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土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
-積算基準書のインテリジェント化-
建設情報研究所 首席研究員
村椿 良範
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
【目 次】
1. 積算システムセンターの業務概要 ....................................................................................1
2. 研究の背景と目的 .........................................................................................................2
2.1. 当センターの積算業務を取り巻く状況変化(背景) ................................................................. 2
2.2. 研究目的 ...................................................................................................................... 4
3. 研究の内容 ..................................................................................................................5
3.1. 積算基準書インテリジェント化の有用性判断の要件確認 ........................................................ 5
3.2. 積算基準書インテリジェント化の効果とケーススタディ ............................................................ 6
4. 積算基準書インテリジェント化の有用性判断の要件確認 ......................................................7
4.1. 積算基準書の概要 ......................................................................................................... 7
4.1.1. 主な積算基準書類 ................................................................................................ 7
4.1.2. 本研究で対象とする積算基準書 .............................................................................13
4.2. 積算基準書が受発注者間でバイブルとして位置づけられている要件確認 ................................13
4.2.1. 予定価格の作成と設定方法 ...................................................................................13
4.2.2. 積算基準書に係わる主な通達等 ............................................................................14
4.2.3. まとめ ................................................................................................................16
4.3. 他のバイブルの基準書に比べて積算基準書は頻繁に改定されている要件確認 ........................17
4.3.1. 各基準書の行政上の位置づけ ...............................................................................17
4.3.2. 各基準書の改定履歴からみた積算基準書の特徴 ......................................................18
4.3.3. まとめ ................................................................................................................20
4.4. 積算基準書が新たな業務場面での活用も想定される要件確認 ..............................................21
4.4.1. 業務場面洗い出しの視点 ......................................................................................21
4.4.2. 積算基準書が活用される業務場面 .........................................................................21
4.4.3. 各業務場面の概要 ...............................................................................................22
4.4.4. まとめ ................................................................................................................25
4.5. 複数の業務場面で積算基準書の記載項目が共通的に活用される要件確認 .............................25
4.5.1. 積算基準書の全体構成 ........................................................................................26
4.5.2. 対象とする積算基準書の分野 ................................................................................31
4.5.3. 積算基準書の記載項目と業務場面との関係整理 ......................................................31
4.5.4. まとめ ................................................................................................................33
4.6. まとめ ..........................................................................................................................34
5. 積算基準書インテリジェント化の効果とケーススタディ ........................................................ 34
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
5.1. 積算基準データの年度改定作業の期待される効果 .............................................................35
5.1.1. 改定手順の比較 ..................................................................................................35
5.1.2. 新たな改定手順の定性的な評価 ............................................................................36
5.2. 積算基準データのケーススタディ ......................................................................................37
5.2.1. インテリジェント化のデータ形式 ..............................................................................37
5.2.2. ケーススタディの実施 ...........................................................................................37
