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「東北メディカル・メガバンク計画」 中間評価報告書 平成 27 年 3 月 「東北メディカル・メガバンク計画」中間評価委員会

「東北メディカル・メガバンク計画」 中間評価報告書 · 北メディカル・メガバンク機構」及び岩手医科大学に設置された「いわて東

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「東北メディカル・メガバンク計画」

中間評価報告書

平成 27年 3月

「東北メディカル・メガバンク計画」中間評価委員会

osakaki
参考資料1-2
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- 目 次 -

はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

Ⅰ 事業全体の評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

Ⅱ コホート調査に関する評価結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

1 東北大学における地域住民コホートの実施状況について・・・・・10

2 東北大学における三世代コホートの実施状況について・・・・・・13

3 岩手医科大学における地域住民コホートの実施状況について・・・15

Ⅲ バイオバンク・解析研究に関する評価結果・・・・・・・・・・・・・18

1 バイオバンクの実施状況について・・・・・・・・・・・・・・・18

2 東北大学における解析研究の実施状況について・・・・・・・・・21

3 岩手医科大学における解析研究の実施状況について・・・・・・・23

Ⅳ 東北メディカル・メガバンク計画 中間評価委員会 設置要綱・・・・25

Ⅴ 委員会に関する情報・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26

1 中間評価委員会委員名簿

2 バイオバンクに関する作業部会委員名簿

3 コホート調査に関する作業部会委員名簿

Ⅵ 審議経過・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27

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はじめに 「東北メディカル・メガバンク計画」は、東日本大震災で未曾有の被害を

受けた被災地において、地域医療の復興に貢献するとともに、創薬研究や個

別化医療の基盤を形成し、将来的に得られる成果を被災地をはじめとする住

民の方々に還元することを目指している。このため、「東日本大震災からの復

興の基本方針」(平成 23 年 7 月 29 日 東日本大震災復興対策本部決定)、「日

本再生の基本戦略」(平成 23 年 12 月 24 日 閣議決定)に基づき、大規模なゲ

ノムコホートを実施し、被災地の方々の健康・診療・ゲノム等の情報を生体

試料と関連させたバイオバンクを構築するとともに、ゲノム情報等の解析研

究を行うこととなった。

平成 23 年度補正予算から予算が措置され、総合科学技術会議(当時)にお

ける平成 24 年 8 月 31 日の「国家的に重要な研究開発の評価」を経て、本格

的なプロジェクト実施に至っている。

事業計画は、平成 23 年度から 32 年度までの 10 年間を想定している。平成

23 年度は準備段階、平成 24~28 年度までの 5 年間が第1段階、平成 29~32

年度までの 4年間が第 2段階となっている。

ゲノムコホートでは、8万人規模の地域住民コホートと 7万人規模の三世代

コホートを実施することとしており、そのうち岩手医科大においては約 3 万

人の地域住民コホートを担当し、東北大学においては残りの地域住民コホー

トと三世代コホート全体を担当している。協力していただく研究対象者の具

体的なリクルートについては、年度計画に基づき平成 25 年度から平成 28 年

度にかけて実施しているところである。

バイオバンクの構築については、コホートを通じて収集した生体試料と関

連情報を東北大学に集約することとしており、今後、匿名化等の適切な処理

を行った上で他の研究機関にも提供することとなっている。計画上は、早け

れば平成 26 年度中にも試料の提供が開始される予定であったが、現在も準備

段階にある。

解析研究においては、予防医療、個別化医療等の実現を目指し、生体試料

からゲノムやオミックス情報を取得し、健康情報・診療情報と合わせて、被

災地での増加が懸念される疾患等の分子機能解析等を進めている。平成 26 年

8 月には、頻度 5%以上の遺伝子多型の頻度情報を公開した。

平成 26 年度は本プロジェクト第 1 段階の 3 年目に当たることから、年度末

を見通し、文部科学省に設置された外部有識者による評価委員会において、本

プロジェクトの全体についての中間評価を行った。

評価に当たっては、平成 26 年 6 月 3 日から審議を開始し、東北大学及び岩

手医科大学からのヒアリングを行うとともに、コホート調査とバイオバンク・

解析研究のそれぞれの分野に関して専門的に調査を行う二つの作業部会を設

置し、宮城県及び岩手県で行われているコホート調査の実態や東北大学におけ

るバイオバンクの構築状況等についての実地調査を行うなど丁寧な審議を重

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ね、公正かつ適正に評価を行った。

本評価報告書は、その結果をとりまとめて作成されたものであり、今後の本

プロジェクト運営の改善に資するものである。

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Ⅰ 事業全体の評価

1.総評

東北メディカル・メガバンク計画は、東日本大震災の被災地を中心とした

大規模ゲノムコホート研究を行うことにより、地域医療の復興に貢献すると

ともに、創薬研究や個別化予防等の次世代医療体制の構築を目指し、平成 23

年度補正予算から開始したプロジェクトである。

文部科学省に推進本部及び推進委員会を設置して「東北メディカル・メガ

バンク計画 全体計画」を定め、当該計画に沿って東北大学に設置された「東

北メディカル・メガバンク機構」及び岩手医科大学に設置された「いわて東

北メディカル・メガバンク機構」が連携・協力を図りながらプロジェクトを

実施してきた。

プロジェクトは「コホート調査」、「バイオバンク」及び「解析研究」の3

つに大別でき、「コホート調査」は「地域住民コホート」と「三世代コホート」

に分けることができる。

平成 23,24 年度は実施体制の整備や地元自治体との調整を実施し、具体的

にコホート調査のリクルート活動等に着手したのは平成 25 年度からであり、

これまでに、国民健康保険(国保)における特定健康診査(健診)や地域支援

センター・サテライトを活用した地域住民コホート及び地域の産科病院等と連

携をした三世代コホートに取り組んできている。

あわせて、協力を得た研究対象者の生体試料を元にバイオバンクの構築を

進めるとともに、試料を活用した解析研究も実施しているところである。

また、復興事業という観点から、地域医療復興や人材育成にも取り組んで

いる。

「コホート調査」のうち、「地域住民コホート」については、短期間におい

てリクルートの実績を積み上げてきており、東北大学、岩手医科大学ともに

その取組は順調に進捗している。一方、「三世代コホート」については、現段

階でのリクルート数と目標との間で相当な開きがあり、今後、一層の努力が

必要である。

「バイオバンク」については、国内外とのバイオバンク等との連携協力を

図るなどの改善・強化すべき点があるものの、事業運営に必要な施設・設備、

実施体制及び情報管理体制は十分整備されており、全体としては妥当な水準

で実施されている。今後は、平成 27 年度にも収集した試料・情報を提供して

いく段階に入ることを踏まえ、可能な限り早期に提供が開始できるよう、そ

の方針や具体的運営方法を明確化していくべきである。

「解析研究」について、東北大学においては、日本人標準ゲノムセットの作

製、SNP 頻度情報の公開等の進捗があり、妥当な水準で実施されている。一方、

岩手医科大学においては、コホート調査への取組と比べ、まだ研究実績が少

なく、競争力のある具体的な計画を構築して取り組むなど、研究成果の創出

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に向けた改善・強化が必要である。これまで両大学にとって、コホート調査

