36 イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 3(2011.3) 調12稿1.71 % 0.03 退稿

地域住民におけるムスリム・イスラーム に対する意 …...37 イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 3(2011.3) 地域住民におけるムスリム・イスラームに対する意識・態度の規定要因

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36イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 3(2011.3)

地域住民におけるムスリム・イスラーム

 に対する意識・態度の規定要因

―岐阜市調査の事例より―

岡井 宏文(

1)

石川 基樹(

2)

一 はじめに

 

本稿は、日本人(非ムスリム)住民の、ムスリム・イスラームに対する意

識・態度の規定要因を検討することを目的とする。

 

日本に在住する外国人は、二〇〇九年時点で、約二一八万人であり、過去

最高を記録した二〇〇八年に比べ約三万人減少している。この値は、日本の

総人口の1.71%に当たり、前年に比べ0.03ポイントの減少となっている。また

三二府県において前年度を下回る登録者数となっている。景気後退を背景と

し人口的に規模の大きい日系人などの離日が進んだことなどが、その要因と

される。戦後一貫して増加を続けてきた日本の外国人登録者数が減少に転じ

た結果となったが、これまでの外国人人口の増加に伴い、日本においては外

国人を対象とした研究が、社会学、人類学、人口学等の諸分野を中心とし

て、蓄積されてきた。

 

在日外国人研究の潮流としては、地域における外国人の増加とそれに伴う

地域住民との葛藤や、日本社会における外国人を中心としたエスニックコ

ミュニティの形成、アイデンティティ等を取り扱う研究(奥田・田嶋

一九九一、奥田・田嶋一九九三、小内・酒井編二〇〇一、広田二〇〇三、奥

田二〇〇四、広田二〇〇六など)が数多くなされているほか、彼らの社会経

済的側面、日本の制度的側面に注目した労働者問題、人権、子どもの教育、

参政権、共生/統合等に関する分析等が蓄積されてきた(鐘个江編

二〇〇一、梶田・宮島編二〇〇二、

宮島・加納編二〇〇二、

宮島二〇〇三、

宮島・太田二〇〇五、梶田・丹野・樋口二〇〇五ほか)。しかしながら、こ

れらの諸研究は在留外国人の中で人口量の多い日系人、在日コリアン等を対

象としたものが多く、その他の集団に関する個別の研究は、未だ十分に研究

の蓄積が進んでいるとは言い難い状況にあり、新たな移住者の存在と日本社

会との関係性を論じた知見の提出が急務である。

 

本稿に関連する滞日ムスリム(在日ムスリム)についても同様の傾向にあ

る。滞日ムスリムに関する研究は、一九九〇年代に徐々に散見されるように

なるが、桜井(二〇〇三)による総合的なコミュニティ描写の作業を端緒と

し、以降研究が盛んになりつつある。現在、日本における滞日ムスリムをめ

ぐる研究では、対象となるムスリム自体に焦点を当てたものが主流となって

いる。従って、労働問題、移住過程やコミュニティの形成過程、国際結婚に

伴うアイデンティティに係る問題群等については、未だ十分ではないにせよ

ある程度の知見の蓄積が行われてきた。しかし、移動先であるとともに、コ

ミュニティが形成される場となる日本(非ムスリム)社会との関係性の検証

についてはほぼなされておらず、各論考の中で必要性が喚起されているもの

が散見される程度である(片倉・仙波二〇〇三ほか)。

 

現在の滞日ムスリム移民研究をめぐる議論の問題点の一つに、「日本にお

けるイスラーム」、「日本のムスリム」などをカテゴリとして採用した記述を

行っているにもかかわらず、もう一方の行為主体である日本社会(非ムスリ

ム社会)の側に対する研究を実施してこなかった点が挙げられる。こうした

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37 イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 3(2011.3)

地域住民におけるムスリム・イスラームに対する意識・態度の規定要因

状況を受け、本稿では、その一端として、地域社会における日本人(非ムス

リム)住民を対象とし、ムスリムあるいはイスラームに対する意識・態度を

対象とした検討を行う。

二 先行研究の概観

二・一 外国人に対する意識・態度

 

本節では、日本人の外国人に対する意識・態度に関する実証研究と知見の

整理を行う。

 

