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土 木・建 築 関 連 技 術 者 の た め の 水理計算における差分法入門講座 (第3講 差分法による水理計算手法(2))

土木・建築関連技術者のための 水理計算における差 …toshi1.civil.saga-u.ac.jp/ohgushik/sabun3.pdf2 1.1次元開水路流れ解析 1.1 基礎式における定数項と係数について

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土 木・建築関連技術者のため の

水理計算における差分法入門講座

(第3講 差分法による水理計算手法(2))

1

目 次

1.1次元開水路流れ解析 1.1 基礎式における定数項と係数について 1.2 経験的な抵抗則 1.3 非一様流速分布の補正係数 1.4 1次元開水路流れ方程式の内部境界条件

2.1 次元河床変動解析 2.1 基本的な仮定と定式化 2.2 移動床モデルにおける境界条件 2.3 移動床モデルの数値解法 2.3.1 液相と固相の方程式の分離(非連成解) 2.3.2 3つの連成方程式群 3.1 次元移流拡散解析 3.1 物質分散のプロセス 3.2 1次元分散のモデル 3.3 1次元移流方程式の数値計算 4.おわりに 参考文献 演習問題

2

1.1次元開水路流れ解析

1.1 基礎式における定数項と係数について

実際の水理計算の際には、第2講で誘導した1次元開水路流れの基礎式がそのま

ま適用できない場合もある。例えば、自然河川において極端に不規則な断面の場合

にサンブナンの仮定を利用できるようにするための補正係数が必要であったり、複

断面水路の流れの場合の基礎式の修正である。

特に後者においては、図-1より類推されるように高水敷と低水路で抵抗が異なり、

高水敷は流水抵抗が大きいために貯留効果に大きく寄与し、通水がないとみなすこ

とができ、連続の式は次式のように書き直される。

0stA Q

t x

∂ ∂+ =

∂ ∂ (1.1)

ここで、 stA は貯留に使われる断面積であり、運動量方程式における断面積と一般

的には異なる。また、貯留幅も次式のように定義される。

( )stst

A yb y

t t

∂ ∂=

∂ ∂ (1.2)

したがって連続の式は次のようになる。

10

st

y Qt b x

∂ ∂+ =∂ ∂

(1.3)

もし、単位長さあたり qの横流入量を加えれば、(1.3)式は次のようになる。

st

y Qb q

t x

∂ ∂+ =

∂ ∂ (1.4)

Ast>A

図1-1 複断面水路と貯留断面

3

運動量方程式については、断面で流速が一様ではないような状況における断面の微

小要素内の運動量保存を考えることで置き換えられる。Abbott(1979)にしたがって

断面内では水面やエネルギー勾配が同じという仮定を用いれば、次式のような運動

量方程式が得られる。

2

( ) 0f

Q Q ygA gAS

t x A xβ

∂ ∂ ∂+ + + =

∂ ∂ ∂ (1.5)

もし、単位長さ当たりq の横流入がある場合、横流入の x方向の流速成分を qu とお

けば次のような式に書き直される。

2

( ) 0f q

Q Q ygA S u q

t x A xβ

∂ ∂ ∂ + + + − = ∂ ∂ ∂ (1.6)

ここで、 β はブシネスクの係数と呼ばれる補正係数で、次のように定義される。

2

02

b

z zu h dz

u Aβ = ∫ (1.7)

Qu

A= (断面平均流速)

0

1( , )

zh

zz

u u y z dyh

= ∫ (z=z において水深平均した流速)

式(1.3)、(1.5)あるいは式(1.4)、(1.6)の連立微分方程式は、断面内の流速が変化する

場合も適用可能な基礎式であり、第2講で述べた断面内で一様な流速分布を仮定し

た方程式系とは異なるものである。また、連続の式で用いている断面積は貯留断面

積 stA であり、運動量方程式の有効断面積Aとは違う点に注意しなければならない。

式(1.3)、(1.5)あるいは(1.4)、(1.6)において貯留幅 stb や貯留断面積 stA を導入した理

由は、氾濫流の領域が貯留のみの効果として働くことを考慮に入れるためである。

この領域の流れは主流方向には成分を持たず、断面内の全体的な運動量成分への寄

与がない。

1.2 経験的な抵抗則

河床や堤防側面に作用する単位長さあたりの摩擦力は fgASρ であり、基礎式中の

4

摩擦勾配 fS は、多くの経験的な抵抗則のどれかを用いれば良い。ほとんどの抵抗則

において摩擦損失と流量の間の関係式の一般的な形式

fQ K S= (1.8)

を用いている。ここで、 ( )K K h= は通水能と呼ばれる係数で、 fS は定常流のエネ

ルギー線の勾配(摩擦勾配)である。

抵抗則として最もよく用いられるのは次のマニング(Manning)の式である。

2 3 2 31 1; f fu R S Q AR S

n n= = (1.9)

ここに、nはマニングの粗度係数と言われる係数で、多くの実測資料が整備されて

いる。単位は 1 3( / )s m である。また、ヨーロッパ大陸で広く用いられている抵抗則

としては、シェジー(Chezy)則

; f fu C RS Q CA RS= = (1.10)

ならびにストリクラー(Strickler)則

2 3 2 3; Str f Str fu k R S Q k AR S= = (1.11)

があげられる。Cと Strk はそれぞれシェジー係数 1 2( / )m s 、ストリクラー係数 1 3( / )m s

と呼ばれる。以上の式中に出てきたR は径深と呼ばれる長さの次元の量で次のよう

に定義される。

AR

s= (1.12)

ここで、sは潤辺と呼ばれる長さで、その断面内で水に接している河床や側壁の長

さである。マニング係数とシェジー係数の関係は

1 61C R

n= (1.13)

となり、マニング係数とストリクラー係数の関係は

1Strk

n= (1.14)

である。どの係数も無次元量ではないので、用いる単位に注意が必要である。

5

上記の経験的な抵抗則は、断面内では粗度係数が一様であることを想定している。

しかし、この粗度係数は河床材料と密接に関係しているパラメーターで、一般的に

は横断方向に変化するであろう。特に複断面水路においてはこの傾向が顕著である

・ から、それを一様な粗度と考えるのは無理がある。そこで、断面を横断方向にい

くつかの鉛直帯のサブ断面に分けて(図-2)、その各々で異なる粗度を考えるよ

うにし、サブ断面内は粗度係数を一様と考えるような方法をとる。摩擦勾配 fS が横

断方向に一定であると仮定すれば断面全体で代表的な通水能を定義することが可

能である。

抵抗則の方程式が個々の鉛直帯のサブ断面 iに適用できると仮定すれば、断面全体

の流量は個々のサブ断面を通過する流量の合計に等しいので

i

i

Q Q=∑ (1.15)

すなわち、

i f f

i

K S K S=∑ (1.16)

となる。ここで1つの矛盾が出てくる。サンブナンの仮定においては横断方向の水

面が水平であるということと、流れが断面内で一様であるということを仮定してい

た訳であるが、もし、流速が横断方向に変化するのであれば、水面を水平に保つた

めにはエネルギー勾配が大きく変化しなければならない。したがって、式(1.16)左

辺のfS はサブ断面ごとに異なるものでなければならない。逆に、

fS が一定で流速

は横断方向に変化すると考えると、横断方向の水面はもはや水平ではなくなるので

ある。実用的には、fS 一定で自由水面は水平と仮定し、実際の流れが理想化された

図1-2 複断面水路の分割

6

1次元流れとどの位異なるかということで上記の誤差は考慮されるであろう。この

ような誤差が残っていることを受け入れた上で、複断面の代表的な通水能は(1.16)

