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クラウドは、高速開発を追求する上 で欠かせないインフラですが、アプリ ケーション部分に関しては、オープン ソースをはじめとする既存のプログラ ムを理解し、使いこなすための技術な ど、様々なノウハウが求められます。 我々は、これらを体系化し、今、必要 なシステムを、すぐに開発して、すぐに サービスインできるような環境を実現 していきたい。そのための研究・開発 に積極的に投資していく考えです。 —— 実際には、どのような体制で研究・ 開発を進めるのでしょうか。 大久保 まず、積極的に取り組んでい るのが技術者の育成です。OpenStackな ど、次世代のクラウド技術の勉強会やト レーニングコースを開設し、すでに参加 しているエンジニアは300名に達してい ます。 また、2015年4月からクラウドに関 する次世代アプリケーションおよびプ ラットフォームの研究・開発を専業と する「Cloud Innovation Center(クラウ ド・イノベーション・センター)」とい う組織を新たに立ち上げます。 ここで、ハイブリッドクラウド、複数 プログラミング言語を使用したアジャ イル開発などを主軸に、変化に強いIT システムを研究します。現在は、約50 名のエンジニアが中核となり活動して いますが、ここでもアプリケーション 開発技術とインフラ技術を併せ持つエ ンジニアの育成に注力します。 多様化する選択肢の中から 最適な提案を見極める —— 先に的確な提案、情報提供も重要 な使命と聞きましたが、どのような方 針で活動を行うのでしょうか。 大久保 「今、どんなシステムが必要か」 を最も理解しているのは、当然、お客 様自身です。しかし、「現在、どんな技 術が登場しているか」あるいは「今後、 技術がどう変化していくか」について は、私たちの方が詳しい。クラウドに関 しても、今後も永遠に同じ技術を採用 「Real Application Centric Kernel (RACK)」です。 このRACKで実現される、真の「クラ ウドネイティブ・アプリケーション」は、 自ら必要とするリソースをダイナミッ クかつ自動的にアサイン、アロケート します。これにより、データ処理件数 や処理の種別など、刻々と変化するア プリケーションの稼働状況に応じてリ ソースを自動的に制御。まさに、「クラ ウドネイティブ」な環境に必要不可欠 な技術だと自負しています。 しかも、クラウドネイティブ・アプリ ケーションに関する開発成果はオープ ンソースとして公開しており、多くの クラウド事業者様、一般企業のお客様 の効果的なクラウド活用に役立ててい ただきたいと考えています。 高速開発を実現する 環境整備に積極的に投資 —— リソースマネジメントのほかには、 どのような領域に注目していますか。 大久保 クラウドの持つスピードを生 かしたシステム開発です。 近年、アジャイル開発が注目されて いるように、ITには、さらなるスピード が求められるようになっています。今 日のビジネス環境では、数年、数カ月 先を予測してシステムを開発しても、 その間に刻々と市場は変化してしまう からです。 システムの稼働状況に応じて ITリソースを自動制御 —— クラウドへの取り組みをますます 強化しているそうですね。 大久保 単にCTCが提供するクラウド サービスの販売を促進していくだけで なく、CTC自身がクラウドの持つ本当の 価値を改めて理解し、そのポテンシャル を最大化するための技術やソリューシ ョンの開発、さらには最適な使い方の提 案までを行いたいと考えています。 というのも、現在、クラウドに実装で きる技術は膨大な数に上ります。お客 様が、それらをすべて把握し、選択しな がらビジネスに取り入れていくのは非 常に困難です。ですから、なぜこういう 技術が登場し、どんな特徴を持ってい るのか、さらには、それをどう生かすべ きかということを的確に提案したり、情 報を提供したりしていくことは、我々の 重要なミッションの一つなのです。 —— 具体的には、どのような取り組み を推進しているのでしょうか。 大久保 例えば、クラウドにおけるリ ソースマネジメントに最適解を示した いと考えています。 今後、多くのシステムが、クラウド 上で稼働することを前提として開発さ れるようになるでしょう。リソースの サイジングなどは柔軟に行えるように なりますが、リソースマネジメントは 物理環境に比べて、複雑化します。 それに対し、CTCが開発したのが、 クラウドOSであるOpenStack上のリ ソースを最大限に活用できるOSS、 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 100-6080 東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビル ITサービス事業グループ E-mail [email protected] URL www.ctc-g.co.jp お問い合わせ先 した環境であり続けることはありませ ん。特定分野に特化したクラウドなど、 様々なサービスもどんどん登場するで しょう。 ですから、前述したとおり、お客様 の声にしっかりと耳を傾け、それを咀 嚼し、多様化する選択肢の中で、どの 特徴を持つサービスを、どう活用する のが最適なのか。しっかりと見極めて、 お客様に提案していきたいと考えてい ます。 IoT(Internet of Things)、モバイル、ビ ッグデータ、ソーシャルなどの活用分野 の拡大に伴い、お客様の環境は日々変化 しています。お客様の声に応えるために クラウドによるイノベーションを追求す るだけでなく、お客様と一緒にイノベー ションを創出していきたいですね。 A 提供価値 実装技術 ミドルウェア技術 インフラ技術 ベース領域 クラウドネイティブ・アプリケーションサービスの開発・提供 アジャイル開発 / DevOps 現在のサービス Cloud Foundry / OpenShift AWS OpenStack コア技術 / コントリビューション SNS モバイル IoT ビッグデータ OpenStack などのインフラ技術や、アジャイル/ DevOpsといった実装技術など、トータルな領域でクラウドネイテ ィブな環境の実現に向けた活動を展開する 図 今後、「Cloud Innovation Center」で取り組む領域 多様なサービスや実装可能な技術が次々に登場する中、クラウドをいかに効果的に利用するかは、企業IT における重要な課題 となる。伊藤忠テクノソリューションズ(以下、 CTC)は、単にクラウドサービスを提供するだけでなく、関連技術の開発や提案 活動を通じて、 それを支援。「クラウドネイティブ」な環境の最適なインフラマネジメントを実現する技術を広く提供するなどし て、クラウドによる顧客のイノベーション創出に貢献している。 伊藤忠テクノソリューションズ 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 取締役 兼 常務執行役員 ITサービス事業グループ担当役員 兼 CTO 大久保 忠崇 イノベーシ への 挑戦 これからのクラウド提案に必要な 顧客のビジネスと技術を見極める力 Message from the Top 2015 使〜あらゆるビジネスがデジタルになる〜

