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なぜシェアリングエコノミーの普及は進まないのか -日本人の「信頼」に着目して- ―――はじめに 1. 背景 2. 問題提起 ―――先行研究レビュー 1. SE 型サービスの借り手と貸し手の利用 意図に対する信頼についての実証研究 2. リスクと信頼が態度へ及ぼす影響に関す る実証研究 3. ソーシャルコマースの構造が信頼と行動 意図に及ぼす影響についての実証研究 4. その他の先行研究 5. 先行研究の課題点 6. 研究意義 ―――仮説の提唱 1. 技術受容モデル 2. 行動意図モデル 3. 新概念の追加 ―――実証研究 1. 調査概要 2. 構成概念の信頼性と妥当性 3. 分析手法とデータ 4. 分析結果 5. 実証研究の考察 6. 追加的分析 1)調査概要 2)構成概念の信頼性と妥当性 3)分析手法とデータ 4)分析結果 5)追加的分析の考察 7. 実証研究のまとめ ―――インプリケーション 1. 安心を高める施策方針の検討 2. 知覚リスクと情報探索 3. サービスに対する知覚リスク削減 4. サービスの運営元に対する知覚リスク削 ―――おわりに 1. 学術的意義 2. 実務的意義 3. 社会的意義 4. 本研究の課題 ―――謝辞 参考文献 補録―――質問票調査 伊藤班 青木雅人 粟野美咲 伊藤早紀 宇野ひかり 戸田聡穂

なぜシェアリングエコノミーの普及は進まないのかc-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/2017_kubozemi6_2.pdfなぜシェアリングエコノミーの普及は進まないのか

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なぜシェアリングエコノミーの普及は進まないのか

-日本人の「信頼」に着目して-

Ⅰ―――はじめに

1. 背景

2. 問題提起

Ⅱ―――先行研究レビュー

1. SE 型サービスの借り手と貸し手の利用

意図に対する信頼についての実証研究

2. リスクと信頼が態度へ及ぼす影響に関す

る実証研究

3. ソーシャルコマースの構造が信頼と行動

意図に及ぼす影響についての実証研究

4. その他の先行研究

5. 先行研究の課題点

6. 研究意義

Ⅲ―――仮説の提唱

1. 技術受容モデル

2. 行動意図モデル

3. 新概念の追加

Ⅳ―――実証研究

1. 調査概要

2. 構成概念の信頼性と妥当性

3. 分析手法とデータ

4. 分析結果

5. 実証研究の考察

6. 追加的分析

(1)調査概要

(2)構成概念の信頼性と妥当性

(3)分析手法とデータ

(4)分析結果

(5)追加的分析の考察

7. 実証研究のまとめ

Ⅴ―――インプリケーション

1. 安心を高める施策方針の検討

2. 知覚リスクと情報探索

3. サービスに対する知覚リスク削減

4. サービスの運営元に対する知覚リスク削

Ⅵ―――おわりに

1. 学術的意義

2. 実務的意義

3. 社会的意義

4. 本研究の課題

Ⅶ―――謝辞

参考文献

補録―――質問票調査

伊藤班

青木雅人 粟野美咲 伊藤早紀

宇野ひかり 戸田聡穂

2

Ⅰ―はじめに

1.背景

近年、欧米を中心にシェアリングエコノミーの

市場が拡大している。シェアリングエコノミー(以

下 SE)とは、遊休資産をインターネット上のプラ

ットフォームを介して個々人の間で共有しようと

する新たな経済の動きのことであり、社会経済全

体の生産性を高めて環境負荷を下げる効果がある

とされている。

SE は図表 1 のように 5 分類される。1

■図表―――1

シェアリングエコノミーの 5 分類

(出典:一般社団法人シェアリングエコノミー協会

[2016] より引用)

2016 年は SE 元年といわれており、米国では

「Airbnb(エアビーアンドビー)」、「Uber(ウーバー)」

といった 2 大プラットフォームが急激に成長した。

PwC [2016] の推計によれば、2013 年に約 150 億

ドルとされていた世界の SE 市場規模は、2025 年

には約25倍の約3350億ドルにまで拡大するとさ

れている。

世界のユニコーン企業(企業評価額が推定 10 億ド

ル以上の非上場ベンチャー)の上位 10 社のうち、1

1 一般社団法人シェアリングエコノミー協会を参照の

こと。

位の Uber(ライドシェア、米国)、4 位の Didi Chuxi-

ngk(滴滴出行、ライドシェア、中国)、5 位の Airbnb

(ホームシェア、米国)、8 位の Lufax(ソーシャルレ

ンディング、中国)の 4 社がシェア事業者であり、

世界のスタートアップ企業の中でも成長の勢いが

著しい企業である。2日本で認知度の高い SE 型サ

ービスとしては前述した「Airbnb」と「Uber」

が挙げられる。Airbnb とは、個人が所有している

部屋や物件を、スマートフォンのアプリケーショ

ンや Web サイトを介して旅行者に貸し出すこと

のできる民泊サービスのことであり、現在、世界

191 ヶ国 65,000 以上の都市で展開されている。ま

た Uber とは、乗客がスマートフォンのアプリケ

ーションを介して一般のドライバーとマッチング

し、まるでタクシーのように自分の車で乗客を目

的地まで運んでもらうことのできる配車サービス

のことである。日本では 2014 年に段階的にサー

ビスが開始されており、2016 年の時点で Uber の

世界の売上高は 65 億ドルである。

日本では、SE 型サービスの状況や市場拡大は

緩やかである(酒井 [2015])。矢野経済研究所

[2016] の推計によると、2014 年の SE 国内市場規

模は約 233 億円であり、2020 年には約 600 億円

にまで拡大するとされている。しかし、2014 年時

点における国内市場規模は 2013 年の世界の市場

規模である約 150億ドルの 2 割しか占めていない。

1 年のラグが生じているのにもかかわらず、日本

は SE 型サービスの普及に遅れをとっている。ま

た、図表 2 のように、日本における SE の認知度

や利用意図は他国と比較しても総じて低い。

2 出典:Tech crunch[2017]

3

■図表―――2

シェアリングエコノミー認知度・利用意図調査

(出典:総務省 [2016] より引用)

2.問題提起

日本における SE 型サービス普及のボトルネッ

クは信頼にあるとされている。図表 3 より、SE

を利用したくない理由は、事故やトラブル等に対

する不安感が強いという回答が多く、SE を推進

していくためには信頼の構築が鍵となると結論づ

けられている。また、日経産業新聞 [2014] は、

SE 型サービスのビジネスモデルは、信頼によっ

て成り立つコミュニティシステムによる貸し借り

であると述べている。3従来の B to B 型や B to C

型ビジネスにおいて供給者は企業であったのに対

して、C to C 型ビジネスとされる SE は一般の提

供者(以下貸し手)と一般の需要者(以下借り手)に

よる取引である。そのため、お互いを信頼できな

ければ、サービスを利用できない。しかし現状で

は、SE 型サービスは信頼されておらず、普及は

容易ではない。つまり、日本における SE 型サー

ビス普及のボトルネックは「信頼」の構築である

と結論できる。

3 日経産業新聞、2014 年 11 月 21 日

■図表―――3

シェアリングエコノミーを利用したくない理由

(出典:総務省 [2016] を参考に筆者作成)

そこで本論では、「日本の SE において信頼が築

かれにくいのはなぜか」というリサーチ・クエス

チョンを掲げる。信頼は SE 型サービス普及のボ

トルネックとなっている。そのため、信頼構築の

メカニズムを解明できれば、国内の SE 型サービ

ス普及のための示唆を導き出すことができる。な

お、そのメカニズムを探るにあたって、本稿では

信頼の定義にも着目し、日本人はどういった信頼

を抱く傾向にあるのかを検討する。方法としては

山岸 [1998] を参考に信頼に関する構成概念を複

数作成し、それらが SE の利用意図へ与える影響

について実証する。その結果を元に、どのような

信頼に着目して解決策を考えれば SE 型サービス

の普及率を高めるきっかけとなるのかを実証研究

で明らかにしたい。

日本では SE に関する実証研究はあまり進んで

いないため、本稿の研究は学術的にも大変意義が

ある。まさに、今大会の「新時代をつくるマーケ

ティング」というテーマにも合致した研究である

といえるだろう。

4

Ⅱ―先行研究レビュー

日本で SE が浸透しないボトルネックとして信

頼を挙げる先行研究は複数存在する。だが、どの

論文も信頼については深く触れず、信頼以外の変

数が利用意図に及ぼしている影響を主論としてい

る印象が強い。

そこで、本節においては信頼の定義と構成概念

に注目して 5 つの先行研究の検討を行う。その後、

それぞれの実証結果に基づく課題点を整理し、本

研究のオリジナリティについて触れていく。

1.SE 型サービスの借り手と貸し手の利用意図に

対する信頼についての実証研究

Hawlitschek, Teubner, and Weinhardt [2016]