やバイオバンク構築が喫緊の課題であったが、今後は解析研究における成果

が求められると考えられる。世界のヒトゲノム研究の進捗は早く、その流れ

に遅れることなく、タイミング良く解析研究の成果を挙げていくために、東

北大学・岩手医科大学が適切に協力して戦略的な研究計画を構築して取り組

んでいくべきである。また、データを他の研究者が速やかに活用できるよう、

早い段階からデータの公開、共有を実施する方法について検討するべきであ

る。

地域医療復興及び人材育成に関する取組は、東北大学・岩手医科大学とも学

内に持続可能な医師派遣制度の設定や、大学院におけるバイオインフォマテ

ィクス人材育成カリキュラム・講座の設置を行う事で、被災地域の医療復興

や、次世代医療開発に資する人材の育成に努めている。今後もカリキュラム

の改善を図りつつ、より積極的に取り組むことが期待される。

また、東北メディカル・メガバンク計画における倫理的課題に対する取組に

ついては、外部への情報発信を積極的に行っていくべきである。

以上により、東北メディカル・メガバンク計画については、改善・強化す

べき点があるものの、概ね妥当な水準で実施されていると評価できる。本評

価結果を活用し、プロジェクトの運営や研究計画の改善・見直しを実施する

べきである。今後も、地域医療の復興に貢献しつつ、次世代医療に繋がるよ

うな研究成果を挙げられることを期待したい。

2.進捗状況

「コホート調査」のうち、「地域住民コホート」については東北大学及び岩

手医科大学が、「三世代コホート」については東北大学が単独で取り組んでい

る。

「地域住民コホート」のリクルート数については順調に増加しており、東

北大学・岩手医科大学合わせて平成 27 年度末までに目標を達成する見込みで

ある。特定健診の活用が中心であるため、協力いただいている研究対象者の

層に偏りが見られることから、市町村や県職員の参加を促すなど、国保被保

険者以外の住民の参加を増加させる方策を検討すべきである。

東北大学が設置している地域支援センターにおけるリクルート数に比べ、

岩手医科大学のサテライトの活用が平成26年秋の時点ではあまり進んでおら

ず、今後の活用に期待する。

また、宮城県における追跡調査のために重要な MMWIN(みやぎ医療福祉情報

ネットワーク)については、稼働状況が十分でなく、今後、効果的・効率的な

追跡に向けて、県内の医療機関の協力を含めた運用体制の早期構築が望まれる。

「三世代コホート」のリクルート数については、平成 26 年度の時点で目標

数を相当下回っており、母親のリクルート数を増やす取組や祖父母等の登録

のない母親に対する協力依頼の工夫等を検討することが望まれる。

「バイオバンク」については、大量な試料の保存管理を行うために必要な

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大型の施設・設備は、最先端のものがしっかりと整備されており、実施体制

は十分に整備されている。今後、この事業を継続的に実施していくため、し

っかりとした予算計画を立てる必要がある。

「解析研究」について、東北大学においては、日本人標準ゲノムセットの

作製と日本人特異的な SNP アレイの開発が行われており、アレル頻度 5%以上

の SNP 情報を公開したことは評価できるが、利用価値を高めるため、よりま

れなアレル頻度(出来るだけ早期に 0.1%程度まで)の SNP の公開及びプロテ

オーム・メタボローム解析の成果が待たれる。今後は、研究成果を他の研究

者が速やかに活用できるよう、データの精度や情報管理面等について利用者

の理解を得つつ、早い段階からデータの公開、共有を実施する方法について

検討するとともに、海外との連携を進め、本事業の存在感を高めるべきであ

る。

また、ゲノム解析のためのインフラとして整備した高性能シーケンサーや、

平成 26 年度に導入された計算機資源などの研究資源を、今後積極的かつ効果

的に活用していくことが求められる。

岩手医科大学における「解析研究」は、目標達成に向けて努力し、一定の進

捗は認められるものの、現段階で研究の進捗を評価するには要素がやや不足し

ている。

3.実施体制・方法

東北メディカル・メガバンク計画は、文部科学省が定めた「東北メディカ

ル・メガバンク計画 全体計画」に沿って、東北大学の「東北メディカル・メ

ガバンク機構」と岩手医科大学の「いわて東北メディカル・メガバンク機構」

が、合同運営協議会を設置するなど協力してプロジェクトを実施している。

具体的なプロジェクトの推進に当たっては、地域医療支援、倫理・法令、

ゲノムコホート連携推進、ゲノム・オミックス解析戦略、バイオインフォマ

ティクス・人材育成という課題別に「東北メディカル・メガバンク計画課題

別全国ワーキンググループ(WG)」を設置し、有識者からの指導・助言を受け

ながら進めている。

「地域住民コホート」については、インフォームド・コンセント取得時の

補助資料等の印刷物を分かりやすく作成したり、十分な内容を盛り込んだ紙

芝居等を活用したりするなど、東北大学・岩手医科大学の双方において様々

な工夫・改良を行いながら適切に事業を実施している。一方、協力を得た研

究対象者への調査結果の回付については両大学ともにかなりの時間がかかっ

ており、改善が求められる。

「三世代コホート」についても、研究対象者へのサービス向上の取組や担

当ゲノムメディカルリサーチコーディネーター(GMRC)の意見を取り入れた

運営改善等が行われており、東北大学と産科病院等との連携のもと、適切に

対応している。

「バイオバンク」については、試料収集の初期の体制作りが一番労力を費

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やすところであり、これまでの実施体制・方法は適切に行われている。また、

健康診断との連携協力体制を構築した点は効率的であり評価できる。今後は、

早ければ平成 27 年度中に、これまで収集した試料・情報を提供していく段階

に入ることから、早急に提供のための方針や体制を整備し、利便性の高いバ

イオバンクが構築されることを期待する。

一方で、他のバイオバンク等(特に海外のバイオバンクやコンソーシアム)

