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有機化学3 H26 年度補足事項 1 補足事項 ○Grignard 反応の有用性 フェニル Grignard 試薬に限定すれば、ベンゼン環上にアニオンが発生しているのだから、各種求電子剤を 添加すれば、その間で炭素炭素結合が新たに生成する訳だから非常に有用である。 求電子剤:アルデヒド、ケトン、エポキシド、二酸化炭素、酸素、水、アルコール等。 (強力に不活性化された基質では 反応が進行しない) ○Grignard 反応の限界(Limitation) 活性種が炭素アニオンであることから、H 2 O はもちろんのこと、-OH, -NH 2 , -SH 等の活性水素が存在する基 質は本反応には使用できないので注意して下さい。また、基質上に同じ部位が複数ある時は一部分だけの制 御できない。 ○Friedel-Crafts 反応の限界 求核剤(置換する方)となる芳香族化合物は、ハロベンゼン以上の求核性を持っていないと反応しない。 ニトロ基等のような強い電子求引性基(不活性基)は反応を阻害する。 カルボン酸(R-COOH)を用いても Friedel-Crafts 反応は進行しない。 ○ベンジル位での反応性 トルエンを利用 1) ルイス酸+ハロゲンで、ベンゼン環上にハロゲンが導入される。 2) ハロゲン存在下での光照射あるいは NBS, NCS 存在下での加熱で選択的にベンジル位がハロゲン化。 OH H MgBr COOH CH 2 CH 2 OH CH 2 OH C OH CH 2 CH 3 H 3 C C OH CH 3 H O 2 CO 2 O HC O H CH 3 CCH 2 CH 3 O H 2 O, ROH CH 3 CHO Grignardの有用性 COCl O 2 N O 2 N O AlCl 3 AlCl 3 O 2 N ClOC Friedel-Craftsの選択性 CH 3 X 2 , hν CH 2 X X 2 / FeX 3 CH 3 X ベンジル位でのハロゲン化 Friedel-Crafts or NBS NCS NBr O O NCl O O NBS NCS

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有機化学3 H26 年度補足事項

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補足事項 ○Grignard 反応の有用性 フェニル Grignard 試薬に限定すれば、ベンゼン環上にアニオンが発生しているのだから、各種求電子剤を添加すれば、その間で炭素̶炭素結合が新たに生成する訳だから非常に有用である。 求電子剤:アルデヒド、ケトン、エポキシド、二酸化炭素、酸素、水、アルコール等。 (強力に不活性化された基質では 反応が進行しない) ○Grignard 反応の限界(Limitation) 活性種が炭素アニオンであることから、H2O はもちろんのこと、-OH, -NH2, -SH 等の活性水素が存在する基質は本反応には使用できないので注意して下さい。また、基質上に同じ部位が複数ある時は一部分だけの制御できない。 ○Friedel-Crafts 反応の限界 求核剤(置換する方)となる芳香族化合物は、ハロベンゼン以上の求核性を持っていないと反応しない。 ニトロ基等のような強い電子求引性基(不活性基)は反応を阻害する。 カルボン酸(R-COOH)を用いても Friedel-Crafts 反応は進行しない。 ○ベンジル位での反応性 トルエンを利用 1) ルイス酸+ハロゲンで、ベンゼン環上にハロゲンが導入される。 2) ハロゲン存在下での光照射あるいは NBS, NCS 存在下での加熱で選択的にベンジル位がハロゲン化。