式を用いて抵抗則にマニングの式を用いれば次のように評価できる。

5 / 31i i

i i

K b hn

= ∑ (1.17)

あるいは、シェジー則を用いれば

3 2i i i

i

K C b h= ∑ (1.18)

となる。

1.3 非一様流速分布の補正係数

式(1.5)、(1.6)のブシネスク係数β は断面内で流速分布が非一様であるために現れ

たものである。局所的な運動量フラックス(単位時間、単位断面あたりの物理量の

輸送量)は局所的な流速の二乗に比例するので、もし、β で補正されないままであ

れば、断面全体の平均流速の二乗は断面全体の運動量の代わりとはならない。理論

的には流速分布の計測をして式(1.7)よりβ は算出できるが、非実用的である。そこ

で、局所的な流速を扱う代わりに、図-2のような横断方向に分けた鉛直帯のサブ

断面を考え、各サブ断面の水深平均流速 zu は局所的な抵抗則より計算できると仮定

すれば、式(1.7)を用いて以下のように β を求めることができる。

式(1.7)において断面平均流速 u は(1.17)や(1.18)などの断面全体の通水能を用い

て抵抗則より計算できる。また、摩擦勾配 fS は断面内で一様と仮定すれば、各サブ

断面の幅をib としてブシネスク係数は次式のように評価できる。

7 3 7 32 2

22

5 3

1 1

1

i i i ii ii i

i ii i

h b A h bn nK A

h bn

β = =

∑ ∑

∑ (1.19)

シェジー則を用いれば、

7

2 2 2 2

22

3 2

i i i i i ii i

i i ii

C h b A C h b

K AC b h

β = =

∑ ∑

∑ (1.20)

与えられた断面に対して(1.19)や(1.20)を用いて β は計算できるが、これは水位 y

の関数でもある。

1.4 1次元開水路流れ方程式の内部境界条件

サンブナンの仮定に基づく基礎方程式は、長い延長に渡る自然河川や人工水路に

適用できる。しかしながら、全ての流路延長で適用できることはめったにない。例

えば、段波やタイダル・ボアなどに見られるような不連続域近傍ではサンブナンの

仮定が成り立たなくなる。少なくとも積分関係式に基づかない偏微分方程式を用い

る限り、基礎方程式のみを用いて不連続区間をつなぐことは不可能である。また、

似たような例として、水路延長の一部に顕著な幾何学的な不連続部や水理特性の不

連続部が存在する場合がある。例えば、河川の分合流地点や急激な断面変化部、セ

キを越える流れ、特殊な水頭損失箇所などである。これらの例は局所的な変化であ

って、非定常流の微分方程式を満足する領域同士をつなぐものとして短い区間内の

水理法則が必要である。

したがって、個々の短い区間内はそれぞれ異なった水理法則が成り立つような

特別な接合部分と考え、サンブナンの仮定が成立するような流路の集合とそれらを

つなげる接合部分から全体のモデルが構成されると考えることができるであろう。

このような接合部分は、計算領域外部の境界条件との類推から内部境界条件と呼ば

れる。基礎方程式として連続の式と運動量方程式を用いるならば、2つの流路をつ

なげる適合条件(水理法則)は2つ必要である。

簡単な例として図1-3のような河川の合流を考えて見よう。ここでは3つの独

立な条件が必要となる。連続の式より合流点では流量の合計がゼロとなる。すなわ

ち、

3 1 2Q Q Q= + (1.21)

8

別の2つの適合条件として、ある技術者は合流点での水位が等しいと考えるであろ

う。すなわち、

1 2 3y y y= = (1.22)

である。また、もっと適用可能な条件として、次式のような合流点での全水頭(エ

ネルギー)が等しいという2つの条件を考えることもできる。

22 231 2

1 2 32 2 2

uu uy y y

g g g+ = + = + (1.23)

さて、内部境界条件には2つの種類がある。一つは特別な関係式によって通常の

流れの方程式が置き換えられるもので、例えば特殊な水頭損失や、分合流点、潜り

セキがよい例である。もう一つは外部境界条件と似た性質の条件で、その地点で流

量や水位が時系列で与えられる場合である。厳密に言えば、後者は通常の外部境界

条件としてモデル化できる地点である。例えば、発電所を通過する流量 ( )Q t は片方

モデル外部境界点で流量 ( )Q t が差し引かれ、別のモデル外部境界点において同じ流

量 ( )Q t が導入されると考えるのである。水位 ( )y t についても外部境界と同様に扱え

る。例えばある貯水池で水位が時間の関数として与えられる場合、各時間ステップ

において流れの方程式を満足するように流量 ( )Q t が貯水池から流出するような解

を求めることが可能である。さらに節点A における流量曲線 ( )A AQ f y= が与えられ

るようなセキからの完全越流の場合にも適用可能である。なぜなら、流量は上流の

水位にのみ依存する量であり、点 Aは流量曲線という下流への境界条件が与えられ

Q2

1

2 3

Q1

Q3

図1-3 河川の合流

9

るものと見なすことができ、同じ流量 B AQ Q= を下流で再度与えれば良いからであ

る。

しかしながら、実用的な見地から見れば、このようにモデルを切断するのは不便

であったり、場合によってはそうすることが不可能であることさえ起こりうる。例

えば、計算の途中でセキを越える流れが完全越流より潜り越流に変わるような流れ

の計算をどのように行えば良いであろうか。また、貯水池の節点 A における水位

( )y t が与えられる場合に、もし、陰解法のモデルを採用するとすれば、その時間ス

テップの計算が全て終わるまで ( )AQ t t+ ∆ の値が分からない訳であるが、このよう

な場合、どのようにして ( ) ( )B AQ t t Q t t+ ∆ = + ∆ を与えればいいのであろうか? こ

のような問題は、上記の全ての条件を内部境界条件として取り扱うことで解決でき

る。内部境界条件においては、この条件を表すために通常の基礎方程式をある特別

な方程式で置き換えることを行う。このことは、用いる数値計算手法の種類に関わ

らず、考えている節点と同一点かその近傍で、流量の連続の式とある特別な交換法

則の2つの式を用いて2つの節点をリンクしなければならないことを意味してい

る。このような条件を加味できる適当な方程式を工夫することはそう簡単な事では

ない場合もある。特に、用いる計算スキームが、例えば、水位と流速を違う節点で

計算するような6点法であったり、特性曲線法、陽解法である場合は、同じ節点で

水位と流速を定義する4点法と比較してより困難な場合があり得るであろう。

水理計算に関してモデル作成に携わる者が注意すべきこのような状況の例とし

て、セキを越える流れの計算において動的な効果を取り入れることを考えて見よう。

河川流シミュレーションでは通常、接近流速は無視し、完全越流の場合はセキの地

点で限界流が現れると見なす。また、潜り越流においてはセキ位置の水位は下流の

水位と等しくなると仮定する。このとき単位幅当たりの流量は、

3 22 2 ( )u w

Qg y y

bµ= − (完全越流) (1.24)