日本における外国人住民に対する排外意識の研究は、主に接触仮説にもと

づいて行われてきた(永吉二〇〇六:二六〇)。接触仮説とは、外集団との

接触や交流が、外集団に対する寛容性を増加させる/排外意識を抑制すると

いう仮説である(A

llport 1954=1961; Cook 1978; B

rown 1995=1999

など)。日

本において、接触仮説は、田辺(二〇〇一)、大槻(二〇〇六)らによる検

討がなされており、大槻によるJapanese G

eneral Social Surveys

(JGSS

)デー

タを用いた分析結果では、外国人をみかける程度、外国人とあいさつを交わ

す程度の接触といった日常的な接触でも、外国人に対する偏見・排外意識に

対しての低減効果が認められている(大槻二〇〇六)。

 

また、近年接触仮説と関連するものとして、脅威認知仮説も日本における

適用可能性が検討されている。脅威認知仮説は、外国人を自らの経済的・社

会的地位、文化的統合を低下させる存在として認知することが排外意識を高

めるとする仮説である(Q

uillian 1995; Scheepers et al. 2002; Gibson 2004

ど)。日本においては、濱田による外国人集住地域を対象とした研究におい

て、本仮説を支持する結果が得られている(濱田二〇〇八)。ここでは「排

他意識」の規定要因が検討され、職業あるいは個人収入といった変数の影響

が認められるほか、「生活悪化意識」と「排他意識」の間に強い相関

(p<.001

)が認められるという知見が提示されている。一方、濱田の研究は

外国人集住地域における仮説の検討を実施したものであるが、日本における

外国人比率の低さを考慮したうえで本仮説の検討を行った永吉によれば、実

際の脅威の認知だけでなく、外国人という「未知の存在」に対する漠然とし

た不安や、外国人が「見えない」が故の好意も排外意識に影響しているとさ

れる(永吉二〇〇六)。

 

また、これらの諸研究と密接に関連するものとして、個人属性も外国人に

対する意識・態度に影響を及ぼす変数として投入される。これは日本人住民

の外国人に対する寛容性が、個人属性によって規定されるとするものである

が、その効果の有無や強弱は先行研究によって異なる。

 

次に、外国人に対する意識や態度の決定に関連する要因として、外国・外

国人イメージの形成についてみていく。御堂岡によれば、外国・外国人に対

するイメージは、所属集団の規範の影響・両親の影響・教育・マスメディア

による間接接触・渡航等による直接接触・国家間の関係や国際的事件の影

響・説得的コミュニケーション等によって形成される(御堂岡一九九一)。

御堂岡に従えば、外国・外国人に対するイメージは、直接的接触が伴わない

場合においても形成され得る。中でも直接接する機会の少ない国の人々に関

しては、マスメディアを介して提供される情報の影響が重視され、メディア

イベント、ニュース報道等を通じたイメージ形成プロセスの検証がなされて

きた(上瀬・萩原二〇〇三、萩原二〇〇六、向田・坂元・高木・村田

二〇〇八ほか)。

 

また、田辺は、個人差多次元尺度構成法を用いて日本人の外国・外国人の

好感度について、その多元的な構造を検討し、「欧米先進諸国か否か」およ

び「メディア報道が肯定的か否か」という二つの次元を抽出している(田辺

二〇〇八)。これによれば、「欧米先進諸国」でなく、かつ「否定的イメージ

のメディア報道」がなされる国に対する好感度は、低い水準を取ることにな

る。これらの研究そのものは、日本人の「外国(外国人)観」の構造を明ら

かにするものであるが、このような「好感度の高低」や「基準」などと、日

本における外国人への差別や排他性に関する研究との関連性が指摘されてい

る(田辺二〇〇八:三八三)。「外国人」というカテゴリに内包される出身国

等の諸カテゴリや、直接的接触の無い状況でもイメージが形成される状況を

考慮するならば、日本に居住する在留外国人へのまなざしもまた多様に分岐

すると予測される。

二・二 ムスリム・イスラームに対する意識・態度

 

意識・態度についてムスリム・イスラームに対象を絞った研究について見

ると、欧米を中心として、実証研究の蓄積がなされつつある(Zick and

Küpper 2009; B

evelander and Otterbeck 2010

など)。Sm

ith

は、G

eneral Social Survey

(GSS

)データを使用し、社会・文化的背景の異なる諸集団(「A

nti-religionist

」、「White S

upremacist

」、「Com

munist

」、「Militarist

」、

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38イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 3(2011.3)

The Factors Influencing Perceptions and Attitudes toward Islam and Muslims in non-Muslim Japanese Community