5.3. まとめ ..........................................................................................................................40
6. 最後に ...................................................................................................................... 41
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
1
1. 積算システムセンターの業務概要 積算システムセンター(以下、「当センター」という)は、昭和 60年の当財団設立当初から国土
交通省及び、地方公共団体の積算業務支援を目的として、図 1-1に示す業務に取り組んでいる。
国土交通省関係は、①各地方整備局等における積算システムの定常的な運用・管理、②土木工事標
準積算基準書(以下、「積算基準書」という)等の年度改定に対応した積算システム改良・積算基準
データ改定の他、③新たな積算方式の制度設計等に係わる調査の三つの業務に大別される。
一方、地方公共団体関係は、国土交通省の受託業務経験を活かし、地方公共団体向けに開発した
④Web 版積算システムの運用・管理、⑤国土交通省の積算基準書等に基づく積算基準データを提供す
る二つの業務から成っている。
当センターが取り組んでいる積算システム ※1及び積算基準データ ※2は、工事等の発注案件に対す
る予定価格・調査基準価格の算出や契約図書の一つである工事数量総括表の作成の他、契約後におけ
る設計変更あるいはスライド設計額の算出等の役割を担っており、公共工事の円滑な事業執行に欠
かせないものである。
そのため、国土交通省における積算方式あるいは契約方式の変更、更に、本研究で取り上げる積算
基準書の年度改定内容を適確に反映できるようにすべく、積算システムの改良や積算基準データの
改定等を継続的に実施してきている。
図 1-1 積算システムセンターの業務概要
※1:積算システムとは、工事発注の契約図書・予定価格等を算出する処理機能を有するもの
※2:積算基準データとは、上記システムが理解できるように積算基準書等をデータ化したもの
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
2
2. 研究の背景と目的 当センターでは、国土交通省が毎年改定する積算基準書の改定内容を限られた期間内に積算シス
テムあるいは積算基準データへ適確に反映する年度改定作業を主要な業務として位置づけている。
そのため、本研究で取り上げた積算基準書は、当センターの業務遂行上、欠かすことのできない存
在となっている。積算基準書の特徴としては、公共調達における土木工事の積算分野では受発注者の
間でバイブルとして位置づけられている他、予算決算及び会計令第 80 条「予定価格の設定方法」を
受けて取引の実態を反映すべき毎年改定されることである。
2.1. 当センターの積算業務を取り巻く状況変化(背景) 当センターにおける国土交通省ならびに地方公共団体への積算業務支援にあたっては、積算業務
を取り巻く状況変化に的確に対応する必要がある。
現在、その状況変化としては、先般の改正品確法への対応や最近の工事入札実態の他、適正な工期
設定等が挙げられ、下記の積算基準書の年度改定対応作業の迅速化・正確性保持の他、新たな業務場
面への対応が求められているものと考えている。
(1)積算基準書の年度改定対応作業の迅速化(改正品確法への対応)
先般の改正品確法の「発注関係事務の運用に関する指針」では、特に、地方公共団体に対して、最
新の積算基準書の適用を求めている(表 2-1参照)。
そのことは、当センターにおける積算基準書の年度改定に伴う積算システムの改良あるいは積算
基準データの改定作業等の迅速化が求められることになる。
表 2-1 発注関係事務の運用に関する指針
(2)積算基準書の年度改定対応作業の正確性保持(企業が予定価格等を高い精度で類推)
積算基準書が広く一般に公表されていることから、応札する各企業は予定価格・調査基準価格を高
い精度で類推している実態がうかがえる。表 2-2に、予定価格・調査基準価格を入札後に公表してい
る工事入札結果の一例を示す。応札企業 9社のうち、8社については調査基準価格と同額で入札して
おり、このことから工事価格を千円、あるいは万円単位の精度で類推している。予定価格・調査基準
価格の算出にミスがあると、入札公告の中止・訂正、あるいは契約取り消し等により事業執行に大き
な支障を来すことになる。
当然のことではあるが、予定価格等の算出にミスが生じないよう積算基準書の年度改定に伴う積
算システムあるいは積算基準データに対して正確性の保持が常に求められことになる。
Ⅱ.発注関係事務の適切な実施について
(2)工事発注準備段階
(適正利潤の確保を可能とするための予定価格の適正な設定)
予定価格の設定に当たっては、・・・・・・・・・・・現場の実態に即した施工条件を踏まえた上
で最新の積算基準書を適用する。
積算に用いる価格が実際の取引価格と乖離しないよう・・・・・。さらに、最新の施工実態や地域
特性等を踏まえて積算基準を見直すとともに、遅延なく適用する。
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
3
表 2-2 各企業が予定価格・調査基準価格を類推している工事入札事例
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
4
(3)新たな業務場面への対応
現在、国土交通省では、政府の働き方改革や I-Constructionを背景に、適正な工期設定に資する
工期設定支援システムの運用及びそのシステムの高度化に向けた取り組みがなされている。この取
り組みは、これまで当センターが取り組んできている積算業務支援から見て新たな業務場面として
位置づけられる。工期設定支援システムには、本研究で取り上げた積算基準書の内容を取り込んでい
るため、積算基準書の年度改定毎にシステム反映が必要になる。
なお、新たな業務場面への対応という観点からは、上記の他、将来的には CIMとの積算システムの
連携等も考えられる。
2.2. 研究目的 (1)本研究の着眼点
上述のように、当センターが取り組んでいる積算システムや積算基準データ等の積算業務に関し
ては、これまで以上に、積算基準書の年度改定に迅速に対応するとともに正確性の保持が求められる。
更に、これら従前の定常業務に加えて、適正な工期設定等の新たな業務場面への取り組みも必要とな
る。
そのため、本研究では、国土交通省が毎年改定する積算基準書の改定内容が積算システム・積算基
準データはもとより、複数の業務場面でコンピュータシステムに反映されることに着眼する。
(2)研究方針と期待される効果
現在、当センターにおける積算システムあるいは積算基準データの年度改定作業は、紙媒体の積算
基準書をもとに人の目で改良(改定)情報を抽出し、既存のシステムプログラムあるいはデータに対
して手作業により必要な修正を加えている。そのため、年度改定作業に際しては、多大な時間と労力
を費やしている。
そこで、研究方針としては、積算分野に係わる複数の業務場面で積算基準書の規定内容を取り入れ
たコンピュータシステムが利用されていることを前提に、紙媒体の積算基準書自体をコンピュータ
システムで処理(理解)可能なインテリジェント化を検討する。ここで言うインテリジェント化とは、
積算基準書自体にコンピュータシステムによる最適な制御が可能となるよう高度の知識を持たせる
ことである。なお、本研究のケーススタディでは CALS/ECで推奨された XML形式により、標準的な記
述方式に基づきデータ化する。
積算基準書のインテリジェント化により、各業務場面でインテリジェント化された積算基準書デ
ータの共有化が図られ、積算基準書の年度改定対応作業の迅速化、正確性保持という効果が期待され
るとともに、適正な工期設定等の新たな業務場面をも視野に入れることで、積算関連業務の全体最適
化に繋がるものと考える。
なお、本研究は下記の項目に沿って実施する。
①積算基準書インテリジェント化の有用性判断の要件確認
②積算基準書インテリジェント化の効果とケーススタディ
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
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3. 研究の内容 本研究の実施内容は以下のとおりである。図 3-1に実施手順を示す。
図 3-1 実施手順
3.1. 積算基準書インテリジェント化の有用性判断の要件確認 約 800 頁から構成される積算基準書自体をインテリジェント化するには、時間とコストが必要に
なる。そこで、インテリジェント化のケーススタディに先がけて、それによる有用性を判断するため
の要件として以下を設定し、それら要件の事前確認を行う。
◆要件 1:積算基準書が受発注者間でバイブルとして位置づけられていること
◆要件 2:他のバイブルの基準書に比べて積算基準書は頻繁に改定されていること
◆要件 3:積算基準書が新たな業務場面での活用も想定されていること
◆要件 4:複数の業務場面で積算基準書の記載項目が共通的に活用されていること
①積算基準書インテリジェント化の有用性判断の要件確認
①-2要件2:他のバイブルの基準書に比べて積算基準書は頻繁に改定されていること
