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在宅医療における医療安全
祐ホームクリニック千石
在宅医療連携室
高橋 由利子
アドバンスコース:第2回2010/7/21
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厚生労働省 医療安全対策検討会議医療安全管理者の質の向上に関する検討作業部会
●2003(H15)年:特定機能病院および臨床研修病院に医療安全管理体制整備義務づけ
●2006(H18)年:医療安全確保のための指針策定、研修実施、その他医療安全確保のための措置が 無床診療所、助産所にも対象が拡大
●2006(H18)年:医療機関に専従の医療安全管理者を配置していること等を要件とした医療安全対策加算新設
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a.安全管理指針の作成と職員への周知
b.職員研修の実施
c.事故報告体制等の確保a.指針、マニュアル作成b.職員研修の実施c.感染症発生状況報告と改善方策等a.管理責任者の設置b.業務手順書の作成と実施の確認c.研修実施d.安全使用のための情報収集a.管理責任者の設置b.研修実施c.保守点検計画策定・実施・記録d.安全使用のための情報収集
安全管理体制の整備
①医療安全確保
②院内感染制御体制の整備
③医薬品の安全管理体制の整備
④医療機器の保守点検・安全使用に関する体制の整備
安全管理体制の整備
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医療のドメインフレーム
異文化間のやりとり(言葉の違い)
患者医療提供者
横浜市大 橋本柚男教授Copyright(C) 2010 You-Homeclinic
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サービス材としての特性
無形性(非有形性)購入前ににおいをかいだり味わったり見たりすることができない
生産と消費の同時性 (丌可分性)
生産されたものは在庫され、販売される。提供者と消費者がその場にいなければならない。患者がその場にいて参加するという役割がある。生産と消費が同時に行われる
変動性(異質性)サービスの品質は提供する人、提供する時などにより変動するため常に一定とはならない
一過性(非貯蔵性)サービスは需要の変動などに備えた貯在をすることができない
横浜市大 橋本柚男教授Copyright(C) 2010 You-Homeclinic
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医療としての特性
高専門性 国家資栺により社会を守っている
高倫理性 高い倫理観が求められ、基づき医療がなされる
多品種少量生産 病気は多くの種類が存在し、個別性も高い
労働集約性 人的労働の投入率が高い
丌確実性医療はこの説明をないがしろにしてきた⇒医療の期待幻想⇒丌信の再生産
横浜市大 橋本柚男教授Copyright(C) 2010 You-Homeclinic
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在宅医療における医療安全の特性
特性
患者および家族が主体
概ね一人の訪問による場
異なる所属、異なる職種による医療・介護の提供
限られた場所、物品
患者・家族-医者との信頼関係構築がベース
課題
説明と同意による患者家族の選択患者家族の要因による影響
密室性が高くなる
連携・協働
EBMに基づく、代用品や創意工夫
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医療事故防止対策⇒医療の安全確保
•プラスの観点 + 安全
安全確保
セーフティ・
マネジメント
•マイナスの観点 - 危険
危険回避
防止
リスク・
マネジメント
「マイナスを回復にする」のではなく「プラスにする安全確保」
飯田修平編,FMEAの基礎知識と活用事例,日本規格協会,2007Copyright(C) 2010 You-Homeclinic
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安全確保への道
組織的継続的質向上の努力
安全文化熟成(安全確保の努力)
事故対応
事故防止安全確保
飯田修平編,FMEAの基礎知識と活用事例,日本規格協会,2007
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リスクマネジメントの目的
●アメリカの医療機関での目的は経営効率⇒在宅における目的は「患者、家族の満足と幸せ」
●在宅の医療安全は、よりインフォームド・コンセント(説明に基づく同意)が重要【インフォ―ムド・コンセントの成立】
①患者の同意能力②患者への十分は説明③患者による説明の理解④患者の自発的な同意
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②患者への十分な説明
説明事項
●患者の病名・病態
●これから行おうとしている医療の目的、必要性、有効性
●この医療の内容、性栺
●この医療に伴うリスクとその発生率
●代替可能な医療それに伴うリスクおよびその発生率
●何も医療を施さなかった場合に考えられる結果
前田正一編,インフォームド・コンセント その理論と書式事例,医学書院,2005Copyright(C) 2010 You-Homeclinic
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リスクマネジメントのながれ
●「人間はミスを犯す者である」ことが前提
●組織全体の問題としてとらえ、組織的・系統的に対策を講じる
リスクマネジメントの流れ①リスクの把握 (現状の把握)
↓②リスクの分析 (原因の分析)
↓③リスクへの対応(対策の立案)
↓④対応の評価 (対策の実施と有効性の評価)
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作業や業務開始の前に、経験と想像力を働かせて起こる可能性のある危険を見抜く
事前にその防止対策を立てることによって事故を未然に防止する方法
インシデント・アクシデント事例の分析3-1
★KYT( Kiken Yochi Training )
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KYT:事例①
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KYT:事例②
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インシデント・アクシデント事例の分析3-2
★RCA:根本原因分析法
(RCA:Root Cause Analysis)
・システムやプロセスに焦点を当てて、再帰的にたどって、その背景を検討し、事故の直接原因を究明して改善へと導くことに焦点をおく
・ヒューマンファクターを重視して事故の根本原因を解明して対策を考案する方法
・“失敗から学ぶ”ために“何が起こったのか?”を明らかにし、“今後のために何ができるか?”ということを分析するツール
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トリガーリストの構成
システムの整備
管理
機器・器材の整備
労働環境
人的環境
教育環境
医療者側の因子
患者側の因子
コミュニケーション
【システム要因】
【環境要因】 【ヒューマンフアクター】
石川雅彦:RCA根本分析法実践マニュアル P57 医学書院 2007Copyright(C) 2010 You-Homeclinic Sengoku All Rights Reserved.
