213
Title ガスタービン翼のフィルム冷却に関する研究 Author(s) 武石, 賢一郎 Citation Issue Date Text Version ETD URL https://doi.org/10.11501/3081498 DOI 10.11501/3081498 rights Note Osaka University Knowledge Archive : OUKA Osaka University Knowledge Archive : OUKA https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/ Osaka University

Osaka University Knowledge Archive : OUKA«–文.pdf · (3) 測定方法 ー ーーーー一一一 ーー一一ーー一 一一 42 (4) フィルム冷却時の冷却孔壁面の熱伝達率測定方法

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Title ガスタービン翼のフィルム冷却に関する研究

Author(s) 武石, 賢一郎

Citation

Issue Date

Text Version ETD

URL https://doi.org/10.11501/3081498

DOI 10.11501/3081498

rights

Note

Osaka University Knowledge Archive : OUKAOsaka University Knowledge Archive : OUKA

https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/

Osaka University

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ガスタービン翼の

フィルム冷却に関する研究

平成 7年2月

武 石賢一郎

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目 どた

記号

第 1章緒 E司

1. 1 まえがき

1.2 高温ガスタービンの開発動向 ー一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 3

1.3 タービン翼の冷却構造の変遷 ー ーー一一一一一一一一一一一一 4

1.4 本論文の概要 一一一一一一一一一一一ーー ーー一一ー 一一一ー 10

文 献 守 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 13

第2章フィルム冷却技術の基礎実験 一一一一ーー ー 14

2. 1 まえがき 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一--・ e・-一一一一一一ーーー 14

2.2 二次元スロットからの吹き出しによるフィルム冷却 一一一一 16

2.2.1 実験装置 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一ー 16

(1)二次元フィルム冷却実験供試体 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 17

(2)測定プロープ 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一ーーーー 18

(3)測定方法 一一一一一一一一ー一一ーーーーー一一一一一一一一ー 19

2.2.2 実験結果および考察 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 20

(1)伝熱風洞の特性 ー一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 20

(2)吹き出し時の境界層内分布の測定結果 一一一一一一一一一一一一 22

(3)二次元スロットからの吹き出しのフィルム冷却効率 F 一一ー 28

2.2.3 吹き出し境界層の解析と実験値との比較 一一一一一一一一ー 31

(1)境界層解析 一一一一一一ーー一一 ーーー ーーー一一一一一一ー 31

(2)測定値と解析値の比較 一一一一ーーー一 一一一一一一ーーーー 35

2.3 円孔列からの吹き出しによるフィルム冷却 一一一一一一一一一一一一 40

2.3. 1 実験装置 一一一一一一一一一一一一一一一ー一一一一一一一 40

(1)三次元フィルム冷却実験供試体 一一一一一一一一一一一一一 40

(2) 測定プロープ 一一一一 ー一一一一一一一一一一一一一一一一--_._--一一一一ーー 41

1

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(3)測定方法 ー ーーーー一一一 ーー一一ーー一 一一 42

(4) フィルム冷却時の冷却孔壁面の熱伝達率測定方法 一一一一一ー 42

2. 3. 2 実験結果および考察 一一一一一一一一一一一一一 一ー一一一 43

(1)ヒートシンクモデルによる角平析 一一一一一一一ーーーー---.--_._-_.-. 43

(2)温度境界層の測定値と解析値の比較 ー一一一一一一一一 46

(3) フィルム冷却効率 一一一一一一一一一一一一一一 一一 ーー一一一 52

(4) フィルム冷却孔近傍の熱伝達率分布 ー一一一一一 一ーー一一 58

2. 4 結 論 ー一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 60

文 献 ー 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 62

第3章 二次元低速翼列によるフィルム冷却実験 一一一一一一一一一一一一 64

3. 1 まえがき 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一ー一一一一一一ー一一 64

3. 2 第 l段静翼の二次元翼列伝熱実験 ー一一一一一一一一一一一一ー一一一一一一 65

3. 2. 1 実験装置 ー ーーーーー ー 65

(1)供試翼 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一ー一ーーー 66

(2)測定方法 ~ ------- ー一一一一ーー ーーーー一一一一一一 69

3. 2. 2 実験結果および考察 ー一一一一一一一一一一一一一一一一一 71

(1)翼面の速度分布 ー一一一一一一一一一一一一一一一一ー ー ーー 71

(2)翼面の熱伝達率分布 町一一一一一一ー ー一一ーーーー一一一一ー 72

(3) フィルム冷却効率 一一一一一一一一一一一一一一一ーー一一ー一 75

3. 3 第 l段動翼の二次元翼列伝熱実験 一一一一一一一一一ーー一一一一 81

3.3. 1 実験装置 一一一一 一一一一一一一一 81

(1)供試翼および測定方法 一一一一一一一一一一一ー 一一一一一ー 82

3. 3. 2 実験結果および考察 ーーー 一一一司一一一一 83

(1)翼面の速度分布 ー一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一ー 83

(2)翼面の熱伝達率分布 ー一一一一一一一一一一一一一ー 一一ー 84

(3) フィルム冷却効率 一一ー ー ーーーーーーー一一一一 85

3.4 結 論 一一一一一一一一一ーーーーー 一一一一ーー一一ーー… 89

文 献 ー 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 90

n

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第4章環状翼列による第1段静翼伝熱実験 一一 ー一一一一一一- 92

4. 1 まえがき 一一 一一一一一一一一一一一一一一ーー一一一一一一一一一一一一ーーー 92

4. 2 タービン内の流れ場 一一一ー ー一一 一一一一一 93

4. 3 環状翼列伝熱実験 ー ー一一一一一一一一ー一一一一一一一一一一一- 95

4.3. 1 実験装置 一一一一一 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 95

(1)供試翼 一一一一ー~. -• - ーー一一一一一一 ー一一一一一一…一一- 96

(2) 測定方法 一一一一一一一一一一ー ーーマ ー一一一一一一一一- 97

(3) 二次流れの可視化方法 ーー一一一一一一一一一一一一一一一一 ー- 100

4. 3. 2 実験結果および考察 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 ー 101

(1)翼面の速度分布 一一一一一一一一 一一一一一一一ーーー 101

(2) 二次流れの可視化 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 102

(3) 翼面の熱伝達率分布測定結果 ー一一 一一一一一一一一一一一一一一一一 105

(4) シュラウド面上の熱伝達率分布測定結果 ー一一一ー ー 107

(5) 翼面のフィルム冷却効率測定結果 ー…ー ー一一ー 一一一ー 107

(6) シュラウド面上のフィルム冷却効率測定結果 ー一一一一一一 113

4.4 結 論 一一一一一一一一一一一一一一一 ー一一一一一一一一一一一--118

文 献 一一一 一一一一一一---.-. 一一一一一一一一一 ー 119

第5章回転動翼面のフィルム冷却実験 ー一一一一一一一一一ー 121

5. 1 まえがき 一一一一一一一一一一一一一一一切司 一一一一一一一一一一一ー一一一 121

5. 2 空気タービンによるフィルム冷却実験 ー一一一ーー ー 一一一一 122

5.2. 1 実験装置 ーー ー一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 122

(1)供試翼 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 122

(2)供試空気タービン実験装置 ーー ー一一一一一一ーーー…--125

(3) フィルム冷却効率の測定方法 ー一一一一一一一一一一一一一一一一 127

5.2.2 実験結果および考察 '一一一一一一一一一一一一一一一一一一 129

(1)回転時の動翼面のフィルム冷却効率 一一一ー一一一一一一一 129

(2)二次元低速静止翼列におけるフィルム冷却効率との比較ーー 133

(3) フィルム冷却の重ね合わせに関する検討 ー一一一一一一一一 136

m

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5. 3 結

論 ー一一一一一一一一ーーー一一一一一一一一一一一一一一ー一一一一 138

献 ー一一一一一一一ー ー一一一一一一一一一一一一一一一ー一 139

第6章フィルム冷却翼のメタル温度の検証 一一一一一一一一ー--- 140

6. 1 まえがき 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 140

6. 2 タービン翼のメタル温度の検証 ー一一一一一ーー ー 142

6. 2. 1 翼列実験における熱的相似性の考察 一ーー 守 一一一_. 142

6. 2. 2 タービン第 1段静翼のメタル温度 ー一一一一一一一一一一一一一一- 144

(1)実験装置と供試体 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一- 144

(2)実験結果および考察 ー一一一一一一一一一一一一一一- 150

6. 2. 3 タービン第 l段動翼のメタル温度 一一一一一一一一一一一一一一一一一一 155

(1)実験装置と供試翼 ー一一一一一一一一一一一一一一一一一一 155

(2)実験結果および考察 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 168

6. 3 結 論 ー一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一- 174

文 献 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一……ー 175

第7章 フィルム冷却の高性能化の研究 一一一一一一一一一一一一一一一 176

7. 1 まえがき 一一一一一一一一一一一一一一ー ー ー一一一一一一一一一一一ー一一ー一一 176

7. 2 高性能フィルム冷却 ー一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 178

7.2. 1 シェイプトフィルム冷却の伝熱実験 一一一一一一一一一一一一一一_. 178

(1)供試体および測定方法 ー一一一一 ーー一一一一一一一一一一一 178

(2)実験結果および考察 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一.. 179

7. 3 全面フィルム冷却 ー一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 一一一一一 186

7.3. 1 全面フィルム冷却の伝熱実験 一 一一一一一一一ー 一一一一一_. 187

(1)供試体および測定方法 ーー一一一一一ー 一一一一一一一一一ー 苧 187

(2)実験結果および考察 一一一ーー一一ー一一一一一一一一 ーー- 192

7.4 結

論 一 一 一 一 一 一一一一一ー一一一一一ー ー…ーー一一一一一一ー.. 197

献 一一一一一一一一一一一一一一ーー ー一一一一一一一一一 198

第8章結 言 一一一一一一一一一ーーーー… …ーー-_...-.ーーーー--.. 199

謝 辞 ーー一一一一一一一一一一一一一一一一一ーー…一一一一一一一一 一一一ー 203

lV

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言己 -=z==三2T

A :面積

C :濃度

c p :比熱

C :翼コード長

c x :軸方向翼コード長

D :タービン翼前縁直径

d :フィルム冷却孔直径

f :関数

G :流量

:関数(第 2章 2.2. 3節〉

g :重力加速度

H :速度境界層と温度境界層の厚さの比

h :熱伝達率

:運動量比

K :定数

t :翼高さ

:フィルム冷却孔を 2列配置した場合の孔間の距離

M :質量流束比

Ma :マッハ数

N :タービン回転数

n :フィルム冷却孔列数

:べき指数(第 2章)

P :圧力

P e :ペクレ数

P r :プラントル数

P r t :乱流プラントル数

p :フィルム冷却孔ピッチ

:翼ピッチ〈第 3章)

v

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q 熱流束

R ガス定数

Re レイノルズ数

r 半径

:後縁半径(第 4章)

S 二次元スロットのスロット巾

S' 円孔列のフィルム冷却孔の相当スロット巾

S c シュミット数

S p スポルディング関数

s 翼面に沿ってよどみ点から測定した後縁までの長さ

:スロート巾(第 4章)

T :温度

T i t :タービン入口温度

t :板厚さ

U :流速(主流方向)

U :速度の変動分

V :流速(主流と直角方向)

w :分子量(第 2章 2.3節)

:ニッケル薄箔抵抗体の巾(第 3章 3.2節)

X フィルム冷却孔(2列の場合は後方の冷却孔)の下流端からの距離

:境界層の発達位置からの距離(第 2章 2.2節)

:翼前縁よどみ点から翼面に沿って測った距離(第 3章)

X スロットからの距離

X 0 速度境界層の発達する仮想原点からスロットまでの距離

Xl 非加熱部の長さ(第 3章 3.2節)

y 壁からの距離

y 0 ヒートシンクモデルにおける吸熱源の壁面からの距離

z フィルム冷却の流れと直角方向の距離

α :フィルム冷却スロットまたは孔の壁となす角度

VI

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3 :フィルム冷却孔の主流となす角度

r :ガンマ関数

7 :比重量

δ :速度境界層厚さ

δt :温度境界層厚さ

ε :乱流拡散係数

:放射率(第 6章)

εH :熱乱流拡散係数

εM :運動量乱流拡散係数

η :冷却効率

ηc :サイクル熱効率

ηf :フィルム冷却効率

ηf :平均フィルム冷却効率

θ :温度

λ :熱伝導率

μ :粘性率

ν :動粘性係数

ρ :密度

σ :スケール比

τ :主流の乱れ強さ

π :圧力比

ゆ :翼前縁のよどみ点からの角度

:冷却空気流量比(対主流流量)

ゆ' :冷却空気流量比(対圧縮機吹込流量,第 1章)

:翼列実験における冷却空気流量比(対主流流量,第 6章 6.2節)

α』 :角速度

vn

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;~

a :冷却空気

:フィルム冷却空気(第 6章)

aw :断熱壁

ao :フィルム冷却空気の供給点

C :コード長基準

error 誤差

exit 翼出口

f フィルム

g ガス

in 翼入口

"-Y"

iw フィルム冷却孔から距離 x離れた点のトレーサの濃度

M 金属

m フィルム冷却孔から吹き出した空気の最高効率となる点

max 最大値

s 静圧

:基準(第 6章)

t 温度

:全圧(第 3章,第 4章)

w 壁

x アキシャル

y 壁面から距離 yの位置における値

o フィルムの吹き出し位置における値

:圧縮機吸込

.99 主流の99%の値

∞ :主流

:主流の流路(第 6章)

VIIl

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r:::I 緒主早第 1

まえがきa

唱・・・-

a

司・・・

ピーク需要用とし1973年の石油危機以前は,産業用の大型ガスタービンは,

省エネルギーの観点、から従来燃料の多様化,て使用された。石油危機以降は,

の石油火力一辺倒の依存体質を改めるために LNGC液化天然ガス),地熱等多様な

産業用ガスタービンのベース需要用としての使用の道が発電方式が見直され,

高温単機での出力が 100MWを上まわる大容量,考えられた。 1980年代に入り,

ガスタービンと排熱回収ボイラおよび蒸気ガスタービンの開発の成功により,

その高効率性で脚光を浴びタービンを組合せたコンパインド発電プラントが,

るようになった。

ガスタービンの入口温度の上昇によって飛コンバインドサイクルの効率は,

およびコンバインドサ躍的に改善される。図1.1. 1にガスタービン単体発電,

。イクル発電のサイクル熱効率 ηc の特性を示す[1]

タービン入口温度の上昇に伴って増加する。ガスタービン単体の熱効率は,

コンノt一方,鈍くなる傾向にある。高温化によって熱効率の増加は,しかし,

最高熱効率点がガスタービンの比出力の最高点と一致し,インドサイクルでは,

高温化による効率改善の余地が大きい。最新のコンパインド発電システムにお

けるタービン入口温度13500C"" 14000C級の高温ガスタービンを使用するもので

さらにタービン入口温度1500総合熱効率が幼児CHHV)を越えるものもある。は,

これを用いたコンパ。Cのガスタービンが数年後には実用化されると予想され,

高インドプラントの熱効率は50児CHHV)を越えると考えられる。以上のごとく,

非常に重要な役割をに温ガスタービンはコンバインドプラントの主機として,

なう機器となった。

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#:円h 46

〉工 44 工、‘"。

42 r

tc o 〉J、40

5 U0 J 38

rE O g r TitoF (Tif>C)

五ト= 34

O 。。〉、 32

30

28 TitOF

261 (TitOC)

150 200 250

52

48

π: Pressure Ratio

50 ~ Tit : Turbine inlet temperature

Combined Cycle

Simple Cycle

300 350 400 450

Specific Power of Gas Turbine (kW-s/kg)

図1.1. 1 サイクル熱効率・比出力特性図

円ノU

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1.2 高温ガスタービンの開発動向

産業用ガスタービンの高温化の趨勢を図1.2. 1に示す [21 。従来ガスタービ

ンの高温化は,航空用ガスタービンがそのリード役を演じて来た。産業用ガス

タービンは,航空用ガスタービンの開発に遅れること約 10年で同レベルのター

ビン入口温度に達するという傾向にあった。しかし, 1990年代に入ると,産業

用ガスタービンのタービン入口温度は,航空用ガスタービンのものとほとんど

同じレベルに達した。これは産業用ガスタービンのタービン入口温度が, 250

C

/年の割合で急速に上昇しているためである。

ガスタービンの高温化は,タービンの冷却技術と材料開発, コーティング技

術に負う所が大きい。産業用ガスタービンのタービン入口温度が250

C/年の割

合で上昇したことの内訳を分析すると,冷却技術による所が 150

C--200

C /年,

材料・コーティング技術に負う所が 50C--10oC/年である。このように,最近

のガスタービンの高温化は,タービン翼の冷却技術によって達成されていると

言っても過言ではない。

1700

1600

t。J 1500

戸 1400

1300

1200 噌ωc 圃a

1100

1000

900

800 1950 1960

eFOE3 404

eM88

F100 eF101 OP悦 OY

eAFT

C件 6efF為 JT9 円F/-501F TF39a01becF附 60DJR4

TF30も。OぴJR- s MF111 TF34 '='一回いー '

e Military Aero Engine 。CommercialAero Engine ・HeavyDuty Gas Turbine

1970 1980

Year

1990 2000 2010

図1.2. 1 タービン入口温度の推移

-3-

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1.3 タービン翼の冷却構造の変遷

ガスタービンの燃焼器出口の温度には分布がある。そのために,タービン第

1段静翼にはタービン入口平均ガス温度よりも 15児--20児温度の高いガスが局

所的に流れることになる。この高温ガスにさらされるタービン翼を,翼材料が

許容する温度以下に保持するため,圧縮機から抽気した空気を用いて冷却を行

う。最新の産業用ガスタービンでタービン入口温度 13500

C級の 501Fガスタービ

ンの冷却空気供給系統を図1.3. 1に示す [3J

Cooling Air for 2nd Vane

!↓ 1

図1.3.1 501Fガスタービン冷却空気系統

-4-

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ガスタービンが高温化されるに伴い,タービン翼の冷却に用いられる方法も

高度化される O タービン入口温度の上昇に伴い,冷却翼の冷却方法は内部対流

冷却からフィルム冷却,さらには全面フィルム冷却へと変化する。これは,内

部対流冷却では翼面に生じる温度勾配が非常に大きくなり熱応力が過大になる

ためである。現在実用化されている代表的な冷却方法と式(1.3.1)で定義する

冷却効率 ηと主流流量 Gg に対する冷却空気量 Ga の割合 φの関係を図1.3. 2

に示す [41 。さらに冷却効率の高い方法としては図1.3.2(e)に示すワイヤーメ

ッシュや焼結金属等を用いたトランスピレーション冷却があるが,表面の酸化,

あるいはプラギングの問題があるため,実用化には至っていない O

T g - TM

冷却効率 η= (1. 3. 1) T g - T a

度温

気度温

空温ル

却スタ

冷ガメ

Z

M

TTT

でア」

命d 総説1.0.

lFilm Cooling五μ戸Cooling Air

(b) (a) ¥

〉2ω、0.6

.u悼U5= ・J

四 0.4

(d)

c

(c) 。 β 手¥to J

。 2 3 4 5 676

Cooling Air Flow Rate併=Ga/Gg

(e)

(a) Convection cooling・ (b)Impingement cooling.