これからのクラウド提案に必要な 顧客のビジネスと技術を見 …るのが技術者の育成です。OpenStackな ど、次世代のクラウド技術の勉強会やト

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Page 1: これからのクラウド提案に必要な 顧客のビジネスと技術を見 …るのが技術者の育成です。OpenStackな ど、次世代のクラウド技術の勉強会やト

 クラウドは、高速開発を追求する上で欠かせないインフラですが、アプリケーション部分に関しては、オープンソースをはじめとする既存のプログラムを理解し、使いこなすための技術など、様々なノウハウが求められます。 我々は、これらを体系化し、今、必要なシステムを、すぐに開発して、すぐにサービスインできるような環境を実現していきたい。そのための研究・開発に積極的に投資していく考えです。—— 実際には、どのような体制で研究・開発を進めるのでしょうか。大久保 まず、積極的に取り組んでいるのが技術者の育成です。OpenStackなど、次世代のクラウド技術の勉強会やトレーニングコースを開設し、すでに参加しているエンジニアは300名に達しています。 また、2015年4月からクラウドに関する次世代アプリケーションおよびプラットフォームの研究・開発を専業とする「Cloud Innovation Center(クラウド・イノベーション・センター)」という組織を新たに立ち上げます。 ここで、ハイブリッドクラウド、複数プログラミング言語を使用したアジャイル開発などを主軸に、変化に強いIT

システムを研究します。現在は、約50名のエンジニアが中核となり活動していますが、ここでもアプリケーション開発技術とインフラ技術を併せ持つエンジニアの育成に注力します。

多様化する選択肢の中から最適な提案を見極める

—— 先に的確な提案、情報提供も重要な使命と聞きましたが、どのような方針で活動を行うのでしょうか。大久保 「今、どんなシステムが必要か」を最も理解しているのは、当然、お客様自身です。しかし、「現在、どんな技術が登場しているか」あるいは「今後、技術がどう変化していくか」については、私たちの方が詳しい。クラウドに関しても、今後も永遠に同じ技術を採用