では、SE 型サービスを利用するにあたり、借り

手および貸し手の何に対する信頼が利用意図に影

響を与えるのかに関する実証分析が行われた。具

体的には、図表 4 のように Peer(取引相手)、

Platform(プラットフォーム)、Product(製品)の 3

つに対する信頼は、取引を行おうとする人々の利

用意図にどのような影響を与えるのかを明らかに

している。そして、取引を行おうとする人々を借

り手と貸し手に分類してモデルを形成した。

分析の結果、立てられた仮説である「取引相手

(貸し手)への信頼が借り手の利用意図に正の影響

を与える」、「プラットフォームへの信頼は、借り

手の利用意図に正の影響を与える」、「製品への信

頼は、借り手の利用意図に正の影響を与える」、「取

引相手(借り手)への信頼は貸し手の提供意図に正

の影響を与える」、「プラットフォームへの信頼は、

貸し手の提供意図に正の影響を与える」は全て

5%水準で有意であった。この結果から考えられる

ことは、SE 型サービスの借り手および貸し手の

とる行動に対して、信頼は確かに影響を与えると

いうことである。また、取引相手、プラットフォ

ーム、製品の全てにおいて信頼を確保するための

対策を取るべきであるという示唆を導いている。

この研究は信頼が利用意図に影響を与えると主張

しているものであり、分析手法および実証結果を

参考にする。

■図表―――4

Hawlitschek, et al. [2016]

2.リスクと信頼が態度へ及ぼす影響に関する実

証研究

Leonard [2012] は、C to C の電子商取引におい

て、態度を「買うことに対する態度」と「売るこ

とに対する態度」の 2 つに分け、それらがリスク

と信頼の影響を受けているのか分析した。電子商

取引における信頼とは、「他人は社会的な責任の中

で行動するだろうという期待」、「脆弱性を利用す

ることがないだろうという期待」であり、態度形

成の重要な決定因子だとされている。

結果としては、「貸し手に対する信頼は借り手の

購買に対する態度に影響を与える」、「貸し手に対

するリスクは借り手の購買に対する態度に影響を

与える」という 2 つの仮説が支持された。したが

って、借り手は貸し手の評判などのリスクと信頼

に基づいて購買を行うということが示唆された。

結果は図表 5 に示されている。

この研究では信頼とリスクが態度に影響を与え

ると実証されており、本研究において参考になる

と考えられる。

5

■図表―――5

Leonard [2012]

3.ソーシャルコマースの構造が信頼と行動意図

に及ぼす影響についての実証研究

Hajli [2015] は、ソーシャルコマースにおいて、

その構造が信頼と購買意図に与える影響を分析し

ている。ソーシャルコマースとは、ブログ、

Facebook、Twitter といったソーシャルネットワ

ークサービス(SNS)と電子商取引を組み合わせ

たもので、販売を促進する新たなマーケティング

方法である。この研究におけるソーシャルコマー

スの構造とはフォーラムやコミュニティなどのソ

ーシャルプラットフォーム、評価と評判、紹介と

勧告の 3 部門からなる。

分析の結果、「ソーシャルコマースの構造は利用

者の購買意図に正の影響を与える」、「ソーシャル

コマースの構成は利用者の信頼に正の影響を与え

る」、「SNS における利用者の信頼は購買意図に正

の影響を与える」という 3 つの仮説すべてが支持

された。結果は図表 6 に示した。

この研究から、信頼が購買意図に正の影響を与

えている点、評価・評判からなるソーシャルコマ

ースの構成が購買意図、信頼に正の影響を与える

点が明らかになり、信頼から利用意図への影響を

実証する本研究に応用できると考えた。共分散構

造分析を用いた分析手法も本研究で参考にしたい。

■図表―――6

Hajli [2015]

4.その他の先行研究

上記以外にも、藤原・小林・山本・福島・小山

[2016] による日本における SE の利用意図に影響

を与える要因を「阻害要因」と「促進要因」の観

点から明らかにする実証研究や、鈴木・髙橋・南

百瀬・比嘉・古田 [2015] によるライドシェア・

サービスの利用意図に関する日米比較の実証研究

が挙げられる。これら 2 つの先行研究は SE 型サ

ービスの利用意図を従属変数とし、信頼とその他

の変数の影響について実証研究を行っており、信

頼の定義に関しては本研究と同じく山岸 [1998]

を参考にしていた。しかし、いずれも信頼に関す

る変数以外の変数が利用意図に大きな影響を与え

ており、利用意図に対する信頼の影響を確認でき

ていない。

5.先行研究の課題点

山岸 [1998] では、先行研究の課題点として、

抽象度の高い信頼という言葉を、曖昧な形で用い

ていることを述べている。山岸 [1998] の信頼は、

「能力に対する期待」、「安心」、「誠実性の信頼」

の 3 つに分類できる。つまり、信頼を変数として

採用するならば広義の信頼ではなく、これら 3 つ

の信頼から採用するべきである。これは上で触れ

た Hajli [2015]、藤原・他 [2016]、鈴木・他 [2015]

6

の先行研究に当てはまる。

続いて、Leonard [2012] では、信頼が態度に影

響を与えることに関しては述べられていたが、信

頼の決定要因に関しては研究されていない。その

ため、信頼の決定要因についての追加的研究が必

要である。

Hawlitschek, et al. [2016]、 Leonard [2012]、

藤原・他 [2016] 、鈴木・他 [2015] の課題点はサ

ンプルサイズが小さく、調査対象を学生に限るこ

とで偏りが生じていることである。これにより、

研究結果が一般化されるとはいい難い。

さらに Hawlitschek, et al. [2016]、藤原・他

[2016] では分析方法として共分散構造分析を行

っているにも関わらず、確認的因子分析を行って

いない。測定の妥当性をチェックするために確認

的因子分析は行う必要がある。また、同じく分析

手法の懸念事項として Hajli [2015] では、質問項

目の測定に 5 点尺度が利用されている。回答のば

らつきを確保するため、7 点尺度を採用した研究

を行うべきである。

さらに、藤原・他 [2016] と鈴木・他 [2015] の

研究における課題点として、概念定義や測定尺度

に曖昧な点があるため、信頼は SE の利用意図に

対して影響を及ぼさないといい切れるのか懸念を

抱かざるを得ない。

以上の課題点をまとめると、①信頼という変数

を細分化せずに広義の信頼として使用していた点、

②信頼に影響を及ぼす決定要因に関する研究がな

されていない点、③サンプルサイズが小さいかつ

サンプルに偏りが生じている点、④概念の定義や

測定尺度が曖昧である点、⑤共分散構造分析にお

いて、確認的因子分析を行っていない点などが課

題点として挙げられる。

6.研究意義

本研究では信頼に対する変数として「安心」を

採用した。信頼に関わる変数が本研究の先行研究

と異なる点である。信頼の分類としては先述した

ように「能力に対する期待」、「安心」、「誠実性の

信頼」の 3 つであり、それぞれ同じ広義の信頼に

属するものの、内容は異なっている。したがって、

これら 3 つの信頼が利用意図に影響を及ぼすであ

れば、それぞれが独立して影響を与えると考えら

れる。「能力に対する期待」とはサービス提供者が

決まり事をきちんと実行してくれることを期待す

る度合いであり、「安心」とはもし相手が何か悪い

ことを仕掛けてくる恐れがあったとしても、相手

を罰する法規則が存在するから自分への被害はな

いと期待する度合いである。そして「誠実性の信

頼」とは話したこともない知らない相手であって

も、初めから信頼することによって相手も協力し

てくれるだろうと期待する度合いを示す。

本研究は 3 つの信頼の変数の中でも「安心」に

焦点をあわせている。それは、山岸 [1998] の「日

本人は安心を重視し、米国人は誠実性の信頼を重

視する」という理論の妥当性を確かめるためであ

る。安心と信頼の定義については図表 7 に記載し

た。

■図表―――7

安心と誠実性の信頼の違い

安心:社会的不確実性が存在しない環境の中で

相手を容易に信じること

誠実性の信頼:社会的不確実性が存在する環境

の中で相手を信じること。

(出典:山岸 [1998] を参考に筆者作成)

