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平成 27 年度 包括外部監査報告書 土地区画整理事業に関する事務の執行について 宇都宮市包括外部監査人 町 田 昌 久

土地区画整理事業に関する事務の執行について - …...- 3 - 1 外部監査の概要 1.1 外部監査の種類 地方自治法第252 条の37 第1 項及び第2 項に基づく包括外部監査

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  • 平成 27 年度

    包括外部監査報告書

    土地区画整理事業に関する事務の執行について

    宇都宮市包括外部監査人

    町 田 昌 久

  • - 1 -

    目 次

    1 外部監査の概要 ............................................................................................................ - 3 - 1.1 外部監査の種類 ...................................................................................................... - 3 - 1.2 選定した特定の事件(監査のテーマ) ................................................................. - 3 - 1.3 選定した理由 ......................................................................................................... - 3 - 1.4 外部監査の対象期間 .............................................................................................. - 3 - 1.5 外部監査の実施期間 .............................................................................................. - 4 - 1.6 監査従事者 ............................................................................................................. - 4 - 1.7 監査要点と監査報告 .............................................................................................. - 4 -

    2 土地区画整理事業の概要と監査対象及び監査視点 ...................................................... - 5 - 2.1 土地区画整理事業の定義 ....................................................................................... - 5 - 2.2 土地区画整理事業の長所 ....................................................................................... - 5 - 2.3 土地区画整理事業の効果 ....................................................................................... - 5 - 2.4 土地区画整理事業の位置付け ................................................................................ - 5 - 2.5 監査対象 ................................................................................................................. - 6 - 2.6 監査の視点 ............................................................................................................. - 8 -

    3 土地区画整理事業の手続 .............................................................................................. - 9 - 3.1 土地区画整理事業の立上げから完了までの流れ(公共施行の場合) .................. - 9 - 3.2 減歩 ...................................................................................................................... - 10 - 3.3 家屋等の移転 ....................................................................................................... - 10 -

    4 宇都宮市土地区画整理事業の現状と課題 .................................................................. - 16 - 4.1 最大限地積処分の機会費用 ................................................................................. - 16 - 4.2 地元負担率 ........................................................................................................... - 19 - 4.3 土地区画整理事業の国庫補助金 .......................................................................... - 25 -

    5 宇都宮大学東南部第 1 土地区画整理事業 .................................................................. - 38 - 5.1 事業の概要 ........................................................................................................... - 38 - 5.2 監査の結果 ........................................................................................................... - 45 -

    6 宇都宮大学東南部第 2 土地区画整理事業 .................................................................. - 52 - 6.1 事業の概要 ........................................................................................................... - 52 - 6.2 監査の結果 ........................................................................................................... - 68 -

    7 平松本町第三土地区画整理事業 ................................................................................. - 75 - 7.1 事業の概要 ........................................................................................................... - 75 - 7.2 監査の結果 ........................................................................................................... - 78 -

    8 宇都宮鶴田第 2 土地区画整理事業 ............................................................................. - 85 - 8.1 事業の概要 ........................................................................................................... - 85 -

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    8.2 監査の結果 ........................................................................................................... - 96 - 9 小幡・清住土地区画整理事業 .................................................................................. - 103 -

    9.1 事業の概要 ......................................................................................................... - 103 - 9.2 監査の結果 ......................................................................................................... - 125 -

    10 岡本駅西土地区画整理事業 .................................................................................... - 127 - 10.1 事業の概要 ....................................................................................................... - 127 - 10.2 監査の結果 ....................................................................................................... - 134 -

    11 仮換地課税 .............................................................................................................. - 140 - 11.1 仮換地課税の概要 ............................................................................................... - 140 - 11.2 仮換地課税の実施 ............................................................................................... - 140 - 11.3 監査の結果 ....................................................................................................... - 141 -

    12 土地区画整理事業が固定資産税に与える影響 ....................................................... - 142 -

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    1 外部監査の概要 1.1 外部監査の種類 地方自治法第 252 条の 37 第 1 項及び第 2 項に基づく包括外部監査 1.2 選定した特定の事件(監査のテーマ) 土地区画整理事業に関する事務の執行について

    1.3 選定した理由 宇都宮市では、平成 19 年度に第 5 次宇都宮市総合計画(以下「総合計画」という。)を策定し、平成 34 年を目標年次として都市像「くらしいきいき まちキラキラ つながる人 ★ 夢のみや うつのみや」の実現に向け、基本計画に取り組んでいる。 「土地区画整理事業の推進」は、総合計画の後期基本計画(平成 25 年度から平成 29年度まで)において 6 つの分野別計画の「都市基盤分野」に属し、基本施策 21「機能的で魅力のある都市空間を形成する」ことを目標とする事業に位置付けられている。対

    象地区は、小幡・清住地区、宇都宮大学東南部第 1・2 地区、鶴田第 2 地区、岡本駅西地区、平松本町第三地区の 6 地区である。また、その中の岡本駅西地区の土地区画整理事業は、総合計画基本構想に示す「まちづくりの重点課題」に対応した 10 の戦略プロジェクトの一つである「50 万都市の中枢機能・交流機能強化、活力向上プロジェクト」を構成している。 土地区画整理事業は、基本施策 21 によると防災性や利便性の高い、安全・安心で快適な居住環境を形成することを目的としている。事業は、対象地区の住民の利害を調整

    し合意の下に進められることになるが、対象地区の選定から事業完了まで長期間の歳月

    を要する一大事業である。また、移転補償を含む工事には多額の歳費がかかる。土地区

    画整理事業の特殊性から予算管理、進捗管理が適切に機能することが求められる。さら

    には、少子・超高齢社会、人口減少の時代潮流を踏まえつつ、社会潮流の変化として安

    全・安心で環境にやさしい都市づくりへの要請の高まりを土地区画整理事業がいかにく

    み上げているかが、総合計画の実施に当たって求められる視点である。 以上のことより、土地区画整理事業に関する事務の執行を監査対象とし、事務の執行

    が関係法令等に基づき実施されているか否か、また、経営管理の体制を監査する意義は

    大きいものと考え、平成 27 年度の包括外部監査のテーマとして選定した。

    1.4 外部監査の対象期間 原則として平成 26 年度(平成 26 年 4 月 1 日から平成 27 年 3 月 31 日まで)とした。

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    1.5 外部監査の実施期間 平成 27 年 6 月 17 日から平成 28 年 1 月 26 日まで監査を実施し、平成 28 年 3 月 14日に最終的な意見をまとめたものである。

    1.6 監査従事者 包括外部監査人 公認会計士 町 田 昌 久

    補 助 者 公認会計士 江 原 照 雄 公認会計士 岩 本 達 之 公認会計士 小 髙 和 昭 公認会計士 斎 藤 秀 樹 公認会計士 増 山 雄 貴

    1.7 監査要点と監査報告 1.7.1 監査要点 包括外部監査の根拠法規である地方自治法第 252 条の 37 第 2 項によると、包括外部監査人は、監査に当たって監査対象団体の「財務に関する事務の執行」及び「経営に係

    る事業の管理」が、第 2 条第 14 項(住民の福祉の増進、最小の経費で最大の効果)及び第 15 項(組織及び運営の合理化、規模の適正化)にのっとってなされているかどうかに意を用いなければならないとされる。この規定を受けて包括外部監査における監査

    要点としては、次の 2 つにまとめることができる。 ① 財務事務執行の合規性 ② 行政の管理視点(住民福祉の増進等上記第 2 条第 14 項及び第 15 項)に基づいて、

    行政の経営管理制度であるPDCA循環サイクルが整備運用されているか否か

    1.7.2 監査の結果について この監査報告書では、上記地方自治法第 252 条の 37 第 2 項に基づき、監査の結果について報告を 2 つに大別し、次のように使い分けている。

    区分 指 摘 意 見

    財務に関する

    事務の執行

    合規性違反の事実

    指摘事項に対する改善提案

    経営に係る事

    業の管理

    行政の経営管理制度であるPDCA循環サイクル

    に違反している事実

    行政の管理の視点である「有効性」、「効率性」、「優

    先性」、「公平性」等を管理

    する仕組みや運営が不適

    切であることの事実

    既存の管理制度(予算統制制度やPDCA循環サイクルの行政評価制

    度)外の管理制度の不備に対する指

    摘 行政監査に基づく評価(ある事業が

    「有効」であるか「効率的」である

    か等の視点から、「有効である」とか

    「効率的である」という監査の結論)

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    2 土地区画整理事業の概要と監査対象及び監査視点 2.1 土地区画整理事業の定義

    土地区画整理事業とは、都市計画区域内の土地について、公共施設の整備改善及び宅

    地の利用増進を図るため、土地の区画形質の変更及び公共施設の新設又は変更に関する

    事業をいう(土地区画整理法(以下「法」という。)第 2 条第 1 項)。 2.2 土地区画整理事業の長所 土地区画整理事業は、一定の地区内について道路や公園等の公共公益施設を総合的面