積算基準書のインテリジェント化を意識した積算基準書の記載項目と上記要件3の業務場面
との関係を整理する。
①-1要件1:積算基準書が受発注者間でバイブルとして位置づけられていること
積算基準書のインテリジェント化を意識した業務場面を洗い出しする。
◆現行の業務場面(例えば積算システム改良時、積算基準データ改定時等)
◆インテリジェント化による新たな業務場面
②積算基準書インテリジェント化の効果とケーススタディ
②-1:積算基準データの年度改定作業の期待される効果
現行との対比による適用のイメージ及び期待される効果を概観する。
②-2:ケーススタディ
◆インテリジェント化のデータ形式はXML形式
◆積算基準書(XML形式)のデータ改定による積算基準データの自動生成
積算基準書自体をインテリジェント化するには、時間とコストが必要になる。そこで、その有効
性を判断するための要件として以下を設定する。
積算基準書が公共調達においてバイブルとして位置づけされていることを実証するために
以下の整理を行う。
◆予算決算及び会計令の規定(予定価格の作成及び決定方法)
◆中建審が建設大臣に対して積算基準書の公表を建議
◆国土交通省における積算基準書に係わる主な通達
土木工事積算以外の分野の基準書として道路橋示方書を取り上げ、積算基準書との改定
履歴を比較整理する。
①-3要件3:積算基準書が新たな業務場面での活用も想定されるここと
①-4要件4:複数の業務場面で積算基準書の記載項目が共通的に活用されていること
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
6
(1)積算基準書が受発注者間でバイブルとして位置づけられていること(要件1)
本研究における積算基準書のインテリジェント化は、積算基準書自体が公共調達の土木工事積算
の分野においてバイブルとして位置づけられていることが前提条件となる。この項では、積算基準書
の公開に至る背景等を含め、何故、積算基準書が土木工事積算の分野でバイブルであるかを確認する。
①予算決算及び会計令(第 79条:予定価格の作成、第 80条:予定価格の決定方法)
②昭和 58 年 3 月 16 日付け中央建設業審議会会長から建設大臣への建議「建設工事に係る工事費
の積算基準の公表について」
③国土交通省における積算基準書に係わる主な通達
(2)他のバイブルの基準書に比べて積算基準書は頻繁に改定されていること(要件2)
土木分野では多くのバイブルとして位置づけられている基準書が存在する。基準書の改定頻度が
低いと、それ自体をインテリジェント化しても活用される機会が少なく、それによる有用性は殆ど無
いものと考えている。
そこで、土木工事積算以外の分野でバイブルとして位置づけられている道路橋示方書を取り上げ、
本研究で取り上げた積算基準書の特徴を両者の改定履歴に着目し比較整理する。
(3)積算基準書が新たな業務場面での活用も想定されること(要件3)
本研究では、「2.研究の背景と目的」で記載したとおり、コンピュータ利用による業務形態を前提
として、各業務場面で活用するコンピュータシステムに直接的あるいは間接的に活用可能となるよ
うな積算基準書自体のインテリジェント化に着眼している。
積算基準書の活用場面が、当センターにおける積算システム改良や積算基準データ改定の定常業
務に加えて、インテリジェント化による新たな業務場面での活用に広がれば積算関連業務の全体最
適化という点から望ましいと考えられる。
そこで、現行の業務場面の他、積算基準書のインテリジェント化による新たな業務場面を洗い出し
する。
(4)複数の業務場面で積算基準書の記載項目が共通的に活用されること(要件4)
定常業務では、業務場面毎に必要となる積算基準書の改定情報を人の目で取得している。インテリ
ジェント化された積算基準書データを核として、各業務場面で共通的に活用されればその効果は大
きいと考えられる。
そこで、積算基準書の共通編を対象に積算基準書の記載項目と上記の要件 3 との関係を整理する。
その際、インテリジェント化されたデータの共有化という観点から、複数の業務場面で活用される積
算基準書の記載項目に注視する。
3.2. 積算基準書インテリジェント化の効果とケーススタディ 本研究におけるケーススタディの業務場面としては、当センターの主要業務に位置づけている積
算基準データの年度改定作業を取り上げる。
(1)積算基準データの年度改定作業の期待される効果
積算基準データの年度改定作業に対して、現行手順との対比による活用イメージ及び期待される
効果を概観する。
(2)ケーススタディ
本研究でのインテリジェント化のデータ形式は、CALS/ECで推奨された XML形式を想定する。
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
7
ケーススタディでは、事前準備として、例えば、改定前の積算基準書(ある歩掛の記載内容)を XML
化する。XML化したデータに年度改定の内容を修正することにより、改定内容に沿った積算基準デー
タが自動生成されることを目標とする。
4. 積算基準書インテリジェント化の有用性判断の要件確認 本研究は、当センターの積算関連業務を遂行する上で、欠かすことのできない積算基準書に対して、
そのインテリジェント化を取り上げた。このインテリジェント化を実現するためには、先ずは、それ
による有用性を事前確認する必要があると考えた。
本項では、「3.研究の内容」で掲げた 4つの要件に対する有用性の確認結果を示す。なお、確認
結果に先がけて積算基準書の概要を以下に記載する。
4.1. 積算基準書の概要
4.1.1. 主な積算基準書類 主な積算基準書等を以下に列記する。これらは信号機の色で表現されることもある。
なお、積算基準書類のうち「設計業務等標準積算基準書」については、調査設計等のコンサルタン
ト業務等の予定価格の算出に適用するものであり、本研究では対象外とする。
①土木工事標準歩掛(俗に言う「黄本」)
②土木工事標準積算基準書(俗に言う「赤本」)
③設計業務等標準積算基準書(俗に言う「青本」)
(1)土木工事標準歩掛(一般公開)
「土木工事標準歩掛」は、昭和 58 年 3月 16日付け中央建設業審議会会長より、積算基準類の公表
の建議を受けて、国土交通省のホームページから広く一般に公開されているものである。発注者は予
定価格の算出に、受注者は見積もりに活用するものであり、受発注間における共通的な積算基準書と
して位置づけられる。
この基準書は以下の URLから入手できる。
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/constplan/sosei_constplan_tk_000024.html
(2)土木工事標準積算基準書(閲覧)
「土木工事標準積算基準書」は、国土交通省の積算担当者が、国土交通省所有の新土木工事積算シ
ステムにより積算する際に活用するものである。この基準書の記載内容は、上記(1)の「土木工事
標準歩掛」に加えて、新土木工事積算システムへの入力条件(例えば、価格の変動要因である積算条
件の J条件)等を追記したものであり、言わば国土交通省の新土木工事積算システムの入力説明書の
意味合いを持っている。会計検査院は、国土交通省及び地方公共団体における国庫補助の各事業に対
しては、この基準書に基づき検査を実施している。
当センターにおける国土交通省からの受託業務は、この基準書に基づき「土木工事標準積算基準書」
の年度改定に対応する積算システムの改良あるいは積算基準データの改定作業を行っている。
なお、この基準書は国土交通省では閲覧の扱いになっているが、都道府県に対しては各地方整備局
から参考送付されており、都道府県における公共調達の土木工事積算の分野でバイブルの基準書と
して位置づけられている。また、調査会からは新土木工事積算システムの入力条件等に係わる記載内
容を削除したものを国土交通省大臣官房技術調査課監修の図書として「国土交通省土木工事標準積
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
8
算基準書 各年度版」として発刊している。
[参考:①土木工事標準歩掛と②土木工事標準積算基準書の記載内容の比較]
現在、国土交通省における施工歩掛は、歩掛と施工パッケージに大別される。歩掛は、各機
械・労務・材料の規格名とその数量又は人工で表現するものである。一方、施工パッケージは、
東京 17区を基準とする標準単価(○○円/単位数量)とそれを構成する機械・労務・材料の各
構成比率及び代表規格名で表現するものである。
ここでは、「歩掛」のひび割れ補修工、「施工パッケージ」の現場溶接鋼桁補強工を事例とし
て、「土木工事標準歩掛」と「土木工事標準積算基準書」とを対比したものを表 4-1と表 4-2に
示す。同表より、新土木工事積算システムの入力説明書に相当する「土木工事標準積算基準書」
には、新土木工事積算システムへの入力項目として「施工単価入力基準表」が追記されているこ
とがわかる。
(3)設計業務等標準積算基準書(一般公開)
この基準書は調査設計等のコンサルタント業務等に適用されるものであり、以下の URL から入手
できる。この基準書は本研究の対象外であるため詳細は割愛する。
http://www.mlit.go.jp/tec/gyoumukankei.html
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