事例の出来事流れ図
① ② ③ ④
看護師Aは患者の点滴(FOY+ソルデム3A200mL)を準備した
看護師Aは、準備した点滴のボトルを患者の点滴スタンドに吊り下げた
看護師Aは、別の患者の急ぎの点滴交換を行うため病室を離れた
看護師Bは、患者の点滴が点滴スタンドに吊り下げられたままであることに気付いた
⑦ ⑥ ⑤
看護師Aは、30分後に患者の病室に戻り、FOYの点滴が半分以下になっているのを発見した
看護師Bは、スタンドに吊されていた輸液ボトルを接続して普通の速度で滴下した
看護師Bは、看護師Aが周囲にいないことを確認した
医療安全管理シンポジウム(東部) 平成22年1月19日
御殿場石川病院 医療安全管理室Copyright(C) 2010 You-Homeclinic
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「⑥なぜなぜ分析」(その1)
• なぜ看護師Bは点滴内容を確認しなかったのか?
• ソルデム3Aを単独の輸液だと思い込んでいたから
• なぜ思い込みを修正できなかったのか?
• 正しい情報源である注射指示書がなかったから
• なぜ点滴瓶に「FOY混注」と書いてなかったのか?
• 要注意薬の混注を点滴瓶に記載するルールがなかった
医療安全管理シンポジウム(東部) 平成22年1月19日
御殿場石川病院 医療安全管理室Copyright(C) 2010 You-Homeclinic
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• 基本となったFMEA(失敗モード影響分析法、Failure Mode and Effects Analysis)は、製品作成におけるプロセス上の問題点に対して、未然に防止対策を実施する体系的分析法
• FMEAは、予め危険領域を設定し、その業務プロセスをシステム分析し、未然防止に必要な対策を考えて事前介入を行い、結果としてインシデント・アクシデントの予防を図るツール
インシデント・アクシデント事例の分析3-3
★HFMEA:医療における失敗モード影響分析法(HFMEA:Healthcare Failure Mode and Effects Analysis)
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HFMEA:医療における失敗モード影響分析法
分析テーマの決定
分析チームの決定
プロセス3 STEP1 業務プロセスの図示
プロセス4 STEP2 フェイラ-モード列挙・影響分析
プロセス5 STEP3 潜在的原因の影響分析
プロセス6 STEP4 対策立案
管理者に報告し、対策実施の承認を得る
関係各部署の責任者に連絡し対策を実施する
実施した対策を追跡し、評価する
プロセス1
プロセス2
プロセス7
プロセス8
プロセス9
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HFMEA事例:点滴
医師の判断
医師の点滴指示書記入
点滴指示書発行
訪看への指示伝達
訪看点滴指示実行
業務プロセス Focus
点滴指示内容を「在宅患者訪問点滴注射指示書」に転記
「在宅患者訪問点滴注射指示書」を訪看にFAX・送付
訪看に指示内容及び実施役割を電話で調整
情報が個人画面にあり
訪問前日に必要日数の薬液など準備
サブプロセス
電話調整内容伝達丌十分
薬液準備が煩雑
フェイラ―モード
情報未整理
潜在的原因点滴指示一覧表作成
ステップ4Copyright(C) 2010 You-Homeclinic
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点滴一覧表
2010/7/1⇒継続指示 ○:済み 未 訪看連絡スミ
患者氏名 訪看 経路 項目 6月29日 6月30日 7月1日 7月2日 7月3日 7月4日 7月5日火 水 木 金 土 日 月
持続皮下 薬液 1-1 ソルデム3A 500 ⇒ビソルボン 1A
開始 CL 訪看 CL 訪看 訪看 CL 訪看 CL終了 家族 家族 家族 家族 家族 家族 家族 家族持参 ○ ○ ○ ○指示書 ○ ○ ○ ○
持続皮下 薬液 1-1 ソルデム3A 200開始 CL 中止終了 家族持参 ○指示書 不要
持続皮下 薬液 2-1 ソルデム3A 500 ⇒ ⇒ ⇒ 中止ビソルボン 1A
静脈 2-2 ロセフイン 1G ⇒ 中止生食 50ヘパリンロック
開始 CL 訪看 CL 訪看終了 家族 家族 家族 家族持参 ○ ○ ○ ○指示書 ○ ○
吸引
染●●治 M
6月28日月
●井● K
小●●子 S
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担当