    的に整備するために、必要な公共施設だけを線的あるいは点的に用地買収により整備す

    る方法と比較して利用度の低い残地が生じない。また、直接買収方式とは異なり公共施

    設や宅地の整備改善によってもたらされる宅地価額の増加(受益)度合いに応じ、各権

    利者から減歩等により公平に負担を求めることができ、地権者に対して従前の土地に対

    応した換地を定めるので、特定の者だけが立ち退かなくてもよく地縁を存続させたまま

    街づくりが可能となる。 (注)上記 2.2 及び次項 2.3 の記載は、「土地区画整理法制研究会編著 よくわかる土地区画整理法 第二次改訂版」から要約の上、引用している。 2.3 土地区画整理事業の効果 施行地区内の道路、公園、上下水道等が面的に整備されるため公共空間が増加し、交

    通の利便が良くなるだけでなく、火災、浸水等に対する防災効果が高まる。宅地の形状

    が整形され、どの宅地も公道に面するようになり、風通し、採光が良化するため居住環

    境は著しく向上する。 2.4 土地区画整理事業の位置付け 監査のテーマとして選定した「土地区画整理事業」は、都市計画における市街地開発

    事業の一つに位置付けられるが、都市計画の体系では次の図のようになる。都市計画と

    は、都市の発展を計画的に誘導し、これらの活動が安全で快適かつ機能的に行えるよう

    に、土地利用、都市施設などを総合的、一体的に計画することである(「宇都宮の都市計

    画 2011」5 頁)。その内容は、①土地利用(線引き、用途地域等)、②都市施設の整備(道路、公園、下水道等)、③市街地開発事業に関する計画の 3 つの柱から成り立っている。

    都市計画は、都市計画法により県が定めるものと市が定めるものが決められているが、

    土地区画整理事業は、施行面積や施行予定者により県又は市が定めることになる。

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    (★:宇都宮市において定めているもの) 2.5 監査対象 土地区画整理事業は、施行者によって個人施行(一人又は数人共同)、組合施行(7人以上共同により設立した土地区画整理組合)、公共施行(都道府県又は市町村)など

    に分けられる。公共施行は、宇都宮市の総合計画や都市マスタープランなどの上位計画

    を踏まえ、計画的に整備が必要な地域を選定して実施することとなる。 監査対象として、宇都宮市における土地区画整理事業のうち、宇都宮市が施行者とな

    っている公共施行の土地区画整理事業を選定するが、その中から平成 26 年度において施行中である次の 6 地区を監査対象とする。

    地域地区(土地利用)

    ★用途地域

    ★特別用途地区

    ★高度利用地区

    景観地区

    緑地保全地域他

    都市施設の整備

    ★道路

    ★公園

    ★河川

    学校・図書館

    病院その他

    市街地開発事業

    ★工業団地造成事業

    ★市街地再開発事業

    新都市基盤整備事業

    防災街区整備事業その他

    地区計画

    ★地区計画等

    防災街区整備地区計画

    歴史的風致維持向上地区計

    沿道地区計画

    集落地区計画

    促進区域等

    市街地再開発促進区域

    土地区画整理促進区域

    住宅街区整備促進区域

    都市計画区域

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    事業名・地区名 面積

    (ha)施行状

    況 認可日

    施行 年度

    期間

    (年)総事業費

    (百万円)平松本町第三地区 3.9 完了 平成 22 年 11 月 8 日 H22-32 11 467宇都宮大学東南部第 1 48.2 施行中 平成 11 年 7 月 14 日 H11-29 19 23,210宇都宮大学東南部第 2 41.8 施行中 平成 19 年 3 月 28 日 H19-33 15 27,970小幡・清住 16.9 施行中 平成 25 年 3 月 21 日 H25-39 15 24,100鶴田第 2 86.2 施行中 平成 11 年 12 月 28 日 H11-33 23 23,760岡本駅西 59.2 施行中 平成 6 年 12 月 19 日 H06-35 30 26,000(注1)総事業費には、他事業施行分(主に上水道事業、公共下水道(汚水)事業)を

    含む。 (注 2)施行年度は清算期間を含む。

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    2.6 監査の視点 2.6.1 事業の長期化への対応 土地区画整理事業は、基本構想の策定から事業の完了まで長期間にわたるのが一般的

    である。その間、一部の道路が通行止めのまま使用できない状況となったり、舗装がで

    きない状態の道路であるため生活がかえって不便になることがある。同じ地区内におい

    ていつまでも重機や工事車両が行き来し、工事による騒音や振動が続くような場合があ

    る。 土地区画整理事業が長期化する原因として様々な要因が考えられるが、例えば反対地

    権者から賛同を得るために要する時間や、家屋等の移転補償金の金額に対する地権者の

    了解に要する時間、工事費や移転補償金等の予算付けの問題、あるいは工事業者の施工

    問題等、どこにその原因があるのか行政における現状理解を確認する作業が必要である。 その上で、課題解決に向けて行政はそれらの原因を除去するためにどのような対応を

    し、工夫や改善を図っているのかが問われる。事業における行政の管理ポイントをいか

    に管理しているのかという点について監査をする。

    2.6.2 公共施設の整備 土地区画整理事業は、防災性や利便性の高い、安全・安心で快適な居住環境を形成す

    ることを目的としており、そのために公共施設を優先的に整備することが重要となる。

    公共施設は、地権者あるいは地域住民に満足の行くものであるのか、その必要性や緊急

    性は時代潮流や社会の変化に対応しているのか、長期間の事業の中において施行者であ

    る行政は公共施設の必要十分性をどのように管理しているのかが問われる。 また、土地区画整理事業以外に公共施設を整備するための方法はなかったのか、近隣

    の公共施設との比較により検討する。 2.6.3 多額な歳費の投入 監査対象として選定した地区のうち現在施行中である 5 つの土地区画整理事業には、それぞれ総事業費が 2 百億円超という多額な予算が充てられているが、工事費や移転補償金等の支出を最小化するための取組はどのように機能しているのか、また、地区内の

    地権者に対する工事費の応分の負担を適切に求めているのか、保留地減歩との関連で検

    討する。

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    3 土地区画整理事業の手続 3.1 土地区画整理事業の立上げから完了までの流れ(公共施行の場合)

    上位計画

    •総合計画、都市計画マスタープラン等の上位計画を踏まえ、計画的に整備が必要な地域を選定

    企画・調査•基本構想を作成し、実現方策(事業手法)を検討

    都市計画•施行区域及び公共施設の都市計画決定

    事業計画

    •現地測量•事業計画決定

    仮換地指定

    •仮換地指定を行うことにより仮換地に使用収益権を移行

    移転・工事

    •家屋・工作物の移転•公共施設の築造及び宅地の整地工事

    換地処分•換地処分を行い、土地・建物の登記を一括実施

    清算

    •清算金の徴収・交付を実施

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    3.2 減歩 土地区画整理事業では、地権者からその権利に応じて土地を提供してもらう減歩とい

    う仕組みがあり、公共減歩と保留地減歩の 2 種類がある。 道路や公園等の公共施設が不十分な区域において、地権者からその権利に応じて少し

    ずつ土地を提供してもらい、その土地を公共用地に充てることになるが、これを公共減

    歩という。また、土地区画整理事業により利用価値の高い宅地に変わることから、宅地

    の価額の増加分の範囲内においてその一部を売却し事業資金の一部に充てることがで

    きる。これを保留地減歩という。 換地処分に伴う減歩について憲法第 29 条の財産権の侵害と損失補償の問題が過去に

    裁判で争いとなっているが、最高裁の判決においても減歩は憲法違反に当たらないとの

    判決が出ている。その要旨は次のとおりである。 土地区画整理事業では、土地の区画形質の変更及び公共施設の新設又は変更によって

    健全な市街地の造成をしようとするものであり、公共施設の新設等のための用地として

    施行区域内の宅地は多かれ少なかれ減歩されるのが通例である。このような土地の減歩

    は健全な市街地造成のために土地所有者等が受忍すべき財産権に対する社会的制約で

    あり、また、土地区画整理事業によって宅地の利用価値の増加が見込まれるのであるか

    ら、地積が縮減しても宅地の利用価値の増加により直ちにその交換価値に損失を与える

    ことにはならないと考えられることから減歩それ自体によって直ちに財産権の侵害が

    あったということはできない(最高裁第一小法廷 昭和 56 年 3 月 19 日判決)。 また、保留地処分(いわゆる費用減歩)が憲法第 29 条第 1 項(財産権は、これを侵

    してはならない。)、同条第 3 項(私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。)に違反するものではないと解する判決が出ている。保留地の基

    準を定める土地区画整理法第 96 条第 2 項の規定の趣旨は市街地において施行前の宅地価額と同額の施行後の土地を確保せしめれば権利者の保護に欠けるところがないから

    その差額に付き保留地処分をなしうるものであるが、健全な市街地の形成という土地区

    画整理事業の目的遂行のための費用に充てるためのものである点からも同規定に従っ

    てなされる保留地処分は何ら憲法第 29 条第 1 項、同条第 3 項に違反するものではない(前橋地方裁判所 昭和 44 年 11 月 22 日判決)。 3.3 家屋等の移転 3.3.1 損失補償の概要