や利用者との連携が重要であり、今後、更なる努力と研究者・利用者向けの広

報・情報発信が必要である。

東北大学における「解析研究」については、効率的かつ継続的な実施に向け

て更なる検討が必要であるが、設備・備品、また人員等についての実施体制は

整っている。シーケンサーを用いたゲノム解析に関しては、「解析人数」と「解

析精度」それぞれの充実が重要であり、現時点では「解析人数」を優先して取

り組んでいる事は妥当であると考えるが、今後は保有台数も考慮し、長期的な

維持・運用の観点からの再検討も必要である。

岩手医科大学の「解析研究」については、他のコホートとの連携体制を構築

したことは有意義であり、今後のより積極的な連携推進が望まれる。また、海

外のコホート研究との連携も検討していただきたい。

4.倫理面・情報管理

説明同意文書については、WG 等で検討が行われ、概ね適切にまとめられて

おり、同意の撤回や用途を制限するための手立ても適切に用意されている。

ICの取得については、必要な訓練を受けたGMRC資格を有する説明者(看護師、

保健師等)によって決められた手順で行われており、適切である。通常の健

康診断とは異なる「研究」への参加であることを理解できるようにも配慮さ

れている。ただし、説明同意文書が長文化していることから、継続的な見直

しを期待する。

また、本事業の計画検討会における提言で言及されていた倫理的課題を扱う

WG が適切に組織され、定期的に開催されてきたことは評価できるが、その活

動状況がほとんど公開されておらず、改善が求められる。

検体の管理については、標準的な IT 技術が導入され、バーコードによる管

理が実施手順に従って行われているなど、取り違えないような工夫が行われて

いる。

5.地域医療復興の取組

東北メディカル・メガバンク計画では、東日本大震災により被害を受けた

地域医療の復興をプロジェクトの目的の一つとしている。これを受けて、東

北大学では「ToMMo クリニカルフェロー制度」、岩手医科大学では「メガバン

クフェロー制度」を設け、震災により深刻な医師不足に陥った県内の医療機

関に対し、医師派遣を行っている。東北大学及び岩手医科大学の医師派遣制

度は、雇用したフェロー医師に被災地域での医療への貢献と先進的な研究活

動の両方に従事させるなど、医師不足の解消と派遣医師のキャリア形成を両

立した形で実施している。これまでの医局単位での医師派遣とは異なる仕組

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みを構築した点には意義があり、今後も工夫しながら、長期的・計画的な派

遣が望まれる。

被災地における健康不安の解消に資する取組として、東北大学・岩手医科

大学ともに研究対象者に血液・尿検査等の結果を回付しているほか、健康に

関するシンポジウム・セミナー等を実施している。今後は、事業開始時に目

標としていた遺伝子解析結果の回付に向け、具体的な回付内容や倫理的な課

題などについて検討を進めていただきたい。

6.人材育成の取組

本事業を推進するに当たっては、GMRC やバイオインフォマティクス人材、

遺伝カウンセラー等の多様な人材が必要となる。これを受けて東北大学及び

岩手医科大学はそれぞれに GMRC 認定と研修の制度を定め、GMRC の育成に向け

た取組を実施している。また、両大学ともに、大学院博士課程にバイオイン

フォマティクスに関する専攻を設置し、次世代のゲノム研究人材の育成に努

めており、平成 26 年度現在において計 6名が在籍している。我が国のバイオ

インフォマティクス人材が全国的に不足している現状も鑑み、今後はバイオ

インフォマティクス人材輩出のモデルとなるよう、カリキュラム改善等を図

り、積極的に人材育成に取り組むことを期待する。

7.今後の展望

「地域住民コホート」については、研究対象者の層の偏りについて改善が

必要であるが、概ね順調に進んでおり、平成 27 年度末までに 8万人をリクル

ートするという目標達成に向けた着実な取組に期待する。また、追跡断面調

査やアウトカム追跡の具体的手順を検討すべき時期に来ており、東北大学と

岩手医科大学とが連携して、比較可能な調査となるよう具体的手順の準備が

必要である。

「三世代コホート」については、現状の進捗の遅れを踏まえ、平成 28 年度

末までに 7 万人をリクルートするという目標の達成に向け、リクルート強化

のための具体的方策の検討を行い、実行に移していくべきである。

「バイオバンク」については、収集目標は達成できる見込みが高いが、今

後の継続的な運営のため、長期計画の立案と効率化が重要である。特に、平

成 27 年度から収集した試料・情報を提供する段階に入ることから、その方針

の明確化や提供体制の整備が必要である。また、広報活動の強化や国際コン

ソーシアム・研究計画への貢献等により、国際的な認知度の向上に努めるべ

きである。

東北大学における「解析研究」については、解析人数の目標は達成できる

ものと考えられる。今後は限られた予算の中で解析研究の対象と方法の優先

順位付が重要である。また、両親と子、三世代データの解析については、新

しい視点で研究計画を構築し、取り組んでいく必要がある。岩手医科大学の

「解析研究」については、三層オミックスパネルからの未病マーカーの探索・

同定を目指しているが、他の健常者コホートとの連携が必要である。また、

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血液細胞のエピゲノム解析と血液疾患以外の疾患との関係については、再検

討が必要な部分がある。

これまで両大学ともに、コホート調査とバイオバンク構築が喫緊の課題で

あったが、今後は解析研究の成果が求められるため、競争力のある具体的な

計画を構築してこれに取り組む必要がある。

ヒトゲノム研究の進捗は非常に速く、世界の流れに遅れることのないよう、

できるだけ早期に試料・情報を公開すると共に、両大学が協力して戦略的に

研究計画を構築し、研究に取り組んでいく必要がある。

倫理面での検討プロセスについては、プロジェクトの透明性・公平性の確

保という観点から改善が必要である。今後は検討の成果を文書にまとめて公

表したり、議論の過程を開示したりするなど、積極的に外部への情報発信を

することが重要である。

以上

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Ⅱ コホート調査に関する評価結果

1 東北大学における地域住民コホートの実施状況について

(総合評価)