カルテ入力 薬液規格量回数流量ml/h投与期間:原則火曜~翌月投与経路
注射指示書初回入力看護師に口頭伝達カルテ入力 日時カルテ入力 変更日時看護師に口頭伝達
注射指示伝達
分担依頼日時調整スケジュール担当へ分担伝達
1週間分作成
内容ダブルチェック
注射指示書入力 一日分ごとに入力訪看依頼分は「訪看実施」とコメント入力
発行
注射指示一覧表に基づき薬液準備
持続皮下/静脈注射は袋を分けて準備
持続皮下注射
薬液・輸液セット・延長チューブ1本・シュアプラグ1個
翌日CL実施分、訪看依頼分を準備
静脈注射
薬液・輸液セット・延長チューブ1本・へパリンロック1本・キャップ1個・消毒綿1枚
訪看実施分は日毎の注射指示書を緑袋に入れる
混注の場合
注射器2.5~10ml1本・注射針20G 1本
準備された薬液内容確認緑袋に患者氏名と準備分の月日を記入したメモをつける
注射実施
常勤医持続皮下・静脈・筋肉注射記入
非常勤居の場合は、持続皮下・静脈・筋肉
IVH/CVポートは処方入力
事務:松本 事務:島岡・是永
指示開始
指示中止・指示変更
注射実施記録
指示経路より注射実施 指示経路より注射実施
医師:武藤・斎藤 看護師:高橋・中山
訪看へ手渡し/FAX/郵送
訪看調整連絡
注射指示一覧表作成
訪看指示書/点滴指示書記入
薬液準備
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在宅医療における医療安全を考えるワーキンググループ設立??
在宅ケアにおいては、他職種協働が必頇
一緒に考えていきませんか
在宅酸素はどうだろうか?IVHはどうだろうか?吸引はどうだろうか?
例 クリニック 訪問看護 介護 家族指示 指示確認 点滴中のケア 点滴の管理指示伝達 指示実施 点滴中の注意点薬液準備
点滴
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在宅ケアと感染制御
感染症の成立
3つの輪が重なった部分に感染症が成立する感染部位とその
抵抗性
感染経路
微生物の存在とその感染性
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在宅ケアにおける感染制御の特殊性
• 在宅ケアの現場は個々人の家庭
• 毎日の在宅患者のケアは家族にまかされている
• 高齢、慢性疾患、悪性腫瘍などにより抵抗力が低下
• 感染源への暴露は比較的少く、新たに感染する率は少ない。
小林寛伊:在宅ケアと感染制御,メジカルフレンド社,2005
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感染予防対策
• 感染経路対策:感染源との直接的な接触や媒介物・者を介しての感染防止
• 宿主対策:健康、抵抗力の保持・維持・増進
• 感染源対策:微生物の排除・減少
在宅ケア対象の易感染者:中心静脈栄養気管切開尿道カテーテル留置人工肛門膀胱瘻胃瘻 等
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感染制御技術
標準予防策:スタンダードプリコーション(standard precautions)
血液、体液、喀痰、尿、便などすべての湿性生体物質は、感染性病原体を含んでいつ可能性がある
湿性生体物質に触れるおそれのある時は、予め防護的予防策をとる
(手袋、ガウン、マスク等の着用)
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感染制御技術
●手指衛生
速乾性手指消毒液による手洗い
流水と石鹸による手洗い
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●手袋:
尿、便、痰等湿性生体物質に触れる時は着用
●マスク:
咳エチケット
サージカルマスク 飛沫による伝播を95%以上防止
●ガウン:
生体湿性物質が飛沫し、衣服に付着しそうな時着用
プラスチックエプロンやアイソレーションガウン
感染制御技術
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基本的な感染経路と対策
★空気感染:飛沫核(直径5μm以下の微粒子)によって伝播
★飛沫感染:飛沫はくしゃみや咳とともに排出。1~2m飛んで床に落下
★接触感染
直接感染:ヒト(感染源)⇒ヒト(感受性宿主)
間接感染:ヒト(感染源)⇒器具・環境⇒ヒト(感受性宿主)
感染制御技術
空気感染 飛沫予防策 接触予防策
手袋 ― ― ○
マスク N95 ○1M 以内の場合サージカルマスク
―
ガウン ― ― 接触するとき
器具 ― ― できれば専用
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