「Hom

osexual

」、「Muslin Extrem

ist

」)を対象として、其々に対する寛容性に

ついて問うた結果を報告し、「M

uslin Extremist

」に対する寛容性の低さを提

示した(Sm

ith 2009

)(3)。ただし、Sm

ith

による報告は、対象および寛容性を

測定する局面が、上記集団による「公共の場でのスピーチ」、「大学における

教授活動」、「書籍の図書館への収蔵」と極端に限定されており、社会・文化

的マイノリティに対する寛容性について、十分に明らかにしたとは言い難

い。また、「ムスリム」についても「Extrem

ist

」のみに対象が限定されてお

り、全体の傾向を明らかにするには至っていない。

 

一方、ムスリム・イスラーム全体を対象とした研究について見ると、ムス

リム移民に対する意識・態度表明の関連変数の検討が実施されている。ムス

リム・イスラームに対する態度の規定要因について見ると、個人属性との関

連性の検討に重きを置いた調査研究が確認できる。肯定的態度との関連変数

について見ると、性別(女性)、居住地(都市居住者)、年齢(若年層)、学

歴(高学歴)、家族の社会経済的地位(高い)、直接的接触の有無(有り)等

が指摘されている(B

achner and Ring 2004; B

evelander and Otterbeck 2010

ど)。しかしながら、ある調査で検出された変数が他の調査で検出されない

など、各々の調査研究において析出される肯定的態度の関連変数は一様では

ない。

 

Wike

とGrim

は、これらの変数に加え、Pew

Global A

ttitudes survey

の調査

結果を使用し、欧米諸国を対象として、横断的にイスラームに対する否定的

態度の規定要因を探索している。ここでは、脅威認知仮説(Q

uillian 1995; Scheepers et al. 2002; G

ibson2004

)を援用しつつ、イスラームを脅威と認識す

ることがムスリムへの否定的態度に結びつくと仮定する構造方程式モデルを

構築し、検討を行っている(W

ike, R. and G

rim, B

. J., 2010

)。その際、否定的

態度を規定する要因として、「Security Threats

」、「Cultural N

on-Integration

」、

「Culture C

onflict

」、「Low G

eneral Ethnocentrism

」の他、「R

eligiosity

」、「Low

Overall Satisfaction

」、「Age

」、「Socio-Economic Status

」、「Sex

」を投入した結

果、「Security Threats

」、「Cultural N

on-Integration

」が高い説明力を有する結

果となっている。

 

翻って、日本におけるムスリム・イスラームに対する意識・態度を扱った

研究は未だ非常に稀少である。本テーマを扱ったものとしては、まず松本に

よる先駆的な研究を挙げることができる(松本二〇〇六)。松本は、東京都

内の高校生を対象とし、彼らのイスラームに対するイメージの形成要因につ

いて検討を実施している。結果、対象者を二つのグループに分類し、イス

ラームに関する情報摂取量の高い優等生的生徒が、より否定的なイメージを

抱く逆説的状況を明らかにしている(松本二〇〇六)。更に松本は、このよ

うな結果の解釈段階において、情報摂取量の高さと、摂取情報の内容との関

連性について「理性的にはイスラーム理解の必要性をより強く認識している

ものの、情緒的には大量に流布する偏った情報により強く引き摺られやすい

からではなかろうか」とし、摂取情報の内容や偏りがイメージ形成に与える

影響について推測している(松本二〇〇六:二〇一)(4)。

 

この他日本人を対象とした調査研究としては、吉年(二〇〇八a、

二〇〇八b)、谷川(二〇〇九a、二〇〇九b)による一連の中東滞在経験

者を対象とした報告がある。長期滞在者、開発援助関係者、駐在経験を持つ

ビジネスマンを対象としたこれらの諸研究の特徴としては、現地社会やイス

ラームに対する印象について、中東赴任前と赴任後の変化を捉えていること

にある。イスラームになじみの薄い日本において形成されたイメージが、直

接的接触を伴う現地社会においてどのように変化するかを捉えており、イ

メージは比較的好転するとの結果が得られたとされる。

 

以上、外国人に対する意識・態度およびムスリム・イスラームに対する意

識・態度に関する先行研究を概観した。そのうえで、日本における、ムスリ

ム・イスラームに対する態度を扱った研究の課題についてまとめると、それ

らは大きく以下の二つに集約される。それぞれ、①コミュニティの存在する

地域社会におけるムスリムと非ムスリムによる相互関係を明らかにする必要

性が喚起されながらも、実証的研究の蓄積が皆無である点、および②日本人

(非ムスリム)を対象としたムスリム・イスラームに対する意識・態度を

扱った先行研究は対象が限定的であるほか、これまで関連する諸研究で提示

されてきた規定要因を部分的に検証するにとどまっている点である。従っ

て、本稿は、上記の知見および課題を踏まえたうえで、日本の地域社会を対

象として、ムスリム・イスラーム意識・態度の実態およびその規定要因を検

討する作業を実施する。

三 調査の概要と分析方法

三・一 調査の概要

 