コホート研究の観点から、短期間において体制を工夫してきたこれまで

の努力とリクルート数の実績は評価できる。また、地域支援センターにお

いては MRI 等の画像診断法を取り入れる等、取組内容でも意義は大きい。

平成 25 年度の目標数の見直しにより、事実上リクルート期間が短縮し、目

標がより厳しいものとなっているが、これを達成するに足る体制つくり(組

織並びに事業に必要な基盤要素の整備)も進んでおり、期間中のリクルー

ト者数の目標達成が期待される。今後は、追跡断面調査、アウトカム追跡

の具体的準備を開始し、来年度以降の着実な実施が必要である。

以上より、東北大学における地域住民コホートは、改善すべき点はある

ものの、全体として順調に実施されていると評価できる。

(取組の進捗状況)

地域住民コホートのリクルート数は平成 27 年度末までに目標に達成す

ると考えられる。地域支援センターのリクルートにおいても 8 千名弱の登

録が行われ、センターの十分な活用がなされているなど、順調に進捗して

いる。今後は、健診会場において国保被保険者以外の住民の参加を増やす

こと、更には集団の偏りを少なくするための工夫として、県や市町村職員

への研究参加の呼びかけ等が望まれる。また、健診実施前の自治体との打

合せ等を更に密にすることで、同意率の向上と地域住民コホートのリクル

ート数の目標達成が期待される。予算の活用に関しては、特定健診の流れ

を妨げずに、研究の概要説明、インフォームド・コンセント(IC)の取得、

検査の実施をする上で、多くのスタッフが必要なことについては理解でき

る。

一方、追跡調査の実施については、MMWIN との連携に頼るところが大き

いが、まだ MMWIN を通じて診療情報を集められる状態ではなく、今後、効

果的・効率的な追跡に向けて、県内の医療機関の協力を含めた運用体制の

早期構築が望まれる。

また、試料の分譲やオープンデータ化等を打ち出しているものの、具体

的にどのような仕組みを目指し、どのように普及していくのか、いまだ明

確になっておらず、今後は具体的なコホート連携をモデルとして打ち出し、

検証を進めることが重要である。

以上より、改善すべき点はあるものの、進捗状況は順調であると評価で

きる。

(実施体制・方法)

本事業の実施に当たっては、様々な媒体を工夫活用し、運営されている

といえる。特に、パンフレット等の説明の補助資料は分かりやすく作成さ

れており、周知が進んでいる。また、地域支援センターの活動において、

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24 時間医療相談ができる電話回線を設けて対応にあたるなど、独自の方法

についても、評価できる。今後は、ミッションステートメントや年間目標

の設定を更に明確にし、実施者間で共有する必要がある。

検体の収集・管理については、多くの人員・労力が注がれており、その

作業の多くが手作業で進められているなど、face-to-face の関係構築に役

立つと評価できる一方で、データの信頼性確保の方策も必要である。

結果の回付については、血液・尿検査結果を、時間がかかるアンケート

調査結果とは独立して作成し、早期に結果を回付する工夫をしているが、

血液・尿検査結果は約 3か月、アンケートの結果は約 6か月かかっており、

更なる迅速化が望まれる。

実施に際しての他機関との連携については、岩手県における事業主体で

ある岩手医科大学と連絡、連携を十分に取っていることがうかがわれる。

今後の実施に際しては、最終的なアウトカムの精度に差が生じないよう、

引き続き十分な調整を行う必要がある。また、対象自治体との連携に関し

ては、これまで震災の影響が大きかった沿岸部や人口規模の大きな自治体

が多かったため、リクルートが比較的困難であったと推察されるが、来年

度は、震災の影響の少ない内陸の自治体が主体であるため、協力がより得

やすいものと期待される。

MMWIN との連携による医療情報と健康情報のリンクが期待されるが、運

用体制等がいまだ十分なレベルではなく、MMWIN を通じて診療情報を入手

する段階には至っていないことから、今後、効果的・効率的な追跡に向け

て、県内の医療機関の協力を含めた運用体制の早期構築に期待したい。

以上より、実施体制・方法については妥当であると評価できる。

(倫理面・情報管理)

リクルート現場では各ブースで十分なスペース、スタッフ、時間を確保

して、研究対象者への倫理面の配慮や情報管理は適切に行われていた。IC

も、訓練された GMRC 資格を有する説明者(看護師、保健師等)によって、

決められた手順で行われており、適切に実施されていた。

情報管理についても、バーコードによる管理が実施手順に従って行われ

る等検体等の取り違えを防ぐ工夫もされており、適切に実施されていた。

遺伝子解析結果に関する回付情報の品質については、研究レベルでの保

証に留まっていることから、今後、臨床レベルも見据えた品質の信頼性向

上と回付後の継続的なフォローアップ体制が必要である。

以上より倫理面・情報管理については、健診現場での説明や検体試料の

扱いという面において優れていると評価できる。

(今後の展望)

地域住民コホートについては、概ね順調に進んでおり、今後は追跡断面

調査、アウトカム追跡の具体的手順を検討する時期に入ってきたと考え

られる。追跡調査については、登録が終了した平成 28 年度以降に本格的

に開始されるので、それまでに岩手医科大学と連携して、比較可能な調

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査の具体的手順の準備が必要である。また、研究については他の大型コ

ホート研究プロジェクト等との連携、地域医療支援(ToMMo クリニカルフ

ェロー等)については地域医療復興事業等との連携もそれぞれ検討する

必要がある。

以上より、今後の展望については妥当であると評価できる。

(その他・特記事項)

地域医療への貢献、人材育成に関しては、現在までに延べ 68 人の医師

派遣の実績があり、これまでの東北大学における医局単位での自治体へ

の医師派遣とは異なる仕組みを構築した点でも意義がある。医師不足解

消への貢献と医師のキャリア形成を両立する形で実施されており、今後

も工夫しながら、より長期的・計画的な派遣の実施が望まれる。

脳や大腿部の MRI 撮影等、これまでのコホート調査にはない情報の集積

については、それによって科学的価値のある成果を生み出すためにはあ

る程度のデータ数が必要であり、現在分かっていない様々な病態の解明

にも貢献できるよう、リクルート終了までにできる限り登録人数を増や

しておくべきである。

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2 東北大学における三世代コホートの実施状況について

(総合評価)

三世代コホートについては、各産科病院等において GMRC を含む人材を

配置させ、組織的に事業を運営しているが、リクルート数が少なく、現

時点で目標数と相当な開きがある。したがってリクルート活動に関して

は、最終目標に達するよう更なる工夫が必要である。特に、より多くの

三世代の家系組数の確保に向けて、リクルートの強化を目指すべきであ

る。

以上より、三世代コホートは、今後一層の努力が必要である。

(取組の進捗状況)