(c) Film cooling. (d) Full毛overagefilm cooling.

(e) Transpiration∞olig.

図1.3. 2 各種冷却方式と冷却効率

-5-

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産業用ガスタービンのタービン静翼およびタービン動翼には,タービン入口

温度に対処して,最適な冷却方法が適用されている。図1.3. 3. 図1.3.4に代

表的な産業用ガスタービン501シリーズの冷却構造の変選を示す[2) 。最新の

501Fガスタービンの第 l段静翼および第 1段動翼の詳細な冷却構造を図1.3. 5.

図1.3. 6に示す (3) 0 501Fガスタービンの第 1段静翼は. 3つに分けられたイ

ンサートによる内面インピンジメント冷却と翼前縁のシャワーヘッド,翼背腹

面のフィルム冷却および後縁のピンフィン冷却の組合せから成り立っている。

一方,第 1段動翼では. 3通路からなるサーペンタイン流路の内面にタービュ

レータを付けて,冷却を促進するとともに,翼前縁にシャワーヘッド,翼背腹

面にはフィルム冷却,そして後縁にはピンフィン冷却を採用している。

501A 501B 5010

Insert 加輯rt

、一一司

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1960 1970 1980

Year

501F

加担rt

、r- r一一一二一一一一一一一一一一一l

1990 2000

図1.3.3 産業用ガスタービン第 1段静翼の冷却構造の変遷

-6-

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高温化に伴ってタービン部を冷却するのに必要な冷却空気量 Ga が増加する。

タービン入口温度の上昇に伴って冷却空気量 Gaの圧縮機吸込流量 GI に対す

る割合ゆ'の増加傾向を図1.3. 7に示す。この冷却空気量の増加は,圧縮機吐

出空気量を減らし,タービン各段におけるガス温度を低下させ,さらには,混

合損失を増加させるために,ガスタービンの熱効率を低下させる。これが前述

したシンプルサイクルにおいてはタービン入口温度の上昇にかかわらず熱効率

の増加割合が低下する原因である。コンバインドサイクル効率 ηc へのガスタ

ービンの冷却空気量 Ga の影響度の解析例を図1.3. 8に示す[1] 。図1.3. 8よ

り明らかなごとく冷却空気量 G a はコンバインドサイクルの熱効率 ηC に非常

に大きな影響を与えるために,高温化を達成しながら冷却空気量を減らす努力

が必要である。

5018 5010

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s・中町ta/n問。w

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Fllm Coollng

1990 2000

図1.3.4 産業用ガスタービン第 1段動翼の冷却構造の変遷

-7-

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Film Cooling

Shower Head

~

Cooling Air

ロ…といしvh・/日・JJ.-

一-一へ丸山中一-v一-一-v

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

. ・................ .

.••••••.••••••.••....•••.•.

t丸

tミ

501Fガスタービンの第 1段静翼の冷却構造図1.3. 5

Pin Fin Cooling

メFilmCooling

Turbulator

、主

づShower Head

Pin Fin Cooling

Main Hot Gas cコ>r--AC

< Section AC >

。合O Cooling Air

501Fガスタービンの第 1段動翼の冷却構造

-8-

図 1.3. 6

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T 40

... 町、内治、、ー'

nH

M

M

,f

パーi/

,・・''

'e

r川llvJ,l

lυw

30

20ト

10

FOEOJも

ω古庄〉〉

OE』一〈由主一。。。

1500 斗」ー

1400 1300 ム

1200 1100 1000 o

Turbine lnlet Temperature Tit CC)

タービン入口温度と必要冷却空気量の関係図1.3. 7

55

30

40

ザ=Ga/G1Cooling Flow Rate (%)

50

45

40

(渓)ub

hocgoE凶一ωE』

@Zト

ω一OKAO司

AWEDE00 一T

lL 1500 1100

Turbine lnlet Temperature Tit ("C)

冷却空気量とコンパインドサイクル効率の関係

-9一

図1.3. 8

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1.4 本論文の概要

産業用高温ガスタービンに用いられるタービン冷却翼を開発するためには,

タービン翼が置かれる全ての熱的境界条件と空力的境界条件を知る必要がある。

熱的境界条件には,主流の高温ガスから翼への熱流入を評価する翼面熱伝達率

分布,翼面上のフィルム冷却の効率,翼内面のインピンジメント冷却や対流冷

却あるいは,各種フィン付流路の熱伝達率,等々が含まれる。一方,空力的境

界条件としては,翼面の速度分布,静圧力分布,等々がある。さらに,冷却空

気の流動・配分を予測する必要があり,このためには,各冷却要素の圧力損失

係数を調べる必要がある。

タービン入口温度の上昇に伴って,タービン翼面の熱負荷は飛躍的に増加す

る。この理由は,より高温に耐える翼材料の開発が行なわれているが,翼材料

の最高許容メタル温度が大巾に上昇していないために,ガス温度と翼表面の温

度差がガス温度の上昇にリニアーに比例しているためである。そこで,タービ

ン入口温度(相対ガス温度を含む)が 11000Cを越えるタービン翼では,フィル

ム冷却を採用し,熱応力を軽減する冷却方法が用いられる。このように現在の

産業用高温ガスタービンの冷却翼を成立させる最も重要な技術は,フィルム冷

却技術であると言える。 [51

本論文では,産業用ガスタービンの冷却翼に適用するフィルム冷却技術の開

発を目的として行った研究の成果を,第 2章~第 7章に取りまとめた。各章の

位置づけを図1.4. 1に示す。

第 2章では,フィルム冷却の基本的特性を把握するために実施した,低速伝

熱風洞を用いた二次元スロットからの吹き出しによるフィルム冷却および円孔

列からの吹き出しによるフィルム冷却の実験結果と,境界層理論に基づくフィ

ルム冷却効率の推定式を明らかにした。また,フィルム冷却効率を測定する方

法として物質伝達のアナロジーを応用した炭酸ガスをトレーサとした測定方法

の精度検定結果を示す。

第 3章では,タービン動静翼の冷却への応用を目指して,典型的なタービン

ハυ

4EEム

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第 l段静翼および第 l段動翼の 50%断面拡大モデルを用いて,低速翼列風洞で

実施したフィルム冷却実験結果について述べる。以上の結果よりタービン翼面

上におけるフィルム冷却効率を推定する実験式を与えた。

第 4章では,最新のタービン静翼に適用するフィルム冷却の研究をまとめた。

最新の高温ガスタービンでは,空力的に高負荷化,低ソリディティ化が進むが,

タービン第 l段静翼もこの傾向にもれず低アスペクト比化される。このような

低アスペクト比の翼では,シュラウド面上の二次流れの翼面への影響が無視で

きなくなる。アスペクト比 O.5の静翼モデルで構成した環状翼列風洞を用いて,

翼面およびシュラウド面上の熱伝達率ならびに,フィルム冷却の特性を把握す

るために実施した実験的研究結果について述べる。さらに馬蹄渦,流路渦等の

シュラウド面上の二次流れの熱伝達率,フィルム冷却への影響を明らかにする。

第 5章では,回転している動翼面上のフィルム冷却効率を調べる目的で実施

した,空気タービンを用いた実験結果について述べる。回転している動翼にフ

ィルム冷却を適用することは,タービン入口温度の上昇に伴って必要となるが,

回転動翼面上のフィルム冷却効率を直接測定した報告は皆無であった。動翼は

静翼のウェークによって生じる非定常流および回転による遠心力の影響を受け

るために,動翼面上のフィルム冷却効率は静翼のフィルム冷却効率と異なって

いると予想される。そこで,実機と相似な空力的条件で運転した空気タービン

実験装置を用い,測定法としては物質伝達のアナロジーを適用し,回転してい

る動翼面上のフィルム冷却効率を測定した結果について述べ,さらに静止翼列

実験結果との対比から回転効果のフィルム冷却効率への影響を考察する。

第 6章では,フィルム冷却を施行したタービン静翼およびタービン動翼のメ

タル温度の検証結果について述べる。第 2章~第 5章にわたって述べた翼面の

熱伝達率,フィルム冷却技術は,他の多数の伝熱データとともに,冷却翼の開

発に用いられる。このようにして開発されたタービン動静翼の冷却性能は,実

機相当のガス温度下で実施する高温翼列実験,さらには,実機エンジン試験に

おいて確かめられる。以上のごとく,高温翼列実験および実機エンジン試験で

の翼メタル温度解析の検証結果は,タービン翼のメタル温度推定精度向上のた

めに伝熱要素実験あるいはタービン翼の設計システムに反映される。

1i

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第 7章では,フィルム冷却効率の高性能化に関する研究の成果について述べ

る。ガスタービンをさらに高性能化する方法としては,二通りの方法が考えら

れる。第 lには,タービン入口温度を同一に保った状態で冷却性能の高い冷却

構造を採用し,冷却空気量の低減を計る方法である。第 2には,タービン入口

温度を上昇させることである O フィルム冷却技術に関しては,前者の方法とし

て冷却空気量が少なくて従来並のフィルム冷却効率が得られるシェイプトフィ

ルム冷却技術がある。後者の高温化に対処した方法として,冷却空気量は従来

並か時には増加させる必要があるが,フィルム冷却効率が非常に高い全面フィ

ルム冷却技術がある。産業用ガスタービンのタービン入口温度をさらに上昇さ

せるために必要なフィルム冷却技術を開発するために実施した,シェイプトフ

ィルム冷却孔のフィルム冷却特性に関する研究結果と,タービン静翼およびタ

ービン動翼に全面フィルム冷却を適用した場合のフィルム冷却効率の測定結果

について述べ,それらの結果より産業用ガスタービンの今後の高温化の可能性

を展望する。

第 2章フィルム冷却の基礎実験

第一 3次章元翼列実験

ト一一タービン静翼

」一一タービン動翼

I

環第 4状章翼列実験 第 5 章動回転 翼フィルム冷却実験

設計データ・検証データ

第 6章メタル温度検証実験

第 7章フィルム冷却の高性能化

図 1. 4. 1 本論文における各章の位置づけ

-12-

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第1章の文献

[1J 福江, “大型ガスタービン技術の現状と将来日本ガスタービン学会セ

ミナー,第 11回資料, pp. 3. 1-3. 9, 1983.

[2J Takeishi, K., et. al.,“Study on the Turbine Vane and Blade for a

15000C Class lndustrial Gas Turbine, " Trans. ASME, Journal of Tur-

bomachinery, Vol.116, pp.597-604, 1994.

[3J Scalzo, A,J., et.al.,“A New 150MW High Efficiency Heavy Duty Com-

bustion Turbine," Trans. ASME, Journal of Engineering for Gas Tur-

bines and Power. Vol.111. pp.211-217, 1989.

[4J Glassmann, A.J.,“Turbine Design and Application, "NASA SP-290,

1975.

[5J 武石, “フィルム冷却の進展"日本ガスタービン学会誌 Vo1. 20, pp.18

-25,1993.

nd

1i

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第 2章 フィルム冷却技術の基礎実験

2. 1 まえがき

高温気流にさらされる物体の表面に高温気流より温度の低い冷却媒体を吹き

出し,高温気流と物体表面の間に冷却膜を形成し内部の物体を高温ガスから保

護する方法は,フィルム冷却法として知られている。フィルム冷却の性能は,

一般に次式で定義されるフィルム冷却効率 ηf で評価される。

T∞-T f

( 2. 1. 1 ) ηf T∞-T a

ここでT∞は高温ガス温度 Taは冷却空気の温度そして Tfは物体表面のフ

ィルム冷却空気温度である。上式の定義から明らかなようにフィルム冷却効率

ηfはo'"'-' 1の値をとる。上式中のフィルム温度Tfについては,物体への熱

流入が無い断熱壁を考えると断熱壁温度 Ta wは物体表面に接するフィルム冷却

空気温度Tfに等しくなる。また冷却空気の温度としてフィルム冷却空気の吹

き出し点の温度Ta。を用いると上式は次の形で表される。

ηf T∞-T aw

T∞ Ta 。( 2. 1. 2 )

この冷却方法においては冷却膜が熱遮蔽体として作用するため,高温の気流か

ら物体への熱流東を減らすことが出来る。フィルム冷却法を採用すると物体に

流入する熱流東が減り,その結果物体内に生じる温度勾配を減らして熱応力を

低下させることが出来るので,フィルム冷却法はガスタービンのタービン翼,

燃焼器等の高熱流東部の冷却に多用される。

タービン翼にフィルム冷却を適用する場合,タービン翼の構造上の制限から,

一定の間隔であけられた吹き出し孔から吹き出さざるを得ず,現在のところ,

壁に300

'"'-'350

の角度であけた円孔列からなるフィルム冷却孔が採用されてい

anτ

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る。このような円孔列から冷却空気を吹き出した場合,吹き出し部の近傍では

フィルム冷却孔の間に高温気流が流れ,その下流で冷却空気と混合するという

複雑な三次元の流れ場を形成する。しかし,吹き出し部近傍を除く下流域にお

いては,一般に境界層的取り扱いが可能となる。二次元スロットからの吹き出

しによるフィルム冷却は,ガスタービン燃焼器壁の冷却等,応用面で重要であ

るため,現在までに多くの理論的,実験的研究がなされてきた。しかし,その

多くが吹き出し角度 o0 あるいは90。に関するもので,応用面では重要である

にもかかわらず,角度のついたスロットからの吹き出しによるフィルム冷却の

文献は非常に少ない。そこで,本章では,円孔列からの吹き出しにおける下流

域の現象予測の基礎となる吹き出し角度を有する二次元スロットからの吹き出

しによるフィルム冷却の実験的研究の成果について述べる O さらに低速風洞を

用いて実施した吹き出し角度を有する二次元スロットからの吹き出しによるフ

ィルム冷却の実験結果,およびフィルム冷却効率を推定する境界層理論に基づ

く半理論式を明らかにする。

また,タービン翼面上のフィルム冷却の基礎を固めるために,これらを単純

な系で模擬した実験を行った。このタービン翼面上のフィルム冷却では翼面の

曲率あるいは主流の加減速の影響を受けると考えられるが,まず一様主流で平

板面上に角度をつけてあけられたフィルム冷却孔からの吹き出しによるフィル

ム冷却効率の研究を実施した。このフィルム冷却孔の吹き出す角度に関しては

翼背腹面と翼前縁の二種類の大きく異なった形状が考えられる。翼背腹面を模

擬するフィルム冷却孔の形状としては,吹き出し方向が主流と同一で,吹き出

し角度が壁画に対して300

傾斜した円形のフィルム冷却孔を用いた。一方,翼

前縁を模擬したフィルム冷却孔の形状では,吹き出し方向が主流と 900

で壁面

に対して450

傾斜したフィルム冷却孔を用いた。これらの二種類のフィルム冷

却孔を有する供試体を低速風洞に装着してフィルム冷却効率を測定し,その結

果より実験式を導いた。

Fhu

Ei

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2.2 二次元スロットからの吹き出しによるフィルム冷却

2.2. 1実験装置

平板面上にあけた円孔列からの吹き出しにおけるフィルム冷却効率の測定に用

いた低速風洞の型式は吸込み型であり,その仕様を表2.2. 1に,また装置の概略

を図 2.2. 1に示す。主流は,平行部,縮流部,主流コントロール部を通ってテス

トセクション部を流れ,拡大部を通ってプロワーより大気に放出される。大気吸

込みの平行部に設けたスクリーンは#12メッシュの金網から出来ており,吸い込

み速度を均一化する。また同部分に設けているハニカムはセルの対辺が3/8 I で

表2.2.1 伝熱風洞の特性

Dimension of Test Section 300W>く300HX1200L

Maximum Velocity

Maximum Pressure Difference

Main Stream Turbulence Intensity

UMAX=40m/s

-100mmAq

m2/U∞=0.50/0

1200

Test Section

Honeycomb Screen

一理図2.2. 1 伝熱風洞概略図

nhu

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長さ 100mmを用いており,主流中のスワール成分を除去している。テストセク

ション部は,高さ 300mm X巾 300mmの正方形断面で,長さは 1200mmで-ある。ァ

ストセクション部の底面は厚さ 75mmのベークライト製で,断熱壁温度測定用の

熱電対および静圧タップを埋め込んでいる。テストセクション部の側面および

上面は,内部が可視化可能なようにアクリル製であり,側面の一部はシュリー

レン法による可視化のために,光学ガラスの装着が可能なようになっている。

供試体の形状をパラメータにした場合の実験を容易にするために供試体は図 2.