本稿で分析に用いる調査データは、早稲田大学人間科学学術院アジア社会

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39 イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 3(2011.3)

地域住民におけるムスリム・イスラームに対する意識・態度の規定要因

論研究室が実施した「外国人に関する意識調査」の個票データである。本調

査は、二〇〇九年一〇月に、岐阜県岐阜市で実施された質問紙調査である。

なお本調査は、外国人全般を対象として設計されたものであるが、調査項目

内にイスラームやムスリムに関する項目が設けられている。調査の概要は以

下の通りである。

︻調査実施概要︼

 

①目的:外国人住民に対する意識の把握

  

対外国人意識の規定要因の探索

  

イメージ構築、態度表明の因果モデルの構築

  

ムスリム(イスラーム)意識の探索(調査票内にイスラーム関連項目を

作成して設計)

 

②調査地域:岐阜県岐阜市(黒野地区、方県地区、西郷地区)

 

③調査対象:地域住民(対象年齢二〇歳~七五歳)

 

④調査票:日本語にて作成

 

⑤抽出方法:住民基本台帳を用いた系統抽出法

 

⑥有効回答数:四四六票/九九九票(回収率44.6%)

 

⑦調査方法:質問紙を使用した郵送調査

 

⑧調査時期:二〇〇九年一〇月一日~一〇月三一日

 

⑨調査実施者:早稲田大学人間科学学術院アジア社会論研究室

 

対象地域は、上述の通り岐阜県岐阜市である。当地の人口は、二〇一〇年

度において約四二万人であり、その内外国人人口は、約八七〇〇人であ

る(5)。当地には、二〇〇八年七月、大規模なモスクが誕生している。岐阜

大学に程近い田園の中に設立された本モスクは、日本における多くのモスク

が既存物件を購入する形で設立されているのとは違い、「最初から」モスク

として建設されたものである。同時に本モスクは開堂の際、地域社会との連

携をモスクの持つ重要な役割として位置づけている。つまり、モスクは単に

礼拝施設としてのみ機能するのではなく、とりわけ地域との関係性の文脈に

おいて、「文化センター」としての役割も担うことを表明している。調査地

域は、本モスク周辺地区を対象としている(

6)。

 

調査対象者は、上記地区に居住する住民である。サンプリングでは住民基

本台帳を用いた系統抽出法を採用し一〇〇〇名を抽出した(無効一名)。実

査は質問紙を用いた郵送調査法によった。結果、四四六人から回答が得られ

た(回収率44.6%)。回答者の性比は、男性50.0%、女性48.4%(無回答1.6%)で

あり、平均年齢は、48.4歳であった。なお、本稿の分析にあたっては観測変数

に欠損の見られなかった三二二ケースを対象とした。

三・二 分析方法

 

地域社会におけるムスリム・イスラーム意識・態度の実態およびその規定

要因を明らかにするため、構造方程式モデルを用いた分析を実施する。分析

を進めるにあたって、まずムスリム・イスラーム意識・態度に関する変数に

対して、探索的因子分析を行い因子パターンの確認を行う。その結果から、

意識・態度を規定する因子の因果関係の仮定を行う。次に、この因果関係の

検証として、ムスリム・イスラーム態度に関わる構成概念(因子)を従属変

数、他の意識やイメージに関わる構成概念を独立変数群に置き、構造方程式

モデルによる分析を進め、作成したモデルの適合度を確認する。この分析過

程ではQ

uillian

やWike

らによる脅威認知仮説の検証が行われることになる。

続いて、社会経済的属性変数およびムスリムやイスラームに関わる情報への

接触頻度を外生変数としてモデルに投入しそれらの影響の分析を行う。この

分析過程では、B

evelander

らによる個人属性仮説、A

llport

らによる接触仮説

の検証が行われる。以上の構造方程式モデルは、観測変数の背後に因子をお

いた因子分析モデルを基本とし、最終的に提示するモデルは各因子に対する

属性等の影響を表現したモデルの構築を目指す。なお、分析にはSPSS17.0

Am

os17.0

を用いた。

三・三 変数

 

分析には既述の仮説にもとづき、「外国人に関する意識調査」に含まれる

四つの質問項目群を用いる。それぞれの質問項目群は、小内ら(二〇〇六)