1 21 2 ( )( )d w u d

Qg y y y y

bµ= − − (潜り越流) (1.25)

となる。

10

ここで、 uy はセキ上流側の水位、 dy はセキ下流側の水位、bは四角ゼキの幅、 wy

はセキ頂部の高さ、 1 2,µ µ は流量係数である。

他の内部境界条件として図1-4に示すような水門(スルースゲート)からの流

出を考えて見よう。ゲート下流で射流が現れ、水理公式によって流量は次式で与え

られる。

2 ( )u wQ ab g y y aϕε ε= − − (1.26)

ここで、ϕは流量係数で 0.85~0.95 の範囲の値をとり、εは縮流係数で開度aと上

流水深hの比によって決まる係数である。bはゲート下の幅、 ,u wy y はそれぞれ上流

水位とセキ(ゲート部分の底面)の高さである。簡単のためにここでは上流の接近

速度は無視している。式(1.26)は次式の不等式が成り立つ時のみ有効な式である。

( )2

22

2 3

; 1 8 12

ctest d test c

c

cc

hh h h F

h a

QF

gb h

ε

> = + −

=

=

(1.27)

ここで、testh は跳水後の水深、

ch は跳水直前の水深、cF は

ch の地点におけるフルー

ド数である。

a

h dh

uy

wy

dy

a

h ch aε=

dhuy

wy

dy

i i+1

図1-4 水門からの流出

( ) test da h h>

( ) test db h h<

11

もし、 test dh h< の場合(つまり、下流水深が跳水後の水深より大きい場合)は、

別の関係式を用いねばならない。すなわち、

( )2 u dQ ba g y yµ= − (1.28)

ここで、 µは流量係数(0.65~0.70)、dy は下流の自由水面水位である。

さらに、ゲートが完全に上がれば、流れの形態は潜りゼキの状態で流れる状態と

なる(図1-5)。このとき流量は、

( )( ) 2d w u dQ b y y g y yψ= − − (1.29)

で表される。

h dh

uy

wy

dy

図1-5 水門の完全開放

i i+1

12

2. 1次元河床変動解析

2.1 基本的な仮定と定式化

この章では非定常の流砂現象をモデル化することに焦点をあてる。

流砂現象と水の流れは完全に分離はできないほどお互い密接に関連しあっている。

この2つの非定常現象の相互作用を記述する水理公式は数多く存在する。その中で

最もシンプルで受け入れられる数学的表現は、次式のような方程式系である(図2

-1参照)。

水の流れの連続式

0h h u

u ht x x

∂ ∂ ∂+ + =

∂ ∂ ∂ (2.1)

水の流れの運動方程式

0u u h z

u g g gSt x x x

∂ ∂ ∂ ∂+ + + + =

∂ ∂ ∂ ∂ (2.2)

流砂の連続式

(1 ) 0z G

n bt x

∂ ∂− + =

∂ ∂% (2.3)

流砂量の式

( , )G G u h= (2.4)

ここで、x は流路軸に沿って測った距離で、tは時間、h は水深、uは断面の平均流

速、 z は河床高、 S は定常状態のエネルギー勾配、G は単位時間に運ばれる流砂の

G

, Quh

z

y

x

A

bb%

図2-1 移動床河川の1次元河床変動解析における縦断図と断面図

13

体積、 bは水面幅、b%は河床材料輸送で影響を受ける断面幅、 nは河床材料の空隙

率である。前章まではz は断面横断方向の座標系を意味していたが、この章では基

準水平面から測った河床高を扱うことにするので注意して欲しい。

式(2.1)から(2.3)は、3つの未知量 ( , ), ( , ), ( , )h x t u x t z x t の関係を示す式であり、

式(2.4)は式(2.3)の補助的な式である。これらの式は流れと流砂の物理現象の基本的

な関係を表し、またより複雑な方程式の数学的特性をも有することから、この章で

はこれらの式を全て用いて議論することにする。液相(水)に対してはサンブナン

の仮定、すなわち、静水圧分布や断面内の一様流速分布などの仮定が取り入れられ

ている。固相に関する仮定としては、実際は河床材料の洗掘や堆積は主流と直角方

向の2次流が原因で起きる3次元的な性質のものであるが、長い流路延長に渡って

の洗掘・堆積を検討する場合は、現段階ではそこまで考えるのは現実的ではないの

で、固相(流砂)に関しても液相(水の流れ)と同様、モデル化の目的を達成する

ために1次元的な現象として取り扱うこととする。

図2-2 断面積変化と河床高変化の関連性に関する仮定(文献(1))

式(2.1)~(2.4)に基づく概念モデルは全て、断面変化と堆積・洗掘を関係づける法

則によって完全に記述される。同じ種類の沖積層の中でのみ断面は洗掘や堆積を繰

り返していると仮定する。このような制限の範囲内でも河床 z 、断面積 Aの断面の

変化を記述するために幾つかの手法が存在する。一つは図2-2(a)のような断面形

状は変えずに断面が上がったり下がったりすると仮定する方法である。別の一つは、

図2-2(b)のように水位 y 以下にある断面の部分のみ上がったり下がったりする

14

と仮定する方法である。幾つかのモデルにおいては、図2-2(c)のように掃流力に

関係するような横断方向に堆積・洗掘の分布を導入しようとするものもある。この

ようなアイデアや法則は必要ならば数学的モデルに容易に組み込む事が可能であ

る。ただし、それらのアイデアや法則は1次元の解析法の仮定と基本的には矛盾す

るものではないものに限定はされるのであるが。

式(2.1)~(2.4)は複雑な物理的プロセスを表しているが、この中で、定常状態のエ

ネルギー勾配S の重要度について知っておく必要がある。エネルギー勾配S は、流

れと河床特性の陽形式の関数として表すことができる。Manning-Strickler 則を用

いれば、次式のように書ける。

2

2 4 3str

uS

k R= (2.5)

ここで、 strk は Strickler の係数、Rは径深である。この考え方を用いれば、流れに

対する河床の抵抗は河床材料の粒径と流体流量並びに水深にのみ依存することに

なる。しかしながら、沖積河川流れにおいては定常流れの水理関係は河床形状の存

在を考慮しなければならず、全体的な抵抗係数はこれらの河床形態(砂堆、平坦河

床など)のタイプによって異なるものである。このような状況の時は、式 (2.5)は次

式のような陰形式の関係式で置き換えなければならない。

( , , , ,....) 0S u h dϕ = (2.6)

