 1人

(2%)

0人

(0%)

4人

(9%)

16人

(37%)

22人

(51%)

(ウ)訓練の環境(会場、器材等)はどうでしたか?

① 会場について:

N=43 1人

(2%)

0人

(0%)

3人

(7%)

11人

(26%)

28人

(65%)

1 3 5 42

易しすぎた ちょうど良い 難しすぎた

1 3 5 42

いいえ 分からない はい

1 3 5 42

わるい 分からない よい

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② 資機材等について:

N=38 1人

(3%)

1人

(3%)

8人

(21%)

11人

(29%)

17人

(45%)

(エ)訓練の時間は適切でしたか?

N=39 1人

(3%)

2人

(5%)

25人

(64%)

9人

(23%)

2人

(5%)

(オ)訓練の総合的な評価について

① 今回の訓練に参加してよかったと思いますか?

N=39 0人

(0%)

0人

(0%)

4人

(10%)

8人

(21%)

27人

(69%)

② 今後もこのような訓練が必要だと思いますか?

N=39 0人

(0%)

0人

(0%)

3人

(8%)

7人

(18%)

29人

(74%)

(カ) 感想文:今回の訓練のキーワード(あなた自身が感じた言葉)を のなか

に入れてください。次にそのキーワードを選んだ理由を記述してください。

1 3 5 42

わるい 分からない よい

1 3 5 42

短すぎた 適切 長すぎた

1 3 5 42

思わない どちらともいえない 思う

1 3 5 42

思わない どちらともいえない 思う

45

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キーワード 選んだ理由

(HUGと)共通

訓練

訓練の必要性

• いざという時、スムーズな行動ができるから

• 訓練を重ねること

災害 災害は忘れた頃にやってくる。

自分 自分が元気で動ければ家族、地域で助けられる事もでき

る。

責任者 しっかりした責任者が必要です。

防災グループワークについて

組織 いざという時の繋がり、信頼関係、教えたり知らせたり、早め

の判断

日常 毎日の生活の天気予報に気をつけておくと変化が分かる。

空振り 住民とそのような状況になったことがある。空振りを恐れず

指示を出したい。

避難、早めの避難 浸水道路等の安全な時に避難しやすい。

適切な判断 情報キャッチに基づき判断し行動する。

避難路の確保 想定以上の雨量の時に高台への道路を確保する。

避難勧告 自主防災組織で日常的に話し合いをする。

以上のアンケート調査の結果、今回の防災グループワークは、難易度については「ちょ

うど良い」、会場等の訓練環境(HUG(ハグ)と共通)については「良い」、訓練時間につ

いては「適切」で、「参加して良かった」(HUG(ハグ)と共通)、「今後もこのような訓練

が必要」(HUG(ハグ)と共通)との回答が大半を占めました。

また、参加者は、印象に残ったキーワード及びその理由について、

• 「災害は忘れた頃にやってくる」

• 「空振りを恐れず」

• 「早めの避難」

• 「情報キャッチに基づき適切な判断」

• 「避難路の確保」

• 「日常的に話し合い」

• 「訓練の必要性」など

を挙げ、避難所設置運営マニュアルの作成に向けての前段階として、「災害イメージの形成」、

「応急対策活動のイメージ形成」、「普段準備しておく事項(被害軽減策の明確化)」という

具体的な訓練ねらいが十分に達成できていると考えられました。

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ウ 防災担当者自ら企画実施する可能性及び課題について

本ケーススタディの最終目標は、地方公共団体の防災担当者が自ら企画実施できること

にあります。この件について、伊佐市防災担当者に対して意見を聞きました。主な意見は

次のとおりです。

① 防災グループワークの訓練効果について:

• 災害の特徴を学習した後、住んでいる地域の特性を考えることにより、参加者の

防災意識が高まる。

• 与えられた情況を、想像しながら訓練することにより、参加者の災害に対する危

険予知能力が高まる。

• 伊佐市の訓練担当者も企画・実施に関わることにより、良い勉強となった。

② 地方自治体の担当者が自ら企画・実施の可能性・課題:

• 今回のケーススタディ資料を再利用し、ある程度企画、実施できると思うが、地

域性を書き換えて、新たにシナリオや説明資料等を作成するのは困難と思われる。

(特に講評時の進行者の役は、誰にでもできないのでは)

• オリエンテーションの部分の説明(豪雨災害の特徴、課題等)について、自分の

地域における過去の災害の資料収集はある程度できると思うが、他市区町村の資

料収集及び説明は難しいと思われる。

• 説得力のある防災グループワークを進めるには、経験の蓄積が必要である。

今後、今回ケーススタディの資料を再利用し、オリエンテーション及び講評での説明方

法などを明示することにより、地方公共団体の防災担当者による実施が十分可能であるこ

とが示唆されます。

また、既存資料の再利用による実施(経験)を積み重ねることにより、災害対応能力及

び訓練の企画実施能力の向上も期待できると考えられます。

47

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第Ⅱ部:避難所運営ゲームHUG(ハグ)

(1)HUG(ハグ)の進め方の概要

避難所運営ゲームHUG(ハグ)とは、参加者が避難者の年齢、性別、国籍やそれぞれ

が抱える事情が書かれたカードを、避難所に見立てた平面図にどれだけ適切に配置できる

か、また避難所で起こる様々な出来事にどう対応していくかを模擬体験するゲームです。

HUG は避難所(Hinanzyo)、運営(Unei)、ゲーム(Game)の略で、英語で抱きしめるとい

う意味で、避難者をやさしく受け入れる避難所のイメージです。ゲームの基本的進め方は

以下のとおりです(図3-1-4)。

① 進行者(ゲームの進行役)が避難者の情報等が書き込まれたカードや、何らかの事

態発生を知らせるカードを、参加者に時間的余裕を与えることのないように、次々

に読み上げる。

② 参加者は読み上げられた情報に基づき、「避難者カード」の場合は、配置を決め、そ

の場所にカードを置き、「イベントカード」の場合は、発生事態への対応を決定して

いく。

③ ゲーム終了後、避難者の配置や事態対応の是非について話し合い、よりよい避難所

運営方法を学ぶ。

図3-1-4 HUG(ハグ)の実施手順

避難者カード例

川東地区 床下さん

【男40歳】 世帯主、妻、長男、長女

世帯主は糖尿病、長男はひきこもり。柴

犬1匹を連れている。車で来た。

写真3-1-8 カードの配置

①進行者が読み上げる

②グループ討論

③討論結果の発表

④まとめ

写真3-1-9 討論結果の発表

48

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(2)HUG(ハグ)の企画

ア シナリオ作成

第一部の「防災グループワーク」では、実際に住んでいる地域の被害を想定し、住民の

対応行動を予測するため、当該市区町村の災害特性、防災体制の現状などを反映したシナ

リオ作成が求められました。一方、HUG(ハグ)は、仮想の地区を設定し、擬似的な災

害状況でのシナリオを作成することが可能です。今回の伊佐市ケーススタディにおけるH

UG(ハグ)のシナリオ概要は、表3-1-11のとおりです。

表3-1-11 HUG(ハグ)のシナリオ設定の概要

設定事項 設定内容

対象地域 川上、川西、川東、川中の4地区からなる仮想地域 (図3-1-5参照)

地域概況 人口、世帯

数、建物状

況、高齢者

等の状況

• 各地区に10戸から20戸の班が12班

• 農村と住宅団地、マンション、アパートが混在

• アパートには派遣社員や外国人が多い。

• 高齢化が進んでいる。

想定日時 7月23日(金)

時間帯 午後4時から夜11時まで

被害想定 全体状況 H18年災害を参考に、もう少し厳しい状況を想定した降雨、河

川氾濫シナリオにする。

訓練まで

の状況

(前提)

気象 気象注意報、警報、土砂災害警戒情報等の提示

河川状況 荒田天神橋等の増水状況(写真による提示)

水害状況 道路冠水、床上床下浸水(写真による提示)

土砂災害 土砂災害発生(写真による提示)

対象避難

所の状況

設定

浸水の有無 訓練の対象避難所は大丈夫だが、地域の特定箇所(一時避難

所)が浸水し、そこの避難者が対象避難所に運ばれる。

ライフライン ガス、電話は使用可能で、途中から断水、停電する。

避難者の

設定

避難者氏名 水害関係の用語を

使用する

例:豪雨さん

避難者の行

動パターンと

自宅被害状

自主避難 被害なし、床下浸水

避難勧告で避難 被害なし、床下浸水

困難な状況で避難 床下床上浸水

救出されて避難 床下床上浸水、流失

49

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(ア)仮想地域の設定

仮想地域において、川上、川西、川東、川中の4地区を設定し、2本の河川に、それぞ

れ「東之川」、「西之川」と名付けました(図3-1-5参照)。

川東

避難

川西

川中

川上

西之川 東之川

図3-1-5 仮想地域のイメージ

(イ)訓練までの前提状況の設定

前述の防災グループワークとセットで行うことを考慮し、防災グループワークにおける

前提条件の設定を踏まえ、HUG(ハグ)における前提条件を以下のとおり設定しました。

今日は、7月 23 日(金)、ここは伊佐小学校(避難所)<非常用発電装置なし、仮設ト

イレなし、テント(3.5m×5.4mが2つ)、調理室なし、備蓄食糧なし、救護所設置しな

い。体育館、教室を借りている状況>

・ 時間は午後4時から夜11時の間。

・ 3日前から雨が降り続いている。

・ 昨夜 10時に大雨洪水注意報、今朝 10時に警報になった。

・ 12時 30分に記録的短時間大雨情報、その後、相次いで峠の道が雨量規制で通行

止めになった。

・ 在来線、新幹線が運転見合わせ。

・ 天気予報では、まだまだ今後大雨になると言っている。

・ 気温は31度、夜でも29度。非常にむし暑く、じっとしていても汗でべとべと。

・ 道路は冠水し、河川が増水している。

・ 床上浸水が始まって、土砂災害が起きている。

・ 上記条件が重なりたくさんの人が避難所にきている。

・ 電気、ガス、携帯、電話、インターネット、メールが現在まだ使える環境。

・ 避難所担当職員2人、応援を頼まれた自主防災会役員4人、計6人で避難所を開

設した。

50

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(ウ)全体のシナリオ(骨子)の設定

次に、前提条件を踏まえ、全体のシナリオ(骨子)(図3-1-6参照)を以下のとおり設

定しました。

まず川中地区に避難準備情報が出され、行政職員2人と避難所の運営補助を依頼された

自主防災会の役員4人、計6人で避難所を開設したところに、災害時要援護者の人々が早

期避難してきた。

① そのうち、川上地区に土砂災害警戒情報が発表され、実際に土砂災害が起こる。

② 一方で、東之川が増水し避難勧告が発令され、避難が始まる。

③ そうこうしているうちに、西之川の上流で溢水が発生し、川西地区に避難勧告が出さ

れる。

④ 以上により、全地区の住民が避難所にやってくる。外国人バス旅行者や帰宅困難者も

避難してくる。

⑤ 近くの一時避難所の公民館が浸水し、避難者が対象避難所に移動してくる。

⑥ 最終的には、避難者がたくさんやってくる。

⑦ 対象避難所の校庭が浸水し始め、停電する。

図3-1-6 伊佐市水害HUG(ハグ)における全体シナリオの設定

気象情報

河川情報 西川

東川

列車運休

道路規制

水道

電気

土砂災害

住民避難

注意報

運休

警報 大雨に関する情報

土砂災害警戒情報

破堤かどうか不明

断水

停電

記録的短時間大雨情報

雨量規制   道路冠水  交通規制  アンダーパス  道路被害

地区別に時間のずれ 自主避難

避難準備

避難勧告

避難指示

住民連絡網

消防団個別訪問

避難所開設

   道路冠水  内水被害  溢水

       道路冠水  内水被害      溢水

51

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(エ)詳細なシナリオ(HUGのカード)作成

次に、設定した全体シナリオを踏まえ、詳細なシナリオ(HUGのカード)を作成しま

した。詳細シナリオを作成する際に、避難者個々が抱える事情や避難所で起こる出来事だ

けでなく、気象や内水・外水位等の状況変化、早めに避難する人や避難勧告が発令されて

も避難しない人の存在、避難途上の被災等様々な状況変化と避難行動の判断の難しさを加

え、水害時の特徴を出すよう工夫しました。

なお、カードを市区町村職員が自作することは困難ですので、様々なパターンを含む標

準セットを作成しておき、その中から当該市区町村にとって馴染まない内容のカードを引

き抜いて実施することが市区町村職員にとって負担が少なく有効な方法だと考えられます。

カードは「避難者カード」(図3-1-7参照)と「イベントカード」(図3-1-8参照)

の2種類を作成しました。

それぞれの作成手順は以下のとおりです。

① 「避難者カード」には、住所、班名、姓、性別、年齢、世帯構成、自宅の被害状況及

び特記事項を記述しました。 • 住所の地番は、姓が過去の台風の場合はその台風が襲来した西暦にしました。

• ゲームを通じて気象や水害関係用語を学習できるように、気象や水害用語を用いて、姓

を作成しました。

• 性別は、半々に設定しました(男性は青色、女性は赤色で表示)。

• 年齢は、生後10日から102歳までの範囲としました。

• 世帯構成の本人部分に下線を引くようにしました。

• 家族全員が揃って避難するとは限らないため、世帯構成員の一部が先に避難してきて、

後から残りの世帯構成員が避難してくるような設定も加えました。

• 特記事項欄には、避難した理由と方法を記述しました。

• その他、ペット連れ、持病、けが、妊娠等の避難者の状況設定について、過去の災害事

例を参考に設定していきました。

148 世帯番号【37】 149 世帯番号【37】 150 世帯番号【37】

川上943 【川上7班】 川上943 【川上7班】 川上943 【川上7班】

崩土さん 崩土さん 崩土さん

【男66歳】全壊 【男41歳】全壊 【女41歳】全壊

父、世帯主、妻 父、世帯主、妻 父、世帯主、妻

泥だらけで救助され

てきた。飼い犬のことを

心配している。

泥だらけで救助され

てきた。飼い犬のことを

心配している。

泥だらけで救助され

てきた。飼い犬のことを

心配している。

148 世帯番号【37】 149 世帯番号【37】 150 世帯番号【37】

川上943 【川上7班】 川上943 【川上7班】 川上943 【川上7班】

崩土さん 崩土さん 崩土さん

【男66歳】全壊 【男41歳】全壊 【女41歳】全壊

父、世帯主、妻 父、世帯主、妻 父、世帯主、妻

泥だらけで救助され

てきた。飼い犬のことを

心配している。

泥だらけで救助され

てきた。飼い犬のことを

心配している。

泥だらけで救助され

てきた。飼い犬のことを

心配している。

165 イベント番号【60】

災害対策本部で

すが、明朝給水タ

ンク車を回します。

どこに駐車すれば

よいか決めておい

てください。

165 イベント番号【60】

災害対策本部で

すが、明朝給水タ

ンク車を回します。

どこに駐車すれば

よいか決めておい

てください。

図3-1-7 避難者カードの例示 図3-1-8 イベントカードの例

52

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② 「イベントカード」に、過去の災害で起きた事例を参考にして、避難所運営の中で起

こりうるイベントを作成していきました。 • イベントカードにも文字数の制限がありますので、長文の場合は記載内容を要約して記

述しました。

• 状況変化に関するシナリオもイベントカードとして作成しました。

③ カード1行目左上に通し番号、右に「世帯番号」、「イベント番号」を記入し、順番ど

おりに「避難者カード」、「イベントカード」を並べました。

④ 印刷、裁断:カード1枚 1.5m×2.0m と想定して(面積が3m2となり、避難者1人当 たりの必要面積と同等)印刷、裁断しました。(表3-1-12参照)

表3-1-12 HUG(ハグ)のカードの例示 1  世帯番号【1】 2  世帯番号【2】 3  世帯番号【2】 4  世帯番号【2】

川中3249 【川中6班】 川中3250 【川中6班】 川中3250 【川中6班】 川中3250 【川中6班】

気圧きあつ

さん 治水さんちすい

治水ちすい

ちゃん 治水ちすい

ちゃん 【女75歳】自宅異常なし 【女68歳】自宅異常なし 【女4歳】自宅異常なし 【女2歳】自宅異常なし

母、世帯主、妻 世帯主、妻、孫、孫 世帯主、妻、孫、孫 世帯主、妻、孫、孫

 3人連れのおばあちゃん同報無線放送があったので、近所の年寄り3人が孫を連れ誘い合わせて徒歩で避難してきた。

 3人連れのおばあちゃん 同報無線放送があったので、近所の年寄り3人が孫を連れ誘い合わせて徒歩で避難してきた。

3人連れのおばあちゃん 同報無線放送があったので、近所の年寄り3人が孫を連れ誘い合わせて徒歩で避難してきた。

3人連れのおばあちゃん 同報無線放送があったので、近所の年寄り3人が孫を連れ誘い合わせて徒歩で避難してきた。

5  世帯番号【3】 6  イベント番号【1】 7  世帯番号【4】 8  世帯番号【4】

川中3251 【川中6班】 川中3252 【川中6班】 川中3252 【川中6班】

霧雨きりさめ

さん 長雨ながあめ

さん 長雨ながあめ

ちゃん 【女85歳】自宅異常なし 【女28歳】自宅異常なし 【女2歳】自宅異常なし

父、母、世帯主 世帯主、妻、長女 世帯主、妻、長女

 3人連れのおばあちゃん 同報無線放送があったので、近所の年寄り3人が孫を連れ誘い合わせて徒歩で避難してきた。

 2歳の幼児を連れた妊娠6ヶ月の妊婦。身重で心配なので車で送ってもらった。夫は後から来る。

 2歳の幼児を連れた妊娠6ヶ月の妊婦。身重で心配なので車で送ってもらった。夫は後から来る。

 9  世帯番号【5】  10  世帯番号【5】 11  イベント番号【2】 12  世帯番号【6】

川中3253 【川中6班】 川中3253 【川中6班】 川中3254 【川中6班】

梅雨ばいう

さん 梅雨ばいう

さん 水位すいい

さん 【男83歳】自宅異常なし 【女81歳】自宅異常なし 【女31歳】床下浸水

世帯主、妻 世帯主、妻世帯主、妻、長男、次男、長女

 2人暮らしの老夫婦西之川付近の平屋建ての家に住み不安なので早めに避難してきた。

 2人暮らしの老夫婦西之川付近の平屋建ての家に住み不安なので早めに避難してきた。

 5歳、3歳、1歳の子を連れた母。家族とは別に早めに避難してきた。車で来た。

13  世帯番号【6】 14  世帯番号【6】 15  世帯番号【6】 16  イベント番号【3】

川中3254 【川中6班】 川中3254 【川中6班】 川中3254 【川中6班】

水位すいい

ちゃん 水位すいい

ちゃん 水位すいい

ちゃん 【男5歳】床下浸水 【男3歳】床下浸水 【女1歳】床下浸水

世帯主、妻、長男、次男、長女

世帯主、妻、長男、次男、長女

世帯主、妻、長男、次男、長女

 5歳、3歳、1歳の子を連れた母。家族とは別に早めに避難してきた。車で来た。

 5歳、3歳、1歳の子を連れた母。家族とは別に早めに避難してきた。車で来た。

 5歳、3歳、1歳の子を連れた母。家族とは別に早めに避難してきた。車で来た。

 もしもし、川中地区の水位です。もう誰か避難していますか。周辺の道路が冠水しはじめています。

もしもし、川中地区の伊勢湾です 。同報無線で避難の準備をするよう放送がありましたが、何を準備すればいいですか?

  とりあえず受付を作ろう!

53

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(参考)避難者カード、イベントカードの内容(抜粋)

番号 住所 名前 性別年齢 世帯構成 特記事項

1 川中 3249

【川中 6 班】 気圧きあつ

さん 【女 75 歳】母、世帯

主、妻

3人連れのおばあちゃん 同報無線放送があった

ので、近所の年寄り3人が孫を連れ誘い合わせて

徒歩で避難してきた。

6

もしもし、川中地区の水位です。もう誰か避難して

いますか。周辺の道路が冠水しはじめています。

7 川中 3252

【川中 6 班】 長雨ながさめ

さん 【女 28 歳】世帯主、

妻、長女

2歳の幼児を連れた妊娠 6 ヶ月の妊婦。身重で心

配なので車で送ってもらった。夫は後から来る。

16 とりあえず受付を作ろう!

17

もしもし、川中地区の室戸です。寝たきりの老人を

抱えていますが、どうすればいいですか。

21 川中 3256

【川中 6 班】 左岸さがん

さん 【男 65 歳】世帯主、

人工透析の60代男性と妻。次の透析予定日は明

後日。いつでも行けるように車で来た。

25 川中 3257

【川中 6 班】 内水ないすい

さん 【女 93 歳】母、 世帯

主、妻

ゴールデンレトリバーを連れて来た。おとなしいの

で、軒下に置いて欲しいと言っている。

29 川中 3258

【川中 6 班】 外水がいすい

さん 【男 40 歳】

世帯主、

妻、長

男、次男

車で来た。長男が自閉症なので、車の中にいた

い。

40 川上 932

【川上 6 班】 寒冷かんれい

さん 【男 88 歳】

父、母、

世帯主、

避難勧告が出たので、車で避難してきた。父は車

椅子利用。

47 YY新聞ですが、避難所運営本部はどこですか。

50 川上 934

【川上 6 班】 気き

流りゅう

さん 【男 40 歳】世帯主、

妻、長男 世帯主は酒くさい。妻は看護師。徒歩で来た。

53 たばこはどこで吸えばいいですか。

54

近所のまごごろスーパーですが、お惣菜30食分

を提供します。みなさんでお召し上がりください。

55 川中 3259

【川中 7 班】

積乱雲せきらんうん

さん

【女 75 歳】 世帯主 ひとり暮らしの高齢者、歩行困難。近所の人の車

に同乗して来た。座敷犬1匹を連れている。

56 川上 935

【川上 7 班】 風速ふうそく

さん 【女 84 歳】【女84歳】

床上浸水

世帯主は糖尿病、長男はひきこもり。柴犬1匹を

連れている。車で来たので、その中で暮らしたい。

60

すいません、預金通帳と印鑑を持ってくるのを忘

れました。ちょっと取りにいってきます。

61 川中 3260

【川中 7 班】 上陸じょうりく

さん 【男 91 歳】

祖父、

母、世帯

世帯主の母は認知症、またトイレが大変。車で来

た。

54

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64 川上 936

【川上 7 班】 水系すいけい

さん 【男 48 歳】世帯主、

妻、長男

夫婦とも全盲の鍼灸(しんきゅう)師と子供。夫は

盲導犬を連れ、妻は白杖を使っている。徒歩。

67

もしもし、体の不自由な年寄りを抱えていますが、

避難所に身体障害者用トイレはありますか。

68 川上 937

【川上 7 班】 流域りゅういき

さん 【男 52 歳】

世帯主、

長男、長

世帯主は酸素ボンベを携帯している。歩くのが大

変なので、車できた。隣の床下さんの場所を確保

しておきたい。

71

熱と咳きがひどいんですが、どこかに部屋はあり

ませんか。

72

災害対策本部です。着替えの備蓄はありません。

大変かと思いますが、びしょ濡れになった避難者

に風邪をひかせないように気をつけてください。

74

災害対策本部です。かなり状況が深刻です。大き

な災害になるかもしれません。大勢の避難者が発

生するかもしれませんが、よろしく頼みます。

75

川中地区の自治会長です。梅雨さんのおじいちゃ

んと、内水さんのおばあさん、冠水さんのおばあさ

んは避難していますか。

76

災害対策本部です。川東地区に避難勧告を出し

ました。受け入れ準備をお願いします。

83 川東 532

【川東 5 班】

堤内地ていないち

【男 29 歳】

世帯主、

妻、長

女、長男

長女が高熱と咳。インフルエンザか。ダックスフン

ト1匹を連れ車で来た。

87 川上 939

【川上 7 班】

堤外地ていがいち

【女 102 歳】

母の母、

母、 世帯

主、妻

102歳の老人(母の母)と避難。母は、歩行困難。

車で避難してきた。高血圧の薬をなくして困ってい

る。

133 川中 3264

【川中 7 班】 無線むせん

さん 【女 73 歳】 世帯主

ひとり暮らしの高齢者、座敷犬1匹と避難。話が通

じない、認知症の疑いあり。消防団に救助されて

きた。

133

川西地区の豪雨です。家の前の道路がくるぶしく

らいまで水に浸かっています。避難所までの道は

大丈夫でしょうか。

142

近所のアシスト工業ですが、備蓄している毛布25

人分を提供します。

143

熱と咳きがひどいんですが、どこかに部屋はあり

ませんか。

237 ホームレス 【男?歳】 ホームレ

大雨で居場所がなくなったので避難所に来た。何

か食べ物はないかと言っている。

(注)番号の網掛けはイベントカード

55

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イ タイムスケジュール

伊佐市におけるHUG(ハグ)の実施タイムスケジュールは、表3-1-13のとおりで

す。

表3-1-13 HUG(ハグ)の実施タイムスケジュール

時 刻 項目 内 容

15:10~15:40

(30分) 開会 ○ HUG(ハグ)の概要、前提条件等の説明

15:40~15:45

(5分) アイスブレイキング ○ 自己紹介等

15:45~16:45

(60分) HUG開始展開 ○ カードの読み上げ、討論

16:45~16:50

(5分) HUG終了まとめ ○ 意見交換、まとめ

16:50~17:00

(10分) 講評 ○ 講評

ウ 参加者(訓練対象者)の編成

HUG(ハグ)では、仮想の地域における状況を設定しているため、できるだけ様々な

地区の参加者が混在するよう、また、男女の考え方の違いを理解することができるよう、

男女が混じるグループ編成としました。その結果、図3-1-9の編成としました。

56

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図3-1―9 伊佐市HUG(ハグ)におけるグループ編成

行政グループI:計6人

• 山野校区コミュニティ代表1人

• 菱刈校区公民館活動推進委員会代表1人

• 民生委員1人、消防団2人

• 市職員(総務課)1人

住民グループD:計7人

• 羽月北校区コミュニティ代表1人

• 民生委員2人、消防団2人

• 伊佐湧水消防組合1人

• 市職員(曽木地区青少年自立自興会館避難

場所担当)1人

住民グループB:計7人

• 羽月校区コミュニティ代表1人

• 民生委員2人、消防団3人

• 市職員(西太良地区コミュニィ避難場所担

当)1人

行政グループH:計7人

• 牛尾校区コミュニティ代表1人

• 湯之尾校区公民館活動推進委員会代表1人

• 民生委員1人、消防団2人

• 市職員(福祉事務所)1人

• 市職員(総務課)1人

住民グループE:計7人

• 曽木校区コミュニティ代表1人

• 民生委員2人、消防団2人

• 伊佐湧水消防組合1人

• 市職員(本城地区集会施設地区コミュニィ

避難場所担当)1人

住民グループC:計7人

• 羽月西校区コミュニティ代表1人

• 民生委員2人、消防団3人

• 市職員(曽木地区青少年自立自興会館避難

場所担当)1人

グループA:計7人

• 平出水校区コミュニティ代表1人

• 田中校区公民館活動推進委員会代表1人

• 民生委員2人、消防団2人

• 市職員(西太良地区コミュニィ避難場所担当)

1人

住民グループF:計6人

• 大口校区コミュニティ代表1人

• 針持校区コミュニティ代表1人

• 民生委員1人、消防団2人

• 市職員(本城地区集会施設地区コミュニィ

避難場所担当)1人

住民グループG:計7人

• 大口東校区コミュニティ代表1人

• 本城校区公民館活動推進委員会代表1人

• 民生委員1人、消防団2人

• 市職員(福祉事務所)1人

• 市職員(総務課)1人

57

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(3)HUG(ハグ)実施の準備

ア 配付資料

HUG(ハグ)において配付した資料は、以下のとおりです。このうち、訓練開始前に

事前配付資料を参加者の席に配付しました。

イ 資器材、小道具

HUG(ハグ)実施のため準備した資器材と小道具は表3-1-14のとおりです。

表3-1-14 準備した資器材・小道具

番号 資器材・小道具の内訳 数量

△ 1 パソコン

訓練方法や、被害想定状況、災害写真等の

説明

1式 △ 2 プロジェクター

△ 3 スクリーン

◎ 4 HUG説明用パ

ワーポイント 1式

△ 5 マイク 利用すると説明内容が聞き取りやすくなる 1式

△ 6 延長コード 1式

◎ 7 油性ペンまたは

マーカー 6色セットや12色セットがお勧め 1セット/G

△ 8 古新聞紙 用紙の下に敷くと机が汚れない 適宜

◎ 9 メモ用紙 付箋またはポストイット 1冊/G

白紙(A5) 3~4枚/人

◎ 10 情報共有道具

移動式のホワイトボード、黒板、ついたて

または模造紙等の大きな紙(写真参照)

1/G又は

1/2G

白紙(A4) 30枚/G

◎:他の市町村で実施する場合でも必ず用意すべきもの

△:他の市町村で実施する場合、必要に応じて用意するもの(より効果的な訓練が可能

となるが、なくても支障なく訓練が可能)

○ アイスブレイキングシート(事前配付) ○ 各用紙セット(事前配付)

• 体育館用紙 • 教室用紙 • 敷地図、間取図

○ カード(途中配付)

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*情報共有道具の例

ウ 会場設営

(前述の防災グループワークと同様ですので省略します。)

(4)HUG(ハグ)の実施

表3-1-13のタイムスケジュールに基づいて、訓練進行者によるゲームに関する説明

(オリエンテーション)から開始しました。

ア オリエンテーション<訓練説明>

訓練進行者は、参加者に対して、HUG(ハグ)に関する以下の事項を盛り込んだ説明

を行いました。説明内容の詳細は参考資料1-1-4を参照ください。

写真3-1-10 HUG(ハグ)の訓練進行者によるオリエンテーション

○ 訓練進行者の自己紹介

○ 災害時の避難所運営の実態及び問題点

○ HUG(ハグ)の特徴及び進め方

○ ゲーム実施の前提条件

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イ アイスブレイキング(簡単な自己紹介)

アイスブレイキングとは、氷を壊す、心の氷を壊してしまおうということで、簡単なゲ

ームをしてもらい、参加者同士の顔や名前を覚えて仲良くなることを目的としたゲーム中

のイベントのことです。

HUG(ハグ)を始める前に、「アイスブレイキングシート」(A4)を使ってグループ

の中で5分程度の自己紹介(写真3-1-11)を行いました。

アイスブレイキングシート

お名前

最近食べたうまいもの、おすすめの店

災害の体験、今まで経験した最大震度

ウ HUG(ハグ)の開始・展開・終了

アイスブレイキングの後、本番を開始しました。カードは、1世帯分をまとめて読み上

げてからスペースに出すか、参加者に渡すかにします。参加者は渡されたカードを、体育

館にどのように配置するかを相談しながら決めていきます(※読み上げずに渡すと、参加者

は特定の文字を拾い読みしてしまい、カード情報を部分的にしか把握しないので対応が深まりま

せん。また、読み上げてカード情報をグループ内に周知することで参加者全員が危機感を持

って対応できます。)。

以後、次々とカードが読み上げてられていきます。参加者が前のカードを配置し終わる

前に次のカードを読み上げるのがコツになります。

ゲームは、基本的に立ったまま行います。動作の自由度が増大し、会話が活発になるか

らです。

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写真3-1-11 自己紹介の様子

写真3-1-12 避難者配置について検討

写真3-1-13 避難者配置の結果例

写真3-1-14 主なイベント対応結果例

基本的に、カードをすべて配置したら、ゲーム終了ですが、今回のケーススタディでは、

ゲームの時間が事前に決められているため、終了予定時間が近づいた頃(約5分前)に、

読み上げを終了し、残りのカードを紹介したりグループで回し読みをすることにしました。

ゲーム終了後には、グループ内での意見交換及びまとめの時間(5分程度)を設け、用

意したメモ用紙を全員に配付し、次の質問に回答してもらいました。

参加者各自が記入したメモ用紙をグループでまとめ、会場で発表してもらいました。そ

の質問に対して他のグループから意見を求め、この質問を何回か繰り返して、他のグルー

プとの比較検討、意見共有を行いました。

他のグループに求めた質問の例を以下のとおり示します。

私たちのグループでは、○○は△△だから、××しました。

他のグループではどうしましたか?

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エ 参加者の感想及び訓練進行者による講評

HUG(ハグ)終了後、参加者に「避難所運営ゲーム」を体験した後の感想を述べても

らいました。述べられた感想を次のとおり例示します。

最後に、ゲームを通じて学習できた点について、訓練進行者により講評を行いました。

講評のポイントは以下のとおりです。

○ 本日のHUG(ハグ)で学ぶこと

• 避難所の運営の難しさ。正解はないが地域で考えておかねばならない。

• 地域ごとの避難所運営マニュアル作成の必要性

○ 本日行った防災グループワークとHUG(ハグ)の効用

• 災害イメージの形成:(どこでどういう被害がいつ起きそうなのか)

• 応急対策活動のイメージ形成:避難所の運営はどこが難しいのか。どうすればよ

いのかなどについては正しいイメージを描けるようになる。

○ 普段しておくべき準備、被害軽減策の明確化

• 事前の準備として、地域と防災機関がやるべきことについて、お互いに知ってい

ないと全体としてその被害を防ぐことができない。

• 一番重要なことは地域としてがんばってもらわないといけない。 • 今日の参加者がリーダーシップを取って頂き、今日の2つの訓練を参考にしながら、

地域で同じようなことを行い、どういう事前準備が必要なのかを話し合っていただき

たい。

• 6人のスタッフの連携が大事と改めて感じた。

• 慌てず落ち着いて行動する事が必要であると思った。

• 実際に行ってみると、避難所運営はとても難しく、パニック状態となり、

対応は大変であることがわかった。

• (避難所運営において)受付名簿表を「あいうえお」順に作ると確認が楽

になったと気づいた。

• 次々と(避難所に)来る人を振り分ける場所をどうするかとても難しい。

• 訓練をやっておかないと発生時とまどうようだ。

• 食事が今の避難者人数分より少なく届いた場合、誰からどこから配るか?