    損失補償は、土地区画整理事業の施行に伴い権利者に対して、建物等の移転又は除却

    が必要となった場合に、これに伴う通常生ずる損失を金銭で補償する費用であり、土地

    区画整理事業のうちで最も多い支出項目である。法第 78 条第 1 項によれば、建築物等の移転・除却に伴い損失を与えた場合、通常生ずべき損失を補償しなければならないと

    されている。

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    補償金は、建築物移転料、工作物移転料、動産移転料、立竹木移転料、仮住居等の使

    用に要する費用、家賃減収補償、借家人補償、改葬の補償、祭し料、移転雑費からなり、

    それぞれ補償費の算定方法が定められている。 宇都宮市は、公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱(昭和 37 年 6 月 29 日閣議決

    定)を基礎に制定された「公共用地の取得に伴う損失補償基準(昭和 37 年 10 月 12 日用地対策連絡会決定)」及び「公共用地の取得に伴う損失補償基準細則(昭和 38 年 3月 7 日用地対策連絡会決定)」に準拠し、移転等に伴う損失補償の算定を公平かつ円滑・適正に行うため、損失補償基準を設けている。

    3.3.1.1 建築物移転料の概要

    建築物移転料は、事業の実施に伴い建築物の移転等が必要になったときに、当該建築

    物が移転後においても従前の価値及び機能を失わないよう、仮換地の規模及び形状、建

    築物の形態、構造及び用途並びに仮換地及び建築物のその他の条件を考慮して、通常妥

    当と認められる移転工法を決定し、その移転に通常必要な費用を補償するものである。

    移転工法は、曳家工法、再築工法、改造工法、除却工法、復元工法などがあり、曳家工

    法と再築工法が一般的に用いられている。

    (1)曳家工法 建築物を解体しないで仮換地に曳行する工法をいい、従前の土地と仮換地との間に障

    害物又は著しい高低差のない場合等に適用され、同工法を適用する場合の補償費は以下

    のように算定する。 曳家工事費+補修工事費

    曳家工事費は対象となる建物面積に補償単価(木造建物の標準状態の場合、1㎡当り6

    万円)を乗じて算出される。 (2)再築工法

    仮換地に従前の建築物と同種同等の建築物を再築する工法をいい、従前の土地と仮換

    地との間に障害物又は著しい高低差がある場合等で、曳家工法によることが著しく困難

    と認められる場合に適用され、同工法を適用する場合の補償費は以下のように算定する。 建築物の現在価値+運用益損失額+取り壊し工事費-発生材価額 運用益損失額とは、建築物を建築する際、現在価額を超えて新たな出費を強いられる

    費用につき、本来であれば、耐用年数満了時までの間運用し、利益を得ることができた

    はずの額をいう。 また、建築物の現在価額と運用益損失額の合計は、建築物の推定再建築費に再築補償

    率を乗じて得た額で算定される。 推定再建築費は、建築直接工事費+共通仮設費+諸経費からなり、建築直接工事費は、

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    従前の建物と同等同種の建物を残地に再現する場合の建築直接工事費を積算し、共通仮

    設費は建築直接工事費の 3%(木造の場合(非木造は直接工事費に一定の比率を乗じる))、諸経費は建築直接工事費と共通仮設費の合計金額に一定の比率を乗じて算定する。

    再築補償率は、次の算式で算定されるが、実務上は「損失補償基準標準書」の再築補

    償率表上で耐用年数及び経過年数から対応する再築補償率を適用する方法を用いてい

    る。

    再築補償率 = 1 0.8 + + 0.8 × 1 1(1 + ) n 従前の建物の経過年数 N 従前の建物の標準耐用年数(「等級別標準耐用年数表」より) α 価値補正率 r 年利率

    (3)改造工法

    従前の建築物等の支障部分を切り取り、残存部分を改造することにより従前の機能を

    維持する工法 (4)除却工法

    従前の建築物等の一部又は全部を除却する工法 (5)復元工法

    現在の建築物を解体し、再使用できる資材は使用し、再使用できないものについては

    新しい資材を補足することにより従前と同様の建築物を復元するもの 3.3.1.2 工作物移転料

    工作物移転料の対象となる工作物とは、門、塀、造園設備、機械設備その他これらに

    類するものをいう。 (1)移転可能な工作物についての取扱い

    移転可能な工作物(建築物に付随する工作物及び機械工作物等営業用工作物を除く。)

    については、建築物の復元工法に準じて算定するものとする。 その算定式は次のとおりである。 補償額=解体工事費+復元工事費(補足材費を含む。)-発生材価額

    (2)移転困難な工作物についての取扱い

    移転困難な工作物(井戸、コンクリート造り工作物等)については、原則として価値

    補償とし、機能的に移転先に再設することが適当であると認められるものは、新設に要

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    する費用を算定するものとする。 その算定式は次のとおりである。 補償額=新設工事費+取り壊し工事費-発生材価額

    (3)建築物に付随する工作物(大規模工作物を除く。)についての取扱い

    電気設備、ガス設備、給排水設備等の通常建築物と一体的に施工される付随工作物に

    ついては、建築物に包含し、建築物の移転料として算定することとする。

    (4)特殊な庭園についての取扱い 特殊な庭園(樹木、竹、潅木、花卉、芝生、花壇、庭石、燈籠、池泉、流水、生垣等

    を構成要素として、これに造園技術を加え、建築物と一体となって総合的美的景観が作

    られているものをいう。)については、庭園の構成物件の移転料のほか、現在の美的景

    観を形成するために要する造園費を加算できるものとする。

    3.3.1.3 動産移転料 動産移転料の対象となる動産は、屋内動産と一般動産に分けられる。 屋内動産とは、居住用家財、店頭商品、事務用什器その他の動産で普通引越荷物とし

    て取扱うことが適当なものをいう。 一般動産とは、木材、薪炭、石炭、砂利、石材、鉄鋼、据え付けをしていない機械器

    具、金庫その他の動産で容積及び重量で台数積算を行うことが適当なものをいう。 動産の移転料は、次に掲げる式により算定した額とする。 補償額=1台当り標準移転費×所有台数×移転回数 屋内動産の移転料は、建築物の占有面積及びその収容状況を調査し、地域における標

    準的な一般貨物自動車の運賃により算定する。 一般動産の移転料は、品目、形状、寸法、容積、重量その他台数算出上必要な事項を

    調査し、地域における標準的な一般貨物自動車の運賃により算定する。

    3.3.1.4 立竹木移転料 立竹木移転料は、立竹木の移転等が必要なときに、移植又は伐採に要する費用等を一

    定の算定方法によって補償するものである。立竹木移転料の対象となる立竹木は、庭木

    類、用材林、収穫樹等である。 庭木類は、観賞上の価値又は防風、防雪その他の効用を有する立木で、住宅等の敷地

    内に植栽されているもの(自生木を含む。)をいい、観賞樹(高木、株物、玉物、生垣

    及び特殊樹)、効用樹、風致木、地被類、芝類及びツル性類に区分される。 庭木類を移植することが相当であると認められるときは、移植に通常必要とする費用

    及び移植に伴う枯損により通常生ずる損失を補償する。

  • - 14 -

    移植による補償=移植費+(樹価×枯損率) 庭木類を伐採することが相当であると認められるときは、当該庭木類の正常な取引価

    格と伐採除却に要する費用相当額との合計額から、伐採により発生する材料の価格を控

    除した額を補償する。 伐採による補償=樹価+伐採除却費-発生材価格 同様に、用材林、収穫樹等についても、その特性に応じて移植又は伐採に要する費用

    等を算定し、補償する。

    立竹木補償金は、庭木類、用材林、収穫樹等に区分して対象樹木ごとに樹種名、幹周

    囲、樹高、本数等の樹木に係る基本データ及び「損失補償基準標準書」の樹種別枯損率

    表に基づく移植の可否、枯損率等の判定結果を記入した上で、これらの結果に該当する

    補償単価を割り出して補償額を積算する。

    3.3.1.5 移転雑費 移転雑費は、建築物等を移転し、又は除却する場合において、仮住居等の選定に要す

    る費用、法令上の手続に要する費用、移転通知費、移転旅費その他の雑費を必要とする

    場合に、通常これらに要する費用を補償するものである。 また、移転に伴い、建物の所有者等が就業できないときは、就業できないことにより

    通常生ずる損失を補償するものである。 (1) 仮住居等の選定に要する費用とは、宅地建物取引業者に依頼して選定すること

    が適当であると認められるときは、委託報酬相当額、選定に要する交通費等として、

    建築物等の所有者及び占有者が自ら選定する場合は、選定に要する交通費、日当等

    とする。 (2) 法令上の手続に要する費用に係る補償金額は、建築確認等に要する費用(建築

    確認申請手数料等、検査手数料、建築確認申請図書の作成費用、建築確認申請の代

    行に要する費用、設計工事監理に要する費用等)、登記に要する費用(建物の表示

    登記、滅失登記及び表示変更登記に要する費用、建物の保存登記に要する費用並び

    に登録免許税相当額)、その他官公署等に対する法令上の手続に要する費用並びに

    法令上の手続のために必要な交通費及び日当(交通費及び日当×補償日数)の合計

    額である。 (3) 移転通知費、移転旅費その他雑費に係る補償金額は、移転通知等のために必要

    な費用、建物移転工事契約等に要する費用、引越しのために必要な交通費、日当そ

    の他通常必要と認められる諸経費のうち、必要と認められる費用の合計金額である。 ア 移転通知費は、書状による移転通知のために必要な費用及び当該地方の慣習に

    より引っ越しの挨拶のため必要とされる物品の購入費用の金額である。 イ 建物移転工事契約等に要する費用は、建物所有者が負担することとなる建物移

  • - 15 -

    転又は移転先確保(従前と同種の権原に限る。)のための契約に要する印紙税額相

    当額である。 ウ 引っ越しのために必要な交通費及び日当は、通常必要とされる金額である。 エ その他通常必要と認められる諸経費は、地鎮祭費用、上棟式費用、建築祝費用