山岸 [1998] によると、日本人の他者一般に対

する信頼水準は低いものの、「安心」という信頼水

7

準は高い。社会的不確実性が存在しない環境、す

なわち法律やルールが整備され、見知らぬ相手が

自分に害のある行為を犯してきたとしてもその相

手を罰する者が存在する環境にいるとき、日本人

は容易に相手を信じることができる。「安心」は信

頼の構造における「意図に対する期待」に属して

いる(図表 8)。一方、「誠実性の信頼」とは法律や

ルールが整備されていない環境においても、見知

らぬ相手の倫理観や人間性に期待して信頼するこ

とを示す。米国人の場合は、この「誠実性の信頼」

における信頼水準が高い。(山岸 [1998])

もし、信頼の中でも「安心」が利用意図に対し

て影響を及ぼしている場合には、学術的・社会的

意義にもつながる研究になるといえるだろう。ま

た、実務的な点では安心を高めるサービスの提供

方法について具体的な提案をすることができる。

■図表―――8

信頼の構造

(出典:山岸 [1998] を参考に筆者作成)

Ⅲ―仮説の提唱

本節では、消費者の SE 型サービス利用を説明

する。新たなモデルを提唱する。このモデルによ

って、消費者が SE 型サービスを利用したいと思

うまでのメカニズムを明らかにした上で、安心は

利用意図に影響を及ぼしているのか、また安心に

作用している変数との関係性を明らかにする。

まず、新たなモデル構築に際して利用できる既

存モデルとして、2 つのモデルを吟味する。

1.技術受容モデル

技術受容モデル(Davis [1985])とは、消費者が

新しい技術をどのようにして受容し意思決定して

いくかを説明・予測するために用いる理論枠組で

ある。このモデルは使いやすさと有用性が態度に

正の影響を及ぼし、その態度が行動意図を高め、

かつ使いやすさは有用性に対しても影響を及ぼす

と主張するモデルである(図表 9)。

■図表―――9

技術受容モデル

(出典:Davis [1986] を参考に筆者作成)

「使いやすさ」とは新しい技術が努力を必要と

しないと期待する度合いであり、「有用性」とは新

しい技術の使用が作業の効率性を向上させると期

待する度合いである。元々、このモデルは経営情

報システムを使用する人々が新しいコンピュー

タ・システムを使いたがらないという現象を説明

することを目標として開発されたモデルである。

そのため、ここで述べられている行動意図とは新

たなコンピュータ・システムを投入するかどうか

に関する行動意図のことを示しており、このモデ

ルにおける態度とは新たなコンピュータ・システ

ムを利用することの望ましさを評価したものであ

る。この技術受容モデルを本研究に適用するので

あれば、有用性を機能性に置き換えた方が適切で

あると考える。機能性とは、新たに導入した技術

がこれまでの作業能率を向上させるという尺度

(Davis, Bagozzi, and Warshaw [1989] )である。

8

Dabholkar and Bagozzi [2002] によれば、実際の

形状を確認できない財に技術受容モデルを応用す

る際には、有用性よりも機能性や効率性という概

念の方が適切であるとしている。無論、SE 型サ

ービスは形状のある財ではないので、機能性が適

切であると考えられる。また、行動意図は購買行

動に帰結するものではなく、サービスないしプラ

ットフォームの利用そのものに帰結するものであ

るため、行動意図という概念よりも利用意図とし

た方が適切であると考える。そのため、有用性は

機能性、行動意図は利用意図の変数に変換し、本

研究の統合モデルに組み込むことにした。

仮説 1:使いやすさが高まると機能性も高まる

仮説 2:使いやすさが高まると態度も高まる

仮説 3:機能性が高まると態度も高まる

2 行動意図モデル

行動意図モデル(Fishbein and Ajzen [1975])とは、

社会行動は、その行動がもたらす効果とその行動

に対する周囲の評価に依存すると主張する理論で

ある。このモデルは、態度と主観的規範が行動意

図を高め、行動に影響を及ぼすと主張している。

このモデルの構造は、図表 10 に示した。

■図表―――10

行動意図モデル

(出典:Fishbein, et al. [1975] を参考に筆者作成)

このモデルにおける「態度」とは、ある対象に

対して好意的あるいは非好意的に一貫して反応す

る学習された先有傾向である。「主観的規範」とは、

身近にいる他者の意見に対する自分の重視度とそ

の他者がある製品の使用を望ましいものと思う程

度の積である。「行動意図」とは、製品を利用する

意思を示している。行動意図モデルにおける主観

的規範は準拠集団の意見に注目するものだが、本

研究では社会の一般的な意見に注目したい。その

ため、主観的規範は正当性、行動意図は技術モデ

ルと同じように利用意図と変換する。このように

して、本研究の統合モデルに組み込むこととした。

仮説 4:態度が高まると利用意図も高まる

仮説 5:正当性が高まると利用意図も高まる

3.新概念の追加

安心に影響する概念は以上 2つのモデルの概念

以外にも様々な要因が考えられる。そのため、新

概念を追加することでモデルの妥当性を高める。

はじめに、知覚リスクを検討する。「知覚リスク」

とは一連の購買行動に伴う不確実性および購買の

結果に関する購買者の主観的評価に関するリスク

(Bauer [1960])のことである。総務省 [2016] の

調査によると、海外 SE 型サービスを利用したく

ない理由として、「事故やトラブル時の対応に不安

があるから」という回答が 61.1%と も数値が高

かった。このデータからも、日本において SE の

信頼を築く上で、知覚リスクは重要な変数となり

得ることが伺える。したがって、知覚リスクは安

心に負の影響を与えると考えられる。

仮説 6:知覚リスクが高まると安心が低まる

次に、「正当性」が安心に与える影響について考

える。正当性とは、ある集団内の文化、規範、価

値体系内で、妥当あるいは適切であると受け入れ

られる一般化された認識である。高橋 [2007] に

9

よると、用途や性能の評価基準が曖昧な新技術を

事業化する場合、自社の技術の優位性を市場に認

めされるためには、正当性を確立する必要がある。

このことは SE に関しても当てはまる。また、PwC

[2016] によれば、SE 型サービスを利用する上で

の懸念として、「SE の企業については、信頼して

いる人の推薦がないと信用できない」と 69%の人

が回答している。つまり、正当性は安心に正の影

響を与えると考えられる。

仮説 7:正当性が高まると安心も高まる

また、使いやすさが安心に対する期待に与える

影響について考える。PwC [2016] によれば、SE

型サービスを利用する上での懸念として、「サービ

スの内容や使い方がわかりにくそうだから」とい

う回答が 3 分の 1 を占めている。このような調査

結果より、使いやすさは利用意図に影響を及ぼし

ていることが推測できる。また、安心も同じ利用

意図に影響を及ぼしていると考えた場合、利用意

図形成過程において使いやすさも利用意図に影響

を及ぼしているのではないかと推測した。つまり、

使いやすさは安心に正の影響を与えると考えられ

る。

仮説 8:使いやすさが高まると安心も高まる

続いて、機能性が安心に与える影響について考え

る。総務省 [2016] によると、SE 型サービスの普

及において信頼性の確保とともに利便性の向上も

課題として挙げられており、機能性は信頼ととも

に利用意図に正の影響を及ぼしているとされてい

る。ここから、機能性は安心との間にも正の影響

があるのではないかと考えた。

仮説 9:機能性が高まると安心も高まる

さらに、安心が態度に与える影響について考え

る。田中 [2008] によると、態度は信頼に基づい

ているとされている。したがって、安心は態度に

正の影響を及ぼすと考えられる。

仮説 10:安心が高まると態度も高まる

後に、第 2 節の問題提起でも触れたように、

様々な研究が我が国において SE 型サービスが普

及するためには信頼の構築が重要であると指摘し

てきた。もしこれらの主張が正しいとすれば、信

頼の水準が高いサービスであればあるほど、 サー

ビスに対して高い利用意図があるはずである。さ

らに Hajli [2015] では信頼は利用意図に対して正

の影響を及ぼすと示している。したがって、安心

は利用意図に正の影響を及ぼすと示している。

仮説 11:安心が高まると利用意図も高まる

したがって、以上の仮説を踏まえた統合モデルは

図表 11 のようになる。

■図表―――11

統合モデル

(筆者作成)