2. 2に示すごとくスロッ卜部のみをカートリッジ状に製作して,テストセクシ

ョン部の底面上流側に装着した。

( 1 ) 二次元フィルム冷却実験供試体

二次元スロットからの吹き出しによるフィルム冷却実験に用いた供試体の基

本す法は下記の通りである。

スロット巾 S = 10mm

吹き出し角度 α=300, 600

, 900

板厚さ t = 82mm

供試体の材質は断熱性を良くするためベークライト製(熱伝導率 A ~ O. 5W

/m'K) とした。供試体の写真を図2.2. 2に示す。

ι ま に 二〉件TypeThermocouple

to Measure Film Cooling

Air Temperature

、‘「

ー-E‘tr・-u

図2.2. 2 二次元フィルム冷却翼実験用供試体

(左から α =900

, 600

, 300用)

tt

‘11ム

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(2) 測定プローフ

一様主流中の流路壁面に設置された二次元スロットから吹き出した場合のス

ロット下流の流路壁面上に発達する境界層は二次元的であると推定出来るから

高さ方向の分布を同時に測定出来るように高さ方向に 11点の熱電対あるいは全

圧管を設けた図2.2. 3に示す櫛型のプロープを製作し,測定に用いた。

a. 櫛型熱電対

.7

ロプ

櫛全

-

.hu

4d

n/』

円〆』図

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(3) 測定方法

フィルム冷却効率は式(2. 1. 2 )で定義されるが,本実験では主流温度T∞

を常温とし,フィルム冷却空気の吹き出し点における加熱空気温度 Ta。とした

状態で,断熱材製の壁に埋め込んだ熱電対により測定した断熱壁温度Ta wを用

いて,フィルム冷却効率 ηf を次式より求めた。

η ∞一∞

T一T

一一一w-0

・a-

a

M

T一T

(2. 2. 1)

この式で主流温度T∞とフィルム冷却空気温度 Ta。は,タービン翼の冷却の

場合と逆になっているが,低速で温度差が小さく,かっ浮力の効果が無視出来

るので,フィルム冷却による冷却の場合と同じ結果が得られる。

断熱壁温度Tawを測定するために測定流路壁はベークライトで製作している

が,完全な断熱状態は達成できない。そこで,熱伝達と物質伝達の間にアナロ

ジーが成り立つことを用いて測定する方法を適用した。すなわち,主流中のト

レーサの濃度 C∞'徴少のトレーサを混入した空気の吹き出し点における濃度

Coと下流部における壁近傍の濃度 Ciwを測定することによって,次式よりフ

ィルム冷却効率を求めた。

η-C i wー C∞

Coー C∞ (2. 2. 2)

主流中にトレーサの成分が存在しない場合式 (2.2. 2) 中の C∞=0となり,

フィルム冷却効率 ηf は局所の濃度に比例することになる。

熱伝達と物質伝達のアナロジーは,乱流ルイス数が1.0であれば完全に成立

するが1.0から少しずれていてもほぼアナロジーが成立することが示されてい

る[1]。本研究ではトレーサとして炭酸ガス,一酸化窒素を用いたが,炭酸ガ

ス,一酸化窒素の空気に対するルイス数と,それらの濃度を測定する測定機器

を表2.2.2に示す。

nu --i

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表2.2.2 フィルム冷却効率測定のトレーサと濃度測定器

Carbon Dioxide Nitric Monoxide

Schmidt Number Sc[一] O. 458 0.643

Prandtl Number Pr[一] 1. 296 O. 828

Lewis Number Sc/Pr[一] O. 353 O. 777

Molecular Weight 44 28

Instruments Gas Chromatography NOx Analyzer (Shimadzu) (Yamamoto)

Tempera ture : 200C

2.2.2 実験結果および考察

(1) 伝熱風洞の特性

伝熱風洞の特性を調べるために, 3孔ピトー管で主流速度分布, KANOMAX製

熱線風速計で主流乱れを,また内径 O.5 rnrnの全圧ピトー管を用いて壁面上の境

界層内の速度分布を測定した。主流平均流速U∞= 15. Om/sにおいて,主流速

度の不均一率は 1児以下,また乱流格子を付けない場合の主流乱れはO.5月以下

であった。

二次元スロットからのフィルム空気の吹き出しが無い場合の壁面の境界層内

の速度分布 U を測定し,これを主流の平均流速す∞で無次元化し,平板上の乱

流境界層の速度分布式 (2.2. 3) と比較して図2.2.4に示した。図中の yは平板

から垂直に測った距離であり, u/u ∞""""yを両対数グラフ上でプロッットし,

u/u ∞......., 1. 0の外挿より速度 U が主流の99%となる厚さを境界厚さ δ.9 9 と

した。一方,平板上に発達した乱流境界層の厚さは,式 (2.2. 4)で表わされる [210

tz =〔一子 )1/7 (2. 2. 3)

δ0.376XRex (2. 2. 4)

テストセクション壁面に発達する乱流境界層の仮想原点を求める目的で,速度

境界層厚さ δとノズル縮流部から下流方向に測った距離 xを式(2. 2. 4 )と比

較して図 2.2. 5に示す。

nu つ』

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1.0

0.9

~I 0.8 Symbol X(mm) 。 -60

A 100 ロ 200 • 300 ... 500

0.7

0.2 0.4 0.6 0.8 y/8

図2.2.4 吹き出しの無い場合の境界層内速度分布

Ei

n〆hM

1.0

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100mmの所にある境界層の発達の仮想原点、はノズル縮流前方より,図2.2.5

本章では境界層の発達の仮想原点は

ノズル縮流部より前方100rnrnであるとして解析する。

この測定結果を反映して,と推定される。

-0.2 -ー;O.99 = 0.376 x Rex

70

50

40

30

20

(EE)8.ぬ

的的。

cv-o一zト』

ωKA偲・4

h』何℃C

コo∞

4000 2000

x (mm) 1000

Distance from Converged Section 500 L

テストセクション部における速度境界層厚さ図2.2.5

吹き出し時の境界層内分布の測定結果(2)

二次元スロットから吹き出した場合の主流とフィルム空気の質量流束 ρ Uの

スロットと流路壁のなす吹き出し角度a/ρ ∞ U ∞をO.5 '""" 1. 5, 比M=ρaU

についてスロッ900

600

α= 300 , αをパラメータとした実験を行なった。

図2.において測定した速度分布の代表的な結果を図2.2.6,トからの距離 x

質量流束比Mが大きい場合にこれらの速度分布より,図2.2.10に示す。2.8,

フィルム冷却空気は主流に貫通してスロット吹き出し角度 αが大きくなると,

下流部に循環域を生じることが明らかである。

下流の濃度分布を(一酸化窒素)を混ぜ,フィルム冷却空気にトレーサガス

図2.図2.2.9,図2.2.7,測定した結果を温度分布と閉じ図上にプロットし,

-22-

2.11に示した。

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100

80

E60 〉、

20

0.5

Distance from slot x' =-50mm 圃,..........,ーーーーー...

100 200 300 500

l ./a,pl' oO/Q /

ned:dPぞら〆¥v/,V'

Condition

u_ = 15.0 m/s

T_ = 24.0oC

Ua = 7.62 m/s

Ta = 35.0oC

Sym回l x'(mm)

。 -50

A 100

ロ 200

。 300

v 500

0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.0 1.0 1.0 0.8 0.9 1.0

Non-dimensional Velocity ul u.国

図2.2. 6 吹き出しを伴った境界層の速度分布 (α=300 , M = O. 491)

Distance from slot

x' = 20 (G)mm 100mm 200 300 500

100l 50 (0) .

Condition Symbol x . mm

Temp.loenSityl x' (mm)

80 U_ = 15.1 m/s 。 20

E T_ = 26.2 oC 。 。 50

}E 60 Ua = 7.61 m/s • " 100 ロ 200 〉・、 Ta = 65.6 oc 。。300

Co =99ppm v 500

hiE 20ト

私06 ~ 4且 ロロ

• A o aI} 0 G

OE ‘ 自 ' '

o 0.1 0.2 0.3 o

T帽ーT(y) ___ Cy Non-dimensional Temperature η=一一一一一 orη 宮 -4Lー

T帽ーTao Co

図2.2. 7 吹き出しを伴った境界層内の温度,濃度分布 (α=300,M=0.489)

円。円ruM

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100

80

E 60 〉、

。g 40 曲

Q

20

Distance from slot x' =-50mm

。。。。。

01 --̂ .n OW;・ L ・ R

0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0

100 200 300 500

s zj j

1.0 1.0 1.0 0.8 0.9 1.0

Non副dimensionalVelocity ul Ü~

Condition

u_ .. 15.1 mls

T_ = 23.9.C

tJa = 15.7 mls

Ta = 42.0.C

Symbol ぜ(mm)

。 -50

A 100

ロ 200 。 300

v 500

図2.2.8 吹き出しを伴った境界層の速度分布 (α=300

, M = 0.993)

Distance from slot

x'宮 20~・)mm 100mm 200 300 500

50 (0) 100~ー

Condition Symbol t(mm}

Temp.IDensity

80 U_ = 15.1 mls @ 20

T_ = 25.7.C 。 。 50

g ε 60 Ua = 1.56 mls A 4包 100

ロ 200 〉、 Ta = 65.5.C 。 o 300

Co = 96ppm v 500

20~

。。' a 自

o 0.1 0.2 0.3 0 。 o 0 0.1 0.2 O.

Non-dimensional Temperature η T国ーT(y) ~._ C =ーー一一ーーー orη=一一.::::1一一

T国ーTao Co

図2.2. 9 吹き出しを伴った境界層内の温度,濃度分布 (α=300

, M = 0.987)

-24-

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Distance from slot 100 200 300 x' =-50mm

120

。。。

企 。企 ロ 。企 ロ 。A ロ 。A

v ロ 。。

A ロv

。 A

v

。 A ロ 。 v ロ 。。 A

マロ 。。 A ロ 。 マ

t企企/¥固

v

A 四.回 !'jグ.... <>

/ 企 ロロ

....cP.・v/ 〆司Z

100

80

E E 〉、

860

s 曲。

40

20

。0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.0 1.0

Non-dimensional Velocity ω百回

1.0 0.8 0.9 1.0

図2.2.10 吹き出しを伴った境界層の速度分布 (α=900

Distance from slot

x' = 20 (o)mm 100mm

100 50 (0)

80

ε

。。。電gdLo

。o@

' ' E a

o 0.1 0.2 0.3 o

200 300 500

500

Condition

u~ = 15.1 mJs

Tω= 26.40C

lJ. = 15.9 mJs

Ta = 45.80C

Symbol x'(mm) I 。 ー50 I A 100

ロ 200 。 300

v 500

M = o. 993)

。a

@

O o

Non叫dimensionalTemperature

ηT∞ーT(y) ー C= ー一一ー『ーーーーー orη=

T曲一Tao Co

o 0.1 0.2 0.3 0.4

Condition Symbol

が(mm)Temp.IDensity

U帽=15.1 mls 。 20

T曲=25.7.C 。。 50 I

Ua = 15.7 mls A /1 100

200 ロTa = 65.0.C 。。 300 Co = 89ppm v 500

図2.2. 11 吹き出しを伴った境界層内の温度,濃度分布 (α=900

Fhu

n〆UE

M = 0.988)

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フィルム冷却効率をトレーサを用いた濃度分布から求める方法においては,濃

度計の安定化待ちと,濃度分析のために l点を測定する時間として約20分を要

したが,主流を吸い込まない 1m/s以下の吸引速度を保つことにより温度分

布と一致した結果が得られている。図 2.2. 6 ,図 2.2. 8 ,図 2.2.10に示した吹

き出しを行った場合の境界層厚さ δ.9 9 の変化を吹き出しが無い場合と比較し

て図2.2.12.......図2.2.14に示す。これらの結果から吹き出しにより境界層の発達

が大きく影響を受けていることが明らかになった。

150

100

(EE)8.崎

ぷ。折、与。g 50

室戸

3 z t

20

L 1000 2000 3000

Dis!ance x (mm)

図2.2. 12 吹き出しを行った場合の境界層厚さの変化 (α=300

)

huqL

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M=0.5

150

100

50

{EE}8・崎

22哲三ト』申

hse850国

3∞o 2000 x(mm)

1000 'L Distance

吹き出しを行った場合の境界層厚さの変化 (α=600 図2.2.13

150

100 M= 1.5

M = 1.0

50

{EE}8崎

帥帥国

E哲三ト』世話」と伺司Eコom

'L 30∞

吹き出しを行った場合の境界層厚さの変化 (α=90。

Inノ“

20∞ x(mm) Distance

10∞

図2.2. 14

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(3) 二次元スロットからの吹き出しのフィルム冷却効率

スロット巾 Sの二次元スロットからフィルム冷却空気を吹き出し,吹き出し

角度 αおよび質量流束比Mをパラメータとしてフィルム冷却効率 ηf を測定し

た結果を図2.2. 15--図2.2.17に示す。無次元距離 x'/MS中の x'はスロッ

トから下流方向に測った距離である。フィルム冷却効率を評価する実験式は一

般に ηf --f (x/MS)の形で表される。この形で表した場合スロットから

下流のフィルム冷却効率の分布を直接知ることが困難であるためフィルム冷却

効率 ηf を x' / Sで整理しこれらの図中に併記した。吹き出し角度 αが300

1.0

11. .. ト l寸

~It-!

0.5 r

田 0.4g: 印刷tion

g03 .ぷ2

8 :::: w ~ 0.2

E u

E 比

Symbol M U. An剖VSiS

。 0.29 5.0m/s 一ロ 0.49 8.3

& 0.73 12.5 。 0.99 16.3

• 1.49 25.4 ー...

0.1

5 10 50 100 200

Non-dimensional Distance x'/MS

1.0 • AJ' .e 旬ea目

。品目

。畠目。e

AB目

。・官。

aM。

。nu

抑制

mM

aM

町↑

。品

。晶ロ

0

・目。

6a固

~I <f ドlト1,1'8 ドl←

11 c?"' 0.5

。。。

。固。

~ 0.4 @

c o 主 0.3O φ :t: 比』

E02

3 E u.

。。。。。

。.12 3 4 5 10 20 30 40 50 100

Non-dimensional Distance X'/S

図2.2. 15 二次元スロットからの吹き出しによるフィルム冷却効率 (α=300 )

n6

nノLH

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の測定結果に/Sとフィルム冷却効率 ηfと小さい図 2.2. 15の無次元距離 x

M は距離の増加に伴って単調に減少しており,フィルム冷却効率 ηfおいて,

図 2.2.15において質量流一方,においても循環流を生じることは無い。= 1. 5

フィルム冷の測定結果より,束比Mをパラメータとしたフィルム冷却効率 ηf

これで最大値を取ることが明らかである。M = 1. 0 は質量流束比却効率 ηf

が示している吹き出し角

でフィルム冷却効率は極大値を持つという傾向とー

Goldstein [自]トからの吹き出しで

の場合M= 1. 0

二次元スロッ

度 α=0。

は,

1.0

51 oi' ト l寸

~I~ 0.5

r

Symbc湖 M U. Analysis

。 。ω 5.1 mls 一固 0.49 8.4

A 0.73 12.5 _.. 。 0.99 16.9

• 1.49 25.4 . ...

0.4

0.2

0.3

nwAWF』由〉

ZU曲』出。c-一ooOE=L

200 1∞ 50 10

Non-dimensional Distance

5 0.1

x'/MS

.、Aロ'daロ

-eaロ

@岳品目

eSロ

@企ロ

0

・金目、,

0

.ロ04

ωEロ

O

AEロ

0・eoAW

ロ。

e

o

ρ

,。ι勺80

~ s

すa:J

家1.0

0.5

zlf H

F-

。。。

。0.4

0.3

0.2

回目

20〉一voou凶05一80EE

100 ω 10 5 0.1

x'/S

卜からの吹き出しによるフィルム冷却効率 (α=600

nu つ臼

Non酬dimensionalDistance

二次元スロッ図2.2.16

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図 2.2. 15--図 2.2.17のフィルム冷却効率の測定結果を示しなお,致している。

2. 2. 3節で述べる境界層解析の解も合せて示している。た各図には,

/5で整を無次元距離 x図2.2.16および図2.2.17のフィルム冷却効率 ηf

吹き出しスロッ以上)すると,(α= 600 理した図より吹き出し角度 αが増加

質量流束比Mの増加に伴ってフィルム冷却空気の主流への貫通がト近傍では,

ト近傍ではフィルム冷却空気の増加に伴っそのために吹き出しスロッ生じる。

貫通したフィルム冷却空気が再付着する点よりてフィルム冷却効率が低下し,

逆にフィルム冷却効率が増加することがわかる。下流では,

1.0

言1.<f H 寸

~I~ 0.5

!="

Symbol M u. Analysis

。 0.28 5.1πぜs 一固 0.49 8.4

A 0.74 12.5 ー..。 0.99 16.9

• 1.49 25.4 ーー・・

0.4

0.3

0.2

目的

ωcg,ZU也位凶

05一ooOE=L

200 100 50 10

Non-<limensional Distance

5 0.1

x'/MS

@。企

blo

gA回

q

。。企ロ。

0

・0a0

・0

O

'qia

目。

@♂ロ

04

44、ih

目。

eotロ

o

eoA

目。

。‘ロ

o

av,ロ。

。a目。

。aw目。

。A

ロ@O

Aロ

o

aq白骨

o

a目。

aHEM@

E 。ロ量。

'

。&AV

'

。ロAAV'

1.0

0.5

0.4

0.3

0.2

;15 H

r的回

@CO

〉一日oozuoc一一。。。ε=HL

100 50 10 5 0.1

(α= 900

x'/S

卜からの吹き出しによるフィルム冷却効率

υqJ

Non-dimensional Distance

二次元スロッ図 2.2.17

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2.2.3吹き出し境界層の解析と実験値との比較

(1) 境界層解析

一様主流中の流路壁面に設置された二次元スロットから冷却空気を吹き出す

ことは,工学的に重要な問題であり,現在までに多くの解析的研究がなされて

来た。この解析の主たる方法は,二次元乱流境界層中に吹き出した空気が吸熱

源(または発熱源)として作用するという考えに基づいて,境界層内のエネル

ギーバランスよりフィルム冷却空気の温度を求める方法である。

ここでは. Mayle. Hartnett等[3 1 [4 1の方法に従って境界層解析より求める。

解析は,次の仮定のもとに行う。

<仮定>

① 流れは,低マッハ数であり,高速気流の場合に生じる勇断層内の発熱は

無視出来る。

② 比熱CP. 熱伝導率 A等の物性値は,境界層内で一定である。

③ 乱流拡散に比較して,分子拡散は小さい。

④ 境界層内の温度分布Tは相似と考えられ次式が成立する。

T-T =G [y

δt (X) (2. 2. 5)

ここで, δt は次式で定義される温度境界層厚さである。

T-T δt (X) = S一一 dy。 Tw-T∞

⑤ 速度分布も相似で乱流境界層の場合次のべき乗則で表せる。

ρρ;=(÷)n 00 - C沿

(2. 2. 6)

ここでは,フィルム冷却を施行しているタービン翼を考え,図 2.2.18に示す

境界層を仮定する。すなわち X X 0 にフィルム冷却スロットが存在し,速

度境界層がフィルム冷却スロット位置より前方 X0 から発達する場合で,これ

は翼前縁から速度境界層が発達し下流の翼背腹面にフィルム冷却孔が存在する

状態をシミュレートしている。唱

Ei円。

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圧力勾配の無い乱流境界層の方程式は次の形で表せる[2 J

連続の式a (ρu) I O (ρv) _ f¥

O x O y (2. 2. 7)

運動量保存式 v

ρ

+

a一Bρ

ー -L[ρ(ν+ 立.~ ) ] O y εM -o Y (2.2. 8)

エネルギー保存式 ρC p aθa θ U一一一+ρcp v 一一一-o y

o D -一一一 [ρcp ( A +ε 一一 )J (2.2.9) Oy L f.J'vp ¥Il TeH Oy

ここで 。=T-T∞

x = x 0 - S cos α......, x 0 間においては u= U a COS α, υU a S i nα

の流速が存在するが無視し x= x 0 において ρaU aの吹き出しがあるとして

エネルギーバランスより求める。この場合境界条件は次式で表わせる。

y = 0で

U=v=O, a θ _ f¥ o y

y

y=∞で |ナよU= U ∞, v = 0

θ= 0

AHN

式次でAU

>=

X

hり

。ょっ

立定

図2.2. 18 吹き出しを伴う二次元境界層

J r ρu D dy=ρa U a θa S (2.2.11)

円ノハ-

qd

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式 (2.2. 7) より

ρv 一一一旦一一 (ρu) __ (---*-) 1 + n δ' 1 + n ∞

(2.2. 12)

ρU.ρV.θ をエネルギ一式 (2.2.9) に代入すると次式が得られる。

(ρu)∞ δt (ド G {仕L(土)会〔出す二ーす十二〕

一旦一 〔ρ( A +εH ) G' ] (2.2. 13) dy

式 (2.2.11)より

ー止--=_s ∞ ρu e dy= 0 d x J 0 (2. 2. 14)

ρu. eを式 (2.2.14)に代入すると次式が得られる。

nδrδ1 e w ' _ ̂

1 + n δδ1 + nθw v (2. 2. 15)

式 (2.2. 13). 式 (2.2.15) より次式が導かれる。

1 1 n(ρ 九 δt(十)n 計二[(ま )l+n G' ]

一一丘一 [ρ( A +εH ) G' ] (2. 2. 16) d y

式 (2.2.16)で表わされる常微分方程式は, Wieghardt [4] によって解かれ次

式が得られている。

G [-+-] -4- exp {一 (r (立土旦)(エー)〕 2刊} (2. 2. 17) δtθw2+nδt

次に, θw(X)を求める。以下では速度境界層の中での温度境界層を評価する

ために,温度境界層厚さ δt と速度境界層厚さ δの比を H=δ/δtで表わす。

式 (2.2.15),式 (2.2.16)より次式が導かれる。

(2. 2. 18)