三世代コホートに関してはリクルート数が少なく、現時点で目標数と相

当な開きがある。三世代コホートの特性である三世代の家系組数を多くす

ることが、研究としての独自性を生かすためにも必須である。母子世代の

みならず祖父母世代のリクルートを増やす工夫をする必要があり、これま

でに祖父母の登録のない母親に対するアプローチや、分析の視点からリク

ルートの重点を三世代のどの部分に置くのかを検討すること等が望まれ

る。また、母親のリクルート数を増やす工夫ができないか、医療機関との

再度の協議が必要である。

以上より、取組の進捗状況はやや不十分であると評価できる。

(実施体制・方法)

協力いただいている研究対象者に対する 24 時間対応の健康相談を実施

している点、東北大学で用いた電子マネーカードによる謝礼システムは参

加に対するインセンティブを高め、研究対象者へのサービスを向上させる

点等で評価できる。今後他の研究の参考となるよう、電子マネーカードの

有用性等を公表していただきたい。また、リクルート現場での人材育成や

運営については、担当 GMRC の意見を取り入れつつ、参加率向上に向けた現

状分析と改善が繰り返し行われており、有効な運営体制への工夫がなされ

ている等、東北大学と地元医療機関との信頼関係のもと、十分な協力体制

が築かれている。リクルート現場でのスタッフのモチベーションは高く、

適切に対応している様子がうかがわれた。

以上より、実施体制・方法については妥当であると評価できる。

(倫理面・情報管理)

「1 東北大学における地域住民コホートの実施状況について」に同じ。

(今後の展望)

三世代コホートのリクルートは更に強力に進める必要がある。目標の達

成に向け、重点的なリクルート、祖父母世代のリクルートを強化する必要

がある。そのための具体的方策について早急に検討を行い、新たに可能な

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方策を実行に移していただきたい。

以上より、今後の展望はやや不十分であると評価される。

(その他・特記事項)

GMRC の研究対象者との信頼構築、IC 取得の手順、カルテ情報の閲覧や

転記等の取組は評価に値する。この人材や仕組みを他の産科病院等にも普

及することで、本事業の質を高めることに役立つものと考えられる。

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3 岩手医科大学における地域住民コホートの実施状況について

(総合評価)

大学が市町村やリクルート現場と密接な連携を図り、予定よりも順調に

リクルートが実施されている。短期間における登録に対して、これまでの

努力と実績は評価できるが、目的達成のため、残りの期間に、本事業への

大学及び関係機関の更なる力の傾注が望まれる。

中でも、今後リクルートの実施に際して、これまで踏み込んでこなかっ

た週末(土・日曜日)の活用について、具体的に検討していくべきである。

また、市町村の特定健診の受診率が低下するとの懸念から、年度前半にサ

テライトにおける募集ができないといった報告があったが、その改善に向

け、関係行政機関等との連携・調整が必要である。

アウトカムの把握方法が岩手医科大学と東北大学では異なるが、最終的

なアウトカムの精度に差が生じないよう、引き続き緊密に調整を行い、比

較可能な調査の具体的手順の準備が必要である。

以上より、岩手医科大学における地域住民コホートは、改善すべき点は

あるものの、順調に実施されていると評価できる。

(取組の進捗状況)

リクルート数に関しては、短い期間に多数の参加があり、全体としては

順調に進んでいる。目標達成と成果の質の向上のため、今後の一層の努力

に期待したい。例えば、リクルート方法の特性から、現在、協力いただい

ている研究対象者の大多数が国保の特定健診受診者に偏っており、今後は

国保被保険者以外の住民の参加を促すことが望ましい。このため、市町村

や健診機関と調整し、国保被保険者以外の住民が市町村の健診会場で研究

に参加できる方法や、市町村や県の職員に参加を促す方法を検討すべきで

ある。

一方、サテライトの活用が遅れており、市町村の定期健診終了後の状況

を見守る必要があるが、リクルートの増加に向け、大学並びに関係機関の

更なる力の傾注が必要である。

以上より、取組の進捗状況は改善すべき点はあるものの、順調であると

評価できる。

(実施体制・方法)

健康調査実施のために、市町村の保健師、事務職員や健診団体との調整

や連携協力は十分に行われており、健診現場における調査の流れは、健診

スタッフの意見を取り入れて改良しながら実施されていた。また、他のコ

ホート調査(歯科、呼吸機能の検査)との共存がなされており、一連の健

診として検査が受けられるように工夫されていた。また、住民の参加協力

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を得られやすいよう、各市町村の食生活改善委員、保健推進員、民生委員

等の会合で研究スタッフが事前説明を行っていた。さらに、受診者が安心

して研究に参加できるよう、十分な内容を盛り込んだ紙芝居を用いた説明

をしたり、健康調査の通知の封筒の裏側や同封する説明チラシに研究内容

や協力依頼に関する文言を大きな字で分かりやすく記載したり、個別同意

説明ブースの待機者に対して、担当者が積極的に説明するなどの工夫が見

られた。その他の広報活動でも、地元新聞が本研究を大きく紙面に取り上

げた地域において、非常に高い同意率を得るなど、周知の工夫が結実して

いると言える。

一方、調査結果についても、大きな字や図表を用いるなどの工夫を行い、

アンケート調査結果とは独立して血液・尿検査の結果を早期に回付してい

るが、それでもなお、4か月近くと長い時間がかかっているため、結果の

集団説明会への参加者も 1割程度にとどまっている。

追跡実施体制、特に疾病登録方法は、岩手医科大学と東北大学とで異な

る方法を採っているが、アウトカムの精度に差が生じないように、両大学

で連携を密に図り、比較可能な調査の具体的手順の準備を進めることが必

要である。

以上より、実施体制・方法は優れていると評価できる。

(倫理面・情報管理)

IC の取得方法については、訓練された GMRC 資格を有する説明者(看護

師、保健師等)によって、決められた手順で行われているなど、適切に実

施されていた。また、健診時に本コホート調査の集団説明において、住民

に分かりやすい説明が行われ、健診受診者から研究対象者候補を円滑に導

出する工夫がなされている等、会場の運営も適切に実施されていた。

情報管理については、検体採取前に試験管等が研究対象者自身のもので

あることの再確認の実施とともに、バーコードによる管理が実施手順に従

って行われていた。また、検体処理の際には、2 人の検査技師が健診会場

からの検体の仕分け、分注、検査機関や東北大学への発送を担当していた

が、検体番号の読み上げ確認を徹底し、検体移送に誤りが無いようにして

いた。

なお、現地調査の会場にて、遺伝子解析の結果を回付しない理由につい

ての質問が健診受診者から出ていたが、説明者が回答に苦慮している事が

見受けられた。このような質問は今後も想定されるため、実際に質問を受

けたとき、誰が受けても同じ回答になるように、あらかじめ東北大学と岩

手医科大学で相談の上、統一的な回答を準備して、説明者全員に周知すべ

きである。

以上より、倫理面・情報管理については、健診会場での説明や検体資料

の扱いという面において優れていると評価できる。

(今後の展望)