• 盲導犬は人と同じ扱いにしたか。

• 動物・病気の方の割り当てが難しい、どのようにされたか。

• 障害者トイレについてどのように対応されたか?

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(5)訓練効果の検証及び今後の課題について

伊佐市において実施したHUG(ハグ)の有効性について、以下の観点と方法により検

証を行いました。

① 訓練目的が達成したかどうか(→学習ポイントと訓練結果の比較分析)

② 参加者の感想(→調査票によるアンケート)

③ 本ケーススタディの最終的目標(地方自治体の防災担当者が自ら企画実施できるこ

と)は達成可能かどうか(→防災担当者への意見聴取)

それぞれの検証結果は次のとおりです。

ア 訓練のねらいを踏まえた討論結果の分析

学習ポイント 参加者の検討事項または

進行者による講評内容(ポイント)

目的達成の

判断

① 災害イメージの

形成

• 避難所でどの

よ う な 問 題 や

課題があるの

か。

避難所運営における以下の課題をシナリオ作成に取り入れ、またHU

G(ハグ)進行中に参加者討論の中に取り上げられていた。

例示:

• 様々な事情を抱える避難者をどのように配置すべきか?

• 食事が今の避難者人数分より少なく届いた場合誰からどこから配る

か?

• 盲導犬は人と同じ扱いでいいか。

• 動物・病気の方の割り当てが難しい、どのようにされたか。

• 障害者トイレについてどのように対応されたか?

② 応急対策活動

のイメージ形成

• 避難所運営の

イメージ

訓練後、進行者から、以下のようなコメントがあった。

• 避難所開設=誰が鍵を持つのか、誰が開けるのか。

• 受付の設置=人の出入りの管理

• 避難者の適正配置

→地区別、外国人や旅行者対応、高齢者や認知症の人の配置、屋

外避難希望者等への対応

• トイレの状況把握

• 着替え、赤ちゃんスペース確保

• 救助要請(119か地域で助けるか)

• 救援物資の要請、管理、提供

• 情報提供、情報共有(どこか掲示板に貼る、その時不在の人のため)

• 避難所ルール(喫煙等)

• 環境整備(消毒、水害は食中毒の可能性、等)

• 市の災害対策本部との連携、要請、対応

• ボランティア、マスコミ対応

• 運営本部をつくって担当を決め分担を決める

③ 普段しておくべ

き準備、被害軽

減策の明確化

訓練後、講師から、以下のようなコメントがあった。

• 自助と共助の連携が不可欠で、特に自助が重要である。

• どういう事前準備が必要なのかを話し合い、 地域ごとの避難所運営

マニュアル作成が必要である。

以上の分析結果を踏まえ、今回実施した避難所運営ゲーム(HUG)(ハグ)は、事前の

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ねらいとおりに目的が達成できたと考えられます。

イ 参加者の感想

HUG(ハグ)を実施した後に、参加者に対して以下の視点を盛り込んだ調査票(参考

資料2-1参照)により、感想を記入してもらいました。

① 訓練の難易度(参加者の知識レベルに合っているかどうか)

② 訓練プログラムを気に入っていたか(会場、資機材等の訓練環境はどうだったか、訓

練時間は適切だったか、参加して良かったか、今後の必要性など)

③ 訓練において何を学習したか?(災害イメージの形成ができたか、印象に残ったキー

ワードとは何か)

アンケートの集計結果を以下のとおり示します(N:有効回答数)。

(ア)HUGについて、内容的に難しかったですか?

N=39 0人

(0%)

0人

(0%)

6人

(15%)

11人

(28%)

22人

(56%)

(イ)風水害(避難所運営)イメージへの理解を深めるために役立ちましたか?

N=39 2人

(5%)

0人

(0%)

4人

(10%)

12人

(31%)

21人

(54%)

(ウ)訓練の環境(会場、器材等)はどうでしたか?

(防災グループワークと共通しているため、前述の結果を参照してください)

1 3 5 42

易しすぎた ちょうど良い 難しすぎた

1 3 5 42

いいえ 分からない はい

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(エ)研修の時間は適切でしたか?

N=41 5人

(12%)

15人

(37%)

9人

(22%)

8人

(20%)

4人

(10%)

(オ)訓練の総合的な評価について

① 今回の訓練に参加してよかったと思いますか?

② 今後もこのような訓練が必要だと思いますか?

(防災グループワーク実施後の質問と共通しているため、前述の結果を参照してくださ

い)

(カ) 感想文:今回の訓練のキーワード(あなた自身が感じた言葉)を のなかに

入れてください。次にそのキーワードを選んだ理由を記述してください。

キーワード 選んだ理由

グル

ープ

ワー

クと

共通

訓練

訓練の必要性

• いざという時、スムーズな行動ができるから。

• 訓練を重ねること。

災害 災害は忘れた頃にやってくる。

自分 自分が元気で動ければ家族、地域で助けられる事もできる。

HUGについて

責任者 しっかりした責任者が必要です。

HUG訓練 • 次から次へと避難者がくるので、どう対処していいのか分か

らなくなった。現実はもっと厳しいのではないかと思う。

• パニックにならないよう冷静に判断し、みんなが協力して

「避難所」を運営しなければならないと思った。

マニュアル • 避難所の指定、配置場所等、事前にマニュアルを作成し避

難場所に掲示しておくべき。

避難所運営 • 体育館内の配置、受け入れ状況に対しパニックになり、とて

も難しく、とても無理、大変なことを感じた。

• 思い切った運営をしないと運営できなくなることがわかっ

た。

1 3 5 42

短すぎた 適切 長すぎた

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以上のアンケート調査の結果を踏まえると、今回のHUG(ハグ)は、

① 内容の難易度については、「難しすぎた」との回答は大半を占める結果となっています。

→これは防災グループワークとセットで行ったため、HUG(ハグ)の実施時間が

通常より1時間ほど短縮されてしまい、ゲームのルールについて参加者に充分な

理解が得られなかったことが一因として考えられます。地震版のHUGはすでに

各地でスムーズに実施されているので、一定の実施時間を確保できれば大丈夫だ

と思われます。

② 参加者の印象に残ったキーワード及びその理由については、

• 「HUG(ハグ)訓練:次から次へと避難者がくるので、どう対処していいか分からなく

なった」

• 「マニュアル:避難所の指定、配置場所等、事前にマニュアルを作成し避難場所に

掲示しておくべき」などの意見が取り上げられました。

→このことから、「災害イメージの形成」、「応急対策活動のイメージ形成」、「普段し

ておくべき準備、被害軽減策の明確化」という具体的な訓練ねらいは十分達成で

きたと考えられます。

ウ 防災担当者自ら企画実施する可能性及び課題について

本ケーススタディの最終目標は、地方公共団体の防災担当者が自ら企画実施できること

です。この点について、伊佐市防災担当者に対して意見聴取を行いました。主な意見は次

のとおりです。

• カードさえあればできるゲームなので特に問題はないと思われる。

• ゲームの説明(方法と内容)をマスターすれば誰にもできると思われた。

• カードを市町職員が自作することは困難であるので、様々なパターンを

含む標準セットを作成しておき、その中から当該市町村にとってなじま

ない内容のカードを引き抜いて実施する方法が市町職員にとって負担が

少なく有効な方法である。

• なお、2グループごとに1人程度のゲーム経験者が居れば、さらに効果

的な実施が可能と考えられる。

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第2節 岐阜県神戸町におけるケーススタディ

―町職員を対象とした「避難勧告等の判断・伝達マニュアル」の作成

を目指した防災ワークショップ-

1 防災ワークショップの実施背景

(1)神戸町における風水害の特性

地域防災計画などを踏まえ、神戸町の風水害に係る特性を整理すると次のとおりです。

表3-2-1 神戸町の風水害に係る特性

① 地形・気象特徴

・ 岐阜県の濃尾平野北西部

に位置し、東南部は坦々と

した濃尾平野に連なってい

るので、北西部が高く、東

及び南部が低く、南北の高

低差は約14mである。

神戸町を含む岐阜県西濃

地方は多雨地帯で、雨量

は夏季に集中している。

② 過去における主な災

害事象 家屋の全壊、半壊、床上、床下浸水

道路の一部冠水、田畑の冠水

戦後最大の水害は、昭和34年9月の伊勢湾台風で、全

壊17戸、半壊25戸、床下浸水80戸、町内15%のエリ

アが水に浸かったという被害を被った。

次に大きい被害を被ったのは、昭和51年9月12日の集

中豪雨で、岐阜県安八町で長良川の堤防が決壊し、神

戸町では床上浸水2戸、床下浸水107戸という被害とな

った。

③ 地域防災計画等にお

ける風水害被害想定

揖斐川の水位や豪雨の状態によって大きな被害の発生

を想定している。

④ ハザードマップにお

ける浸水予測

揖斐川流域に100年に1回の大雨(2 日間の総雨量

395mm)が降ったことにより、

→ 揖斐川が破堤した場合:最大浸水深が5m以上、住

宅浸水、冠水地域が存在する。

→ 根尾川が氾濫した場合:最大浸水深が5m以上。

50年に 1回程度の大雨(2 日間の総雨量 267mm)で、

杭瀬川東川が氾濫した場合:最大浸水深が2m~5m

未満と予想される。

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(2)風水害対策上の課題

神戸町防災担当者と風水害対策上の課題について検討した結果は、次のとおりです。

風水害対応マニュアルについては、参集マニュアルのみで、これから参集以外のマニュアル

を作成していきたい。

災害対策本部の設置基準についてはある程度定めているが、避難勧告指示の基準がないこ

とが課題になっている。

約 85%の世帯には戸別受信機はあるが、残りの 15%の世帯には設置していないことで、今後避

難勧告等を発令した場合に周知できない問題がある。

(3)訓練目的及び訓練方法の設定

以上(2)に掲げた課題を踏まえ、また全国的な水害の共通課題を考慮し、神戸町にお

ける訓練目的及び訓練方法を次のとおり設定しました。

○ 訓練目的:「避難勧告等の判断伝達マニュアルの作成」に向けて

○ 訓練方法:防災ワークショップ

具体的には次の成果を目指すこととしました。

① 災害イメージの具体化:

実戦的対応マニュアルを作成するには、災害イメージの具体化が前提となります。そ

こで、今回のケーススタディにおいては、洪水ハザードマップによる「想定され得る全

般的な被害様相」と関係機関職員による「専門的な知見」を基礎に、職員が自ら風水害

による町内の具体的な被害をイメージし、そのような被害を先読みしつつ求められる行

政対応の「見える化」・「明文化」、「共有」を目指します。これによって、防災担当者の

不在や異動等を想定し、防災担当職員以外に、風水害の被害と、そのような被害への町

行政の対応をイメージできる職員を複数確保することも期待できます。

② 関係機関職員との「顔の見える関係」づくり:

実戦的な風水害対応マニュアルを作成するためにも、また、実災害において、効果的

な災害対応を図るためにも、他機関との連携が必要不可欠です。そこで、今回のケース

スタディにおいて、関係機関職員の協力を求め、いつでも気兼ねなく相談できる、専門

的知見を持つ関係機関職員との「顔の見える関係」を構築することを成果の一つとして

目指します。

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避難勧告等の判断・伝達マニュアルの作成については、平成17年3月に内閣府の下で

作成されたガイドラインがあり、具体的な検討手順(図3-2―1参照)が推奨されてい

ます。

今回のケーススタディは、このガイドラインを踏まえつつ、神戸町の実情(災害対応の

経験、図上訓練の熟練レベルなど)を考慮し、図3-2―1に示す手順の前段階として行

うものとしました。

図3-2―1 避難勧告等の判断・伝達マニュアルの検討手順【水害】*

(*出典:「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン、集中豪雨時等における情報伝達及

び高齢者等の避難支援に関する検討会 平成17年3月」

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(参考)

岐阜県では、平成 20 年 8 月末豪雨災害等を受け、「局地的豪雨対策検討会議」を設置し、岐阜市、

垂井町、揖斐川町及び国と連携するとともに、有識者や住民代表の意見を聞きながら、「避難勧告等

の判断・伝達」に関する検討を行いました。これを受け、岐阜市、垂井町及び揖斐川町がモデル的な

「避難勧告等の判断・伝達マニュアル」を作成しています。

岐阜県:http://www.pref.gifu.lg.jp/pref/s11117/fusuigai/index.htm

岐阜市:http://www.city.gifu.lg.jp/c/40125937/40125937.html

垂井町:http://www.ginet.or.jp/tarui/pdf/hinan.pdf

揖斐川町:http://www3.town.ibigawa.gifu.jp/xoops/modules/office/category.php?categoryid=319

2 防災ワークショップの進め方の概要

一般的に、防災ワークショップとは、何らかの成果物を作ることを目的とし、講師によ

る一方通行的な防災知識などの伝達ではなく、参加者同士の討論と協働作業を行う研修ス

タイルです。訓練進行者が、参加者相互の自発的な討論環境を整え、参加者全員が主体的

に参加するものとして運営されます。

防災ワークショップの基本条件として、以下の3つが挙げられます。

① 参加者の人数

参加者お互いの顔が見える範囲で、10~20名くらいの人数で行うことが一般的

です。それ以上の場合には、いくつかの小グループに分けて進行することが考えられ

ます。

② 進行管理者

防災ワークショップは参加者主導の研修です。訓練進行者は、参加者それぞれの防

災経験や知恵を上手に引き出しながら、防災マニュアルづくりなどの討論を促進して

いく役割を担います。

③ プログラム

防災ワークショップの目的を達成するために、適切なプログラムの作成が必要です。

基本的に、プログラムは「オリエンテーション」、「本体」、「まとめ」という三つのス

テップから組み立てられます。

• 「オリエンテーション」とは、参加者同士の討論と協働作業が行いやすくなるよ

うに、目的を共有し、モチベーションを高めるような雰囲気を作ることです。通

常、訓練進行者によって行われます。

• 「本体」とは、目的を達成するための肝となる部分で、通常いくつかのテーマに

基づく討論や、共同作業の積み重ねになります。

• 「まとめ」とは、討論結果をふりかえり、総括する部分です。

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3 防災ワークショップの企画

(1)降雨状況などの前提条件の設定

防災ワークショップの前提条件を設定するには、訓練目的を踏まえた上、当該市町村の

災害特性、求められる防災体制のあり方などを反映したものとすることが重要です。

神戸町では、揖斐川が氾濫した場合の浸水想定がなされていることなどから、最悪の事

態としての揖斐川破堤を意識しつつ、そこに至る過程で発生すると思われる内水氾濫など

の各種事態を想定してもらうため、以下のような前提条件を設定しました。

*注:揖斐川が破堤する可能性のある大雨をもたらすメカニズムに基づくものである。

(2)進行プログラム(タイムスケジュール)

訓練の目的を踏まえ、ワークショップの進行プログラム(タイムスケジュール)は表3

-2-2のとおりとしました。

表3-2―2 神戸町訓練の進行プログラム

事項(時間配分) 内 容 方 法

オリエンテーシ

ョン

(13:00-13:15)

訓練目的、実施方針、前提条件等 訓練進行者による説明

本体(STEP1):

(13:15-14:00)

○ 「避難が必要な状況とは、ど

ういう状況か」について検討

• 揖斐川破堤は起こり得ることであ

り、その前段階では、町内各地

区は、当然、極めて深刻な事態

になっている。

• 破堤まで行くことが想定される降

雨なら、町内各地区はどのような

事態になっているかを、「町民か

らの通報内容」についてイメージ

することで、認識の具体化・共有

化を図る。

①趣旨・方法の説明 (5分)

②グループ作業 (15分)

町内を3地区に分け、それぞれの地区にお

いて、具体的にどのような災害があると思われ

るかを、「場所と被害の様相」をセットで、大判

ポストイットに書き出させ、地図上の当該地点

に貼らせる。

③グループ発表 (15分)

④質疑及び関係機関によるコメント

(10分)

休憩( -14:15)

前線の雨に、台風による降雨が加わる*ことにより、神戸町周辺(主に

上流部)に長時間(場合によってはこれから数日に及ぶ)にわたり、激

しい降雨が続いている。

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本体(STEP2):

(14:15-15:30)

○ 数時間後には STEP1 で描き

出された事態になりかねない

状況のもと、避難準備情報が

発表される段階(関係機関と

ともに非常事態の体制を整え

る段階)において、以下の事

項について検討

• 行政対応のあり方

• 市民に期待する行動

①訓練進行者による趣旨、方法の説明

(5分)

②関係機関による情報解説 (30分)

• 避難等の判断に活用する気象に関わる注意

報・警報各種情報の解説

• 関係機関から状況に応じて、どのような情報

が出されるか解説

• 避難勧告等の判断基準の解説

③グループ作業 (10分)

STEP1で作成した地図を参考にしつつ、A

4半裁紙に書き出させ、模造紙(ホワイトボー

ド)に貼らせる。

④グループ発表 (15分)

⑤質疑及び関係機関によるコメント

(15分)

まとめ

(15:30-15:45)

○ 総括(訓練全体の振り返り)

• 全体自由討議

参加者全員での自由討議 (15分)

(15:45-16:00)

アンケート記入

閉会

(3)訓練参加者(訓練対象者と関係機関職員)の編成

訓練参加者の編成では、以下のことを配慮しました。

① 町役場の課長級以上の幹部職員を全員参加させる(表3-2-3)

表3-2-3 訓練参加者(神戸町役場から)

神戸町長 1名 上下水道課長 1名

副町長 1名 健康福祉課長 1名

教育長 1名 議会事務局長 1名

総務部長 1名 教育課長 1名

建設部長 1名 生涯学習課長 1名

民生部長 1名 中公民館長 1名

総務課長 1名 総務課 課長補佐 1名

税務課長 1名 総務課 総務係主任 1名

給食センター長 1名 消防団 団長 1名

産業建設課長 1名 消防団 副団長 1名

計20名

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② 防災関係機関の参加と協力

神戸町の風水害に関し「専門的な知見」及び情報を有する機関(表3-2-4)に訓

練に参加してもらい、情報提供や助言をもらうこととしました。

表3-2-4 訓練参加者(関係機関から)

岐阜県西濃振興局振興課 課長補佐 1名

防災担当 1名

国土交通省中部地方整備局木曽川上

流河川事務所揖斐川第1出張所

建設専門官 1名

気象庁岐阜地方気象台 防災気象官 1名

技術専門官 1名

大垣消防組合北部消防署 署長 1名

計6名

防災ワークショップでは町内を

• A:南西(最大浸水深2m~5m未満の区域)

• B:南東(最大浸水深5m以上の区域)

• C:中部・北部(殆ど浸水なしの区域)

の3地域に分け、グループ編成を行いました(表3-2-5参照)。

参加者には、現所属に関係なく、当該地域に責任を持つ行政担当者としていずれかの

グループに参加させました。

表3-2-5 訓練参加者のグループ編成

Aグループ(6名) Bグループ(6名) Cグループ(5名)

副町長 教育長 総務部長

建設部長 民生部長 税務課長

給食センター長 総務課長 上下水道課長

健康福祉課長 産業建設課長 教育課長

生涯学習課長 議会事務局長 消防団 副団長

消防団 団長 中公民館長

73

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4 防災ワークショップの準備

(1)配付資料

訓練において配付した資料は、次のとおりです。なお、各グループには、地域防災計画、

洪水ハザードマップも配付しました。

(2)資器材、小道具

訓練に使用する資器材及び小道具として、表3-2-6に示すとおり準備しました。

表3-2-6 防災ワークショップに使用した資器材・小道具

番号 資器材・小道具の内訳 数量

△ 1 パソコン

訓練方法や、気象状況等の説明 1式(会場

全体)

△ 2 プロジェクタ

△ 3 スクリーン

◎ 4 説明用パワー

ポイント

◎ 5 地図 グループ別に書き込み可能な白地図

(1/2,500 を張り合わせたもの) 1枚/G

◎ 6 サインペン 6色 1式/G

◎ 7 大判の付箋 3色

(被害想定などを書き、地図に張り付ける) 適宜/G

◎:他の市町村で実施する場合でも必ず用意すべきもの

△:他の市町村で実施する場合、必要に応じて用意するもの(より効果的な訓練が可能となるが、な

くても支障なく訓練が可能)

○ 神戸町図上型防災訓練プログラム(事前配付) (※別紙1-2-1参照)

○ 訓練参加者名簿(事前配付)

○ 神戸町風水害図上型防災訓練の実施方針について (※別紙1-2-2参照)

○ 雨の素となる湿った空気が南から運ばれるメカニズム (※別紙1-2-3参照)

○ 防災気象情報と避難勧告等の判断基準について (※別紙1-2-4参照)

74

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(3)会場設営

会場は町役場南庁舎3階大会議室を利用し、次のようにレイアウトしました。

図3-2―2 神戸町訓練会場配置図

写真3-2-1 会場配置の様子

写真3-2-2 小道具の準備

B班 A班

C班

西

スクリーン

PC等

75

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5 防災ワークショップの実施

表3-2―2の進行プログラムに基づいて、以下のとおり防災ワークショップを実施しま

した。

(1)オリエンテーション<訓練目的、実施方針等の説明>

訓練進行者が、参考資料1-2-2を用いて、訓練の目的及び実施方針等について参加

者に説明を行いました。また、本訓練の前提条件として、降雨の設定と想定する危機管理

対応段階の設定を次のとおり説明しました。

(2)防災ワークショップの開始・展開・まとめ

ア STEP1: 避難が必要な状況とは、どういう状況か?

① 趣旨・方法の説明

まず、訓練進行者から STEP1 の趣旨と方法について説明を行いました。

STEP1 「避難が必要な状況とはどういう状況か」

• 最悪事態は、ハザードマップにある揖斐川破堤イメージ。

• そこまでいかずとも、内水氾濫により「一村変成海(一村変じて海と成る)」(明治二一年

七月水害記念碑より)という事態は、十分考えられる。

• その時に、被害の様相はどうなり、また、それに対して住民はどのような通報をしてくる

のだろうか?

【本日の訓練における降雨の設定】

○ 神戸町周辺(主に上流部)に長時間(場合によっては数日に及ぶ)にわたり、激し

い降雨が続く。

➾ 降雨のメカニズム(気象庁・岡田憲治氏による「ベルトコンベアのイメージ」)

については、配付資料を参照。

➾ 数日前から、「日本のどこかで」という降雨予想は可能。しかし、具体的に神

戸町周辺(上流部)で、という判断が出来るようになるのは、6時間程度前、

とのこと。

➾ どのくらい降雨が続くかについては、降り始めてみなくてはわからない。

○ 比較的短時間で終われば、杭瀬川、東川の越水、内水氾濫レベルで終わるかもしれ

ない。しかし、数日続けば、揖斐川の破堤へと繋がる可能性も否定できない。

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② グループ作業

次に、町内各地区を担当するグループに、それぞれの地区の住民から、設定した降雨が

あった場合、具体的にどのような通報があると思われるかを、「場所と被害の様相(通報内

容)」をセットで、大判黄色の付箋に書き出させ、地図上の当該地点に貼らせました(写真

3-2-3)。その際、まず参加者各自が考え各々5枚程度ずつ書き出した後でグループ討

論(写真3-2-4)を行うよう促しました。また、関係機関の方々はテーブルを回り、

参加者からの質問に回答してもらうように説明しました。

写真3-2-3 付箋への書き出し 写真3-2-4 グループ討論の様子

【訓練のための「仕掛け」としての神戸町の危機管理対応レベル】

○ オレンジ:非常事態態勢を整える段階

➾ レッド・スーパーレッドのような実被害は出ていないが、数時間後

には実被害が出かねない状況として、関係機関と共に非常事態への

態勢を整える(整えた)段階。

○ レッド:洪水ハザードマップの杭瀬川、東川の氾濫イメージ

➾ 町内各地で越流・内水氾濫。

○ スーパーレッド:洪水ハザードマップの揖斐川氾濫イメージ

➾ 町内で5mを越す浸水深の場所がある。

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STEP1 で付箋に記入された内容を表3-2-7のとおり例示します。

表3-2-7 STEP1 の記入例

グループ 想定被害(通報)の発生場所 被害様相(通報内容)

(南東地区)

県道曽井・中島・美江寺・大垣線 通行不能

柳原・西呂久 浸水

火葬場 浸水 2m-5m

公民館 浸水

(南西地区)

新西保 溢れ、床上浸水

菅野川 菅野川と輪中の間が川になる

和泉 床上浸水

(北・中地区)

岐阜経済大学の東の橋 水没

北小学校付近 避難所になる

老人ホーム付近 避難所になる

町内の排水路 オーバーフロー

③ グループ発表及び質疑・関係機関コメント

各グループから作業結果を発表してもらい、訓練進行者の誘導による質疑応答が行われ

ました。また、訓練進行者ファシリテータの誘導により、それぞれの質疑に対して関係機

関からのコメントも受けました。

発表の際には、参加者全員に発表グループのテーブルに集まってもらい、地図を見なが

ら全員で場所や被害状況について共通の認識を持つことができるように工夫しました。

写真3-2-5 討論結果の発表

写真3-2-6 関係機関からのコメント

グループからの発表、質疑応答及び関係機関からのコメントの要点は次のとおりです。

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A(南東地区)

主な発表内容 • 破堤箇所は、「落合」であろう。ここが破堤すると 2~5mの浸水が起こるであろう。

• 福田の交差点が浸水し、全体的に通行不能となる。

• 輪中堤から南については、切り割りを堰き止めることによって助かるかもしれない。

• 公共施設として、学校、火葬場も浸水地域に入っている。

質問応答例 • 福田の交差点が浸水時の数値データは?→写真で取っている。

• 高いところは?→経済大学のグランド

• 高齢者施設はどうなるのか?

• 一面海になった場合は、何で対応するか?→電柱対応になる。

• 西からの流れは輪中堤で止められるのか?

B(南西地区)

主な発表内容 • 揖斐川より杭瀬川の方の影響が大きい。

• 池田町側の堤防が低く、西地区の住宅にさしてくるだろう。

• 菅野川があり、南に通常用水の水門をあげれば影響がない。

• 公共施設:デイサービス、グループホーム、授産所、知的障害者施設など

• 加納地区に障害者10名いる。

• 地区全体で切り割りが3つある。

質問応答例 • 何年に1回の閉めきりの訓練をしているのか?→していない。

C(北・中地区)

主な発表内容 • 経済大学の東側の橋がわたれなくなる。

• 公共施設としては、特別養護老人ホーム、小学校、幼児園、体育館、中学校がある。こ

のあたりは水に浸からない。

質問応答例 • 屋根のついている体育館や学校はどこか?キャパシティはどのくらいか? →小学校約

4百人で、体育館マテリアルは約3千人

• 南部からの避難者をどのくらい受け入れられるか?→教室入れたら1千人。

• 協定は結んであるのか? →(三菱とは)結んではいない。

• 水が溜まるのはどこか? →町内の輪中提

• 避難させるための足は何があるか? 避難者を迎えに行くのは可能か?→マイクロバス

1台、船2艘、人員20名くらいで、迎えは不可能。

関係機関からのコメント

• (県西濃振興局の方に対して)災害時県のほうから神戸町に対して何の支援がなされるか? →2名情報

収集にいくが、土地勘がないと役にたたない。

• (木曽川上流河川事務所の方に対して)被害予想はこんな感じでどうか? →土地勘がないので、お話を

聞いているとそうなるのかなと思った。正直、私自身も揖斐川が切れるとは思っていない。

• (大垣消防の方に対して)被害予想はこんな感じでどうか?ライフライン系の変電所はどうなるか? →大体

こんな感じである。変電所は神戸中の南にある。水がつかないようになっている。

• (気象台の方に対して)ご感想は? →神戸町はここ 10 年以上大きな水害がなく、昔の水害記録で、ここま

でのイメージを作るには皆様苦労されたのではないかと思う。

訓練進行者によるまとめ

• これで被害様相の確認ができ、いくつか気になる論点ができていると思う。一番気になる点は手持ちの資

機材では(避難者の)迎えは無理ということである。

• 最悪の場合は、こういう風に行くかもしれないという段階を追って、各種の予報・警報がどんな形で出てくる

かなど、ここで描かれた2、3、4段階前のイメージしながら前もって先読みしつつ準備情報、勧告・指示を

検討していくことになる。

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イ STEP2: 各危機管理対応レベルでの行政対応

① 趣旨・方法の説明

まず、訓練進行者から STEP2 の趣旨と方法について説明を行いました。

② 関係機関による情報解説

次に、訓練進行者の誘導により、岐阜地方気象台と国土交通省中部地方整備局木曽川上

流河川事務所揖斐川第1出張所から、状況に応じてどのような情報が出されるか情報解説

(写真3-2-7)を行いました。

特に、岐阜地方気象台からは、資料「防災気象情報と避難勧告等の判断基準について」

(参考資料1-2-4参照)に基づき、平成22年度から実施予定の市町村を対象とした

警報・注意報発表を含む解説が行われました。一口に「警報」と言っても、気象台が考える

イメージはそのときの状況に応じてさまざま(「警報」にはさまざまな顔がある)なので、

気象台との情報交換を密にして欲しいとの助言がありました。

写真3-2-7 気象台による情報解説

※ 解説ポイント

○ 気象庁における気象に関わる警報注

意報の改善内容について

○ 災害と関連する気象要素について

○ 市町村ごとの「大雨及び洪水注意報警

報」の発表基準について

○ 岐阜県が主導して作成した「避難勧告

等の判断伝達マニュアル」の特徴につ

いて

○ 防災情報と判断基準との関係について

○ 大雨時に活用できる主な情報について

STEP2 危機管理のオレンジレベルで、町が行うべき行動と、住民に期待する行動

とは何か?

• 内水氾濫については、大雨警報(浸水害)が発表される

• 避難準備情報を出すことを検討中

• 要援護者の避難について、具体的な情報発信を行うことを検討中

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③グループ作業

まず、町内各地区を担当するグループに、神戸町の危機管理レベルはオレンジの場合に

呼応して、町はどのように対応すべきか。また、町民に対してどのような行動を期待すべ

きか。STEP1 で作成した地図を参考にしつつ、赤の付箋に貼ってもらいました(写真3-

2-8)。その際、まず、参加者各自が考え、各々3枚程度ずつ書き出してグループ討論を

行うよう促しました(写真3-2-9)。

写真3-2-8 付箋への記入例 写真3-2-9 討論結果の発表

付箋に記入された内容を例示すると表3-2-8のとおりです。

表3-2-8 STEP2 の記入例

グループ 行政が行うべき行動 住民に期待する行動

A(南東地区)

• 資材の確保 国交省または自衛隊。

• 聴覚障害の方への対応。

• 輸送車輌等の確保。

• 体制(態勢)を作る。

• 要援護者(約1千人)への対応。

• 基準をギリギリ超える警報もあれば、めったに

ない大雨時の警報もある。各種気象情報でそ

の見極めをする。

• 警報の本文を読むこと。

• 警報が出たら気象レーダーを見る「くせ」をつ

ける。

• この地域で受け入れるか、北部中部に人を動

かすかを判断する。

• 建設防災会への協力依頼。

• 住民も気象レーダーや川の

水位情 報 を見てもら い た

い。

• 自主的な避難。

• 自主防災組織による援護者

支援。

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• 関係区長へ連絡。

• 職員の招集、消防団の出勤要請。

B(南西地区)

• 防災無線による呼びかけ。

• 職員の非常招集、機材の確保。

• 災害時要援護者の支援者への連絡。

• 福祉施設への連絡。

• 災害対策本部の立ち上げ。

• 避難所の準備、確保確認。

• 区長・職員等への情況報告(被害情況)。

• パトロール避難予想区域。

• 県・警察・消防署との連絡調整。

• 消防団招集。

• 医療機関の確保、連絡。

• 避難しない人の対応、要援護者リストの活用。

• 職員間の連絡方法確保。

• 情報の発信源の一本化。

• 食料・水の確保。

• 避難者の名簿の作成。

• 氾濫箇所、土嚢の確保。

• 自治会長からの情報(被害

状況)提供。

• 各地区防災器具の活用。

• 消防団による広報。

• 民生委員の情況報告。

C(北・中地区)

• 町職員への招集。

• 避難所となる施設職員への要請。

• 避難所開設準備。

• 消防団員への要請。

• 情報の収集。

• 県への連絡。

• 建設業協会への依頼。

• ラジオ・テレビ局への要請。

• 自治会長へ連絡。

• 防災無線広報。

• 必要資材の準備。

• 医師会への要請。

• 社協デイサービス職員の要請。

• 避難所の確保。

• 警察への連絡、避難させること。

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④グループ発表、質疑及び関係機関によるコメント

各グループから作業結果を発表してもらい、訓練進行者の誘導による質疑応答が行われ

ました。また、訓練進行者の誘導により、それぞれの質疑に対して関係機関からのコメン

トを受けた。

発表の際には、参加者全員に発表グループのテーブルに集まってもらい、地図を見なが

ら全員で行政が行うべき行動や、住民に期待する行動について共通の認識を持つことがで

きるように工夫しました。

写真3-2-10 討論結果の発表 写真3-2-11 質疑応答の様子

グループからの発表、質疑応答及び関係機関からのコメントの要点は次のとおりです。

主な発表内容

(町役場が取るべき対応行動について)

(A,B)グ

ループの発表

内容

① 「避難準備情報」を出すかどうかの判断について、

• まずパトロール等をして、水位をみながら「避難準備情報」を出すか出さないかを

決定する。

② 「避難準備情報」が出される時点の対応について、

• 防災無線を使用して、戸別受信機で情報を伝達する。

• 災害時要援護者の支援者になる自治会長とか民生委員とかに状況を報告する。

• 「災害対策本部の設置」→「職員の召集」→「防災資材の確保」→「避難所準備」

→「避難勧告への備えをしておく」という対応の流れとなる。

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質疑応答 ① グループ発表の内容について、気になった点はないか?