熱乱流拡散率 εH は,乱流プラントル数 Pr tで評価される。すなわち

円。円。

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1 1 1 εH =εM /P 一一一一一一一一一 U δδ , (2.2.19) 日 Pr t (1 + n) けー n)代 + n】 ∞

よって,

H' ~ 1 r 1 1 U 2+n 1 1 L 1 一一一+一一一一一[一一一一 ・一一一 H2+

n -lJ一一一 = 0 H l+nL Prt K2

(2.2. 20)

x = x 0 において H= H 0 の境界条件の下に微分方程式(2. 2.20) を解くと

次のようになる。

p r t K 2 H = { 1-[1-PrtK

2 HO-(2+n) J(XO /X)4(2+n)/5(I+n)

フィルム冷却効率は次式で定義される。

θ官

η -す τ。

よって,

ηf す MS δ手: 1 H1 + n

K 3 (δ/MS)

ここでBlasiusの境界層厚さを用いると次式を得る。

4/5 (ρu) __ x -1/5 (1 + n) (1 + 2 n ) μ

δ= 0.058 [一 J[μJ x

1/ (2 +n)

(2.2.21)

(2. 2. 22)

(2. 2. 23)

17.25 r n .., 4/5 ηf=[n u][

(ρuL S .., 1/5" X ~4/5 μa ](-Lー )K3 L (1--1パ MS

p r t K 1 (!+n)/(2+n) x { 1-[1-P

rt K

2 HO-(2+n) J(XO /X)4(2+n)/5(I+n)

(2. 2. 24)

n = 1/7, P r t = O. 65の場合,式 (2.2.24)は次のようになる。

(ρuL S .., 0.2" X -0.8 ηr =4.67 [, pU/a V J (一一一{1 -(1 -2. 3 H 0 -15/7 )

μa .J 'MS

3/2 (Xo/X) } -8/15 (2.2. 25)

-34-

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(2) 測定値と解析値の比較

境界層内の温度分布を表わす式 (2.2.17)は, n=I/7の場合次式となる。

す二=川 {-0.772(3-)15/7) (2. 2. 26)

式 (2.2.26)を温度境界層の測定値と比較して図 2.2. 19'"'-'図2.2.22に示す。

この結果によると吹き出し角度 αが小さい 300 の場合,境界層内の温度分布は,

図2.2.19,図2.2.20に示すごとく理論値と良く一致しているが,図 2.2.21より

α= 900 で質量流東比M=0.5の場合は,温度分布の解析値と測定値は吹き出

し点のごく近傍でのみ一致していない。また, α=900 で質量流束比M=1. 5

と大きい場合の吹き出し点の近傍では,温度分布の測定値は式 (2.2. 26)で解析

される値から大きくずれることが図2.2.22より明らかである。しかし,吹き出

し点より下流 X I = 500mmの位置では両者は良く一致している。これは吹き出

しスロット近傍に循環流が生じているためで,再付着した点より下流では,再

び境界層的な流れになっていると考えられる。

1.2

0.8

J14 j包0.6. Iト

11 -r

0.4

0.2

。0.5 1.0

y/Or

ーーー Eq.(2.2.26)

c ~ 3.0

図2.2.19 境界層内の温度分布 (α=300,M=0.5)

-35-

。x'= 20

企 50

o = 100

v = 200

() 3∞ ロ =500

3.5

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1.6

1.4

1.2

ト戸ー 0.8 園圃・ Eq.(2.2.26)

" r

0.6

<> x=20

A =50 0.4 。=100

マ =200

0.2 @ =300

ロ =500

。0.5 1.0

吋~v図 2.2.20 境界層内の温度分布 (α=300

• M = 1. 5 )

1.6

1.4

1.2 。。。

1.0

A日Uf戸均A

0.8 ~ ~マ ー-Eq. (2.2.26)

11

!='

0.6 ~ 。x=10

A =50 0.4ト 喚日

O =100

マ =200

0.2ト <>強[③ =300

ロ =500

o 0.5 1.0 3.5

y/or

図 2.2.21 境界層内の温度分布 (α=900 • M宮 O.5 )

-36ー

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速度境界層 δと温度境界層 δt の比 Hについて,解析式 (2.2.21)と測定値を

比較した代表的な結果を図2.2.23,図2.2. 24に示す。なお,式 (2.2.21)では H

に関する初期値 Hoが必要であるので,この値は測定値を用いた。

吹き出し角度の小さい α=300 の場合,測定値は式 (2. 2.21)の値に比べて

20%程度大きい値を示している。一方, α=900, M=0.5の場合は,図2.2.

24より,測定値と解析値は良く一致していることがわかる。なお, α=900

M = 1. 5の場合は,境界層内の温度分布で述べたごとく,吹き出し下流部に循

環域を生じているために解析値と測定値は一致していない。

二次元スロットによるフィルム冷却効率は式 (2.2. 25)で解析することが出来

るが,式 (2.2. 25)中の Ho は理論的あるいは実験的に決める必要がある。スロ

1.6

1.2 t-~

t:.. A

A

0.4

ー -Eq. (2.2.26)

1.

. 81~ r;-I 1 110 .... ï.~ |戸 0.8

Hhr

0.6 ~ x' = 10

0.2 A

t:.. 30

o = 100

v = 200

<t = 300

ロ=500

~

。0.5 2.0 2.5 3.0 3.5

y/δr

図2.2. 22 境界層内の温度分布 (α=900

, M = 1. 5)

iqd

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EzS E 4

11

-』ω 〉何J 、

句。回・

匡g 伺

相崎、崎町工

目的。

cv-uE↑』oh句」とguC30

∞恥O

O

Z悶江

5

、民

¥¥.¥る 2

¥ミト~二 ー

)E

B--

・山内4-

l

:

tJ内

4E

l--

au内

4-

nr、-A

・一nu--

FE-

Experiment

O

一・a =30. M=0.5

a=3ぴ M=1.5

o 1000 1500

Distance x (mm)

図2.2.23 速度境界層と温度境界層の比

5

4

Analysis Eq. (2.2.21)

α=90. M=0.5

a=90. M=1.5

3

2

〆ぐ¥/、、〈、、‘f 司、--司、、ー

i 0 、Oζミミミー/ J /

6 O

• • • • o

1000 1500 Distance x (mm)

図2.2. 24 速度境界層と温度境界層の比

6q喝

U

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ット位置における速度境界層の厚さ δ。は,速度境界層の発達し始める仮想原

点からスロットまでの距離を x0 とすると,図2.2.6,-.....,図2.2.10中に示した測

定値より Blasiusの境界層厚さ式 (2.2. 23)を吹き出し角度 αと質量流束比Mで

補正した

δ。 0.376xoRe-?.2 (1 +0.5 Msinα) Xo

(2.2.27)

で表わせるが,スロット位置における温度境界層の厚さ δt。は,ほぼ次式で表

わすことができる。

δto 1.4MSsinα (2. 2. 28)

式 (2.2. 27),式 (2.2. 28)を式 (2.2. 25)に代入し,フィルム冷却効率 ηf を計

算した結果と測定値とを比較して図2.2.15,-.....,図2.2.17中に示している。図 2.2.

15'-"""図 2.2.17中に示したフィルム冷却効率の測定値と解析値を比較すると傾向

的に良く合っており,かっ非加熱部 x0 の存在が現れている O またスロットか

らの吹き出し近傍においては,解析値は測定値よりもやや高めの値を示してい

る。これは,式 (2.2. 23)で表される壁面の吹き出しの無い場合 Blasiusの式と

異なって,速度境界層の発達が吹き出し空気の影響を受け,速度および温度境

界層厚さの比が異なるため,あるいは,質量流束比が大きい場合には,スロッ

ト下流部に循環域を生じるためと考えられる。しかし, x /MSの値が50を越え

る位置より下流においては,解析値によりフィルム冷却効率 ηf の値を推定す

ることが可能であると考えられる。

nHU 円。

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2.3 円孔列からの吹き出しによるフィルム冷却

2.3. 1実験装置

本研究には,先の2.2節に述べたと同ーの伝熱風洞を用いた。

(1) 三次元フィルム冷却実験供試体

タービン翼のフィルム冷却の基礎研究として,円孔列からの吹き出しによるフ

ィルム冷却の実験に用いた供試体の形状は,下記の二種類である。

①:タービン翼の翼面, シュラウド面の冷却に用いられるフィルム冷却の基礎

的形状で,吹き出す軸が主流と同一 (β=0。表 2.3. 1付図 1)で,壁と

なす角度 α=300の円孔列

⑪:タービン翼の翼前縁の冷却に用いられるフィルム冷却孔の形状を模擬した

吹き出す軸が主流と直角 (s= 90。表 2.3. 1付図 2)で,壁となす角度 α

=450の円孔列

本実験に用いた供試体の基本す法を表2.3.1に示す。これらの供試体の材質は,

断熱性を良くするためにベークライト製とした。

表2.3.1 供試体寸法

P Remark

[mm]

10

n=1 1 ; plug the downstream

side holes

@ O G トl斗

① R3b 帥町o問。qQGTN 件i~ …reamφ

4年。:占

句、/α

バタグtl l-.is

付図 1 付図2

-40-

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(2) 測定 プ ロー ブ

円孔列から吹き出した加熱空気の空間温度 ・圧力分布を精度良く測定するため

にz 図2.3. 1 "'-'図2.3.3に示す櫛型熱電対および櫛型全圧管 (吸引プロ ーブとし

ても使用 )を製作し,測定に用いた 。 この櫛型熱電対では,熱伝導の誤差を小さ

くする目的で熱電対の支持板にはベ ークライトを用い,支持板が流れを乱さない

ように,流れ方向に模形状に製作した o

図2.3.1 櫛型温度計

図2.3. 2櫛型全圧管

-41-

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h.0

0.5 O.D. Thermocouple I I Main Stream

Bakelite

Detail of A

2

図2.3. 3 櫛型温度計測温部詳細

(3) 測定方法

本実験では二次元スロットからの吹き出しによるフィルム冷却効率の測定時と

同様に,主流を常温 T に保った状態で円孔列より Ta。の温度の加熱空気を吹きC口

出し,下流の断熱壁温度 Tawを流路壁面に埋め込んだ熱電対で測定することによ

って,フィルム冷却効率 ηf を測定した。本実験においても炭酸ガス,一酸化窒

素をトレーサとした円孔列下流部での濃度分布測定よりフィルム冷却効率 ηf を

測定したが,多点の濃度分布測定では多大の時間(1点の測定に約20分〉を要す

るため,空間分布の測定では主に温度分布を測定した。

(4) フィルム冷却時の冷却孔壁面の熱伝達率測定方法

流路壁面上に円孔列のフィルム冷却孔が存在すると,円孔列が卜リッピングワ

イヤーと類似の作用をし,円孔列の吹き出し孔が無い場合と比較して熱伝達率が

増加する。すなわちフィルム冷却孔の吹き出し部近傍の流れは複雑であり, この

円/ハ】

A4A

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流れに支配されて壁面の熱伝達率は変化している。この様な複雑な場の熱伝達率

をGoldstein等はナフタレン昇華法で測定している[5] 。このナフタレン昇華法

は熱伝達率分布の優れた測定方法の 1つであるが,基板の調整,昇華量の測定

(表面のへこみ量の測定)等,細心の注意が必要なために,定量的なデータを簡

便に得ることが出来ない。そこで, ここでは新たに開発したニッケル薄箔抵抗体

をフィルム冷却孔を除く壁面の全面にわたってはり,通電加熱による等熱流束加

熱条件下で壁面上の局所熱伝達率を測定した o

2.3.2実験結果および考察

(1) ヒートシンクモデルによる解析

三次元フィルム冷却の効率を推定する主な方法として,次の三種類の方法が提

案されている。

① ヒートシンクモデル:フィルム冷却空気を移動熱源として取り扱い,熱伝

導方程式を解くことによって温度場を解く方法で, Ramsey [6]により提案さ

れた。なお乱流拡散係数を主流方向,高さ方向ならびにそれに直角な方向に

変化させた解析モデル [7] 等も報告されている。

② 境界層理論の適用:フィルム冷却孔の直径 d, ピッチ p,列数 nであけら

れた円孔列吹き出しの場合も,円孔面積を二次元相当スロット巾 s'に置き

換え,二次元の式を用いる場合がある。二次元の式としては,フィルム冷却

空気への主流のエントレイン量を乱流境界層の発達量に等しいと仮定し,フ

ィルム冷却空気層の中で完全混合するとして解いた Goldstein[8] の式 (2.

3.1)が一般に良く知られている。 (2.2節では,非加熱部の境界層の発達を

考慮した,より一般化した式 (2.2. 25)を示した。)

1.9Pr2/

3

ηf 一 (2. 3. 1) 1 + 0.329 (C p∞ /Cpa) t O

•8 1;

ここで, t =(x' /MS' ) [(μa/μ ∞) R ea ]

1;=1.0 +1.5 XI0-4Rea (μaW∞/μ ∞Wa )sinα

円4U

8nヨ

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s,= n1l'd2

-4 p

ここで, c p 比熱, W:分子量, μ:粘性係数である。

なお,円孔列によるフィルム冷却効率を推定するために式 (2.3. 1)あるい

は式 (2.2. 25)等の二次元スロットのフィルム冷却効率式を適用した場合,

フィルム冷却効率は高めの推定となる。

③ 三次元数値解析:円孔列吹き出し部の 1ピッチについて,連続の式,運動

方程式,エネルギ一式からなる三次元楕円型徴分方程式を Gosmanの方法で

解いた報告がなされている[日]

吹き出しが低流速の場合,測定値と解析値は比較的良く一致するが,実用上重

要な吹き出し流速が速い場合は両者の差が大きい。今後の研究では③が増加する

と考えられるが,現時点、では,実用の域に達しておらず,①,②の理論式を実験

的に修正した半理論式が有用と考えられる。なお②についての一般化式は2.2節

で式 (2.2. 25) を導出したので,以下ではヒートシンクモデルについて述べる。

4・--回国ー・-・圃同ー

玲二z ーーーー一ーーーーーー一ーーーーーーーーーーーー・

-----y -〆....--ーーーーーーー.-岡田-田園-

----

-ー"

ーーーーーー

ーーー---ー-ーー一-

-ーー"

図2.3.4 ヒートシンクモデルによるフィルム冷却の解析

-44-

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図2.3. 4に示すごとく,ヒートシンクモデルでは,主流中に吹き出した冷却空

気を壁面から y0 離れた位置に存在する吸熱源として取り扱い. この吸熱源が主

流と同じ流速 U ∞で移動する場合の下流の温度場を熱伝導方程式を解くことによ

って求めるものである。この吸熱源の形を点として扱った場合のEriksen等 [101

の解析式 (2.3. 2)を示す。

T (x, y, z) -T∞ η - T a 0 -T 。。

d U= d 2 Mu ∞ [ (y jr!L ) + (;) J} exp { -

X X 4εH d 16εH d

Mu ∞d U ∞ d 2

exp { - [ (y J y !L ) + (;) J} 十X X

4εH d 16εH(i

(2. 3. 2)

円孔列からの吹き出しによるフィルム冷却の場合冷却効率の重ね合せが成立す

ると仮定すると,物体表面における平均フィルム冷却効率 ηf は,式 (2.3. 2)を

lピッチに渡って Z方向に積分して平均化することによって得られる。

1 ,.+∞ s η 一τご一 J ηf a z

-c幻

_ r7rM / u ∞ d 一寸下7dV εH x/d

u~d 2

4 e H 司 (γ) } (2. 3. 3)

式 (2.3.2),式 (2.3. 3)を用いてフィルム冷却効率を推定する場合 y 0 およ

び乱流拡散係数 εHを何らかの方法で推定する必要がある。 Y0 は吹き出し孔下

流の最高効率部の高さから,一方, εHは, Y = 0におけるフィルム冷却効率 ηf

を用いて求めることができる。 εHは式 (2.3. 2)より

εH 一

Mu ∞ d

8 TJ f (x, y=O, z)を

X exp { -~?∞ :[(T )2+(を)2]}

せt;; H d (2. 3. 4)

F「u

a4-

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のように表されるが,式 (2.3. 4)の両辺に εHが含まれているので繰り返し計算

で求める。なお,質量流束比Mが大きい場合,空間分布で最大効率 ηm,となる Ym

を用いて次式から求める方が精度が良いと考えられる。

M u __ d u __ d 2

εH = 山~ { 1 + exp [-ーニ~(昔旦) J} (2. 3. 5) 167] m 含 εH含 u

(2) 温度境界層の測定値と解析値の比較

2. 3. 1節に示した 2種類の供試体①,⑪(表 2.3. 1参照〉を用いて,主流を常

温とし,フィルム冷却空気を加熱した状態で吹き出し,下流の空間温度分布を測

定することによりフィルム冷却の効率を求めた。これらの二種類の供試体(①型

α= 300 , β= 0 0 ,および⑪型 α=450 , s =900 )を用いて,吹き出し円孔

列数を変え,空間温度分布を測定した代表的な結果を図2.3.5,図2.3.6中に示

す。なお,図 2.3.5 ,図 2.3.6中には後述する吹き出し空気内の温度分布を解析

した結果も示している。

-46-

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0.6 6

x/d = 20

D

ζ ¥ぐ。。

日間3 4 0 8

x/d = 2 x/d = 5

k RにI...e 、!J 。- Fすり@ -同ーー

60

40

20

(EE)KA ωGEm-ω一円]

0.6

η

M=1.0)

x/d = 20

P

世¥直

0.6 0.2 0.4 η

η

空間温度分布(①型 2列

0.2 0.4 η

0.6 0.6

x/d = 2 x/d = 5

P P

@

トこ @ |¥ fo |白 。ー 切@戸、

内。

現 ーレJ s 。

図2.3. 5

0.6 0.2 0.4 η

η

60

40

20

(εE)kA

。OC同担回一。

M=1.0) 空間温度分布(⑪型 2列

ia斗a

図2.3.6

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また,フィルム冷却空気を吹き出した場合に,フィルム冷却孔の下流 x/d=

5, 10, 20の位置で温度分布を測定した。この結果から得られた吹き出し空気と

主流との混合状況を図2.3.7,図 2.3. 8に示す。

Type 1. 1 row M=1.0 Type I • 2 rows M=1.0

3

お=5

泡=10

治=20

図2.3.7 フィルム冷却空気の空間分布(①型)

-48ー

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①型は主流と平行に吹き出すために,図2.3. 7の等温線図で明らかなように,

温度の核が後方まで残る。一方,図2.3. 8より⑪型は主流と直角に吹き出すため

に,見かけ上のスリット巾が広く,かっ,主流方向に曲げられる問に混合するた

めに,吹き出しの近傍から二次元的な境界層の温度分布を示す。

Type 11. 1 row M=1.0 Type 11. 2 rows M=1.0

3

治=5

治=10

3

治=20

図2.3.8 フィルム冷却空気の空間分布(⑪型)

-49-

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円孔列からの吹き出しにおける温度境界層に関して式 (2.2. 26)の空間温度分

布が成り立っか否かを調べるために,①型,⑪型の代表的な測定値と解析値を比

較して図2.3.9.図2.3.10に示す。図2.3.10から,⑪型が,吹き出し後急速に二次

元性を持つことがわかる。

図 2.3.11に示した x/ d = 10のペクレー数 Pe を用い,図2.3.9. 図2.3.10に

示した Y0 と,式 (2.3. 2)で吹き出し空気内の温度分布を解析した結果を図2.3.