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表 4-1 基準書類の記載内容の対比(歩掛:ひび割れ補修工の一例)(1/2)
⑦-3 ひび割れ補修工 ⑫-4 橋梁補修工(ひび割れ補修工(充填工法))
1.充 て ん 工 法1-1 適用範囲 1.適 用 範 囲
1-2 施工概要 2.施 工 概 要
(注)本歩掛で対応しているのは,実線部分のみである。 (注)本歩掛で対応しているのは,実線部分のみである。
1-3 編成人員 3.編 成 人 員 ひび割れ補修工(充てん工法)の編成人員は,次表を標準とする。 ひび割れ補修工(充てん工法)の編成人員は,次表を標準とする。
1 2 1
表3.1 編 成 人 員土木一般世話役 特殊作業員 普通作業員
(人/橋)
1 2 1
土木工事標準歩掛(黄本) 土木工事標準積算基準書(赤本)
本資料は,橋梁のひび割れ補修における1橋当りの充てん作業(ひび割れ延長300m以下) に適用する。
施工フローは,下記を標準とする。
図2-1 施工フロー
本資料は,橋梁のひび割れ補修における1橋当りの充填作業(ひび割れ延長300m以下)に 適用する。
施工フローは,下記を標準とする。
図2-1 施工フロー
表3.1 編 成 人 員 (人/橋)土木一般世話役 特殊作業員 普通作業員
足 場 設 置
ひび割れ面のカット
ひび割れ部の清掃
プライマー塗布
仕 上 げ
足 場 撤 去
コ ン ク リ ー ト 殻
積込み・運 搬・処 分
足 場 設 置
ひび割れ面のカット
ひび割れ部の清掃
プライマー塗布
仕 上 げ
足 場 撤 去
コ ン ク リ ー ト 殻
積込み・運 搬・処 分
充てん材の充てん 充てん材の充てん
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
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表 4-1 基準書類の記載内容の対比(歩掛:ひび割れ補修工の一例)(2/2)
1-4 施工歩掛 4.施 工 歩 掛1-4-1 1橋当り施工日数[ひび割れ補修工(充てん工法)] 4-11橋当り施工日数[ひび割れ補修工(充てん工法)]
ひび割れ補修工(充てん工法)の1橋当り施工日数(D)は次による。 ひび割れ補修工(充てん工法)の1橋当り施工日数(D)は次による。D=0.035×L+0.63 D=0.035×L+0.63
D:1橋当り施工日数(日/橋) D:1橋当り施工日数(日/橋)L:1橋当りの延べ施工量(m/橋) L:1橋当りの延べ施工量(m/橋)
(注)1.施工日数Dは小数点第3位を四捨五入し,小数点第2位止めとする。 (注)1.施工日数Dは小数点第3位を四捨五入し,小数点第2位止めとする。2.歩掛は,全ての施工方向に適用できる。 2.歩掛は,全ての施工方向に適用できる。3.現場条件により特殊な養生が必要な場合は,別途考慮する。 3.現場条件により特殊な養生が必要な場合は,別途考慮する。4.コンクリート殻の積込み・運搬及び処分費は別途計上する。 4.コンクリート殻の積込み・運搬及び処分費は別途計上する。5.足場等については,現場条件を考慮の上,別途計上する。 5.足場等については,現場条件を考慮の上,別途計上する。
1-4-2 諸雑費 4-2諸雑費
1-5 単価表 5.単 価 表(1)ひび割れ補修工(充てん工法)1橋当り単価表 (1)ひび割れ補修工(充てん工法)1橋当り単価表
(注)1.D:1橋当り施工日数(日/橋) (注)1.D:1橋当り施工日数(日/橋)2.必要量とは,材料ロス分を含む。 2.必要量とは,材料ロス分を含む。
6.施工単価入力基準表(1)ひび割れ補修工(充てん工法)
(注)
2.材料単価(Y-0800007)[円/kg]を単価登録すること。
4.上下線等分離されている橋梁については,分離単位毎を1橋とする。
計諸 雑 費 式 1 表4.1
充 て ん 材 材 料 費 kg 必要量計上(注)2普 通 作 業 員 〃 1×D 〃特 殊 作 業 員 〃 2×D 〃土 木 一 般 世 話 役 人 1×D 表3.1
名 称 規 格 単 位 数 量 摘 要
表4.1 諸 雑 費 率 (%)諸雑費率 25
諸雑費は,各作業に必要な器具(サンダー等),替え刃,プライマー材料費及び電力 に関する費用等であり,労務費の合計額に次表の率を上限として計上する。
土木工事標準歩掛(黄本) 土木工事標準積算基準書(赤本)
土 木 一 般 世 話 役規 格 数 量
1×D
25諸雑費率(%)表4.1 諸 雑 費 率
名 称
諸雑費は,各作業に必要な器具(サンダー等),替え刃,プライマー材料費及び電力 に関する費用等であり,労務費の合計額に次表の率を上限として計上する。
諸 雑 費計
単 位人〃〃kg式
1×D2×D
WB436010施工歩掛コード
施工歩掛コード WB436010 施工単位 橋
表4.1必要量計上(注)2 〃 〃表3.1
摘 要
1充 て ん 材 材 料 費
特 殊 作 業 員普 通 作 業 員
1.J1条件は,1橋当りの延べ施工量(m/橋)を入力する。ただし,300m/橋 以下とする。
3.J2条件は,材料ロス分を含む必要量を入力する。材料単位が異なる場合は, kgに換算すること。
施 工 区 分
1橋当りの延べ施工量
(m)(実数入力)
J1 J2
1橋当りの材料使用量
(kg)(実数入力)
入 力 条 件
各 種
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
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表 4-2 基準書類の記載内容の対比(施工パッケージ:現場溶接鋼桁補強工の一例)(1/2)
⑬ 橋梁補修工(現場溶接鋼桁補強工) ⑫-3 橋梁補修工(現場溶接鋼桁補強工)
1.適 用 範 囲 1.適 用 範 囲
2.施 工 概 要 2.施 工 概 要
(注) 本施工パッケージで対応しているのは,二重実線部分のみである。 (注) 本施工パッケージで対応しているのは,二重実線部分のみである。
3.施工パッケージ 3.施工パッケージ3-1 現場溶接鋼桁補強 3-1 現場溶接鋼桁補強
(1)条件区分 (1)条件区分 現場溶接鋼桁補強における積算条件区分はない。 現場溶接鋼桁補強における積算条件区分はない。 積算単位はmとする。 積算単位はmとする。
(注) (注)
溶接延長=(S2×L)/36 溶接延長=(S2×L)/36S:脚長 (mm) S:脚長 (mm)L:実溶接延長(m) L:実溶接延長(m)
2.すみ肉溶接の脚長が6mmの場合を標準とするが,これ以外の場合は次 式により溶接延長を算出する。
土木工事標準歩掛(黄本) 土木工事標準積算基準書(赤本)
本資料は,橋梁補修工のうち,桁補強を目的とする部材取付等の現場溶接作業に適用する。 なお,亀裂補修は含まない。
施工フローは,下記を標準とする。
1.鋼桁補強における補剛材,ガセットプレート等の入力による取付及び 被覆アーク溶接(ビード仕上げを含む)の他,電力に関する経費,電気 溶接機,ディスクグラインダの損料及び溶接棒の材料費の費用等,その 施工に必要な全ての機械・労務・材料費(損料等を含む)を含む。
本資料は,橋梁補修工のうち,桁補強を目的とする部材取付等の現場溶接作業に適用する。 なお,亀裂補修は含まない。
施工フローは,下記を標準とする。
1.鋼桁補強における補剛材,ガセットプレート等の入力による取付及び 被覆アーク溶接(ビード仕上げを含む)の他,電力に関する経費,電気 溶接機,ディスクグラインダの損料及び溶接棒の材料費の費用等,その 施工に必要な全ての機械・労務・材料費(損料等を含む)を含む。2.すみ肉溶接の脚長が6mmの場合を標準とするが,これ以外の場合は次 式により溶接延長を算出する。
3.トラッククレーン,ウィンチ,レバーブロック等の機械を使用して取 付ける場合は別途計上する。4.取付部材(補剛材,ガセットプレート等)の製作及び材料費は,別途 計上する。
3.トラッククレーン,ウィンチ,レバーブロック等の機械を使用して取 付ける場合は別途計上する。4.取付部材(補剛材,ガセットプレート等)の製作及び材料費は,別途 計上する。
足 場 の 設 置
部 材 の 製 作
塗 装 の 除 去
部 材 取 付
現 場 溶 接 工
補 修 塗 装
足 場 の 撤 去
足 場 の 設 置
部 材 の 製 作
塗 装 の 除 去
部 材 取 付
現 場 溶 接 工
補 修 塗 装
足 場 の 撤 去
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
12
表 4-2 基準書類の記載内容の対比(施工パッケージ:現場溶接鋼桁補強工の一例)(2/2)
(2)代表機労材規格 (2)代表機労材規格
下表機労材は,当該施工パッケージで使用されている機労材の代表的な規格である。 下表機労材は,当該施工パッケージで使用されている機労材の代表的な規格である。
3-2 足場工 3-2 足場工 「第Ⅱ編第5章⑨-1足場工」による。 「第Ⅱ編第5章⑨-1足場工」による。
4.施工単価入力基準表(1)現場溶接鋼桁補強
(注)1.設計数量は,すみ肉溶接で脚長6mmに換算した延長を記入すること。2.取付部材の製作及び材料費については,別途計上する。
Z2Z3Z4
材料
土木工事標準歩掛(黄本) 土木工事標準積算基準書(赤本)
表3.1 現場溶接鋼桁補強 代表機労材規格一覧表3.1 現場溶接鋼桁補強 代表機労材規格一覧
機械
項目
R1
労務