• (県西濃振興局の方):勧告の基準も大事だが、伝達の方法、または伝達して実

際に避難してもらうところまでしっかり検討できるといいと思う。

• 河川情報、気象情報を読みとることや、現地確認のほか、前兆現象があるかない

かも併せて判断する必要があるのではないか。

② 神戸町8割の住民が戸別受信機を持っているというのが一つ大きなパワーで

あるが、聴覚障害者への情報伝達は?

• (神戸町の方):社会福祉協議会は連絡協議会のようなものを設置しており、それ

を通じて、情報伝達の支援が考えられる。

Cグループの

発表内容

① C地区は、災害的には少ないであろうという発想の元に、

• 「避難所の準備」→「必要な資材の調達」→「町職員の召集」→「医療機関等への

要請」→「社協、警察等関係機関への連絡」→「防災無線、TV・ラジオ、自治会

長への連絡」といった対応行動が考えられる。

② 避難をする地区がある程度限られてくれば、前もって防災無線で流すことと、

個別に自治会長に連絡が必要になってくる。

③ 情報収集が一番大事かと思うので、「消防団への現場への要請」、「警察等へ道

路の状況の連絡」、「職員を現場に出す」

質疑応答 避難準備情報を出すか出さないかの段階で、消防団の活動方針は?団員数?

• (消防組合の方):対応基準は今のところなくて、適宜に判断する。

• 消防団員も被害者になりうるので、どこまでできるのかという不安もあるが、最小限

のことをやったら、すぐに各拠点に集まるようにという指示は徹底している。

• 4拠点(昔の4つの村)で、約120名の消防団員

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ウ まとめ: 総括(訓練全体の振り返り)

全体の討論結果を踏まえ、訓練進行者の誘導により、関係機関の出席者からコメントを

受けました。コメントの要点は次のとおりです。

① 事務局(消防科学総合センター):

• 水害についてあるイメージで議論してもらったが、起きるごとに、様相は変わっていくものではない

かと思う。

• 戸別受信機について、佐用町では、戸別受信機が全戸に配られていた。しかし、2階に避難して

いる間、1階に置いてある戸別受信機が役にたたなかった事例がある。

• 情報の伝達について。町内会長に連絡を取ろうとして、家の電話に連絡したが、町の見回りに行

っていて連絡ができなかった、という事例あり。携帯電話のリストを持っておこう。

• 工場から有害物質が流れだした事例があり、町の特性として留意しておくべきではないか。

② 岐阜地方気象台:

• 大雨は強弱を繰り返すことがある。雨が小康状態の時に防災体制を縮小してしまった事例もあっ

た。

• 警報を補完する気象情報のわかりやすい表現方法や情報の見方の啓発などについて、いろいろ

と工夫したい。

• 短時間強雨による大雨では内水はん濫が想定され、気象台は大雨警報(浸水害)と洪水警報を

発表する。内水はん濫であれば、避難所への避難ではなく、2階以上に避難する、無用な外出を

控える、水没した道路に突っ込まないなどの対応の方が有効な場合もある。自助による防災が大

切になるので、大雨警報(浸水害)が発表された場合は、そのことを住民に伝えるようにしていた

だけるとありがたい。

③ 消防:

• 災害には、(輪中などの)地域性があるということを感じた。

• 正しい情報を入手するかもポイントになってくると思う。

• 避難区域や、指示タイミングなどの判断について、関係機関の方の専門的な知見を生かして頂く

ことが必要なので、しっかりと顔の見える関係を築いていけたらと思っている。

④ 国土交通省:

• 国土交通省では、雨による河川の水位の情報、レーダーの雨量の情報を提供しているので、是

非見て頂いて判断の材料にしていただければと思う。

• 災害時には情報が氾濫し、色々な情報が役場に入ってくると思うが、いかに整理するかというのが

非常に大事になってくるかと思う。

• 携帯電話は有効な連絡手段だと思うが、災害時、繋がりにくくなっている場合、逆にメールは繋が

りやすい状況にあるので、携帯メールも今後の参考にしていただきたいと思う。

• どのタイミングで避難勧告を出すか非常に悩ましい。過去の状況を踏まえ、経験値をもって判断、

説明させるのがいいと思う。そういう積み重ねが大事だと思う。

• 国土交通省も防災の支援をしており、機材、人員を含めて、いつでも応援、支援するので、その

節はお声がけをしていただければと思う。

⑤ 神戸町:

• 当町は過去に水害が少なかった。特に徳山ダムができてからは、絶対安心だというようなことを思

った。今日の訓練で、最悪のことを考えて対応しないといけないということがしっかり分かった。

• 避難勧告等の伝達に関するマニュアル作成について、他市町の事例を当町にあてはめて、その

まま作ればいいというものではないということを実感した。

• 河川においては、情報の元となる観測点が当町にないということで、河川の情報をどのように取り

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入れればよいかということも今後検討していかなければならないなと思っている。

• この訓練を通じて気象台さんや国交省さんと顔の見える関係ができたと思っているので、そういっ

たときにまた情報をご指導いただいて、マニュアルづくりに入りたいと思っている。

6 訓練効果の検証及び今後の課題について

神戸町において実施した防災グループワークの有効性について、以下の観点と方法から

検証しました。

① 参加者の感想(→調査票によるアンケート) ② 本ケーススタディの最終的目標(地方自治体の防災担当者が自ら企画実施できるこ

と)は達成可能かどうか(→防災担当者への意見聴取)

それぞれの検証結果は以下のとおりです。

(1)参加者の感想

今回実施したケーススタディについて、参加者にアンケートを行いました。その結果は

下記のとおりですが、概ね当初の訓練目的は達成していたものと言えます。

特に、「風水害に関して気兼ねなく相談できる、専門的な知見を持つ関係機関職員との「顔

の見える関係づくり」に役立ちましたか?」という問に対しては、6 割以上が「大いに思

う」との回答であり、関係機関も参加した本訓練は有効だったと考えられます。

また、「今後もこのような訓練が必要だと思いますか?」という問に対しては約8割が「思

う」と回答しており、風水害の懸念の大きな市区町村では今回実施した内容や方法の訓練

が求められていることが考えられます。

アンケートの集計結果:

(ア)訓練内容について

① 本訓練を踏まえ、より実戦的な「風水害に係る避難勧告・指示等の判断・伝達マニュ

アル」(仮称)の作成につなげることができると思いますか?

N=17 9人

(53%)

8人

(47%)

0人

(0%)

0人

(0%)

0人

(0%)

1 3 5 42

大いに思う あまり思わない わからない ほぼ思う 全く思わない

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回答の理由(自由記述):

② 風水害の被害イメージとそれへの町行政他関係機関の対応イメージを持つことがで

きましたか。

N=18 5人

(28%)

13人

(72%)

0人

(0%)

0人

(0%)

0人

(0%)

【成果等について】

• 全国どの市町村においてもマニュアルは必要だと考える。その基準となる訓練となったと思う。

• 当町は被害が少ない町と認識していたが、町の状況を改めて見て危険箇所が多いことに驚き、

マニュアルの必要性を痛感した。

• 色々な情報の収集や過去のデータ等をふまえて学習することは必要だと思った。

• より具体的な地域の状況をイメージしながら訓練が出来た。

• 災害イメージ、町の危機管理のレベルごとの行動なども考えることが出来、マニュアル作成に繋

がると思う。

• 地区(A.B.C)内での個別データ、分析が理解できたので参考として神戸町マニュアル作成が進

むと思う。

• それぞれ違った立場、部署の職員が意見を出し合うことが出来た。より具体的なマニュアル作成

ができることを希望する。

• 地域によりもっている特性が相違している、そうした状況をより深く理解することで作成に繋がる

と思う。又関係機関とのより一層の連携が必要である。

• 経験をしたことがなかったが、マニュアルの基礎だけでも学べた。

• 気象台、国交省との相談窓口が確立できた。

• 各関係者の話が聞けた。

【課題等について】

• 避難準備情報までであったので、避難勧告、指示における対応方法も検討できればよかった。

• 「伝達」の部分について参考となる検討作業がなかったのではないか。

• 河川の氾濫に関する水害マニュアルは作成できると思うが、ゲリラ豪雨に関する水害マニュアル

は難しい感じがした。

• 過去に大きな風水害被害がなかった関係で特にマニュアルは作成していなかった。

1 3 5 42

大いに思う あまり思わない わからない ほぼ思う 全く思わない

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回答の理由(自由記述):

③ 風水害対応に関して気兼ねなく相談できる、専門的知見を持つ関係機関職員との「顔

の見える関係」づくりに役立ちましたか。

N=17 11人

(65%)

3人

(18%)

3人

(18%)

0人

(0%)

0人

(0%)

【成果等について】

• 町では山もなく、水害は関係のない地域だと思っていたが、この研修を受けてよかった。

• こうした他機関を交えた訓練を今まで実施していなかったので大変良かったと思う。

• 町内を3グループに分けることによりグループ(地域)により被害が異なることが理解できた。

被害への対応の難しさを感じた。被害者の移送手段など。

• 具体的に考えて、危険に対する意識を共有することが出来た。

• 過去の事例をイメージしたり地震災害の対応訓練を参考にしてできた。

• 神戸町内において災害が想定される地域とそれ以外の地域を確認でき、それぞれの対応策

を学ぶことが出来た。

• 気象庁や国交省の情報をもっと活用しなければならないと認識した。

• 各関係機関からの発信により、お互いの立場や役割分担が確認でき、今後の対応に繋げて

いきたい。

• 地区別の被害状況をより深く理解することができるきっかけとなった。

• それぞれの機関の役割分担的なものがよく理解できた。

• 地域の繋がりが必要と感じた。

• 時間的な経過での対応についてイメージできたのではないか。

【課題等について】

• 大雨による水害のイメージを持つことが難しかった。

• 水害のイメージはすぐに思い浮かべることができるが、風の方はもう一つイメージできない。

• 被害イメージを持つことはできるが、関係機関の対応イメージを持つには少し時間が足りない

と感じた。

1 3 5 42

大いに思う あまり思わない わからない ほぼ思う 全く思わない

88

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回答の理由(自由記述):

(イ)訓練環境等について

① 研修の環境(会場、器材等)はどうでしたか?

N=18 0人

(0%)

0人

(0%)

0人

(0%)

9人

(50%)

9人

(50%)

② 研修の時間は適切でしたか?

N=18 0人

(0%)

1人

(6%)

15人

(83%)

2人

(11%)

0人

(0%)

【成果等について】

• 今後防災に対する意見、連絡等が出来やすくなったと思う。また、災害時にも情報交換等に

も役立つと思う。

• 気象台の方など実例に基づく話は役に立った。防災無線が1Fに設置してあったため水に浸

かり使用できなかった。過去の水害からのデータ作りの必要性を感じた。

• 各機関の連携が大切だと思ったし、常時そのパイプを繋いで活用することが必要だと感じ

た。

• 具体的な機関が分かったことと担当者が分かったから。

• 岐阜地方気象台の方の説明は分かりやすかった。

• 気象台、国交省などの防災情報について理解できた。

• 直接に話し合うことはできなかったが、説明や意見を通して顔の見える関係になったと思う。

• 気象レーダー等の見方がわかりにくいので、専門家の意見が聞ければ良いと思う。

• 岐阜地方気象台の方からの気象警報等の説明が良く理解できた。気象台のイメージがよくな

った。防災情報提供システムの活用が必要と感じた。

• 岐阜地方気象台の方の話は大変参考になった。(警報の顔つきの話など)

• 今後とも一層顔の見える関係を作っていきたい。

【課題等について】

• 多くの関係者ではなく、一部の関係者のみだった。

• 今度会う機会がない。

1 3 5 42

わるい わからない よい

1 3 5 42

短すぎた 適切 長すぎた

89

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③ 今回の検討会に参加してよかったと思いますか?

N=18 0人

(0%)

0人

(0%)

1人

(6%)

4人

(22%)

13人

(72%)

④ 今後もこのような訓練が必要だと思いますか?

N=18 0人

(0%)

0人

(0%)

1人

(5%)

3人

(17%)

14人

(78%)

(ウ)感想文:今回の訓練のキーワード(あなた自身が感じた言葉)を の中に入れ

てください。次にそのキーワードを選んだ理由を記述してください。

キーワード 選んだ理由

職員の危機管理意識 • 幹部職員の危機管理に対する認識をもつため。

町民の危機管理 • 町民各自が風水害にもっと認識をもつこと。

気象の知識セミナー • 気象レーダーを見ようとしても理解できない。出前講座の利用は良い方

法。

防災気象情報 • 気象警報等の改善経緯・目的等を聞けて分かりました。

情報

情報の観色

• 気象情報、河川情報。

• 情報にも色々な形があり、それを選択し、予想する情報を読む。

(時間雨量)70mm/h • 70mm/hで何かが起きる。大雨警報。

避難準備情報

• 情報化の社会、地域の連携の大事さ、この2点で避難準備をし、災害を

未然に防ぐように努めたい。

• 住民の生命、財産を守っていく上で、避難準備情報が出された場合の

対応を誤ってはならないと痛感した。

防災情報提供システ

ム • 一度も見たことがなかった。情報内容に感心した。

避難判断基準

判断基準

• 避難勧告、避難指示が必要な時、区域でどのような事態が起こっている

のかを考え、検討することは非常に重要。

• 誰がどの時点で何を基準にして誰にどういった指示をするのか難しいと

思った。

顔の見える関係 • 情報共有のため、判断のよりどころとして専門機関の意見を求めることを

気軽にしてくれる。

正常化の偏見を打破 • 揖斐川の破堤は考えられないと思っているが、起こりうる可能性があるこ

とと、最悪の状況を考えていかなくてはいけない。

警報 • 今まで大雨警報等を耳にしても、聞き流していたが、同じ状況で出され

1 3 5 42

思わない どちらともいえない 思う

1 3 5 42

思わない どちらともいえない 思う

90

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警報の顔つき

警報の顔つきを見る

ているのではないとのことであり、自分で適格に判断していかなくてはな

らないと感じた。

• 情報の内容をしっかりみて、避難勧告等を出さなければならないから。

• 「警報」の表記だけで、判断が出来ない。行動を起こすには難しい言葉

と感じる。

• 警報からの情報の読みとりが重要。

• 同じ警報でも被害への対応に大・小、強・弱がある。十分な情報を得るこ

とが必要。

• 大雨警報にもいろいろある。災害に繋がるのか判断が必要。

専門的な知見 • 町(自治体)でマニュアルを作成するに当たっては、当然に必要なもの

であるので、それをどのように取得し活用するかが重要であるから。

情報の収集

情報の収集力

• 様々な機関から多くの情報が提供されている。実際には現地の情報に

加えてそれらを活用することでより確かな対応ができる。

• 判断基準の精度を高めるために必要な情報をいかにして得るか重要。

情報収集、提供 • 情報収集の大切さ、現地の確認(状況等)、情報の提供の仕方のマニュ

アル化が重要。

情報の整理、判断 • 災害時には間違った情報も多く出回る。それらをより分け正しいものの

み利用することが大切。

避難勧告、指示 • 避難指示、勧告等を出すのは難しいと分かったので色々意見を聞いて

マニュアルを作成することが大切。

先読み力 • 早い対応が住民の生命と財産を守るキーワード。

消防団の召集 • どのような対応ができるのかさらに訓練を重ねます。

知らせる • 町民に徹底すること。

団結 • 職員の一致団結が特に必要(情報の交換)。

民間の力の活用 • より多くの人の力を活用することを考えたい。

対策は早めに大胆に • 全くそのとおり。

その他(自由回答):

• 早急にマニュアル作成をしないと、災害時のことを考えると不安になった。現実に大災害が

発生したとしたら何も動けない。本訓練はいわゆる幹部職員のみである。一般の職員にもこ

の知識を共有する機会を持ちたい。

• 地震対策は色々対策を見ているが風水害関係はなかなかできていないので、今後(町とし

て)の対策の課題である。

(2)防災担当者自ら企画実施する可能性及び課題等について

ケーススタディの最終目標は、地方公共団体の防災担当者が自ら企画実施できる訓練マ

ニュアルの作成にあるという点を考慮し、防災担当者自ら企画実施する可能性等も含め、

今回の防災ワークショップの成果及び課題について、神戸町担当者に意見を聞きました。

得られた意見は次のとおりです。

91

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以上のことから、今後、今回のケーススタディの資料を整理・再検討してマニュアルを

作成するとともに、国土交通省関係事務所、気象台、県などとの連携体制を構築すること

で、同様の訓練を地方公共団体独自に実施することも可能ではないかと考えられます。た

だし、②で指摘されているように訓練進行者の育成をどのように行うべきかは、検討課題

として残されています。

① 防災ワークショップの成果・課題について:

【成果】について、

• 今回の訓練の成果は、災害対策本部員である管理職にある職員に対して水害に対

する意識の高揚が図れたこと。

• 想定を複合的に順序立てて進められたので、各班も被害想定を立て易く、また共

有することができた。

• また、気象台、国土交通省河川工事事務所、消防署、岐阜県との「顔の見える関

係」を作ることができたこともよかった。

【課題】について、

• 被害想定等はできたが、それに対する行政の対応策までは時間的な制約もあり進

むことができなかった。当町の課題となった方針、方策的なものまで検討できる

とよかった。

② 地方公共団体の防災担当者が自ら企画実施する可能性及び課題について:

同じ訓練を他の市町村でも行うには、訓練進行者の存在は重要であり、防災担当者

にその才覚があれば、これから作成されるマニュアルのとおり進めればいいのであろ

うが、十分な知識と経験なしに担える役割ではなく、どうしても外部有識者へ依頼す

ることになるのではないか。

92

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第3節 東京都中野区におけるケーススタディ

-防災関係機関を対象とした「図上シミュレーション訓練」の企画準備のための検討会-

1 検討会の実施背景

(1)中野区における風水害の特徴

地域防災計画などの資料を踏まえ、中野区における風水害の特性を整理すると表3-3-

1のとおりです。

表3-3-1 中野区における風水害の特性

① 気象特徴

・ 台風による豪雨や、集中

豪雨が多発する。

・ 降雨のメカニズム:前線の

雨に加えて台風本体の雨

が加わると数日間にわた

る大雨となる。

・ 大雨が降るとすぐに水位

が上昇する。

・ これまで土砂災害が多発

するような降雨は無かっ

た。

区の一部で局地的な豪

雨となる場合もある。

② 主な災害特徴 これまで主に台風や集中豪雨により、河川の溢水や内水氾

濫がしばしば発生し、大きな被害を受けてきた。

河川改修や調節池の整備などにより河川の溢水は減少して

きたものの、排水能力を超えた内水氾濫(いわゆる都市型水

害)は、毎年のように発生している。

近年局地的集中豪雨が多発しており、特に平成17年9月の

記録的な集中豪雨により妙正寺川と善福寺川沿いを中心に

多数の浸水被害をもたらした。

③ 地域防災計画等に

おける風水害被害

想定

計画作成の前提としては、近年の水害記録を指標とし、特に

H17年9月4日に発生した水害*の教訓を可能な限り反映し

ている。

④ ハザードマップにおけ

る浸水予測

東京都が作成した浸水予想区域図をもとに、中野区で一部

を調査し作成した。

H12年9月の「東海豪雨(総雨量 589mm、時間最大雨量

114mm)」と同じ降雨の発生を想定している。

*注:平成17年9月4日には、杉並区・中野区を中心に時間112ミリの記録的な集中豪雨が

降り、神田川及び支流の妙正寺川、善福寺川など8河川から溢水し、都内全体で約 6,000

棟に及ぶ甚大な浸水被害が発生した。特に被害が大きかった中野区、杉並区では 3,346 棟

の浸水被害を記録した(以下「H17年災害」と略)。

93

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(2)風水害対策上の課題及び対応型図上訓練の実施予定

防災担当者との打合せ等を踏まえ、中野区における風水害対策上の課題を整理すると次

のとおりです。

• 風水害対応マニュアルは作成しているが、実効性の検証を行っていく必要がある。

• 短時間集中豪雨にどう対応すべきかが難しい問題である。

• 防災担当者の人事異動により、H17年災害時の経験者のほとんどが防災分野から

いなくなった。教訓の継承が必要である。

• 情報収集体制は整っているが、職員招集のタイミングは非常に難しい。

• 避難勧告に関する具体的(数値的)な基準がなく、特に課題と思われる。

• 毎年の梅雨期(5月頃)に職員参集・情報伝達を目的とした風水害訓練を行ってき

ているが、関係機関との連携に重点をおいた訓練は実施していない。また、今まで

は、関係機関からの情報を仮想した形で訓練を行ってきたが、より実践的な訓練を

図るために、実際の立場において、それぞれの関係機関が災害の状況によって、ど

のような行動をとるのかを踏まえた状況付与が必要と考えられる。

• 毎年の梅雨期(5月頃)に職員参集・情報伝達をテーマとした防災訓練を行ってき

ているが、関係機関との連携を図った訓練はあまり実施していない。また、今まで

は、関係機関からの情報を仮想した形で訓練を行ってきたが、より実践的な訓練を

図るために、実際の立場において、それぞれの関係機関は災害の状況によって、ど

のような行動をとるのかを踏まえた状況付与が必要不可欠と考えられる。

以上のことを踏まえ、中野区において、来年(H22年)5月頃に、中野区と関係機関

との連携体制の確立を図るとともに、中野区及び関係機関の災害対応・情報受伝達・(避難

勧告等の)意思決定のあり方、中野区の災害対策本部運用のあり方を検討するための「図

上シミュレーション訓練」を実施することとなりました。

そこで、今年度の中野区ケーススタディは、来年度の風水害対応図上シミュレーション

訓練の企画・準備のための事前検討会と位置づけ、来年度の訓練における参加機関の顔合

わせとコミュニケーションの促進、図上訓練の企画に当たって必要な被害状況等の想定、

想定される被害内容によって異なる関係機関の対応、対策実施上のポイントなどを明らか

にすることを目的として行うこととしました。

2 検討会の企画

(1)検討会の開催要綱、次第

検討会を、どのような目的で、誰を対象とし、どのような時間配分で、どのような議事

内容で行うかを明確にするため、検討会の開催要綱(表3-3-2)及び次第(表3-3-3)

を検討し、作成しました。

94

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表3-3-2 「風水害対応図上シミュレーション訓練の企画・準備のための事前検討会」

開催要綱

表3-3-3 次第

時間 概要

13:30~13:45 (15分)

13:45~13:50 (5分)

13:50~14:00 (10分)

14:00~14:30 (30分)

14:30~15:30 (60分)

○挨拶

○関係者紹介、資料確認

○検討会の趣旨、ねらい等について

○図上シミュレーション訓練とは

○都市部(中野区)の降雨について

○水害時の災害対応について:

中野区役所

東京都第三建設事務所

中野野方両警察署

中野野方両消防署

○H22年図上シミュレーション訓練に向けたポイントの検討

○閉会 (アンケートの回収、片づけ等)

【目的】 平成 22 年5月中旬に、中野区と各防災関係機関(東京都第三建設事務所、中野・

野方両警察署及び中野・野方両消防署を予定)との連携に重点をおいた、図上シミュ

レーション型の風水害訓練の実施を予定している。

本検討会は、来年度の風水害対応図上シミュレーション訓練の企画・準備会議と位

置づけ、図上シミュレーション訓練参加機関の顔合わせと、企画に当たって必要な被

害状況等の想定、想定される被害内容によって異なる関係機関の対応、対策実施上の

ポイントなどを明らかにすることを目的とする。

【日時】 :平成21年10月28日(水) 午後1時30分~3時30分

【場所】 :中野区役所2階 防災センター 【主催、参加機関】 主 催:中野区、総務省消防庁、消防科学総合センター

参加機関:中野区、東京都第三建設事務所、中野・野方両警察署及び中野・野方両

消防署

【主な議題】 (1)各機関の風水害態勢の概要 (2)来年度実施の風水害対応図上シミュレーション訓練の企画、状況付与等の作

成に向けたポイントの検討 (3)その他

95

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(2)参加者の呼びかけ

中野区防災担当者の呼びかけにより、区役所職員及び防災関係機関の職員等、計11名

の参加を得ることができました。詳細は表3-3-4のとおりです。

また、検討会の参加者に対して、事前に開催要綱・次第の配付及び参加依頼を行いまし

た。当日の検討会を活発化させるため、各関係機関の災害時の対応態勢に関する計画資料

や、過去の被害状況及び(時系列的な)活動記録などの資料を可能な限り提供してもらう

ようにしました。

表3-3-4 中野区検討会の参加者

中野区7名、東京都第三建設事務所1名、中野警察署1名、野方警察署1名、中野消防

署1名、野方消防署2名

研究会委員:(株)防災&情報研究所代表(コーディネーター)1名、気象庁1名、国土

交通省1名、消防庁1名

計17名

3 検討会の準備

(1)配付資料

検討会において配付した資料は、次のとおりです。

○ 資料1: 検討会開催要綱及び次第

○ 資料2: 検討会の趣旨、目的等について

○ 資料3: 都市部(中野区)の降雨について (※別紙1-3-1参照)

○ 資料4: (関係機関における)水害時の災害対応について

○ 資料5: H22年図上シミュレーション訓練に向けたポイントの検討

(※別紙1-3-2参照)

○ 資料6: アンケート調査票 (※別紙4-3参照)

○ その他: 中野区洪水ハザードマップ、浸水実績図

96

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(2)資器材、小道具

検討会で使用した資器材等は表3-3-5のとおりです。

表3-3-5 検討会で使用した資器材・小道具

番号 資器材・小道具の内訳 数量

△ 1 パソコン

関連資料の説明 1式 △ 2 プロジェクター

△ 3 スクリーン

△ 4 パワーポイント資料

◎ 5 記録機器 カメラ、ビデオカメラ 1台ずつ

◎ 6 地図 被害想定、防災倉庫など書き

込み可能なもの 1枚/関係機関毎

◎ 7

小道具

(地図への書き込み用)

サインペン:黒と赤

丸シール:

赤●:危険箇所

青●:各機関の場所

緑●:防災倉庫

黄●:その他

適宜

ポストイット:メモを書き、

地図に貼り付けるため 適宜

◎ 8 ホワイトボード 検討事項の記載、共有化 2枚

◎:他の市町村で実施する場合でも必ず用意すべきもの

△:他の市町村で実施する場合、必要に応じて用意するもの(より効果的な訓練が可能となるが、な

くても支障なく訓練が可能)

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(3)会場設営

会場は区役所2階の防災センター(実災害時の災害対策本部室)を利用し、次(図3-3

-1)のようにレイアウトしました。

スクリーン

ホワイトボード(地図への書き込み)

図3-3―1 中野区検討会の会場レイアウト

入口

写真3-3-1 検討会会場の様子

98

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4 検討会の実施

表3-3-3の「次第」に基づき、まず主催者より、検討会の実施背景、目的について説

明を行いました。

(1)図上シミュレーション訓練についての説明

今回の検討会は、来年度に実施予定の「図上シミュレーション訓練」の企画、準備会議

との位置づけにあるということから、まず、図上型防災訓練の学識経験者(研究会委員)

より、「図上シミュレーション訓練」に関する以下の事項を盛り込んだ説明を行いました。

詳細は参考資料1-3-2を参照してください。

(2)中野区の降雨についての説明

来年度に実施予定の「図上シミュレーション訓練」において、気象条件をはじめとする

被害などの状況設定は訓練企画の前提となりますので、気象庁の防災専門家(研究会委員)

より、中野区の降雨の特徴などに関する説明を行いました。詳細は参考資料1-3-1を

参照してください。

主な説明事項は次のとおりです。

(ア)都市部(中野区)における大雨発生のメカニズム

(イ)雨の強さ(1時間雨量)と降り方(降雨イメージ、屋外の様子、災害発

生状況)との関係

(ウ)大雨の場合に気象庁が発表する防災気象情報の流れ(来年5月(予定)

から区市町村単位での警報・注意報の発表を開始する。)

(エ)集中豪雨と局地的大雨の比較

(オ)都市部の降雨による水位上昇、土砂災害の発生について

(ア)図上型防災訓練の目的と種類

(イ)図上シミュレーション訓練の実施方法(イメージ)

(ウ)図上シミュレーション訓練における状況設定

(エ)来年度図上シミュレーション訓練の実施スケジュール(案)

99

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(3)(各機関における)風水害対応についての説明

次に、風水害時の災害対応について、中野区及び防災関係機関による説明が行われまし

た。説明の要点は表3-3-6のとおりです。

表3-3-6 (各機関における)風水害対応についての説明要点

機関区分 (風水害時の)災害対応の態勢等について(ポイント)

① 中野区

○ 以下に示す6種類の災害応急対策態勢があり、それぞれの要員数、

参集招集基準についての説明があった。

夜間休日連絡態勢

情報連絡態勢

初動配備態勢

非常配備態勢(第1次)

非常配備態勢(第2次)

非常配備態勢(第3次)

○ 態勢ごと動員人数についての説明があった。また、課題として、夜間

に風水害が発生した場合に、職員の参集に時間を要したことが取り

上げられた。

○ 平成17年災害時における中野区の対応についての説明があった。

9月4日 20:11 「大雨洪水警報」の発令により、情報連絡態勢を取

ったが、職員の参集に時間を要した。

○ 防災センター(災害対策本部室)の情報受伝達についての説明があ

った。

リアルタイムで雨量、水位の情報が分かるようになっている。

関係機関との連絡先(電話番号)は壁に書かれており、一目でわか

るようになっている。

100

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東京都 (第三建設

事務所)

○ 平成17年災害時の第三建設事務所の対応についての説明があっ

た。

9月4日 15:11 の「大雨雷洪水注意報」の発表に伴い「連絡態勢」

をとった。

9月4日 20:11「大雨洪水警報」の発表に伴い「警戒配備態勢」をと

った(東京都では、「第4非常配備態勢」まで計6段階の態勢があ

る)。

野方消防団の要請で排水ポンプ車を出動し、地下に入った水を排

水した。

当時護岸(2箇所)が崩壊し、土嚢の積み上げ対応や、中野区に土

嚢積みの対応をお願いした。

○ (神田川地下調節池などの)取水状況についての説明があった。

中野区に流れている中小河川は、5分間で水位が2mくらい上昇す

ることもあれば、雨がやむと、水位が急に下がることもある。

平成17年災害当時は、妙正寺川、善福寺川からの取水施設がなく

て、神田川地下調節池は、第1期事業が供用開始、第2期の事業は

工事中であったため、神田川の取水施設だけで水を取り入れる状

況にあった。これでは下流が危ないと判断されるため、第 2 期の工

事箇所に合わせて計42万トンの水を入れることにより、神田川の被

害がかなり少なかった。

今は、妙正寺川、善福寺川という両川からの取水ができ、全部で54

万トンの水を貯めることができるようになった。今年の18号台風の時

には、神田川善福寺川から54万トンの94%(50.5万トン)を取水す

ることにより、浸水被害がなかった。

○ 取水の手順についての説明があった。

「注意報」が発表されると、善福寺川妙正寺川神田川3箇所の取

水を一元管理ができるようになっている。善福寺川にある取水施設

に「注意報」が発表されると、職員2名を配置する。

それぞれ神田川善福寺川妙正寺川のゲートをめいっぱいまで止

め、基準点を超えた時点でゲートをおろして、調節池に入れる。

ゲートを操作するときに、中野区、消防庁、警視庁に連絡する。貯

留量が8割になったとき、同じように連絡する。

調節池は重要な役割を果たすが、満杯となってしまった後には、効

果がない。

○ 今現在の取り組みについての説明があった。

H17年災害を受けて、現在「河川激甚災害対策特別緊急事業」に

より国から補助金があり、来年の3月までには断面は今までより大き

くなる予定である。

③ 中野警察署

○ 中野警察署の風水害対応態勢についての説明があった。 気象に関する情報が出されると、警備課内に「準備態勢」(係員が

12名で24時間体制)をとることになる。

中野警察は交番30名くらい、本署当番員20名くらいいるので、災

101

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害の警報などに応じて署員の招集をかける準備はしてある。また単