5 .図2.3.6中に示す。なお,図 2.3.11中に示すペクレー数は,図 2.3.7.図 2.3.

8に示した円孔列下流の空間温度分布測定値より最大効率 ηm となる壁面からの

距離 Ymを用いて式(2. 3. 5 )を解くことによって εH を得ることによって求め

たものである。このペクレー数は図2.3. 11に示すごとく,吹き出し近傍で大きく t

下流に向かつて小さくなる傾向を持っている。この解析では Pe 数一定として

取り扱ったために,吹き出し近傍では解析値は高いめ,下流では低いめの推定と

なっている。

1.6

A A • 1.4 ~企

1.2 ~Â A

M-l.0

%・0

。A

1.0

- ; Eq. (2,2, 2Eり

H

F

0.6

0.4

o

A

A

• ~ •• E-, -司‘圃, . 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

y/Ot

0.2

図2.3.9 境界層内温度分布(①型)

nu Fhd

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1.4

• • 1.0令込σ。。 M= 1.0

O 7ei = 0

I} 0.8 ~ ¥ミ11

r

ふ一ーー;Eq. (2, 2, 26)

0.4

0.2

0.5 2.5 3.0 。

qd

nu

U

司8コ『Zω"@且』

ω且E3ZHO

一u@且0.02

0.01

1.0 1.5

y/伐

図2.3.10 境界層内温度分布(⑪型)

0.06

0.05

k

h

¥ヘ~一¥

¥¥¥¥¥λ¥刊

、、¥、¥』民

¥代¥、、¥、.

h

k

、、¥ui

¥

、.

i

J

k、

1

+li--11¥仇Vt・-tI・

ー一一ーーーー Type 1 n = 1

ーーーー- Type 1 n = 2

0.04

一一一一 Type11 n = 1

ー一一一 Type11 n = 2

with・M= 1.0

without ・M=0.5

、、、、、、、、、.、‘、、、与 司、河・L.._

九九 ------ー『ι 「ーーー一ーーー←一一ーーーー一一一一ーーーー

。 10 20

Distance xJd

30 40

図2.3. 11 ペクレー数の分布

-51-

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フィルム冷却効率(3)

円孔列のフィルム冷却効率は質量流束比M=0.5付近で極大値を持つとされて

M=1.0""'1.5に設計されるこ実用上は主流の逆流を防止するために,L 、るが,

本実験で得られた円孔列の 1ピッチにわたる平均フィルム冷却効率 ηf

図2.3.13に示す。と質量流束比Mの関係を図 2.3.12,

とが多い。

0.6

にdnu h

F

E

g> 0.3

3 a 0.2 宮

2.0 1.5 1.0

Blowing Rate

0.5 o

α=30. .β= o. . P =3d. 1.5 d

フィルム冷却効率への質量流東比の影響(①型)

M

図2.3. 12

0.6

0.5 I~

i O4 2 色3CD E w g> 0.3 o

S E u: 0.2 s 咽

包〉

0.1

2.0 1.5 1.0

Blowing Rate

0.5 。a=45. • β=90. • P =4d. 2 d

フィルム冷却効率への質量流束比の影響(⑪型)

円/臼

FhJU

M

図 2.3.13

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α= 300 , β= 0 0 (①型)の l列吹き出しの場合, Goldstein [11)等の実験

では,平均フィルム冷却効率はM=0.5で極大値を採ると報告されている O 本実

験結果でもこの値はM=1.0→1.5に向かつて増加の傾向がある。 (M< O. 5は,

実用に適さな L、)実用上重要な M=1.0→1.5では,①型では, 1列, 2 71j吹き

出しともほぼ一定である。また, α=450

,β= 900

(⑪型)の 1列吹き出しの

場合, M= 0.5→1. 5にわたって,この効率がほぼ一定なのに対して, 271j吹き

出しの場合, M = 0.75で極大値を取る。平均フィルム冷却効率に対する列数の影

響に関しては,図 2.3.12より明らかなごとく,①型では, 2列吹き出しにおける

フィルム冷却効率は l列吹き出しのそれに比較して約 3倍であり,冷却空気量が

2倍必要なことを考慮しても 2列吹き出しは非常に効果があると言える。一方,

⑪型では,質量流束比M< 0.75で吹き出し近傍から x/ d =, 30の範囲では,流量

の増加分程度の冷却効率の増加しか見込めない O またM> 1. 0, x / d > 30のフ

ィルム冷却孔から離れた位置でのフィルム冷却効率は, 2列吹き出しの場合効率

は 2倍以下となる。

円孔から吹き出したフィルム冷却空気は, y方向 x方向に拡がって行く。こ

のために,吹き出し点よりも下流では,冷却空気が合流し二次元の壁噴流に近づ

く。この現象への孔列の配置および列数の影響を明らかにするために,フィルム

冷却効率 ηf を z/dに対して図 2.3.14にプロットした。 1列吹き出しの場合,

吹き出し孔近傍の x/d=2では z/d=Oにおけるフィルム冷却効率が高く,

z/d=1.5のフィルム孔列の中央で最小値を取っている。しかし, x/d=12

より下流では Z方向にわたり均一なフィルム冷却効率が得られている。 2列吹き

出しの場合, 2列あるフィルム冷却孔の下流端より測った距離の無次元値 x/d

= 2.0よりも x/ d = 5.0あるいは x/ d = 12の点の z/d=Oのフィルム冷却

効率が高くなっている。この理由は,千鳥配列のフィルム冷却孔からの吹き出し

では主流をブロックする効果が大きくフィルム冷却空気が強く壁に押しつけられ

前列の円孔列から吹き出されたフィルム冷却空気が下流方向に流れる聞に Z方向

に広がり後列の円孔列からの吹き出されたフィルムと重ね合さって高いフィルム

冷却効率になると考えられる。前列のフィルム冷却孔の中心は z/d=1.5に存

在するが,後列のフィルム冷却孔の下端から下流方向に測った xを用いた無次元

qd

Fhd

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一様なフィルム冷却効率が保たれてい距離 x/ d = 2.0で既に最大値は消滅し,

る。以上の結果千鳥配列の 2列吹き出しの場合一様で高いフィルム冷却効率が得

られている。

⑪型の供試体を用いたフィルム冷却実験の質量流東比M=1.0における①型,

さらにx/dの関数として図 2.3.15に示す。代表的なフィルム冷却効率 ηf を,

直径 dおよび質量流束比Mが直接現れない形でフィルム冷却効率を比較するため

図2.3.16--図2.3.平均フィルム冷却効率 ηf を無次元距離 x/MSで整理し,

ヒートシンクモデルおよび二次元境界層理論に基づいてフィなお,19に示した。

図式 (2.3. 3)を導出したが,

2.3.16--図2.3.19中にはこれらの解析値も示している。

式 (2.3. 1), ルム冷却効率 ηf を推定するために,

x/d Symbol

M=1.0

,zrT:士二...工二........r...

ζnun司

9ιRM4

・qu凋守

一.._-----一一一一一0.4

0.3,

品 0.5r g 。c o 〉

喝圃,

() Q) E 凶

0> c 。。に2

E u.. 0.1

2.0 1.5

Center of Cooling Hole (2 rows)

Zld

1.0 0.5 o

Center of Cooling Hole

フィルム冷却効率の Z方向分布(①型 p= 3 d )

A斗-

FhJV

図2.3.14

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Type①, 1 row M = 1.0

甲ーー;Analysis Eq. (2.3.3)

。回。ロaov

。ロA9x

。ロA。.品

。ロAOV%

。ロA堂

VX

849E

~ 0.7

凶 0.6的

g 05 〉

さ0.4w ロ,C

302

E 正

50 40

xld 20 30

Non-dimensional Distance O

Type①噌 2rows M = 1.0

同ーー;Analysis Eq. (2.3.3) 。s i i 白血

vva

白県v

,.a

ZAvvn

aA。,vx

A+vu

自企。マ縫

ロO血管

~ 0.7

g0.6

g 05 〉

さ0.4w cl E

302

E u..

50 40 xld

20 30 Non-dimensional Distance

10 。

Type⑪, 1 row

M = 1.0

ーーー;Analysis Eq. (2.3.3)

8ii!U 1111 a a 11 盆主2 8

~ 0.7

師 0.6

i 05 〉

さ 0.4w E g 0.2 u ε u..

50 40 xld

20 30 Non-dimensional Distance

10 。

Type⑪, 2 rows M = 1.0

一一;Analysis Eq. (2.3.3)

;に士会二二ーもトーーも

ー-"官' @ "D"

~ 0.7

回 0.6m

g 05 .2:

喜0.4w P

302

E u..

50 40

xld 20 30

Non-dimensional Distance 10 。

フィルム冷却効率

Fhd

Fhd

図2.3.15

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0.7

0.5

ts::

g g 目

回回E 回

定凶= 企 企cl

~企.S

8 企u

E 。u. 。申

宮@ 。

由 。。4〉 0.1

@ 。@

@

0.05 0 10 50

Non-dimensional Distance x/MS

100 200 400

図 2.3.16 フィルム冷却効率(①型: α= 300 β= 00

, η= 1 )

0.7

。。。。

0.5

I~

1

nu

師凶

mWC也、,一ち申』』凶回F

』=000ε一正申向日開』由、,〈

Sym凶1 M Eq. (2.3.3) Eq.(2.3.1) 。 0.3

回 0.5 一A 0.75 。 1.0 一一 司・oooo()o

@ 1.5 -----

。。

。。

0.05 0 10 50

Non同dimensionalDistance x/MS 100 200 400

図 2.3.17 フィルム冷却効率(①型: α= 300 β= 00

η= 2 )

no Fhd

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0.7

0.5

。 。

I~

1

nu

gES冒日出面白星000E一広田

mgg《

@

@ @

ct ct

0.05 o 10 50

Non-dimensional Distance xlMS

400

図 2.3.18 フィルム冷却効率(⑪型: α=45。, β=900 η= 1 )

0.7

Sym凶 M Eq. (2.3.3) Eq. (2.3.1) 。 0.3

固 0.5 一企 0.75

~ 1.0 一一 4砂・-0・

Lー 。 1.5 ---_.

I~

tE L

〈由E包〉F

0.1

0.05 o 10 50

Non-dimensional Distance xlMS 100 200 400

図 2.3.19 フィルム冷却効率(⑪型: α= 450 , s = 900

, η= 2 )

-57-

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図2.3.16--図 2.3.19の結果では,①型,⑪型とも 1列吹き出しの吹き出し孔近傍

の冷却効率の推定誤差が大きい。前述のヒートシンクモデルでは x/ d = 10のペ

クレー数 Pe を用いているが,二列吹き出しの場合は係数を少し修正するのみで

冷却効率の推定に使用可能と考えられる。また,二次元の境界層理論に基づいて

フィルム冷却効率を式(2. 3. 1 )より推定した値は,測定値に比べて 2--3倍高

い値となるため,実用には無理があると考えられる。なお,二次元の境界層理論

に基づくフィルム冷却効率の推定式は,フィルム冷却空気が主流と混合した後の

吹き出し孔近傍より x/MS > 100以上離れた下流では,式の係数を修正して利用

することが出来る。

(4) フィルム冷却孔近傍の熱伝達率分布

2. 3. 1節で述べた等熱流束で加熱したニッケル薄箔抵抗体の温度 Twおよび主

流温度T∞を測定し,その値から図 2.3.20中に示す 2列のフィルム冷却孔の下流

側の孔の中心を通る直線位置での熱伝達率を算出した結果を図 2.3.20に示す。

図 2.3.20によるとフィルム冷却孔近傍の熱伝達率は,フィルム冷却孔が存在し

ない平板面上の熱伝達率に比べると,冷却孔が存在するのみで50%増加する。ま

た質量流束比Mの増加に伴って, M=1.5においては熱伝達率は 2倍程度まで増

加する。これは,フィルム冷却孔および吹き出した空気が乱流促進体的な役割を

演じるためであると考えられる。このようにフィルム冷却孔近傍の壁面の熱伝達

でメタル温度は均ーとなり問題とならないが,熱負荷の増加に伴って,冷却孔周

囲の局所の熱伝達率分布が重要となる。

nHU

F同U

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30

ω「一

lillli---amhちM争|

|

。VFd

。L

F「

-

ーl

きElPIliri--Jud・ゐー

aA品

-

z

M

ママ

。20

N'OF×H

コZ

Symbol M 。 O.

A 0.3

自 0.5 。 1.09

マ 1.51

Turbulent Flat Plate

Nux = 0.0296Rexo午 p.3310

5

ωDEコZZωωωコZ

20 10

フィルム冷却孔近傍の熱伝達率分布

59-

Rex x 10・5Reynolds Number

5

図 2.3.20

2

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2.4 結論

二次元スロットからの吹き出しにおける壁画上の境界層に関する詳細な測定を

行い,フィルム冷却効率のデータを得るとともに,境界層の解析を実施して次の

一般式を得,その適用限界を明らかにした。

η= 4.67 ( ρa 日a S ;2(X, + x0708 μa / M S

{ 1 -( 1 -2. 3 H 0 -15/7)

-8/15

(xf/2 目、

x + x 0 /

0.376 x 0 R exuo・2(1+0.5Msinα) ここで, H 0

1.4MS sinα

x=x' +xo

適用限界 0<M<2.0, 0<α< 900

O三三 x'/MS三200, 主流マッハ数Ma∞三 0.4

。フィルム冷却効率測定への物質伝達のアナロジーの応用は,装置の調整,吸

引速度等に注意をはらえば,非常に有効な方法である。

平板面上にあけた二種類の円孔列からの吹き出しに関する実験の結果から下記

の結論を得た。

。流路壁に対して300 の傾斜をもった供試体①を用いたフィルム冷却空気の吹

き出しでは,吹き出し孔下流20d程度まで三次元性が残る。(特に 1列の場合

は,この傾向が強い。)また, 2列の吹き出しの場合は,主流の巻き込みが l

列に比較して少ないため冷却効率が高い。(2列の場合は l列の場合に比較し

て空気量は 2倍必要であるが,フィルム冷却効率は約 3倍となる o )

。供試体⑪型を用いた主流に直角(壁に450 ,流れ方向に直角)の吹き出しの

場合はフィルム冷却効率は低いが,吹き出し近傍から二次元的な温度分布が得

-60-

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られる。また質量流束比M< o. 95の範囲でフィルム冷却効率はほぼ列数に比例

する。

。円孔列からの吹き出しによるフィルム冷却効率の推定には解析的方法の適用

はかなり困難であるが,吹き出しのごく近傍を除けば実験値をベースとしたヒ

ートシンクモデルから得られた次式を適用することが出来る。

r7rM / u ∞ d ( η τ下7τV εH x/d eXPi

与土 (T)2)

0.5 < M < 2

また,吹き出し孔の十分下流では二次元的な温度分布となるので,係数を修正

した境界層モデルの効率推定式を用いることが出来る。

。冷却孔近傍の(孔径の 10倍程度までの下流部)では,主流のみによる熱伝達

率値がフィルム冷却孔の無い場合の値の1.5'" 2倍まで増加し,さらに遠方の

下流部で,漸次フィルム冷却孔が無い場合の熱伝達率値に近づく。

唱EEム

nhu

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第2章の文献

[1 J Pederson, D.R., Eckert. E.R.G., and Goldstein, R.J., "Film Cooling

with Large Density Difference between the Mainstream and the Seconda-

ry Fluid Measured by the Heat Transfer Analogy," Trans. ASME Journal

of Heat Transfer. Vo199, pp.620-627, 1977.

[2 J Schl icht ing, H, "Boundary Layer Theory," 7th Ed. McGraw-Hi 11, 1979.

[3J Mayle, R.E., et.al. "Adiabatic Wall Effectiveness of a Turbulent Bo-

undary Layer with Slot Injection. "Trans. ASME Journal of Heat Trans-

fer. Vo1.98, pp.240-244, 1976.

[4 J Hartnett. R. J., et. al. "Veloci ty Distributions, Temperature Distri-

bution, Effectiveness and Heat Transfer for Air Injected through a

Tangential Slot into a Turbulent Boudary Layer, "Trans. ASME Journal

of. Heat Transfer, PP.293-306, 1961.

[5J Goldstein, R.J.,“Some Measurement TechniQues in Heat Transfer".

[6J Ramsey, J.W., Goldstein, R.J., and Eckert. E.R.G.,“A Model for Ana-

lysis of the Temperature Distribution with Injection of a Heated Jet

into an Isothermal Flow," 4th Int. Heat Transfer Conference, Paper

No. FC. 8. 5, 1970.

[7J Brown, A. and Saluja C.L.,“Film Cooling from a Single Hole and a

Row of Holes of Variable Pitch to Diameter Ratio," Int. Journal. of

Heat Mass Transfer. Vol. 22, pp.525-533, 1979.

[8J Coldstein, R.J., "Film Cooling," Advances in Heat Transfer. Vo17,pp.

321-379, 1971.

[9 J Bergles, G., Gosman, A. D., and Launder, B. E.,“Double-Row Discrete-

Hole Cooling An Experimental and Numerical Study," Trans. ASME

Journal. of Engineeing. for Power.. Vo1.102., pp.498-503 1980.

円/】

hu

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[10J Eriksen. V.L.. Eckert. E.R.G. and Goldstein. R.J.. "A Model for Analy

sis of the Temperature Field Downsream of a Heated Jet Injected into

an Isorhermal Cross Flow at an Angle of 900

" NASA CR72990. 1971.

[l1J Goldstein. R.J.. Eckert. E.R.G.. Eriksen. V.L. and Ramsey. J.W.

“Film Cooling Following Injection Through Inclined Circular Tubes."

Israel Journal. of Technology. Vol. 8. pp.145-154. 1970.

