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国内における体育器具や公園遊具専 門メーカーのパイオニアとして、約13 0年 の歴史を誇る同社。身近な公園の遊具か らプロスポーツの公式競技器具まで幅広 く手掛け、個人向け健康器具のネット販 売、スポーツ施設向けの大型4面ビジョン など、新しいニーズにも意欲 的に応えて いる。 同社が近年力を入れている競技のひと つが、東京五輪から新種目となるスケート ボードとB M Xフリースタイル 。既に「 ス ケートパーク」と呼ばれるスケートボード 競技用スペースを15年ほど前から全国に 展開しており、需要の少ない時期からコ ツコツ実績を増やして、現在は全国50カ 所ほどに広がっている。これは国内トップ の実績だ。「スポーツ器具と公園遊具の 両方を製造するのが当社の強みですか ら、取り組みやすかったです」と、代表取 締役の都村尚志さんは振り返る。 スケートボード用のパークとBMXの パークは一見似ているが、BMXの方が高 さや曲線の規格が大きく、グリップを利 かせる必要があるため表面の塗装処理も 異なる。スケートボード用パークのニーズ が先行していたものの、BMX専用パーク も増えつつあり、大規模な公共パークだ けでなく、イベント用に貸し出してほしい というニーズも出てきた。こうした需要に 応え、より手軽に扱えるものができないか という思いから、組立型のパークというア イデアが生まれ開発に着手した。 BMX「組立式は固定のパークと違って毎回 違う場所に設置するものですから、どん な路面でも使えなくてはいけません。ジョ イント部に段差などがあるのももちろん NG。頭の中ではレゴブロックみたいに考 えますが 、実 際は重 量 物で 、組 立 式 で あってもかなりしっかりしたものなんで す」と都村さん。 同社には、全日本BMXフリースタイル 連盟と育んだ信頼関係がある。この連携 をベースに、海外の大会も参考にしなが ら試作を重ね、全日本大会などで実際に 運用。アスリートの意見や要望を取り入 れ、展 示会などにも出展して反 応を聞き な がら 、現 在も改 良を加えている。 BMXで五輪メダル 候補と期待される アスリートに、実際 に使用してもらっ て意見を聞くなど、 改良に協力しても らった。京都にあ る専用パークを同 社が手掛けると いったつながりも 生まれた。 大 会 やイベント ごとに使うパーツ は異なるため、大会の規格やコースデザイ ナーの設計に応じて、組み合わせを変え て、現地でコースを組み立てていく必要 がある。微妙な調整は製造担当の腕の見 せどころ。「同じアール(曲線)のパーツで も、勾配に合わせて置き方を変えたり、毎 回いろいろな工夫をしています。プレイ ヤーごとの好みもあるし、セッティングに は神経を使いますが、『ジャンプが高くな る』『いい結果が出た』という声が何より の励みですね」と、製造担当の大藪幸造 さん。2 019年5月には、公道を走るトレー ラーの上にコースを組んでプレーする ショーパレードにも同社の組立パーツが 使われた。アール違いやサイズ違いなど パーツのバリエーションが増えれば、さら に多様なコース設計が可能になるだろう と見込んでいる。 日本のトップランナーとしてきわめて 高い精度でものづくりに取り組む同社だ が、トレンドはやはり海外先行だという。 最先端を走る海外の精鋭企業を追いか け、追い抜こうと挑んでいるのが現状だ。 今のテーマは「強度を保ちつつ軽量化」 すること。「輸送を考えると軽い方がいい んですが、頑丈にするとどうしても重くな る。鉄の厚みや補強方法などを工夫して なるべく軽くしつつ、安全性もきちんと守 るのがなかなか大変で…。でも、現場に 出向いてああでもないこうでもないと試 行錯誤するのが、メーカーとして一番の楽 しみでもありますね」と大藪さん。5歳の 息子さんがBMX競技にデビューしたばか りということもあって、学校へのレンタル などにも力を入れたいと語る。「トップア スリートが登場するイベントで、リアルな プレーの面白さに触れてほしいですね」。 子供世代にアピールすることで、現役プレ イヤーにとどまらず、次世代のトッププレ イヤーを育む取り組みにもつながるかも しれないと、期待が高まるところだ。 1 日本初モジュール組立型BMX・スケートボードパーク開発事業 事業テーマ BMX専用パークを組立型で 組立式で多様なコース設計が可能に 所 在 地 電  話 URL 仲多度郡琴平町榎井590 0877-73-2251(代) https://www.tsumura-f.co.jp (平成30年度採択) 従業員数 資本金 77名 2,000万円 株式会社都村製作所 子供たちにも魅力をアピール 3 2 事業のきっかけと背景 事業化のポイント 今後の事業展開 会社概要 さまざまなイベントを通じて、競技 としての人気や知名度が高まれば、プ レイヤーが増えて大会も増える。こう したサイクルを通じて、BMXの発展 をバックアップしたいと思っていま す。 新世代競技の発展とその普及に、 当社の技術で貢献 できればうれしい ですね。 代表取締役 都村 尚志製造担当の大藪さん アスリートと二人三脚で 新世代スポーツの発展に貢献 Kagawa Industry Support Foundation