    及び建物の移転に伴い生計を共にする子弟が転園転校を余儀なくされた場合の新

    規教材購入費用のうち必要と認められる費用の合計額である。 (4) 就業できないことにより生ずる損失額は、就業不能日数に当該地域における平

    均労働賃金を乗じて得た額を参考として算定する。この場合において、就業不能日

    数は、建築物等の種類、構造、移転工法等に応じて適正に定めた日数とする。

  • - 16 -

    4 宇都宮市土地区画整理事業の現状と課題 4.1 最大限地積処分の機会費用 4.1.1 保留地減歩の施行地区間比較

    「3.2 減歩」において換地処分に伴う減歩の概要及びその法的根拠を示したが、保留地減歩に関して監査対象とした 6 施行地区について、保留地最大限地積と保留地予定地積の差について、事業比較を行うと大きな違いがある。

    保留地は、法第 96 条の規定により、事業の施行の費用に充てるため、換地計画において換地として定めないことができる一定の土地である。地方公共団体が施行者となる

    土地区画整理事業においては、その土地区画整理事業の施行後の宅地の価額の総額が施

    行前の宅地の価額の総額を越える場合に限り、その差額に相当する金額の範囲内におい

    て保留地を定めることができる(法第 96 条第 2 項)。実務的には、整理前宅地価額総額を整理後宅地価額総額から控除して得られる宅地価額総額の増加額を整理後 1 ㎡当たり予定価額で除して保留地として取り得る最大限地積を求め、その範囲内において保

    留地予定地積を定めることになる。 では、保留地予定地積はどのような基準によって定められるのかが問題となる。下記

    表において、換地処分に伴って減歩となる保留地は最大限地積ではなく、一部はそのま

    ま地権者へ換地処分となる。その金額を事業計画作成時点の整理後 1 ㎡当たり予定価格で評価したものが 2 番目の表の右端の評価額である。保留地処分は、土地区画整理事業の目的遂行のための費用に充てるためのものであるが、最大限地積に対してどの割合ま

    で保留地処分をするのか土地区画整理法上明確な規定はない。 事

    宅地価格 総額の 増加額

    整理後 1 ㎡当たり予定価格

    保留地とし

    て取り得る

    最大限地積

    保留地の 予定地積

    割 合 減 歩 率

    公共減歩

    率 公共・保留地

    合算減歩率

    1 千円6,133,903

    円/㎡163,000

    37,631.31㎡

    29,480.00 %

    78.34 %

    25.09%

    31.532 780,231 98,500 7,921.13 6,660.00 84.08 25.93 27.60平 11,612 78,000 148.87 114.15 76.68 3.64 3.99鶴 8,573,013 161,900 52,952.00 43,020.00 81.24 19.92 26.02岡 7,735,574 147,200 52,551.45 26,829.01 51.05 20.64 25.74(注 事業名の略記号 1:宇都宮大学東南部第 1、2:宇都宮大学東南部第 2、平:平松本町第三地区、鶴:鶴田第 2、岡:岡本駅西) (注 小幡・清住地区については保留地がないため、記載なし)

  • - 17 -

    事業

    名 換地に戻す保留地

    (最大限地積-予定地積)

    整理後 1 ㎡当り 予定価格

    評 価 額

    1 ㎡8,151.31

    円/㎡ 163,000

    千円

    1,328,6632 1,261.13 98,500 124,221平 34.72 78,000 2,708鶴 9,932 161,900 1,607,990岡 25,722.44 147,200 3,786,343(注 小幡・清住地区については保留地がないため、記載なし) 土地区画整理事業の施行地区内の地権者に対しては、宅地価額の不均衡が生じた場合

    にこれを是正するため金銭による清算金という仕組み(法第 94 条)がある。清算金の交付徴収の手続きまで進んでいる平松本町第三地区の事例を見る限り、清算金の仕組み

    は厳密に適用されている。同じ土地区画整理地区内の地権者に対して、事業計画作成時

    点の整理後予定価格を前提に厳格な公平性を期している。 しかし、施行地区間の地元負担の均衡や公平性を問題とした場合、そのための尺度は

    公共・保留地合算減歩率(以下「合算減歩率」という。)の調整でしかなく、また、事

    業費用の地権者負担に対する統一的な考え方は定められていない。保留地を最大限地積

    まで処分することによって、土地区画整理事業に対する宇都宮市の単独費投入をその分

    抑えることができるわけであるが、この点において市費投入を最小限にするための方策

    を採っていないことに対して、施行地区外の住民に対して説明することが難しくなって

    いる。判例において保留地処分は財産権の侵害ではなく、照応の原則が保たれる範囲内

    において保留地減歩を認めている。事業計画に対する住民合意を得るためにはなるべく

    減歩率を低く抑えることが要求されることは確かであるが、合算減歩率の比較のみでな

    く施行地区間の地権者が事業に対して公平に負担しているか別な視点が必要だと考え

    る。それは土地区画整理事業によって宅地利用価値がどれだけ増進したかによって、保

    留地として取り得る最大限地積が決まってくることから、宅地利用増進率が高い土地区

    画整理事業ほど最大限地積は大きくなり保留地減歩が可能となるからである。利用価値

    増進が僅かな施行地区では、保留地処分割合が高くなり、利用価値増進分の大半を保留

    地減歩に拠出することになるが、利用価値増進の大きな施行地区では、最大限地積が大

    きいため利用価値増進分の一部処分をもって近隣の合算減歩率を満たすことになる。 仮に最大限地積により保留地処分を実施した場合の合算減歩率を算出してみると次

    のような結果となる。具体的に宇都宮大学東南部第 1 地区(以下「宇大東南部第 1 地区」という。)と宇都宮大学東南部第 2 地区(以下「宇大東南部第 2 地区」という。)を比較してみると、宇大東南部第 1 地区では事業計画における合算減歩率は 31.53%である。一方、宇大東南部第 2 地区のそれは 27.60%である。宇大東南部第 2 地区では、保留地

  • - 18 -

    として取り得る最大限地積を全て処分したとしても合算減歩率は27.92%にしか届かない。

    整理前 宅地面積 (測量増減を加減)

    公共減歩

    地積

    保留地とし

    て取り得る

    最大限地積 合算減歩地積

    減 歩 率

    公共減

    歩率

    合算

    減歩

    事業計

    画合算

    減歩率

    差異

    1 ㎡457,794.04

    円/㎡114,873.09

    ㎡ 37,631.31

    ㎡ 152,504.40

    % 25.09

    % 33.31

    31.53%

    1.782 398,716.03 103,395.53 7,921.13 111,316.66 25.93 27.92 27.60 0.32平 31,931.65 1,161.15 148.87 1,310.02 3.64 4.10 3.99 0.11鶴 705,196.15 140,442.84 52,952.00 193,394.84 19.92 27.42 26.02 1.40岡 525,474.70 108,446.57 52,551.45 160,998.02 20.64 30.64 25.74 4.90(注 小幡・清住地区については保留地がないため、記載なし) 4.1.2 監査の結果(意見) 保留地の最大限地積の範囲内において保留地処分の調整を行ったとしても、施行地区

    間の減歩率にはある程度の差が生じており、合算減歩率が保留地処分の割合を決める上

    で基準となる指標とはいえない。何よりも問題となるのは、減歩率の数%(0.11%~4.90%)の増加を抑えるために、保留地として処分可能な最大限地積を処分しないことによる機会費用は、膨大な金額となっている。上記の表にあるとおり、処分せずに換地

    に戻す保留地の評価額は、事業によっては 10 億円を超える額になっており、保留地処分の割合を 100%とすれば事業費として市費をそれだけ抑えることができることになる。保留地の最大限地積を算定するための考え方は、土地区画整理事業による利用増進