K3
R2R3R4Z1
K2K1
-
-
備考代表機労材規格--
--
橋りょう特殊工橋りょう世話役
--
--
パッケージコード CB431910 施工単位 m
S1市場単価
項目 代表機労材規格 備考
機械K1 -K2 -K3 -
労務
R1 橋りょう特殊工
R2 橋りょう世話役
R3 -
R4 -
市場単価 S1 -
材料
Z1 -Z2 -Z3 -Z4 -
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
13
4.1.2. 本研究で対象とする積算基準書 本研究の目的の一つが、当センターの重要な業務として位置づけている国土交通省における積算
基準類の年度改定に適確に対応すべき、積算システムの改良あるいは施工歩掛等の積算基準データ
の改定作業を効率化することを狙ったものである。
そのため、本研究で対象とする積算基準書としては、上記の年度改定対応の作業に不可欠な以下を
対象とする。
[本研究で対象とする積算基準書]
なお、地方公共団体に提供している Web 版土木積算システムの改良や XML 形式による積算基準デ
ータの改定の各作業についても、国土交通省から都道府県に参考送付される同基準書を JACIC ユー
ザから貸与を受けて実施している。
4.2. 積算基準書が受発注者間でバイブルとして位置づけられている要件確認 公共土木工事の調達では、標準的な建設会社が標準的な施工方法等により、発注者が契約図書(数
量総括表、特記仕様書、図面等)で明記する工事目的物を完成させることを前提に積算した予定価格
を上限としている。
ここで、予定価格の作成とその設定方法については、予算決算及び会計令で規定されており、又、
予定価格を作成するための積算については、本研究で取り上げた積算基準書にもとづき算出するこ
とになっている。なお、この積算基準書については、中央建設業審議会会長の建議(昭和 58年 3月
16 日)を受けて、旧建設省が広く一般に公表することを関係機関に発出(昭和 58 年 3 月 31 日)し
たという経緯がある。
本項では、上記を整理することで積算基準書の位置づけ、即ち、積算基準書が受発注者の間でバイ
ブルとして位置づけられていることを明らかにする。
4.2.1. 予定価格の作成と設定方法 国の公共調達においては、発注者は競争入札に付する事項の予定価格を仕様書、設計書等によって
作成しなければならず(「予定価格の作成」予算決算及び会計令第 79 条)、予定価格を上回る価格
での落札を認めていない(「上限拘束性」会計法第 29 条の 6第 1 項)。なお、予定価格は「取引の
実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければ
ならない」(「予定価格の設定方法」予算決算及び会計令第 80条)とされている。
以下に、予定価格の作成及びその設定方法を明文化している「予算決算及び会計令」、参考として
予定価格の上限拘束性を明文化している「会計法」を記す。
土木工事標準積算基準書(国土交通省 平成 29 年度版)
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
14
[予定価格の作成:予算決算及び会計令第 79条]
[予定価格の設定方法:予算決算及び会計令第 80条]
[参考]予定価格の上限拘束性:会計法第 29条の 6第 1項
4.2.2. 積算基準書に係わる主な通達等 (1)予算決算及び会計令第 80条と積算基準書との関係 本研究で取り上げる積算基準書は、前述の予算決算及び会計令第 80条の「取引の実例価格、需給
の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならない」とい
う規定を受けて、国土交通省が実務的に基本となる公共土木工事積算の基準として定めたものであ
る。
それに係わる国土交通省の通達は以下のとおりである。
○土木請負工事工事費積算要領の制定について(昭和 42年 7月 20日、建設省官技発第 34号)
及び土木請負工事工事費積算基準の制定について(昭和 42年 7月 20日、建設省官技発第 35
号)
○土木工事標準歩掛について(昭和 58年 2月 2日、建設省機発第 37号)
前者の通達による基準は、工事積算の基本となる工事費の構成(図 4-1 参照)及び費目の内容の
他、全体工事費のうちの間接工事費(共通仮設費・現場管理費)及び一般管理費等の算定について規
定している。
一方、後者は全体の工事価格のうちの直接工事費の積算に必要な施工歩掛の通達であり、工種毎の
積算に必要な労務、材料、機械器具費等の歩掛(所要量)に関する標準的な値を定めたものである。
一般に、歩掛と施工パッケージを総称して施工歩掛という。
契約担当官等は、その競争入札に付する事項の価格を当該事項に関する仕様書、設計書等
によって予定し、その予定価格を記載し、又は記録した書面をその内容が認知できない方法
により、開札の際これを開札場所に置かなければならない。
予定価格は、競争入札に付する事項の価格の総額について定めなければならない。ただ
し、一定期間継続してする製造、修理、加工、売買、供給、使用等の契約の場合において
は、単価についてその予定価格を定めることができる。
予定価格は、契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履
行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならない。
契約担当官等は、競争に付する場合においては、政令の定めるところにより、契約の目的
に応じ、予定価格の制限の範囲内で最高又は最低の価格をもつて申込みをした者を契約の相
手方とするものとする。
(以下、省略)
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
15
図 4-1 工事費の構成(一般土木の一例)
(2)積算基準書類の公表 昭和 58年 3月 16日、中央建設業審議会は、建設工事の入札制度の合理化対策として、当時の建設
省に対し「積算基準の公表」を建議している。これを受けて、旧建設省では昭和 58年 3月 31日付け
で「工事費の積算基準書の公表について」を関係機関に通知し、現在に至っていることは前述のとお
りである。
1)中央建設業審議会の建議
積算基準の公表に係わる建議の内容及びそれによる効果は以下のとおりである。
[中央建設業審議会 建議(抜粋):昭和 58年 3月 16日]
[積算基準公表の効果]
①積算基準類の客観性、妥当性を世に問うことができる。
②各工種の労務、材料、機械器具費等の歩掛や間接工事費(共通仮設費、現場管理費)、一般管
理費等の算定方法を提供することで、全ての入札参加者によるより的確な見積もりに資するこ
とができる。
③公共工事積算の仕組みや内容が国民に公表されることにより、行政の透明性が確保される。
請負工事費
工事価格
消費税等相当額
工事原価
一般管理費等
直接工事費
間接工事費
共通仮設費
現場管理費
純工事費
-建設工事の入札制度の合理化対策等について-
(省略)
2.予定価格、最低制限価格
(省略)
(2)積算基準の公表
受注に際しての適正な競争を確保するためには、予定価格が的確に設定されるとともに、受注
者が的確な見積もりを行うことが基本である。
このため、積算の基本的な考え方や標準歩掛等の積算基準をできる限り公表し、積算基準その
ものの妥当性を世に問うとともに、受注者によるより的確な見積もりに資し、あわせて、開かれた行
政への要請に応えることが必要である。
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
16
2)国土交通省(旧建設省)の通達
国土交通省(旧建設省)が、中央建設業審議会の建議を受けて、関係機関に発出した通達は以下の
とおりである。
4.2.3. まとめ このように、本研究で取り上げた積算基準書は、公共調達に際しての発注者における予定価格の算
出、あるいは受注者における的確な見積もりに不可欠な位置づけとなっており、受発注者間の共通的
な存在となっている。
本項は以下のように要約でき、積算基準書が公共調達の土木工事積算の分野においてバイブルと
して位置づけられていることが明らかである。
①予定価格を上回る価格での落札を認めない「会計法第 29条の 6第 1項」の上限拘束性の縛り
の下、予定価格の作成とその設定方法が「予算決算及び予決令第 79条、同第 80条」で定め
られている。
[工事費の積算基準の公表]
建設省官技発第 173号
昭和 58年 3月 31日
関係機関 あて
建設事務次官
工事費の積算基準の公表について
標記については、昭和 58 年 3 月 16 日付けで中央建設業審議会会長から建設大臣に対し建
議がなされたところであるが、建設省においては、この趣旨に沿い、直轄工事に係る標準的な
工事費の積算基準の公表について、下記により実施することとしたので、遺憾のないよう措置
されたい。
記
1.公表の対象とする図書の範囲
建設省直轄工事の予定価格設定のための設計金額の積算に用いる積算基準に関する図書で
次に掲げるもの
(1)積算要領等
工事費の構成、費目の区分及び内容、算定方法並びに算定の根拠とする資料等で工事費の積
算に一般的に共通するものを定めたもの
(2)標準歩掛
はん用的な各種の工法において標準的に用いられる機械、労働力、材料等の組合せ、当該組
合せによる標準的な生産能力、当該工法の標準的な適用範囲を定めたもの