「Real Appl icat ion Centr ic Kernel(RACK)」です。 このRACKで実現される、真の「クラウドネイティブ・アプリケーション」は、自ら必要とするリソースをダイナミックかつ自動的にアサイン、アロケートします。これにより、データ処理件数や処理の種別など、刻々と変化するアプリケーションの稼働状況に応じてリソースを自動的に制御。まさに、「クラウドネイティブ」な環境に必要不可欠な技術だと自負しています。 しかも、クラウドネイティブ・アプリケーションに関する開発成果はオープンソースとして公開しており、多くのクラウド事業者様、一般企業のお客様の効果的なクラウド活用に役立てていただきたいと考えています。

高速開発を実現する環境整備に積極的に投資

—— リソースマネジメントのほかには、どのような領域に注目していますか。大久保 クラウドの持つスピードを生かしたシステム開発です。 近年、アジャイル開発が注目されているように、ITには、さらなるスピードが求められるようになっています。今日のビジネス環境では、数年、数カ月先を予測してシステムを開発しても、その間に刻々と市場は変化してしまうからです。

システムの稼働状況に応じてITリソースを自動制御

—— クラウドへの取り組みをますます強化しているそうですね。大久保 単にCTCが提供するクラウドサービスの販売を促進していくだけでなく、CTC自身がクラウドの持つ本当の価値を改めて理解し、そのポテンシャルを最大化するための技術やソリューションの開発、さらには最適な使い方の提案までを行いたいと考えています。 というのも、現在、クラウドに実装できる技術は膨大な数に上ります。お客様が、それらをすべて把握し、選択しながらビジネスに取り入れていくのは非常に困難です。ですから、なぜこういう

技術が登場し、どんな特徴を持っているのか、さらには、それをどう生かすべきかということを的確に提案したり、情報を提供したりしていくことは、我々の重要なミッションの一つなのです。—— 具体的には、どのような取り組みを推進しているのでしょうか。大久保 例えば、クラウドにおけるリソースマネジメントに最適解を示したいと考えています。 今後、多くのシステムが、クラウド上で稼働することを前提として開発されるようになるでしょう。リソースのサイジングなどは柔軟に行えるようになりますが、リソースマネジメントは物理環境に比べて、複雑化します。 それに対し、CTCが開発したのが、クラウドOSであるOpenStack上のリソースを最大限に活用できるOSS、

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社〒100-6080 東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビルITサービス事業グループE-mail:[email protected] URL :www.ctc-g.co.jp

お問い合わせ先

した環境であり続けることはありません。特定分野に特化したクラウドなど、様々なサービスもどんどん登場するでしょう。 ですから、前述したとおり、お客様の声にしっかりと耳を傾け、それを咀嚼し、多様化する選択肢の中で、どの特徴を持つサービスを、どう活用するのが最適なのか。しっかりと見極めて、お客様に提案していきたいと考えています。 IoT(Internet of Things)、モバイル、ビッグデータ、ソーシャルなどの活用分野の拡大に伴い、お客様の環境は日々変化しています。お客様の声に応えるためにクラウドによるイノベーションを追求するだけでなく、お客様と一緒にイノベーションを創出していきたいですね。 A

提供価値

実装技術

ミドルウェア技術

インフラ技術

ベース領域

クラウドネイティブ・アプリケーションサービスの開発・提供

アジャイル開発 / DevOps

現在のサービス

Cloud Foundry / OpenShift

AWS OpenStack

コア技術 / コントリビューション

SNS モバイル IoT ビッグデータ

OpenStackなどのインフラ技術や、アジャイル/ DevOpsといった実装技術など、トータルな領域でクラウドネイティブな環境の実現に向けた活動を展開する

図 今後、「Cloud Innovation Center」で取り組む領域

多様なサービスや実装可能な技術が次々に登場する中、クラウドをいかに効果的に利用するかは、企業 ITにおける重要な課題となる。伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)は、単にクラウドサービスを提供するだけでなく、関連技術の開発や提案活動を通じて、それを支援。「クラウドネイティブ」な環境の最適なインフラマネジメントを実現する技術を広く提供するなどして、クラウドによる顧客のイノベーション創出に貢献している。

伊藤忠テクノソリューションズ

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社取締役 兼 常務執行役員ITサービス事業グループ担当役員兼 CTO

大久保 忠崇氏

イノベーション への 挑戦

これからのクラウド提案に必要な顧客のビジネスと技術を見極める力

Message from the Top2015

「どの技術を選び、どう活用するか──。

それを提案していくのが我々の使命」

〜あらゆるビジネスがデジタルになる〜