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概ね計画通りにコホート調査が進んでいるものと認められるが、今後登

録者数の増加のための具体的方策を再検討するとともに、研究対象者の層

の偏りを改善する取組が必要である。特に、特定健診相乗り型やサテライ

ト型の調査において、週末(土・日曜日) を健診日に加えることが最重要

課題であり、市町村や健診機関との調整を早い段階で進めるべきである。

特定健診は多くの自治体で週末にも実施されているので、週末の実施を導

入することにより、どちらの型の調査においても、若年層や勤務者層の登

録の増加が見込まれる。また、特定健診対象者以外の住民に対しても、案

内通知を出すなど参加促進策を実施する必要がある。

追跡調査については、登録が終了した平成 28 年度以降に本格的に開始

されるとのことで、それまでに東北大学と連携して、比較可能な調査の具

体的手順を準備する必要がある。また、ゲノム情報の回付については、現

状の方針を分かりやすく文章化して、健診現場での説明の統一を図る必要

がある。

以上より、今後の展望は妥当であると評価できる。

(その他・特記事項)

地域医療への貢献、人材育成に関しては、平成 25 年より 8 名の医師派

遣を行っており、今後も長期的、計画的な派遣計画が望まれる。

人材育成に関しては、岩手医科大学地域医療支援委員会といわて東北メ

ディカル・メガバンク地域連携・医療情報 ICT 部門との連携により、人

材派遣を進める計画であるが、本事業とより深く関連するフェロー医師

の確保に関しての数字目標等を示す必要がある。

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Ⅲ バイオバンク・解析研究に関する評価結果

1 バイオバンクの実施状況について

(総合評価)

本事業では、事業運営に必要な施設・設備、実施体制及び情報管理体制

は十分整備されている。地域住民コホートの試料収集は順調に進捗してい

るが、三世代コホートの試料収集は計画より遅れている。今後は、国内で

実施されている他のバイオバンクとの連携体制を積極的に構築するとと

もに、海外との連携・協力を図るため、海外向けの広報活動の強化や成果

の発信に努める必要がある。

倫理的課題への対応については、評価できる取組が数多くあるが、一般

社会から見えにくい部分が多く、今後、改善が必要である。

バイオバンクは長く継続すべき事業であるため、そのための効果的・効

率的な運営方針・体制の検討を開始する必要がある。

以上より、本事業は、今後、改善・強化すべき点があるものの、全体と

して妥当な水準で実施されていると評価できる。

(取組の進捗状況)

初期投資としての予算を活用し、大量の試料を保存・管理するために必

要な大型の施設・設備は、最先端のものが確実に整備されている。

また、地域住民コホートの試料収集は、順調に進捗しており、高く評価

できる。

一方で、三世代コホートの試料収集は、計画より遅れており、今後の努

力が必要であることから、三世代コホートを実施する科学的意義をより明

確に発信し、住民の理解と協力を得ることが重要である。三世代やトリオ

(両親と子)を対象とした解析は重要であり、そこに重点を置くことが本

プロジェクトの特徴ともなり得るので、継続した収集数の増加が望まれる。

このような事業は、機械化・自動化を図ったとしても一定の人員や保守

管理費用が必要であり、確実に予算計画を立て、今後の継続を図るべきで

ある。

以上より、進捗状況は、概ね妥当であると評価できる。

(実施体制・方法)

試料収集は、初期の体制作りが一番労力を費やすところであるが、実施

体制の構築や収集の方法は適切である。また、健康診断との連携・協力体

制を構築した点は、試料収集の継続性が担保され、効率的であるため、評

価できる。今後は、解析研究への利用を見据え、効率的な運用体制の整備

等、より良いバイオバンクの構築を期待する。

一方で、他のバイオバンクや利用者との連携が必要であり、そのための

努力はなされているが、今後、更なる努力と研究者・利用者向けの広報が

必要である。特に他のバイオバンクとの連携・協力に関しては、国内のみ

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ならず、海外のバイオバンクやコンソーシアム、海外の既存データ等との

連携も視野に入れた検討が望まれる。利用者への提供はこれから本格化す

る部分と考えられるが、国内外への広報活動の仕方や提供方法等に関して、

さらなる詳細な検討が必要である。

以上より、実施体制・方法については、改善・強化すべき点があるも

のの、概ね妥当であると評価できる。

(倫理面・情報管理)

「将来的な研究利用に対する同意の在り方」については、WG 等で検討が

行われ、概ね適切な形で説明同意文書としてまとめられており、同意の撤

回や用途を制限するための手立ても適切に用意されている。同意取得の際

には、健診の担当者とは別に GMRC が説明を行い、説明同意文書にも十分

な記載を行うことにより、通常の健康診断とは異なる「研究」への参加で

あることを理解できるよう配慮されている。ただし、説明同意文書が著し

く長文化していることから、協力いただく研究対象者の理解の向上のため、

必須の説明項目を精査しつつ、継続的な見直しが行われることを期待する。

また、説明同意文書中には民間企業への試料等の提供については明示され

ておらず、その点に関する研究対象者の理解の確保や、企業における試料

の受入れ等において問題がないか、今後検証が必要である。

また、本事業の計画検討会における提言で言及されていた倫理的課題を

扱う WG が適切に組織され、定期的に開かれてきたことは評価できるが、

その活動状況がほとんど公開されておらず、検討結果が「具体的運用を図

るためのルール」へと結実しているかどうかについても疑問が残る。

情報の管理に関しては、標準的な IT 技術を導入し、妥当な体制である

と評価できる。今後、倫理的課題と情報管理に必要なコスト(人材、資金)

が適正であるのか、自ら点検していくべきである。

以上より、バイオバンクの構築のみならず、本計画全体における倫理的

課題への対応状況等を総合的に考慮すると、倫理面・情報管理については、

やや不十分であると評価される。

(今後の展望)