10

Ⅳ―実証研究

1.調査概要

本調査で提唱した仮説を検証するため、図表 12

のように調査方法・調査対象を設定し、SE の民

泊サービスに関する質問票調査を行った。また、

安心と他の 2 つの信頼を比較しなければ、3 つの

信頼の中で安心が一番重要であるといい切ること

はできない。そのため、統合モデルの安心を能力

に対する期待及び誠実性の信頼に変換したモデル

においても共分散構造分析を行った。

調査の対象サービスとして民泊サービスを選択

した理由は、第 1 節でも述べたように日本におい

て認知度が高いからである。日本においてある程

度認知されつつあるサービスでなければ認識のズ

レが生じ、かつ不確実性が極めて高いため利用意

図が総じて低くなる可能性がある。そのため、日

本において認知度の高い Airbnb を代表とする民

泊サービスを調査の対象サービスとして設定した。

各潜在変数の測定尺度としては、「使いやすさ」

と「機能性」は Davis, et al. [1986]、「知覚リスク」

は Bauer [1960]、「態度」と「利用意図」は Davis,

et al. [1989]、「経済的利益」は Bock, et al. [2005]、

「正当性」は Suchman [1995]、「能力に対する期

待」は薗部 [2008]、「安心」は日景・他 [2007]、「誠

実性の信頼」は堀井・他 [1995] を参考にし、SE

の利用にも適用可能な項目となるよう改良した。

質問項目の信頼性と妥当性を確かめるために、東

京都の私立大学でプリテスト(n=82)を行い、そ

の結果を基に必要に応じて修正をすることで、全

ての変数に関して信頼性係数が 0.70 以上のまと

まりのよい質問項目に改良した。尺度については

7 点リカート尺度を採用した。7 点リカート尺度

を用いたのは、5 点リカート尺度よりも回答の分

散が大きくなる。使用した調査票の質問項目及び

各潜在変数に対応した質問項目及び各潜在変数の

信頼性係数(α係数)は図表 14 に記載している。

■図表―――12

調査方法

調査日 :2017/10/13~15 質問方法 :Web アンケート

(アンとケイト、Google Forms 利用)

標本抽出方法:機縁法 調査対象 20 代:147 人(103 人)

30 代:115 人 40 代:113 人 50 代:118 人 (計 493 人)

(カッコ内は Google Forms の回答)

(筆者作成)

2.構成概念の信頼性と妥当性

まずは 尤推定法による確認的因子分析によっ

て、安心の統合モデルを構成する構成概念の測定

変数について信頼性と妥当性を検討した。確認的

因子分析の結果、適合度指標は2(492)=176.07 と

なった。したがって、モデルは適合度検定におい

て棄却された。ただし、大規模サンプルの場合に

は検定力が強くなりすぎるため、2検定で棄却さ

れやすくなる傾向がある。本研究においてもサン

プルの大規模性に起因するものと考えられる。そ

のため、2検定以外の GFI、AGFI、RMR、RMSEA

についても確認する。GFI=0.97、AGFI=0.94、

RMR=0.04、RMSEA=0.04 であり、各構成概念は

十分な一次元性を有していることが明らかとなっ

た。潜在変数から観測変数へのパスは全て有意

(1%水準)かつ全ての因子負荷量が 0.50 以上(0.82

〜0.93)となり、また各潜在変数の AVE(Average

Variance Extracted)は.050 以上(0.71〜0.87)であ

り、収束妥当性が確認できた。

信頼性については、CR(Composite Reliability)

と係数により検討した。全ての構成概念におけ

る CR は 0.70 以上(0.83〜.93)、係数は 0.70 以

11

上(0.83〜0.93)となり、信頼性が確認できた。弁

別妥当性については、AVE が潜在変数間の HSV

(Highest Shared Variance)を上回るかどうかによ

って検討した。その結果、AVE は HSV 以上とな

り、弁別妥当性が確認された。

同様の手法を用いて、能力に対する期待の統合

モデルと誠実性の信頼の統合モデルを構成する構

成概念の測定変数について信頼性と妥当性を検討

した。まず、能力に対する期待の確認的因子分析

の結果は2(492)=342.96、GFI=0.93、AGFI=

0.90、RMR=0.05、RMSEA=0.07、AVE=0.51~0.87

であった。次に、誠実性の信頼の確認的因子分析

の結果は、2(492)=282.06、GFI=0.94、AGFI=0.91、

RMR=0.07、RMSEA=0.06、AVE=0.70~0.09 で

あった。共通する点として、潜在変数から観測変

数へのパスは全て有意(1%水準)であった。また、

AVE は HSV 以上となったため、弁別妥当性が確

認されたといえる。しかし、CR は 1 つの構成概

念が 0.70 以上にならず、全ての構成概念について

0.70 以上を満たすことはできなった。また、AVE

は HSV 以上となったため、弁別妥当性が確認さ

れたといえる。以上の確認的因子分析の結果は質

問項目及び信頼性係数(α係数)とともに、図表

14 にまとめてある。

3.分析手法とデータ

本研究の分析手法としては共分散構造分析

(SEM:Structural Equation Modeling)を用いる。

共分散構造分析とは複数の構成概念間の関係を検

討することができる統計的手法である。本研究に

おける分析の目的は潜在変数間で相関関係がある

ことを経験的に吟味することであったため、分析

手法として共分散構造分析を用いることは妥当で

ある。共分散構造分析に際しては、SAS/Stat For

Windows. R9.1J の PROC CALIS を用いた。デー

タに関しては、質問票調査で得られた有効な回答

を用いた(n=493)。

4.分析結果

まず、モデルの全体的解釈を行う。モデルの全

体的評価は図表 13 に示した通りである。モデル

全体の適合度を示す2値はそれぞれ数値が大きく、

自由度は 492 であった。

■図表―――13

統合モデルの全体的評価の比較

能力に対する期待 安心 誠実性の信頼

2値 511.45 348.32 451.23

自由度 117 101 117

p 値 0.00 0.00 0.00

GFI 0.90 0.93 0.91

AGFI 0.86 0.89 0.87

RMR 0.15 0.15 0.15

RMSEA 0.08 0.071 0.08

AIC 619.45 452.32 559.23

(筆者作成)

その他の適合度指標として、GFI はモデルのデ

ータへの当てはまりのよさを示す指標であり、0

から 1 の間で高い値である方が望ましいとされる。

推奨値は 0.90 以上である。AGFI は GFI を自由

度で調整した指標で AGFI < GFI となる。AGFI

も 0 から 1 の間をとり、高い値である程望ましい

とされる。推奨値は 0.85 である。また、RMR は

モデルが説明できなかった標本共分散行列の残量

を示す指標であり、0 に近いほどよいとされる。

RMSEA はモデルの分布と真の分布との乖離を表

現した適合度指標であり、0.05 以下なら当てはま

りがよく、0.10 以上なら当てはまりが悪いとされ

る。さらに、AIC は複数のモデルを比較するとき

に用いる指標であり、 も低いモデルが望ましい。

12

■図表―――14

本調査の質問項目と信頼性係数(α係数)及び確認的因子分析の結果

(筆者作成)

質問項目 因子 負荷量

標準

誤差 使いやすさ (α=0.89, CR=0.89, AVE=0.80, HSV=0.46, 平均値=3.91 )

X1 :このサービスの使い方を習得するのは簡単そうだ

X2 :このサービスを使いこなすのは簡単そうだ

0.90 0.90

0.02 0.02

機能性 (α=0.83, CR=0.83, AVE=0.71, HSV=0.53, 平均値= 3.96 )