による調査項目をベースとして検討した後、ムスリム・イスラーム意識・態

度を問う項目を付け加えて作成した。四つの質問項目群はイスラーム認識、

ムスリムへの態度、外国人との相互理解、外国人による地域の変化を問う以

下の一二の質問で構成されている。それぞれの質問に対する回答は四段階、

あるいは五段階評価で得た(

7)。

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40イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 3(2011.3)

The Factors Influencing Perceptions and Attitudes toward Islam and Muslims in non-Muslim Japanese Community

︻質問項目群︼

 

①イスラーム認識

  「イスラム教は先進的な教えである」

  「イスラム教は寛容な宗教である」

  「イスラム教は平和を重んずる宗教である」

  「イスラム社会は世界社会の重要な一員である」

 

②ムスリムへの態度

  

「日本にムスリム(イスラム教徒)が入ってくることについてどう思い

ますか」

  

「あなた自身は、ムスリム(イスラム教徒)とうまく付き合えると思い

ますか」

 

③外国人との相互理解

  「外国人との交流の機会を豊富にする」

  「住民に対する国際理解教育の充実をはかる」

 

④外国人による地域変化

  「治安が悪くなる」

  「ゴミ捨てなど生活のルールが乱れる」

  「生活環境が悪くなる」

  「日本人の仕事が減る」

四 分析および結果

四・一 質問項目間の関連性

 

分析を進めるにあたって、まず既述のムスリム・イスラーム意識・態度の

測定に用いた一二の変数の相関を確認したところ、それぞれの変数間に有意

な相関が認められた。従って、相関を規定する因子が存在すると仮定できる

ため、主因子法による探索的因子分析を行った(

8)。固有値が一以上の因子

を基準として選択した結果、一二の変数は四つの因子による下位項目群に分

けて捉えられることが確認された(表一)。

 

第一因子は「生活環境が悪くなる」、「ゴミ捨てなど生活ルールが乱れる」、

「治安が悪くなる」、「日本人の仕事が減る」の四変数が高い負荷量を示した

ことから「地域変化イメージ」とした。第二因子は、「イスラム教は寛容な

宗教である」、「イスラム教は先進的な教えである」、「イスラム教は平和を重

因子

1 2 3 4 共通性

生活環境が悪くなる .887 -.022 -.024 .077 .769

ゴミ捨てなど生活ルールが乱れる .822 -.023 .051 .042 .640

治安が悪くなる .799 -.001 -.031 -.008 .659

日本人の仕事が減る .449 .081 .020 -.219 .278

イスラム教は寛容な宗教である .053 .879 .030 -.084 .712

イスラム教は先進的な教えである -.025 .585 .007 .033 .369

イスラム教は平和を重んずる宗教である -.059 .495 -.020 .291 .482

外国人との交流の機会をさらに豊富にする -.036 -.002 .898 -.034 .799

住民に対する国際理解教育の充実をはかる .048 .026 .810 .044 .681

あなた自身は、ムスリムとうまく付き合えると思いますか -.012 -.116 .076 .794 .619

日本にムスリムが入ってくることについてどう思いますか -.025 .065 .054 .599 .448

イスラム社会は世界社会の重要な一員である .029 .142 -.113 .565 .354

因子抽出法:主因子法回転法:Kaiserの正規化を伴うプロマックス法

表1:因子分析結果

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41 イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 3(2011.3)

地域住民におけるムスリム・イスラームに対する意識・態度の規定要因

んずる宗教である」が高い負荷量を示し

た点から、イスラームをどのように認識

しているのかに関わる因子と考え「イス

ラーム認識」とした。第三因子は、「外

国人との交流の機会をさらに豊富にす

る」、「住民に対する国際理解教育の充実

をはかる」の二変数が高い負荷量を示

し、外国人との相互理解に関わる因子で

あることから「相互理解への積極性」と

した。最後に第四因子は、「あなた自身

は、ムスリムとうまく付き合えると思い

ますか」、「日本にムスリムが入ってくる

ことについてどう思いますか」、「イスラ

ム社会は世界社会の重要な一員である」

の三変数が高い負荷量を示し、イスラー

ムやムスリムの受容に関わる因子である

ことから「受容態度」とした。

 

以上の因子分析の結果から、質問項目

選定の段階では「イスラーム認識」に含

まれていた「イスラム社会は世界社会の

重要な一員である」が「受容態度」因子

を構成する変数であることが確認され

た。

 