ここで、d は河床特性を表し、実験的に決まる係数である。また、他にも特別な尺

度がこの関係式に導入されうるだろう。例えば、Einstein(1950)や Engelund and

Hansen(1967)らの非線形の1つまたは複数の代数方程式によって表すことができ

る。このような場合、エネルギー勾配 Sを他のパラメータの関数として陽に求める

ことはできず、式(2.6)もまた式(2.1)~(2.4)の方程式群に加えて全体として解かなけ

ればならない。

式(2.4)は流砂量の式で具体的な式についてはまだ述べていない。流砂量G(我が

国の水理関係文献にはBQ という変数名で登場することが多い。単位幅単位時間当

たりの流砂量はBq である。)は流れと河床材料の関数として陽に表したり、場合に

15

よっては Einstein(1950)の理論で提案された完全な方程式群の形式として与えた

りすることもできる。

2.2 移動床モデルにおける境界条件

流砂の数学的モデルは全て上下流端の境界条件が必要である。全ての手法がこの

ような条件を同じ数だけ必要な訳ではなく、以前見てきたような内部境界条件を用

いるべき所もある。例えば断面が極端に変化する場合やセキ、ダム、水門、分合流

部などである。市場で販売されているベースのプログラムは、以下のような外部境

界条件、内部境界条件を取り扱うことが可能である。

(1) モデルの上流端で時間の関数として与えられる流砂量と流量:

1 2( 0) ( ); ( 0) ( )G x f t Q x f t= = = = (2.7)

(2) モデルの下流端で時間の関数として与えられる水位:

( ) ( )y x L f t= = (2.8)

ここで、 x L= は下流端を表す。

(3) モデルの下流端で与えられる水深と流量の関係式

( ) ( )h x L f Q= = (2.9)

(4) モデルの上下流の一端で時間の関数として与えられる河床高

( ) ( )z x L f t= = もしくは ( 0) ( )z x f t= = (2.10)

これは洗掘できない河床や浚渫などを表す条件である。

(5) 3つの適合条件で表される河川断面が急激に変化する場合(図2-3(a))

2 2

11 1 1; ;

2 2i i

i i i i i i

u uQ Q G G y H y

g g+

+ + += = + + ∆ = + (2.11)

ここで、 H∆ は断面の拡大や縮小によるエネルギー損失である。

(6) 合流部における流砂の流入(図2-3(b))

時間の関数として与えられる ( )Q t と ( )G t は既知でなければならない。

浚渫は ( ) 0, ( ) 0G t Q t< = とおけばよい。この場合の適合条件は次式で与えられ

る。

16

1 1

2 21

1

( ) ; ( );

2 2

i i i i

i ii i

Q Q Q t G G G t

u uy H y

g g

+ +

++

= + = +

+ + ∆ = + (2.12)

(7) 一般の合流部(図2-3(c))

2 2 2

; ;

2 2 2

c a b c a b

c a bc a b

Q Q Q G G G

u u uy H y y

g g g

= + = +

+ + ∆ = + = + (2.13)

図2-3 移動床モデルにおける内部境界条件(文献(1))

(8) ダムなどの構造物(図2-4(d))

2つの適合条件

1 1; ( )i i i iQ Q G f G+ += = (2.14)

17

並びに時間の関数として与えられる水位

( )iy f t= (2.15)

もしくはダムゲートの操作による流量公式から得られる水位が条件として

必要である。

条件(1)~(4)は外部境界条件であり、条件(5)~(8)は内部境界条件である。

2.3 移動床モデルの数値解法

移動床モデルの実際の適用としては、式(2.1)~(2.3)を代数方程式で置き換えて

差分によって解くアプローチがある。実用的にはこのアプローチは2つの異なった

手法でなされる。一つは3つの方程式を同時に解く方法である。もう一つは、式(2.1)、

(2.2)(液相(水の流れ)に関する方程式)と式(2.3)(固相(流砂)に関する方程式)

に分けて解く方法である。

2.3.1 液相と固相の方程式の分離(非連成解)

非連成の定式化では、計算時間ステップ 1 0t t t∆ = − の間にまず式(2.1)、(2.2)の差

分が流路に沿って解かれる。この計算により 1t t= における全ての計算領域の水位、

流量、断面平均流速などが求められる。この t∆ の時間内、河床高 ( )z x は不変と考え

る訳である。第一ステップより得られる水深 1( , )h x t と流速 1( , )u x t を用いてまず式

(2.4)より流砂量を求め、次に河床のサンドウェーブの伝播を記述する式(2.3)を同一

計算格子で解くことになる。式(2.3)は1階の偏微分方程式であり、上流端において

1つの境界条件、初期条件として 0( , ) (0 )z x t x L≤ ≤ が与えられなければならない。

非連成解法の原点は陽的差分スキームの考え方にある。1時間ステップの間は1

つの従属変数(ここでは、河床高 z であり、結局、水深hがそれに相当する)は、

他の従属変数とは独立に計算される。もし、河床高 z が他の従属変数と密接に関連

し合っていれば、たとえ式(2.1)と(2.2)に無条件安定な計算法を選んでも、式(2.3)

の差分にどのような計算法を用いても数値的な不安定性を引き起こすであろう。特

に河床高(あるいは水深)の変化量が河床高(あるいは水深)と比較して無視でき

ない程大きい場合に数値的不安定性が現れるようである。

18

2.3.2 3つの連成方程式群

ここでは、前に述べた Preissmann の4点法という陰形式の差分スキームを式

(2.1)~(2.3)に適用することを考える。 1n ni i if f f+∆ = − とおき、式(2.1)~(2.3)に代入

し、2次以上の高次の項を省略すると( f f∆ = という仮定に基づいている)、次式

のような , , y u z∆ ∆ ∆ に関する3つの代数方程式が得られる。

[ ]{ } [ ]{ } { }1 0i iA w B w C+∆ + ∆ + = (2.16)

ここで、[ ] [ ],A B は時間 nt における既知の係数より構成される3×3の行列、{ }C は

既知係数のベクトル、 { }w∆ は次のような未知のベクトルである。

{ }i

i i

i

u

w y

z

∆ ∆ = ∆ ∆

(2.17)

式(2.16)の未知量iu∆ は通常

iQ∆ で置き換えられる。その理由は、流量Qは流速uよ

りも数値計算上、より便利な変数であるからである。

計算領域にN 個の計算格子点を設けると、式(2.16)の式は3( 1)N − 個ある

ことになり、{ }, , i i iQ y z∆ ∆ ∆ (i=1,2,....,N)に関する 3N 個の未知量を解くことになる。

2つの上流端境界条件と1つの下流端境界条件を用いてこの問題を閉じることが

できる。実際には3重対角行列を解くことになるので Double Sweep Method など

の簡単な計算サブルーチンを用いれば、陰形式ではあるものの容易に解くことが可

能である。

19

3. 1次元移流拡散解析

この章では、河川の流れにおける中立浮遊性物質の輸送に関する数学的モデルを

取り扱うこととする。河川の流れは洪水波伝播モデルなど流れのモデル化によって

既に解かれているという状況下で、物質濃度の時間的な変化がどのようになるかに

興味がある場合を考えることとする。ここで対象とする混合現象の時間スケールは、

一般的に水の流量変化が起きる時間スケールに比べて非常に短く、通常、物質輸送

方程式(移流拡散方程式)を簡単化できる定常流れのアプローチを用いることがで

きる。非定常流れの場合には、このような疑似定常な流れが徐々に増加あるいは減

少するような時系列で表すことができ、定常流れの最後の結果を次の時間ステップ

のための初期条件として用いることが可能である。

3.1 物質分散のプロセス

まず、水中に含まれる中立浮遊性物質の分散に関してその物理的意味を振り返っ

て見ることにする。そうすることで数値的モデル化を行う際により正しく判断する

ことが可能となるであろう。流体の「色を付けられた」分子群はフィック(Fick)