    の評価を事業の前後において等しくするという前提において、宅地の価値増加分は土地

    の減歩によって提供してもらうというものである。 保留地最大限地積から保留地予定地積を控除した残りの地積は、地権者に配分される

    ため、地権者が土地区画整理事業によって稼得する経済的利益となる。しかし、保留地

    の割合には、ばらつきが生じている。保留地の割合は、施行前後の宅地単価の変動率や

    合算減歩率との関係により決定されていると思料するが、土地区画整理事業に公費が投

    入される以上、保留地の予定地積の決定方法を明確にすべきである。 現状の土地区画整理事業における保留地処分の割合は、事業の経済性の視点より住民

    合意のための合算減歩率に重点を置いている。また、次の項で記載するように合算減歩

    率の横並びは、別な観点からすると土地区画整理事業の地区間の実質的な公平性を図る

    ことにはならない。

  • - 19 -

    4.2 地元負担率 4.2.1 保留地割合の方針

    宇都宮市における、保留地の割合を決定するための方針について見てみる。ここで、

    R/Rmax の設定の考え方を中心に検討している資料がある。R/Rmax は、保留地÷保留地最大限地積で計算される保留地処分の割合を示す指標である。

    減歩率と R/Rmax の設定方法について、宇都宮市は土地区画整理事業において次のような方針を定めている。 ① R/Rmax=100%で資金計画した場合の合算減歩率を算定 ② 近隣の土地区画整理事業地区の合算減歩率と比較し、合意形成が可能な合算減歩率

    に調整 ③ 調整した合算減歩率を踏まえ保留地減歩及び R/Rmax を決定

    この調整した合算減歩率を提示し、住民の合意形成を図っているということである。

    では、具体的に監査において対象とした地区の中で、前項で見た機会費用の大きな地区

    のうち庁議政策会議の資料が確認できた宇大東南部第1地区及び鶴田第2地区についてその過程を見てみる。 4.2.2 宇大東南部第 1 地区の事例

    平成 7 年 5 月に開かれた庁議政策会議における協議事項として、宇大東南部第 1 地区において「減歩緩和と財政負担」が決議されている。

    協議事項の内容は、合算減歩率を 33.14%から 31.50%に緩和し、そのための追加の財政負担 1,302 百万円を行うというものである。保留地の割合を 100%(R/Rmax=100%、次表の左列「助成なし」)とした場合、それでも不足する財源 3,751 百万円を市単独費として支出することになるが、近隣の下栗・平松本町地区の合算減歩率に合わ

    せることによって保留地減歩を引き下げる政策を決議し、財政負担は 3,751 百万円から5,053 百万円となり追加分 1,302 百万円が生じることになった(次表の中列「助成措置」)。

    協議の中で理由の第 2 として挙げられているものに、「不足財源分のみを助成すれば、資金計画は成立することになるが、その際の合算減歩率は 33.14%であり、合意形成を図ることは困難であると判断される。」とあり、理由の第 3 には「近隣地区で実施されている下栗・平松本町地区(組合施行)の減歩率が 31.30%であるため、住民対策上、整合性を図る必要がある。」と説明されている。

  • - 20 -

    地 区 宇大東南部第 1 地区 下栗・平松本町地区 種 別 助成無し 助成措置 組合施行 補助金 8,300 百万円 8,300 百万円 8,214 百万円保留地処分金 6,377 百万円 5,075 百万円 2,621 百万円公共施設管理者負担金 572 百万円 572 百万円 1,165 百万円市単独費 3,751 百万円 5,053 百万円 -総事業費 19,000 百万円 19,000 百万円 12,000 百万円

    公共減歩率 25.08% 25.08% 26.67%保留地減歩率 8.06% 6.42% 4.63%合算減歩率 33.14% 31.50% 31.30%最大限保留地面積 36,440 ㎡ 36,440 ㎡ 30,015 ㎡保留地面積 36,440 ㎡ 29,000 ㎡ 19,456 ㎡保留地の割合 100.00% 79.58% 64.82%

    さて、次の表は公共減歩に当たる土地の価値を評価した場合の総事業費を算出したも

    のである。宇都宮市が仮に公共用地を取得して事業を行うとした場合、事業費がいくら

    になるかを算定している。保留地処分金を基に同じ評価単価において公共減歩の土地を

  • - 21 -

    金銭評価し、その金額を事業計画における総事業費に追加したものである。実際には、

    減歩という形で地権者が保留地と合わせて無償で提供するわけであるから、地区内の土

    地区画整理事業に対する地元負担額を表していると見ることができる。 下表の左列(助成なし)と右端列(組合施行)を比較すると、地元負担率は僅かに宇

    大東南部第 1 地区「助成なし」(67.49%)が下栗・平松本町地区(65.39%)を上回っている。しかし、助成措置を受けた場合には左 2 列目にあるとおり 64.13%と下栗・平松本町地区より地元負担率が下がっている。公共施設を整備し住環境を向上させ宅地の

    利用価値の増進を図るために土地の減歩を行うことは、土地所有者等が受忍すべき財産

    権に対する社会的制約であると裁決されている以上、組合施行がその時点における補助

    金制度等を利用した上で不足する部分を全て保留地処分により賄っているのに対し、財

    政負担を必要とする公共施行において、組合施行より地元負担比率を下げる保留地割合

    が許容される理由はない。 さらに宇大東南部第 1 地区の平成 23 年度に作成した変更事業計画書(第 3 回)によると保留地の評価が下がっていることにより総事業費に対する減歩による地元負担の

    割合は 29.78%に下がっている。総事業費が当初事業計画案と比較して 4,210 百万円増加している一方で、減歩の土地評価が下がっているのであるから地元負担の割合は低下

    することになる。土地の評価が下がっていく傾向にあるときは、総事業費に占める地元

    負担率は下がっていく。反対に、土地の評価が上がっているときは、比例して上がって

    いくと予想される。組合施行では最終的に費用の財源を捻出するには組合員から賦課金

    を徴収することになる(法第 40 条)。地元負担は一層高くなるが、組合の責任において施行を行うことになっている。宇都宮東部地区は、一体的な公共施行による土地区画整

    理事業が望まれた地区であるが、住民合意の度合いにより公共施行と組合施行とに地区

    が細分化された。土地区画整理事業では施行者が費用を負担することになるが、土地の

    評価が下がっているような状況においては、地権者にとって公共施行であれば費用負担

    が限定されることになる。公共施行において、当初より合算減歩率を近隣の組合施行と

    合わせる措置をとることは、公共施行が不足財源を市単独費の投入により賄い、土地の

    時間的な価値の増減に対する負担を行政側が持つ制度であるため、組合施行との公平性

    には留意が必要と考える。 また、施行区域外の住民の中には、公費を使って住環境が整備され宅地価値の増進が

    図られる土地区画整理事業ならば、保留地減歩は R/Rmax=100%を目標とするのが当然であると考える者もいるであろう。土地区画整理事業を推進するためには、地権者合

    意のための政策的判断が必要であるといっても、合算減歩率を合わせれば施行地区間の

    地元負担の公平性を確保できるというものでもないと考えるので、例えば総事業費に対

    する地元負担の割合を合意形成の中に取り入れて、公平な地元負担という観点から最大

    限の合算減歩率を確保することに留意する必要がある。

  • - 22 -

    地 区 宇大東南部第 1 地区 下栗・平松本町 種 別 助成なし 助成措置 第 3 回事業計画 組合施行 補助金 8,300 百万円 8,300 百万円 15,456 百万円 8,214 百万円保留地処分金 6,377 百万円 5,075 百万円 1,850 百万円 2,621 百万円公共減歩評価額 19,825 百万円 19,825 百万円 7,210 百万円 15,100 百万円合算減歩評価額(地元負担額) 26,202 百万円 24,900 百万円 9,060 百万円 17,721 百万円公共施設管理者負担金 572 百万円 572 百万円 491 百万円 1,165 百万円市単独費 3,751 百万円 5,053 百万円 5,410 百万円 -総事業費 38,825 百万円 38,825 百万円 30,420 百万円 27,100 百万円地元負担率の割合 67.49% 64.13% 29.78% 65.39%※公共減歩評価額は保留地処分金の平均単価を参考に試算したものである。 ※総事業費は上記試算値を参入したものである。 4.2.3 鶴田土地区画整理事業の基本方針

    鶴田地区は、130ha を一体的に整備することが理想であるが、面的整備の要望が強いモデル地区(第 1 地区)約 43ha を早期着工し、第 2 地区についても事業化への気運を醸成するために分割整備とする方針となった。この方針に基づき、宇都宮市は平成元年

    8 月に土地区画整理事業を推進していくに当たっての基本的事項を定めた。 モデル地区の推進方策として、分割整備となるとモデル地区の合算減歩率が 28.07%(表 1 設計の概要)と高く一体的整備の場合における 25.73%との差が大きいため、合意形成は極めて困難と判断されたことから、第 2 地区の合算減歩率を基準に政策的に24.50%(表 3 モデル地区の推進方策)程度とする方針を決めている。 (表 1 設計の概要)

    項 目 面積 ha

    減歩率(%) 事業費 公 共 保留地 合 算 百万円

    一体的整備 130 19.29 6.44 25.73 13,573

    分割 モデル地区 43 21.44 6.63 28.07 5,429第2地区 87 18.22 6.34 24.56 8,144

  • - 23 -

    (表 2 資金計画)

    項 目 一体的整備 分割施行 政策的減歩率に

    よるモデル地区モデル(第 1)地区 第 2 地区 基本事

    業費 国 費 4,540 百万円 2,040 百万円 2,500 百万円 2,040 百万円市 費 2,270 百万円 1,020 百万円 1,250 百万円 1,020 百万円