次に、構造方程式モデルを作成するに

四・二 ムスリム・イスラーム意識・態度の規定要因

 

次に、因子分析で得られた四つの因子を用いて「受容態度」因子を従属変

数とした因果モデルを作成し適合度を確認する。この分析の過程で脅威認知

仮説の検証を行う。

 

図一は作成したモデルのパスに非標準化解を示したパス・ダイアグラムで

ある。パスと係数はすべて統計的に有意である(p<.05

)。まず、このモデル

のデータへの適合を評価する指標として、カイ二乗検定(

9)、適合度指標

(GFI-G

oodness of Fit Index

)(10)、修正適合度指標(A

GFI-A

djusted Goodness of

Fit Index

)、比較適合度指標(C

FI-Com

parative Fit Index

)(11)、平均二乗誤差平

方根(R

MSEA

-Root M

ean square Residul

)(12)

を算出した。その結果、ムスリ

ム・イスラーム受容態度の因果モデルの適合度指標はG

FI=0.95

、AG

FI

0.92

、CFI=0.96

、RM

SEA=0.06

となった。これら評価指標の値は一般的にモ

デル適合の許容範囲内にある。

 

次に、各因子と観測変数との対応についてパス係数の値(関係の強さ)を

確認すると、極端に低い値もなく因子と観測変数との対応は適切である。続

いて、構成概念(因子)間の因果関係についてみると、「相互理解への積極

性」から「受容態度」へのパス係数が0.44、「イスラーム認識」から「受容態

度」へのパス係数が0.54となっている。ここから外国人との相互理解に対して

積極的なほど、またイスラームに対して脅威を感じることなく肯定的なほど

ムスリム・イスラームの受容に寛容であることが確認された。一方で、探索

的因子分析による因子間相関の結果においても「受容態度」と比較的相関が

低かった「地域変化イメージ」との間には有意なパスが引けなかった。

 

次いで個人属性仮説および接触仮説を検証するため、関連する変数のダ

ミー変数化等の処理を行った後、外生変数としてモデルに投入した。モデル

に投入された属性変数は、性別(男性=1)、年齢(実数)、学歴(大学レベ

ル=1)、職業(ホワイトカラー=1)、世帯年収(六〇〇万円以上=1)で

ある。さらに、外国人と交流している場の数を合計した交流得点(標準偏差

±1によって四分割)、イスラームに関する情報を得ているメディア数を合

計した情報接触得点(前記同様)をモデルに投入し仮説の検証を行った。

 

図二は各属性変数の影響を非標準化係数で示したパス・ダイアグラムであ

る。

本モデルの適合度指標はG

FI=0.93

、AG

FI=0.90

、CFI=0.93

RM

SEA=0.06

となった。なお、パスと係数はすべて統計的に有意である

(p<.05

)。

第1因子 第2因子 第3因子 第4因子

第1因子「地域変化イメージ」 1.000 -.121 -.310 -.289

第2因子「イスラーム認識」 -.121 1.000 .237 .491

第3因子「相互理解への積極性」 -.310 .237 1.000 .484

第4因子「受容態度」 -.289 .491 .484 1.000

あたって、因子間で因果関係の構築が可能か否かを検討するため因子間相関

を確認する。相関行列(表二)をみると、第一因子の「地域変化イメージ」

と第二因子の「イスラーム認識」が-0.12、第二因子の「イスラーム認識」と第

三因子の「相互理解への積極性」が-0.24となっており、それぞれの相関係数が

比較的低くなっている。その他の因子間では0.3~0.5程度の相関がある。ここ

で、各因子の因果関係を構築するにあたって、前述のW

ike

らによる仮説を

援用し、第四因子である「受容態度」はその他のイメージや認識に関わる因

子によって規定されていると仮定した。

表2:因子間相関

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42イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 3(2011.3)

The Factors Influencing Perceptions and Attitudes toward Islam and Muslims in non-Muslim Japanese Community

図1:ムスリム・イスラーム受容態度の因果モデル(非標準解)

図2:属性変数を投入したムスリム・イスラーム受容態度の因果モデル(非標準解)

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43 イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 3(2011.3)

地域住民におけるムスリム・イスラームに対する意識・態度の規定要因

 