円べυ

PO

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第 3章

3.1 まえがき

二次元低速翼列によるフィルム冷却実験

第 2章においては平板面上におけるフィルム冷却についての実験的,解析的研

究結果を論じた。しかし,ガスタービンのタービン翼面上に実際に生じている現

象は平板面ほど単純ではなく,表面曲率,主流の加速率等がフィルム冷却効率に

大きな影響をおよぼす可能性がある。それにもかかわらずタービン動翼,静翼面

上のフィルム冷却効率に関して発表された論文は非常に少ない [l] 0 1 t 0 等 [2]

は,航空用エンジンの高圧タービン第 1段動翼の二次元拡大モデルを用いて,低

速翼列実験により,翼面上にあけた l列のフィルム冷却孔から下流における壁面

上のフィルム冷却効率を測定し翼腹側(凹)面と翼背側(凸)面で平板上のフ

ィルム冷却効率と異なった特色を有することを明らかにした。しかし,フィルム

冷却翼を開発する上で重要なフィルム冷却効率の推定式は明らかにしていない。

本章では,典型的な産業用ガスタービンの第 l段静翼,第 l段動翼の平均径断

面(翼50%高さ〉の翼プロファイルを用いて,二次元低速翼列実験による翼面上

におけるフィルム冷却効率を測定した結果について述べる。

特に翼面上のフィルム冷却効率に影響する表面曲率と主流の加速率に関して

は,翼ピッチを変えることによって表面曲率が一定の条件で主流の加速率を変え

て実験を行った。その結果,翼背側面では主流の加速率はフィルム冷却効率にほ

とんど影響を与えないことを明らかにした。さらに翼腹側面では翼背側面とは異

なって主流加速率はフィルム冷却効率に大きな影響を持つことを明らかにした。

また,第 2章では平板面上のフィルム冷却孔あるいはフィルム冷却空気の吹き出

しがフィルム冷却孔近傍の流路壁面上の熱伝達率に与える影響を調べたが,本章

では翼面上でのフィルム冷却孔あるいはフィルム冷却空気の吹き出しの熱伝達率

への影響を明らかにした。さらに,フィルム冷却静翼あるいは動翼のメタル温度

解析に使用するフィルム冷却効率に関する実験式を与えた。本章の内容は主に

-64-

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文献 [3J,[4], [8], [l1J, [12J に発表した内容をまとめたものである。

3.2 第1段静翼の二次元翼ヲ11伝熱実験

3. 2. 1 実験装置

典型的な産業用ガスタービンのタービン第 l段静翼の平均径断面の拡大モデル

を用い,二次元低速翼列風洞による伝熱実験を実施した。実験に用いた低速翼列

風洞の概略を図3.2.1に示す。翼列は 7枚の翼から構成されており,これらの翼

の内中央の 3枚がフィルム冷却孔を設けた中空翼であり,残りのそれらをはさむ

両側各 2枚はソリッド翼である。主流を常温とし,フィルム冷却空気を加熱し

て,フィルム冷却孔より吹き出して,フィルム冷却効率を測定した。翼列のす法

を図3.2.2中および表3.2.1に示す。

Tubulence Grid

Screens

」司・・J・・4・・4.. ‘.,

a

司.. ‘,.a

司.. 、.J司・・J・・

-----'-----

--司--------

LFLtFLl「』'「』1「LFL1

己ミ>

Blower

Orifice

Blower

DE a

--EWV

図3.2. 1 低速翼列風洞の概略図

-65-

Tw

PS

Tc

J

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2 3 表3.2. 1 第 1段静翼の翼列の寸法

Chord 150.3 (mm)

Axial Chord 91.6 (mm)

Pitch 114.4 (mm)

Span 300 (mm)

Aspect Ratio 2.0 (一)

L.E. Radius 5.0 (mm)

T.E. Radius 2.0 (mm)

C \\\I~ |¥ Inlet Angle 90 (deg) も

ノ& ・0 ¥¥¥「万0.9'。、 Outlet Angle 20.9 (deg)

Cx = 91.6

図3.2.2 翼列の寸法

(1) 供試翼

フィルム冷却孔無しのソリッド翼およびフィルム冷却孔有りの中空翼モデルを

用いて,翼面上の熱伝達率分布を測定した。ソリッド翼の熱伝達率は,巾2.5mm,

厚さ 5μmの矩形のニッケル薄箔抵抗体67枚を加熱用のヒータとして翼面上には

り付けヒータを通電加熱することにより熱伝達率を測定した。なお伝熱実験に用

いる翼の母材には,低熱伝導率のベークライトを使用した。翼面の局所熱伝達率

を測定するために用いた翼モデルを図3.2.3に,またニッケル箔の翼面への取り

付け構造の詳細を図3.2. 4に示す。なお,ソリッド翼の表面には翼面の静圧分布

を測定するために,内径o.5 mmの静圧タップを翼の中央高さの位置によどみ点に

l点,翼背側翼腹側に各21点づっ設けている。

-66-

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図3.2. 3 翼面熱伝達率測定用供試翼

Nickel Foil

Lead Wire

Thermocouple

Lead Adhesive

(Araldite) Vane (Bakelite)

図3.2. 4 熱伝達率の測定詳細

lnhu

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翼面上のフィルム冷却効率を測定するために使用した中空翼モデルのフィルム

冷却孔の位置およびす法を,図3.2.5中および表3.2. 2に示す。図 3.2.5に示す

ごとく,フィルム冷却効率を測定する中空翼モデルには,翼面上の前縁,翼背側

翼腹側の3ケ所の位置にフィルム冷却孔を設けている。翼前縁にはよどみ点 (00),

:::t 450 および+900の位置に合計 5列のフィルム冷却孔を設置している。また,

翼背側および翼腹側では,千鳥配置の 2列のフィルム冷却孔を設けている。フィ

ルム冷却孔有りの中空翼モデルの翼面上の熱伝達率分布の測定にはソリッド翼モ

デルの熱伝達率測定と同様の方法でフィルム冷却孔近傍を除く翼全面に短形のニ

ッケル箔56枚をはり付け測定した。フィルム冷却効率あるいは翼面の熱伝達率分

布を測定する中空翼モデルも,翼面の熱伝達率分布を測定するソリッド翼モデル

と同様に材質は低熱伝導率のベークライトで製作されている。

図3.2. 5 第 1段静翼フィルム冷却孔寸法

n6

FHU

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表3.2. 2 第 1段静翼フィルム冷却孔寸法

Station No. 2 3

Cooling Hole Diameter d [mm] 1.75 2.5 2.5

Number of Rows at Station n 5 2 2

Pitch P1 [mm] 6.25 6.25 6.25

Pitch P2 [mm] 6.25 6.25 6.25

Pitch P3 [mm] 3.75 7.5 7.5

Injection Angle α [deg] 45 30 30

Distance from L.E. x [mm] 8.4 31.0 40.0

(2) 測定方法

翼面上の局所の熱伝達率 hの測定の際には,ニッケル薄箔抵抗体を通電加熱し

て,それに要した電力量 q,とニッケル薄箔抵抗体の温度 Twおよび主流温度T∞

の温度差より熱伝達率を求めた。

h= ~ q ~ (3.2.1)

q = q, -q 2 (3. 2. 2)

ここで q2 熱伝導,熱放射等で散逸する熱量

前章に示したごとく,フィルム冷却効率 ηf は式 (2.2. 1)で求められる。しか

し理想的な断熱壁を作ることは困難であり,特に翼型を用いた実験では,平板

の供試体と異なって翼厚さが薄く加熱空気が中空翼を内面から加熱するため加熱

量が大きければ大きな誤差を生じる。そこで,中空翼の内面からの加熱量を補正

してフィルム冷却効率 ηf を式(3. 2. 6 )より求めた。

nu no

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中空翼の翼厚さが薄く一次元的な熱量バランスが成り立っと仮定する o 吹き出

しが無いが,フィルム冷却空気と同量の加熱空気 Ta。を内側に流した場合の熱伝

達率を ha .壁温度を TW1とすると

h∞ (T∞ -TW1) =ha ( TW1一Tao) (3. 2. 1)

が成り立つ。吹き出しを行った場合,壁はフィルム温度 Tf でおおわれ,壁温度

がTW2になるため

hf ( Tf -TW2) =ha (Tw2-Tao) (3. 2. 4)

が成り立つ。また.

吹き出し有りの場合の主流の熱伝達率hl と吹き出し無しの場合の主流の熱伝達

率h∞が等しいと仮定すると式(3. 2. 3) ,式(3. 2. 4 )より

T f -TW2 T∞-TW1

o-o

a一a

T一T

一一一'且-。,u

w一w

T一T

(3. 2. 5)

を得る。

式(3. 2. 5 )に吹き出しが無いが,フィルム冷却と向量の加熱空気を内側に流し

た場合の冷却効率 η11= (TW1-T _) / (Tao-T _) ,吹き出しを行なったCわ cxコ

場合の冷却効率 η12= (TW2-T~) / CTao-T~) およびフィルム冷却効率00 ' - cわ

式 C2. 1. 1 )を代入し整理すると式(3. 2. 6 )を得る。

ηf 一 ηf 2η1 1 1 -ηf 2

(3. 2. 6)

-70-

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3.2.2実験結果および考察

すなわち翼面の曲率を一定とした条件下で主流の加速

翼面にあけた静圧タップにより測定した静圧 P.

翼面の速度分布

翼のピッチを変化させ,

、‘,JaE.

,,‘、

と,パラメータを変化させて,

より u=翼列前方 300mmの点で 3孔ピトー管で測定した主流の全圧 Pt

=-v.)!γの式を用いて翼面上の境界層外縁に沿う速度分布 U を求める。し/2gfPt

この結果に図3.2.6に示す。その結果を翼列出口の流速 Uexi で無次元化して,

翼のピッチを大きくすると翼の背側のスロートより前の部分では加速パよると,

一方,スロートより下流では負の加速パラメータが増大する。ラメータが増大し,

翼のピッチの増大とともに,翼の腹側では前縁の一部を除いて加速流であるが,

加速パラメータは減少する。

。00

00。。1.5

142.9

Symbol

A

• ロ

p[mm]

91.5

114.4

1

・1rf∞〉

4AA4.

・l』

rAV

A

A

-

-

ロ∞o

dA

・ロ0

a-go

A-g

A

・ロOA

・日υ

A-HV

A

・Fb&RU

A'B

A.ロ0・uロ

• A

O

A •

O

A •

1.0

0.5

tH331b一。。一@〉30忠一

ωE』OZ

。171.5

1.0 0.5 。Normalized Axial Distance ......, x1Cx

翼面流速分布 (50%高さにおける測定値)

-71-

図3.2. 6

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翼面の熱伝達率分布(2)

吹き出しの無いソリッド翼の翼面上の熱伝達率分布を測定した結果を図3.2.7

良く知られている等温平板面上の層流熱伝達率分布式(3. 同図中には,に示す。

および流れに直交する形で置かれた円柱乱流伝達率分布式(3. 2. 8) . 2. 7) .

[1 01 )を用いて推定した値の実験式(3. 2. 9 ) まわりの熱伝達率分布 CSchmidt

この結果によると翼腹側では境界層はこれらは良く一致している。を併記した O

2.0xl05 付近」

「翼背側では後縁近傍のRexほぼ全域で層流であるのにたいし,

で乱流遷移が生じている。

400

-ーーーー・・ TurbulentB.L. Calculation (Eq. 3. 2. 8)

ーーー一一LaminarB.L. Calculation (Eq. 3. 2. 7) (ぷ

NεミF

)

Z

Experiment 。300

Uexit = 40 m/s

Rec = 3.64 x 105

1¥ 、、、 O

、ごと~♀__<2..Q_-h3b-ーニ.

,〆,,,--..-.‘、‘〆、〆〆、、、

、‘・

、、、、、、、

、、、、、、

、、、、、

200

HF

』@一O一位。。。』@』白E6』ト

%woz

100

200 150 100 50 。50 100 nU

Ru

nU43

Suction Suface (LE) Pressure Surface

x (mm)

第 1段静翼翼面熱伝達率分布

円ノ“

i

Surface Distance from Leading Edge

図3.2. 7

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等温平板面上の層流熱伝達率

h x =0. 332 Re~' 5 PrO. 33十 (3. 2. 7)

等温平板面上の乱流熱伝達率

hx=om6RdHPro 33÷ (3. 2. 8)

流れに直交する円柱まわりの熱伝達率 (Schrnidtの実験式)

h D = 1. 14 Re~' 5 P r O. 4 [ 1 -(並¥) ] 90

えD

(3. 2. 9)

ここで D:翼前縁直径

x 翼前縁よどみ点から測った距離

ゆ:翼前縁のよどみ点から測った角度 (0 )

フィルム冷却による熱伝達率への影響を明らかにするために,主流と同じ温度

のフィルム空気をフィルム冷却孔より吹き出し,その下流における熱伝達率分布

を測定した。なお,フィルム冷却翼では,フィルム冷却孔の部分に加熱用のニッ

ケル薄箔抵抗体がはれないことから,非加熱部を残している。主流に対するフィ

ルム冷却空気の質量流束比Mをパラメータにして,翼背側における熱伝達率の変

化を測定した結果を図3.2. 8に示す。

非加熱部を有する乱流平板の熱伝達率は,良く知られた次式,

1/2

αx =Sp(X+ Pr) Rex ( ーと~. 2 )

μ∞ U ∞ (3.2.10)

X

ここで x+

x

fttis-eA ν c口

dx

Xl 非加熱部の長さ

。,.nu -

x

凸しR

2

u

ρ

nnu nu

円〆unu

nU

一一w

τ

円ペU

I

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で評価することが出来る。式(3. 2.10)より求めたフィルム冷却孔近傍の熱伝達

率分布の推定値を図 3.2.8中に一点鎖線で示した。

図3.2. 8の熱伝達率の測定値と式(3. 2. 7 )より推定した値を比較すると,翼

面に存在するフィルム冷却孔は,吹き出しを行わない場合でも,乱流遷移させる

働きがあることがわかる。しかし,質量流束比Mの小さいM=0.68では,フィル

ム冷却孔が存在するが吹き出しの無い場合に比べて吹き出し孔近傍の熱伝達率は,

低下する傾向にある。これは,フィルム冷却孔部が吹き出しにより滑らかになる

ためと考えられる。さらに質量流束比Mが増加すると,熱伝達率はMの増加に伴

って増加する。そして質量流東比M=2.43では,熱伝達率は吹き出しの無い場合

に比較して50児増加する o なお翼面上の熱伝達率の分布は吹き出し孔近傍では乱

流平板の熱伝達率式に従うが,下流に進むにつれて本来の層流熱伝達率に漸近す

る。

.:.:: N

E

三 200~

言。一。一ヒω00‘-ω

E

2100 H

市@

300

M Symbol 一一一一-Eq. (3.2.10)

O O 回一ーーーー Turbulent8.L. Calculation (Eq. 3. 2. 8 ))

0.68 ロ Laminar 8.L. Calculation (Eq. (3. 2. 7 ))

1.05 ムUexit = 40 m/s

2.43 • Rec = 3.64 x 105 • ¥. ... 、'・・ 一一一一一一口、合_.6.. J..._-~--紅毛二五L三-1FI-.

JJィー口守% ß 令~ e ~ ~ ~一一一一一ーー

。 20 40 60 80

Surface Distance from Cooling Hole χ(mm)

図3.2. 8 吹き出しによる翼面熱伝達率への影響

a斗企可

i

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(3) フィルム冷却効率

曲率一定の条件で,主流の加速パラメータおよび主流乱れのフィルム冷却効率

への影響を調べる目的で翼のピッチを変え,図 3.2. 6に示すごとく主流の加速率

を変えて翼面上のフィルム冷却効率を測定した。背側のフィルム冷却孔より吹き

出した場合の翼ピッチおよび主流乱れをパラメータとした場合のフィルム冷却効

率の変化を図3.2.9に示す。図3.2. 9より,翼背側(凸面)においては,主流加

速パラメータおよび主流乱れのフィルム冷却効率への影響は小さいことがわかる。

一方,同様の方法で翼腹側(凹面)のフィルム冷却孔より吹き出した場合のフィ

ルム冷却効率の変化を図3.2.10に示す。主流の乱れの小さい τ∞=0.5%の場合,

吹き出し孔近傍では,翼のピッチを大きくすることによる主流加速パラメータが

減少することのフィルム冷却効率への影響は小さいが,吹き出し孔より十分に離

れた下流では,翼のピッチが増加することによりフィルム冷却効率が低下する傾

向が現れている。一方,主流乱れが大きい τ∞=坊の場合,フィルム冷却効率は

1.0

M = 0.93-0.96 M = 0.97-1.0

Ju可u= 0.5% ぷ可u=3%

r 生=B 2ど 2 2 2 昨=::::s t で書 自 自

X!d Symbol 0.2

6 。8 ム

正E 30 @

0.1 42 ロ

91.5 114.4 142.9 171.5

Vane Spacing P (mm)

114.4 171.5

Vane Spacing P (mm)

図3.2.9 翼背側吹き出し時ピッチを変化させた場合のフィルム冷却効率への影響

hu

マ』

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翼のピッチを大きくすることにより急激に減少することが明らかになった。これ

は凹面の加速パラメータが大きい場合,境界層の不安定性が,押さえられるが,

主流の加速パラメータが減少するにつれてこの不安定性が増大し,境界層内にお

ける主流とフィルム冷却空気の混合が促進されるためと考えられる。

1.0

0.7

0.5

r

UU① c 3 3 X1d Symbol

E 宮雪

4.3 O

9 ム

ロ30.2 12 口

c .-

to o J 19 ⑮

E 25 マLL

0.1 30 。

91.5 114.4 142.9 171.5 114.4 171.5

Vane Spacing P (mm) Vane Spacing P (mm)

図3.2. 10 翼腹側吹き出し時ピッチを変化させた場合のフィルム冷却効率への喜三墾E'JV 匡三週

一76-

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翼背側,翼腹側に設けたフィルム冷却孔より加熱したフィルム冷却空気を吹き

出して,フィルム冷却孔の下流翼壁に埋め込んだ熱電対で壁温度を測定すること

によってフィルム冷却効率を測定した。翼背側および翼腹側のフィルム冷却効率

の測定結果を,無次元距離 x/MSで整理してそれぞれ図3.2.11および図3.2.12に

示す。これらの結果より,フィルム冷却効率の測定結果を基に翼背側および翼腹

側のフィルム冷却効率を表わす実験式((3. 2. 11)および(3. 2. 12))を得た。[4]

C 翼背側 ηf 2. 8 + O. 0270 (x /MS)

(3.2.10

ここで, C = 1. 5 /M O. 3 M < 1. 0

C = 1. 5 /M O. 8 M > 1. 0

翼腹側 η 1. 67 + O. 00456 ( x /MS) 1. 6

(3.2.12)

第 2章で述べた平板面上の 2列のフィルム冷却孔からの吹き出しと比較するた

めに,平板面上のフィルム冷却効率の値を図3.2.11.図3.2.12中に図示した。図

3.2.11より翼背側におけるフィルム冷却効率は平板上のフィルム冷却効率に比較

して高くなっている。これは凸面では境界層は安定でフィルム冷却空気は壁に沿

って流れるためと考えられている。一方,図3.2.12より翼腹側における,フィル

ム冷却効率はフィルム孔より下流において平板上のフィルム冷却効率よりも急激

に減少する傾向を示している O 図3.2.11および図3.2.12中には,比較のために平

板面上のフィルム冷却効率を調べた Pederson [5] の結果を記入した。また,タ

ービン静翼の背側のフィルム冷却効率を調べたLander[6] およびタービン動翼の

背側および腹側のフィルム冷却効率を調べた 1t 0 [2] 等の文献値も合せて記入し

fこ。

翼背側のフィルム冷却効率に関しては. Lander [6] 等のフィルム冷却効率の測

定結果と良く一致している。また. Ito [2] 等は,タービン動翼を用いて背側の

フィルム冷却効率を測定したが,背側の凸面ではその曲率,加速パラメータの影

響は小さく,ほぼ式 (3.2.10で推定可能であることが明らかである。一方,図3.

2. 12より. 1 t 0 等のフィルム冷却効率の測定値は翼腹側においては,本研究で得

-77-

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1.0 。ロ

~ 0.5

Uω ω 3

c

四c 0.2

O 8 E u..

0.1

Symbol M τ国 Uexit

d. 1.744

マ 1.488 。0.971 3% @ 0.736 40mls

ロ 0.507

E 0.298

~ 0.155

ーーーーーーーーーーーーー一--一司・・・・-

ーーーー;Eq. (3.2.11)

-ーーーLanderet. al. [6) M = 1.05

-圃・ー-Ito et. al. [2) M = 1.0

ー..-Flat Plate [5) M = 1.05

2 5 10 20 50 100 200

Non-dimensional Distance x/MS

図3.2. 11 翼背側吹き出しにおける翼面のフィルム冷却効率

1.0

C

Uω 4c 3 3

E 。c 02

t。。J

E u..