身寮があるので要員も署にあつめるような態勢をとっている。ある程

度の人員を確保できる。

○ 平成22年台風18号時の対応についての説明があった。 警察も態勢をとり、神田川護岸の周辺をパトロールした。

○ 浸水危険箇所についての説明があった。 過去に、山手通りに宮下という今工事中の交差点があり、そこは冠

水してしまうので交通規制をせざるをえない状態にあった。現在は

山手通りの道路工事も完成しているので、当時より状況は改善され

たと考えている。

野方警察署

○ 野方警察署の風水害対応態勢についての説明があった。 中野と大体同じ体制で、通常は宿直体制で20名、交番等含めて4

0名近く、署員の1/3程度で稼働しているというのが現状。緊急時

にはプラス30名くらい招集し、被害場所の調査、避難誘導をかけら

れるような態勢をとっている。

警察の大きな役割は「避難誘導」と「交通規制」なので、過去に被害

の起きた江古田川と妙正寺川の合流地点(江古田1丁目付近)にお

ける被害を想定し、新青梅街道の蓮華寺下交差点、江古田4丁目

付近の交通規制によって住民の避難ということをシミュレーションし

ている。

○ 浸水危険箇所についての説明があった。 野方警察署の浸水危険区域としては、河川付近、低地地区36箇所

を危険場所として認定、署員にも周知を徹底している。

○ 平成17年災時の対応についての説明があった。 署長以下67名で避難誘導交通規制を実施した。

④ 野方消防署

○ 消防署の風水害対応態勢についての説明があった。 「水防態勢発令基準」に示すとおり、「第一非常配備態勢」から「第

四非常配備態勢」まで4段階に分かれている。それぞれの発令基準

と配備人員が決められている。 これ以外に、局地的な集中豪雨に対応するため、方面ごと、各署ご

とに対応するため2段階に分かれている。(水防第一第二非常配

備態勢)それぞれの発令基準と配備人員も規定されている。

○ 消防署の風水害対応事項に関する質疑応答があった。 質問:消防機関の方は避難誘導もするのか? 回答:

消防は水害に伴う救助を最優先に対応しているのが現状である。た

だ、逃げ遅れて救助する際の「避難誘導」はある。消防団は消防署

員の下で活動する。

火災落雷のために、2通りの動きがある。野方、中野署の定員が2

50名で、そのうち1/3が集まる。夜間の場合には参集が困難となり、

今いる態勢では60~70名にしかならないと思う。近隣の消防団員

については配備態勢を上にあげていけば参集できるかもしれない。

102

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今高齢者が増えているので、緊急時の対応を考えなければならな

いと思っている。

(4)図上シミュレーション訓練の実施に向けたポイントの検討

来年実施予定の図上シミュレーション訓練について、次の事項について検討を行いまし

た。検討結果の要点は表3-3-7のとおりです。

表3-3-7 図上シミュレーション訓練の実施に向けたポイントの検討要点

検討事項 議事要旨

① 想定する発災規模

時間帯について

コーディネーター:

予想される発災規模について、考えられるものとして、2つのケ

ースが挙げられる。それぞれの特徴は以下のとおりである。

(1)平成17年災害と同程度:

妙正寺川溢水、神田川は大丈夫という前提で、中野、野方のど

ちらの対応に区分けされることになる。

(2)強い台風が東京を直撃:

中野区全域の対応になり、外部からの応援などは望めない形に

なってくる。

野方消防署:

今年8月に実施した水害図上訓練では、短時間集中豪雨の対

応を訓練目標とし、平成17年の集中豪雨(妙正寺川溢水など)

を想定している。

東京都第三建設事務所:

今年の台風18号において、同じ中野区でも妙正寺川と神田川

とでは雨の降り方が異なった。

中野区:

現在の職員態勢は17年災害を基準としているので、北の区域

の対策に重点をおいている面があるが、次回の訓練では、平日

の昼に集中豪雨が中野区全域に降っているという前提が良いと

思う。

② 災害因について 災害因として、内水氾濫、外水氾濫、堤防決壊とあるが、堤防決

壊まで入れるかどうか。

区内に堤防はなく、堤防決壊の想定は現実的ではない。護岸

決壊は考えられるかもしれない。

水位が上がり、水が引いていくときに老朽化している護岸が崩れ

てもっていかれるという現象がある。

103

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中野区の洪水ハザードマップは「東海豪雨」と同等の降雨を想

定して作られたものである。あとは実際の出た場所と地盤の高さ

による想定。掘りこみなので決壊して水が氾濫することはないと

思う。

③ 警戒区域について

※地図上への書き込

みをしながら、検討を

進めていた。

コーディネーター:

警察、消防、第三建設事務所の方で、警戒すべきところがあれ

ば教えてください。

中野区:

今日は時間が限られているので、各関係機関を回らせてもら

い、結果を整理する。

④ 被害情報等の収集

方法について

コーディネーター:

区役所には、区民からの通報が来ない可能性もあると考えられ

る。どのように被害情報を収集するか教えてください。

中野区:

河川情報システムや、区職員、あるいは区民の電話などから情

報を収集している。

警察、消防とも河川情報システムを持っているので、雨量や

水位の情報は連絡していない。

・ 避難勧告を行う場合や交通規制が必要な場合などに、連絡

を取り合っている。

⑤ 情報に基づく(避難

勧告等の)判断基

準について

気象庁:

神田川の場合は水位上昇が早いので、注意報はなく、いきなり

洪水警報発表となる。このため、リードタイム確保は厳しい。

中野区:

地域防災計画において、「避難の勧告及び指示」に関する記述

はあるが、基準ではない。数値基準を作成しても、その通りに避

難勧告を出せるか、難しい問題である。

気象庁:

類似台風という進路が似た過去の台風の例を示していた時代

があったが、その進路しか進まないと誤解される危険性があり、

最近は使っていない。台風が日本付近に接近すると大きく進路

を変えたり複雑な動きをするので、気象庁が発表する最新の台

風情報を使っていただきたい。

「避難イコール避難所へ逃げる」は、台風のように何日も前から

赤い丸:

警戒箇所

青い丸:

消防署等防災

104

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情報が出る場合は有効である。しかし、平成 17年 9月の大雨の

ように避難所に向かうことが危険な場合には、とっさの手段として

2階や高いところに逃げて危険回避、あるいはそこで救助を待つ

ことも選択肢であることを啓発するのが重要だ。

コーディネーター:

2階のない家などは隣同士の助け合いが重要であるが、お互い

に知り合いでないとうまくいかない。都市部での大きな課題であ

り、個別の避難アドバイスは非常に難しい。

中野区:

中野は、護岸の崩壊がなければ2階に逃げれば大丈夫だと思う

が、計画上は「高い場所」に避難することになっている。

コーディネーター:

5mの浸水区域では2階では間に合わない。

気象庁:

床上浸水30cm で寝たきりの方が亡くなった事例もあり、人命を

守るにはリードタイムを確保した情報発表が重要となっている。

⑥ 要援護者対応につ

いて

コーディネーター:

中野区では、福祉施設が危険箇所にあるか?要援護者は消防

で対応するのか?

中野区:

要援護者対策は、手上げ方式で行っている。

消防署:

消防は「救助」が前提なので、一番困っている人に対応する。

⑦ 避難場所について コーディネーター:

訓練の時の避難先はどこになっているのか?

中野区:

地域センターが一時避難所になっている。

コーディネーター:

指定避難所への避難者は少ないのではないか?

中野区:

17年災害では、1週間後には避難者のほとんどが避難所から自

宅へ戻っている。

⑧ 訓練における「プレ

イヤー」と「コントロ

ーラー」の編成につ

いて

コーディネーター:

来年の図上シミュレーション訓練で、「プレイヤー」と「コントローラ

ー」をどのように分担するか?

105

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中野区:

(今日の検討会に参加している)関係機関がシナリオを書いてし

まうと、プレイヤーにはなれないのでは。

関係機関の方がどこまで参加するか、今後の協議となる。

できれば、消防警察もプレイヤーとして、例えば隣の部屋にき

て対応するような訓練までやって頂きたい。その可能性につい

て、今後ご相談させて頂きたい。

5 検討会効果の検証及び今後の課題について

今回中野区において実施した検討会の効果について、以下の観点と方法により検証を行

いました。

① 検討会の目的を達成したかどうか(→検討結果の分析)

② 参加者の感想(→調査票によるアンケート)

③ 防災担当者自ら企画実施する可能性及び課題等について

それぞれの検証結果は以下のとおりです。

(1)検討結果の分析

検討会での討論の結果を踏まえると、来年実施予定の図上シミュレーション訓練につい

て訓練時間や状況設定等一定の共通認識を得ることができました。本検討会の目的は概ね

達成したものと言えます。

(2)参加者の感想

検討会の後に、参加者に対してアンケート調査を行いました。

「図上シミュレーション訓練の企画にあたって、必要な被害状況等の想定、それに対す

る区民及び関係機関の対応、対応実施上のポイントなどについて、イメージを持つことが

できたと思いますか?」という問に対しては、「大いに思う」と「ほぼ思う」併せて、8割

以上の回答が得られ、本検討会の内容や方法が有効だったと考えられます。

また、「関係機関職員との“顔の見える関係”づくりに役立ちましたか?」という問に対し

ては、「大いに思う」と「ほぼ思う」併せて、100%の回答が得られており、関係機関が

参加した本検討会は有効だったと考えられます。

さらに、参加者は、印象に残ったキーワード及びその理由について、「顔の見える関係」、

106

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「連携」、「協力」などの意見が取り上げられたことからも、概ね当初の目的は達成してい

たものと言えます。

アンケートの集計結果(N:有効回答数)。

(ア)本検討会を通じて、来年度の風水害対応図上シミュレーション訓練の企画にあたっ

て、必要な被害状況等の想定、それに対する区民及び関係機関の対応、対応実施上

のポイントなどについて、イメージを持つことができたと思いますか?

N=16 6人

(37%)

8人

(50%)

2人

(13%)

0人

(0%)

0人

(0%)

(イ)このような検討会は、関係機関職員との「顔の見える関係」づくりに役立ちました

か?

N=16 10人

(62%)

6人

(38%)

0人

(0%)

0人

(0%)

0人

(0%)

(ウ)検討会の環境(会場、資器材等)はどうでしたか?

N=16 1人

(6%)

3人

(19%)

3人

(19%)

6人

(37%)

3人

(19%)

(エ)検討会の時間は適切でしたか?

N=13 0人

(0%)

4人

(31%)

7人

(54%)

2人

(15%)

0人

(0%)

1 3 5 42

大いに思う あまり思わない わからない ほぼ思う 全く思わない

1 3 5 42

大いに思う あまり思わない わからない ほぼ思う 全く思わない

1 3 5 42

わるい わからない よい

1 3 5 42

短すぎた 適切 長すぎた

107

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(オ)今回の検討会に参加してよかったと思いますか?

N=13 0人

(0%)

0人

(0%)

3人

(23%)

4人

(31%)

6人

(46%)

(カ)感想文:今回の検討会のキーワード(あなた自身が感じた言葉)を のなかに

入れてください。次にそのキーワードを選んだ理由を記述してください。

キーワード 選んだ理由

顔の見える関係 いざというとき大切

それぞれに 風水害時にがんばっていたがお互いを知らなかった。

連携 できているようでまだお互いに確認することが多いと思った。

協力 これからも協力していく必要を感じた。

三建(東京都第三建設事務所) 河川管理者の対応が理解できた。

2階 住民に対して行政が対応を行うことは無理。自助の意識を持っても

らうことが重要である。

緊急対応 関係機関の対応・連携

訓練の目的 ・ 中野区では都市部の非常に典型的な自治体で、河川が全川堀

り込み河道であり、内水や外水氾濫で死者が出る可能性が薄い

ため、避難の内容や勧告のタイミングが難しい自治体だと思っ

た。

・ そのため訓練の最終目標として、人命を考えるのか、重要施設

の被災防止や交通規制などにとどめるのかを考えた方がよいと

思われる。人命を考える場合は要援護者の対応やアンダーパ

ス、低地、地下街に絞って計画作りから始めるのがよいと思う。

避難、避難勧告 都市河川が流れている流域でどこまで周知徹底できるか。

参加規模 情報提供を行う各関係機関について

(3)防災担当者の感想

中野区防災担当者に対して、今回の検討会の効果及び自ら企画実施する場合の問題につ

いて、意見を聞きました。主な意見は次のとおりです。

1 3 5 42

思わない どちらともいえない 思う

108

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(参考)訓練進行者(高梨委員)からのコメント

区が災害対策を実施する場合に、警察署、消防署との連携は非常に重要ですが、

連携して風水害訓練を実施している自治体は、東京23区のような都市部では少な

いと思います。各機関の風水害対策に関する具体的な活動内容を共有する場をつく

ることができたこと、また、来年の風水害訓練を連携して実施するという確認がと

れたという意味で、今回の検討会の意義は大きかったと思います。今回の検討会で

議論いただいた内容を、来年実施予定の風水害訓練にいかしていきたいと思います。

中野区の場合、過去に幾度か規模の大きな水害を経験しているため、訓練の想定

等は比較的つくりやすい状況だと思いますが、そうでない自治体が訓練を企画する

場合は、かなりの困難を伴うのではないかと感じました。

○第1回目の検討会としては、以下のとおり災害イメージが深められ、関係機関のコミュニケーショ

ンが図られ、各機関の対応や、検討すべきポイントなどが把握され、意義が大きかった。

○検討時間が短かったため、地図を使っての検討や地域特性を踏まえた詳細化が十分にできなかっ

た。

1.災害イメージの共有

○関係機関が重視している危険箇所を挙げることにより、水害による危険箇所が立体的に浮かび上

がった。

・警察機関:交通規制すべき交差点=中野区防災マップに含まれていない最新の情報。

平成17年災害の時に被害の大きかった北部方面だけで

なく、南部方面にも配意すべきことがわかった。

・気象庁岡田委員からの指摘:過去の豪雨災害時における気象データを中野区にあてはめると、

広範囲にわたる豪雨もあり得ることが指摘された。

・調整池による効果と限界

2.関係機関の対応状況の把握

○都内における防災関係機関の対応が把握された。

・警察機関の対応:パトロール、警戒配備、交通規制、避難誘導

・消防機関の対応:巡回、警戒・待機、救助・避難誘導(ボートなどの資機材は?)、水防活動、

被災後の応急復旧活動

・野方消防団の対応:第三建設事務所に排水ポンプ車の出動を依頼し、排水活動

・第三建設事務所:調節池の管理、水防活動、被災後の応急復旧活動

3.中野区の災害対策本部としての課題

・関係機関との情報収集ルートの整備:第三建設事務所からの情報伝達方法の確認

・区役所の所内態勢の問題:庁内連携、防災情報システムの活用のあり方等

109

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第4章 まとめと今後に向けて

本章では、第2章で検討した地方公共団体における討論型図上訓練のあり方を踏まえ、

鹿児島県伊佐市、東京都中野区及び岐阜県神戸町におけるケーススタディとしての訓練企

画実施経過を参照しながら、討論型図上訓練の効果を検証するとともに、企画実施過程に

おける留意点について検討、整理し、今後に向けて、調査研究の方向性を示しました。

第1節 まとめ

1 討論型図上訓練の効果

ケーススタディは、表4-1-1に示す目的・訓練対象者・手法により実施しました。

ケーススタディを通じ、討論型図上訓練の効果として下記の点が検証されました。

表4-1-1 ケーススタディにおける訓練目的・訓練対象者・手法のまとめ

実施場所と訓練目的 訓練対象者 手法

【鹿児島県伊佐市】

■住民による適切な避難行動を促すため、

• 災害イメージの形成

• 応急対策活動のイメージ形成

• 普段準備しておくべき事項の抽出

・防災担当以外の職員

・地域住民

防災グループワーク

【鹿児島県伊佐市】

■「避難所運営マニュアル」の作成に向けて、

• 避難所運営の模擬体験

• 避難所運営上の課題の抽出

・防災担当以外の職員

・地域住民

避難所運営ゲーム HUG(ハグ)

【岐阜県神戸町】

■「避難勧告等の判断・伝達マニュアル」作成

に向けて、

• 災害イメージの具体化

• 求められる行政対応及び住民対応の明

文化、共有化

• 関係機関との「顔の見える関係づくり」

・防災担当以外の職員

(管理職)

防災ワークショップ

【東京都中野区】

■図上シミュレーション訓練の企画・実施に向

けて

• 参加機関顔合わせ

• 訓練の企画に当たって必要な被害状況

等の想定、想定される被害内容によって

異なる関係機関の対応、対策実施上のポ

イントの検討

・防災担当職員(防災

関係機関含む)

訓練企画準備のための検討会

110

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(1)直接効果

① 地域の危険箇所、災害イメージの形成

➾ 例えば、伊佐市・神戸町のケーススタディにおいては、以下のよ

うな意見が挙げられた。

� (伊佐市)地域の危険箇所を再認識し、地区別の被害状況をより深く理

解することができた。

� 当町(神戸町)は被害が少ない町と認識していたが、町の状況を改めて

見て危険箇所が多いことに驚いた。

② 基礎的情報読解力、情報処理能力の養成

➾ 例えば、神戸町のケーススタディにおいては、以下のような意見

が挙げられた。

� 気象台、国交省などの防災情報について理解できた。

� 同じ警報でも被害への対応に大・小、強・弱がある。情報の内容をしっ

かりみて、避難勧告等を出さなければならないと感じた。

③ 災害対応上の重要事項、問題・課題の抽出

➾ 例えば、伊佐市のケーススタディ(HUG)においては、以下の

ような意見が挙げられた。

� 次から次へと避難者がくるので、どう対処していいのか分からなくなっ

た。現実はもっと厳しいのではないかと思う。

� (避難所運営に)しっかりした責任者が必要と思った。

111

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(2)間接効果

① 防災対策に取り組む動機付け

➾ 地域危険箇所の認識や災害時対応活動の流れ、問題及び課題を理

解することにより、今後防災対策へ取り組む動機付けが可能とな

ります。例えば、

� (神戸町)風水害対応を図るには、今後より多くの住民の力を活用する

ことを考えていきたい。

� いざという時、スムーズな行動ができるように、訓練を重ねることが必

要である。

② 訓練参加者(関係機関)間の「顔の見える関係」づくり

➾ 例えば、神戸町のケーススタディにおいては、以下のような意見

が挙げられた。

� 他機関を交えた訓練を今まで実施していなかったので大変良かった。

� それぞれの機関の役割分担的なものがよく理解できた。

� (関係機関の職員と)直接に話し合うことはできなかったが、説明や意

見を通して顔の見える関係になったと思う。

� 今後(関係機関とは)防災に対する意見、連絡等が出来やすくなった。

災害時にも情報交換等に役立つと思う。

� (風水害対応に関わる)具体的な関係機関と担当者が分かって良かった。

③ 災害対応マニュアルの作成のきっかけ

➾ 討論型訓練では、被害想定や対応活動の状況想定を行い、そのな

かで災害対応上の問題・課題を抽出することから、訓練結果を災

害対応マニュアル(対応事項及びそれぞれの実施手続き)の作成

に繋げることが可能である。例えば、ケーススタディにおいては、

以下のような意見が挙げられた。

� (神戸町)早急にマニュアル作成をしないと、災害時のことを考えると

不安になった。現実に大災害が発生したとしたら何も動けない。

� (伊佐市)避難所の指定、配置場所等、事前にマニュアルを作成し避難

場所に掲示しておくべき

112

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2 討論型図上訓練の企画実施及び評価・検証段階における留意点

効果的な討論型図上訓練の実施のためには、企画実施及び評価・検証段階において次の

点に留意する必要があります。

(1)企画段階での留意点

ア 訓練目的の明確化

討論型図上訓練の実施に先立ち、まず、当該市区町村の地域特性、災害特性を十分に把

握して、市区町村にとっての防災対策上の問題点・課題とあるべき対策などを整理し、訓

練目的を明確にすることが出発点です。留意点は、次のとおりです。

① 訓練目的が不明確なまま準備作業を進めていくと、この後の訓練プログラムの作成

や役割分担などの作業に影響するので、特に留意する必要があります。

② 訓練目的は広すぎないように、絞りの効いた具体的な設定にする必要があります。

それによって、参加者は訓練で何が求められているかがはっきり理解でき、司会者も

進行しやすくなります。

③ 訓練目的を具体化した学習ポイントに基づき、事前に講評のポイント等を作成して

おくと、より効果的な討論と振り返りが図れます。表4-1-2に例示します。

表4-1-2 学習ポイントに基づく講評のポイントの作成例 (伊佐市グループワーク)

学習ポイント 講評のポイント

① 災害イメージの形成

➾ 被害想定

➾ 情報入手の必要性

① 災害イメージを持つことが重要

• 過去の災害事例をふり返る

• 防災マップの活用

• 災害は急に襲ってくるので、正確な予想は困難であ

るため、情報収集が必要。

② 応急活動のイメージ形成

➾ 避難の前にやるべきこと ② 避難の前にやるべきことがある

• 水に浸かったら困るもの(例:車、貴重品等)を安全

なところに移す

イ 訓練プログラムの作成

訓練目的によって、シナリオ作成や討論の進め方も異なってきます。訓練目的が十分に

達成できるように、シナリオ作成や討論の進めたを含めた訓練プログラムを作成する必要

があります。表4-1-3に設定例を示します。

113

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表4-1-3 訓練目的に応じたプログラムの設定例

訓練目的の例 シナリオの作成例 討論の進め方の例

災害(被害様相及び対

応活動)のイメージ形成

普段準備しておくべき

対策事項の抽出

過去特定の災害事例を再

現する概略的シナリオを設

定する。

提示される場面ごとの災害状況

を踏まえ、以下の事項を討論して

いく。

具体的な災害イメージ

行うべき対応行動及び、そのた

めに普段準備しておくべき対策事

計画、マニュアルづくり

最悪ケースを念頭に置き

ながら、幾つものケースを想

定したうえ、被害状況などの

概略的シナリオを設定する。

それぞれのケースにおける被

害想定を踏まえ、具体的な被害様

相及び対応上の事項、問題と課

題を洗い出していく。

(2)実施段階での留意点

討論型図上訓練において、訓練の主体は訓練進行者でなく参加者であるため、参加者が

自発的に討論をする環境を整えることは訓練進行者の最も大きな役割となります。

訓練進行者の留意点は概ね次のとおりです。

ア オリエンテーション

必要に応じて、討論に入る前に、訓練に関する説明のみならず、アイスブレイキング(氷

を溶かす)という手法を活用して、参加者の自己紹介を行うことにより、参加者同士のコ

ミュニケーションを円滑にできるように、雰囲気作りを心がけることが重要です。

ただし、限られている訓練時間の中で、多くの時間をかけないことに留意する必要があ

ります。

イ グループ討論

参加者が進め方を十分に理解できず、スムーズに進行していかないことがあります。そ

の際には、訓練進行者に会場全体に回ってもらうか、または、前もって訓練の経験者を各

グループに配置するよう、参加者のグループ編成を行っておくなどの配慮をする必要があ

ります。

ウ 振り返り

振り返りは、討論型図上訓練の実施における最も大切な場面で、グループごとに参加者

が検討結果を発表する部分と、訓練進行者が総括的に講評する部分から構成されます。

グループ発表を通じて、グループごとの違いと同一性を見出し、その理由を考えること

114

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ができます。

訓練進行者が講評(全体のとりまとめ)を行うことにより、訓練で学習できたポイント

の確認、参加者間の意識共有、今後に向けての取り組みを促進することができ、訓練効果

をさらに高めることに繋がります。

時間が足りない場合であっても、振り返りの部分は省略しないように留意する必要があ

ります。グループが多い場合は、いくつかのグループに絞った意見発表を行い、解説を行

っていくようにする方法があります。

(3)評価・検証段階の留意点

訓練の目的、ねらいに応じた評価・検証を行うことが、訓練の効果を高めることに繋が

ります。参加者へのアンケート調査によって達成度を評価する場合は目的、ねらいに応じ

たアンケート項目を事前に設定しておくなどの準備が必要となります。また、討論結果の

分析などを通じて、風水害対策に係る課題がさらに抽出されたり、さらには、当初設定し

ていた訓練の目的、ねらいでは想定していなかった成果が得られることもあります。

115

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第2節 今後に向けて

1 討論型図上訓練の実効性を高めるために

討論型図上訓練の実効性を高めるために必要な取り組みとしては、次のような点が考え

られます。

(1)討論結果の防災対策への反映

訓練は、あくまでも防災力の向上を図る手段の一つであり、その実施自体が自己目的化

しないように、訓練結果を防災対策(防災計画、災害対応マニュアルの作成など)へ繋げ

ていくことが重要です。

討論型図上訓練の実施結果を踏まえ、対応型図上訓練への展開や、防災計画・マニュア

ルの作成(見直し)に取り組んでいくことが望まれます。

(2)段階的、継続的に実施する

訓練は1回限りで終わらせるものではなく、訓練目的、テーマ、前提条件等を変えて何

度も繰り返して実施する必要があります。

地方公共団体における総合的な危機管理体制の充実・強化を図るため、地域の実情に応

じて、基本事項や優先順位を踏まえ、段階的、継続的に取り組んでいく必要があります。

2 今後の調査研究の展開

本年度は、部署(機能)別の能力向上を図るため、適用可能な討論型図上訓練手法の検

討及びケーススタディによる検証を行いました。得られた成果を踏まえ、今後、もう一歩

レベルアップできる実戦的な訓練方法に関する調査研究への展開が必要と考えられます。

また、図上型防災訓練を企画・準備から実施、検証に至るまで、市区町村自らが取り組

むための支援として、より簡易で応用範囲が広い風水害版の図上型防災訓練マニュアルの

作成を目指す必要があると考えられます。

116

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参考文献・ホームページ

(1) 防災関連

・災害社会学入門 大矢根淳、浦野正樹、田中淳、吉井博明編、弘文堂(2007 年 12 月)

・災害危機管理論入門 ―防災危機管理担当者のための基礎講座― 吉井博明、

田中淳編、弘文堂(2008 年 4 月)

・災害情報論入門 田中淳、吉井博明編、弘文堂(2008 年 12 月)

・豪雨の災害情報学 牛山素行(2008 年 10 月)

・豪雨と斜面都市 ―1982長崎豪雨災害― 高橋和雄(2009 年 1 月)

(2) 風水害に係る用語集関連

・気象庁ホームページ http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/mokuji.html

・国土交通省ホームページ http://www.mlit.go.jp/index.html

・独立行政法人 防災科学技術研究所ホームページ

http://issdmfs.bosai.go.jp/bosai/jsp/contents/yougo/term.htm

(2) 状況予測型訓練関連

・「地域防災実戦ノウハウ(18)実戦的な防災訓練を目指して(その 1)~(その 25)まで継続

中」、(財)消防科学総合センター機関誌「季刊 消防科学と情報」No61 (2000.夏号)

日野宗門

同記事は、(財)消防科学総合センター ホームページの「地域防災実戦ノウハウ」サ

イトで閲覧可(URL:http://www.isad.or.jp/)

・Blog 防災・危機管理トレーニング-自治体の防災・危機管理担当者のための実践力向

上サイト- 以下のサイトで、状況予測型訓練のほか、各種訓練手法等について記述。

(URL:http://bousai-navi.air-nifty.com/training/)

(3) DIG (ディグ)関連

・災害図上訓練 DIGマニュアル第 2版、60p、1999:DIGマニュアル作成委員会

・DIG に関する記事は、富士常葉大学環境防災学部小村隆史准教授による「DIG」関連サ

イトで閲覧可.(URL:http://www.e-dig.net/)

・総務省消防庁消防大学校:自主防災組織づくりとその活動 自主防災組織教育指導者

用教本、平成19年3月

(4)避難所運営演習HUG(ハグ)関連

・静岡県西部危機管理局ホームページ http://www.pref.shizuoka.jp/bousai/seibu/hug/index.html (避難所運営ゲーム HUG(ハグ)のやり方や体験会の実績・予定などが公開されています。)

※訓練経験者の養成として活用できます。「第 4章第 1節 2 (2)イ グループ討論」参照

(5) 図上シミュレーション訓練関連

・『図上シミュレーション訓練(図上訓練)を効果的に実施.するための考察』

坂本朗一、高梨成子、吉井博明、地域安全学会梗概集 No.10、2000

117

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・「防災行政職員を対象とした図上シミュレーション訓練の実施による効果」

坂本・高梨、消防研修、第 74 号、P37-P53、消防大学校、平成 15年 10月

・「図上演習による研修効果と課題-図上シミュレーション訓練の実施検証を基に-」坂

本・高梨、地域安全学会梗概集、2005. 11

・「消防広域応援に関する図上シミュレーション訓練の適用及び評価手法の考察」

坂本・高梨、地域安全学会論文集 No. 8、2006. 11

・「図上シミュレーション訓練企画マニュアル-日本赤十字社都道府県支部編-」日本赤

十字社:2006.3.本マニュアルは、以下のサイトからダウンロード可

(http://www.jrc.or.jp/active/saigai/manual/pdf/kunren/kunren_nisseki.pdf)

・「市町村職員による災害対策本部の図上シミュレーション訓練のシナリオ作成手

法に関する考察」、胡哲新、秦康範、伊藤豊治、齋藤泰:地域安全学会論文集、No.9、

pp.271-278、2007

(6) ロールプレイング訓練関連

・「災害時の危機管理訓練 ロールプレイングマニュアル BOOK、136p、2001.3」災害危機

管理研究会

(7) 消防大学校:消防研修 第 74 号、167p、2003.10.

・「図上訓練の新しい流れ、p.4」日野宗門、(財)消防科学総合センター

・「防災行政職員を対象とした図上シミュレーション訓練の実施による効果、p.37」坂本

朗一・高梨成子、(株)防災&情報研究所

・「人と防災未来センターの災害対策専門研修における図上演習について、p.89」

秦康範・柄谷友香・越村俊一、人と防災未来センター

・上記のほか、陸上自衛隊・国土交通省・経済産業省及び都道府県・市町村・消防機関に

よる図上訓練に関する記事を多数所載

(8) その他

・(財)消防科学総合センター「季刊 消防科学と情報」「特集防災訓練1(No63 )」及び 「特

集防災訓練2 (No64)に関連記事あり

・(財)消防科学総合センター機関誌「季刊 消防科学と情報」No.88(2007.春号)「特集 図

上訓練」において、主な代表的な図上訓練手法の記事を掲載.同記事は、(財)消防科学総

合センターホームページの「季刊 消防科学と情報」サイトで閲覧可。

118

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【参考資料】

119

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120

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1.ケーススタディにおける配付資料

1-1 伊佐市における防災グループワーク及び避難所運営ゲームHUG(ハグ)

121

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H21年度鹿児島県伊佐市における

図上型防災訓練 プログラム

日時:9月15日(火) 13:00 ~ 16:50

場所 : 大口元気こころ館

時 間 概 要 担 当

13:00~13:10

13:10~14:40

14:40~14:50

14:50~16:20

16:20~16:50

・鹿児島県伊佐市挨拶

・総務省消防庁挨拶

・(財)消防科学総合センター挨拶及び

関係者紹介

グループワーク

進め方等説明(10分)

・ 場面Ⅰ(30分)

・ 場面Ⅱ(30分)

・ 場面Ⅲ(20分)

休 憩 10分

避難所運営ゲームHUG

HUGの概要説明(10分)

・ 参加者の自己紹介(10分)

・ HUGの実施(50分)

・ グループ別の発表(20分)

感想、意見交換

検討結果のまとめ

閉会

(アンケートの回収、片づけ等)

鹿児島県伊佐市 市長

総務省消防庁 専門官 中越

(財)消防科学総合センター

審議役 田村

講師:東京経済大学

吉井教授

講師:静岡県西部危機管理局

危機管理課 倉野専門監

東京経済大学

吉井教授

参考資料1-1-1 伊佐市図上型防災訓練のプログラム

122

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2009.9.15

16

17

182021

( )

1.1 7(1)

262

← (2008.3)←←

14

http://www.asahi.com/national/update/0722/SEB200907220008.html

262

参考資料1-1-2 豪雨災害時の対応(グループワークの説明資料)

123

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↓↓

(2)

7 2011 1213 1818 40

7 2106 2807 40

8 10 9 10→

7 21 13 5015 5016 50

(3)7 2108 30

8202 192

14265 64

←7 25 1,05010 262

262 5m)

0 15

7 40 8 10 9 10

←7.22

1314 1017 20

124

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(4)1)

2)

→→

3)

10 1

8 9 326.5mm 24

8.4m2004 21

20 8774 579 14

115 84%

40%32%

53%

10 8

1

6→

→ ( ) ( )

125

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1)3.5 2.7 8

30 10

2)

←18

3)(1)

table-top exercise

a.

b.

(2)

1.11.21.3 DIG (Disaster Imagination Game)

2.12.2

=HUG2.3

(1)

→DIG

126

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(2)

a.b.c.

d.

a. d.

(3) ( )1.1 ( )

a. 22 7 23

b. 7 20

c.

d. 7 22 10

e.10

f. 30 12 3018

g.

1.2a. 1b. 12 3018

c. 18

1.3 1a. 18a.1

7 18 23 1,087mm7 22 1 399mm

a.23 1 2

1 2

14 206 86

38 49 87

127

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128

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129

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a.3

( )

(

2.1 ( )1 30

10

2.2a.

b.

c.

130

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2.3 ( )a.

b.c.

d.

e.→

f.→

3.1 (a. 1 90mm

30

b.

c.10cm

d.

3.2 ( )a.

b.50cm

3.3 ( )a.←

b.→ /

c.