継続的な努力により、収集目標は達成できる見込みが高いと評価でき

る。平成 27 年度には、収集した試料や情報を提供する段階に入っていく

ことから、提供方法の明確化や体制の整備を進め、利便性の高いバイオ

バンクを構築していく必要がある。

健常者コホートについては、試料の収集は出発点に過ぎない事を念頭

に置き、研究対象者の理解を十分に得て、追跡調査等長期的な協力を得

ていく必要がある。このため、より価値の高いバイオバンクとするため

の実施計画を早急に立案するとともに、その際、事業の成果等を一般市

民にも理解できる内容で作成して研究対象者に提供することや、ISO の取

得も視野に入れた品質管理の向上等に向けた取組も検討していただきた

い。また、バイオバンク事業は恒常的かつ継続的な運営が必要なことか

ら、運営の効率化と予算獲得の長期計画が必要である。

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一方で、海外のバイオバンク関連のコミュニティとの連携に関しては

必ずしも十分ではなく、今後、広報活動の強化や国際コンソーシアム・

研究計画への貢献等により、海外における認知度の向上に努めるべきあ

る。

倫理面での検討過程については、関連する会議の構成員や議事概要等

がほとんど公開されていないなど、一般社会から見えにくい形で進めら

れており、透明性・公平性の確保という観点から改善が必要である。今

後は、類似のナショナル・プロジェクトでの取組も参考にしつつ、検討

成果をガイドライン等にまとめて公表したり、遺伝情報の回付方針等の

継続的な検討課題について、議論の進捗を開示しつつ作業を進めたりす

るなど、積極的に外部への情報発信を行うことが必要である。

以上より、今後の展望については、改善・強化すべき点があるものの、

概ね妥当と評価できる。

(その他・特記事項)

長期間にわたって継続することが重要なプロジェクトであり、このよう

な事業に従事する意欲を持った次世代の人材育成も重要である。

ヘルシンキ宣言の弱者条項への抵触に関する外部からの指摘について、

今後、何らかの形で説明責任を果たすべきである。特に、被災地住民は特

別な保護が必要な「弱者」に該当するのではないか、本事業が被災地住民

にとって優先順位の高い健康ニーズに応えているか、という指摘について

は、本事業の経験を今後の参考となるような文書としてまとめられること

を期待する。

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2 東北大学における解析研究の実施状況について

(総合評価)

日本人標準ゲノムセットの作製、日本人特異的な SNP アレイの開発、SNP

の頻度情報の公開は順調に進捗している。今後は、より低いアレル頻度(出

来るだけ早期に 0.1%程度まで)の情報公開及びプロテオーム・メタボロー

ム解析の成果が期待される。

そのためには、独創的な研究計画を構築して研究に取り組むとともに、

整備した施設設備の効果的・効率的な運用が必要である。その際、海外向

けの広報活動や海外のプロジェクト等との連携を進めて本事業の存在感

を高めるとともに、ヒトゲノム研究の世界の流れに遅れないように迅速に

研究成果を挙げていくことが重要である。

以上より、解析研究は、改善・強化すべき点があるものの、全体として

妥当な水準で実施されていると評価できる。

(取組の進捗状況)

日本人標準ゲノムセットの作製と日本人特異的なSNPアレイの開発につ

いては、日本人特異的 SNP が発見されるなど順調に進捗しており、得られ

た SNP の頻度情報を公開したことは、評価できる。一方で、現在の全ゲノ

ムリファレンスパネルは、アレル頻度 5%以上の SNP が公開されているが、

利用価値を高めるため、今後、解析結果の精査や解析人数の拡充により、

0.1%程度までの SNP の公開が待たれる。今後は、ToMMo 全ゲノムリファレ

ンスパネルのデータを海外の連携プロジェクトに参画できるような交渉

を早急に進めるなど、海外との連携を進め、存在感を高めるべきである。

プロテオーム・メタボローム解析は、成果を公表するまでには至ってお

らず、今後の進捗が期待される。また、ゲノム解析のためのインフラが整

備され、多数の日本人を対象とした解析作業が進展している。一方、整備

された高性能シーケンサーや、平成26年度に導入された計算機資源など、

今後、研究資源の積極的かつ効果的な活用を求める。

以上より、取組の進捗状況は概ね妥当であると評価できる。

(実施体制・方法)

効率的かつ継続的な運営に向けて更なる検討が必要であるが、設備・備

品、また人員についての実施体制は整っている。

シーケンサーは保守費用のみでも高額なものと考えられるが、維持運用

に関しては、保有台数考慮し、長期的な戦略の観点からの再検討が必要で

ある。特に、ゲノム解析においては解析人数と解析精度のそれぞれの充実

が重要である。現時点で解析人数を優先して取り組んでいることは妥当で

あると考えるが、将来的には、設置された台数も含め、長期的な維持・運

用の観点からの再検討が必要である。

以上より、実施体制・方法は、改善すべき点があるものの、概ね妥当で

あると評価できる。

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(今後の展望)

解析人数の目標は達成できるものと考えられる。

解析の精度に関しては、今後のハード面での進歩等でも改善が期待でき

るが、現状のハードでの解析方法の変更等の検討が必要であると考えられ

る。特に、日本人ゲノムの reference を効率的に構築するためには必要で

あり、人数を限定して精度を重視した解析を実施する必要もあると考えら

れる。このため、限られた予算の中で解析研究の対象と方法の優先順位付

けが必要であると考えられる。

また、ヒトゲノム研究の進捗は非常に速く、日本人以外の東洋人の解析

も進んでいることから、世界の流れに遅れないようできるだけ早期に成果

を出していく必要がある。コントロールデータを収集してどのような研究

成果を出すか、1000 人ゲノムプロジェクトの次の魅力ある研究テーマを早

急に見いだし、知的財産化・実用化も考慮しつつ、独創的かつ戦略的な研

究計画を立てることが重要である。

トリオ及び三世代データを利用した研究については、これまでに発表さ

れていない新しい視点をもって研究計画を構築・実施し、早急に成果を出

していくべきである。(haplotype phasing についてはこれまでトリオデー

タを用いて行われてきたが、現在 1個体からでもできる技術をつくる競争

が繰り広げられ、成果を挙げつつある)。

以上より、今後の展望については、改善・強化すべき点があるものの、

概ね妥当であると評価できる。

(その他・特記事項)

日本にはバイオインフォマティシャンが絶対的に不足しているため、こ

の観点からの人材育成にも取り組み、人材輩出のモデルとなっていただき

たい。

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3 岩手医科大学における解析研究の実施状況について

(総合評価)