    保留地処分金 6,213 百万円 2,129 百万円 4,084 百万円 983 百万円公共施設管理者負担金 550 百万円 240 百万円 310 百万円 240 百万円市単独費 - - - 1,146 百万円総事業費 13,573 百万円 5,429 百万円 8,144 百万円 5,429 百万円 (表 3 モデル地区の推進方策)

    項 目 モデル地区(第 1 地区) 政策的減歩率によるモデル地区

    公共減歩 保留地減歩 合算減歩 公共減歩 保留地減歩 合算減歩減歩地籍(㎡) 81,063 25,051 106,114 81,063 11,567 92,630減歩率(%) 21.44 6.63 28.07 21.44 3.06 24.50

    鶴田土地区画整理事業において、モデル地区の総事業費における地元負担を合算減歩

    率ではなく、減歩面積の金銭評価において比較したものが下記の表である。第 2 地区は、合算減歩率ではモデル地区よりも低いが、減歩の対象となった土地を金銭評価したもの

    の総事業に対する割合、総事業費に対する地元負担額の割合を比較するとモデル地区よ

    り高い比率(79.58%)となっている。モデル地区の減歩率を調整することによりこの開きは更に拡大し 15.67%(79.58%-63.91%)の差となった。この基本方針の段階では、第 2 地区の場合、各種の補助金により組合施行が可能であり市単独費の支出はない。原則として保留地処分は事業費を賄うために必要最低限の拠出が要求されるが、仮に

    R/Rmax が 100%となるとしても、土地区画整理事業に要する費用は施行者である組合が負担することが原則である(法第 118 条第 1 項)。地区の公共施設の整備において地元負担がどれだけあるのかという点は、合算減歩率では見えない論点を浮かび上がらせ

    る。

  • - 24 -

    項 目 モデル(第 1)地区 第 2 地区 政策的減歩率のモデル地区基本事業

    費 国 費 2,040 百万円 2,500 百万円 2,040 百万円市 費 1,020 百万円 1,250 百万円 1,020 百万円

    保留地処分金 2,129 百万円 4,084 百万円 983 百万円公共減歩評価額 6,889 百万円 11,736 百万円 6,889 百万円合算減歩評価額(地元負担額) 9,018 百万円 15,820 百万円 7,872 百万円公共施設管理者負担金 240 百万円 310 百万円 240 百万円市単独費 - - 1,146 百万円総事業費 12,318 百万円 19,880 百万円 12,318 百万円地元負担率の割合 73.21% 79.58% 63.91%※公共減歩評価額は保留地処分金の平均単価を参考に試算したものである。 ※総事業費は上記試算値を参入したものである。 4.2.4 監査の結果(意見) 法は、土地区画整理事業の従前と従後における宅地の価値を維持することを保証して

    おり、最低限従前地の価値を確保するための措置を講じている。減歩率の調整を最優先

    事項とすると意図しない不公平が生じることがある。総事業費に対する減歩対象地の評

    価の割合を 1 つの指標として提示したのは、その例である。 減歩において、公共施設の整備により住環境の改善と宅地の増進が図られ、土地区画

    整理事業後の宅地の面積は減歩されるものの、利用価値の高い宅地が得られる。その受

    益を得ることから金銭的な評価において保留地減歩が可能な面積が定まる。また、換地

    の評価額が従前地と比較して減少するときは金銭をもって補填されることから、減歩は

    従前従後の経済的な等価を前提とした仕組みである。 組合施行の場合、宅地の価値の増進は、事業費の財源に充てることを前提にしてなお

    余剰が生じる場合に地権者へ等しく配分する仕組みとなっている。公共団体施行の場合

    は,国の補助金、公共施設管理者負担金のほかは、原則として施行者の負担となるが、

    事業の施行により宅地の総価額が増加する場合には,保留地をとって事業費の財源にす

    ることができることから公共施行においても可能な限り市費投入の削減に努めなけれ

    ばならない。宇都宮市の納税者、特に施行地区に属さない市民と土地区画整理事業の地

    権者との公平性を考えた場合、市費を投入することの妥当性を保つために必要となる考

    え方である。減歩率を先に決めてしまったのでは、受益に対する相応の負担が見えなく

    なってしまう。地区の公共施設を整備するためにどれだけの事業費が掛かり、それに伴

    って生じる宅地の価値増進について事業費割合において他地区と同じ比率となるよう

    に応分の負担を求めることは施行地区間の公平性のみならず、土地区画整理事業地区外

    の納税者の理解を得るためにも必要となる。施行地区内の地権者の理解・協力を得るた

    め減歩率に重点を置いた住民交渉を行うことは、宅地価値の増進を減歩によって事業費

  • - 25 -

    に充てることを可能とする制度において従前従後の経済的な価値の等価性への配慮を

    損なうことにつながる。 換地計画において換地を定める場合においては、換地及び従前の宅地の位置、地積、

    土質、水利、利用状況、環境等が照応するように定めなければならない(法第 89 条第1 項「照応の原則」)。照応の諸要素のうち、地積について「土地区画整理事業においては、公共減歩及び保留地減歩は避けられないことであって、施行地区内の土地は事業施

    行によってもたらされる利用増進の度合いに応じてこれらの減歩を負担すべきである。」

    (東京高裁平成 5 年 10 月 14 日判決)とされ、宅地の利用増進が著しいことにより減歩率が高くなったとしても、宅地の評価が適正に行われている限り、そのことのみをも

    って照応の原則に反することになるものではないとされる。 R/Rmax の調整が許容されるのは、地権者合意のための政策上の理由であって、住

    民説明のための 1 つの指標に過ぎない。例示したように、地元負担率を指標とすれば別の住民説得の方法が考えられる。つまり、公共施設整備により住環境の向上及び宅地の

    利用増進が図られるのであるから、そのための地元負担を求めることは理屈に合うわけ

    であり、その負担率を他施行地区と同じ割合にするような地元への負担要請は合理性が

    ある。宇都宮市における土地区画整理事業においては、地元地権者との交渉、説得にお

    いて、合算減歩率の指標以外に地権者との合意形成のための分かりやすい指標が提示さ

    れて来なかった。 4.3 土地区画整理事業の国庫補助金 4.3.1 概要

    土地区画整理事業に要する費用は、原則として施行者(国土交通大臣施行に当たって

    は、国)が負担する(法第 118 条第 1 項・第 2 項)。また、国土交通大臣の指示を受けて都道府県又は市町村が施行する場合は、国がその土地区画整理事業に要する費用の一

    部を負担する(法第 118 条第 3 項)。 以下に掲げる公共施設用地の造成を主たる目的とする土地区画整理事業を施行する

    場合、施行者は、公共施設管理者に対し、当該公共施設用地の取得に要する費用の範囲

    内で、事業に要する費用の全部又は一部を負担することを求めることができる(法第

    120 条第 1 項、土地区画整理法施行令(以下「法施行令」という。)第 64 条の 2、法施行令第 64 条の 3)。 ① 都市計画において定められた幹線道路、運河、水路、公園、緑地又は広場 ② 道路法にいう道路 ③ 河川法にいう河川 ④ 港湾法にいう港湾施設又は漁港法にいう漁港施設である公共施設 ⑤ 運河法にいう運河(これに附属する公共施設を含む。) ⑥ 海岸法にいう海岸保全施設である公共施設

  • - 26 -

    なお、公共施設管理者に対し、施行者が費用負担を求めようとする場合には、あらか

    じめ協議し、負担すべき費用の額及び負担の方法を事業計画において定めておかなけれ

    ばならない(法第 120 条第 2 項)。 国は、都道府県又は市町村が施行する土地区画整理事業が大規模な公共施設の新設若

    しくは変更に係るものである場合又は災害その他の特別の事情により施行されるもの

    である場合において、必要があると認められるときは、予算の範囲内において、次に掲

    げるものについて、その費用の二分の一以内を施行者に対して補助金として交付するこ

    とができる(法第 121 条、法施行令第 66 条)。 ① 都市計画において定められた幹線道路又は駅前広場の新設又は変更を目的とする

    もの ② 都市計画において定められた施設で国土交通大臣が特に重要と認めて指定したも

    のの新設又は変更を目的とするもの ③ 河川法にいう河川の改修を目的とするもの ④ 港湾法にいう国際戦略港湾、国際拠点港湾又は重要港湾の後背地区の整備を目的と

    するもの ⑤ 重要な官庁地帯の整備を目的とするもの ⑥ 国の補助、出資又は融資を受けて建設する一団地の住宅の敷地の造成を目的とする

    もの ⑦ 被災地の面積が十ヘクタール以上であり、かつ、その被災戸数が五百戸以上の火災、

    震災、風水害その他の災害による被災地の復興を目的とするもの このように、土地区画整理事業に関して、国は補助金として交付することができると

    され、現在は、「社会資本整備総合交付金」による交付金を受領している。 「社会資本整備総合交付金」は、地方公共団体等が作成した社会資本の整備その他の

    取組に関する計画(「社会資本総合整備計画」)に基づく事業又は事務の実施に要する経

    費に充てるため、国が交付する交付金であり、基幹事業、関連社会資本整備事業、効果

    促進事業からなる。このうち、土地区画整理事業は、道路事業(旧道路特別会計)、都

    市再生整備計画事業(旧まちづくり交付金)、市街地整備事業(都市再生土地区画整理

    事業)が主に該当する。各交付対象事業の内容は、以下のとおりである。 4.3.1.1 道路事業 土地区画整理事業によって都市計画道路等が整備されることに着目し、それらの都市