1)

2)

131

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3)

← (nomalcy bias)

4)

A

30 40

C

E

3

132

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伊佐市図上型防災訓練グループワークにおける回答用紙

【一般用

状況(場面)設定 1

a. 今日は、平成 22 年 7 月 23 日(金)の午後1時。あなたはいつもと同じ場所にいた

b. 3日前(7 月 20 日)から梅雨前線が九州南部に停滞。南の海上には動きの遅い台風があり、前

線の活動が活発になっている

としてください

c. 雨は降ったり止んだりの状態が続いており、ときどき激しく降っている

d. 昨日(7月 22日)の午後 10時、鹿児島地方気象台は、出水伊佐地方に大雨洪水注意報

e. 今朝になって雨が急に激しくなり、気象台は午前10時、出水伊佐地方に

を発表

大雨洪水警報

f. そしてつい 30 分ほど前の 12 時 30 分、気象台は「鹿児島県北部では猛烈な雨となっており、

を発表。

市は防災無線でこの情報を流すと同時に、「低地での浸水害や土砂災害に十分注意するよう」

呼びかけています

成 18 年災を上回る豪雨になる恐れがあります

g. 市役所は、防災無線を通じて、この情報をくり返し流すと同時に「今後の気象情報に注意し浸水

害や土砂災害に十分に警戒してください。また、

。これから夜にかけて雷を伴った猛烈な雨が降

ることが予想されます。土砂災害、浸水害、河川の氾濫には十分警戒してください」という大雨

に関する情報を出し、県民に厳重な警戒を呼びかけた

早めの自主避難をお願いします」と呼びかけま

した

【質問 a】 あなたは平日の午後 1 時頃はい

つもどこにいますか?

回答:

【質問 b】 あなたは、気象台が出した、2 時

30 分発表の「平成 18 年災を上回

る豪雨になる恐れがある」という

大雨に関する情報をどのようなル

ートから入手すると思いますか?

回答:(テレビ、ラジオ、防災無線、家族や知人など

からの電話、消防による呼びかけなどを考え

てください)

【質問 c】 もし本当に「平成 18 年災を上回る

豪雨」に襲われた場合、あなたが

お住まいの地区では、最悪の場

合、どこで、どのような被害が発

生すると思いますか?

<地図に書き込んでください>

参考資料1-1-3 防災グループワークの記入用紙

133

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状況(場面)設定 2

■ 午後 1時 30分になりました。あなたは、テレビで気象台から土砂災害警戒情報

■ 続いて、防災無線の放送から「降り続く大雨のため伊佐市では過去数年間でもっとも土砂災害

の危険性が高まっています。今後の気象情報には厳重に注意し早めの避難をしてください」と

いう放送が流れました

が出されたこと

を知りました

■ さらに 10 分ほどすると、防災無線から「昨夜からの大雨により川内川の水位が上昇し、今後、

浸水が始まる恐れがあります。このため市内全地区に対して避難準備情報

■ 低地はあちこちで水に浸かり始めています

を出しました。お年

寄りなど、避難に時間がかかる方は直ちに近くの避難所に避難してください。自治会、地域の

みなさんは援護が必要な方の支援をお願いします」という放送が繰り返されました。

【質問 a】 あなたは土砂災害警戒情報と避

難準備情報をほぼ同時に知った

ときにどのように対応しますか?

回答:

【質問b】 あなたがお住まいの地区の住民、

すぐにこの情報を入手できると思

いますか?

情報をすぐには入手できない人

がいるとしたら、それはどのような

人だと思いますか?

回答:

【質問 c】 避難の際手助けが必要な方は、

あなたの地区に何人くらいいらっ

しゃいますか?

これらの方を避難誘導するため

にどうしますか?

また、これらの人が全員避難を完

了するには、どのくらいの時間が

かかると思いますか?

回答:

134

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状況(場面)設定 3

a. 午後 1 時~2時までの1時間にさらに 90mmの大雨が降り、市は午後2時 30 分、市内全域に避

難勧告

b .防災無線からはくり返し、避難の呼びかけがなされています。テレビ・ラジオでも伊佐市全域に

避難勧告が出されたことが放送されています

を発令しました

c. 低地には至る所で水が溜まり、一部の道路は数十 cm 程冠水しています

d. 空は真っ暗で、ときどき雷がとどろいています

【質問 a】 あなたがお住まいの地区の人は

すぐに避難すると思いますか?

地区の住民ですぐには避難しな

い人が何人くらいいると思います

か?

避難しない理由は何だと思います

か?

回答:

【質問b】 あなたが近所の人と一緒に避難し

ようとしたら、道路(避難路)がひ

ざ近くまで(50cm くらい)冠水し、

水の流れも速く危険そうです。そ

うなったら、あなたはどうします

か?

回答:

135

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伊佐市図上型防災訓練グループワークにおける回答用紙

【行政用

状況(場面)設定 1

a. 今日は、平成 22 年 7 月 23 日(金)の午後1時。あなたはいつもと同じ場所にいた

b. 3日前(7 月 20 日)から梅雨前線が九州南部に停滞。南の海上には動きの遅い台風があり、前

線の活動が活発になっている

としてください

c. 雨は降ったり止んだりの状態が続いており、ときどき激しく降っている

d. 昨日(7月 22日)の午後 10時、鹿児島地方気象台は、出水伊佐地方に大雨洪水注意報

e. 今朝になって雨が急に激しくなり、気象台は午前10時、出水伊佐地方に

を発表

大雨洪水警報

f. そしてつい 30 分ほど前の 12 時 30 分、気象台は「鹿児島県北部では猛烈な雨となっており、

を発表。

市は防災無線でこの情報を流すと同時に、「低地での浸水害や土砂災害に十分注意するよう」

呼びかけています

成 18 年災を上回る豪雨になる恐れがあります

g. 市役所は、防災無線を通じて、この情報をくり返し流すと同時に「今後の気象情報に注意し浸水

害や土砂災害に十分に警戒してください。また、

。これから夜にかけて雷を伴った猛烈な雨が降

ることが予想されます。土砂災害、浸水害、河川の氾濫には十分警戒してください」という大雨

に関する情報を出し、県民に厳重な警戒を呼びかけた

早めの自主避難をお願いします」と呼びかけま

した

【質問 a】 もし本当に「平成 18 年災を上回る

豪雨」に襲われた場合、市内で特

に警戒すべき箇所(複数)はどこ

だと思いますか?

グループのみなさんで相談し、手元の地図に特

に警戒すべき箇所とそこで予想される被害を書き

込んでください。

【質問 b】この段階で、市全体の被災状況を

的確に把握するためには、どのよ

うな対応が必要だと思いますか?

回答:

136

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状況(場面)設定 2

■ 午後 1時 30分になりました。あなたは、テレビで気象台から土砂災害警戒情報

■ 続いて、防災無線の放送から「降り続く大雨のため伊佐市では過去数年間でもっとも土砂災害

の危険性が高まっています。今後の気象情報には厳重に注意し早めの避難をしてください」と

いう放送が流れました

が出されたこと

を知りました

■ さらに 10 分ほどすると、防災無線から「昨夜からの大雨により川内川の水位が上昇し、今後、

浸水が始まる恐れがあります。このため市内全地区に対して避難準備情報

■ a. 低地はあちこちで水に浸かり始めています

を出しました。お年

寄りなど、避難に時間がかかる方は直ちに近くの避難所に避難してください。自治会、地域の

みなさんは援護が必要な方の支援をお願いします」という放送が繰り返されました。

【質問 a】 (避難準備情報+土砂災害警戒

情報)段階で実際に避難するの

はどのような住民の方だと思いま

す?

回答:

【質問 b】 この段階では、避難所に市全体と

して何人くらいの方が来ると思い

ますか?

回答:

【質問 c】 災害時要援護者の方は(避難準

備情報+土砂災害警戒情報)が

出た段階でほとんど避難すると思

いますか。

避難準備情報に加えて、市として

はどのような追加的な働きかけが

必要だと思いますか?

回答:

【質問 d】 災害時要援護者のほとんどが避

難を完了するためには、どのくら

いの時間がかかると思います

か?

回答:

137

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状況(場面)設定 3

a. 午後 1 時~2時までの1時間にさらに 90mmの大雨が降り、市は午後2時 30 分、市内全域に避

難勧告

b .防災無線からはくり返し、避難の呼びかけがなされています。テレビ・ラジオでも伊佐市全域に

避難勧告が出されたことが放送されています

を発令しました

c. 低地には至る所で水が溜まり、一部の道路は数十 cm 程冠水しています

d. 空は真っ暗で、ときどき雷がとどろいています

【質問 a】 市民のほとんどはすぐに避難する

と思いますか?

ほとんどの市民が避難した場合、

避難所は満員で入れなくなりませ

んか?

回答:

【質問 b】 避難しない市民の方は、どのくら

いいると思いますか?

その理由は何だと思いますか?

【質問 c】 市民から電話で「避難しようとした

ら、道路(避難路)がひざ近くまで

冠水している。それでも、避難勧

告にしたがって避難した方がよい

のか」と聞かれました。あなただっ

たら、どう答えますか?

138

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参考資料1-1-4 避難所運営ゲーム HUG(水害版)の説明資料

139

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参考資料1-1-4 避難所運営ゲーム HUG(水害版)の説明資料

140

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参考資料1-1-4 避難所運営ゲーム HUG(水害版)の説明資料

141

Page 149: 地方公共団体の風水害図上型防災訓練の 実施要領のあり方に関す … · は じ め に 平成20年度の図上型防災訓練マニュアル研究会では、風水害に係る防災力の向上を図

参考資料1-1-4 避難所運営ゲーム HUG(水害版)の説明資料

142

Page 150: 地方公共団体の風水害図上型防災訓練の 実施要領のあり方に関す … · は じ め に 平成20年度の図上型防災訓練マニュアル研究会では、風水害に係る防災力の向上を図

参考資料1-1-4 避難所運営ゲーム HUG(水害版)の説明資料

143

Page 151: 地方公共団体の風水害図上型防災訓練の 実施要領のあり方に関す … · は じ め に 平成20年度の図上型防災訓練マニュアル研究会では、風水害に係る防災力の向上を図

参考資料1-1-4 避難所運営ゲーム HUG(水害版)の説明資料

144

Page 152: 地方公共団体の風水害図上型防災訓練の 実施要領のあり方に関す … · は じ め に 平成20年度の図上型防災訓練マニュアル研究会では、風水害に係る防災力の向上を図

参考資料1-1-4 避難所運営ゲーム HUG(水害版)の説明資料

145

Page 153: 地方公共団体の風水害図上型防災訓練の 実施要領のあり方に関す … · は じ め に 平成20年度の図上型防災訓練マニュアル研究会では、風水害に係る防災力の向上を図

参考資料1-1-4 避難所運営ゲーム HUG(水害版)の説明資料

146

Page 154: 地方公共団体の風水害図上型防災訓練の 実施要領のあり方に関す … · は じ め に 平成20年度の図上型防災訓練マニュアル研究会では、風水害に係る防災力の向上を図

参考資料1-1-4 避難所運営ゲーム HUG(水害版)の説明資料

147

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参考資料1-1-4 避難所運営ゲーム HUG(水害版)の説明資料

148

Page 156: 地方公共団体の風水害図上型防災訓練の 実施要領のあり方に関す … · は じ め に 平成20年度の図上型防災訓練マニュアル研究会では、風水害に係る防災力の向上を図

参考資料1-1-4 避難所運営ゲーム HUG(水害版)の説明資料

149

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1-2 神戸町における防災ワークショップ

150

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参考資料1-2-1 神戸町図上型防災訓練のプログラム

H21年度神戸町における

風水害図上型防災訓練プログラム

9月29日(火) 13:00~17:00

時 間 概 要 担 当

13:00~13:15

13:15~

(13:15~13:30)

(13:30~14:30)

(14:30~14:45)

(14:45~16:15)

(16:15~17:00)

17:00

17:00~17:05

・神 戸 町 挨 拶

・総 務 省 消 防 庁 挨 拶

・消 防 科 学 総 合 センター挨 拶 及

び関 係 者 紹 介

訓 練 開 始

オリエンテーション

避 難 区 域 の検 討

(休 憩)

災 害 情 報 の段 階 に応 じた対 応 検

まとめ、講 評 等

訓 練 終 了

閉 会

(アンケート調 査 票 の回 収 ・片 付

け等)

神 戸 町

総 務 省 消 防 庁 中 越 専 門 官

消 防 科 学 総 合 センター

田 村 審 議 役

富 士 常 葉 大 学

小 村 准 教 授

消 防 科 学 総 合 センター

田 村 審 議 役

151

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神戸町風水害図上型防災訓練の実施方針

1.目的

洪水ハザードマップや関係機関職員による専門的な知見を参考にしつつ、一方で、職

員自らが風水害による町内の被害をイメージし、他方で、そのような被害を先読みしつ

つ求められる町行政などの対応をイメージすることを目的とする。

具体的には、避難すべき区域や避難勧告等の発令基準など、「避難勧告等の判断・伝達

マニュアル」の作成を念頭に置き、職員のみならず訓練参加者全員で議論を行い、情報

や認識の共有を図る。

最終的には、以下の3点を目的とする。①本訓練における検討結果を踏まえた、より

実践的なマニュアルの作成、②防災担当職員以外にも、風水害の被害イメージとそれへ

の町行政他関係機関の対応イメージを持つ職員を複数確保すること、③判断に迷った時

に、いつでも気兼ねなく相談できる、専門的知見を持つ関係機関職員との「顔の見える

関係」を構築すること。

(参考)

岐阜県では、平成 20 年 8月末豪雨災害を受け、「局地的豪雨対策検討会議」を設置し、岐阜市、

垂井町、揖斐川町及び国と連携するとともに、有識者や住民代表の意見を聞きながら、「避難勧

告等の判断・伝達」に関する検討を行った。これを受け、岐阜市、垂井町及び揖斐川町がモデル

的な「避難勧告等の判断・伝達マニュアル」を作成している。

岐阜県:http://www.pref.gifu.lg.jp/pref/s11117/fusuigai/index.htm

岐阜市:http://www.city.gifu.lg.jp/c/40125937/40125937.html

垂井町:http://www.ginet.or.jp/tarui/pdf/hinan.pdf

2.被害想定

最悪の事態としての揖斐川破堤を意識しつつ、そこに至る過程で発生すると思われる内

水氾濫などの各種事態を被害想定とする。被害想定の提示方法として、数値データに加え、

関係機関職員による高いコメント(例「このくらいの雨が降ったら、○○地点ではこのよ

うな事態が考えられます」)によるイメージ化を取り入れる。想定雨量等は別途検討する。

3.方法

(1)参加者とグループ分け

ア 神戸町職員約 20 名:想定浸水深に応じて 3 グループ(地域)に分けする。また、当

日は現所属に関係なく、当該地域に責任を持つ行政担当者としての立場で参加してもら

う。防災責任者が不在の場合や異動、何よりも「選挙と災害対応は全町あげての仕事」

という過去の経験則をふまえ、可能な限り多くの職員に被害と対応のイメージを持って

もらうことが重要と考える。

参考資料1-2-2 神戸町風水害図上型防災訓練の実施方針について

152

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イ 関係機関

・岐阜県西濃振興局振興課

・国土交通省中部地方整備局木曽川上流河川事務所揖斐川第1出張所

・気象庁岐阜地方気象台

・大垣消防組合北部消防署(管轄消防署)

ウ ファシリテータ

小村 隆史(富士常葉大学准教授)

エ 事務局

消防庁応急対策室 中越専門官、安達事務官

(財)消防科学総合センター 田村審議役・黒田調査研究第 2課長

(2)流れ

内 容 ねらい 方 法

STEP0

(13:1513:30)

オリエンテーシ

ョン

訓練の趣旨や前提条件を理

解する

ファシリテータによる説明

STEP1

(13:30-14:30)

避難させるべき

区域についての

検討

揖斐川ハザードマップを基

に、揖斐川が氾濫した場合

に避難させるべき区域を具

体的に確認する。また、そ

の際、どのような災害の様

相になるか「市民からの通

報」をイメージすることで

認識の具体化を図る。

1.趣旨・方法説明(ファシリテ

ータ)

2.グループ作業

グループを浸水深によっ

て 3 グループに分け(0.5m

未満、0.5-2.0m、2m 以上)、

避難すべき区域をリスト

アップさせる。そして、そ

れぞれの地域から具体的

にどのような通報がある

可能性があるかを考えさ

せる。

3.グループ発表

4.質疑及び関係機関コメント

休憩( -14:45)

STEP2

(14:45-16:15)

「注意報」時点と

「警報」時点での

行政対応のあり

方(避難勧告等含

む)及び市民に期

待する行動につ

いての検討

揖斐川の氾濫が起こり得る

として、それに向けた前段

階として指定河川洪水予報

の各段階、町内の浸水に対

する「大雨注意報(オレン

ジ)」段階と「大雨警報(レ

ッド)」段階をそれぞれ設定

し、それぞれの時点で行政

として取るべき対応と市民

に期待する行動に関する理

解を深める。

1.趣旨・方法説明(ファシリテ

ータ)

2.関係機関からの情報解説

「注意報」「警報」に相当す

る情報の解説(関係機関か

ら状況に応じてどのような

情報が出されるか解説(平

成 22 年度から実施予定の

市町村単位での警報・注意

報発表を含む)、また、町で

独自に把握できる情報を総

153

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務課から説明)

3.グループ作業

2.に対応してどのように市

は対応すべきか、また、市

民にどのような行動を呼び

かけるべきか、STEP1 のグ

ループ毎(浸水深毎)に考え

させる(避難所の安全性等

も考慮)。

3.グループ発表

4.質疑及び関係機関コメント

STEP3

(16:1517:00)

まとめ 訓練全体を振り返る。 ファシリテータによる講評等

154

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雨の素となる湿った空気が南から運ばれるメカニズム

台風(低気圧)と高気圧に挟まれたベルトコンベアで次々と運ばれるベルトコンベアで次々と運ばれる南からの湿った空気が大雨の素9月4日21時9月4日21時

台風 高台風 高

台風前線の雨に加えて台風本体の雨が加わると数日間にわたる大雨となって大災害が発生することがある大災害が発生することがある

参考資料1-2-3

155

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神戸町神戸町神戸町神戸町風水害図上型防災訓練風水害図上型防災訓練風水害図 型防災訓練風水害図 型防災訓練

防災気象情報と避難勧告等の判断基準について防災気象情報と避難勧告等の判断基準について防災気象情報と避難勧告等の判断基準について防災気象情報と避難勧告等の判断基準について

平成21年9月29日岐阜地方気象台

1岐阜地方気象台

気象警報等の改善経緯・目的気象警報等の改善経緯・目的

平成17年3月中央防災会議に報告

•• 「集中豪雨時等における情報伝達及び高齢者等の避難「集中豪雨時等における情報伝達及び高齢者等の避難支援に関する検討報告」支援に関する検討報告」

•• 「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」

気象庁は、市町村長が行なう避難勧告や避難準備(要援護者避気象庁は、市町村長が行なう避難勧告や避難準備(要援護者避難)情報等の判断に資するよう、気象に係る警報、注意報の改善を難)情報等の判断に資するよう、気象に係る警報、注意報の改善を難)情報等の判断 資するよう、気象 係る警報、注意報の改善を難)情報等の判断 資するよう、気象 係る警報、注意報の改善を行ないます。行ないます。

警報を避難準備情報の判断に警報を避難準備情報の判断に警報を避難準備情報の判断に警報を避難準備情報の判断に

発表単位を市町村に発表単位を市町村に市町村長の意思決

2警戒すべき災害を明示警戒すべき災害を明示定を支援!

改善は2段階で行います改善は2段階で行います改善は 段階で行 ます改善は 段階で行 ます

発表基準の見直し平成20~22年度 発表基準の見直し・24時間雨量に代えて新たな基準要素・24時間雨量に代えて新たな基準要素(土壌雨量指数、流域雨量指数)を導入(土壌雨量指数、流域雨量指数)を導入

平成20年度に実施済み平成20年度に実施済み市町村毎に基準を設定。(土壌雨量指数、流域雨量指数)を導入(土壌雨量指数、流域雨量指数)を導入

・短時間雨量基準値も見直し・短時間雨量基準値も見直し・大雨、洪水の警報・注意報が対象・大雨、洪水の警報・注意報が対象

・・平成20年5月28日13時から実施平成20年5月28日13時から実施

市町村毎に基準を設定。

ただし発表単位は平成22年度出水期までは二次細分区域のまま。

平成22年出水期

・・平成20年5月28日13時から実施平成20年5月28日13時から実施・大雨、洪水の注意報基準を再度見直し平成22年出水期から適用・大雨、洪水の注意報基準を再度見直し平成22年出水期から適用

分区域のまま。

発表単位を市町村に平成22年出水期

・平成22年出水期(5月頃)から実施予定・平成22年出水期(5月頃)から実施予定・原則、すべての警報・注意報が対象・原則、すべての警報・注意報が対象(大雨・洪水以外は従前どおりの場合あり)(大雨・洪水以外は従前どおりの場合あり)

・電文形式の変更・電文形式の変更(( XMLXML形式、かな漢字形式、表形式、広域編集形式、経過措置形式)形式、かな漢字形式、表形式、広域編集形式、経過措置形式)

・大雨警報は大雨警報(浸水害)と大雨警報(土砂災害)に区分・大雨警報は大雨警報(浸水害)と大雨警報(土砂災害)に区分

3

大雨警報は大雨警報(浸水害)と大雨警報(土砂災害)に区分大雨警報は大雨警報(浸水害)と大雨警報(土砂災害)に区分・防災情報提供システムの改善・防災情報提供システムの改善・府県気象情報、記録的短時間大雨情報などの運用の見直しも・府県気象情報、記録的短時間大雨情報などの運用の見直しも

大雨によって大雨によってもたらされる災害もたらされる災害

対象災害と関連性のよ対象災害と関連性のより良い基準気象要素をり良い基準気象要素を平成20年5月より導入平成20年5月より導入

もたらされる災害もたらされる災害

土砂災害土砂災害土壌雨量指数土壌雨量指数

平成 年 月より導入平成 年 月より導入

土砂災害土砂災害壌雨量指数壌雨量指数

浸水害浸水害大雨 短時間雨量短時間雨量浸水害浸水害大雨 短時間雨量短時間雨量

短時間雨量短時間雨量洪水害洪水害

短時間雨量短時間雨量流域雨量指数流域雨量指数雨の降り方や場所

によって発生する4

写真:国土交通省HPより写真:国土交通省HPより

によって発生する災害が異なります

土壌雨量指数と流域雨量指数

土砂災害の危険度を表す土壌雨量指数

洪水の危険度を表す流域雨量指数土壌雨量指数 流域雨量指数

土壌中に貯まっている雨の量を計土壌中に貯まっている雨の量を計

流域における流出量を計算し、さらに傾流域における流出量を計算し、さらに傾斜に沿って集まる水の量を指数化したも斜に沿って集まる水の量を指数化したもの。の。上流域に降る雨の量や流下による上流域に降る雨の量や流下による

5算した指数。土砂災害の危険度と算した指数。土砂災害の危険度との対応が良い。の対応が良い。

の。の。上流域に降る雨の量や流下による上流域に降る雨の量や流下による時間差を考慮し、水害発生の危険度をよ時間差を考慮し、水害発生の危険度をより高い確度でとらえられることができる。り高い確度でとらえられることができる。

流域雨量指数基準の対象河川流域雨量指数基準の対象河川

河川長が原則15k 以河川長が原則15k 以河川長が原則15km以河川長が原則15km以上の河川のうち、水害上の河川のうち、水害との関係が見出せた河との関係が見出せた河との関係が見出せた河との関係が見出せた河川が対象川が対象

岐阜県では52河川が岐阜県では52河川が該当該当

6

参考資料1-2-4 防災気象情報と避難勧告等の判断基準について

156

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大雨及び洪水警報・注意報等基準の運用大雨及び洪水警報・注意報等基準の運用

現在の基準は、平成現在の基準は、平成2020年年55月28日13時から適用しています。月28日13時から適用しています。

基準要素 警報・注意報等の種類* 特記事項

雨量基準 大雨(浸水害)・洪水 浸水警戒(注意)

流域雨量指数基準 洪水

複合基準複合基準(雨量基準及び流域雨量指数基準)

洪水

土壌雨量指数基準 大雨(土砂災害) 土砂災害警戒(注意)壌 大 ( 砂災害) 砂災害警戒(注意)

土壌雨量指数及び60分間積算雨量

土砂災害警戒情報

** 大雨注意報には括弧はつきません。また、大雨警報が括弧付きとなるのは平成22年出水期からです大雨注意報には括弧はつきません。また、大雨警報が括弧付きとなるのは平成22年出水期からです

7

神戸町の大雨及び洪水警報・注意報の基準神戸町の大雨及び洪水警報・注意報の基準

大雨警報

雨量基準 1時間70ミリ

注:

神戸町は、土砂災害の危険性が認められないため、大雨警報(土砂災害)と土砂災害警戒情報の発表対象とはしていません

洪水警報

雨量基準 1時間70ミリ

害警戒情報の発表対象とはしていません。

流域雨量指数基準 設定なし

大雨注意報大雨注意報

雨量基準 1時間雨量20ミリ and 総雨量60ミリ3時間雨量40ミリ and総雨量60ミリ

平成22年出水期から、

1時間40ミリに変更の予定3時間雨量40ミリ and 総雨量60ミリ

土壌雨量指数基準 町内最低値:100

洪水注意報洪水注意報

雨量基準 1時間雨量20ミリ and 総雨量80ミリ3時間雨量40ミリ and総雨量80ミリ

平成22年出水期から、

1時間40ミリに変更の予定

8

3時間雨量40ミリ and 総雨量80ミリ

岐阜県モデル市町の岐阜県モデル市町の「避難勧告等の判断 伝達マニ アル」「避難勧告等の判断 伝達マニ アル」「避難勧告等の判断・伝達マニュアル」「避難勧告等の判断・伝達マニュアル」

全国の市町村でマニュアル作りがなかなか進まない中全国の市町村でマニュアル作りがなかなか進まない中、岐阜県では、モデル市町が最新のマニュアルを作成しました。

岐阜市:浸水、洪水岐阜市:浸水、洪水 垂井町:浸水、洪水、垂井町:浸水、洪水、土砂災害土砂災害

揖斐川町(谷汲地区):揖斐川町(谷汲地区):土砂災害土砂災害

共通別添資料共通別添資料

「大雨時に利用できる「大雨時に利用できる主な情報について」主な情報について」

9岐阜県及び各モデル市町のホームページで公開中!

避難判断基準に反映させた国の近年の各種施策等避難判断基準に反映させた国の近年の各種施策等

「平成16 年度政策レビュー結果(評価書)台風・豪雨等に関する気象情報の充実」(平成17年3月国土交通省)(平成17 年3 月国土交通省)

「都道府県と気象庁が共同して土砂災害警戒情報を作成・発表するための手引き」(平成17年6月国土交通省河川局砂防部 気象庁予報部)(平成17 年6 月国土交通省河川局砂防部、気象庁予報部)

「土砂災害警戒避難に関わる前兆現象情報の活用のあり方について」(平成18年3月土砂災害警戒避難に関わる前兆現象情報検討会)(平成18 年3 月土砂災害警戒避難に関わる前兆現象情報検討会)

「洪水等に関する防災情報体系のあり方について(提言)」(平成18年6月洪水等に関する防災用語改善検討会)(平成18 年6 月洪水等に関する防災用語改善検討会)

「土砂災害警戒避難ガイドライン 」

(平成19 年4 月国土交通省砂防部)

「大雨及び洪水警報・注意報等の改善について」

10

及 洪 警報 報等 改善 」

(平成20 年4 月気象庁報道発表資料)

岐阜県モデル市町の「避難勧告等の判断・伝達マニュアル」における標準的な避難判断基準(モデル市町共通)おける標準的な避難判断基準( デル市町共通)

避難勧告等は、以下の基準を参考に、今後の気象予測や河川巡視等からの情報を含めて総合的に判断して発令する。

近年の国の防災情報改善施策を反映

災害種類

避難の区分土砂災害

浸水害

(内水はん濫)

洪水(外水はん濫)

避難準備情報(要援護者避難)

大雨警報大雨警報(土砂災害)(土砂災害)

前兆現象前兆現象

大雨警報大雨警報(浸水害)(浸水害)

洪水警報洪水警報 はん濫注意情報はん濫注意情報(注意報)(注意報)

前兆現象前兆現象

避難勧告

土砂災害土砂災害警戒情報警戒情報

市町ごとに策定 市町ごとに策定

はん濫警戒情報はん濫警戒情報(警報)(警報)避難勧告

前兆現象前兆現象

市町ごとに策定 市町ごとに策定

避難判断水位避難判断水位

避難指示 市町ごとに策定 市町ごとに策定 市町ごとに策定はん濫危険情報はん濫危険情報(警報)(警報)

11

岐阜県内の洪水予報指定河川等

神戸町に係る洪水予報河川

揖斐川中流

(参考)(参考)

神戸町に係る水位周知河川

杭瀬川(観測地点:池田町市橋)

12

157

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参考 岐阜市の避難判断基準 その1考 阜

13

参考 岐阜市の避難判断基準 その2考 阜

14

避難勧告等を判断する場合の難しさ避難勧告等を判断する場合の難しさ

警報、土砂災害警戒情報のたびに警報、土砂災害警戒情報のたびに住民を避難させるべきか・・・住民を避難させるべきか・・・

•• 空振りの頻発による“狼少年効果”が心配空振りの頻発による“狼少年効果”が心配空振りの頻発による 狼少年効果 が心配空振りの頻発による 狼少年効果 が心配

•• 空振りの場合の住民からの苦情が心配空振りの場合の住民からの苦情が心配

•• 躊躇していると出し遅れ、すでに災害発生躊躇していると出し遅れ、すでに災害発生

•• 大雨の最中の避難は危険大雨の最中の避難は危険

避難対象地域をどのように絞り込むか・・・・避難対象地域をどのように絞り込むか・・・・

大雨 最中 避難 危険大雨 最中 避難 危険

•• 災害対策基本法:「災害対策基本法:「必要と認める地域の必要と認める地域の居住者、滞在者居住者、滞在者その他の者に対し、避難のための立退きを勧告し、」その他の者に対し、避難のための立退きを勧告し、」

15•• 警報、土砂災害警戒情報は市町村単位警報、土砂災害警戒情報は市町村単位

別添資料 大雨時に活用できる主な防災情報 より

16

「避難勧告等の判断・伝達マニュアル」「避難勧告等の判断・伝達マニュアル」おける避難判断 手おける避難判断 手における避難判断の手順における避難判断の手順

事前準備• 対象とする災害を想定する(土砂災害、浸水害、洪水)• 対象とする災害を想定する(土砂災害、浸水害、洪水)事前準備

• 災害に応じて警戒すべき区間・箇所を把握する• 避難すべき具体的な地区を整理しておく地域の情報収集方法 連絡先等を確認しておく

• 災害に応じて警戒すべき区間・箇所を把握する• 避難すべき具体的な地区を整理しておく地域の情報収集方法 連絡先等を確認しておく• 地域の情報収集方法・連絡先等を確認しておく

• 具体的な避難判断基準を定めておく• 地域の情報収集方法・連絡先等を確認しておく• 具体的な避難判断基準を定めておく

避難判断基準に係る情報収集避難判断基準に係る情報収集

大雨時今後の気象予測や

• 避難判断基準に係る情報収集• 現地状況の情報収集• 「大雨時に活用できる主な情報」を参考に

• 避難判断基準に係る情報収集• 現地状況の情報収集• 「大雨時に活用できる主な情報」を参考に

河川巡視等からの情報を含めて

総合的に判断

17

• 「大雨時に活用できる主な情報」を参考に情報収集

• 「大雨時に活用できる主な情報」を参考に情報収集

レーダー・降水ナウキャストレーダー・降水ナウキャスト大雨時に活用できる主な防災情報

レ ダ 降水ナウキャストレ ダ 降水ナウキャスト全国の気象レーダーの観測値を全国の気象レーダーの観測値を1010分毎に合成したデータと、気象レーダーによる降水強分毎に合成したデータと、気象レーダーによる降水強度分布と降水域の移動状況を基に度分布と降水域の移動状況を基に6060分先までの分先までの1010分間毎の雨量を分間毎の雨量を1km1km四方の領域毎に四方の領域毎に

予測した降水ナウキャストを連続的に表示します 気象レ ダは5分毎 降水ナウキャスト予測した降水ナウキャストを連続的に表示します 気象レ ダは5分毎 降水ナウキャスト予測した降水ナウキャストを連続的に表示します。気象レーダは5分毎、降水ナウキャスト予測した降水ナウキャストを連続的に表示します。気象レーダは5分毎、降水ナウキャストはは1010分ごとに更新します。分ごとに更新します。

• 雨域の移動状態は変化しないと仮定動画再生で見ます

• 地形による発達、衰弱は加味せず

• 急発達する雨雲はうまく予想できない

動画再生で見ます

• 数値予報は利用せず

• 予報時間が先になるほど精度低下

• 1格子の数値にのみとらわれず面的に見る

• 強い雨雲が停滞する場合は集中豪• 強い雨雲が停滞する場合は集中豪雨に警戒

18

158

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解析雨量・降水短時間予報解析雨量・降水短時間予報

大雨時に活用できる主な防災情報

解析雨量 降水短時間予報解析雨量 降水短時間予報「解析雨量」はレーダーとアメダスなどの降水量観測値から作成した降水量分布で「解析雨量」はレーダーとアメダスなどの降水量観測値から作成した降水量分布です。「降水短時間予報」は今後6時間の1時間ごとの降水量分布を予測したものです。「降水短時間予報」は今後6時間の1時間ごとの降水量分布を予測したものです。ともに1す。ともに1kmkm四方の解像度で、四方の解像度で、3030分ごとに更新します。分ごとに更新します。