0.1

O 。 ー『四一;Eq. (3.2.12)

一・ーー ltoet.al.[2)M=1.0

_..-Flat Plate [5) M = 1.05

Symbol M t国 Uexit

A 1.643

マ 1.349

口 0.969 3% 40 m1s

O 0.729

@ 0.481

2 5 10 20

x/MS

50 100 200

図3.2. 12 翼腹側吹き出しにおける翼面のフィルム冷却効率

nHU

da

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られた値よりも低くなっている。これはタービン動翼では,静翼に比べて曲率半

径が小さいためと考えられる。すなわち,凹面の曲率のフィルム冷却効率への影

響が非常に大きいと言える。

第 1段静翼モデルの翼背側および翼腹側に設けたフィルム冷却孔より冷却空気

を吹き出して,質量流東比Mをパラメータにフィルム冷却効率 ηf を測定した結

果を.質量流束比Mおよび無次元距離 x/dで整理した形で図3.2.13および図3.

2. 14に示す [810 これらの結果から吹き出し孔近傍においては,翼背側における

フィルム冷却効率は,質量流東比Mが小さいほど高くなり .Mの増大とともに低

下する。これは,フィルム冷却空気がMの増加に伴って主流に貫通するために吹

き出し孔近傍のフィルム冷却効率は低下すると考えられる。フィルム冷却孔から

充分離れた x/ d =40の下流においては. M=0.5付近に極大値が存在する。質

量流束比Mの値が O.5よりも小さい場合は主流との混合による境界層内のフィル

ム温度の上昇のため,また質量流東比Mが大きい場合には主流に貫通し混合する

ために,二次空気の増加量は直接フィルム冷却効率の増加に結びつかないためで

ある。

一方,翼腹側におけるフィルム冷却効率は,吹き出し近傍において質量流東比

M=0.5付近で極大値を取る。しかし,質量流束比Mの増加に伴ってフィルム冷

却効率は減少する。この理由は翼背側におけるフィルム冷却空気の挙動と同じで

あるが,翼腹側の凹面上では境界層の不安定性[自]で非常に強い混合が生じてい

るために,フィルム冷却空気が主流に貫通するまでに混合して翼面近傍にとどま

るフィルム冷却空気が存在する。このために質量流束比Mが増加しても翼背側ほ

どにはフィルム冷却効率は低下しない。この現象は,吹き出し部より下流におけ

るフィルム冷却効率 ηr の値で明らかである。すなわち. x / d =40においては,

質量流束比Mの増加に比例してフィルム冷却効率 ηf は増加している。本実験範

囲の質量流束比においては,翼面近傍の境界層的な主流とフィルム冷却空気は翼

面腹側では良く混合し,厚い層となって翼をおおうと考えられる。

nHU

I

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Mass Flux

Ratio

M

的自由

WE@主計回世』』凶

Non-dimensional Distance xJd

50

Blowing through Film Cooling

Hole NO.3 on

Suction Surface

~ = 0.5%

Uexit = 40 m/s

図3.2. 13 翼背側吹き出しにおける翼面のフィルム冷却効率

Mass Flux

Ratio

M

E一000E担比

Non-dimensional Distance xJd

Blowing through Film Cooling

HoleNo.20n

Pressure Surface

τ=0.5%

Uexit = 40 m/s

図3.2. 14 翼腹側吹き出しにおける翼面のフィルム冷却効率

-80-

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3.3 第 1段動翼の二次元翼列伝熱実験

3. 3. 1実験装置

典型的な高温産業用ガスタービンのタービン第 l段動翼の平均径断面(翼50%

高さ)の拡大モデルを用いて二次元低速翼列風洞による伝熱実験を実施した。風

洞は大気吸込型のもので,翼列の概略を図3.3. 1に示す。翼列は 5枚の翼で構成

され,中央の 1枚がフィルム冷却孔を設けた中空翼であり,それらの両側に各 2

枚のソリッド翼を配置している。さらにソリッド翼の外側に,翼面形状と同ーの

壁を設けて半ピッチの流路を確保している。主流は常温状態とし,加熱したフィ

ルム空気をフィルム冷却孔より吹き出して実験を行った。本実験の翼列の諸寸法

を表3.3.1に示す。

表3.3. 1 第 1段動翼翼列寸法

Chord 230.2 mm

Height 300 円1町1

Pitch 195.6 mm

Aspect Ratio (heightJchord) 1.30

Air Inlet Angle 46.3 0

Air Exit Angle 24.6 0

図3.3. 1 第 1段動翼の翼列実験寸法

4BEE-

nHU

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(1) 供試翼および測定方法

3. 2節で述べた静翼の場合と閉じ方法により,ベ ー クライト製の翼面にニッケ

ル薄箔抵抗体をはりつけた翼モデルにより翼面熱伝達率の分布を測定し,またベ

ークライト製の翼面に断熱壁温度を測定する熱電対を埋め込んだ翼モデルにより

翼面のフィルム冷却効率を測定した。翼面のフィルム冷却効率を測定する翼モデ

ルの写真を図 3.3. 2にフィルム冷却孔の位置および寸法を表3.3. 2に示す。

図3.3. 2 第 1段動翼 フ ィルム 冷却効率測定翼 モデル

表3.3. 2 第 1段動翼モデル フィルム冷却孔寸法

Number Hole

Location ofRow Diameter Pitch

n d [mm] p [mm]

LE 3 2.0 12.4

ss 2.6 9.2

PS1 2.6 9.2

PS2 2.0 6.7 5S

一一一

-82-

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なお翼面熱伝達率およびフィルム冷却効率は翼高さ中央において測定しそれら

3.2.1節の (2)項で述べた方法と同じである Oの測定方法は,

3.3.2実験結果および考察

翼面の速度分布、、,,,,ー,,E

、その値より翼面上の境界層外線に沿う速度分布を求翼面の静圧分布を測定し

めた結果を図3.3. 3に示す。

50

Suction Surface

uexit

= 35.6 m/s

PS-2

20

(ω¥E)コ

kC303〉

Pressure Surface 10

1.0

TE

0.5 。

x/s Non-dimensional Distance LE

第 1段動翼翼面速度分布

円。nHU

図3.3.3

Page 94: Osaka University Knowledge Archive : OUKA«–文.pdf · (3) 測定方法 ー ーーーー一一一 ーー一一ーー一 一一 42 (4) フィルム冷却時の冷却孔壁面の熱伝達率測定方法

(2) 翼面の熱伝達率分布

タービン動翼では,回転運動により動翼への流入角が変化する O この実機設計

に際しては平均流入角を用いるが,実機では静翼の lピッチを回転する間に流入

角は約::t7 0 変化する。また実機の部分負荷時には,第 1段動翼へ主流は背側か

ら流入するために,流入角の熱伝達率への影響を十分把握しておく必要があ

る。 [12]