日本初モジュール組立型BMX・スケートボードパーク開発事 …国内における体育器具や公園遊具専 門メーカーのパイオニアとして、約130年

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  •  国内における体育器具や公園遊具専門メーカーのパイオニアとして、約130年の歴史を誇る同社。身近な公園の遊具からプロスポーツの公式競技器具まで幅広く手掛け、個人向け健康器具のネット販売、スポーツ施設向けの大型4面ビジョンなど、新しいニーズにも意欲的に応えている。 同社が近年力を入れている競技のひとつが、東京五輪から新種目となるスケートボードとBMXフリースタイル。既に「スケートパーク」と呼ばれるスケートボード競技用スペースを15年ほど前から全国に展開しており、需要の少ない時期からコツコツ実績を増やして、現在は全国50カ所ほどに広がっている。これは国内トップの実績だ。「スポーツ器具と公園遊具の両方を製造するのが当社の強みですから、取り組みやすかったです」と、代表取締役の都村尚志さんは振り返る。

     スケートボード用のパークとBMXのパークは一見似ているが、BMXの方が高さや曲線の規格が大きく、グリップを利かせる必要があるため表面の塗装処理も異なる。スケートボード用パークのニーズが先行していたものの、BMX専用パーク

    も増えつつあり、大規模な公共パークだけでなく、イベント用に貸し出してほしいというニーズも出てきた。こうした需要に応え、より手軽に扱えるものができないかという思いから、組立型のパークというアイデアが生まれ開発に着手した。

    新分野等チャレンジ    株式会社都村製作所 BMX専用パーク

     「組立式は固定のパークと違って毎回違う場所に設置するものですから、どんな路面でも使えなくてはいけません。ジョイント部に段差などがあるのももちろんNG。頭の中ではレゴブロックみたいに考えますが、実際は重量物で、組立式であってもかなりしっかりしたものなんです」と都村さん。 同社には、全日本BMXフリースタイル連盟と育んだ信頼関係がある。この連携をベースに、海外の大会も参考にしながら試作を重ね、全日本大会などで実際に運用。アスリートの意見や要望を取り入れ、展示会などにも出展して反応を聞き

    ながら、現在も改良を加えている。BMXで五輪メダル候補と期待されるアスリートに、実際に使用してもらって意見を聞くなど、改良に協力してもらった。京都にある専用パークを同社が手掛けるといったつながりも生まれた。 大会やイベントごとに使うパーツは異なるため、大会の規格やコースデザイナーの設計に応じて、組み合わせを変えて、現地でコースを組み立てていく必要がある。微妙な調整は製造担当の腕の見せどころ。「同じアール(曲線)のパーツでも、勾配に合わせて置き方を変えたり、毎回いろいろな工夫をしています。プレイヤーごとの好みもあるし、セッティングには神経を使いますが、『ジャンプが高くな

    る』『いい結果が出た』という声が何よりの励みですね」と、製造担当の大藪幸造さん。2019年5月には、公道を走るトレーラーの上にコースを組んでプレーするショーパレードにも同社の組立パーツが使われた。アール違いやサイズ違いなどパーツのバリエーションが増えれば、さらに多様なコース設計が可能になるだろうと見込んでいる。

     日本のトップランナーとしてきわめて高い精度でものづくりに取り組む同社だが、トレンドはやはり海外先行だという。最先端を走る海外の精鋭企業を追いかけ、追い抜こうと挑んでいるのが現状だ。今のテーマは「強度を保ちつつ軽量化」すること。「輸送を考えると軽い方がいいんですが、頑丈にするとどうしても重くなる。鉄の厚みや補強方法などを工夫してなるべく軽くしつつ、安全性もきちんと守るのがなかなか大変で…。でも、現場に出向いてああでもないこうでもないと試行錯誤するのが、メーカーとして一番の楽しみでもありますね」と大藪さん。5歳の息子さんがBMX競技にデビューしたばか

    りということもあって、学校へのレンタルなどにも力を入れたいと語る。「トップアスリートが登場するイベントで、リアルなプレーの面白さに触れてほしいですね」。子供世代にアピールすることで、現役プレイヤーにとどまらず、次世代のトッププレイヤーを育む取り組みにもつながるかもしれないと、期待が高まるところだ。

    1 日本初モジュール組立型BMX・スケートボードパーク開発事業事業テーマ

    BMX専用パークを組立型で

    組立式で多様なコース設計が可能に

    所 在 地電  話U R L

    仲多度郡琴平町榎井5900877-73-2251(代)https://www.tsumura-f.co.jp

    (平成30年度採択)

    従業員数 資 本 金

    77名2,000万円

    株式会社都村製作所

    子供たちにも魅力をアピール

    32

    事業のきっかけと背景

    事業化のポイント

    今後の事業展開

    会社概要

     さまざまなイベントを通じて、競技としての人気や知名度が高まれば、プレイヤーが増えて大会も増える。こうしたサイクルを通じて、BMXの発展をバックアップしたいと思っています。新世代競技の発展とその普及に、当社の技術で貢献できればうれしいですね。

    代表取締役

    都村 尚志氏

    新商品にかける熱き想い

    製造担当の大藪さん

    アスリートと二人三脚で新世代スポーツの発展に貢献

    Kagawa Industry Support Foundation