• 雨域の移動速度を加味

• 地形による発達、衰弱を加味

動画再生で見ます

• 予報後半は数値予報も利用

• 予報時間が先になるほど精度低下

過去6時間の降雨の状況と6時間

• 1格子の数値にのみとらわれず面的に見る

過去6時間の降雨の状況と6時間先までの予想を把握します。

解析雨量を積算した3時間降水量、24時間降水量も表示できます

19

記録的短時間大雨情報記録的短時間大雨情報大雨時に活用できる主な防災情報

記録的短時間大雨情報記録的短時間大雨情報

数年に一度程度しか発生しないような激しい短時間の大雨を観測または解析数年に一度程度しか発生しないような激しい短時間の大雨を観測または解析したときに、市町村名を明記して発表します。したときに、市町村名を明記して発表します。岐阜県では、岐阜県では、11時間に100ミリ以上を観測または解析したときに発表します。時間に100ミリ以上を観測または解析したときに発表します。

岐阜県記録的短時間大雨情報 第1号平成20年9月2日18時54分 岐阜地方気象台

18時30分岐阜県で記録的短時間大雨大垣市上石津付近で約100ミリ

現在の降雨がその地域にとって災害の発生につながるような、稀にし現在の降雨がその地域にとって災害の発生につながるような、稀にしか観測しない雨量であることをお知らせするために発表するものです。

自市町村、あるいは隣接市町村を名指ししてこの情報が発表された

20ときは、自市町村で、あるいは、近くで浸水害や土砂災害等の発生につながる事態が生じていることを意味しています。

防災情報提供システム防災情報提供システム※※

規格化版流域雨量指数規格化版流域雨量指数

大雨時に活用できる主な防災情報

規格化版流域雨量指数規格化版流域雨量指数現在の流域雨量指数の状況が、どの程度の頻度で起こるものかを表現したものです。現在の流域雨量指数の状況が、どの程度の頻度で起こるものかを表現したものです。過去過去1515年間(年間(19911991~~20052005年)の流域雨量指数の最大値を1として規格化し年)の流域雨量指数の最大値を1として規格化し5km5km四方領域ごとにまとめ四方領域ごとにまとめ

たものを指標としています 洪水警報や指定河川洪水予報と必ずしも対応するとは限りませんが 危険たものを指標としています 洪水警報や指定河川洪水予報と必ずしも対応するとは限りませんが 危険たものを指標としています。洪水警報や指定河川洪水予報と必ずしも対応するとは限りませんが、危険たものを指標としています。洪水警報や指定河川洪水予報と必ずしも対応するとは限りませんが、危険性をイメージすることができます。性をイメージすることができます。

表示色規格化版流域雨量指数

発現頻度表示色規格化版流域雨量指数

発現頻度3時間先までの予想

0.00~0.09

0.10~0.19

0.20~0.29

0.30~0.39

通常時

1年に十数回程度

0.00~0.09

0.10~0.19

0.20~0.29

0.30~0.39

通常時

1年に十数回程度0.40~0.49

0.50~0.59

0.60~0.69

0.70~0.79

1年に十数回程度

1年に数回程度

1年に1回程度

0.40~0.49

0.50~0.59

0.60~0.69

0.70~0.79

1年に十数回程度

1年に数回程度

1年に1回程度0.80~0.89

0.90~0.99 数年に1回程度

1.00~1.19

1.20~

過去15年程度、経験がない

1年に1回程度0.80~0.89

0.90~0.99 数年に1回程度

1.00~1.19

1.20~

過去15年程度、経験がない

1年に1回程度

流域雨量指数とは、解析雨量、降水短時間予報をもとに算出した降雨による洪水災害発生の危険性を示す指標で、対象となる地域・時刻に存在する流域の雨の量を示すものです。河川環境、社会環境、 ダム・水門操作等に影響される河川の水位等個々の河川の危険性を予測したものではありません。

21※防災情報提供システムは、気象庁が防災関係機関に防災気象情報を提供するために整備しているもので、気象庁からのメール通知機能と専用WEBからなります。利用には専用線による場合とインターネットによる場合があります。インターネットによる利用の場合は、気象台から交付した機関毎のIDとパスワードが必要です。

防災情報提供システム防災情報提供システム※※

土砂災害警戒判定メッシュ情報土砂災害警戒判定メッシュ情報

大雨時に活用できる主な防災情報

土砂災害警戒判定メッシュ情報土砂災害警戒判定メッシュ情報2時間先までの土砂災害警戒危険度を2時間先までの土砂災害警戒危険度を5km5km四方で表したメッシュ情報です。四方で表したメッシュ情報です。大雨警報や土砂災害警戒情報が発表された場合に、とくに警戒を要する地域を大雨警報や土砂災害警戒情報が発表された場合に、とくに警戒を要する地域を把握することができます。把握することができます。

土砂災害警戒判定メッシュ情報の対象としている土砂災害は、表層

実況から2時間以内の状況を表示

崩壊による土砂災害のうち、土石流や集中的に発生する急傾斜地の崩壊であり、技術的に予知・予測が困難な斜面の深層崩壊、山体の崩壊、地すべり等については対象としていま ん

雨量に基づいて土砂災害発生の危険度を判定したもので 個々の

ません。

雨量に基づいて土砂災害発生の危険度を判定したもので、個々の急傾斜地等における植生・地質・風化の程度等の特性や地下水の流動等を反映したものではありません。 このため、個別の災害発生場所・時間・規模等を特定するものではありません。

22※防災情報提供システムは、気象庁が防災関係機関に防災気象情報を提供するために整備しているもので、気象庁からのメール通知機能と専用WEBからなります。利用には専用線による場合とインターネットによる場合があります。インターネットによる利用の場合は、気象台から交付した機関毎のIDとパスワードが必要です。

159

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1-3 中野区における訓練企画準備のための検討会

160

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都市部に降る雨

気象庁予報部予報課気象防災推進室岡田憲治

台風

台風

台風(低気圧)と高気圧に挟まれたベルトコンベアで次々と運ばれる南からの暖かく湿った空気が大雨の素

大雨をもたらす気圧配置

9月4日21時9月4日21時

前線の雨に加えて台風本体の雨が加わると数日間にわたる大雨となる

雨の強さと降り方

1時間雨量 人が受けるイメージ 屋外の様子 災害発生状況

10~20

20~30

30~50

50~80

80~

ザーザーと降る地面一面に水たまりができる

長く続く時は注意が必要

どしゃ降り

バケツをひっくり返したように降る

滝のように降る

息苦しいような圧迫感がある。恐怖を感ずる

道路が川のようになる

水しぶきであたり一面が白っぽくなり、視界が悪くなる

側溝や下水、小さな川があふれ、小規模の崖崩れが始まる

山崩れ・崖崩れが起こりやすくなり危険地帯では避難の準備が必要。都市部では下水管から雨水があふれる

都市部では地下室や地下街に雨水が流れ込む。多くの災害が発生する

雨による大規模な災害の発生するおそれが強く、厳重な警戒が必要

やや強い雨

強い雨

激しい雨

非常に激しい雨

猛烈な雨

転載自由

大雨に関する気象情報警報・注意報に先立ち発表

大雨注意報警報になる可能性がある場合はその旨予告

大雨に関する気象情報雨の状況や予想を適宜発表

大雨警報大雨の期間、予想雨量、警戒を要する事項などを示す

大雨に関する気象情報刻一刻変化する大雨の状況を発表

記録的短時間大雨情報数年に一度の猛烈な雨が観測された場合に発表

数時間 ~ 1,2時間前

半日~数時間前大雨始まる強さが増す

約1日程度前大雨の可能性が

高くなる

記録的な大雨出現記録的な大雨出現

大雨が一層激しくなる

大雨の場合に、気象庁が発表する防災気象情報大雨の場合に、気象庁が発表する防災気象情報

土砂災害の大雨警報基準(土壌雨量指数)は23区では最も高い基準(174)洪水警報は、神田川と妙正川に基準あり

参考資料1-3-1 都市部(中野区)の降雨について

161

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来年5月(予定)から中野区に警報・注意報を発表

大雨、洪水等の警報を避難勧告等の判断基準に適合した基準で発表

現行(細分区域毎の発表)

H22.5~

多摩西部

多摩南部

多摩北部

23区西部

23区東部

:警 報

:注 意 報

:発表なし

:警 報

:注 意 報

:発表なし

奥多摩町

檜原村

青梅市

日の出町

あきる野市

八王子市

町田市

多摩市

稲城市

日野市府中市

国立市

立川市

昭島市

福生市

羽村市

瑞穂町

武蔵村山市

東大和市

東村山市

小平市

国分寺市 小金井市

清瀬市

東久留米市

西東京市

武蔵野市

三鷹市

調布市狛江市

世田谷区

大田区

目黒区

品川区

杉並区

練馬区

中野区

板橋区 北区

豊島区

新宿区

渋谷区

港区

中央区

文京区 台東区

荒川区

足立区

葛飾区

江戸川区

江東区

墨田区

千代田区

集中豪雨と局地的大雨の比較(都下)

平成20年8月5日、東京都豊島区の大雨(局地的な大雨の例)

平成17年9月4日、東京都杉並区の大雨(集中豪雨の例)

雨雲が組織的で継続時間が長い。積乱雲が次々と発生し大雨が長時間続く。目先数時間の大雨予測が可能。

雨雲が急に発生し、狭い場所に短時間に大雨を降らせる。場所と時間を変えて、同時あるいは散発的に発生する。散発かつ一過性のため、予測が難しいことが多い。

積乱雲発生

雨量は多くない

にわか雨

雨は短時間に

降り止む

大気の状態が不安定

単独の積乱雲が発達

局地的に数十ミリの雨

局地的大雨

前線や低気圧の影響

地形効果

積乱雲が同じ場所で

次々と発生・発達を繰り返す雨が一時的に

強まる

雨が数時間にわたって降り続く

狭い範囲に

数百ミリの総雨量

集中豪雨

局地的大雨の例 平成20年8月5日の最大1時間雨量

関東甲信地方の最大1時間雨量分布

最大1時間雨量分布と50mmを超えた区市町村

雨の降り方・降る時刻は場所によって差がある

162

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20 21 22 23 24 01 02 03時

50

0

溢水水位まで50㎝

溢水水位

溢水水位まで100㎝

溢水水位まで200㎝

溢水水位まで150㎝

善福寺川(杉並区)の雨量と水位

雨量

ミリ

平成21年5月24日 25日

相生橋

宮下橋

「雨 即 水位上昇」が都市の特徴

雨量のスケールは、水位のスケールの10倍に拡大して表示

水位は急激に上昇し速い流れ、

水位上昇の前には雨が降る、

雨が降る前に空は真っ黒、

空が黒くなる前に気象情報は出ている

局地的大雨も集中豪雨も危険なことには変わりない

上流の

東京消防庁に入電したがけ崩れ発生地点と、土砂災害危険箇所(平成10年~14年)

がけ崩れ発生地点

急傾斜危険箇所

土石流危険箇所

地すべり危険箇所

・注:この期間、希な大雨が降ったエリアでは土砂災害が多発したが

中野区では土砂災害が多発するような雨は無かった

下方に

トップページ左上に「防災気象情報」気象庁HP

― 防災気象情報の活用の手引き ―

163

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中野区における風水害対応図上型防災訓練の実施について

平成21年 10月 28日

防災&情報研究所

高梨 成子

1.図上演習(図上型防災訓練)の目的と種類

表1 図上演習で習得を目指すもの(実施の目的)

①災害のイメージを形成する

②災害時の情報収集の仕方、収集された情報の整理・分析、他機関への情報伝達・共有化、誤報の

確認等、災害時の情報受伝達

③情報に基づく迅速かつ適切な意志決定(適切な判断、対応、対策の実施)のあり方の検討

④適切な体制の構築・役割の決定(対応する中での修正)

防災計画や対応マニュアルを超えた体制・連携づくり

⑤防災計画・マニュアル、地図・資料等の有効な活用方法の習得

表2 図上演習の種類及び実施方法

訓練の名称 訓練の対象者や実施方法など

状況予測型訓練(研修) ひとりイメージ・トレーニング

研修に参加した人が、与えられた条件の災害下において、どのような

状況が生じるかを個々に抽出し、抽出された状況下で、どのような意

志決定や判断、行動が必要かを検討するもの。組織のトップクラスの

災害研修に取り入れられることもある。

図上グルー

プワーク ( DIG* 等

の討議型図

上演習)

(自主防災組織、

ボランティア 団体向け)

自主防災組織やボランティア団体などにおいて、グループごとに被害

状況及び対応の検討を行い、その結果を報告する。主に参加者の「気

づき」に重点を置き、フェーズを2段階程度に区分したり、討議や司

会のコメントなどを加えることもある。

(専門機関向け) 防災関係機関が、特定の災害状況の下でどのような対応をとるかを、

会議形式で検討するもの。検討結果については、計画に取り入れられ

る場合もある。

図上ワークショップ (討議型図上演習)

ある特定地区の防災関係機関などが集まり、特定の災害状況の下でど

のような対応をとるかを、関係する複数の機関で、会議形式で検討す

るもの。

図上シミュレーション訓練

防災関係機関内または防災関係機関間において、特定の災害状況の下

でどのような対応をとるかを、コントローラーから示される状況付与

票と、参加グループ間の情報交換(連絡票を使用)に基づき、対応を

決定していくもの。ロールプレーイング方式・ブラインド方式を組み

合わせたものが多い。

フルスケール・ シミュレーション訓練

防災関係機関内または防災関係機関間において、特定の災害状況の下

に、状況付与票や、災害時の情報伝達手段などを実際に使用して情報

交換をし、災害対策本部などの設置及び運用、部隊運用などの実働を

取り入れながら、応急対応を決定していくもの。 (*)DIG:Disaster Imagination Game(災害図上演習)は、当該地域の地図を使って、地域の自主防災

組織、ボランティア、行政等が共同で気軽に実施することなどにより、地域の防災上の課題や

問題点、連携のあり方等を発見していくもの。

参考資料1-3-2 H21年度図上シミュレーション訓練に向けたポイントの検討

164

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2.図上シミュレーション訓練の実施方法

(1) 参加機関・部署/コントローラーとプレーヤー

○ロールプレーイング方式

○ブラインド方式

図1 シミュレーション型図上演習のイメージ

*コントローラーは、訓練の企画(状況付与の作成)に加わったり、図上演習時は被害報告や問い合わ

せ等を演習参加者に「状況付与」するとともに、演習参加者からの対応によって追加の報告や問い合

わせ等、訓練の全体管理の役割を担う。

*来年5月の図上シミュレーション訓練で、プレーヤーとコントローラーをどのように構成するか。

・中野区の水防本部=(風水害)災害対策本部(防災担当、交通・道路管理担当)、その他、参加が

必要な機関、参加呼びかけ等が必要な部門(地域センター、福祉部門等)。

・(中野、野方)消防署・(消防団)

・(中野、野方)警察署

・東京都、都第三建設事務所

・委員他(気象庁・気象台については岡田委員、その他は、防災&情報研究所 高梨、坂本)

(2) 訓練会場・レイアウトについて

・一会場方式か?

・コントローラー、プレーヤーが別の部屋になるか?

(3) 図上シミュレーション訓練実施時間

・事前待機・準備 :30分~1時間

・内水氾濫~外水氾濫期:2時間程度 (合計 4時間程度:半日)

*実時間か、早回しか、途中で一旦時間を切ってからスキップするか?

コントローラー

・シナリオに基づき進行 ・演習参加者の状況付与 ・下記の役割を代行し、 参加者とやり取りを行う

警察署・消防署

住民・事業所等

プレーヤー

・シナリオは知らされない ・災害対策本部と各部署の担当者が

協議しながら対策を実施

中野区災害対策本部

各部署の担当者

指示・報告要請・回答

報告・連絡・問い合わせ

連絡・問い合わせ

回答・問い合わせ

問い合わせ・クレーム

回答・対応

指示

対応要請

回答

指示要請

東京都

165

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(4) 状況付与の方式(実施方法)

・紙ベースの状況付与方式

・音声、ファクシミリ、画像情報による状況付与方式

3.状況の設定

・小規模被害ケース:平成17年の災害と同程度ないしは、やや小さめの被害

・中間ケース :前線停滞・集中豪雨型

・最大被害ケース:大型台風対応 等の設定

<状況設定例>

・大型で非常に強い台風が東海沖を東に進んでいる。秋雨前線が関東から東海にかけて伸びている。

・秋雨前線の活動が活発になり、昨晩から、東京23区に大雨注意報が出ている。東京付近では、朝

から雨が降ったりやんだりの状態が続いている。

・台風本体の雨雲が接近し、断続的に強い雨が降るなか、午前10時~11時頃にかけて、時間雨量50mm

の大雨を記録した。

・午後1時になり、雨雲の切れ目に入って雨は小雨になったが、午後2時には東京23区・多摩地区

全域に大雨・洪水警報が出された。今後、予想される雨量は24時間で400mm、時間雨量150mmとな

る可能性もあるとのこと。

・夕方になって、記録的大雨情報、土砂災害警戒情報(レベル4)が相次いで出された。

・妙正寺川、神田川の水位は「はんらん危険水位」に近づいており、水位は急激に上がってきてい

る。

・台風本体が東京に最も接近するまで、あと3時間(注:雨は3時間+数時間は降り続くという意

味)

166

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4.付与情報の作成

表3 状況付与の分類

種類 内容 状況付与項目

基本となる

状況付与

風雨の情報や周りの

状況等

・気象情報

・実際の風雨、雷、河川水位等の情報

・災害対策本部(水防本部)の状況、庁舎内・周辺の状況

・テレビ・ラジオから放送される災害報道 ・(ヘリテレ、監視カメラ等の映像)

対策別の状

況付与

訓練プレーヤーの対

策項目に関係する情

[被害情報]

・家屋・道路等への浸水状況 ・建物被害(大まかな状況) ・閉じこめ(場所を指定、閉じこめ人数や状況) ・人的被害:警察や医療機関によるとりまとめ情報 ・ライフライン(電気、通信、上水道等)の支障・復旧状況

・交通(道路、鉄道等)の支障・復旧状況

[対応情報]

・住民の避難状況(避難場所、避難所への避難者数、避難状

況、指定避難所以外への避難等)、要援護者の状況等 ・消防・警察等の対応状況 ・現業部門等の対応 ・医療機関の対応状況 ・交通・ライフライン事業者の対応状況

その他の状

況付与

訓練の難易度(参加者

の練度)に従って加え

る。

・行政機関、防災関係機関からの問い合わせ、要望、要請 ・住民、事業所、ボランティアからの問い合わせ、要望等(未

確認のあいまい情報、誤情報を含む) ・マスコミからの問い合わせ、要望

・気象情報(気象庁は、平成22年5月から区別の気象情報を出す)

・河川水位、浸水予測はどのように行うか?

河川水位情報(8箇所の監視カメラ情報、実況状況)

・テレビ・ラジオ等からの情報

・国、都、関係機関からの情報

・他機関からの情報

・現地派遣職員、住民等からの情報

*基本的に、気象情報は岡田委員が作成する。

その他の付与については、各機関からの助言を得ながら、基本的には中野区が状況付与票を作成

し、消防科学総合センター、防災&情報研究所(高梨、坂本)が助言、追加・削除等を行う。

167

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図2 状況付与票の例

付与先 中野区防災担当

発信元 出勤途上の区役所女性職員

伝達手段 電話

件 名 庁舎周辺の状況

時 刻 09:02

渋谷駅付近から大雨となり、新宿駅からのJRが東中野駅前でストップしてしま

い、いつ運行再開するかわからない。電車の窓外は大粒の雨がたたきつけられて

いて、視界不良。電車内で東京23区に大雨・洪水警報が出されたと知ったが、

時間がかかっても区役所に行った方がよいでしょうか。

付与先 中野区防災担当

発信元 放送局

伝達手段 テレビ

件 名 気象情報

時 刻 14:05

東京23区・多摩地区全域に大雨・洪水警報が出されました。今後、予想される

雨量は、24時間で400mm、時間雨量は150mmとなる可能性もあります。

今後の気象情報に注意し、河川の水位や土砂災害に、十分警戒してください。

168

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5.図上シミュレーション訓練の実施スケジュール(案)について 時 期 内 容

1 平成21年10月28日 ・中野区の気象条件等

・図上シミュレーション訓練の実施方法について

・事前図上検討会(討議型図上訓練)

来年度の風水災害対応図上シミュレーション訓練の企画

準備として、区と関係機関が協議する。

【協議項目(案)】

○中野区で起こりうる被害の想定

(危険箇所、注意箇所等の確認)

○関係機関の態勢

○区の取るべき態勢

○区と関係機関の連携方策等

【参加予定関係機関】

区(防災担当、交通・道路管理担当)、中野警察署、野方警

察署、中野消防署、野方消防署、東京都第三建設事務所

2 平成21年11月

~22年3月 風水害対応図上訓練に向けた実施案検討、作成

3 平成22年4月下旬 風水害対応図上訓練実施の最終確認打合せ

4 平成22年5月下旬 風水害対応図上シミュレーション訓練実施

169

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事前図上検討会

-討議型風水害対応図上訓練-

1.実施の目的

・平成22年5月末に実施予定の風水害対応図上シミュレーション訓練の企画・準備

・図上シミュレーション訓練参加機関の顔合わせ

・企画に当たって必要な被害状況等の想定(危険箇所、要注意箇所、重点対応箇所等の確認)

・想定される状況による関係機関の対応

・対策実施上のポイントの抽出・確認など

2.風水害対応図上訓練における検討課題

(1) 予想される被害・状況としてはどのようなものが考えられますか?

<ケース>

・ケース1 平成17年水災と同程度

・ケース2 強い大型台風が東京を直撃

<災害因>

①内水氾濫

②外水氾濫

③堤防決壊 等

<想定される被害>

①浸水区域、浸水高等

・浸水が予測されるエリア、危険箇所について、地図を活用して確認・記入してください。

→警戒箇所、重点警戒箇所等はありますか?

あるとしたら、どのような所ですか?

②予想される人的被害・建物被害等

(2) それぞれの段階で、どのような対応をとりますか?

①気象条件(雨量、注意報・警報、記録的大雨情報、土砂災害警戒情報)、河川水位等に応じた対

応基準はありますか? また、どのような対応をとりますか?

<対応例>

・職員参集

・職員派遣・配備

・避難勧告・指示、自主避難勧告、避難準備情報(要援護者避難情報)→避難所開設

・交通規制・立ち入り禁止措置 等

170

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②各機関の対応について

(例)中野区水防本部→(風水害)災害対策本部への切り換え

○時期別にみた対応

・警戒期

・内水氾濫期

・外水氾濫期

・被害拡大期

○情報の受伝達について

1)被害の予測のため

・どこから、どのような情報を収集しますか。

・どのような情報を、他機関へ提供可能ですか。

2)被害の全容把握のため

・どのように被害情報、対応情報が伝わってくるか。

・どのように被害情報を収集しますか。

・どの機関に対し、どのような情報を伝えますか。

・他の機関から、どのような情報を必要としますか。(伝えてほしいですか。)

2)避難指示・勧告等の発令及び伝達

・避難指示・勧告等の発令の決定は、どのようなパターンが考えられますか。

・避難指示・勧告等の伝達手段と方法について

・伝達漏れを防ぐための対策について

3)避難の呼びかけ・避難誘導

・一般住民、在宅要援護者、一般通行車輌等

・重点的に情報を伝達する機関・施設はあるか?:要援護者関連施設、不特定多数者施設等

・避難拒否者への対応

③中野区と関係機関の連携体制について

(3) 秋季・梅雨期の短時間集中豪雨対策については、どのような対策を考えていますか?

(参考資料)過去の災害時の状況と被害、対応状況

中野区ハザードマップ、レーザープロファイラ

171

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2 ケーススタディ後のアンケート調査票

172

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H21年度図上型防災訓練に関するアンケート受講者用) (鹿児島県伊佐市 2009年9月15日)

あなたは: □コミュニティー代表 □民生委員 □消防団

避難所担当職員 □防災・福祉担当職員 □

その 他( )

本日の訓練大変お疲れさまでした。

皆様のご意見等を踏まえ、今回の訓練プログラムのさらなる見直しを行っています。お

手数ですが、下記のアンケート調査にご協力をお願いします。

1 訓練内容そのものについてお尋ねします。

(1)内容的に難しかったですか? (5段階で記入)

(2)風水害イメージへの理解を深めるために役立ちましたか? (5段階で記入)

2 訓練プログラムについてお尋ねします。

(1)研修の環境(会場、資器材等)はどうでしたか? (5段階で記入)

(2)研修の時間は適切でしたか? (5段階で記入)

1 3 5 4 2

易しすぎた ちょうど良い 難しすぎた

① グループワーク

1 3 5 4 2 ② 避難所運営ゲームHUG

1 3 5 4 2

1 3 5 4 2

いいえ わからない はい

① グループワーク

② 避難所運営ゲームHUG

1 3 5 4 2

わるい わからない よい

① 会場

1 3 5 4 2 ② 資器材・小道具等の準備

1 3 5 4 2

1 3 5 4 2

短すぎた 適切 長すぎた

① グループワーク

② 避難所運営ゲームHUG

参考資料2-1 伊佐市訓練におけるアンケート調査票

173

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(3)訓練の総合的な評価について (5段階で記入)

3 キーワードによる感想文

御協力ありがとうございました

- お 疲 れ さ ま で し た ! -

今回の訓練のキーワード(あなた自身が感じた言葉)を のなかに入れてく

ださい。次にそのキーワードを選んだ理由を記述してください。

1 3 5 4 2

1 3 5 4 2

① 今回の訓練に参加してよかった

と思いますか?

② 今後もこのような訓練が必要だ

と思いますか?

思わない どちらともいえない 思う

キーワード 選んだ理由

174

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H21年度風水害図上型防災訓練に

関するアンケート(受講者用) (岐阜県神戸町 2009年9月29日)

あなたは: □神戸町職員( 部 課)

□消防団

□その他( )

本日は、大変お疲れさまでした。

皆様のご意見等を踏まえ、今回の訓練プログラムのさらなる見直しを行ってまいります。

お手数ですが、下記のアンケート調査にご協力をお願いします。

問1 訓練内容についてお尋ねします。

(1)本訓練を踏まえ、より実戦的な「風水害に係る避難勧告・指示等の判断・伝達マニ

ュアル」(仮称)の作成につなげることができると思いますか。(ひとつに○印を付け

てください)

ア 大いに思う

イ ほぼ思う

ウ あまり思わない

エ 全く思わない

オ わからない

→ 付問へ進んでください

付問(回答の理由をお尋ねします。)

(2)風水害の被害イメージとそれへの町行政他関係機関の対応イメージを持つことが

できましたか。 (ひとつに○印を付けてください)

ア 大いにできた

イ ほぼできた

ウ あまりできなかった

エ 全くできなかった

オ わからない

→ 付問へ進んでください

付問(回答の理由をお尋ねします。)

参考資料2-2 神戸町訓練におけるアンケート調査票

175

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(3)風水害対応に関して気兼ねなく相談できる、専門的知見を持つ関係機関職員との

「顔の見える関係」づくりに役立ちましたか。 (ひとつに○印を付けてください)

ア 大いに役立った

イ ほぼ役立った

ウ あまり役立たなかった

エ 全く役立たなかった

オ わからない

→ 付問へ進んでください

付問(回答の理由をお尋ねします。)

問2 訓練プログラムについてお尋ねします。

(1)研修の環境(会場、資器材等)はどうでしたか? (5段階で記入)

(2)研修の時間は適切でしたか? (5段階で記入)

(3)訓練の総合的な評価について (5段階で記入)

問3 キーワードによる感想文等

1 3 5 4 2

わるい わからない よい

① 会場

1 3 5 4 2 ② 資器材・小道具等の準備

1 3 5 4 2

短すぎた 適切 長すぎた

1 3 5 4 2

1 3 5 4 2

① 今回の訓練に参加してよかった

と思いますか?

② 今後もこのような訓練が必要だ

と思いますか?

思わない どちらともいえない 思う

176

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自由記入欄(上記以外にお気づきの点がございましたら自由にご記入ください)

御協力ありがとうございました

- お 疲 れ さ ま で し た ! -

今回の訓練のキーワード(あなた自身が感じた言葉)を のなかに入れてく

ださい。次にそのキーワードを選んだ理由を記述してください。

キーワード 選んだ理由

177

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H22年度図上シミュレーション訓練の実施 に向けた事前検討会に関するアンケート

(東京都中野区 2009年10月28日)

あなたは: □中野区職員( 部 課)

□東京都第三建設事務所

□中野警察署 □野方警察署

□中野消防署 □野方消防署

□その他( )

本日は、大変お疲れさまでした。

今回の検討会がH21年度図上型防災訓練マニュアル研究会のケーススタディの一環

として行われるもので、検討会の意義や効果について皆様のご意見等お聞きしたく、お

手数ですが、下記のアンケート調査にご協力をお願いします。

問1 検討会内容についてお尋ねします。

(1) 本検討会を通じて、来年度の風水害対応図上シミュレーション訓練の企画にあたって、

必要な被害状況等の想定、それに対する区民及び関係機関の対応、対応実施上のポ

イントなどについて、イメージを持つことができたと思いますか。(ひとつに○印を付けてく

ださい)

ア 大いに思う

イ ほぼ思う

ウ あまり思わない

エ 全く思わない

オ わからない

(2) このような検討会は、関係機関職員との「顔の見える関係」づくりに役立ちましたか。 (ひ

とつに○印を付けてください)

ア 大いに役立った

イ ほぼ役立った

ウ あまり役立たなかった

エ 全く役立たなかった

オ わからない

問2 検討会プログラムについてお尋ねします。

(1)検討会の環境(会場、資器材等)はどうでしたか? (5段階で記入)

1 3 5 4 2

わるい わからない よい

参考資料2-3 中野区訓練企画準備のための検討会におけるアンケート調査票

178

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(2)検討会の時間は適切でしたか? (5段階で記入)

(3)今回の検討会に参加してよかったと思いますか? (5段階で記入)

問3 キーワードによる感想文等

自由記入欄(上記以外にお気づきの点がございましたら自由にご記入ください)

御協力ありがとうございました!