によって確立された法則に基づいて他の「中立」流体の中に拡散していく。すなわ

ち、拡散フラックス(単位時間当たり単位面積を通過する拡散物質の輸送量)は、

その物質の濃度勾配に比例する。静止流体中の分子拡散に対してこの法則を3次元

で数学的に表現すれば、次式のようになる。

m m m

C C C Ct x x y y z z

ε ε ε ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ = + + ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂

(3.1)

ここで、C はトレイサーの濃度、mε は分子拡散係数(単位は 2 -1m s )である。この

分子拡散係数は非常に小さな値で、 6 2 -110 m s− 位の値である。静止流体中の点源の染

料は 24時間かけて 1mの直径になるが、もし、水が乱流状態(レイノルズ数が2000

より大きい状態)で流れていれば、別の現象が現れる。すなわち、乱流拡散である。

図3-1のように、流れが定常ではあるが乱流状態となっている河川の断面内の

どこかにある点源(point source)P を、もしある観測者が観測し、その点において

20

図3-1 乱流における個々の粒子の拡散(文献(1))

平均的な流速の大きさと方向を計測していたら、彼は流速とその方向は時間ととも

に変化していないと結論づけるであろう。しかし、もし彼が、点 Pにおいて例えば

レーザー流速計やホットフィルム流速計などの計測機器を駆使して瞬間的な流速

の時系列を求めることができたら、ある瞬間から別のある瞬間に渡って流速は多か

れ少なかれその大きさと方向をランダムに変えていると分かるであろう。もし、彼

が無数の小さな中立浮遊性の粒子を点 Pで投入することができれば、そこから下流

へある距離離れたところでは粒子はお互いに離れて散らばっていることに彼は気

づくだろう。これは乱流拡散のプロセスであり、個々の粒子は流速のランダムな変

動の影響を受け、粒子の軌跡は図3-1のように流れ場のまわりを不規則に動く。

もし、無数の粒子の代わりに少しの量の汚染物質を点 P で放流すると考えれば、

それが下流へ流されるにしたがっていつもまわりに広がっていくことが観測でき

るであろう。この分散過程の数学的記述は、無限小体積内のトレーサーの保存に関

する偏微分方程式から始められた半経験的理論に基づいており、次式で与えられる。

m m m

C C C C C C Cu v w

t x y z x x y y z zε ε ε

∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ + + + = + + ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂

(3.2)

ここで、 , , u v wはそれぞれ瞬間的な流速の x, y, z 方向の成分である。

乱流においては、時間平均の定常流とその偏差としての乱流変動から全体の流速

が構成されるとすれば、乱流の定常流を考えることが可能である。したがって、あ

21

る点において流速場は2つの部分から構成されると考えることができる。すなわち、

時間平均流速 ( , , )u v w と瞬間的な流速 ( ', ', ')u v w である。後者は時間平均すればゼ

ロとなる量である。この時、全体の流速成分は、

' ; '; 'u u u v v v w w w= + = + = + (3.3)

と書くことができる。

したがって、「色を付けられた」中立浮遊粒子の動きは次の3つの影響を受けて

いると考えられるだろう。すなわち、分子拡散、時間平均流速、ならびに乱流流速

の変動である。この粒子の変位はこの3つのプロセスの結果である。さらに、河川

の中の物質分散を考える際、分子拡散はほとんど無視できるほどその割合が小さく、

ここでは無視することにする。また、時間平均流速の場は通常既知であるか推定す

ることが可能である。最も難しいのは乱れ速度の変動による輸送と平均流の測定可

能な特性との関連性である。この関連付けを行うために物質濃度についてもレイノ

ルズ平均を適用することとし、時間平均と変動成分に分けることにする。すなわち、

'C C C= + (3.4)

式(3.3)、(3.4)を式(3.2)へ代入し、分散現象と比較すれば短いが乱流変動と比較すれ

ば長い時間スケールに渡って時間平均を取る。 , ,x y zの代わりに添字 iを用いてテン

ソルで用いる総和規約を利用すれば次式が得られる。

' 'i m ii i i

C C Cu u C

t x x xε

∂ ∂ ∂ ∂+ = − ∂ ∂ ∂ ∂ (3.5)

ここで、総和規約(アインシュタインの総和規約)とは、数式中で同じ項に同一の

添字が現れた場合、その添字について1から3(x, y, z の3つ)まで総和を取る事

にするという取り決めである。式(3.5)の ' 'iu C は変動する局所的な流速に起因する乱

流輸送量を表している。半経験的な理論により乱流輸送量は分子拡散とのアナロジ

ーにより次式のように書き表せると考えることができる。

°' 'i ii

Cu C

∂= −

∂ (3.6)

ここで、 °iε は乱流拡散係数である。

22

乱流拡散係数は分子拡散係数と比較するとケタ違いに大きく、乱流においては分

子拡散の項は高い精度で省略することができる。事実、乱流拡散係数では最も小さ

い値でも数 2 -1cm s であるのに対して、分子拡散係数の方はせいぜい 2 2 -110 cm s− のオー

ダーである。乱流拡散係数は、一般的には流れ場において非一様であり、また異方

性を有しており x, y, zの関数で表される。簡単のために上横棒を省略すれば、3次

元流れ場において中立浮遊性物質の輸送方程式は次式のように表される。

° ° °x y z

C C C C C C Cu v w

t x y z x x y y z zε ε ε

∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ + + + = + + ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ (3.7)

式(3.7)は、3次元の時間平均の分散方程式である。原理的には、もし、3次元

流れ場と乱流拡散係数が既知であれば、適切な初期条件と境界条件に対して式(3.7)

を解析的あるいは数値的に解いて、濃度の関数 ( , , , )C x y z t の分布が得られる。しか

し、3次元の時間平均流れ場は一般的には未知であることが多い。さらに河川の水

深は川幅に比較して一般には小さく、中立浮遊性物質は河川水深方向(鉛直方向)

に比較的短い時間に完全に広がっている場合が多い。結局、そのような場合は、鉛

直方向の濃度分布は、水平方向の濃度分布が一様になるかなり以前より一様分布と

なる。したがって、このような場合、式(3.7)を鉛直方向に水深に渡って平均するこ

とが合理的であると考えられる。この平均を取ることによる簡略化は、流れの運動

方程式における鉛直方向の流速を無視したことと似ている。しかし、横方向の混合

は、2次的ならせん流によって影響を受けるものであり、鉛直方向の流速を考慮し

なければ表すことができないものであることに注意が必要である。

水深平均の方程式は、速度偏差による輸送(移流分散)と乱流拡散過程が勾配型

の拡散項で結合できる( Holley, 1971)という仮説を用いて式(3.7)を水深平均するこ

とで次式のように得られる(Holly, 1975)。

( ) ( ) x z

C C Ch huC hwC h h

t x z x x z zε ε

∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ + + = + ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ (3.8)

ここで、 , , Cu w は水深平均した x方向、z 方向の流速並びに濃度である。 , x zε ε は

経験的な混合係数であり、式 (3.7)の係数° °, x zε ε とは異なるものである。一般的に言

23

えば、 , x zε ε は° °, x zε ε と比較してかなり大きな値をとる。なぜなら、この係数は、

乱流拡散だけでなく、速度偏差による輸送(移流分散)をも含んでいるからである。

この乱流拡散と移流分散を分かりやすく示したのが、図3-2である。

図3-2 分散の説明 (a)乱流拡散無しで移流、(b)移流無しで

乱流拡散、(c)両者の重ね合わせ(=分散) (文献(1))