(3)建設機械経費算定の標準的な基準
(4)間接工事費算定のための乗率の標準的な基準
2.公表図書の決定
公表する工事費の積算基準に関する図書(以下「公表図書」という。)は、1に基づき本省
の工事費の積算基準の作成に係る主務課(技術調査室を含む。以下「主務課」という。)の長
が別に定めるものとする。
3.公表の方法及び場所
公表図書は、主務課において閲覧に供する。
なお、地方建設局も公表図書を備え置き、閲覧に供するものとする。
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
17
②積算基準書は、前記①の予定価格の設定方法(「予算決算及び予決令第 80条」)を受けて、国
土交通省が公共調達に係わる予定価格を設定するために、施工形態動向調査や諸経費動向調
査等による取引の実例価格・需要の状況等を踏まえ、実務的に基本となる標準を定めたもの
である。
③中央建設業審議会が旧建設省に対し、上記②の積算基準書の公表を建議した理由の一つが
「受注者によるより的確な見積もりに資す」ということから、今日の受発注間における共通
的なバイブルのものとして位置づけられている。
4.3. 他のバイブルの基準書に比べて積算基準書は頻繁に改定されている要件確認 土木分野では多くのバイブルの基準書が存在するが、その改定頻度が低いと、それ自体をインテリ
ジェント化しても活用される機会が少なく、それによる有用性は殆ど無いものと考えている。
ここでは、土木工事積算以外の分野から代表的な基準書(技術基準)として橋梁分野の道路橋示方
書を取り上げ、「4.2.積算基準書が受発注者間でバイブルとして位置づけられている要件確認」の整
理結果を基に、両者の行政上の位置づけを体系的に整理する。次に、道路橋示方書に比べ、特に積算
基準書の特徴的なものとして両者の改定履歴に着目し、その比較整理を行う。
4.3.1. 各基準書の行政上の位置づけ (1)道路橋示方書の行政上の位置づけ
図 4-2(a)は、我が国の道路設計基準の体系である。道路橋示方書は、法律の道路法「第 30条 道
路の構造の基準」、それを受けての政令の道路構造令「第 35 条 橋、高架の道路等」等により、最
終的には「橋・高架の道路等の技術基準について(道路橋示方書)」(都市局長、道路局長)として
通達が発出されている。
当然ながら行政上の位置づけが明確になっており、橋・高架等の調査・設計・施工・維持管理は、
この「道路橋示方書」に基づき実施され、橋梁分野ではバイブルの技術基準として位置づけられてい
る。
図 4-2(a)道路橋示方書の行政上の位置づけ
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
18
(2)積算基準書の行政上の位置づけ
図 4-2(b)は、本研究で取り上げる積算基準書の行政上の位置づけを体系的に整理したものであ
る。「4.2.1予定価格の作成と設定方法」で記載しているが、予定価格は、「予算決算及び会計令第
79 条 予定価格の作成」の定めに従って作成されるものである。更に、その価格算定に関しては、
「予算決算及び会計令第 80 条 予定価格の作成方法」で、「予定価格は、契約の目的となる物件ま
たは役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短などを
考慮して適正に定めなければならい」とされている。
これを受けて、国土交通省では、実務的に基本となる積算の基準として、積算基準書を定め関係機
関に通知している。
更に、中央建設業審議会会長から当時の建設大臣に「工事費の積算基準の公表について」の建議が
なされたのを受けて、当時の建設省がその旨を関係機関に通知し、現在に至っている。
これにより、本研究で取り上げた積算基準書は、公共調達の土木工事積算の分野おいて、バイブル
として位置づけらていることが明らかである。また、広く一般に公開されていることで受発注者間の
共通的な存在となっている。
図 4-2(b)積算基準書の行政的な位置づけ
4.3.2. 各基準書の改定履歴からみた積算基準書の特徴 前項では、比較対象とした道路橋示方書及び本研究で取り上げる積算基準書ともに、行政上の位置
づけが明確化され、いずれもその分野においてバイブルの基準書であることが実証された。
ここでは、積算基準書の特徴的なものを見出すため、両者の改定履歴に着目する。
(1)道路橋示方書の改定履歴
図 4-3(a)は、1990 年以降の道路橋示方書の改定履歴である。道路橋示方書は技術の知見や社会
情勢の変化等により適宜必要な改定が実施されている。過去 30 年の改定履歴を見ると、技術の知見
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
19
等による全面的な改定は約 10 年サイクルとなっている。全面改定以外の部分改定は、社会情勢の変
化等への対応として、1993 年には大型車両対応(20Tから 25T)、1996 年には兵庫県南部地震対応
(設計地震動を兵庫県南部地震の地震動に規定変更等)がある。
ここでは、詳細は省略するが、同種の道路土工に係わる道路土工指針や河川分野の河川砂防技術基
準についても、その全面的な改定サイクルは道路橋示方書のそれとほぼ同じである。
図 4-3(a)道路橋示方書の改定履歴
(2)積算基準書の改定履歴
図 4-3(b)は、過去 5 年間の積算基準書の改定履歴の中から、当センターの定常的な主要業務と
して位置づけている積算基準データの改定作業に直接関係する一般土木の施工歩掛(歩掛(積上げ)・
施工パッケージ)に対して整理したものである。
当然ながら、「予算決算及び会計令第 80 条 予定価格の設定方法」を受けて、日々刻々と変化す
る市場取引の実態を反映するために、毎年、施工歩掛が改定されている。全施工歩掛に対する改定件
数の割合は、年度でばらつきが見られるが、平均で約 17%程度である。特に、2016 年度は改定率で
30.5%、件数で 510件にも上っている。
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
20
図 4-3(b)積算基準書の改定履歴
4.3.3. まとめ 上述の結果は、以下のように要約でき、積算基準書のインテリジェント化の有用性の一つを確認す
ることができる。
①道路橋示方書では、約 10年サイクルで全面改定され、それに対応する各種設計等を支援する
コンピュータシステムもそれに合わせて改良されることを考えた場合、道路橋示方書自体を
インテリジェント化しても意味がない。それに比べて、本研究で取り上げた積算基準書は年
度改定の頻度が極めて高く、土木分野における各種基準類の中でも類を見ない大きな特徴と
いえる。
②このことは、本研究の目的である積算基準書自体をインテリジェント化することにより、当
センターにおける定常的(積算システム改良や積算基準データ改定)な年度改定作業の迅速
化・正確性の保持に大きな効果が期待できるものと考えている。
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
21
4.4. 積算基準書が新たな業務場面での活用も想定される要件確認 本研究は、前述のとおり、コンピュータシステムが理解できるインテリジェント化された積算基準
書データを土木工事積算に係わる各業務場面(それを支援するシステム)で共有化することを狙った
ものである。
当センターの定常業務である積算システム改良時あるいは積算基準データ改定時での活用に加え
て、積算基準書のインテリジェント化による新たな業務場面での活用に広がると積算関連業務の全
体最適化に繋がる。
本項では、これまでの業務経験等を踏まえ、新たな業務場面をも視野に入れ、どの業務場面で積算
基準書が活用されるかを整理する。
4.4.1. 業務場面洗い出しの視点 土木工事積算等に係わる業務場面の洗い出しに際しては、これまでの当センターにおける国土交
通省あるいは地方公共団体への積算業務支援の経験等から、以下に示す二つの立場に分類する。
ここで言う、管理者サイドとは、土木工事積算等に係わるシステム等を整備する役割を担っており、
一方、積算担当者サイドとは、整備された各種システム等を実業務において利活用することを指す。
①管理者サイドの立場
②積算担当者サイドの立場
4.4.2. 積算基準書が活用される業務場面 積算基準書は、建設市場等の状況変化に的確に対応すべき、毎年、その改定が実施されることは前
述のとおりである。
そのため、管理者が整備する積算システム(積算基準データを含む)及び工期設定支援システムの
改良等に際しては、積算基準書の適用が必須となる。また、積算担当者においては、当該工事の予定
価格を算出する積算作業時に、当該の施工歩掛の適用範囲や歩掛等の人工確認等に積算基準書を参
照している。
表 4-3は、これまでの実態を踏まえ、管理者サイド及び積算担当者サイドにおいて、積算基準書が
活用されている具体的な場面を整理したものである。ここで、同表における「積算基準書が活用され
る具体的な業務場面」とは、年度改定された積算基準書の改定内容の反映が必要となる業務場面を指
す。
なお、表 4-3における①~④については、これまでの当センターにおける経験実績から洗い出しし
たものであり、⑤については CIM の動きに対応すべき、将来的な積算システムの高度化を意識したも
のである。但し、現時点においては⑤に対して具現化すべき情報等が皆無に近いため、本研究では参
考として位置づけする。
表 4-3 積算基準書が活用される業務場面