まず、属性変数について見ると投入した変数のうち、年齢、職業、世帯年

収はムスリム・イスラーム認識や外国人イメージに対して有意な影響が示さ

れなかった。対して、有意な結果が得られた変数は性別、学歴、交流得点で

あった。まず性別については「相互理解への積極性」への係数が0.20となって

おり、男性の方が相互理解への積極性に欠ける傾向にある。次いで、学歴か

らの係数は-0.14であり、高学歴なほど相互理解へは積極的である。最後に交流

得点に関しては、外国人との交流の場を多く持つほど肯定的なイスラーム認

識を抱き(係数は-0.15)、外国人との相互理解にも積極的である(係数は-0.15)。

一方で、情報を得ているメディア数の多寡は有意な影響を及ぼしていないこ

とも明らかになった。

五 考察

 

以上、本分析では、これまでの諸研究で提示されてきたムスリム・イス

ラーム意識・態度を規定する要因に関する仮説を検証してきた。それらは脅

威認知仮説、個人属性仮説、および接触仮説としてまとめられる。以下で

は、本分析結果に基づき各仮説に対する考察を実施する。

 

まず、ムスリム・イスラーム認識によって受容態度が説明されるとする

Quillian

やWike

らによる脅威認知仮説は、因果モデルの検討において「イス

ラーム認識」、「相互理解への積極性」によって「受容態度」を説明するモデ

ルが採択されたことで実証された。また、先述のとおり探索的因子分析によ

る因子間相関の結果においても「受容態度」と比較的相関が低かった「地域

変化イメージ」との間には有意なパスが引けなかった。すなわち、外国人に

よる地域変化とムスリム・イスラーム受容態度は直接的な関係がないことが

示されたことになる。

 

しかし、外国人に起因する地域変化のイメージとムスリム・イスラームの

受容態度との間に関係性が見出される可能性は現段階では排除できない。

 

今回の対象地域は九割の回答者がムスリムとの接触がない地域であった。

従って、ムスリムを含む外国人との接触頻度が高い地域や、ムスリムが当地

域の典型的な外国人として直接的にイメージされる地域、あるいは彼らが当

地の地域変化イメージ形成と密接に関連する状況が見出される場合、本分析

で見出されたモデルは変動する可能性がある。異なる状況下における変動

は、今後検証されるべきものとして提示される。

 

次に、個人属性仮説については、B

evelander

らによって指摘された性別、

居住地、年齢、学歴、社会経済的地位、直接的接触等の諸変数のうち、性

別、学歴、直接的接触とムスリム・イスラーム認識との関連性が示された。

まず、性別については先行研究における知見と同様に、女性の方が外国人と

の相互理解に積極的であり、結果としてムスリム・イスラームの受容に寛容

的であるという結果が得られた。また、学歴についても本分析の結果は高学

歴なほど受容態度が寛容的な傾向を示しており、こうした傾向は先行研究の

知見と一致する。一方で、本分析においては年齢や社会経済的地位である収

入がイスラーム・ムスリム意識・態度に有意な影響力をもたないとする結果

が得られている。以上の結果から、居住地との関連性の検討も含めて複数地

域において継続して本仮説の検証を行う必要性が示唆される。

 

最後に、A

llport

らによって指摘された接触仮説について考察を加える。本

仮説について分析結果は、ムスリムに限らず外国人との直接的交流の場を多

く持つほど肯定的なムスリム・イスラーム認識を抱いていると示しており、

先行研究の知見を支持する結果が得られた。また、直接的接触はムスリム・

イスラーム認識のみに影響を及ぼすのではなく、直接的接触の頻度が高いほ

ど外国人との相互理解にも積極的であり前向きな地域変化のイメージをもっ

ていることが明らかになった。これらの結果は、外国人との接触や交流が外

国人に対する寛容性を増加させるという接触仮説を補うものである。しか

し、直接的接触が外国人との相互理解への積極性とイスラーム認識に影響を

及ぼし、結果として受容態度を規定するという本分析から得られた知見は、

接触仮説の影響過程を明らかにしており、先行研究の知見をより精緻化した

ものであると考えられる。一方で、情報を得ているメディア数の多寡は有意

な影響を及ぼしていないことも明らかになった。このことに関しては、先述

したように松本の研究で情報摂取量が高いほどムスリム・イスラームに対し

て否定的認識を抱くと報告されている点を踏まえなければならない。地域変

化のイメージと受容態度との関連性や年齢、収入といった属性要因の検証と

同様に、より複数の知見を検証可能な枠組みを構築する必要性があるだろ

う。六

 おわりに

 

本研究の目的は、日本におけるムスリム・コミュニティと地域社会との関

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44イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 3(2011.3)

The Factors Influencing Perceptions and Attitudes toward Islam and Muslims in non-Muslim Japanese Community