水面に染料の小さな雲がある場合を考えよう。もし、染料の直径が小さければ染料

中央部の流速と端部の流速は同じものと考えて良い。このとき染料の雲は明らかに

流れによって運ばれ、乱流拡散の影響によって左右対称に大きくなっていくであろ

う。雲が大きくなり、流速分布が一様でなくなるとき、染料の雲は歪んで前よりも

速くその大きさを増すだろう。このようにして、見かけの拡散(これは本来の乱流

24

拡散並びに移流分散が含まれている)は、乱流拡散よりもかなり大きいと考えて良

い。図3-2では、染料が初期に鉛直方向に一様分布を持っている場合で、放物線

の流速分布による流速偏差で広がる移流分散(図3-2(a))と流速は一様分布であ

るが乱流拡散によるまわりへの広がり(図3-2(b))が考えられ、実際にはその2

つが同時に起こる(図3-2(c))。水深平均基礎式の係数 , x zε ε を用いる場合、移流

と乱流拡散の間の相互作用が考慮されていることになる。

係数 , x zε ε を推定する実験的、理論的基礎は Elder(1959)によって与えられた。

幅の広い一様流に対して、

*

*

0.23

5.93z

x

u h

u h

ε

ε

=

= (3.9)

という結果が与えられている。ここで注目すべきは xε で、 zε と比較してかなり大き

い値を取る。その理由は、 xε が鉛直方向に流速が変化する分布のために移流分散が

含まれているからである。

3.2 1次元分散のモデル

1次元モデルの理論的な基礎は Taylor(1954)によってなされた。彼は、十分発達

した管路流れにおいて混合して断面全体に広がったトレーサーの流れ方向の分散

が、少なくともトレーサー注入箇所から大きく離れた下流では Fick の拡散プロセ

スとして振る舞うことを示した。分散方程式は次のような形である。

( ) ( ) aa a x

CAC AUC AK

t x x x∂∂ ∂ ∂ + = ∂ ∂ ∂ ∂

(3.10)

ここで、 aC は断面平均の濃度、U は断面平均の流速である。 Aは断面積、 xK は流

れ方向の混合係数である。この係数 xK は混合係数 xε と混同してはいけない。 xK は

断面全体に渡る移流分散の係数でありその値は xε と比較してもより大きい。

もし、 , , xU A K が既知で一定の値を取るならば、その解析解はガウス分布とな

る。すなわち、

25

2

0 01 2

( )( , ) exp

2 ( ) 4ax x

C V x UtC x t

A K t K tπ −= −

(3.11)

となる。ここで、 0 0, C V は断面全体に瞬間的に放出されたトレーサーの濃度と体積

である。しかしながら、この解は一般的には工学的な目的のためにはあまり役に立

たない。その理由は、

(1) 自然河川においては , , xU K Aは決して一定ではない。

(2) Nordin and Sabol(1974)によって示されたように、自然河川で測定された実

験データは、1次元の混合プロセスがFick の法則に従わないことを示して

いる。

(3) トレーサーが点源より次式の距離まで流下しなければ式(3.10)で記述され

る1次元拡散プロセスは有効ではない。

2

*

1.8 UL

R U=

l (3.12)

ここで、lは特性混合長(例えば、水路の半幅など)、R は径深、 *U は摩擦

速度である。この距離は、問題としている水質調査区域をしばしば越える

ことがある。

このような不十分な点があって、技術者たちは解析解を求める代わりに式(3.10)

の数値解を求めるようになった。しかし、そのような場合でさえモデルは点源より

L 以上の距離になければならないという制限を忘れてはいけない。

3.3 1次元移流方程式の数値計算

1次元の分散方程式の数値計算を行う際は、十分な注意を払わなければならない。

確かに、線形の放物型偏微分方程式(3.10)は、上流端と下流端における境界条件な

らびに初期条件を与えてその解を定式化することは難しくないかもしれない。しか

し、式(3.10)の移流の部分の計算に用いる多くの差分スキームが、物理的な拡散以

上に大きな数値的な拡散、人工的な拡散によって悩まされており、計算結果が使い

物にならないことが多々ある。ここでは、この問題を簡単に振り返ることにする。

26

物質輸送方程式は、2つの物理的な輸送形態を含んでいる。1つは移流による流

れ方向の輸送で、もう1つは流れ方向の拡散である。ここでは、特に移流に焦点を

当て、断面一定の場合を考えることにすれば、次式のような移流方程式が得られる。

0a aC CU

t x

∂ ∂+ =

∂ ∂ (3.13)

式(3.13)に対するいくつかの差分近似は実際は次のような計算をしていることと等

価である。

2

2a a a

n

C C CU K

t x x

∂ ∂ ∂+ =∂ ∂ ∂

(3.14)

ここで、nK は差分スキームの近似特性によって引き起こされる人工拡散係数であ

る。このnK が物理的な拡散係数

xK と比べて小さい場合は、人工拡散はシミュレー

ションの結果に影響を与えることは少ない。しかし、もし、同じオーダーであった

り、xK より大きくなったりする場合は、一見もっともらしい解に見えるが、実は

自然現象とは全く関係ない結果を引き起こす。したがって、移流計算のための数値

計算スキームの本質的な精度基準は、人工拡散nK の値がどのくらい大きいかに依

存することになる。

例を挙げて説明しよう。Dobbins and Bella(1968)による計算スキームの数値解

を考えて見よう。図3-3は、(3.13)式の計算に用いる差分スキームの空間-時間

格子を表している。もし、格子点 ( 1, 1)i n+ + を考察すれば、移流という現象は次の

ように解釈することができる。時間ステップ( 1)n+ に空間格子点( 1)i + に到達する流

体粒子の軌跡を逆に遡って時間ステップ nにおける点ξ から粒子は軌跡を描いてい

ると見ることもできる。図中の破線がその粒子の軌跡である。純粋移流では、印を

つけた流体粒子の濃度は不変であるから、次式が得られる。

( 1, 1) ( , )a aC i n C nξ+ + = (3.15)

そして、当初の問題は、時間ステップ nに遡って軌跡を追跡し、その時間ステップ

における点の濃度の値を推定することに帰着される。時間ステップnにおける計算

格子点上の濃度は全て既知量であるから、計算格子上にないξ における濃度を周り

27

図3-3 Dobbins and Bella のスキーム

(a) x U t∆ = ∆ 、 (b) x U t∆ ≠ ∆ (文献(1))

の格子点上の既知の濃度値を用いて如何に精度良くξ の濃度の値を推定するかと

いう問題に置き換わる訳である。特別な場合として、ξ が格子点iと一致するケー

スを考えると、このとき

U t x∆ = ∆ (3.16)

であるから、次式の濃度式が得られる。

( 1, 1) ( , )a aC i n C i n+ + = (3.17)