OHH

MgBrCOOH

CH2CH2OH

CH2OHCOH

CH2CH3H3C

COH

CH3H

O2

CO2

O

H CO

HCH3CCH2CH3

O

H2O,ROH

CH3CHO

Grignardの有用性

COClO2N

O2NO

AlCl3

AlCl3

O2N ClOC

Friedel-Craftsの選択性

CH3X2, hν

CH2XX2 / FeX3

CH3X

ベンジル位でのハロゲン化Friedel-Crafts

or NBS NCS

NBr

O

O

NCl

O

ONBS NCS

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有機化学3 H26 年度補足事項

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○SN2 における溶媒効果 求核剤(CN-)が攻撃するので、この求核剤の反応性を上げる(活性化する)。 ではどうするか? → 非プロトン性溶媒(DMSO, DMF, HMPT, CH3CN 等)によりカチオンを捕捉してやればアニオンの自由度が上がり、反応性が増す(メタノール等のプロトン性極性溶媒よりも反応が100万倍も早く進行する)。 → 要はカチオン捕捉を促進する溶媒を用いる。 ○SN1における溶媒効果 遷移状態での基質の電荷分散が大きい。よって脱離したアニオン分子(ハロゲン等)をプロトン性溶媒(メタノールや水)で捕捉してやれば、カチオン生成が促進され(活性化エネルギーの減少)、反応性が大幅に向上する。→ 要はアニオン捕捉を促進する溶媒を用いる。 たかが溶媒、されど溶媒。テストの時は間違えないように。 ○アルコール誘導体からアミン誘導体への系統的な合成変換法 Hoffmann 転位:第1級アミドは、強塩基存在下、ハロゲン添加により転位反応を起し、第1級アミンに変換することができる。 還元アミノ化反応:アルデヒド、アミンから系中にイミンを発生させ、還元剤の添加により第1級アミンを合成する方法。 ○Williamson エーテル合成 非プロトン性溶媒(カチオン捕捉)が良い。

但し、立体障害の少ない1級のハロゲン化アルキルに限定される。2級以上の場合は、E2 脱離反応との競争反応になる。

CH2X

DMSO

NaCNKCN

CH2CN非プロトン性溶媒 → 加速プロトン性溶媒 → 減速

R Br + BrR Br R+OH

CH3プロトン性溶媒によるアニオントラップ

反応性の向上

R Br + CNNa+

CH3 S CH3O

O

反応性の向上

OH

BrNaOH

DMSO O

CH2OH

KMnO4 SOCl2

OH

O

Cl

O

NH2

ONH2

PBr3CH2Br

K2Cr2O7

H

O

CH2CN CH2CH2NH2

NH3CH2NH2

NH3, H2 / Ni

or NH3, NaBH3CNCH2NH2

炭素数1つ減少

炭素数1つ増加

炭素数同等

炭素数同等

NaCN

DMSO

Br2, NaOH

H2O

NH3

H2O

H2 / Ni

or LiAlH4 / Et2O

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有機化学3 H26 年度補足事項

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○2-ヒドロキシカルボン酸誘導体の合成 ○保護基の役割 脱保護が容易なことが必須。芳香族求電子置換反応の選択性の向上や置換基数の制御に寄与。ルイス酸の配位による不活性化を緩和。 ○ニトロ基からアミノ基を経てハロゲンへの変換 ニトロ化 → 還元 → ジアゾ化 → ザンドマイヤー反応 講義ではアニリン経由が抜けていたので注意して下さい。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ○反応の矢印の上下にどう書くかという質問ですが、特に決まりがある訳ではありません。一般には、上に反応試薬、下に反応条件を記載します。例の様に分り易く書いてもらえれば OKです。 これらはどれも可です。 ○試験の答案には逆合成解析は必要有りません。実際の合成ルートのみ記載して下さい。

CHONaCN, NaHSO3

H2O

CH CNOH

H3O+ CH COOHOH

2-ヒドロキシカルボン酸誘導体(防腐効果)

NH2 HN CH3

O

O

H3C O CH3

OAc2O

Br2

AcOH

HN CH3

ONH21) H3O+ / Δ

2) NaOH / H2OAc2O

ルイス酸の配位

保護(protection)

脱保護(deprotection)Br Br

NH2

Br2 / AcOH

Br Br

Br

HN CH3

O

Br

84%

100%

OH OCH3Ι / NaOH

CH3

HΙ / Δ

保護

脱保護

NO21) SnCl2 / H3O+ NaNO2 / HCl aq

< 5 ˚C

NH2

2) NaOH aq.

N2ClCuX

X

aniline

HNO3 / H2SO4NO2 HNO3

H2SO4

NO2NaNO2 / HCl aq

< 5 ˚C

NH2 N2Cl