今回の検討会のキーワード(あなた自身が感じた言葉)を のなかに入れて

ください。次にそのキーワードを選んだ理由を記述してください。

1 3 5 4 2

短すぎた 適切 長すぎた

1 3 5 4 2

思わない どちらともいえない 思う

キーワード 選んだ理由

179

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3 図上型防災訓練マニュアル研究会 議事要旨

180

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第1回図上型防災訓練マニュアル研究会 議事要旨

Ⅰ.開催日時

平成21年5月28日(木) 14:00~16:00

Ⅱ.会場

都道府県会館 4階407号室

Ⅲ.出席者

(委員)

吉井委員、日野委員、高梨委員、小村委員、秦委員、大内委員、

貫名委員、岡田委員、松島委員、北口委員、根本委員、羽賀委員、

幸田委員、西浦委員、細田委員

(代理出席者)

鹿児島県伊佐市役所総務課長 山下氏 (前田委員代理)

(オブザーバー)

倉野氏(静岡県西部危機管理局危機管理課専門監)

(関係者)

(財)消防科学総合センター:山口理事長、坂野常務理事、井端事務局長

(事務局)

総務省消防庁応急対策室:中越専門官、安達事務官

国土交通省河川局防災課:橋本係長

(財)消防科学総合センター:田村審議役、胡研究員

(欠席)中村委員、今井委員、前田委員

Ⅳ.次第

1 開会

2 消防庁挨拶

3 消防科学総合センター挨拶

4 委員及び出席者紹介

5 座長挨拶

6 これまでの調査研究の内容紹介

7 議事

(1)H21年度調査研究の基本計画について

(2)H21年度図上型防災訓練ケーススタディの実施計画について

8 閉会

<配 布 資 料〉

資料1 H21年度図上型防災訓練マニュアル研究会 設置要綱

資料2 H21年度図上型防災訓練マニュアル研究会 名簿

資料3 これまで(H20年度)の調査研究の概要

資料4 H21年度調査研究の基本計画(案)

資料5 H21年度風水害図上型防災訓練のケーススタディの実施計画(案)

別紙1 避難所運営ゲームHUGの特徴と評価方法ついて

別紙2 平成 21 年度~22 年度中野区風水害図上訓練について

参考資料3-1 第1回図上型防災訓練マニュアル研究会議事要旨

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Ⅴ.議事要旨

事務局より、委員及び出席者の紹介後、座長の指名を行った。その後、座長の進行によ

り、以下の議事を行った。

1 昨年度(平成20年度)の調査研究の概要について

事務局

• 資料3を用いて、昨年度の調査研究の概要を説明した。

吉井座長

• 昨年度では、基礎的な座学を中心にし、意外と好評だったという感じだと思う。

2 H21年度調査研究の基本計画について

事務局

• 資料4を用いて、H21年度調査研究の基本計画について説明をした。

吉井座長

• 前年度が座学中心の訓練であったのに対して、今年は、グループディスカッション

を中心に、ステップアップした内容の訓練をしていこう、という位置づけで3つの

市と区と町について継続してやっていくという基本計画だったと思う。

3 H21年度図上型防災訓練ケーススタディの実施計画について

(1)伊佐市におけるケーススタディについて

ア 訓練の概要について

事務局

資料5を用いて、下記の説明を行った。

• 実施日程は9月中旬に、訓練テーマとして「早期避難の判断」及び「避難所の設

置・運営」を予定しており、

• 吉井座長と倉野専門監に講師として、グループワーク及び避難所運営ゲームHUG

の実施をお願いしている。早期避難の必要性を理解するとともに、伊佐市における

避難所の設置・運営における重要事項、実施上の問題点、課題を抽出することを訓

練の目標としている。

• 訓練参加者は、防災担当部門、避難担当部門及び住民の方々、総勢約50名(うち

20名は一般住民の方々)に御参加いただく予定である。

• 約4時間の訓練時間を予定している。シナリオ作成等の準備の一環として、7月の

中旬に現地調査を実施する予定である。

イ 地域特性について

山下(伊佐市前田委員代理)

資料5を用いて、下記の説明を行った。

• 伊佐市は鹿児島県の北部に位置し、面積が広くて支流も多くある。

• 雨量的には、年間を通じて梅雨時が一番多い。台風はあまり来ないが、(川内川周

辺に)集中豪雨が多いということである。

• 平成18年の大雨により、旧菱刈町、旧大口市に多大なる被害を受けた。

• H18年水害時の課題としては、避難所は設置したが、そこに行くまでに問題があ

ったと、いわば避難所が避難所にならないような問題があった。また、避難所の運

営について、入り込みの車が多くて出られなくなったことや、地元ではない避難民

をどうするかが問題になった。さらに、1つ小さな道路だけが通れるときに、どこ

が避難所か、どう案内するかがわからないという問題もあった。

• 要援護者の避難にかかる課題をどのように訓練につなげていくのかなと私どもは考

えている。

• 防災計画は、今年6月1日に作る予定である。今回のケーススタディ等の見直しを

182

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しながらやっていくと考えている。

• この間川内市サテライト会場で防災訓練を実施した。住民 800 人のところ 500 人ぐ

らいの参加をいただいた。防災に対しては非常に意識が高まっている状態である。

ウ 訓練の実施計画ついて

吉井座長

• 水害の場合は、避難所の運営よりも避難所へ行くべきかどうか、そして避難のタイ

ミングに絡む問題があって、避難勧告・指示を、あるいは自主避難の呼びかけをど

の段階でどうするかという問題がある。

• 3年前私はH18年7月22日の災害について、菱刈町に調査を行った。安全な避

難所を確保することを第一の課題として課長さんが指摘していた。高齢化率が高く、

高齢者の避難誘導も課題として当時挙がっていた。

• 全国どこでも同じかと思うが、避難勧告は出されたが、住民はなかなか避難しなか

った。その辺をどうするのかという問題も多分残されているだろうと思う。

• 避難所運営の問題について、自主避難を最初のころは呼びかけるが、では自主避難

を呼びかけた人に食事を出すのかどうか、そういう細かい問題もある。

• 車の問題は非常に大きな課題であり、地震版HUGのシナリオの中にも地域外の人

が入ってくる状況想定があって、それを少しモデファイすればこの課題の議論がで

きると思う。

• 当時はまだ危機感が足りなかったが、今は、役所の方も住民の方もかなり危機感を

持って対策、訓練をやるようになってきたことで、どういうシナリオでやるかが問

題になると思う。多分平成18年の災害を再現する形で、どういう問題が解決され

たか、どういう課題が残っているか、を訓練の中で見る必要があるかなと感じた。

• 状況を設定しながら、幾つかのグループディスカッションをし、避難所へ行った後

は倉野さんのHUGを少しやってみようかということを今の段階では考えている。

詳しい内容は現地調査で決めたいと思っている。それをやれば、ある程度ほかの同

じような地域でも使えるようなモデルができるのではないかと考えている。

• 次に、倉野専門監の方からHUGのお話を頂く。

倉野(オブザーバー)

• 楽しくてためになって簡単にできるようなものを考えて、避難所運営ゲームHUG

を作った。具体的、体験的、ゲーム感覚でできる、誰でもできる、楽しくできる、

効果がある、簡単に実施できる、普及が容易であるといった特徴が挙げられる。

• 今回の伊佐市における水害HUGについて、今考えているのはグループを幾つか作

り、そこのグループをある家族(寝たきりのおじいさんがいて、犬を飼っているな

ど)として設定し、そこへ被害状況(インターネット画像あるいはテレビにテロッ

プなど)を提供し、各グループが「いつ避難するか」、「避難するまでに何をする

か」といろいろ議論が出てくると思う。そのような議論をしてもらって避難所に行

ったと、今度は避難所運営の方で、「連れて来た犬はどうする」、「病気の人はど

うする」などをやってみると割と楽しくできるのかと思っている。

• このような訓練において、災害への判断と対応が正しかったかどうかの絶対的評価

は難しく、相対評価をしようと考えている。具体的に、幾つかグループをつくって、

グループごとの判断と対応について、なぜそのような評価をしたか、なぜそのよう

な行動をしたかを、それぞれのグループが他のグループに紹介することによって、

相対的に評価できると思う。

• 準備作業としては、過去の水害事例を集めて、地震版の避難所やカードの入れかえ

をすれば、それなりに水害版ができるのかなと思っている。

貫名委員

• やはりHUGを経験してみないと、イメージだけで全く違うものを思い描いている

かもしれない。

吉井座長

183

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• (HUGにおいて)付与と評価とがセットとなるのが1つのポイントである。つま

り「どういう状況が起きるのか」を理解したかどうか、「どういう対応があるの

か」などをずっと引き出していかなければいけない。結局どういうことを勉強して

ほしかったのか、それがちゃんと理解できたかどうかというのがポイントであり、

そういうような締め及びそのための事前準備が必要である。

• 最後の締めは、少し避難所運営のこととか避難者のことを知らないとできない。だ

から、そこを開発しないと、本当はHUGも完成しないのではないかと思うが。

倉野(オブザーバー)

• まとめの部分まで含めて研修会を行うことを今考えている。

• 早期避難の関係については、今日の追加資料「避難勧告等の判断・伝達マニュアル

作成ガイドライン」に出てくるような内容のものを一緒に学習できるようなものに

できたらなと思っている。

吉井座長

• 伊佐市訓練の対象者は何人ぐらいで、どういう構成が可能なのか。

山下氏(伊佐市委員代理)

• ご要望があれば、地区を指定して、そこから編成する。人数に関しても、先生方の

方に判断していただければと思うが、(伊佐市では)避難をさせるのは大体消防団

なので、伊佐市の消防団団長、副団長まで入れて大体30名いる。

倉野(オブザーバー)

• 参加者については、女性の参加がポイントになる。ぜひ女性に入っていただきたい。

吉井座長

• 消防団による誘導の問題をつけ加えないと、水害の場合の避難問題はうまくいかな

い。今回伊佐市HUGの最初の方でそれをやると時間が問題になる。

日野委員

• 評価検証用のデータをそろえたいというお話はすごく良いが、倉野さんの個人的な

努力に任せるのではなく、この研究会が倉野さんをサポートしながら、評価・検証

に使えそうなデータを整理していくと、今後やりやすくなるのではないか。

北口委員

• 日野委員からのご提起は、つまり座長がおっしゃるベストプラクティスのようなも

のをまとめておくということなのか。

日野委員

• 災害対応の中に必ずしもベストというのがあるとは限らない。ベターでいいのでは

ないかと思う。

高梨委員

• 逆に私の方は、ベストではなくて、失敗例に学ぶということにしている。

• 避難所運営を含む風水害対応には地域特性が大きく絡んでくるので、(地域特性)

を入れた評価は、非常に難しい問題ではあると思う。

• 避難所運営において、行政にとっての課題を見るときの図上演習のやり方と、住民

を対象とする場合の図上演習のやり方はちょっと違うのではないか思う。

• リーダーの方の大小とか、いろいろなレベルによってもやり方が違って、評価も違

ってくるのかなという感じがする。

吉井座長

• 最近起きた水害事例でどういう課題があったかを集めて、それを訓練でやった方が

いいのではないかという御意見であり、全くそのとおりだと思う。

• ベストプラクティスがつくれれば、それでみんな覚えていただければいいが、非常

に多様だというところが難しい点だと思う。

• ベストプラクティスはなくて、むしろ現実に出た問題をいかに回避するかというと

ころぐらいで、正解というのはなかなかない。

• 去年起きた岡崎の豪雨は、平成18年の鹿児島豪雨と似ているところもある。最初

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はたいしたことのない雨が降って、一度解除した後に本番が来る。そういう気象の

方も幾つかのパターンに分けて訓練をしていかなければいけなくて、訓練の内容が

ちょっと違ってくるかもしれない。

(2)神戸町におけるケーススタディについて

ア 訓練の概要について

事務局

資料5を用いて、下記の説明を行った。

• 実施日程は9月下旬に、訓練テーマは、災害対策本部の設置・運営方法についてと

いうことを予定している。

• 訓練の目標は、揖斐川破堤前に避難が完了できるように、行うべき対応及び課題を

整理することを想定し、小村委員に講師担当をお願いしている。

• 訓練参加者は、災害対策本部の関係職員約15名を予定している。

イ 地域特性について

羽賀委員(神戸町)

資料5を用いて、下記の説明を行った。

• 神戸町は、濃尾平野の西部の西濃地方の最北端にある。地形は平坦で、海抜が一番

低いところが8.6mで、一番高いところが23mぐらいである。1級河川(一番

大きいのが揖斐川)が町内を6本流れていて、町の南の方に輪中堤防がある。

• 人口は、2万300人ほど、外国人が550人ぐらいいる。高齢化率は21.6%

とそんなに高くはない。面積は、18.77km2。

• 昭和30年以降で一番大きい被害をこうむったのは、昭和34年の伊勢湾台風であ

る。町内の15%ぐらいが水につかった。その次に大きい被害をこうむったのは昭

和51年の9.12の豪雨災害であり、長良川の堤防が決壊した。風水害の危険箇

所は、揖斐川の右岸と左岸、全体では12カ所ほどある。その改修工事は、毎年の

ように国土交通省の方でやっていただいている。

• 防災計画は、10年ぐらい前に策定され、平成19、21年に修正をかけている。

「災害対策本部の設置・運営マニュアル」はないが、職員に災害初動マニュアル的

なものは配布している。

• 防災行政無線を整備しており、85%ぐらいの世帯には個別受信機がある。残り

15%がなかなか設置していただけないということで、今後避難勧告等を出した場

合に周知できないという課題がある。

• 災害対策本部の設置基準については、ある程度定めているが、避難勧告・指示につ

いては、基準はないことで、課題になっている。

• 災害時要援護者の避難支援プランの策定を今年度中にやる予定で、現在は自治会と

か消防関係者、福祉関係と協議をしている。

ウ 訓練の実施計画ついて

小村委員

• 昨年度が個人ベースでもできるイメージトレーニングとか地図の読解力に当るとす

るならば、今年はマニュアルづくり、そして来年度はそのマニュアルの実行可能性

を検証するというような年度計画になるかなというふうに理解している。

• 1日半で何とか終わらせたい。初日の午後に、事務局側が土地勘を得るようなこと

をした後、夜いろいろなブレーンストーミングをして、2日目の午前中に事務局と

しての案をつくっておき、午後に自治体の方に同じ作業をやっていただき、それを

照らし合わせてみて、過不足をチェックするという形でマニュアルの論点出しをや

れば、時間のコストパフォーマンスがいいのではないかなというふうに考えている。

• (神戸町の)大きな地理的特徴として、東海地方は夜に雨が降ることと、降り始め

185

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てからしばらくしないと、どのくらい続くかわからない、という特徴があるそうで

ある。と考えると、訓練の企画に当たって、私自身もまだ答えが出ていない以下の

4点を申し上げる。

• 第1点目、訓練のシナリオとして、最初から、破堤までいってしまうぞというシナ

リオはあるか。

• 2つ目、破堤すると町役場がつかるということに対して、代替対策本部の立ち上げ

ということをはなから織り込んでおかなければいけないのか、それとも、ともかく

避難に全力を尽くして、帰ってみたら本部が水につかっていたというのはあるのか。

• 3つ目、訓練において、逃げ遅れ対策という大きな課題はあるが、水が引いた後の

後始末を、訓練においてどう考えればいいのかがまだ見えていない。

• 4つ目に、行政対応の議論は出ているが、住民対応の議論も当然考えなければなら

ないとは思っているが、今年はそこまではちょっと厳しいと考えている。

吉井座長

• 指摘があったことは、多分ほかの対象地域でも同じような問題を抱えているわけで、

ポイントはどの程度最悪ケースを考えるのかということである。

• 最悪ケースでつくった計画は、最悪でない場合には牛刀で何とかするというたぐい

のものになってしまい、細かいところはなかなかうまくいかないという問題がある。

• ただ、我々は従来から最悪ケースをつくりなさいと言ってきたので、今回の場合は

そういうことでいいのかということも含めての問題提起だったかと思うが。

岡田委員

• 想定していないことが起きたということこそ危険だ。特に、人命を救うという意味

でも、最悪シナリオをまず頭に入れておくというのが一番必要なのかなと思う。

• 救える命を1人でも多く救いたいというより、犠牲者をゼロにしたいというのが一

番のメインかなと思っている。

日野委員

• 多分行政対応で一番多くあるパターンは、ゆでガエル現象に陥ってしまって、対応

が後手に回るというものである。それを体験させる形でやればいいのではないかと

思う。つまり、最初は内水氾濫程度から開始し、ある時点から集中豪雨が降りやま

なくて破堤の危険が出てくるといったぐあいに徐々に危険性を高めながら最悪にも

っていくという形がよいのでは。

• このような「ゆでガエル的な対応をやったら間に合わない」ということを学ばせる

のか、「初めから大破堤を前提にしてあるべき対応」を学ばせるのかで訓練方法は

異なると思われる。

小村委員

• 時間を切りたいと思っている。災害時の30分ごととか1時間ごとに、どんなこと

をやらなければならないのかということをやっていきたいと考えている。そうする

とその前の段階でどこまでやっておかなければならないのか。

• ゆでガエルは避けたいとは思っているが、ただ、現実のところで、途中でこれは本

当にいくぞという段階までと、内水氾濫でおさまるという2つの話があるとすると、

共通項は、このところはこれぐらいやっておこう、ターニングポイント以降はこれ

をやろう、破堤後はこれをやろうとか、と思っているが。

高梨委員

• 訓練目的は「計画づくり」だとすると、やり方が違うのではないか。

• シミュレーション型の訓練だと、破堤までいくパターンを最初に設定して、その中

で時間区分をして状況設定をしていくという形となるが、計画づくりのための訓練

となると、時間経過というよりも、むしろ「どういうポイントが抜けているのか」

を出していくためのやり方になるので、ケースを幾つも出して、その中で、こうい

うケースだったらどうするかということを考えていくといったような方が、むしろ

計画づくりにはなっていくのではないかなという感じはする。

186

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• 神戸町では、来年度はシミュレーション型をやるのか。

事務局

• シミュレーション型訓練を来年度3カ所でやらせていただければと考えている。

吉井座長

• 水害関係の大きな課題は、国土交通省、都道府県関係と市町村の連携がポイントに

なるわけで、神戸町の場合はその辺はどういうふうに考えているか。

小村委員

• そこのところはまだ具体的な手は打っていない。

(3)中野区におけるケーススタディについて

ア 訓練の概要について

事務局

資料5を用いて、下記の説明を行った。

• 実施日程は10月の上旬に、訓練テーマは、中野区と関係機関の連携及び水害時の

情報の受伝達を予定している。

• 訓練の目標設定については、来年度実施する「図上シミュレーション訓練」の企画

準備の一環としての訓練を行い、その結果を来年5月に実施する図上シミュレーシ

ョン訓練の状況付与(シナリオ)等に反映させるということを予定している。

• 担当講師は、髙梨委員と岡田委員にお願いしている。

• 参加者数について、区役所5~6名、関係機関4名の10名程度を予定している。

イ 地域特性について

根本委員(中野区)

資料5を用いて、下記の説明を行った。

• 中野区の水害は都市型水害となる。4年前の平成17年9月4日のときに妙正寺川

と神田川があふれて、相当大きな被害が出ていた。神田川、妙正寺川、1級河川の

溢水と内水被害はいつでも起こり得るというような状況である。

• ほかの2つの地域と違って、あふれてもすぐ引くという特徴がある。ただ、17年

9 月 4 日の水害では護岸が崩れて、危うく家が流されそうになった。

• 神田川洪水予報のときの避難勧告などは、気象庁・東京都のものだと「2階に逃げ

ろ」ということになるが、でも、本当にそれで100%安全かという問題があり、

ろ」ということになるが、100%安全かという問題があり、どうするべきか今後

ご相談したいと思っている。

• 土砂災害、地すべりという被害は今まではないが、急傾斜地が14カ所あるという

ことで、100%ないとは言い切れない。

• 風水害マニュアルについて、検証する必要はあると思う。情報収集体制は整ってい

ると思うが、職員を集めるタイミングは非常に難しい。

• 避難勧告の具体的な数値の基準等は定めていない。今後の課題だと思う。

• 来年は、警察、消防などの関係機関と連携を広げた訓練をしていきたい。

岡田委員

• 避難と言っても、台風のような早めの情報により遠くの避難所へ避難する場合と、

短時間大雨のようなとっさに 2 階に避難するのでは、シナリオの作り方が違ってく

る。

吉井座長

• その通りである。

高梨委員

• 今年度の訓練については、風水害全般に対してどう取り組んでいるのか、短時間集

中豪雨対応をどうするのか、といったことで、非常に難しい問題がある。

• 集中豪雨の起き方にもいろいろなパターンあるので、岡田委員の方で過去の例など

187

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を参考にしながら設定して頂きたい。

• 過去の事例を見てもわかるように、大きな災害になったときには、かなり関係機関

の協力が出てくることがある。中野区さんの方にも、無理のない範囲で関係機関の

参加の呼びかけをして頂くというのがまず今年訓練の趣旨である。

• 関係機関の連携を図るとともに、中野区の防災計画へフィードバックできる事項及

び課題の抽出というような演習内容を考えている。

• 来年度のシミュレーション訓練については、今年参加して頂く関係機関のほか、可

能であれば庁内各部署にも参加していただきたい。プレーヤー側に入るのか、それ

ともコントローラー側に入るのかは、今年の訓練の様子を見てから来年に向けてや

っていくということでお願いしている。

• 訓練の時間配分については、事務局の案(午前)と違い、午前は設定していなく、

午後だけを使って実施するというのが私の提案である。

貫名委員

• 東京都第三建設事務所が河川に関しては非常に詳しい情報を持っているはずだが。

根本委員(中野区)

• 東京都第三建設事務所の参加は可能と思う。

秦委員

• (中野区では)昨年7回警報が出て、空振りでいろいろ不満があったということだ

ったが、それで今年度も同じような基準で、態勢でいくのか、今どういう議論がさ

れているのか。

根本委員(中野区)

• 基本的に変えていない。警報が出たら原則として情報連絡態勢以上の態勢をとるこ

とになる。注意報が発令された時点で防災担当職員 2 名の連絡態勢をとる。状況に

よっては情報連絡態勢を発令する。

岡田委員

• 今の警報は、例えば東京23区だと東部と西部の 2 つの区域のように、複数の市町

村をまとめた区域に対して発表しているが、来年からは市町村単位で警報や注意報

を発表することになる。

• 平成16年に相次いだ気象災害で避難が遅れて多くの高齢者が犠牲になったことを

踏まえて、発表タイミングは、より確実に人命を守ることを意識している。

• 警報や注意報を発表する指標には、土砂災害では土壌中に溜まっている雨量、洪水

では上流部に降った雨も考慮した指数を取り入れている。

高梨委員

• 来年の5月にやる図上シミュレーション訓練では、区ごとの基準に基づいて出たも

のを付与するということを前提にしている。

• それと、マニュアルなどの中に要援護者避難情報が入っていない。その辺もあわせ

て基準を考えていただいたらどうかといったことも申し上げている。

吉井座長

• 中野区の要援護者の避難誘導計画はできそうか。

高梨委員

• 一応、計画はつくっている。

根本委員(中野区)

• 水が出る時期は限られているので、検証する必要はあると思う。

吉井座長

• どういう課題があるかは地域によって違うし、それに応じて訓練、手法も変わって

くる。このようなことを今日の研究会で確認できた。

188

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• 今日十分な議論ができなかった、小村委員が言っていた「どういうシナリオでやる

のか」というのを含めて、少し内容を具体的に決めていくということで、次回の研

究会で議論していきたい。

午後4時05分 閉会

189

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第2回図上型防災訓練マニュアル研究会 議事要旨

Ⅰ.開催日時

平成21年7月29日(水) 14:00~16:00

Ⅱ.会場

スクワール麹町 3階 錦

Ⅲ.出席者

(委員)

吉井委員、日野委員、高梨委員、貫名委員、中村委員、岡田委員、

今井委員、岩井委員、根本委員、羽賀委員、前田委員、西浦委員、細田委員

(代理出席者)

鹿児島県伊佐市役所総務課長 山下氏 (前田委員代理)

(オブザーバー)

倉野氏(静岡県西部危機管理局危機管理課専門監)

(関係者)

(財)消防科学総合センター:豊澤事務局長

(事務局)

総務省消防庁応急対策室:中越専門官、安達事務官

(財)消防科学総合センター:田村審議役、胡研究員

(欠席)小村委員、秦委員、松島委員、大内委員、武居委員、

Ⅳ.次第

1 開会

2 第1回研究会の議事要旨の確認

3 議事

(1)風水害図上型防災訓練の実施支援マニュアルの構成及び記述すべき内容(案)について

(2)H21年度図上型防災訓練(ケーススタディ)の実施計画(骨子案)について

4 閉会

<配 布 資 料〉

資料1 H21年度図上型防災訓練マニュアル研究会 名簿(更新版)

資料2 第1回研究会の議事要点

資料3 風水害図上型防災訓練の実施支援マニュアルの構成及び記述すべき内容(案)

資料4 H21年度風水害図上型防災訓練のケーススタディの実施計画(骨子案)

(その1) 岐阜県神戸町における訓練計画について

(その2) 東京都中野区における訓練計画について

(その3) 鹿児島県伊佐市における訓練計画について

別紙1 第1回図上型防災訓練マニュアル研究会の議事要旨

別紙2 神戸町ハザードマップ

別紙3 中野区の洪水ハザードマップ

別紙4 (中野区における)H17年9月4日の被害状況について

別紙5 伊佐市(大口市、菱刈町)ハザードマップ

資料3-2 第2回図上型防災訓練マニュアル研究会議事要旨

190

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Ⅴ.議事要旨

事務局より、異動により新たに就任された委員及び出席者を紹介し、その後、座長の進

行により、以下の議事を行った。

1 風水害図上型防災訓練の実施支援マニュアルの構成及び記述すべき内容(案)について

事務局

資料3を用いて、作成予定の訓練マニュアルの目標像について説明をした。

吉井座長

• 必要条件は書いたが、実際に役に立つかどうかは使ってみないとわからないところ

がある。

高梨委員

• 市区町村からの要望の一つとして、「“広域災害について国レベルの組織対応を表

示したモデルシナリオ”を記載してほしい」というのは、この報告書には該当しな

い感じがする。

日野委員

• 市町村の方の視点で見たときに、どうなのか。

根本委員(中野区)

• どういう時間でどれぐらいの雨が降るという想定と、そのときに考えられる具体的

な対応内容のひな型のようなものがあれば、それを応用することで(市町村自ら訓

練を企画実施)できると思う。ただ自治体で状況が違うとは思うが。

吉井座長

• 風水害の場合に一番難しいのは、地震よりも多様なケースがあり、どの想定をした

らいいのか、それだけでも相当悩むと思う。

• それから、その災害に備えてどういう訓練方法がいいのかという問題もある。

羽賀委員(神戸町)

• その地域に合った訓練マニュアルというのは難しいので、基本的な部分のマニュア

ルがあればいいなと思う。

前田委員(伊佐市)

• 平成18年災を受けて、H19年度のシミュレーション訓練を実施したので、やり

やすかったが、それでもやはり状況付与等の作成には困難があった。

• いろんなケースをシナリオの中に入れ込んで、それを市町村が選んでいくようなマ

ニュアルができたらいいのではないかなと思っている。

倉野氏(オブザーバー)

• 付与情報の見本をつくって、(各市町村のところの)地名を入れかえれるだけで、

状況付与ができるとよいと思う。

吉井座長

• 訓練手法によって違うと思う。地名が具体的に入る訓練手法の場合には、そこを入

れかえればできるようにしておくというのが、いいと思うが。

倉野氏(オブザーバー)

• 架空の市町村をつくって、初めてでもできるようなマニュアルを作ってみて、それ

が使えそうだったら自分の市町村の地名に差し替えるという方法もいいかなと思う。

吉井座長

• モデルケースのようなものを想定して、それについて具体的なシナリオをつくって

おけば、かなり参考になるのではないかというお話だったと思う。

2 H21年度図上型防災訓練(ケーススタディ)の実施計画(骨子案)について

191

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(1) 岐阜県神戸町訓練について

事務局

• 神戸町訓練の講師担当委員が欠席のため、以下のような2つの依頼を受けておる。

①揖斐川破堤を想定した訓練が本当によいのか、現実的な内水氾濫、あるいは同じ

破堤でも、杭瀬川の破堤を考えた方がよいのではないか。②今まで、水害対策の図

上訓練に取り組んでいなかった自治体が、いきなり揖斐川級の河川の破堤を想定し

た訓練に取り組むことの是非について、ご議論を頂きたい。

吉井座長

• まず神戸町の水害ハザードマップについて説明して頂きたい。

羽賀委員(神戸町)

• 神戸町は小学校区が4つあり、東の揖斐川の堤防あたりで破堤した場合、東南の下

宮小校区は5m以上浸水し、神戸町役場は2m以内の浸水を受けるということで、

揖斐川が破堤した場合は災害対策本部の機能が残せるかどうかという問題があるし、

下宮小学校あたりの避難場所への避難ができず、真ん中あたりの神戸小学校とか神

戸中学校の方へ避難することになり、かなり距離がある。

• 根尾川という一級河川が破堤した場合も、西座倉地区は5m以上の浸水を受けると

いうことである。また、杭瀬川が氾濫すると新西保地区というところが浸水を受け

るということである。

• 通常の大雨だと、下宮小校区のあたりが一番冠水しやすく、県道等が冠水し、交通

規制等が必要になってくる。

吉井座長

• 揖斐川の南の方のところで破堤をすると、手の打ちようがないのか。

羽賀委員(神戸町)

• ここまで来ると、本当に手の打ちようがない状態となる。

• 5~6年前の台風で揖斐川の水位が上がったときに、堤防の西側でガマが噴いたり

するところがあったが、国交省の道路改良でその後は出ていない。

• 台風等が来た場合、落合、柳瀬、新屋敷のあたりは、常に警戒していた地域である。

吉井座長

• 最終的に破堤させるかどうかは別として、その前段階はどう想定しているか。

羽賀委員(神戸町)

• 前の段階では、平野井川というのがあり、揖斐川の方へ流れ込むあたりが一番地形

的に低いところで、水がたまりやすいということで、まずはこのあたりを警戒する。

• そして、先ほど言われた新西保地区、町内の排水路が狭いので、ちょっとした大雨

でもあふれる排水路があるので、そういう排水路なども警戒する。それから、下宮

地区のガマが噴いていないかどうかということを警戒する。

吉井座長

• 揖斐川が破堤しないケースも含めて、特定の1つのシナリオをベースにして議論を

するのではなくて、いろんなシナリオがある中で議論していくという手もあるので

はないかと思う。

• 揖斐川が破堤する前に、例えば避難をしている人がたくさん出れば被害は減るし、

でも避難所も相当やられるところが出てくる、その辺も考えておくという手はある

と思う。最終的な破堤かどうかということをこだわらずに、両方考えてみるという

手もあるのではないかと思う。

羽賀委員(神戸町)

• 今まで水防活動(月の輪工法)でガマを囲ってやったこともあるので、基本的には

破堤しなければ、避難勧告とか出すことはあるのかなという気はする。

• 杭瀬川の方は十分に整備されていないので、すぐに隣の池田町には避難勧告を出し

てみえる。池田町より神戸町の方が土地が高く、支流が氾濫しても神戸町までは行

192

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かないことがほとんどで、51年豪雨災害のときにその地区で床下浸水などが出た

ことがあるので、その辺を想定した訓練が必要だと思う。

吉井座長

• 国交省の方も含めて少し多様なシナリオを検討されたらどうかという気はするが。

岡田委員

• 神戸町内で揖斐川が破堤するのは、神戸町よりも上流部に雨が降った場合である。

神戸町よりも上流部だけに破堤するような雨が降るとは考えにくく、それよりも、

東海豪雨のような雨域が次第に北上し神戸町で内水氾濫が発生し、さらに雨が北に

広がるという可能性の方が考えられる。

• 最悪の場合を頭に描いた上で、シナリオづくりされた方がいいと思う。

貫名委員

• 訓練の内容は、避難対策本部の設置運営だから、過去の実績から水位が上がった川

を持ってきて、時間ごとに追って、災害対策本部がどういうふうに運営して、水防

団にどういう情報を流さなければいけないか、あるいは住民にどういう情報を流さ

なければいけないか、そういうことを訓練することであろう。

• 神戸町の立場からすれば、揖斐川だけ見ていればいいというわけではないので、町

の中に流れている川で気になるところを全部、多分情報が集まってくるようになっ

ていると思うので、その状況をみんなで想像して、こういうときにこうしなければ

いけない、破堤したらどうなるだろうというような想像をし、本部の設置運営をさ

れたらどうかと思う。

吉井座長

• 訓練参加者はどういう方を想定されているのか、国交省の方は入らないのか。

羽賀委員(神戸町)

• 災害対策本部の職員を想定しており、国交省の協力は呼びかけることができるが、

連携してやったほうが有効的だと思う。

吉井座長

• 参加者が町の人だけであれば、周りからどういう情報が入ってくるかということを

含めて、状況を与えていかないと、議論をしてもらわなければいけない。

• 参加者に国交省の方が入っていれば、こういう状況のとき国交省はどうしますか、

どういう情報を町には出すのかを聞けばいいわけで、それに基づいて、「どうしよ

うか」と町の人が検討することになる。

• やり方としては、基本は町の災対本部に入ってくるような人たちが、グループディ

スカッションを通じて模擬的に災対本部の経験をすることが目的であれば、いろい

ろシナリオが考えられて、最後は破堤するかどうかは、時間があれば破堤したとこ

ろまでやった方がいいが、その前で終わっても十分訓練にはなる。それまでの過程

に大分ステップがあるから、そういう意味では、破堤するかしないかが重要ではな

いかと思う。

岡田委員

• 気象庁は来年5月から市町村単位で警報を発表する。その先取りとして、神戸町に

対する警報を訓練に使うことが可能である。

貫名委員

• よろしければ国交省事務所の方にも声をかけるし、岐阜県の土木関係の方にも声を

かけられると思う。

吉井座長

• 国交省はどういう情報を町に対して出してくれるのか、気象台からの情報はどうい

う意味か、というやりとりもできるフレキシビリティが高い訓練をやったらどうか

と思うが。

日野委員

• 小村委員の問題提起の中にある「現実的な内水氾濫」についてコメントしたい。一

193

Page 201: 地方公共団体の風水害図上型防災訓練の 実施要領のあり方に関す … · は じ め に 平成20年度の図上型防災訓練マニュアル研究会では、風水害に係る防災力の向上を図

般論として、図上訓練は、現実的な対応を超えたレベルで起きてくるものに対して

の備えをするために行うものである。そのため、「現実的な内水氾濫」というレベ

ルよりも高いレベルを想定した方が良いのではないかと思う。

• 揖斐川が破堤するかどうかはともかく、破堤もあり得るというレベルを考えて実施

した方が良いように思う。

吉井座長

• 現実的というか、要するに確率が高いという意味で使ったのだろうと思う。

• 最後は破堤まで行くのが一番いいが、途中段階の対応を抜きにいきなり破堤を考え

るというのはちょっとあり得ないのではないかと思う。破堤の前の過程の方が重要

なところがあり、例えば、住民が避難しない人も残っている中で、破堤したらやは

り大変なことだということで締めでもいいのではないかと思う。

羽賀委員(神戸町)

• 大垣輪中堤がずっと南側に囲っているわけで、破堤した場合、県道とか主要地方道

とかが切断してしまうところがあり、板でふさぐことになる。そうすると、51年

の長良川の決壊のときでも、水が逆流し、ほかの地域が浸水するということで、か

なり問題になったことがあるので、そこまで考えなければいけないと思う。

吉井座長

• 訓練の想定をどこまでしたらいいのかということの問題である。

• 今ご説明いただいたようなことも当然起こり得るが、最初の段階で、余り過大なこ

とをやると、(参加者)みんなやめたになってしまう。これは参加される人の受け

とめ方の問題だから、小村委員よりも羽賀委員の方で、「訓練の想定をどこまでし

たら、町の人も考えてもらえるか」を考えておく必要があるかと思う。

(2) 東京都中野区訓練について

高梨委員

• 中野区の訓練は、「討議型風水害対応図上訓練」という名称になっているが、内容

から見ると、ワークショップという感じもして、最終的に名前の調整をした方がい

いのかなという感じがする。

• ワークショップとグループワークの違いについては、私の中での位置づけとしては、

ワークショップは全体で皆さん一堂に会して一緒にこういう会議のような形でやっ

ていただくというパターンのもので、グループワークは、グループごとに集まって

いただいて、その中である設定のもとで検討していただいてその結果を発表する、

最終的に確認を込めて、最後の調整も図るというパターンのものである。神戸町の

訓練も、ワークショップタイプなのかグループワークタイプなのか、命名のところ

で(やり方が)違ってくるのかなという感じがした。

続いて、資料4(その2)を用いて、中野区訓練の骨子(案)及び概要について説明

をした。

根本委員(中野区)

