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月刊 2010 年 3 月号 16 17 月刊 2010 年 3 月号 in KOBEKFC調調DENGOin KOBENGOABCNGOin KOBE「ベトナム旧正月を祝うつどい」での母語教室の子どもによる伝 統楽器の演奏(2005年) カトリックたかとり教会の中庭 ベトナム人高齢者のための社会見学 事務所内の「ベトナム図書館」 NGOベトナムのニュースレター「NGOヴィエトニュース」

日本人から、ベトナム料理の講師をき出しの支援をしていたが ... · 2011. 10. 18. · 「ベ頼まれた。日本人のベトナムへの関 九七年二月、ガさんは神戸定住外

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Page 1: 日本人から、ベトナム料理の講師をき出しの支援をしていたが ... · 2011. 10. 18. · 「ベ頼まれた。日本人のベトナムへの関 九七年二月、ガさんは神戸定住外

� 月刊  2010 年 3月号� 16 17  月刊  2010 年 3月号

北きたやま山

夏なつき季  

甲南女子大学

非常勤講師

言語文化学専攻。大阪大学大学院言語文化研

究科博士後期課程単位取得。神戸市の公立小

学校のベトナム母語教室講師を担当。最近の

関心事は、在日ベトナム人の母語教育と同じ

く在日ベトナム人仏教徒コミュニティの動向。

「ああ、また昼過ぎまで延びた。今日

は何時に終わるんやろ、このミーティ

ング」。NGOベトナムin

KOBE

(以下、NGOベトナム)がいつも

土曜に開くスタッフミーティング風

景だ。わたしがこの団体のスタッフ

になって六年、代表のハ・ティ・タ

ン・ガさん(以下、ガさん)につい

で古いメンバーの一人である。

ガさんのストーリー

 

一九九五年一月一七日の阪神・淡

路大震災は神戸長田区に住んでいた

多数のベトナム人にも多大な被害を

およぼした。家族とともにそこに暮

らしていたガさんもそのような一人

であった。カトリック信者であるガ

さんは、ボランティアとしてカト

リック鷹取教会(現在はカトリック

たかとり教会)でベトナム料理の炊

き出しの支援をしていたが、ある日、

日本人から、ベトナム料理の講師を

頼まれた。日本人のベトナムへの関

心が高いことが意外であった。「ベ

トナムのことなら、わたしでも伝え

られるかもしれない」。それが社会

活動をはじめるきっかけとなった。

 

九七年二月、ガさんは神戸定住外

国人支援センター(KFC)の立ち

上げスタッフとして要請された。K

FCは被災ベトナム人救援連絡会と

兵庫県定住外国人生活復興センター

というふたつの団体が統合されてで

きたものである。双方とも、震災後、

行政などの被災者向けの支援情報を

外国人、特にベトナム人にむけて加

工し発信していた。震災後の混乱が

落ち着いてきたころ、それらが

KFCとして統合されたのだ。

 

彼女がKFCで担当した仕事はじ

つに多彩だった。ベトナム人への避

難所・テント村での支援、ベトナム

語による情報提供、行政との折衝、

生活相談など、すべてがガさんに

とっては未知の経験だったが、無我

夢中で取り組んだ。

 

KFCが発足して約四年後、ベト

ナム人支援部門が独立することに

なった。NGOベトナムである。

「自分たちのことは自分たちの力で

解決したい」。日本に定住しはじめ

て二〇年をへて、地域の在日ベトナ

トナム人関連の研究に携わってきた。

調査のフィールドワークのためにN

GOベトナムにかかわりスタッフに

なった、つまりミイラ取りがミイラ

になったわけである。

「自助組織」が抱える問題

 

順調に進んでいるかにみえるNG

Oベトナムも課題はないわけではな

い。じつは、支援活動も長年継続す

ると緊張感がうすれるためか、在日

ベトナム人コミュニティのニーズに

合っているのか、コミュニティとか

かわりが保たれているかなどの面で、

ややもするとおろそかになりがちで

ある。わたしの担当分野でいえば、

母語教室の活動にベトナム人の関心

が向いているのか、教室に子どもを

通わせようとする保護者への働きか

けが十分できているのか、生徒数の

伸び悩みも気になる。

 