これは、、点 ( , )i n より( 1, 1)i n+ + への濃度の受け渡しと見ることもできる(図3-3

(a))。しかし、一般的には流速U は全ての格子点を通る訳ではなく、また ,x t∆ ∆ も

変えることもあるので、U t x∆ ≠ ∆ であることが多い(図3-3(b))。図中では ( , )aC nξ

は ( 1, )aC i n− と ( , )aC i n の間を1次内挿(1次補間)している。これが Dobbins and

Bella のスキームの考え方である。後で示すようにこの計算スキームは大きな数値

拡散を持っている計算法である。流速U 一定の場合、このスキームは次式のように

書ける。

28

( ) ( , ) ( 1, )( 1, 1) ( , ) a a

a a

x C i n C i nC i n C n

x

α αξ

∆ − + −+ + = =

∆ (3.18)

ここで、α は図3-3(b)に示すように点ξ と点 iの距離を表している。

さて、式(3.18)の ( 1, 1) , ( , ), ( 1, )a a aC i n C i n C i n+ + − は以下のように点( 1, )i n+ の周り

に Taylor 級数に展開することができる。2次より高次の項を省略すれば、次式が

得られる。

( )22

2( 1, 1) ( 1, )2

a aa a

tC CC i n C i n t

t t

∆∂ ∂+ + ≈ + + ∆ +

∂ ∂ (3.19)

( )22

2( , ) ( 1, )

2a a

a a

xC CC i n C i n x

x x

∆∂ ∂≈ + − ∆ +∂ ∂

(3.20)

( )2

2

2( 1, ) ( 1, ) 2 2a a

a a

C CC i n C i n x x

x x

∂ ∂− ≈ + − ∆ + ∆∂ ∂

(3.21)

この展開式を式(3.18)に代入し、 x U tα∆ + = ∆ であることを用い、さらに流速U が一

定であることより

2 2

22 2

a aC CU

t x

∂ ∂=

∂ ∂ (3.22)

という置き換えを行い、式を整理すれば次式が得られる。

2

2

( )2

a a aC C CxU

t x t xα α∂ ∂ ∂∆ −+ =

∂ ∂ ∆ ∂ (3.23)

したがって、このスキームの数値拡散係数は

( )

2n

xK

t

α α∆ −=

∆ (3.24)

であることが分かる。無次元パラメータのクーラン数

U tCr

x

∆=

∆ (3.25)

を用いれば、式(3.24)は

( )2

(1 )( 2)2n

xK Cr Cr

t

∆= − −

∆ (3.26)

29

となる。 1Cr = や 2Cr = の時は 0nK = であるが、 1.5Cr = のとき最大値( )2

8n

xK

t

∆=

∆を

取る。同様にして、 0 1Cr≤ ≤ の範囲では、流体粒子の軌跡は x 軸のi点と 1i + 点の

間を通過するので、数値拡散係数は

( )2

(1 )2n

Cr xK Cr

t

∆= −

∆ (3.27)

である。この場合は、 0Cr = や 1Cr = で 0nK = となり、 0.5Cr = のとき上と同様の最

大値を取る。

具体的な計算例を見てみよう。平均流速 1m/sU = 、水深 5mh = 、空間格子幅

1kmx∆ = とし、式(3.27)で最悪の結果が予想される 0.5Cr = を考えることとする。

このとき、時間刻みは 500st∆ = となる。数値拡散係数は、

( )2 22 -11000

250m s8 8 500n

xK

t

∆= = =

∆ × (3.28)

である。Fischer(1973)の観測結果によれば、物理的な拡散係数は

*

250xKRU

= (3.29)

が与えられているので、具体的に、 5mR h≈ = ならびに -1* 0.05ms

20

UU ≈ = を代入し、

2 -162.5m sxK = (3.30)

が求められる。つまり、 nK は容易に xK を越える可能性があり、数値解は物理的な

拡散よりむしろ数値拡散に支配されてしまうことになる。図3-4は、この

Dobbins and Bella のスキーム( (3.18)式)を用いて、幅 2m、深さ 1m、勾配 0.1%、

Strickler の係数 25、流量 1m3/s、流速 0.5m/s のモデル水路を平均流によって輸送

される三角形の濃度分布を示している。計算領域は 10kmの延長で、 200mx∆ = の

格子幅で 50 個の計算格子を構成する。上流(左側)の濃度分布(曲線0)は、約

3時間かけて下流へ輸送される。このときの計算条件は表3-1に示す通りである。

曲線1のみクーラン数が整数となっており、人工拡散(数値拡散)を生じさせずに

純粋移流が行われている。他の曲線は、強い数値拡散が現れ、もし、数値拡散のこ

30

とを知らない技術者がこれを見れば、これは物理拡散であると勘違いするであろう。

図3-4 Dobbins and Bella のスキームにおける数値拡散(文献(1))

表3-1 図3-4の計算の条件(文献(1))

31

別の例として、2ステップで半分陰解法、半分陽解法のスキーム

(Leendertse(1970))を取り上げることとする。このLeendertse スキームは、数値

拡散がゼロのスキームであり、Holly and Cunge(1975)によって河川の物質輸送に

適用されている。このスキームは数値拡散ゼロであるにも関わらず、残念ながら、

その「数値分散」によって計算結果は信頼できないものになっている。図3-5は

その計算結果を示している。曲線0が初期のガウス型濃度分布で、曲線1は

t=9,600s 後 の 厳 密 解 、 曲 線 2 、 3 、 4 、 5 は そ れ ぞ れ ク ー ラ ン 数

0.25, 0.5, 0.75, 1.00Cr Cr Cr Cr= = = = に相当する条件で計算を行った結果である。

数値分散とは、解のフーリエ成分が各々異なる伝播速度をもつために結果として解

が拡がっていくものである。伝播速度の誤差があるとき、解は大きな振動を示し、

マイナスの濃度まで現れることもあり、数値拡散と同じように技術者を悩ます誤差

である。この数値分散を押さえるために種々の人工粘性などが採用されたこともあ

るが、そのために質量保存を満たさなくなるという弊害も生まれ得る。

図3-5 Leendertseスキームの数値分散 (文献(1))

32

以上のように移流拡散方程式の数値計算法は問題点が多く残っており多くの研

究者がそれを解決すべくさまざまな高精度の計算スキームを開発してきた。ここで

は、参考のために2つの計算スキームを紹介する。

1つは、Holly-Preissmann(1977)によって開発された "2-point 4th order

method"のスキームである。前に出てきた Dobbins and Bellaのスキームと同様、

格子点 ( 1, 1)i n+ + に到達する軌跡(特性曲線と呼ぶ)を考え、その足が 1i ix xξ− ≤ ≤ と

なるξ にあるとすれば、 ( , )aC nξ を周囲の既知の濃度で補間しなければならない。

Dobbins-Bella スキームは、 ( 1, ) , ( , )a aC i n C i n− で直線内挿して求められたが、

Holly-Preissmann スキームはそれ以外にその濃度勾配 ( 1, ) , ( , )a aC Ci n i n

x x

∂ ∂−

∂ ∂を用

いて3次多項式を用いて内挿を行っている。Holly-Preissmann の計算スキームの

最終形は

1 2

3 4

( 1, 1) ( , ) ( 1, ) ( , )