X3 :このサービスの使用は、生活において満足度を高めると思う

X4 :生活においてこのサービスは役立つと思う

0.87 0.82

0.02 0.02

知覚リスク (α=0.84, CR=0.84, AVE=0.73, HSV=0.58, 平均値=4.96 )

X5 :このサービスにおいて、自分の登録した情報は外に漏れないと思う

X6 :このサービスにおいて、宿泊中は盗聴・盗撮される恐れはないと思う

0.87 0.84

0.02 0.02

経済的利益 (α=0.84, CR=0.84, AVE=0.73, HSV=0.43, 平均値=4.26 )

X7 :このサービスを利用することによって、使うお金の量を減らせると思

X8 :このサービスを利用することは、金銭的な利益をもたらしてくれると思

0.82 0.89

0.02 0.02

正当性 (α=0.86, CR=0.86, AVE=0.76, HSV=0.54, 平均値=3.49 )

X9 :周りの人たちは、このサービスを勧めてくれると思う

X10:周りの人たちの多くがこのサービスを利用すると思う

0.87 0.86

0.02 0.02

能力に対する期待 (α=0.88, CR=0.49, AVE=0.51, HSV=0.57, 平均値=3.38 )

X11:このサービスのシステム面に問題はないと思う

X12:このサービスは運営元の財務面において問題はないと思う

X13:このサービスを提供する会社は確かな能力や実績があると思う

X14:このサービスを提供する会社は、自分の求めている取引相手と確実に

マッチングしてくれると思う

0.78 0.83 0.86 0.80

0.02 0.02 0.02 0.02

安心 (α=0.88, CR=0.86, AVE=0.72, HSV=0.49, 平均値=3.34)

X15:このサービスは何かトラブルがあっても支援してくれるシステムがあ

ると思う

X16:このサービスは適切な個人情報管理対策が実施されていると思う

X17:このサービスはトラブルを未然に防ぐ仕組みがあると思う

0.83

0.87 0.84

0.02

0.02 0.02

誠実性の信頼 (α=0.82, CR=0.48, AVE=0.52, HSV=0.58, 平均値=3.35 )

X18:このサービスにおいての取引相手は頼りになると思う

X19:このサービスを利用する上で、取引相手を信用しても安全であると思う

X20:このサービスにおける取引相手に対しては、信頼できる確証がなくて

も用心深くする必要はないと思う

X21:取引相手は自分がするといったことは実行してくれるはずだ

0.77 0.70 0.75

0.78

0.02 0.03 0.02

0.02

態度 (α=0.91, CR=0.91, AVE=0.83, HSV=0.74, 平均値=3.65 )

X22:このサービスは魅力的だと思う X23:このサービスに好感をもてる

0.91 0.93

0.01 0.01

利用意図 (α=0.93, CR=0.93, AVE=0.87, HSV=0.74, 平均値=3.38 )

X24:このサービスが実際に存在すれば、利用したい

X25:旅行の宿泊手段としてぜひともこのサービスを使ってみたい

0.93 0.93

0.01 0.01

13

以上のような指標を参考に「安心」、「能力に対

する期待」、「誠実性の信頼」の 3 つのモデルを比

較したところ、これらの指標の基においては全て

のモデルは全体的に信頼たるものと評価され、わ

ずかな差ではあるが安心の統合モデルが も望ま

しいモデルと判断した。

続いて、モデルの部分的評価を行う。安心と正

当性、安心と使いやすさ、利用意図と安心以外の

変数間においては、1%水準で有意であり、仮説に

立てたような相関があることが示された。なお、

利用意図と安心においても 10%水準で有意であ

るためかろうじて相関はあるが、それは弱いと推

測できる。したがって、今回の分析結果は図表 15

の通りである。

■図表―――15

統計的に支持された仮説

仮説 1 :使いやすさが高まると機能性

も高まる

支持

仮説 2 :使いやすさが高まると態度も

高まる

支持

仮説 3 :機能性が高まると態度も高ま

支持

仮説 4 :態度が高まると利用意図も高

まる

支持

仮説 5 :正当性が高まると利用意図も

高まる

支持

仮説 6 :知覚リスクが高まると安心は

低くなる

支持

仮説 7 :正当性が高まると安心も高ま

不支持

仮説 8 :使いやすさが高まると安心も

高まる

不支持

仮説 9 :機能性が高まると安心も高ま

支持

仮説 10:安心が高まると態度も高まる 支持

仮説 11:安心が高まると利用意図も高

まる

支持

(筆者作成)

分析結果は図 16 のパス図のように示される。

■図表―――16

統合モデルの分析結果:安心

(筆者作成)

なお、「能力に対する期待」と「誠実性の信頼」

のモデルは、2 つの信頼か正当性の影響を受けて

いる点が安心のモデルと異なっていた。それぞれ

の分析結果については、図表 17、18 のパス図に

示されている通りである。

■図表―――17

統合モデルの分析結果:能力に対する期待

(筆者作成)

■図表―――18

統合モデルの分析結果:誠実性の信頼

(筆者作成)

14

5.実証研究の考察

共分散構造分析を行った結果、本調査の統合モ

デルにおいても技術受容モデルと行動意図モデル

が確認された。そして安心は知覚リスクと機能性

の影響を受け、かつ態度を媒介して利用意図に影

響を及ぼしやすいことが示唆された。さらに、安

心に対する知覚リスクと機能性の影響の大きさを

比較すると、知覚リスクの方が大きな影響を及ぼ

していることが伺える。

このような分析結果より、日本の SE において

安心を高めることは利用意図を高めることにつな

がるといえる。また、安心は知覚リスクを軽減さ

せるか、機能性を高めることによって高められる

ことが明らかとなった。中でも、安心により大き

な影響を及ぼしている知覚リスクを軽減させるこ

とが、安心の向上に繋げやすい。マーケティング

の観点からみても、消費者の意識に影響を与えや

すいのは知覚リスクであると考えられる。

6.追加的分析

(1)調査概要

開発したモデルの外的妥当性を高めるために、

追加的分析を行う。実証研究では SE の対象をひ

とつのサービスに限定していたため、研究自体の

外的妥当性が確立できていない。そこで民泊サー

ビス以外の SE 型サービスでも、本研究の統合モ

デルを用いて分析すべきであると考えた。そこで、

民泊サービスと同じく日本でも認知度の高い配車

サービスである Uber を対象にすることとした。

測定尺度に関しては、本調査と同じものを用い

た。調査方法・対象については図表 19 まとめた

通りである。

■図表―――19

調査方法・対象

調査日 :2017/10/24~25 質問方法 :Web アンケート

(アンとケイト、Google Forms 利用)

標本抽出方法:機縁法 調査対象 20 代:101 人(16 人)

30 代: 92 人 40 代: 83 人 50 代: 75 人 (計 355 人)

(カッコ内は Google Forms の回答)

(筆者作成)

(2)構成概念の信頼性と妥当性

尤推定法による確認的因子分析によって、モデ

ルを構成する構成概念の測定尺度の信頼性と妥当

性を検討した。確認的因子分析の結果、適合度指

標は2(354)=118.22 となった。したがって、モデ

ルは適合度検定において棄却された。

その他の適合度指標は GFI=0.96、AGFI=0.93、

RMR=0.04、RMSEA=0.03 であり、各構成概念は

十分な一次元性を有していることが明らかとなっ

た。潜在変数から観測変数へのパスは全て有意

(1%水準)かつ全ての因子負荷量が 0.50 以上(0.79

〜.095)となり、また各潜在変数の AVE(Average

Variance Extracted)は 0.50 以上(0.69〜0.90)であ

り、収束妥当性が確認できた。

信頼性については、CR(Composite Reliability)