係性に関する研究の蓄積が十分に進んでいない現状を鑑みつつ、地域社会に

おけるムスリム・イスラーム意識・態度の規定要因を明らかにすることで

あった。本稿では、これまで日本の諸研究において断片的にしか検討されて

こなかった種々の規定要因を統合的見地から分析に組み込んで検討を実施し

た。その結果、本稿で得られた知見は、前節のように提示されるが、同時に

本知見は「日本のイスラーム」研究領域における、日本社会(非ムスリム社

会)の側を対象とする研究の傍証として寄与するものとして位置づけられ

る。従って、今後はより精緻なモデル構築を実施していくと同時に、他地域

を含め継続して仮説の検証を実施していくことが課題となる。

 

また、本稿の分析における限界も指摘しておく必要がある。本稿における

分析の限界の一つとして、外国人調査の範疇での分析である点が挙げられ

る。本調査は、外国人に関する調査として設計されており、そのうえで住民

の意識を問う構造となっている。ゆえに、イスラームあるいはムスリムに関

する項目についても外国あるいは異文化のものとしてしか分析・解釈できな

いという構造上の限界を有する。従って、今後日本人ムスリムを含めた日本

のイスラーム社会と非ムスリム社会との関係性を問う枠組みを構築する必要

があるだろう。

 ︻付記︼

本論は、平成二一~二三年度日本学術振興会科学研究費補助金(基盤C)・課題番号

21530567

「滞日ムスリムの生活世界における多文化政策の影響と評価」による研

究成果の一部である。

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﹇二〇一一年一月一〇日閲覧﹈

︻註︼

(1)早稲田大学多民族・多世代社会研究所客員研究員

(2)早稲田大学人間総合研究センター客員研究員

(3)本質問項目のオリジナルはStouffer

(一九五五)による。「M

uslin Extremist

」は

二〇〇八年より選択肢として追加されたものである。

(4)松本自身は、高校生を対象とした考察を行っているが、一般の日本人のイスラー

ムに対する否定的イメージの形成状況についても、過剰に流布する一面的情報の

影響を推測している(松本二〇〇六

二〇二)。但し、そもそも「イスラームに対

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46イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 3(2011.3)

The Factors Influencing Perceptions and Attitudes toward Islam and Muslims in non-Muslim Japanese Community

する否定的イメージ」を「一般の日本人」のどの程度が抱いているかについて

も、この研究を含め十分に検討されていない。

(5)「岐阜市役所人口統計

地区別世帯数及び人口(月別)」による。

(6)地域社会における相互交流の必要性は、ムスリム側からも提起されている。モス

クを「文化センター」として、地域住民との交流を促進する場として位置づける

試みがなされている。バーブ・アル=イスラーム岐阜モスクでは、盛大な開所式

が催されたが、その際来賓として、各国の大使等が招かれるとともに、日本側の

来賓として、県副知事のほか、地域の保育園園長、自治会長などが招かれた。モ

スクの理事長によるスピーチでは、日本社会との交流の場としてのモスクの意義

が語られ、モスクを日本社会との窓口として機能させる意図が表明された。

(二〇〇七年七月二七日、同モスク開所式において筆者ら収集)。

(7)イスラーム認識に関する質問項目は「一.とてもそう思う」~「四.まったくそ

う思わない」の四段階評価、ムスリムへの態度に関する質問項目のうち、「日本

にムスリム(イスラム教徒)が入ってくることについてどう思いますか」は「一.

非常に賛成」~「五.非常に反対」の五段階評価、「あなた自身は、ムスリム(イ

スラム教徒)とうまく付き合えると思いますか」は「一.とてもそう思う」~

「四.まったくそう思わない」の四段階評価、外国人との相互理解に関する質問

項目は「一.非常に賛成」~「四.非常に反対」の四段階評価、外国人による地

域変化は「一.とてもそう思う」~「四.まったくそう思わない」の四段階評価

で回答を得た。

(8)回転法は因子間の相関を確認するためプロマックス回転を用いた。

(9)カイ二乗検定:モデルがデータと完全に適合している場合には値が0となる。

(10)GFI

:回帰分析におけるr二乗と同様に、モデルがデータに完全に適合している

場合に値が1となる。

(11)CFI

:独立モデルを0、飽和モデルを1として現在のモデルのM

ax

(カイ二乗値

︱自由度、0)の相対的な位置を表す。0.95以上で良好、0.9以下は適合が悪い。

(12)RM

SEA

:標本数と自由度で基準化したカイ二乗統計量。0~0.05であれば良好、

0.1以上は適合が悪い。