( 1, ) ( , )

a a a a

a a

C i n C n aC i n a C i n

C Ca i n a i n

x x

ξ+ + = = − +∂ ∂+ − +∂ ∂

(3.31)

で与えられる。ここで、

21

2 1

23 1

24 1

(3 2 )

1

(1 )( )

(1 ) ( )i i

i i

a Cr Cr

a a

a Cr Cr x x

a Cr Cr x x

= −= −

= − −

= − − −

(3.32)

である。このスキームの特徴は、計算領域において濃度だけでなく濃度勾配も移流

させるということと、内挿する区間はわずか2点であるという点である。したがっ

て計算を進めるためには、濃度勾配に関しても移流計算を行う必要が出てくる。濃

度勾配を aC

x

∂∂

の代わりに 'aC を用いることにすると、流速U が一定のとき、式(3.13)

の純粋移流方程式を x で1回偏微分して得られる式、 ' '

0a aC CU

t x

∂ ∂+ =

∂ ∂ (3.33)

を計算するためのスキームが必要である。結果を示すと

33

' '

1 2

' '3 4

( 1, 1) ( , ) ( 1, ) ( , )

( 1, ) ( , )

a a a a

a a

C i n C n b C i n b C i n

b C i n b C i n

ξ+ + = = − +

+ − + (3.34)

となる。ここで、

1 1

2 1

3

4

6 ( 1)/( )

(3 2)

( 1)(3 1)

i ib Cr Cr x x

b b

b Cr Cr

b Cr Cr

+= − −= −= −= − −

(3.35)

この Holly-Preissmannスキームは、数値拡散・数値分散が非常に小さい、高精度

計算法である。図3-6は図3-5と同様の条件で計算を行った結果である。曲線

0は初期条件のガウス型濃度分布、曲線1は t=9,600s後の厳密解ならびに 1.0Cr =

の時の計算結果である。曲線2、3、4はそれぞれ 0.25, 0.50, 0.75Cr Cr Cr= = = に

おける計算結果を示している。非常に高い計算精度であることが分かる。

図3-6 Holly-Preissmannスキームの数値分散 (文献(1))

移流方程式に関する同じような高精度の計算スキームとして、6-point scheme

(Komatsu, Holly, Nakashiki and Ohgushi, 1985)がある。Holly-Preissmann

34

scheme(以下、H-P 法と略す。)と同じように特性曲線を過去に遡り、格子点間で

内挿する計算法であるが、H-P法が従属変数として濃度と濃度勾配を取り扱ってい

たのに対し、この手法は、従属変数としては6点の濃度のみを取り扱っている。ど

うして濃度勾配を従属変数からはずしたかと言えば、計算量を減らすことと、多次

元へ拡張したとき H-P 法では濃度のクロス微分が必要になってくるなどの問題点

が指摘されていたからである。最終的な 6-point scheme の式形は

1 2 3

4 5 6

( , 1) ( 3, ) ( 2, ) ( 1, )

( , ) ( 1, ) ( 2, )a a a a

a a a

C i n b C i n b C i n b C i n

b C i n b C i n b C i n

+ = − + − + −

+ + + + + (3.36)

ここで、

3 21 0.01806 0.03828 0.05633b Cr Cr Cr= − − +

3 22 0.2570 0.05276 0.3097b Cr Cr Cr= + −

3 23 0.6806 0.6480 1.033b Cr Cr Cr= − + +

3 24 0.6806 1.394 0.2869 1b Cr Cr Cr= − − +

3 25 0.2570 0.8236 0.5667b Cr Cr Cr= − + −

3 26 0.01806 0.09245 0.07439b Cr Cr Cr= − +

であり、 /Cr U t x= ∆ ∆ はクーラン

数である。図3-7は、図3-

5,6と同様の条件で 6-point

scheme で計算した結果を H-P

法や1次精度風上差分スキーム

と比較している。図中に 8-point

scheme(Holly and Komatsu,

1983)と表記してある計算法は、

6-point scheme よりさらに2点

の格子点を増やした計算法であ

る。6-point scheme は、従属変数

として濃度のみを用いて H-P 法と同等の精度を有する計算法であることが分かる。

図3-7 6-point scheme の数値分散 (文献(4))

35

4.あとがき

今回、「土木・建築関連技術者のための水理計算における差分法入門講座」と題

して3回にわたって講座を開く機会を与えていただいた。数値計算法の中でも差分

法に関する歴史は古く、また適用されている事柄も多岐にわたっている。今回の講

座の中で、「第1講 差分法入門」にはどうしてもテキストの中に入れたかった事

柄が含まれている。それは、水理計算を行う以前の基本的な微分と差分、偏微分方

程式などに関する事項である。簡単にいってしまえば、土木であろうと、電気であ

ろうと、機械であろうと、およそ差分法による数値計算を行おうと志す技術者にと

って、もっとも共通の基礎的事項であり、これを省くことはできないと考えたから

である。それに比べると、「第2講 差分法による水理計算手法(1)」、「第3講 差

分法による水理計算手法(2)」は、かなり河川を意識して書かれた内容である。

当初、洪水氾濫解析、潮流解析や開水路網解析なども内容に含める予定であったが、

紙面と時間の関係で割愛せざるを得なかった。入門講座という名称に甘んじてそれ

はご容赦願いたい。本講座を通して述べてきた事柄について、実際には FORTRAN

や C、BASIC などの言語を用いて計算を行うことになると思うが、プログラムリ

ストについても敢えて載せることはしなかった。しかし、プログラミングの際、い

ろいろ考えなければならない事項についてはある程度網羅していると考えている。

最後になるが、本講座の内容が今後遭遇する水理計算の際に少しでもお役に立てれ

ばと望む次第である。

36

参考文献

( 1 ) Cunge, J.A., F.M.Holly, Jr., and A. Verwey:Practical Aspects of

Computational River Hydraulics, Institute of Hydraulic Research, College of

Engineering, The University of Iowa, Iowa City, USA, 1980.

(2)椿東一郎:水理学 II、森北出版、1974.

(3)土木学会水理委員会水理公式集改訂委員会:水理公式集 昭和 60年版、社団

法人 土木学会, 1985.

( 4 ) Komatsu, T., F.M.Holly Jr., N.Nakashiki, K.Ohgushi: Numerical

Calculation of Pollutant Transport in One and Two Dimensions, Journal of

Hydroscience and Hydraulic Engineering, Vol.3, No.2, pp.15-30,1985.

37

演習問題(3)

【1】サンブナンの仮定について述べ、その仮定が成り立たない場合としてどのよ

うなものがあるか列挙せよ。

【2】マニングの粗度係数とストリクラー係数が水路の種類によってどの程度の値

を取りうるか調べよ。

【3】水門、セキを含む水路において内部境界条件として考えるにはどうすればよ

いか説明せよ。

【4】流砂の連続式を誘導せよ。

【5】流砂量の式としてはどのようなものがあるか調べよ。

【6】移動床モデルを数値解析する場合、安定なスキームを用いても計算できなく

なる場合がある。どのような場合か?

【7】分子拡散・乱流拡散・移流分散について説明し、大小を比較せよ。

【8】Dobbins and Bellaのスキーム((3.18)式)と Taylor級数展開を用いて数値

拡散係数を求めよ。

【9】数値拡散と数値分散の違いについて述べよ。