と係数により検討した。全ての構成概念におけ

る CR は 0.70 以上(0.81〜0.95)、係数は 0.70 以

上(0.83〜0.93)となり、信頼性が確認できた。弁

別妥当性については、AVE が潜在変数間の HSV

(Highest Shared Variance)を上回るかどうかによ

って検討した。その結果、AVE は HSV 以上とな

り、弁別妥当性が確認された。以上の確認的因子

分析の結果は図表 22にまとめてある通りである。

15

(3)分析方法とデータ

分析手法としては本調査と同じ理由で共分散構

造分析(SEM:Structural Equation Modeling)を用

いた。共分散構造分析に際しては、SAS/Stat For

Windows. R9.1J の PROC CALIS を用いた。デー

タに関しては、先述したように本研究にあたって

作成した質問票による調査で得られた有効な回答

を用いる(n=355)。

(4)分析結果

モデル全体の適合度を示す2値は数値が大き

く、自由度は 101、p 値は 0.00 であった。その他

の 適 合 度 指 標 は GFI=0.92 、 AGFI=0.88 、

RMR=0.17、RMSEA=0.07、AIC=396.16 となり、

RMSEA は推奨値である 0.05 よりは大きいもの

の、 0.10 よりは小さかった。それ以外は推奨値

を満たしており、調査の対象サービスを他の SE

型サービスに代替して行ったこの分析においても

本研究で構築した統合モデルは全体的に信頼たる

ものと評価されうるだろう。

これより態度と使いやすさ、安心と使いやすさ

及び機能性、利用意図と安心以外の変数間におい

ては、1%水準で有意であり、仮説に立てたような

相関があることが示唆された。したがって、今回

の分析結果よって第 3 節で立てた仮説の中で実証

された仮説は図表 20 の通りである。

■図表―――20

統計的に支持された仮説

仮説 1 :使いやすさが高まると機能性

も高まる

支持

仮説 2 :使いやすさが高まると態度も

高まる

不支持

仮説 3 :機能性が高まると態度も高ま

支持

仮説 4 :態度が高まると利用意図も高

まる

支持

仮説 5 :正当性が高まると利用意図も

高まる

支持

仮説 6 :知覚リスクが高まると安心は

低くなる

支持

仮説 7 :正当性が高まると安心も高ま

不支持

仮説 8 :使いやすさが高まると安心も

高まる

不支持

仮説 9 :機能性が高まると安心も高ま

不支持

仮説 10:安心が高まると態度も高まる 支持

仮説 11:安心が高まると利用意図も高

まる

不支持

(筆者作成)

以上の分析結果は図表 21 のパス図のように示

される。

■図表―――21

統合モデルの追加的分析結果

(筆者作成)

16

■図表―――22

追加的調査の質問項目と信頼性係数(α係数)及び確認的因子分析の結果

(筆者作成)

(5)追加的分析の考察

追加的分析の結果、安心は知覚リスクと正当性

によって影響を受け、かつ態度を媒介して利用意

図に影響を及ぼしやすいことが示唆された。これ

によって、調査の対象サービスを他の SE 型サー

ビスに変えた場合においても、本調査の実証によ

って示唆されたことが確認できた。つまり、日本

の SE において、安心は態度を媒介することによ

って利用意図に影響を及ぼし、かつ安心は知覚リ

スクによって影響を受けることが見出された。

7.実証研究のまとめ

分析の目的は、安心が利用意図に影響を及ぼし

ていることの確認と安心に影響を及ぼす要因を探

ることにあった。分析の結果、安心は態度を媒介

して利用意図に影響を及ぼしており、知覚リスク

が安心に対して負の影響を及ぼしていることが明

らかとなった。また、この関係は複数の対象サー

ビスにおいて確認することができたため、一般化

されたモデルであると考えられる。

それと同時に、第 2 節の研究意義の節で述べて

いたように、本研究では広義の信頼を 3 つの信頼

に分類して分析を行うことで、それぞれの信頼の

質問項目 因子 負荷量

標準

誤差 使いやすさ (α=0.90, CR=0.90, AVE=0.82, HSV=0.28, 平均値=4.02)

X1 :このサービスの使い方を習得するのは簡単そうだ X2 :このサービスを使いこなすのは簡単そうだ

0.89 0.92

0.02 0.02

機能性 (α=0.81, CR=0.81, AVE=0.69, HSV=0.53, 平均値= 4.36)

X3 :このサービスの使用は、生活において満足度を高めると思う

X4 :生活においてこのサービスは役立つと思う

0.86 0.79

0.02 0.03

知覚リスク (α=0.85, CR=0.85, AVE=0.74, HSV=0.57, 平均値=4.96 )

X5 :このサービスにおいて、自分の登録した情報は外に漏れないと思う

X6 :このサービスにおいて、盗難・盗聴・盗撮される恐れはないと思う

0.89 0.83

0.02 0.02

経済的利益 (α=0.86, CR=0.87, AVE=0.76, HSV=0.78, 平均値=4.08 )

X7 :このサービスを利用することによって、使うお金の量を減らせると思う

X8 :このサービスを利用することは、金銭的な利益をもたらしてくれると思

0.86 0.89

0.02 0.02

正当性 (α=0.88, CR=0.88, AVE=0.79, HSV=0.73, 平均値=3.72 )

X9 :周りの人たちは、このサービスを勧めてくれると思う

X10:周りの人たちの多くがこのサービスを利用すると思う

0.87 0.81

0.02 0.02

安心 (α=0.90, CR=0.90, AVE=0.80, HSV=0.77, 平均値=3.63)

X15:このサービスは何かトラブルがあっても支援してくれるシステムがある

と思う

X16:このサービスは適切な個人情報管理対策が実施されていると思う

X17:このサービスはトラブルを未然に防ぐ仕組みがあると思う

0.83

0.91 0.87

0.02

0.01 0.02

態度 (α=0.90, CR=0.91, AVE=0.83, HSV=0.92, 平均値=3.96 )

X22:このサービスは魅力的だと思う X23:このサービスに好感をもてる

0.92 0.90

0.01 0.01

利用意図 (α=0.95, CR=0.95, AVE=0.90, HSV=0.92, 平均値=3.75 )

X24:このサービスが実際に存在すれば、利用したい

X25:移動手段としてぜひともこのサービスを使ってみたい

0.95 0.94

0.01 0.01

17

違いを明らかにした。また、モデルの全体的評価

において、3 つのモデルの中で安心が も望まし

いモデルであることを示した。よって、山岸

[1998] のいう日本は安心社会であるという主張

が本研究においても確認された。

サンプルにおいても年代的な偏りは少なく、サ

ンプルサイズも共分散構造分析を行うのに十分な

数を確保できた。これは、いくつかの先行研究の

課題点を解消しているといえるであろう。

Ⅴ―――インプリケーション

1.安心を高める施策方針の検討

この節ではどのような施策が安心を高め、利用

意図を向上させることができるのかを検討する。

まず、安心に影響を及ぼしていた要因は知覚リ

スクと機能性の 2 つであった。機能性とは新たな

財を購入することで生活の質が向上する程度のこ

とである。しかし、企業は様々なサービスを提供

しているので、機能性を向上させる施策の一般化

は難しいと考えた。それに対して、知覚リスクと

いう概念はマーケティングの観点からも研究が進

められており、一般化したインプリケーションを

導きやすい。よって、本研究のインプリケーショ

ンとしてはどのようにすれば知覚リスクを軽減さ

せられるかを検討していくこととする。

2.知覚リスクと情報探索

知覚リスクとは、不確実性と結果の重大性に

起因している概念である。不確実性とは、結果が

好ましくない可能性に対する個人の主観的確信度

であり、結果の重大性とは行為の結果が好ましく

ない場合に失われる損失の大きさである。すなわ

ち、不確実性か結果の重大性のどちらかあるいは

両方を緩和することで、知覚リスクは軽減される。

また、消費者は不確実性の削減を選択する傾向が

ある(Cox [1967])。

消費者が不確実性を削減する具体的な方法は情

報の探索である(青木 [1986])。消費者の知覚リス

クを削減する情報には評価情報と詳細情報があり

(野島・他 [2002])、図表 23 に示されている通り

である。評価情報とは、消費者の購買意思決定に

影響を与える他者の情報のことであり、詳細情報

とは商品や取引に関わるサイトが発信している情

報のことである。つまり、評価情報はサービスの

運営元企業以外の情報であり、詳細情報はサービ

スの運営元企業の発信情報である。詳細情報は運

営元企業のサイトに掲載されていることが多く、

手に入りやすい。それに比べると、日本において

SE 型サービスの評価情報は不足しており、利用

者は得たい情報を入手しづらいのが現状である。

■図表―――23

リスク削減制度の分類

合成変数 リスク削減制度

リアル

の評価

商品・サービスが有名である

外部権威

の評価

他サイト・雑誌で紹介された

商品

専門家による商品評価

ショップがマス媒体で紹介

消費者

の評価

消費者による商品評価

取引に関する消費者の評価

取引詳細

情報

取引方法と納期の表示

個人情報取扱規定の掲載

FGA(よくある質問集)の

掲載

(出典:野島・他 [2002] を参考に筆者作成)