上述のようにNGOベトナムはそ

もそも自助組織として誕生した。N

GOベトナムが発足して、今年一〇

年目を迎え、事務所の活動、スタッ

フの数は発足当時の何倍にも膨らん

だ。しかし、増加するコミュニティ

の構成員の数とその多様性や複雑化

する問題を吸い上げ、世代間ギャッ

プなどに対応するには、まだまだ当

事者であるベトナム人のかかわりが

必要である。長田区に住むベトナム

人の数は徐々に増え続け、現在八三

四人、神戸市では一四三八人(二〇

〇九年一二月現在)に上る。

 

このような停滞はNGOベトナム

にかぎったことではなく、また日本に

かぎったことでもなく、一定の定住

自助組織としての自立を

めざして

期間をへた移民コミュニティ支援組

織によくあることのようだ。NGO

ベトナムもある意味で成熟するため

ひとつの山を乗り越える時期にきて

いるのだろう。

 

とはいえ、明るい兆しもみえつつ

ある。日本でうまれ、あるいは幼少

時代から日本でそだった、ベトナム

を知らない世代がNGOベトナムや

たかとり教会を中心とするコミュニ

ティ活動に進んで興味を示し、かか

わりはじめている。いずれ彼らのな

かから、積極的にスタッフとして加

わる人もでてくるだろう。ベトナム

人コミュニティの発展のために、ベ

トナム人が住みやすい社会づくりの

ために。それこそNGOベトナムの

自助活動のひとつの成果として、ひ

そかに心待ちにしている。

おこなっている。Dさんは隔月に一

回発行しているニュースレター「N

GOヴィエト」の編集の取りまとめ

と会計業務、Eさんは、おもにベト

ナム語翻訳を担当する。そして、わ

たしはベトナム人の親を持つ子ども

たちのための母語教室(毎週土曜日

開催)の管理・運営を任されている。

わたしを含めた四人はベトナムでの

語学留学経験がある日本人である。

運用能力の差があるが、スタッフは

すべてベトナム語ができる。また、

日本人スタッフのほとんどが在日ベ

多文化を

ささえる

人びと

NGOベトナム

in

KOBE

ム人たちの自助の意識が形となった。

発足当時は、たかとり教会のベトナ

ム人神父が代表を務めたが、神父の

移動により事務局長のガさんがその

あとを引き継いだ。ガさんは代表と

して、組織の事業を取りまとめる一

方で、進んで在日ベトナム人の生活

相談にのり、各地で在日ベトナム人

について講演をしたりしてきた。

わたしたち、スタッフの作業

 

ここで七人のスタッフの担当を通

してNGOベトナムの多彩な活動を

紹介しよう。まず、Aさんは在日ベ

トナム人高齢者のための訪問型健康

相談、薬物防止キャンペーンを担当

する。Bさんは「ベトナム図書館」

とよばれる何百冊にも上るベトナム

語図書の管理と年一回開催するベト

ナム文化理解講座の企画実行の担当

である。Cさんは日本語教室(毎週

日曜日開催)の運営と管理をおもに

一九九五年神戸を中心とする大震災のあと、数年たち、いくつかの外国人支援組織か

らベトナム人の自助組織がうまれた。NGOベトナムin

KOBEである。コミュニ

ティとのつながりが薄れはじめた今、若いコミュニティ出身メンバーの出現にあら

たな活動の可能性が見えはじめた

「ベトナム旧正月を祝うつどい」での母語教室の子どもによる伝統楽器の演奏(2005年)

カトリックたかとり教会の中庭

ベトナム人高齢者のための社会見学

事務所内の「ベトナム図書館」

NGOベトナムのニュースレター「NGOヴィエトニュース」