    計画道路等を用地買収方式により整備することとして積算した事業費の額を限度とし

    て、支援を行うものである。地方公共団体の財政力に応じて 5.5/10~9/10 を限度として交付される。

    交付対象事業は、以下のとおりである。 地方公共団体(地方公共団体からその経費の一部に対して負担金の負担又は補助金の

  • - 27 -

    交付を受けて土地区画整理事業、市街地再開発事業等を施行する者を含む。)が実施す

    る一般国道、道路法(昭和 27 年法律第 180 号)第 56 条の規定による国土交通大臣の指定を受けた主要な都道府県道若しくは市道又は資源の開発、産業の振興その他国の施

    策上特に整備する必要があると認められる都道府県道若しくは市町村道の新設、改築又

    は修繕に関する事業、積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法

    (昭和 31 年法律第 72 号)第 6 条に規定する除雪に係る事業又は活動火山対策特別措置法(昭和 48 年法律第 61 号)第 11 条に規定する降灰の除去事業であって、次に掲げる基準に適合するもの ① 地域住民の日常生活の安全性若しくは利便性の向上を図るために必要であり、又は

    快適な生活環境の確保若しくは地域の活力の創造に資すると認められるものであ

    ること。 ② 公共施設その他の公益的施設の整備、管理若しくは運営に関連して、又は地域の自

    然的若しくは社会的な特性に即して行われるものであること。 4.3.1.2 都市再生土地区画整理事業

    空洞化が進行する中心市街地や、防災上危険な密集市街地など都市基盤が脆弱で整備

    の必要な既成市街地等において、都市基盤の整備と併せて街区の再編を行う土地区画整

    理事業に対して補助を行うことにより、土地の有効利用を促進するとともに、安全・安

    心で快適に暮らすことができ、活力ある経済活動の基盤となる市街地への再生・再構築

    を支援する制度 1.対象者 地方公共団体、土地区画整理組合、独立行政法人都市再生機構※、個人施行者(3 人以上の地権者からなる共同施行者又は公的同意施行者に限る。)、区画整理会社 等 ※社会資本整備総合交付金の枠外で直接補助 2.対象事業 (1)地区要件 [一般地区]直前の国勢調査に基づくDIDに係る地区(重点地区については、施行後直近の国勢調査に基づくDIDに含まれると見込まれる区域を含む)、かつ、次の要件を

    全て満たす地区 (イ)施行前の公共用地率 15%未満(幹線道路等を除く。拠点的市街地形成重点地区において、狭隘道路等を解消するとともに公益施設等を整備する事業については、道路

    幅員 6m未満(住宅地においては 4m未満とする)の狭隘道路等についても除く。) (ロ)市町村の都市計画に関する基本方針、都市再生整備計画等法に基づく計画に位置

    付け [重点地区(拠点的市街地形成重点地区)]一般地区に係る要件を満たし、かつ以下の①を満たす地区又は②から⑤のいずれかに係る地区

  • - 28 -

    ①次の(イ)(ロ)の全てを満たす地区 (イ)中心市街地活性化法に規定する認定基準に合致する地区 (ロ)中心市街地活性化基本計画の目標の実現に大きく貢献する中核的な地区であり、

    都市機能導入施設の整備が行われる地区 ②都市再生緊急整備地域又は都市再開発方針2号、2項地区 ③都市鉄道等利便増進法に基づく交通結節機能高度化構想区域 ④バリアフリー基本構想区域 ⑤市町村の都市計画に関する基本方針等において位置付けられた地域の拠点 (2)面積要件 指定容積率(予定を含む。)/100%×(地区面積)≧2.0ha* *一体的土地区画整理事業プログラムにおいて、街路等の他事業と一体的に行われる複

    数の土地区画整理事業であって、一体的に整備すべき一団の区域の1/2以上が土地区

    画整理事業により整備される場合を含む。 *安全市街地形成重点地区のうち重点供給地域において行う事業については、指定容積

    率(予定を含む。)/100%×(地区面積)≧1.0ha とする。 *密集市街地緊急リノベーション事業の整備計画に位置付けられた事業については、面

    積要件を 1/2 まで引き下げる。 *拠点的市街地形成重点地区において、狭隘道路等を解消するとともに公益施設等を整

    備する事業については、指定容積率(予定を含む。)/100%×(地区面積)≧1.0ha とする。 3.交付対象 土地区画整理事業費 調査設計費、宅地整備費、移転移設費、公共施設工事費、供給処理施設整備費、電線類

    地下埋設施設整備費、減価補償費又は公共施設充当用地取得費、公開空地整備費、立体

    換地建築物工事費、営繕費、機械器具費、事務費等 4.交付率 一般地区:1/3、重点地区:1/2 4.3.1.3 都市再生整備計画事業(旧まちづくり交付金)

    都市再生整備計画事業は、地域の歴史・文化・自然環境等の特性を生かした個性あふ

    れるまちづくりを実施し、全国の都市の再生を効率的に推進することにより、地域住民

    の生活の質の向上と地域経済・社会の活性化を図ることを目的とする。都市再生特別措

    置法第 46 条第 1 項に基づき、市町村が都市再生整備計画を作成し、都市再生整備計画に基づき実施される事業等の費用に充当するために交付金を交付するもの 平成 16 年度に、「まちづくり交付金」制度として創設され、平成 22 年度からは、社会資本整備総合交付金に統合され、同交付金の基幹事業である都市再生整備計画事業と

  • - 29 -

    して位置付けられている。 1.特色 [1]都市再生整備計画の作成 市町村は地域の特性を踏まえ、まちづくりの目標と目標を実現するために実施する各

    種事業等を記載した都市再生整備計画を作成 [2]交付金の交付 交付金を年度ごとに交付 [3]事後評価 交付期間終了時、市町村は、目標の達成状況等に関する事後評価を実施し、その結果

    を公表 2.交付対象 都市再生整備計画に位置付けられたまちづくりに必要な幅広い施設等を対象 ・道路、公園、下水道、河川、多目的広場、修景施設、地域交流センター、土地区画

    整理事業、市街地再開発事業 等 ・地域優良賃貸住宅、公営住宅、住宅地区改良事業 等 ・市町村の提案に基づく事業 ・各種調査や社会実験等のソフト事業 3.交付期間 おおむね3~5年 4.交付率 事業費に対しておおむね4割(交付金の額は一定の算定方法により算出) ※中心市街地活性化等の国として特に推進すべき施策に関する一定の要件を満たす地区については、交付率の上限を 45%(通常 40%)として重点的に支援 4.3.2 宇都宮市の土地区画整理事業の国庫補助金 宇都宮市の土地区画整理事業に関連する「社会資本総合整備計画」の概要は、以下の

    とおりである。 (1)宇都宮大学東南部第 1、宇都宮大学東南部第 2、平松本町第三 計画の名称 宇都宮大学周辺地区都市再生整備計画 計画の期間 平成 25 年度~平成 29 年度(5 年間) 交付対象 宇都宮市 計画の目標 市街地の面整備と合わせ道路、公園、河川など関連する都市基

    盤の整備等を進めることで、安全性・利便性の高い良好な住環

    境を有する生活拠点の形成を図る。 全体事業費 12,563.1 百万円

  • - 30 -

    全体事業費の内訳 要素となる事業名 事業内容 全体事業費

    (百万円) 基幹事業 宇都宮大学周辺地区都市再生整備

    計画事業 道路・河川・土地

    区画整理事業等 8,070.2

    土地区画整理事業(宇都宮大学東南

    部第 1) 都市再生区画整理

    事業 873.6

    土地区画整理事業(宇都宮大学東南

    部第 2) 都市再生区画整理

    事業 1,250.3

    宇都宮大学東南部第 1 地区 区画整理 149.0宇都宮大学東南部第 2 地区 区画整理 1,541.0

    関 連 社 会

    資 本 整 備

    事業

    宇都宮大学東南部第 1 地区 区画整理 270.0宇都宮大学東南部第 2 地区 区画整理 409.0

    合計 12,563.1 計画の成果目標 定量的指標の定義及び算定式 定量的指標の現況値及び目標値

    当初現況値 (平成 25 年)

    中間目標値 (平成 27 年)

    最終目標値 (平成 29 年)