さらに、日本の SE に対する不確実性の削減方法

18

について検討する。日本の SE に対する不確実性

という場合、サービス自体に対する不確実性と、

サービスの運営元に対する不確実性の 2 つが考え

られる。そこで、サービス自体とサービスの運営

元の 2 つの不確実性の削減についてのインプリケ

ーションを提案する。

3.サービスに対する知覚リスク削減

サービスの不確実性は、知覚リスクを削減する

とされている評価情報(中でも消費者の評価)を容

易に得られるようにすることで削減できる。具体

的な施策として、本研究では利用者間のコミュニ

ティ形成を提案する。

このコミュニティは、既存の財を貸したい個人

と財を借りたい個人をマッチングさせるためのコ

ミュニティではなく、SE 型サービスの評価情報

が得られるようなコミュニティである。例えば、

ある SE 型サービスを借り手側として利用したい

と思った時、利用までの実際の流れや、利用する

上での注意点等の情報を得たいと思うだろう。そ

んな時、借り手としての利用経験者に直接質問が

でき、多くの体験談が集まるコミュニティがあれ

ば、効率的にサービスの知覚リスクを削減するた

めの情報探索が可能になるだろう。

そして、知覚リスクを削減させるために情報探

索を試みるのは貸し手側も同じである。むしろ、

借り手側よりも貸し手の方が知覚リスクは高いた

め、貸し手側の知覚リスクを削減する施策にもな

り得るのではないかと推測する。

コミュニティ形成としては、特定個人に対する

ものと、地域に対するものの 2 通りを考えている。

イメージとしては、図表 24 と 25 の通りである。

■図表―――24

特定個人に対するコミュニティ形成

(筆者作成)

■図表―――25

地域に対するコミュニティ形成

(筆者作成)

この提案の独自な点は、取引を検討しているユ

ーザーが検討中の取引相手と取引をしたことのあ

る第三者とやりとりができる点である。取引相手

に対する不確実性が高い場合、実際にその人と取

引をした経験のある人から情報を聞くことは、取

引に対する不確実性を緩和すると考えられる。よ

って、このように利用者の知覚リスクを削減でき

ると推測される。

4.サービスの運営元に対する知覚リスク削減

サービスの運営元の不確実性は、評価情報を充

実させることで消費者が自分にとって適切な評価

情報を得ることで削減される。具体的には、強い

ブランド力のある企業との関係性構築を提案する。

19

例えば、SE はセキュリティに対する不確実性が

高いため、セキュリティシステムに強い企業と連

携して独自のセキュリティシステムを開発したと

する。そうすると、提携先企業のブランド認知度

により、SE 型サービスの運営元の企業における

ブランド力は高まり、不確実性を削減することに

繋げられるものと考えられる。具体例としては

Airbnb と ALSOK の連携が挙げられる。

ブランド力の高まりによって外部権威の評価と

しての評価情報が増え、消費者もより積極的に情

報発信を行うようになると推測できる。もちろん

この過程の中でリアルの評価も高められる。この

ように評価情報が増えることで、消費者が探索し

ている情報を見つけやすくなり、知覚リスクの削

減に繋がると考える。

Ⅵ―――おわりに

1.学術的意義

本稿の学術的意義としては、山岸 [1998] で示

された「日本は安心社会である」という主張の妥

当性を確かめるべく、広義の信頼を能力に対する

期待、安心、誠実性の信頼の 3 種類に細分化して

実証を行った点にある。先行研究では、信頼が利

用意図へ影響を及ぼすという事実は明らかにされ

ているものの、信頼の定義が曖昧で細分化されて

いないことから、具体的にはどういった信頼が利

用意図に関わっていくのかを導けるような実証結

果が存在しなかった。

本稿では信頼を 3 種類に細分化し、構築したモ

デルの実証を行った結果、2 つの学術的成果を得

た。第 1 は先行研究で取り扱われた信頼を発展さ

せたもので人々の利用意図への影響を示すことが

できたことである。第 2 は、「日本は安心社会で

あること」の経験的妥当性を示したことである。

この実証結果によって、今後の日本において SE

を浸透させるには、人々の安心を確保できるよう

な手段を考えることが、利用率の向上へとつなが

る取り組みであることも明らかとなった。

2.実務的意義

本稿の実務的意義としては、実証結果から安心

を高めるサービスの提供について具体的な提案が

できたことである。実証研究では、安心が態度を

介して利用意図へと影響を及ぼしていることが明

らかとなった。さらにはその安心が知覚リスクの

削減によって生まれるものであることが実証され

た。この結果から、知覚リスクを軽減させる要因

となるものを探し、それを用いることによって

人々の安心を向上させることが実務的に重要であ

るといえる。

本稿は利用者の情報探索に着目し、どのような

情報をどのような形で開示することが、知覚リス

クを軽減させ安心を高めることへと導くことがで

きるのかを検討した。そして、日本における SE

に対して利用者間でのコミュニティ形成と、影響

力の強い企業との関係性構築を提案した。

このように実際のサービスに落とし込むことが

できるようなモデルを構築できたことから、本稿

は実務的意義のある研究を実現することができた

と考えられる。

3.社会的意義

SE は遊休資産を効率的に活用することを可能に

し、社会経済全体の効率化や新たなイノベーショ

ンの創出、国内の課題解決への貢献が期待されて

いる。社会経済全体の効率化とは、今までは使わ

れることのなかった遊休資産を社会経済で有効活

用することによって、日本の過剰消費と使い捨て

20

を軽減させて社会経済全体の無駄な資源を削減す

ることなどを指す。また、SE における情報通信

技術の発展によって、新たなイノベーションの創

出可能性があるのも、SE 型サービス普及によっ

て得られる利点である。さらに国内の課題解決へ

の貢献に関しては、時間のシェアリングによって

女性の子育て時の雇用創出や、スペースのシェア

リングによって空き家問題の解決などが期待され

ている。

このように SE 型サービスの普及は多くの社会

的利益を生み出すと期待されており、SE 型サー

ビス普及の促進に繋がるような本研究は社会的に

も大いに意義のあるものであると考えられる。

4.本研究の課題

本稿では SE の浸透には信頼が必要不可欠であ

ったことを明らかにしたが、実証に至るまでの分

析手法において課題点が複数残った。まず統合モ

デルのパス図が複雑である。信頼が利用意図にど

のような影響を及ぼすのかを実証する研究である

が、統合モデルに技術受容モデル、行動意図モデ

ル、その他複数の変数が組み込まれているため、

実証結果で期待する結果を得られないことがいく

つかあった。また、「日本は安心社会である」とい

う山岸 [1998] の主張を取り上げている以上は、

安心の統合モデルの妥当性が他 2 つのモデルと圧

倒的な差をつけて高いことを実証したいところで

あった。

また、今回は質問票のシナリオにおいて、借り

手のみを想定して質問票調査を実施しており、貸

し手側を想定した調査を行えなかった。本研究は

日本の SE の利用者に関する研究であり、借り手

及び貸し手の両サイドから調査を行うべきであた

った。

さらに、今回は Web アンケートを利用して本調

査を行った結果、標本数で 493 人を獲得したもの

の、回答に分散があまり見られないものが複数あ

った。これは、Web 上のアンケートに回答する際

に 1 つ 1 つの質問を飛ばすように回答する人々も

いることが考えられる。各質問に回答者が適切に

回答するという保証はないため、調査方法につい

てはもう少し工夫した取り組みを行うべきであっ

たと考える。

Ⅶ―――謝辞

今回の研究を行うにあたり、指導していただい

た担当教授、諸先輩方、同輩、またアンケートに

ご協力いただいた皆様、関わってくださったすべ

ての方々に感謝の意を表したい。 (17267 字)

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],朝刊 19 頁.