分 類 積算基準書が活用される具体的な業務場面 備 考
管理者
①積算システムの改良時
②積算基準データの改定時
③工期設定支援システムの改良時
-
積算担当者 ④積算作業時に参照 -
その他 ⑤3D-CAD による積算システムの高度化(仮
称)
施工手順、適用できる現場条件
等を教師データとして活用
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
22
4.4.3. 各業務場面の概要 以下では、積算基準書の記載項目と各業務場面との関係整理を行う前に、各業務場面の概要を整理
する。
(1)積算システムの改良時及び積算基準データの改定時
管理者サイドのうち、積算担当者が予定価格等を算出するために活用する広義の積算システムに
ついては、「積算システムの改良時」と「積算基準データの改定時」とに区分する。その理由として
は、積算基準データは、データ化の基となる積算基準書が毎年改定されるため、メンテナンスの容易
化を考慮し、積算システム上でのプログラム化をせず、両者を分離していることからである(図 4-4
参照)。
この分離方式は、国土交通省の新土木工事積算システムや JACIC が地方公共団体に提供している
Web版土木積算システムの他、大手ベンダーの積算システムも同じである。
図 4-4 積算基準データと積算システムの分離構造
①積算システムの改良時
積算システムは、表 4-4に示すとおり、入力機能、処理機能及び出力機能に区分される。
積算システムの改良は、積算制度の変更に伴うものと積算基準書の改定に伴うものとに大別され
る。
前者の積算制度に関しては、例えば、総価契約単価合意方式や施工箇所点在型の積算方式に対応す
るシステム改良等が挙げられる。但し、これらの積算の方式に関しては積算基準書にも記載されてい
る。
一方、後者の積算基準書に関しては、間接工事費(現場管理費、共通仮設費)の率式、施工地域補
正、一般管理費等の率式の他、間接工事費の率式を適用する主たる工事区分の区分判別等である。こ
れらは、図 4-1で示した工事費の構成のうち、間接工事費及び一般管理費等に該当する。その他の共
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
23
通事項としては、計算処理に係わる数値の端数処理の規定がある。
なお、本研究は、主として後者を想定している。
表 4-4 積算システムの主要機能の概要
機能区分 主な処理機能
入力 ・鏡入力
・設計内訳書、単価表の諸条件の入力
・その他、各種帳票の入力 など
処理 ・積み上げ計算処理(直接工事費、間接費の率)
・単価、基準適用年月の各処理
・当初設計、合意設計、変更設計、スライド等の各処理
・随契調整、施工箇所点在の各処理 など
出力 ・数量総括表、設計内訳書、単価表の出力
・請負代金内訳書、単価合意書の出力
・スライド関係帳票の出力
・見積もり参考資料の出力 など
②積算基準データの改定時
積算基準データとは、積算基準書(主として施工歩掛)及び工事工種体系ツリー等を積算システム
が処理(理解)できるようにデータ化したものである(表 4-5参照)。そのデータ化に際しては、積
算システムが処理できることが前提になることから、それに対する記述ルールが定められている。
本研究におけるケーススタディでは、積算基準書に係わる積算基準データを対象とする。
なお、JACIC が地方公共団体に提供している XML形式による積算基準データの記述ルールについて
は、「土木積算基準データ -仕様解説書-」として広く一般に公開しており、以下の URL から入手
できる。
http://www.sekisan01.jacic.or.jp/top/pdf/201705_V6.0_Data_doboku.pdf
表 4-5 積算基準データの概要
データ区分 主なデータ項目
基準データ ・工事工種体系(工事工種体系ツリーに基づき、事業区分(レベル 0、工事区分
(レベル 1)、工種(レベル 2)、種別(レベル 3)、細別(レベル 4)からな
る)
・細別情報(細別(レベル 4)の単価を構成する歩掛の標準的な組合せの集合体
であり、規格(レベル 5)、積算要素(レベル 6)は設問(Q条件)として定
義)
・施工歩掛(単価表を生成するためのデータであり、施工に関するものの他、機
械運転単価表も含む)
・間接工事費率(共通仮設費、現場管理費、一般管理費等の率データ)
基礎単価デ
ータ
・材料(材料、市場単価、土木工事標準単価、仮設材等の名称、コード、規格、
単位等)
・労務(労務の名称、コード、単位等のデータ。労務構成比(割増対象賃金比
等)を含む)
・機械損料、機械賃料(建設機械等の名称、コード、規格、単位等のデータ。機
械損料は建設機械等算定表の 15欄を含む)
表 4-5の積算基準データのうち、積算基準書よりデータ化するものとしては、主に基準データのう
ちの施工歩掛データである。施工歩掛データは、表 4-1及び表 4-2に示した積算基準書の「施工単価
入力基準表」及び単価表を基に作成する。これらは、図 4-1で示した工事費の構成のうち、直接工事
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
24
費に該当する。また、直接工事費とは直接関係しないが、積算の違算防止という観点から、施工歩掛
の中には適用範囲で規定される高さの範囲、あるいは厚みの範囲と言った数値をデータ化し、積算担
当者の入力値と比較するために上下限値をデータ化しているものもある。
(2)工期設定支援システムの改良時
政府の働き方改革や i-Construction等において、発注者における工期設定の適正化が求められて
いる。国土交通省では、平成 29年 4 月より、工期設定支援システムを適用し、発注案件の工期設定
の検討に活用している。このシステムについては、AI 技術を導入し、更なる高度化の検討がなされ
ている。
工期設定支援システムは、当該工事における施工歩掛毎の実作業日数の算出及び全体工事の工程
表(施工順序)等を自動作成するものである。このシステムにおける当該施工歩掛の実作業日数の算
出に必要な日当たり施工量、及び施工歩掛から構成される各細別の施工手順は、積算基準書に記載さ
れているものをデータ化している。
なお、JACICにおける地方公共団体向けの Web 版土木積算システムに対しても、標準的な機能とし
てこのシステムとの連携を予定している。
(3)積算作業時での参照
積算基準書は、積算担当者が積算作業時に入力する際のマニュアルとしての意味合いを持ってい
る。積算担当者は、積算システムの操作時、あるいは作成した設計書をチェックする際に、必ず積算
基準書を参照する。
積算基準書の参照の仕方としては、紙媒体の積算基準書を直接手に取る方法や PDF 化された積算
基準書をパソコン上の画面で確認する方法が取られているようである。
なお、JACICが地方公共団体に提供している Web 版土木積算システムでは、そのシステムに PDF化
された積算基準書を取り込む機能を有しており、積算担当者は積算作業時に必要情報を積算システ
ム上で参照することが可能となっているが、実装している事例は極めて少ない。
(4)3D-CAD による積算システムの高度化(仮称)
現在、国土交通省では、3D-CADと数量集計表との連携について研究がなされている。
数量集計表は、平成 8年、国土交通省が公共土木工事の契約・積算に関して、透明性及び客観性の
確保、国際化への対応など、契約上の改善を図るとともに、発注者・受注者双方の実務担当者の業務
の簡素化・容易化を目的に整備した「新土木工事積算大系」の根幹とも言える「工事工種の体系化」
に沿ったものである。
以下では、3D-CADによる数量集計表と積算システムの連携の方向性を概観する。
・先ずは、3D-CADから「工事工種の体系化」に沿った数量集計表を生成する。例えば、新
設道路に係わる3D-CADの場合は、土工、舗装、橋梁・トンネル、擁壁、函渠等の土工構
造物、排水構造物、道路付属施設等の情報があり、それらの数量、規格等を「工事工種の体系
化」に準拠した数量集計表を出力する。
・出力される数量集計表のデータ形式は、CSVあるいはXMLとするが、出力されたデータは
直接積算システムに取り込むことは出来ない。
・この段階でのデータは、当該路線を完成させるための情報であり、発注ロッドは考慮されてい
ない。更に、積算時に必要となる個々の現場条件の情報が不足している。そのため、数量集計
表を核とする積算システムの半自動化を行うためには以下の処理等が必要となる。
・CSVあるいはXML形式で出力される数量集計表データを積算システムへ取込可能(理解)
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
25
となるよう、データのコンバート処理が必要となる。
・発注ロッド毎にデータを分離あるいは抽出する処理も必要となる。
・積算で必要となる施工歩掛(歩掛、施工パッケージ)を絞り込むための条件や絞り込み後の積
算条件(積算基準書の「施工単価入力基準表」のJ条件)を付加する必要がある。
以上のような積算システムと数量集計表との連携を一つの業務場面と考えた場合、積算基準書か
ら取得すべき記載項目として以下が考えられる。
①施工歩掛(歩掛、施工パッケージ)の適用範囲
②施工歩掛(歩掛、施工パッケージ)の入力条件表(J条件)
上記以外として、将来的ではあるが CIMとの積算システムの連携等も想定される。以下はそのイメ
ージである。