    住民基本台帳等により、宇大東南部

    地区の「居住人口」を把握する。 6,100 人 6,200 人 6,300 人

    幅員 4m 以上の道路に接道していない宅地面積の集計により、宇大東南

    部地区の「狭隘道路率」を把握する。

    41.33% 35.00% 28.67%

    河川が氾濫した場合の浸水想定エリ

    アの推計により、準用河川大久保谷

    地川及び準用河川越戸川の「浸水想

    定面積」と把握する。

    27.92 ha 27.18 ha 14.76 ha

    近隣地域コミュニティセンターの利

    用回数の集計により、「年間利用回

    数」を把握する。

    4,500 回/年 4,650 回/年 4,800 回/年

    (2)小幡・清住 (平成 22 年~25 年までは、「宇都宮都市拠点地区都市再生整備計画」に含まれており、平成 26 年からは、「ネットワーク型コンパクトシティの核としての都市拠点の形成」に

  • - 31 -

    含まれている。) 計画の名称 宇都宮都市拠点地区都市再生整備計画 計画の期間 平成 22 年度~平成 25 年度(4 年間) 交付対象 宇都宮市 計画の目標 宇都宮市の顔である中心市街地の賑わいを創出し、改善の兆し

    がみえつつある中心市街地の再生を図るため、商業とともに文

    化・情報の発信拠点としてのオリオン通りの整備など、魅力あ

    るエリアづくりによる集客力(賑わい)の増強を図るとともに、

    エリアに集まる賑わいを中心市街地全体へ波及させる回遊の

    動線の確保や、民間との協働による「うつのみや暮らし」の展

    開などにより、宇都宮ならではの「楽しさ」を味わう中心市街

    地を創出する。 全体事業費 2,180.4 百万円 全体事業費の内訳 要素となる事業名 事業内容 全体事業費

    (百万円) 基幹事業 宇都宮都市拠点地区都市

    再生整備計画事業 地域生活基盤施設・住宅市街

    地総合整備事業等 1,710.4

    関 連 社 会

    資 本 整 備

    事業

    小幡・清住地区 区画整理 470.0

    合計 2,180.4 計画の成果目標 定量的指標の定義及び算定式 定量的指標の現況値及び目標値

    当初現況値 (平成22年)

    中間目標値 (平成 24 年)

    最終目標値

    (平成 25 年)空き店舗実態調査により、中心商業エリ

    アにおける「空き店舗数」を把握する。 20 店 13 店 5 店

    住民基本台帳により、中心拠点区域にお

    ける「居住人口(夜間人口)」を把握する。 15,822 人 16,400 人 17,100 人

    商店街通行量・来街者実態調査により、

    中心商業エリア(10 地点)における「歩行者・自転車通行量」を把握する。

    46,987 人 48,100 人 49,300 人

  • - 32 -

    計画の名称 ネットワーク型コンパクトシティの核としての都市拠点の形成 計画の期間 平成 25 年度~平成 29 年度(5 年間) 交付対象 宇都宮市 計画の目標 ネットワーク型コンパクトシティの核としての「都市拠点」の形成

    を進めるとともに、改善の兆しが見えつつある中心市街地の再生を

    図るため、平成 22 年 3 月に策定した新たな「中心市街地活性化基本計画」など、官民がこれまで以上に連携・協働して事業に取り組

    むとともに、平成 24 年 3 月に策定した「都市部地区市街地総合再生計画」を都心部の再生とまちづくりの指針とし、一体的かつ総合

    的な市街地整備を推進し、都市機能の更新や整備改善を図る。 全体事業費 11,437 百万円 全体事業費の内訳 要素となる事業名 事業内容 全体事業費

    (百万円)

    基幹事業 東武宇都宮駅周辺地区都市再生整備計画事業

    中心拠点誘導施設等 7,934

    小幡・清住地区 区画整理 1,000宇都宮大手地区都市・

    地域再生緊急促進事業 敷地の共同化 360

    関 連 社 会

    資 本 整 備

    事業

    小幡・清住地区 区画整理 500

    効 果 促 進

    事業 都心部居住推進事業 住宅取得に係る取得費の一部

    を補助、若年夫婦世帯への家賃

    補助

    440

    中心商業地出店等促進

    事業 中心商業地の空き店舗への出

    店者支援 80

    魅力ある商店街等支援

    事業 商店街等が取り組むおもてな

    し事業やライトアップ事業等

    支援

    4

    魅力ある景観づくり事

    業 景観形成に係る勉強会や地元

    組織の活動に係る経費の一部

    補助

    50

    市文化会館改修事業 照明の省エネ化、天井改修、舞台装置等の機能向上改修事業

    1,060

  • - 33 -

    都市機能施設等評価分

    析 都市機能施設等評価分析 9

    合計 11,437 計画の成果目標 定量的指標の定義及び算定式 定量的指標の現況値及び目標値

    当初現況値 (平成 25 年)

    中間目標値 (平成 27 年)

    最終目標値

    (平成 29 年)空き店舗実態調査により、中心商業エリ

    アにおける「空き店舗数」を把握する。

    113 店 104 店 100 店

    住民基本台帳により、中心拠点区域にお

    ける「居住人口(夜間人口)」を把握す

    る。

    15,646 人 15,862 人 15,940 人

    商店街通行量・来街者実態調査により、

    中心商業エリア(28 地点)における「歩行者・自転車通行量」を把握する。

    99,428 人 102,260 人 104,400 人

    (3)鶴田第 2 計画の名称 鶴田地区(第二期)都市再生整備計画 計画の期間 平成 26 年度~平成 30 年度(5 年間) 交付対象 宇都宮市 計画の目標 土地区画整理事業による公共施設の整備、宅地の利用増進を図

    るとともに、地域のまちづくり活動の環境整備を図り、宇都宮

    市西部の住宅市街地の核となるのに相応しい、人々にやさし

    く、安心・安全で快適な活力あるまちづくりを推進する。 全体事業費 4,845 百万円 全体事業費の内訳 要素となる事業名 事業内容 全体事業費

    (百万円) 基幹事業 鶴田地区(第二期)都市再生整備計

    画事業 河川・土地区画整

    理事業等 1,481.6

    鶴田第 2 土地区画整理事業 区画整理 505.0土地区画整理事業(鶴田第 2 地区) 都市再生区画整理事業 2,810.4

  • - 34 -

    関連社会資

    本整備事業 鶴田第 2 土地区画整理事業 区画整理 48.0

    合計 4,845.0 計画の成果目標 定量的指標の定義及び算定式 定量的指標の現況値及び目標値

    当初現況値 (平成 25 年)

    中間目標値 (平成 27 年)

    最終目標値 (平成 30 年)

    鶴田第 2 土地区画整理事業地区内において、公園まで徒歩 5 分(距離=333m)で到着できる面積の割合を計測する。

    68.8% 85.0% 86.8%

    準用河川駒生川の浸水想定面積を計

    測する。 9.37 ha 8.13 ha 6.11 ha

    鶴田第 2 土地区画整理事業地区内の狭隘道路(幅員 4.0m 以下)の割合を計測する。

    21.0% 13.5% 6.0%

    明保地域コミュニティセンターの利

    用実績を把握する。 380 回/年 400 回/年 450 回/年

    (4)岡本駅西 計画の名称 岡本駅周辺地区(第二期)都市再生整備計画 計画の期間 平成 26 年度~平成 30 年度(5 年間) 交付対象 宇都宮市 計画の目標 土地区画整理事業による都市基盤整備や駅関連施設、地域活動

    の拠点となる施設の整備により、良好な居住環境の形成及び交

    通結節機能の強化を推進する。 全体事業費 7,374 百万円 全体事業費の内訳 (百万円) 要素となる事業名 事業内容 全体事業費 基幹事業 岡本駅周辺地区(第二期)都市

    再生整備計画事業 道路・高次都市施設・

    土地区画整理事業等 3,903

    土地区画整理事業(岡本駅西) 都市再生区画整理事業 3,471合計 7,374

  • - 35 -

    計画の成果目標 定量的指標の定義及び算定式 定量的指標の現況値及び目標値

    当初現況値 (平成 26 年)

    中間目標値 (平成 28 年)

    最終目標値 (平成 30 年)

    消防困難地域の解消 9.4 ha 7.8 ha 6.3 ha医療施設等までの到達時間短縮 11 分 11 分 5 分河内生涯学習センター年間利用回数 3522 回/年 3767 回/年 3900 回/年 4.3.3 社会資本整備総合交付金の流れ 社会資本整備総合交付金の流れは以下のとおりである。 (1)社会資本総合整備計画の策定 社会資本総合整備計画を策定し、国に提出する。 社会資本総合整備計画の期間は、おおむね 3~5 年間で、実現しようとする目標、事業内容等を記載する。 (2)概算要望書の提出 社会資本総合整備計画ごとに作成した概算要望を事業実施年度の前年 7 月頃に国に提出する。社会資本総合整備計画における事業費を基に算定した国費を限度として必要

    な額を要望することができる。 (3)本要望書の提出 社会資本総合整備計画ごとに作成した本要望を事業実施年度の前年 12 月に国に提出する。社会資本総合整備計画における事業費を基に算定した国費を限度として必要な額

    を要望することができる。 (4)交付金の内示額の提示 国会での予算成立を受け、3 月末頃に交付金の内示額の提示を国から受ける。 (5)交付申請書の提出 内示額の提示を受けて、4 月頃に「交付金交付申請書」を国に申請する。当該