東北大学との連携協力体制を構築したことは高く評価される。今後も継

続していただきたい。

一方で、解析研究の目標は定められているが、いまだ実績が少ないため、

今後は、国内外の研究動向を踏まえ、できるだけ競争力のある具体的な計

画を構築して研究を進展させ、成果を挙げていくことが期待される。

以上より、解析研究は、今後の改善・強化が必要である。

(取組の進捗状況)

目標達成に向けて努力し、一定の進捗は認められるが、今後の成果の見

通しや費用対効果については、明確に判断できる要素に乏しい。また、本

研究に関して、具体的な成果の公表には至っていない。

以上より、現段階で研究の進捗を評価するには要素が不足しているもの

の、取組の進捗状況は、やや不十分であると評価される。

(実施体制・方法)

東北大学との堅固な連携・協力体制を構築できたことは評価でき、本プ

ロジェクト全体として効果的である。また、他のコホートとの連携体制を

構築したことは有意義であり、高く評価できる。ただし、実績はまだ少な

いため、今後のより積極的な連携推進が望まれる。また、海外のコホート

研究(既存データの活用を含む)との連携についても検討を行っていただ

きたい。

以上より、実施体制・方法については概ね妥当であると評価できる。

(今後の展望)

被災地域で発症率が高いと考えられる脳卒中、虚血性心疾患、精神疾患

の発症リスクを予想すること、実施中の三層オミックス参照パネルから未

病マーカーを探索・同定することを目的としているが、本事業だけで目的

を達成することは容易ではないと考えられ、JPHC や J-MICC 等の他の健常

者コホートと更に連携する必要がある。

また、血液細胞のエピゲノム解析が血液疾患以外のどのような疾患と関

係しているのかは未知であり、内容の改善・再検討を要する点があると考

えられる。海外のコホート研究においても該当する研究例がないことは、

その難しさを示しているものと推量する。

今後は、国内外の研究動向を踏まえ、プロジェクトの規模や費用対効果

の観点にも留意しつつ、できるだけ競争力のある具体的な計画を構築し、

解析研究に取り組むとともに、できるだけ早期に研究成果を挙げることが

重要である。

以上より、今後の展望については、やや不十分であると評価される。

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Ⅳ 平成26年度「東北メディカル・メガバンク計画」中間評価委員会 設置要綱

平成26年5月23日

文部科学省研究振興局

平成26年度「東北メディカル・メガバンク計画」中間評価委員会 設置要綱

1.設置の目的

東北メディカル・メガバンク計画のこれまでの事業実績に基づき、目標の達

成状況や成果等を評価し、より有効な事業運営に資することを目的とし、平成

26年度「東北メディカル・メガバンク計画」本中間評価委員会(以下「委員

会」という。)

2.組織等

(1)委員会の委員(以下、「委員」という。)は、外部の有識者や専門家で

構成する。

(2)委員は、別紙のとおりとする。

(3)委員会に主査を置き、委員の中から文部科学省研究振興局長が指名する。

(4)委員会は、主査が招集する。

(5)委員会は、委員の過半数の者の出席がなければ開会することはできない。

(6)委員会の議事は、出席した委員の過半数の同意を以って決し、可否同数

のときは主査の決するところによる。

(7)委員の委嘱期間は、委嘱した日から平成27年3月31日までとする。

3.情報公開

委員会は特定機関の利害に関わる検討を行うため、会議及び議事については

非公開とする。ただし、特定機関の利害に関わる議事を除き、委員会の資料及

び議事録を適切な方法で公開することができる。

4.守秘義務

委員は、委員会において知り得た情報について他に漏らしてはならない。

5.庶務

委員会に係る庶務は、文部科学省研究振興局ライフサイエンス課において処

理する。

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Ⅴ 委員名簿

中間評価委員会

石木 幹人 岩手県立高田病院 元院長

磯 博康 大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学 教授

小幡 裕一 理化学研究所バイオリソースセンター センター長

金岡 昌治 (株)住化分析センター 代表取締役社長

◎ 小原 雄治 国立遺伝学研究所 特任教授

佐々木 淳 宮城県庁保健福祉部 技監兼次長

諏訪 牧子 青山学院大学理工学部 教授

田代 志門 昭和大学研究推進室 講師

水野 正明 名古屋大学医学部附属病院 教授

◎:主査

コホート調査に関する作業部会

◎ 磯 博康 大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学 教授

井上 真奈美 東京大学大学院医学系研究科健康と人間の安全保障

(AXA)寄附講座 特任教授

斉藤 功 愛媛大学大学院医学系研究科 公衆衛生・健康医学分野 教授

水野 正明 名古屋大学医学部付属病院 教授

山岸 良匡 筑波大学医学医療系社会健康医学研究室 講師

◎:部会長

バイオバンクに関する作業部会

◎ 小幡 裕一 理化学研究所バイオリソースセンター センター長

田代 志門 昭和大学研究推進室 講師

中村 幸夫 理化学研究所バイオリソースセンター 細胞材料開発室長

森下 真一 東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授

◎:部会長

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Ⅵ 審議過程

○中間評価委員会

第 1 回委員会(開催日:平成 26 年 6 月 3 日)

事業概要説明、作業部会設置の決定、意見交換

第 2回委員会(開催日:平成 26 年 8 月 18 日)

課題整理、作業部会での実施事項の決定、ヒアリング実施の決定

第 3回委員会(開催日:平成 26 年 10 月 27 日)

東北大学・岩手医科大学からのヒアリング(両作業部会と合同開催)

第 4回委員会(開催日:平成 27 年 2 月 19 日)

両作業部会の報告、報告書案についての意見交換

第 5回委員会(開催日:平成 27 年 3 月 3 日)

報告書の取りまとめ

○コホート調査に関する作業部会

第 1 回作業部会(開催日:平成 26 年 10 月 27 日)

東北大学・岩手医科大学からのヒアリング(第 3 回委員会と合同開催)

第 2回作業部会(開催日:平成 26 年 10 月 14 日)

現地調査(岩手県)

第 3回作業部会(開催日:平成 26 年 12 月 16 日)

現地調査(宮城県)

第 4回作業部会(開催日:平成 27 年 2 月 13 日)

作業部会報告の取りまとめ

○バイオバンクに関する作業部会

第 1 回作業部会(開催日:平成 26 年 10 月 27 日)

東北大学・岩手医科大学からのヒアリング(第3回委員会と合同開催)

第 2回作業部会(開催日:平成 26 年 12 月 4 日)

現地調査(東北大学)

第 3回作業部会(開催日:平成 27 年 2 月 10 日)

作業部会報告の取りまとめ