• 高梨委員のご説明に、平成17年9月の水害が平均被害ケースとあったが、これが

平均ではなく、中野区の中で今まで一番被害の大きかったケースだと思う。

• 17年9月4日にはなかったようなケース、例えば要援護者の救出や、護岸が崩れ

て家が流れてしまうことなど、そういうことまで考えてやるかどうかということに

なると思う。

• 関係機関については、警察、消防の参加は大丈夫だと思っている。可能な範囲で事

前に打ち合わせをしておきたい。三建の方もぜひ協力いただいてやりたいと思う。

• 来年5月の(図上シミュレーション型)訓練については、いろいろなことをやりす

ぎてしまうと、区の職員が対応できないかなと思う。

• 去年と今年の訓練で一番の課題は、避難勧告を出すところまでやっているが、その

194

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後溢水したというケースまでは訓練をやっていない。ぜひ来年は実施したいと思う。

• 中野区の水害ハザードマップは、東京都作成の浸水予想区域図をもとに、平成14

年に中野区で一部を調査して作成している。前提は、東海豪雨と同じ雨が降った場

合の被害となっている。ただ実際には、ハザードマップに色がついているところで

あっても被害が出たことが1回もないという地域はいっぱいある。中野区で被害が

多いのは妙正寺川と江古田川の合流地点周辺や神田川と善福寺川の水系、また、暗

渠になって低くなっている地域である。内水と河川の溢水による被害の両方を想定

した訓練を実施したい。

日野委員

• 平成17年災のときの災害事象及び中野区の対応を時系列で整理したものがあると

図上訓練の企画立案、評価・検証に役立つと思う。

高梨委員

• 根本委員から、私の方が言っていたのが平均じゃなくて最大ケースだったという話

があったが、17年災害では本当の最大ケースというのがまだやられてないと思う。

どこまで考えたらいいかについて、岡田委員と相談しながら設定していく。雨量の

関係がどこの区域に降るかについて、三建の方でそういう(資料)を持っておられ

るということであれば、調整、設定していくと考えている。

岡田委員

• 中野区全域が大雨となるのは台風のときがまず考えられるが、台風の場合はかなり

前から気象情報は出ているので避難などの対策は完了しているはずである。これに

対して局地的大雨のような雨は、どこかに集中的に降り、あっという間に川の水位

が上昇する。また、都市部の場合、雨の降るエリアは毎回同じとは限らないのも特

徴である。

• 中野区・杉並区で17年9月4日に降った雨は、過去に何度も浸水被害が発生した

大雨とは異なるエリアに降ったことが被害を拡大した理由の1つと言われている。

シナリオ作成上、雨を降らせるエリアを指定していただく方がいい。

根本委員(中野区)

• 中野区では、区全域というよりも、局地的に強い雨が降るケースが多かった。ただ

全域で降る可能性もゼロではないとは思っている。

岡田委員

• 都市部の場合には、局地的大雨や集中豪雨のような雨が一気に川に流れ込み、合流

を繰り返して下流の水位が急激に上昇して被害につながる可能性が大きい。

吉井座長

• 地域を変えて(雨が)降ったときはどうなのか、どこもシナリオ設定に今苦労して

いるところだと思うが、多分中野区の特性としては、全域降雨はなかなかない。だ

から、相当特殊な雨を想定しないと多分難しいと思う。ちょっと意地悪なケースを

設定すれば、いろいろなことがやれるのではないかと思うから、ぜひその線で検討

していただければ。

(3) 鹿児島県伊佐市訓練について

事務局

資料4(その3)を用いて、伊佐市訓練の全体像について説明をした。

前田委員(伊佐市)

• 今は伊佐市という名称になっているが、合併する前が大口市と菱刈町であったので、

2枚の防災マップがある。

• 旧大口市は平成の合併以前が鹿児島県でも一番広い面積の市である。大口市の防災

マップの右下にある花北水位観測所の隣接するところが菱刈町になる。

195

Page 203: 地方公共団体の風水害図上型防災訓練の 実施要領のあり方に関す … · は じ め に 平成20年度の図上型防災訓練マニュアル研究会では、風水害に係る防災力の向上を図

• 平成18年豪雨災害時は、菱刈町の浸水区域上流側には川内川の破堤及び溢水等は

なかった。すべて内水被害による浸水被害であった。今回の訓練も内水被害と土砂

災害等の内容になるのではないかと思われる。

吉井座長

• 伊佐市の図上演習は、ほかの2つと違って、災対本部の訓練ではなく、住民または

地域の人が中心になって訓練を行うということである。来年度は災対本部の訓練を

やろうかと思っているが、今年は地区の代表、あるいは民生委員と消防団の人、地

域に住んでいて防災のリーダーになりそうな人や、避難所運営にかかわるような関

係職員の方を対象にしてやる。

• 第1部がグループワークで、地区ごとに、どういう状況に対してどういうふうに反

応するのかを少しイメージしてもらう。つまり住民サイドがどういうふうに動くの

かというのを、行政の人も住民のリーダーの人にもイメージを持ってもらおうとい

うことがねらいである。第2部がHUGということで避難所運営演習となる。

• 状況付与について、1つは被害のイメージ、即ち風水害のときに最悪のケースをど

のくらい想定しているかということを最初に聞こうと考えている。例えばH18年

さえ上回るような雨になった場合に、どういう被害が想定されるのかを聞いて、グ

ループディスカッションで自分が実際に住んでいる地区の想定、それから市の職員

については市全体被害の想定を最初にしてもらったらどうか。グループディスカッ

ションでわいわい議論してもらって発表してもらう。その場面の最後に、この防災

マップを見て、こんなことは既にわかっているのだから、このくらいは覚悟してく

ださいよというようなことを言って、その場面をまとめる。

• 次(の場面)に、市から避難の呼びかけがあるということで、この計画によると避

難準備を最初に出すことになっているので、自主避難というよりも避難準備情報を

市の方はどういうふうに出すのかということを、文案も含めてちょっとつくってい

ただいて、それを実際に各グループの人に流して、それに対する反応、受けとめ方

を見ようというふうに考えている。例えば平日の昼過ぎにこういう情報が出てきた。

その前はこういうふうに雨が降っていた。その場合に、あなたの地区ではどういう

ふうなことが行われるのかを聞く。このマップによると、例えば家族と連絡をする

ようなことが書いてあるが、平日の昼間だから出かけているので、子供はどうする

のか、仕事で外に出ている旦那はどうするのか、電話をかけてそれでは戻ってくる

のか、そういうことも含めて議論していただくということになると思う。要援護者

については避難誘導体制ということなので、各地区でそれが本当にとれるのかどう

か、そういうのも各地区で議論していただくという、自分が住んでいる地区をイメ

ージしながらそうやってもらうというようなことを考えている。

• 3番目(の場面)に、避難勧告が出てきた。そのときにあなたの住んでいる地区の

住民の人は避難すると思うか、要援護者はどうか、誘導はうまくいくと思うか、幾

つかの質問をして具体的に検討してもらうと、リアリティがわいて本当にできるの

かどうか。そういうようなことも含めて、議論してもらった結果を発表していただ

く。そうすると、一般論ではなくて自分の地区で具体的に避難行動をどうするのか、

どこに避難するのか、何人ぐらい避難するのかと、そういうのを具体的にイメージ

してもらうことによって、かなりリアリティのわいた対応を検討してもらえる。そ

ういう中で、私の方からは過去の事例に関する話をちょっとする形でまとめる。

「なかなか避難というのは大変なのですよ」とか、そういうことも含めて話をして、

そういうことが出たらきっちりと避難してもらった方がいいと、ただ、避難途上の

安全とかいろいろな問題があることを地区ごとにちゃんと考えておいた方がいいの

ではないかと、そういう話も含めてしようというふうに考えている。

• それで避難はしたということにして、第2部で倉野さんの方に引き継いで、HUG の

訓練をしていただくということになる。その内容については、倉野さんの方で補足

していただければと思う。

196

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倉野氏(オブザーバー)

• 私の方(HUG)では、市からの呼びかけがあったとか、避難困難者を抱える家族は

どうするかとか、いろいろな問いかけをして、訓練を進めていく。シナリオ設定に

おいて、ある程度理想的なことと現実的なことを織り交ぜていけばいいのかと思う。

• 「水害HUG全体デザイン」という資料があるが、状況設定をどうするかについて

まとめたものである。

• 気象情報でいくと、注意報、警報、大雨に関する情報、土砂災害警報、記録的短時

間大雨情報などがあり、そういうのを踏まえて、段階的に状況設定をしていく。

• 河川については、2本ぐらいの河川を想定し、その水位の名称とか、あるいは地元

のその川の写真で、今水がこれぐらいあるよとか、そのうちの1本の川のとこかで

破堤があったとかを考えている。

• 列車の運休は、多分早目に設定する。それから道路冠水があって、交通規制があっ

て、アンダーパスの事故とかがあって被害とかがあるような設定を考えている。水

道は、避難所を開設してから断水し、電気は避難所を開設してしばらくしたら停電

するという設定を考えている。土砂災害については、いろいろぽつぽつ起こってく

ると思う。このようにいろいろなことが起こっている中で避難所に来たというよう

なことをある程度つくればいいのかなと思う。

• 住民避難については、全地区一緒にということはないので、地区ごとに少し時間の

ずれがあるとか、外国人が来るとかあるいは大量に人がこれから救出されて避難所

に送り込まれてくる情報が来るとか、そのようなものをこれからつくりたいと思う。

• それからいろいろな水害用語や、チェックすべきものや、インターネットの画面な

どもこの(HUG の)中で学べるようにする。それから何を持って避難すればいいの

か、避難する前に何をすべきかというようなこともどこかに入れていくようにして

いきたいと思う。できるだけ楽しいものにしないと、やっている方が喜ばないので、

そういう(楽しい)ものを目指していきたいと思う。

• 前提設定については、やはり台風か集中豪雨かの選択をしないといけない。あと平

日か祝祭日か、昼か夜か。あと、避難所が被害を受けるか受けないかというあたり

も重要な要素であるので、これから相談したいと思う。

吉井座長

• HUGをやって、最後にまとめるということで、1部と2部を通して、ではどうい

うことを勉強したのか、余りくどくならない程度にまとめをして、参加者アンケー

トとかはとれると思うので、そういう形でまとめたいと思っている。

• 手法的にちょっと特殊なのは、第1部は実際に住んでいる場所の被害を想定し、住

民の行動を予測し、そういうイメージトレーニング的な要素が強いが、後半はこれ

から地域でそういう避難所運営の問題をやってもらうために、モデル地区を想定し

てやるような形でトレーニングトレーナー的な手法となる。

高梨委員

• HUGはどれぐらいの時間を考えてやるのか、夜か昼か、避難所が浸水するかしな

いかの設定によって、(シナリオは)かなり違ってくるのではないかと思う。

• また、車で(避難しに)来たという設定を考えているようであるが、それは浸水が

どれぐらいの時間で来たのかによっても違うし、大体低地でなれている人は車を高

台に移すということをやっているので、そうすると市の対策がどういうことを考え

られているかということで対策の内容が違ってしまうようなこともあるので、そこ

ら辺も回答の方を少し考えておいた方がいいのかと思う。

吉井座長

• 防災マップを見るとわかるが、意外と伊佐市は水没する避難所はほとんどない。道

路をやられた場合に多少出てくるかもしれないが、孤立というところも少ないので

はないかなと思う。

• 余り個別の被害想定をベースじゃなくて、実際に避難所に来たという想定でやるの

197

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で、避難所が使えなくなるとか浸水するというケースは余り考えないでやろうかな

と思っている。

倉野氏(オブザーバー)

• 余り地域密着型のことでやると、自分の地域のことを考えれば一部の人しか本気で

やらなくなってしまうので、きちんとした前提設定を考えている。現実的な部分に

ついては前田委員の方で、自分たちのところではこうだという説明をすればいいの

かなと思う。

高梨委員

• そういうことであれば、逆に最初の説明のところで、この避難所はこういう状況下

にあると、大体どれぐらいの時間でこういう人たちが来たと。また、破堤したかど

うかの情報なども、前提の中で入れていただければいいのではないかと思う。

吉井座長

• 第2部の方は、トレーニングトレーナーで、手法をマスターするような目的だから、

各地区に持って帰って、地域の状況に合わせてやるのは、このトレーニングを受け

た人が持ち帰ってやってもらう。

最後に、各ケーススタディの実施日程を確認したあと、次回(今年度最終回)の研究会

の議事や、ケーススタディの実施結果の報告等について確認を行った。

午後 3 時 57分 閉会

198

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第3回図上型防災訓練マニュアル研究会 議事要旨

Ⅰ.開催日時

平成21年12月10日(木) 14:00~16:00

Ⅱ.会場

スクワール麹町 3階「華の間」

Ⅲ.出席者

(委員長・委員)

吉井委員長、日野委員、高梨委員、秦委員、大内委員、中村委員

貫名委員、岡田委員、松島委員、今井委員、岩井委員、前田委員

根本委員、武居委員、西浦委員、細田委員

(代理出席者)

岐阜県神戸町総務課補佐 石原氏 (羽賀委員代理 )

(オブザーバー)

倉野氏(静岡県西部危機管理局危機管理課専門監)

(関係者)

(財)消防科学総合センター:山口理事長、坂野常務理事

(事務局)

総務省消防庁応急対策室:中越専門官、安達事務官

(財)消防科学総合センター:田村審議役、黒田課長、胡研究員

(欠席)小村委員、羽賀委員、笠井氏

Ⅳ.次第

1 開会

2 議事

(1)H21年度図上型防災訓練ケーススタディの結果報告

(2)H21年度調査研究報告書

(3)その他

3 閉会

<配付資料〉

資料1 H21年度図上型防災訓練マニュアル研究会 名簿

資料2 H21年度調査研究報告書(案)

参考資料 第2回図上型防災訓練マニュアル研究会の議事要点

参考資料3-3 第3回図上型防災訓練マニュアル研究会議事要旨

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Ⅴ.議事要旨

事務局より、委員の出欠確認後、座長の進行により、以下の議事を行った。

1 平成21年度図上型防災訓練ケーススタディの実施結果

事務局

▪ 資料2を用いて、伊佐市、神戸町、中野区におけるケーススタディの概要

を説明した。

吉井座長

▪ 3つの市と町と区で行ったケーススタディの結果を紹介いただきました

が、それぞれ団体の方から最初に補足やコメントをお願いします。

前田委員

▪ 民生委員の方が訓練に参加をしていただき非常に意義があった。

▪ 訓練については、訓練担当者が慣れないと厳しい部分もあるとは思うが、

今回の訓練をもとに各地域、コミュニティで訓練も盛んにできたらいいと

考えている。

石原氏(神戸町羽賀委員代理)

▪ 昨年は基本的な内容は座学であったが、今年度の訓練は、より具体的に

内容、目標がしっかり定められていた。

▪「顔の見える関係」という点で、今回の訓練は大変意義があった。

▪ 小村先生のようなファシリテータの方がいなければ、今回はなかなか厳し

かったのかなというのが大きな感想である。

根本委員

▪ 警察、消防、東京都第三建設事務所とは、普段は電話でのやりとりが主で、

考え方の確認については、今回初めて知ることもお互いに多くあったのか

なと思っている。

▪ 来年は訓練の時点から協力してやっていくという確認がとれたというこ

とで大きな意義があったと思う。

吉井座長

▪ 委員の皆さんあるいはオブザーバーの倉野さんから御意見、何か補足があ

ればお願いします。

倉野氏(オブザーバー)

▪ 今回は水害バージョンを作って避難所運営ゲーム HUG を行ったのです

が、準備期間が短くて間に合わせるのがやっとで、完成度を上げられなか

ったというのが残念なところです。

▪ また、ゲーム実施時間も通常より短かったためゲームのルールについて

参加者が理解するのに時間がかかり「難しかった」という感想が多くなっ

たのかと思いますが、地震版のHUGはすでに各地で実施されており実績

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もあるので、これから少し改良すればどこでも比較的簡単に実施できるよ

うなものになるのではないかと思います。

高梨委員

▪ 中野区については、まず、時間が非常に短く、当初予定の3時間から2時

間に短縮された上に、委員の方から、基本的な図上訓練や種類等や気象の

話なども入れて欲しいとのことで、そちらに時間がとられてしまい、実質

的な検討時間が十分とれなかった。

▪ 他のケースと異なり、関係機関が集まっての会合であり、それぞれの機関

の思考過程や過去の災害経験等のコミュニケーションが図れたということ

で、意義深いものだったのではないかと思う。

▪ その中で1点目に挙げられるのが、「災害イメージの共有」が進められた

ということであるが、時間が足りず図上検討まで十分に詰め切れなかった。

▪ 関係機関の対応状況というのがかなり具体的に対応してくれることが分

かった。

▪ 今回の検討会において、気象条件として広範囲にわたる豪雨もあり得ると

いうことが確認でき、中野区全域が被害を受けるというパターンも考えな

ければいけないのではないかということが確認できた。

▪ できたらもう1回同じような会議をすると、かなり具体的に詰められ、次

の図上シミュレーション訓練につなげられるのではないかと思う。

▪ 中野区の方では情報伝達システム、防災情報システムがある通信室とか防

災センターを中心に考えているようだが、プレーヤーとコントローラーの

役割配分、これに伴い、会場はどうするのかというのが問題として残って

おり、今後の検討課題である。

岡田委員

▪ 一堂に会した効果が大きかったと思う。どの機関も、ここは危ないぞとい

う情報は持っているはずだが、同じ場所であっても対策や方法はまるで違

う。ほかの機関の対策や方法を基本的に持っておかないと、いざ本番にな

ると混乱のもとになると思う。

▪ 毎回同じような雨が降る保障は全くない。過去の例にとらわれず、どこに

降ってもおかしくないと思うべき。先入観を抱かないために、訓練の本番

当日に雨の場所を示す方法もあると思った。

吉井座長

▪ 今年度は、伊佐市の訓練と神戸町、中野区とはちょっと違っています。神

戸町と中野区はかなり似ていて、防災関係機関を集めて、ワークショップ

というかグループワークというか、そういう方式をとっていただいて、共

通の災害イメージを持っていただく、あるいはそういう中で各機関がどう

動くのか、お互いに理解を深めるということだったと思う。

▪ 共通して言えるのは、専門家がコーディネータ(ファシリテータあるいは

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コントローラー)として関与しないといけないかもしれない。その辺が難

しい点で、マニュアルを読んだぐらいではなかなかできそうもないなとい

うのが皆さんの印象としてあったようだ。

日野委員

▪ ファシリテータや専門家がいないと図上型訓練ができないという状況を

できるだけ解消するのが重要である。訓練マニュアルをわかりやすく書く

だけでなく、素材提供や支援体制(環境)の整備といったことも考える必

要があると思う。

秦委員

▪ 神戸町の26ページ、最後のページに課題が出ておりまして、ある程度被

害のイメージというのは共有できたということが挙げられている。ただ、

具体的な対応の検討までいかなかったと。水害の経験があるか、ないかで

本当に対応の議論は異なってくると思う。ですから、こういう経験のない

ところでこういう検討会をやったときに本当に対応の議論までできるのか

なと。対応の議論をしようとすると、かなり具体的な被害の設定をしてテ

ーマを限定しないと、その対応策について多分議論できないと思う。例え

ば被害情報の収集といったら、そこに限定して関係者を集めて議論をしな

いと、そのマニュアルづくりというのはなかなか難しいと思う。避難所の

開設・運営というところに限定すれば、そこにかかわる部署は限られてく

るので、そこにかかわるところで議論をしなければいけないということで、

もしマニュアルをつくるという話になると、被害イメージがないのであれ

ば被害イメージは共有しなければいけないので、これがスタートだと思う。

吉井座長

▪ 図上演習のシミュレーション型というのはかなり詳しい点をチェックす

ることになる。そうするとマニュアルがない中でやるというのは意味があ

るのかどうか、マニュアルがないのならつくる方の討議型というか、今年

やったような方式を発展された方がシミュレーション型を詳しくやるより

はいいのではないか。というのは、シミュレーション型をやれば、マニュ

アルがないから、当然混乱するわけですよね。マニュアルがあって、それ

を点検しなければいけないということだけれども、そこまでひょっとした

らいかないのではないかなという御意見だったとは思いますけれども。

松島委員

▪ 危機管理、防災を担当する職員というのは、日ごろからやっていないこと

は、実際に発生した場合には恐らくできないので、何かしら平素からやっ

ていく必要性がある。

▪ 平素から関係する人とは絶対に簡単な名刺交換だけはしておくことが必

要。

貫名委員

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▪ 伊佐市のもので、先ほど倉野専門官に答えていただいているようなものな

のですけれども、HUGのアンケートに関して、非常に「難しすぎた」が

多いのですが、「ちょうどよい」より「難しすぎた」の方にしかないとい

うのですが、具体的に何がどう、そう感じられたのか。

倉野氏(オブザーバー)

▪ テストランをやって、改善してからやるべきなのですが、今回はそういう

時間的余裕がありませんでした。

▪ HUGは、設計思想として1回やれば次からは受講者が司会進行を進めら

れるレベルを最初から目指しているので、経験者がいれば問題はなかった

と思います。

吉井座長

▪ 難しさは、抽象的な場所でこういう水害が起きて避難所を運営することに

なりましたということ、つまり架空の場所を設定している点にあるのでは

ないか。実際に自分の住んでいる場所でやるのならもっと簡単なわけです。

2 H21年度調査研究報告書(案)

ア 訓練の概要について

事務局

資料2を用いて、報告書の概要を説明した。

吉井座長

▪ 2章、4章を中心に御意見をいただきたいということでございますが、い

かがでしょうか。

秦委員

▪ 2章の2ページで、訓練の分類をしていただいているのですが、今回は3

カ所で実施した事例は、この中でいうとそれぞれどれに該当するのでしょ

うか。

事務局

▪ 今回は、ケーススタディで実施されましたのは防災グループワーク、避難

所運営ゲーム、防災ワークショップ及び検討会です。

秦委員

▪ それと、エキスパートと書かれているところが中心、HUGを除けばとい

うことですか。

事務局

▪ そうです。実際、今回も吉井先生を初めとする専門家の方々に進行してい

ただいて実施した経緯があります。

秦委員

▪ そうすると、エキスパートが入らないとできないようなやり方だと持続的

ではないのではないでしょうか。

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▪ グループワークだから一概にエキスパートでなければいけないというよ

りは、何となく状況付与をその地域に合わせた、ある程度起こり得る状況

付与をきっちりつくってあげた方が、より議論が具体的で、そのときにフ

ァシリテータは、もちろん過去の災害事例とかいっぱい知っていれば、よ

り深い議論、検討が可能になるけれども、そういう方ではなくても具体的

な検討は可能になるのではないかなと、そういうイメージを今持っている。

吉井座長

▪ 3つのケースでみんな対象者はちょっとずつ異なる。訓練対象者をもう少

し細かく分けると、市区町村の防災担当者そのものを訓練するという場合

と市区町村の防災担当者が企画者になって、ほかの職員なり住民なりをト

レーニングする場合がある。この2つはかなり違うわけです。本人自身が

訓練を受ける場合は、企画者にはなかなかなりにくい。だから、中野区さ

んもあるいは神戸町さんもファシリテータの人に依存するというのはしよ

うがないわけです。本人が中に入っているから、いろんな状況想定とかい

ろんなことを進めると、自分自身の問題でしょう、自己言及しているわけ

だから、何か司会者が同時に訓練対象者になるというのは難しいわけです。

もうちょっと引いた人にやってもらわなければいけない。それは、県の人

でもいいし、ほかの、もちろん専門家でもいいわけです。やり方としては、

そういう場合と分けないといけないですよね。

もう一つ、そうではなくて、訓練を本人が企画するという立場であれば、

これはそれなりにこのマニュアルを使ってできるのではないかなというふ

うに思うのです。だから、その辺が、3つのケースで違う点ではないかな

と思う。

根本委員

▪ 2章の9ページで、「ほとんどは2~3年で異動する」と書いてあります

けれども、実際は3年から5年で異動するケースも多いと思う。そういう

書き方にした方がいいかなと思う。

▪ 「防災担当以外の職員」という言い方も防災課以外の職員という意味で使

っていると思う。しかし、区の職員はすべて防災にかかわる職員であるの

で、そういうことを意識づけることが大事だとか、防災担当以外の職員に

ついてもちゃんと協力を得られるようにするとか、そういう表現にした方

がいいのかなと思う。

▪ 実際に訓練をやるのに気象庁とか国土交通省の方に協力を得るというの

もなかなか難しいと思う。たまたま今こういう環境をいただいているので

幸い中野区ではできていますけれども、その辺が一般としてどうなのか、

御検討いただければと思います。

吉井座長

▪ 表現上の問題で、確かに読んだときに全員が防災をやるのだと言いながら、

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その防災担当とか、私もよく使ってしまうのだけれども、その辺はちょっ

と表現を工夫していただくということでよろしいでしょうか。

中村委員

▪ 第2章でいわゆる概論をいろいろ書いているところかと思うのですが、も

う少し表現というか、構造がちょっと、初めて見ると少しわかりにくいか

なという気がしているのです。例えば、まず訓練名称がいろいろ出てくる

のですけれども、それぞれのいろんな訓練の概要とかそういったものが一

目でわかるような表とか、そういうものがあるとまず入り口でわかりやす

いのかなという気がします。

▪ 実際にこれを市町村に配られたときに、市町村の方が見られたときに、必

ずしも皆さんスペシャリストではないと思うので、目的と手法の関連の構

造がわかるようなものがあると使いやすいのかなという気がいたしました。

吉井座長

▪ まずは訓練の目的を明らかにせよというのだけれども、この報告書の最初

には手法が書いてあるから、逆に言うと、ここで主張していることをその

ままこの文章にして順序を変えた方がわかりやすいという御指摘だと思い

ますけれども、手法に詳しい人は、どうしても手法を先に書いてしまうと

ころがあるので。

では、順番も最終報告で入れかえていただいて、目的を実現するために

はどういう方法があって、どういうふうに組み合わせるといいですよとい

うような書き方にしていただくことにします。

倉野氏(オブザーバー)

▪ 全体を「です・ます」調で統一する必要があると思います。

▪ 3章のHUGですが、以前「エイチ・ユー・ジー」と紹介されてしまった

ことがあるので、カタカナで「(ハグ)」と読み方を書いておいた方が良

いと思います。全部につけるのか、最初の1カ所につけるのかはお任せし

ます。

▪ それから、意味が英語で「抱きしめる」という意味で、避難者をやさしく

受け入れるイメージとか、避難所運営ゲームのイニシャルをとってそうい

うふうになっているというようなことを25ページか24ページあたりに

書けたらとお願いしたいと思います。

吉井座長

▪ 手法の説明とかそういうのは、例えば付録とか後ろに何か書いておいた方

がいいかもしれない。

日野委員

▪ 資料の第2章の2ページに分類が、これは先ほどから意見が出ているので

すけれども、ここに「検討会」とさらりと書いていますけれども、もう少

し具体的に書いていただくと良いと思う。

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▪ 訓練の分類の中にそれを含めるかどうかはとにかく、評価・検証の時間は、

すごく大事なことだと思っている。

図上訓練というのは、状況判断なり意思決定なり頭の中で考えているこ

とがたくさん出てきますので、それが本当に実践に耐え得るかどうかとい

う話(評価・検証)はすごく大事にしなければいけないのではないかとい

う感じを持っています。

▪ 神戸町の方にお聞きしたいのですけれども、ファシリテータや専門家がい

ないとできないと思った部分はどういうところなのでしょうか。

石原氏(羽賀委員代理)

▪ 特に感じるのは、最終的にどこへ持っていくかという部分が大変重要かと

思うのですが、その辺がわかって、当然目的とか、どういったことについ

てやるのかということは事前に話し合われているわけなのですけれども、

ただ、人に意見を聞くだけならだれでもできると思うのですけれども、そ

れをまとめて形にしていくといったところが難しいのかなというふうに感

じております。

吉井座長

▪ 先ほど日野委員が言ったことは全くそのとおりなのですけれども、例えば

伊佐市でやったときに「講評」と書いてある。

講師になる人は最後のところだけマニュアルとして持っていれば、いろ

いろあったけれども、こういうことでしょうと。具体的にそういうポイン

トを出しておいてあげると、だれでも最後(落ち)はそこを言えばいいわ

けだからやれるというわけですね。

事務局

▪ 結局多くの市町村で専門性がない方が主体的にやる場合のやり方という

ところだと思いますけれども、今おっしゃられたように、進行役になる方

の負担をできるだけ減らすような工夫というのをマニュアルの中に入れて

いくというのは1つ大事だろうと。ただ、一方で、こういった訓練を真剣

にやるためにはそれなりの勉強をしていただく必要があるということも忘

れてはならないと思います。

▪ ファシリテーターという部分で最初から腰を引くような形にならないよ

うな書き方をしていきたい。

吉井座長

▪ 多分、それ用の教科書が必要なのですよね。そこの教科書がないので、方

法だけ勉強しても内容がなかなかうまく表現できない。だから、過去のケ

ースを我々はよく知っていて、過去のケースはこうですよという、それも

勉強しておいてもらわないと、これとは別につくらないといけないのでは

ないかなという気はしますけれどもね。

そのための教科書がこれ以外に必要かなという気はちょっとしますけれど

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もね。

大内委員

▪ これを見ていたら、企画段階のことから細かく出ていて大変参考になるの

ではないかと思います。ただ、会場の配置図などもつけていただいている

のだったら広さとか実際にやった会場の広さとか何人でやったかとかそう

いうのを入れていただいていたら、自分が企画するときに、うちの会場だ

ったらこれぐらいはいけるかなというような訓練のイメージができやすい

のかなというふうなことを考えました。

貫名委員

▪ 非常に網羅的に全体的にちゃんとできているなというふうに思って読ん

できたのですけれども。

中村委員

▪ 先ほど座長が言われたファシリテーションのテキストというか、ぜひそう

いうものがあると、初心者でも2~3回勉強すれば何とかこなせるよとい

うのがあると、我々の国交省の組織などでも事務所にそういうのが一人ぐ

らい必ずいるとか、自治体であれば必ずそういう人が一人はいるとなると

すごい底上げになるのではないかなという気がしますので、ぜひよろしく

お願いします。

岡田委員

▪ 意識せずにファシリテーターになるための知識が身につくようなものが

あればいいなと思う。

▪ その一例として、気象庁のホームページは発表中の警報や注意報が分かる

だけでなく、普段から気象の知識が身につくような自己啓発の作りになっ

ているので、ぜひ普段から活用していただきたい。

岩井委員

▪ 一番最後に「今後に向けて継続的に実施する」ということを書かれている

のが、本当に大事なことだと思います。継続的に実施するというのは、こ

こに書かれていることは多分はしょってあるだけだとは思うのですけれど

も、そういった継続的に実施することによってそういうスキルを付与して

いくだとか、技術を継承していくだとかいう意味で、人材育成にとっても

大事なことだと思う。

今井委員

▪ 第2章の入り口のところをぜひ、よし、後ろの方も読んでやろうというよ

うな格好にまとめられるといいなと、行政の方に限らず私ども企業でも活

用できるようなものになっていくのかなと思います。

機能別あるいは防災業務に関するレベル別で一覧表か何かにして、こう

いう訓練の目的、参加者で、ある場合にはこういう手法、あるいはこうい

う訓練の進行役の方は外部のプロの人を呼んだ方がいいとか、より具体的

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な、我々はどういう図上型の訓練をやればいいかというのがそこでわかる

ような一覧表があると、よりいいのかなというふうに思いました。

吉井座長

▪ 要するにフローチャートみたいにこういう条件、こういう条件で選んでい

くと、この方法とか、そういうのが書ければ一番いいという御指摘だった

と思います。考えてみてください。

武居委員

▪ 実は、私もみずから責任者になって図上シミュレーション訓練を応急対策

室長と一緒に自分の組織の中でしょっちゅうやっているのですけれども、

日々難しさというのを実感しています。そういう我々がやりながらも、そ

ういったものを市町村の現場レベル、災害が起こる現場でも実際にやって

いただき、本当に危機管理の一助にしていただきたいという気持ちは、こ

としは災害も幾つか大きなのが発生したので思っているところでございま

す。

委員の先生方のすばらしい内容が実際に役立つように、現場で使えるよ

うに、また吉井座長とも相談しながら事務局の方でやっていただけたら大

変うれしいと思います。

本当に、今日は有り難う御座いました。

午後4時07分 閉会

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地方公共団体の風水害図上型防災訓練の実施要領の

あり方に関する調査研究報告書(平成21年度)

平成22年1月

総 務 省 消 防 庁

(http://www.fdma.go.jp/)

〒100-8927 東京都千代田区霞が関2丁目1番2号

(問い合わせ先)

総務省消防庁国民保護・防災部応急対策室

TEL 03-5253-7527 FAX 03-5253-7537