[参考]現行の積算制度を前提として、工事現場の現地情報及び工事目的物の完成情報等の3Dの
CAD データをもとに、フロントローディングを意識しつつ、3D の各工事目的物に積算基準書で規定
する日当たり施工量・標準的な施工手順・各施工手順に対応する施工歩掛を属性情報として保持し、
各工事目的物の施工手順を3Dでシミュレーションすることが可能であれば、その結果から工期設定
に必要な工程情報や土木工事積算に必要となる数量・規格・施工歩掛等の積算情報が得られことも可
能と考えられる。
4.4.4. まとめ 以上のように、積算基準書をインテリジェント化することにより、下記の業務場面で共有化が図さ
れ、積算関連業務の全体最適化に寄与できるものと考える。
なお、下記の業務場面のうち、①②については当センターにおける定常業務、③~⑤は新たな業務
場面として大別できる。
①積算システムの改良時
②積算基準データの改定時
③工期設定支援システムの改良時
④積算作業時での参照
⑤3D-CADによる積算システムの高度化(仮称)
4.5. 複数の業務場面で積算基準書の記載項目が共通的に活用される要件確認 前項では、積算基準書が活用される業務場面として、定常業務に加えて、新たな業務場面での活用
の可能性もあることが明らかとなった。しかし、各業務場面で活用する積算基準書の記載項目が単独
であればインテリジェント化の有用性は薄いものと考えられる。
本項では、積算基準書の全体構成及び本研究で対象とする積算基準書の分野を整理し、それを踏ま
えて、各業務場面で積算基準書の記載項目が共通的に活用される場面数を整理することにより、イン
テリジェント化による有用性を確認する。
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
26
4.5.1. 積算基準書の全体構成 国土交通省が策定している一般土木の積算基準書は、表 4-6に示すとおり、共通編(第Ⅰ編総則・
第Ⅱ編共通工)、第Ⅲ編河川、第Ⅳ編道路の四編から構成されている。一般土木以外には公園、機械
編と電気設備編とがあるが、ここでは省略する。
表 4-6 積算基準書(一般土木)の全体構成
積算基準書の構成 記載概要
共通編 第Ⅰ編総則
(第 1章~第 14章)
第 1章の総則を含め全 14章から構成されている。
・工事費算出の基本となる工事費の構成
・間接工事費の算定方法
・日当たり施工量及び契約上の条件明示項目
・その他、積算制度に係わる施工箇所点在及び総価契約方式等
第Ⅱ編共通工
(第 1章~第 5章)
一般土木の共通的な工種に対する直接工事費に相当する施工
歩掛(歩掛、施工パッケージ)等に関して、全 5章(①土工、
②共通工、③基礎工、④コンクリート工、⑤仮設工)から構成
されている。
工種毎の記載項目は以下のとおりである(歩掛を例として)。
・適用範囲
・施工概要(施工フロー)
・構成人員
・施工歩掛
・単価表
・施工単価入力基準表
第Ⅲ編河川(第 1章~第 4章) 河川工種に対する直接工事費に相当する施工歩掛(歩掛、施工
パッケージ)等に関して、全 4章(①河川海岸、②河川維持工、
③砂防工、④地すべり防止工)から構成されている。
工種毎の記載項目は以下のとおりである(歩掛を例として)。
・適用範囲
・施工概要(施工フロー)
・構成人員
・施工歩掛
・単価表
・施工単価入力基準表
第Ⅳ編道路(第 1章~第 7章) 道路工種に対する直接工事費に相当する施工歩掛(歩掛、施工
パッケージ)等に関して、全 7章(①舗装工、②付属施設、③
道路維持修繕工、④共同溝工、⑤トンネル工、⑥道路除雪工、
⑦橋梁工)から構成されている。
工種毎の記載項目は以下のとおりである(歩掛を例として)。
・適用範囲
・施工概要(施工フロー)
・構成人員
・施工歩掛
・単価表
・施工単価入力基準表
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
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(1)共通編
共通編は、第Ⅰ編総則の他、河川、道路等の各分野で共通的に適用する工種を第Ⅱ編共通工として
取り纏めている。以下では、第Ⅰ編総則と第Ⅱ編共通工の記載概要を記述する。
①第Ⅰ編総則
共通編の第Ⅰ編総則の記載概要は表 4-7のとおりである。なお、同表の備考欄に第Ⅰ編総則の規定
内容と積算システムあるいは積算基準データとの関係を示す。
表 4-7 第Ⅰ編総則の記載概要(1/2)
章 記載概要 備 考
第 1章 総則 ・標準積算基準書の適用範囲
・請負工事の工事費構成
・体系ツリーに新規間接費が追加
された場合等に設計内訳書の表示
位置の変更対応[積算システム]
・体系ツリーとの整合性確保[積
算基準データ]
第 2章 工事費の積算 ・直接工事費(材料費、歩掛、労務費、直接
経費等)算出の基本的な考え方
・間接工事費の構成及び共通仮設費・現場管
理費の各算定率の他、共通仮設費の積み上げ
分の積算方法・施工単価入力基準表
・端数処理・単価補正・間接費(共
通・現場)の計算式等の整合性確
保[積算システム]
・地域補正及び間接費の算定率が
頻繁に改定[積算システム]
第 3 章 一般管理費等
及び消費税相当額
・一般管理費等の算定率及び一般管理費等入
力基準表
・一般管理費等の計算式との整合
性確保[積算システム]
第 4 章 随意契約によ
り工事を発注する場合
の間接工事費等の調整
及びスライド条項の減
額となる場合の運用に
ついて
・共通仮設費、現場管理費及び一般管理費等
の調整
・旧基準を改正基準で工事を追加する場合の
調整
・スライド条項の減額となる場合の運用
・単品スライド条項の運用
・単品スライド条項の運用の拡充
・単品スライド条項の運用(単品スライド条
項)の運用
・随意契約調整計算・スライド条
項の全般との整合性確保[積算シ
ステム]
第 5章 数値基準等 ・数値基準
・数量総括表への条件明示
・契約上の単位・単位数量及び契
約上の条件明示項目との整合性確
保[積算基準データ]
第 6 章 建設機械運転
労務等
・建設機械運転労務
・原動機燃料消費量
・機械運転単価表
・一般事項
ベースとなる緑本(建設機械損料)
の計算式との整合確保[積算シス
テム]
・損料は 2 年に一度に改定[積算
基準データ]
第 7 章 土木請負工事
の特許使用料の積算
・土木請負工事の特許使用料の積算 -
第 8 章 時間的制約を
受ける公共土木工事の
積算
・時間的制約を受ける公共土木工事の積算 ・補正計算式との整合性確保[積
算システム]
土木工事積算の効率化に向けた基礎的研究
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表 4-7 第Ⅰ編総則の記載概要(2/2)
章 記載概要 備 考
第 9 章 土木請負工事
における現場環境改善
費の積算
・土木請負工事における現場環境改善費の積
算
・従来のイメージアップからの変
更[積算システム]
・工事工種体系との整合確保[積
算基準データ]
第 10章 工事の一時中
止に伴う増加費用等の
積算
・工事の一時中止に伴う増加費用等の積算 ・計算式との整合性確保[積算シ
ステム]
第 11章 施工箇所が点
在する工事の積算
・施工箇所が点在する工事の積算 ・積算方法の整合確保[積算シス
テム]
第 12 章 1 日未満で完
了する作業の積算
・1日未満で完了する作業の積算 ・計算式との整合性確保[積算シ
ステム・積算基準データ]
第 13章 総価契約単価
合意方式
・対象工事
・実施方針
・設計変更における材料単価の取り扱いにつ
て
・請負代金額の変更について
・積算方法の整合性確保[積算シ
ステム]
第 14章その他 ・材料単価入力基準表
・賃料入力基準表
・業務委託料等入力基準表
・作業日当り標準作業量
・市場単価の1日当り標準施工量
・日当り標準作業量の整合性確保
[積算システム]
・材料単価のコード等の整合性確
保[積算基準データ]
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②第Ⅱ編共通工
共通編の第Ⅱ編共通工の記載概要は表 4-8のとおりである。
第Ⅱ編共通工は、河川・道路等の各工事で共通的に適用される各工種の適用範囲、施工概要及
び施工歩掛(単位施工量当りの機械、労務、材料(ロス率を含め))等を規定している。その記載
内容は、歩掛の場合と施工パッケージの場合で若干異なるが、これらは積算基準データの作成・
改定に欠かせない情報となる。
なお、ここでは、第 3章基礎工以降は省略する。
表 4-8 第Ⅱ編共通工の記載概要
章 工種 記載概要(各工種共通) 備 考(各工種共通)
第1章 土工 ①土量変化率 各工種に対する施工歩掛等
を規定しており、記載内容
は歩掛と施工パッケージの
場合で若干異なる。
[歩掛の場合]
・適用範囲
・施工概要
・施工歩掛
・施工単価入力基準書
その他、工種によっては以
下の記載がある。
・機種の選定
・編成人員
[施工パッケージの場合]
・適用範囲
・施工概要
・施工パッケージ
・施工単価入力基準書
その他、工種によっては以
下の記載がある。
・機種の選定
・編成人員
左記に示す施工歩掛等
は、必ず数年サイクル
で改定される(図 4-3
(b)参照)[積算基準
データ]
②土工
③作業土工
④人力運搬工
⑤人力土工
⑥安定処理工
⑦土砂運搬工
第 2章 共通工 ①法面工
②基礎・裏込砕石工
③コンクリートブロック積(張)工
④石積(張)工
⑤場所打擁壁工
⑥プレキャスト擁壁工
⑦補強土壁工