24

補録

本調査質問票

シェアリングエコノミーの利用意向に関する調査

青木雅人・粟野美咲・伊藤早紀・宇野ひかり・戸田聡穂

私たちは現在、論文の執筆活動をしています。この度はその一環としてシェアリングエコノミーの利用

意向調査のため、皆様にアンケートのご協力をお願いしております。今回ご回答いただいた内容はすべ

て統計的に処理され、今大会の発表以外で使用されることはございません。ご協力のほど、宜しくお願

い申し上げます。

近年、Airbnb や Uber といったシェアリングサービスが日本国内においても普及し始めています。

Q1. このようなシェアリングサービスを利用したことはありますか

Q2. あなた自身についてお答えください。

性別

年齢

Q3. あなたは現在、旅行のために宿泊施設を探していると想定してお答えください。

あなたはインターネットで宿泊施設を探していたところ、あるサービスを見つけました。

このサービスはインターネットを通じて、部屋を貸したい人(ホスト)と部屋を借りたい人(ゲスト)

をつなげる仕組みで、個人が所有している部屋や物件を貸し借りすることができます。

このサービスで貸し出しされる施設は多種多様で、様々な人数に対応できることができます。また、価

格の幅もあり、ホテル等の宿泊施設に比べて格安で泊まれる物件もあります。

25

26

このサービスを利用する前提でお答えください。

「全くそう思わない:1」から「非常にそう思う:7」の 7 つ

のうち、必ず 1 つの数字のみを〇で囲んでください。

非常にそう思う

そう思う

ややそう思う

どちらともいえない

ややそう思わない

そう思わない

全くそう思わない

このサービスの使い方を習得するのは簡単そうだ 1 2 3 4 5 6 7

このサービスを使いこなすのは簡単そうだ 1 2 3 4 5 6 7

このサービスの使用は、生活において満足度を高めると思う 1 2 3 4 5 6 7

生活においてこのサービスは役立つと思う 1 2 3 4 5 6 7

このサービスにおいて自分の登録した情報は外に漏れないと

思う

1 2 3 4 5 6 7

このサービスにおいて宿泊中は盗聴・盗撮される恐れはない

と思う

1 2 3 4 5 6 7

このサービスを利用することによって、使うお金の量を減ら

せると思う

1 2 3 4 5 6 7

このサービスを利用することは、金銭的な利益をもたらして

くれると思う

1 2 3 4 5 6 7

周りの人たちは、このサービスを勧めてくれると思う 1 2 3 4 5 6 7

周りの人たちの多くがこのサービスを利用すると思う 1 2 3 4 5 6 7

このサービスのシステム面に問題はないと思う 1 2 3 4 5 6 7

このサービスは運営元の財務面において問題はないと思う 1 2 3 4 5 6 7

このサービスを提供する会社は確かな能力や実績があると思

1 2 3 4 5 6 7

このサービスを提供する会社は、自分の求めている取引相手

と確実にマッチングしてくれると思う

1 2 3 4 5 6 7

このサービスは何かトラブルがあっても支援してくれるシス

テムがあると思う

1 2 3 4 5 6 7

このサービスは適切な個人情報管理対策が実施されていると

思う

1 2 3 4 5 6 7

このサービスはトラブルを未然に防ぐ仕組みがあると思う 1 2 3 4 5 6 7

このサービスにおいての取引相手は頼りになると思う 1 2 3 4 5 6 7

このサービスを利用する上で、取引相手を信用しても安全で

あると思う

1 2 3 4 5 6 7

27

このサービスにおける取引相手に対しては、信用できる確証

がなくても用心深くする必要はないと思う

1 2 3 4 5 6 7

取引相手は、自分がするといったことは実行してくれるはず

1 2 3 4 5 6 7

このサービスは魅力的だと思う 1 2 3 4 5 6 7

このサービスに好感をもてる 1 2 3 4 5 6 7

このサービスが実際に存在すれば、利用したい 1 2 3 4 5 6 7

旅行の宿泊手段としてこのサービスを使ってみたい 1 2 3 4 5 6 7

ご協力ありがとうございました。

追加的調査質問票

シェアリングエコノミーの利用意向に関する調査

青木雅人・粟野美咲・伊藤早紀・宇野ひかり・戸田聡穂

私たちは現在、論文の執筆活動をしています。この度はその一環としてシェアリングエコノミーの利用

意向調査のため、皆様にアンケートのご協力をお願いしております。今回ご回答いただいた内容はすべ

て統計的に処理され、今大会の発表以外で使用されることはございません。ご協力のほど、宜しくお願

い申し上げます。

近年、Airbnb や Uber といったシェアリングサービスが日本国内においても普及し始めています。

Q1. このようなシェアリングサービスを利用したことはありますか

Q2. あなた自身についてお答えください。

性別

年齢

Q3.以下のシナリオをよく読んでから質問にお答えください。

28

あなたは外出先でタクシーを探していたところ、代わりに Uber というサービスを見つけました。ア

プリを開いてみると、近くに多数ドライバーがいるようで、すぐに利用できそうです。

Uber は web やアプリを通じて、車を所有しており、時間を活用したい人(ドライバー)と目的地ま

で送迎してもらいたい人(乗客)をつなげる配車サービスです。

アメリカや欧米ではすでに Uber が普及しており、タクシーと同様の移動手段として広く一般的に利

用されています。日本でも今後普及していくと思われます。なお、今回のアンケートでは日本で適用さ

れている法規制を考慮しないものとしてください。

Uber では乗客は普通車だけではなく、高級車や SUV、チャイルドシート対応車、車いす対応車など、

様々な車種を自由に選ぶことができます。

また、高級車でもタクシーと同程度の価格であり、低価格でサービスを利用することができます。

29

このサービスを利用する前提でお答えください。。

「全くそう思わない:1」から「非常にそう思う:7」の 7 つの

うち、必ず 1 つの数字のみを〇で囲んでください。

非常にそう思う

そう思う

ややそう思う

どちらともいえない

ややそう思わない

そう思わない

全くそう思わない

このサービスの使い方を習得するのは簡単そうだ 1 2 3 4 5 6 7

このサービスを使いこなすのは簡単そうだ 1 2 3 4 5 6 7

このサービスの使用は、生活において満足度を高めると思う 1 2 3 4 5 6 7

生活においてこのサービスは役立つと思う 1 2 3 4 5 6 7

このサービスにおいて自分の登録した情報は外に漏れないと思

1 2 3 4 5 6 7

このサービスにおいて盗聴・盗撮・盗難はされる恐れはないと思

1 2 3 4 5 6 7

このサービスを利用することによって、使うお金の量を減らせる

と思う

1 2 3 4 5 6 7

このサービスを利用することは、金銭的な利益をもたらしてくれ

ると思う

1 2 3 4 5 6 7

周りの人たちは、このサービスを勧めてくれると思う 1 2 3 4 5 6 7

周りの人たちの多くがこのサービスを利用すると思う 1 2 3 4 5 6 7

このサービスのシステム面に問題はないと思う 1 2 3 4 5 6 7

このサービスは運営元の財務面において問題はないと思う 1 2 3 4 5 6 7

このサービスを提供する会社は確かな能力や実績があると思う 1 2 3 4 5 6 7

このサービスを提供する会社は、自分の求めている取引相手と確

実にマッチングしてくれると思う

1 2 3 4 5 6 7

このサービスは何かトラブルがあっても支援してくれるシステ

ムがあると思う

1 2 3 4 5 6 7

このサービスは適切な個人情報管理対策が実施されていると思

1 2 3 4 5 6 7

このサービスはトラブルを未然に防ぐ仕組みがあると思う 1 2 3 4 5 6 7

このサービスにおいての取引相手は頼りになると思う 1 2 3 4 5 6 7

このサービスを利用する上で、取引相手を信用しても安全である

と思う

1 2 3 4 5 6 7

30

このサービスにおける取引相手に対しては、信用できる確証がな

くても用心深くする必要はないと思う

1 2 3 4 5 6 7

取引相手は、自分がするといったことは実行してくれるはずだ 1 2 3 4 5 6 7

このサービスは魅力的だと思う 1 2 3 4 5 6 7

このサービスに好感をもてる 1 2 3 4 5 6 7

このサービスが実際に存在すれば、利用したい 1 2 3 4 5 6 7

移動手段としてこのサービスを使ってみたい 1 2 3 4 5 6 7

ご協力ありがとうございました。