動翼への主流が負の流入角を持つ場合の熱伝達率を調べた結果を図3.3. 4に示

す。この結果によると主流が翼背側から流入しても,翼背側の熱伝達率はほとん

ど影響を受けず,一方翼腹側では,熱伝達率が10.-..., 15%増加する。また正の流入

角の影響を調べた結果を図3.3. 5に示すがこの場合正の流入角の主流が翼腹側か

ら流入するために,翼前縁の加速流の部分ではく離が生じて,翼背側の熱伝達率

は,正規の流入角の値に比較して翼前縁近傍で50児,翼背側中央で100%増加するこ

とがわかる。主流のタービンへの流入角が正の場合,翼背側の熱伝達率への影響

が非常に大きいことが明らかになった。これとは逆に,翼腹側の熱伝達率は50児

'-""40見翼前縁近傍で低下する。

300

豆、

主200~

正=

四.目。。() -7.5。

o -15。

刊 ii{/O。

~~~~長Angle of Incidence

g !E

()

z トーー

m ._-, 0 工

Pressure Side Suction Side

nU「E

nU4'TE

0.5 o LE

Non-dimensional Distance XJS

0.5 1.0 TE

図3.3.4 負の流入角の第 1段動翼翼面熱伝達率への影響

-84-

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300

ー・_00

() +7.50

o +150

J~-+15。

O~~~忘Angle of Incidence

s2'

主 200Z .s::.

C .~ o ε g ιコ‘-由句田

明z g ト・駕 100主 。

@

剣@

O

@U

O@

QU

0小

@

@

@

Pressure Side 。 Suction Side o 1.0 TE

0.5 o LE

Non-dimensional Distance X/S

0.5 1.0 TE

図3.3.5 正の流入角の第 1段動翼翼面熱伝達率への影響

(3) フィルム冷却効率

表 3.3.2に示したように,翼前縁に設けたフィルム冷却孔CLE),翼背側 CSS)お

よび翼腹側 CPS1. PS2)のそれぞれの位置から加熱したフィルム空気を吹き出して,

翼面上のフィルム冷却効率を測定した後,フィルム冷却孔 lピッチにわたり平均

化して,平均フィルム冷却効率 ηf を求めた。この結果を無次元距離 x/MSで整

理し,図3.3. 6 '"図3.3. 8に示す。翼前縁で吹き出した空気は翼背側と翼腹側に

半分づっ流れると仮定し,相当スロット s'の算出には翼前縁にある 3列の内

1.5列のフィルム冷却孔のす法を用いた。

図3.3. 6に示した翼前縁CLE)の吹き出しによるフィルム冷却効率を,図3.3. 7

の翼背側 (SS)のフィルム冷却効率と比較すると,翼前縁 CLE)からの吹き出し

のフィルム冷却効率は翼背側のフィルム冷却効率に比べ10%程度低いが,ほぼ同

じ傾向を示している。この翼前縁CLE)からの吹き出しにおけるフィルム冷却効率

を図 3.3. 8に示す翼腹側のフィルム冷却効率と比較すると両者はほぼ一致してい

hdno

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1.0

liD o LE・PSside M = 0.578 • LE-SS side M = 0.577

• • • • • •• •• • • • • •• 。。。。。。。

立。。。。

。。

LE

20 50 100 200 500 1000

Normalized Distance x/MS'

図3.3. 6 動翼前縁(LE)から吹き出した場合のフィルム冷却効率

1.0

!s=.-

0.1

8 E 0.05 u.

0.02

10

o Experimental Data

ss; M = 0.596

C -由ーー ηf=一一一一一一一ー

2.8 + 0.027 (x/MS')

20

C = 1 .5/Mo.3 M < 1

= 1 .5/MO.8 M 1

50 100

一口fえ」

¥必ニι

200

Normalized Distance x/MS'

500

図3.3.7 動翼背側(SS)から吹き出した場合のフィルム冷却効率

-86-

Page 97: Osaka University Knowledge Archive : OUKA«–文.pdf · (3) 測定方法 ー ーーーー一一一 ーー一一ーー一 一一 42 (4) フィルム冷却時の冷却孔壁面の熱伝達率測定方法

ることがわかる。

図3.3. 8に示すごPS2)を設けたが,翼腹側には 2ケ所のフィルム冷却孔 CPSL

からの吹き出しの方がフィルム冷却効果が低くなって翼前縁に近い CPSD とく,

の位置が翼面速度の減図3.3. 3に示した速度分布より (PSDこの理由は,いる。

の位置が凹面の曲率が大きい箇所に存在して(PSD 速域に位置していることと,

フィルム冷一方,曲率の影響を強く受けているためであると考えられる。いて,

その位置における主流は強い加速流であ

フィルム冷却効率が高くなって

は後縁近くに位置しており,

かっ凹面の曲率が小さく平面に近いために,

却干し (PS2)

り,

いる。

3.2節翼背側のフィルム冷却孔 (SS)よりの吹き出し時のフィルム冷却効率を,

と比較して図3.3. 7に示す。の第 l段静翼の翼列実験を基に作成した式 (3.2.11)

でタービン翼面の背側におけるフィルム冷却効率は式 (3.2.11)より,図3.3. 7

推定出来ることが明らかになった。

タービン翼面の腹側におけるフィルム冷却効率を推定する式として静翼一方,

を作成したが, (PSD の翼腹側におけるフィルム冷却効率を推定する式 (3.2. 12)

の推定値を比較しからの吹き出し時のフィルム冷却効率の測定値と式 (3.2. 12)

1.0

‘、“ “ ‘・.‘・.“・』『、、、ミミ 。、、、、 o

『、e、ー。司、、ー

ー・、。、、h

o。。。。

~Lf illι

• • • • • • • • • • 0

• • 11="- 0.2

g s 〉., 8 w 0> c

g ()

主 0.05正

0.1

Experimental Data

一Mm

一例一m

MUM--M

一附

D1-UM

M

M

一同町一+

0.02

0.01 10 500

PS2)から吹き出した場合のフィルム冷却効率

一87-

200 50 100

Normalized Distan田x/MS'

20

動翼腹側CPS1,図3.3.8

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て図3.3. 8に示しているが,式 (3.2. 12)より求めたフィルム冷却効率は,動翼

の場合,低自の値となる。これは,動翼は静翼に比べて翼腹側の凹面の曲率半径

が小さく,曲率の影響をより強く受けるためと考えられる。また,平板に近い箇

所である後縁に近い翼腹側の (PS2) におけるフィルム冷却効率の測定値は,平板

に関して実験式が得られている Pedersonの式と比較して,図3.3. 8に示した。図

3.3.8より,後縁近傍の翼腹側のフィルム冷却効率は,ほぼ平板の式で推定可能

である。

タービン動翼の翼モデルを用いて,低速風洞でフィルム冷却効率を測定した結

果を 1t 0 [2lならびにDring[7lの同種の実験結果と比較して,図3.3. 9に示す。

Ito , Dringは,航空用エンジンの高圧タービン第 l段動翼を用いて実験を行っ

ているため翼型の違いがあり厳密には比較出来ないが,翼背但1],翼腹側とも良く

一致しているといえる。

0.9

o Ito, et aU2] O

0.8ト ロ Dring,et al.[7J

ー・-Present Tests ,,¥ n

0.7

r=:-0.61

¥くω ω ω c O

ロO Suction Surface

εUE 〉= 』 、、 ロ O

0>

¥ k¥血

c ロ

O 8 0.3 O

E Pressure Surface

LL

0.2

0.1

O O O

O l t

O 10 20

Non-dimensional Distance x/d

図3.3.9 動翼面上のフィルム冷却効率の比較

-88-

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3.4結 論

典型的な産業用の高温ガスタービンの第 l段静翼および第 1段動翼の翼モデル

を用いて二次元低速翼列実験により,翼面の熱伝達率,ならびにフィルム冷却効

率を測定した結果,下記の結論を得た。

。翼面の熱伝達率は,翼前縁は流れに直角に置かれた円柱まわりの式 (3.2. 9)

で推定出来る。また,翼背側,翼腹側は乱流平板熱伝達率分布の式 (3.2. 8)で

概略推定出来る。

。翼面の曲率を一定に主流加速パラメータを変化させた場合,翼背側ではフィ

ルム冷却効率への影響は全くない。これに対して翼腹側では,翼のピッチを増

加させると,すなわち空力負荷が増加するほどフィルム冷却効率が低下する。

特に主流乱れが大きい場合にこの傾向が強く現われる。

。タービン静翼の翼背側および翼腹側におけるフィルム冷却効率は実験式 (3.

2.10 および式 (3.2.12)で推定できる。

。フィルム冷却孔の存在は,吹き出しが無い場合でも翼面の熱伝達率を促進す

る効果がある。吹き出し空気量を Oから増加させると,最初は翼面の熱伝達率

は減少するが,さらに吹き出し空気量を増加させると,翼面の熱伝達率も増加

する。(フィルム冷却空気を微少量吹き出すことは,フィルム冷却孔を滑らか

にして,翼面の熱伝達率を減少させる。)

。主流がタービン動翼へ負の流入角で流入すると,翼面の熱伝達率にほとんど

影響を与えない。反対に主流が 7.5......., 150の正の流入角で流入すると,翼背側

の熱伝達率を最大100児増加させる。

。タービン動翼背側のフィルム冷却効率は式 (3.2.11)で推定出来る。翼腹側

におけるフィルム冷却効率の値は動翼は静翼に比べてフィルム冷却孔が位置す

る凹面の曲率が大きいために,式 (3.2. 12)で得られる値よりも低い値となる。

また,タービン動翼の後縁に近い翼腹側のフィルム冷却効率は,ほぼ平板面上

でのフィルム冷却効率式で推定できる。

-89-

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第3章の文献

[lJ Muska. J.F.. Fish. R.W.. and Suo. M.. "The Additive Nature of Film

Cooling from Rows of Holes." Trans. ASME Journal of Engineering for

Power. Vol. 98 . pp.457-467. 1976.

[2J Ito. S.. Goldstein. R.J.. andEckert. E.R.G.. "FilmCoolingonaGas

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[9J Schwarz. S. G.. and Galdstein. R. J..“The Two-Dimensional Behavior of

Fi 1m Cool ing Jets on Concave Surfaces." ASME Paper 88-GT-161. 1988.

-90-

Page 101: Osaka University Knowledge Archive : OUKA«–文.pdf · (3) 測定方法 ー ーーーー一一一 ーー一一ーー一 一一 42 (4) フィルム冷却時の冷却孔壁面の熱伝達率測定方法

日OJ 甲藤好郎, “伝熱概論養賢堂, 1971.

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Wall Cooling Effects," AD-A244055, AFOSR-TR-91-0954, p.46, 1991.

nu

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第 4章 環状翼列による第 1段静翼伝熱実験

4.1 まえがき

最近の高温産業用ガスタービンにおいては,高温ガスに耐える冷却を実施す

るために第 1段静翼および第 l段動翼に複雑な冷却構造を採用する必要が生じ

ている。このために,タービン翼の製造コスト,複雑な冷却構造が内部に入る

に十分な翼の厚さならびに空力性能を最適化して,翼枚数を低減した低ソリデ

ィティ,低アスペク卜比翼を採用する傾向にある。この様な低アスペクト比の

タービン翼では,三次元の流れ場が翼表面の熱伝達率およびフィルム冷却のみ

ならずシュラウド面のそれにも強い影響を与える。高温ガスに耐える信頼性の

高い冷却翼を開発するためには,翼面の二次元翼列実験の結果のみでは不十分

で,これらの三次元の流れ場の効果についても十分把握しておく必要がある。

タービン翼間の複雑な流れについては多くの研究者によって研究されてお

りSieverding[1] によって,これらの研究のレビューがなされている。しかし

ながら,タービン翼間の熱伝達すなわち,熱伝達率とフィルム冷却への影響を

調べた文献は非常に少ない。

Blair [2] は,拡大翼モデルを用いてシュラウド面上のフィルム冷却効率と

熱伝達率分布を調べた。 Graziani[3] は,動翼モデルを用い, シュラウド面と

翼面の熱伝達率には入口境界層流れが影響していることを明らかにした O ま

た, York [4] 等は,高温翼列風洞でシュラウド面の熱流束を 2本の熱電対で測

定することにより熱伝達率分布を測定した。さらにGauglar[5]等は, シュラウ

ド面上の流れの可視化像と熱伝率の分布との関係を直接比較した。また Gold

stein [6] 等は, シュラウド面近傍の動翼面のフィルム冷却効率をナフタレン

昇華法で精密に測定し,二次流れのフィルム冷却効率への影響を明らかにした O

これらの実験はいずれも二次元翼を用いたセクター形状の翼列で実施された

もので,空力条件としては,半径方向の圧力ノくランスが実機をシミュレートし

-92-

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ていない。そこで,実機と同じ圧力条件を満たすために環状翼列風洞を用いて,

低アスペクト比 CR./c=0.5)の静翼を供試体として,シュラウド面および翼面

の熱伝達率とフィルム冷却効率への 3次元の流れ場の,影響を明らかにした。

本章の内容は主に文献 [7J,[8J, [9J, [10Jに発表した内容をまとめたものである。

4.2 タービン内の流れ場

現在までに明らかになっているタービン内の流れに基づいて,タービン流路

内の二次流れの熱伝達率およびフィルム冷却効率におよぼす影響をレビューす

る。

タービン流路における流体の流れは多くの研究者によって流れの可視化ある

いは流れを直接測定することによって研究されて来た。最近では,タービンの

翼間流れを粘性解析コードで解くことも行われている。これらの成果を基にタ

ービンの第 1段静翼の流路における三次元流れ場を表わす概念図を図4.2.1に

示す [1110 シュラウド面上に発達した入口境界層中の流体粒子は,翼前縁と

シュラウド面の接合する箇所で圧力分布により下向きに押され,そして巻き上

がり,いわゆる馬蹄渦を形成する。馬蹄渦の翼腹側の端はシュラウド近くの運

動量の低い流れと一緒になり,一般に流路渦として知られる渦と合体する。馬

蹄渦の翼背側の端は,翼前縁の背側にくっついており,翼背側のシュラウド上

に発達した境界層の剥離線に達するまで留まっている。馬蹄渦の翼背側の一端

は,剥離線に達すると,シュラウドから離れて急速に流路渦の近くの翼背側に

沿って下流方向に発達し,いわゆるカウンター渦となる。カウンター渦と流路

渦の相対的な位置関係は,翼列の配置と全体の流れに依存する。馬蹄渦の両端

が通過する経路およびシュラウドに近接した低運動量流れ(クロスフロー“ B")

の経路は,翼列の配置と空力的負荷によって決まる流路を横ぎる強い圧力勾配

に強く依存する。

シュラウドの剥離線は,タービン静翼に近づくシュラウド面上の境界層とし

て形成される。一方,アタッチメント線は,静翼に流入する境界層流れを翼部

dnu

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で背腹に分離するものであるが,これらを図4.2.1に示している。最後に注目

しておくべき箇所は,翼の後縁のちょうど下流部のウェーク域である。空冷タ

ービン翼では,非空冷翼のそれと比較して後縁部分に冷却空気の放出用通路を

設ける必要がある分後縁が厚いゆえ,強いノズルウェークが発生する。

7 夢卜¥E ndwallし ¥¥Separation¥¥¥Line

、Attachement Line

Horseshoe Vortex

図4.2. 1 シュラウド面上の二次流れモデル

-94-

Blade Separation Line

Crossflow B

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4.3 環状翼列伝熱実験

4. 3. 1実験装置

本実験は,内径400mm,外径550mmの環状翼列伝熱実験装置を用いて,大気吸

込の状態で行なったが,環状翼列伝熱実験装置の概略を図4.3.1に示す。ま

た,その写真を図4.3. 2に示す。環状翼列伝熱実験装置は,アスペクト比 12/ c

=0.5の13枚の静翼から構成されている。環状翼列伝熱実験装置の平均径(翼

50%高さ)における翼のピッチ,座標は 3.2節で述べた二次元翼列実験と同ー

となっている。

ぜ::>To Blower

Air Heater Orifice

ムP

図4.3.1 低速環状翼列伝熱実験装置

環状翼列伝熱実験における主流乱れは,翼列前に設置した乱流格子により与

えられており, この環状翼列伝熱実験における代表的な実験状態は入口流速

15m/ s,出口流速40m/sである。図 4.3. 1に示す翼前縁より前方35mmの位置で測

定した内外シュラウド面上に発達した境界層厚さ δ.9日は1.9mmであり, この

値は翼高さの2.5%1こ相当する。なお,翼中央の前縁部で測定した主流乱れの強

さ τは2.7出であった。翼のコードと高さはそれぞれ c= 150. 3 mmおよび 12=

-95-

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75. Ommで-あり, コード長 C基準のレイノルズ数 Re c は6.1xI05 である。

(1) 供試翼

環状翼列を構成するタービン第 l段静翼の形状は,第 3章で実験に用いた第 l

段静翼の翼型と同ーである。平均径断面(翼高さ 50%で r= 237. 5mm)における翼

列は,第 3章で述べた二次元翼列実験と座標およびピッチを同一にしている。翼

は高さ方向に同じ形状ゆえ,翼のピッチとコードの比 (p/c)および後縁半径とス

ロートの比 Cr/s)は,内側シュラウド側から外側に向かつてそれぞれ O.644から

O. 885, O. 0784からO.0456である。

図4.3. 2 低速環状翼列伝熱実験装置

-96-

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翼面の熱伝達率およびフィルム冷却効率を測定する目的で, 13枚の翼の内 6

枚の翼が,熱伝導率の低いベークライト材で製作されている。この 6枚に相当

する部分の内外シュラウドは,その面上の熱伝達率,ならびにフィルム冷却効

率を測定するために,ベークライト材で製作されている。翼にあけられたフィ

ルム冷却孔のす法,および配列も第 3章で述べた二次元翼と同ーである。

内側シュラウド面および外側シュラウド面には,翼の前縁部から後縁部にか

けて,図4.3.3に示す位置にフィルム冷却孔を設けている。図4.3.3のフィル

ム冷却孔を I--illの記号をつけて区別する。 1列のフィルム冷却孔を翼前縁近

傍に,また 2列のフィルム冷却孔を千鳥配列で翼のスロート部と前縁~スロー

ト部の中間の位置に配置した。これらのフィルム冷却孔は直径 d= 1. 5mm , ピ

ッチ p/直径 d=3.0で,フィルム冷却孔の吹き出し角はシュラウド面と 300

をなしその方向は境界層外の流れと同一方向をなしている。

(2) 測定方法

翼面およびシュラウド部の局所熱伝達率の測定にはニッケル薄箔抵抗体を用

いた。局所熱伝達率の測定に用いた抵抗体は,厚さ 5μmのニッケル箔を O.3

mm 厚さのガラスエポキシ基板に圧着した後ニッケル箔が矩形のヒータになるよ

RU-

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•• 4E

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一①

Location of Film Cooling

. . ⑮ • .

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図4.3.3 シュラウド面上のフィルム冷却孔位置

tnHU

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うフォトエッチングで加工したものであり翼面およびシュラウド面の局所熱伝

達率は,測定箇所にはられたヒータの電気加熱量と測定点の抵抗体壁温度より

求めた。翼部には巾 2.5---5. Ommの薄箔抵抗体を74枚,一方シュラウド面には

巾 5mmの薄箔抵抗体を47枚はりつけた。この翼表面の温度を測定するために,

16.7, 50.0,83.7 ( %)の高さに素線径 O.1mmのK型熱電対を合計 134点埋め

込んでいる。この翼面に取り付けた熱電対の位置を図4.3.4に示す。

熱伝達率を測定する熱電対を翼表面に埋めた後,表面を磨き滑らかにし,そ

の表面にエポキシ系の接着材でニッケル薄箔抵抗体をはりつけた。翼面の熱伝

達率を測定する測定翼の写真を図4.3.5に示す。熱伝達率を測定する翼モデル

は, シュラウド壁にあけた翼と同形状の穴を通して半径方向に移動可能に製作

しているために,翼を半径方向に移動し熱電対位置を移動することによって必

2.5mmx16

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Nickel Foil Heater

Thermocoロples

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Pressure Side 判よ11・刊"1

Leading Edge

Trailing Trailing Edge Edge

図4.3.4 翼面の熱電対埋込み位置

nδ 円叫

υ

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要な位置における壁温度の測定が可能である。本実験では,半径方向に翼を移

動させて,高さ方向で 7ヶ所16.7,33.3, 50.0, 58.3, 66.7, 83.7および91.7

(%)において翼面の熱伝達率の分布を測定した。

内側シュラウドおよび外側シュラウドにも翼面と同様に熱伝達率を測定する

目的で,巾 5mmの47枚の ニ ッケル薄箔抵抗体に l枚当り 5点,計 235点の熱電

対を埋め込んでいる。本測定方法による局所熱伝達率の測定誤差は,平板等の

既存のデータと測定値を比較することによって,士 10目以下であることを確か

めている。

Thin Nickel F oil Heater

図4.3.5 熱伝達率分布測定翼

-99ー

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フィルム冷却実験は,主流を室温とした条件で,加熱した空気をフィルム冷

却孔から吹き出すことによって行なったが,フィルム冷却効率を測定するに当

たっては,熱伝達率分布を測定する翼およびシュラウドとは異なった翼とシュ

ラウドを用いて実験を行った。このフィルム冷却効率を求めるために,翼面お

よびシュラウド面に埋め込んだ素線径 O.1 rnrnのK型熱電対で断熱壁温度を測定

した。埋め込んだ熱電対の総数は翼部で 192点,内外シュラウド部でそれぞれ

102点である。翼面およびシュラウド面に埋め込んだ熱電対で壁温度を測定す

ることと並行して,赤外線放射温度計を用いて翼部の背腹面の温度分布測定を

行った。なお翼背側では,翼後縁側から反射鏡を用いて,赤外線放射温度計で

壁温度を測定した。また,翼表面には放射率がほぼ1.0であるカーボンブラッ

ク塗料を塗って放射率の補正の必要性を無くし,さらに赤外線放射温度計で測

定した壁温度を壁に埋め込んだ熱電対の温度と比較して較正した。

ニッケル薄箔抵抗体からの熱伝導等の熱の散逸によってフィルム冷却効率の

測定精度が低下することが無いことを確認するために,炭酸ガスをトレーサと

し,その濃度分布からフィルム冷却効率を測定する方法を併用した。

(3) 二次流れの可視化方法

低速流れにおける境界層近傍の流れの可視化法として有用な方法がLangston

とBoyle [12]によって開発された。この方法は,供試体上に溶油性のマーカを

ドットでマトリックス状に塗っておき,主流気流中に溶材を霧状に噴霧し,マ

ーカの表面が溶け境界層流れに沿って流れる時を見はからって噴霧を中止し,

主流気流で乾燥させると,供試体表面に流線が残るという方法である。この方

法は原理的には,油膜法と同じであるが,可視化像を恒久的に残すことが可能

であり, GauglerとRussell はこの方法を二次元翼を用いた直線形状のモデルの

シュラウド面の流れの可視化に応用している。[5]

環状翼列伝熱実験における翼面上およびシュラウド面上の流れを可視化する

ためには, Boyle等の方法を発展させる形で,可視化表面の性状,マーカの選

定,塗布法,溶材について検討した結果, OHP シートにOHP用マーカ(ぺンテ

ル OPM4W) を全面均一に塗り,サリチル酸メチルを霧状に噴霧する方法が有効

であることを見い出した。

-100-

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4. 3. 2実験結果および考察

翼面の速度分布、、,,,,-ft、、

と翼面に主流全圧 Pt入口流速 uin=13.3m/sにおける翼面の速度分布を,

このより求めた結果を図4.3. 6に示す。あけた静圧タップで測定した静圧 Ps

翼の空力的負荷が外側ほど増加していることが明らかである。より,図4.3. 6

50%翼高さ翼のピッチとコード比 p/cが外側ほど大きいためである。これは,

第 3章で述べた二次元の翼列実験のそれとほぼ一致してにおける速度分布は,

流れの二次元性が保たれていると判断でそこで翼高さ 50%の断面では,いる。

1.5

きる。

Symbol

ーー-&-一

Uexit m/s HeighL%

50.0 93

一-e一一-

一一一O一一

Pressure Surface

56.5

62.5

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7

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AZoo-O〉唱。

ω=句E』OZ

1.0 0.5 O

XJS

翼面速度分布

1i

nU

E'ム

Normaized Distance

図4.3. 6

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(2) 二次流れの可視化

OHP用マーカとサリチル酸メチルにより翼面および内外シュラウド面の流れ

の可視化を行った結果を図4.3.7,......,図4.3.9に示す。図 4.3. 7に示す翼表面の

流れの可視化結果は,翼前縁を中心とする形で展開して示している。これらの

流れの可視化図は,翼面およびシュラウド面上の流れ場の空力的特徴を示して

いる。流れの可視化図は,翼面およびシュラウド面上の熱伝達およびフィルム

冷却を解釈する上で役立つものである。

図 4.3.7より,翼背側においては,限界流線は,翼の中央に向かつて収赦し

ていることが明白である。翼背側に存在する景IJ離線は,外側の剥離線は内側の

剥離線よりも中央近くまで入っている。これは,翼の外側の方が空力負荷が高

いためである。図 4.3. 7の翼背側の x/s =; O. 5において塗料がたまっている

理由は,翼面流れの減速域で層流ノぐブルがこの部分で発生しているためと考え

られる。これとは逆に,翼腹側では,限界流線は二次元翼腹側の流れ場と同じ

ような形を示している。

図4.3.8,図4.3. 9には,内外シュラウド面上に存在する馬蹄渦,シュラウド

上の流れ“Aぺ “B n 剥離線,およびノズルウェ ークが鮮明に示されている z

…on Line l CONDITION Uin=13m!s

~ Pressure

~

Surface

Separation Line

LT叩 Edge

Leading Edge

Stagnation Line

ling均一」図4.3. 7 低アスペク卜比翼の翼面上の流れの可視化

円ノLH

nHV

句EEム

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これらの図4.3.8, 図4.3. 9を図4.3. 7と合わせて流線を注意深く観察する

と,低アスペクト比の第 l段静翼の三次元流れ場を理解することが出来る 。図

4. 3. 8 ,図 4.3. 9より明らかなごとくシュラウド面上の剥離線は,翼背側の最

も流速の速い位置に達している 。図 4.3. 7に示される翼背側の両シ ュラウド側

から始まり翼中央に向かう剥離線は, 丁度この位置から始まっており,流路渦

は,この点でシュラウドを離れ,翼背側に沿って下流側に流れる。図4.3.8,

図4.3. 9を比較すると, クロスフロ ー “B"は外側のシ ュラウド面上の方が強

Separation

Line

Nozzle Wake

Uin=13m/s

図4.3. 8 外側シュラウド面上の流れの可視化

円ベU

AHU

1i

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く,一方ノズルウェークは内側のシュラウド面上で強いことがわかる。この理

由は,空力負荷が翼の外側の方が大きいためであり,ノズルウェークが内側シ

ュラウドで強い理由は,内側で後縁半径とスロート巾の比 r/ sが大きいため

である。

¥/ Crossflow“B"

/

Nozzle Wake

/

Uin=13m/s

図4.3. 9 内側シュラウド面上の流れの可視化

a4ゐ

ハHU

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(3) 翼面の熱伝達率分布測定結果

この実験では,環状翼列の 7つの高さにおける翼面上の熱伝達率分布を測定

したが,翼腹側および翼背側の代表的な熱伝達率の分布をそれぞれ図4.3.10.

図4.3.11に示す。

翼腹側の熱伝達率分布を示す図4.3.10においては,翼前縁からの各位置にお

ける高さ方向の熱伝達率の違いは小さく,ほぼ平均径断面の値と同程度である。

この結果から翼腹側の熱伝達率は,翼聞の三次元流れの影響をほとんど受けな

いことがわかる。

翼背側の熱伝達率分布を示した図4.3.11より,翼背側は,翼腹側とは反対に

翼聞の三次元流れの効果を強く受けることがわかる。翼背側では,翼前縁と x

/ s =. 0.3の聞は,高さ方向にわたってほぼ熱伝達率が均ーである。しかし,

外側シュラウド面に近い高さ 91.7児の熱伝達率分布では. x/ s当 0.3より,

熱伝達率は,平均径断面の値に比較して急激に増加している。特に,乱流遷移

した後の乱流域で,熱伝達率は翼中央での値に比較して20見高い値になってい

る。外側シュラウド面に近い翼面に比較して,内側シュラウド面に近い翼面に

おける熱伝達率は. x / s =. 0.6からの熱伝達率の上昇が大きい。

翼背側後縁のシュラウド近傍では,流路渦,および翼腹背の圧力差に基づく

シュラウド上の流れ“B" によって翼背側に吹きょせられシュラウド面上に発

達した境界層の影響により,熱伝達率が増加している。翼腹背の圧力差に基づ

く二次流れの影響度合は,翼列形状と,シュラウド面上の境界層に依存するも

のである。外側のシュラウド面に近い翼面でこの影響が大きい理由は,ピッチ

/コード比が大きく空力負荷が高く,このために翼背側と翼腹側の圧力差が大

きく,この圧力差によって生じる二次流れの影響が強いためと考えられる。

Fhd

nU

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Outer Shroud

37.

-37.5

Jnner Shroud

フィルム冷却孔無しの場合の翼腹側における熱伝達率分布図4.3.10

Outer Shroud

7.5

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Distance from l.E.

Inner Shroud

フィルム冷却孔無しの場合の翼背側における熱伝達率分布

-106-

[l11rn] X

図4.3. 11

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(4) シュラウド面上の熱伝達率分布測定結果

外側シュラウド面上の熱伝達率分布の測定結果を図4.3.12に示す。図4.3.12

において,シュラウド面の翼前縁近傍に熱伝達率の高い領域が存在する。これ

は,シュラウド面に沿って発達した境界層が翼前縁部で巻き上げられ,いわゆ

る馬蹄渦が生じていることにより伝熱が促進されて熱伝達率が高くなっている

と考えられる。

馬蹄渦の強さは翼前縁の形状とシュラウド面上に発達した境界層厚さに大き

く依存する。図4.3.12に示す実験条件では,ノズル前縁前方の35mmの位置で径

方向に熱線風速計でトラパースして壁面上の境界層厚さを測定したところ,境

界層厚さ δ.99 は1.9mmで,この値の翼高さに対する割合は2.5%であった。図

4.3.13の外側シュラウド部の翼背側後縁部近傍にも熱伝達率の高い領域が存在

する。この領域における熱伝達率は,流路渦およびシュラウド面上の二次流れ

により翼背側に吹き寄せられたシュラウド面上に発達した境界層により促進さ

れて高くなっていると考えられる O また熱伝達率が90W/m2・Kの等熱伝達率

線が,翼腹側から背側方向に向かっていること,およびこの等熱伝達率線が波

打っていることが流路渦の流れと再付着に関係していると考えられる。なお図

4. 3.12に示した内側シュラウド面上の熱伝達率分布には,図 4.3.13に示した外

側のそれほど三次元流れの影響は顕著ではないが,同様の傾向が現れている。

(5) 翼面のフィルム冷却効率の測定結果

環状翼列伝熱装置を用いたフィルム冷却実験は,主流温度T∞が約200C,フ

ィルム冷却空気温度 Taが約500Cの条件で実施した。本実験ではベークライト

製の翼およびシュラウドに埋め込んだ熱電対および赤外線放射温度計によって

断熱壁温度を測定した。この断熱壁温度を測定するために,赤外線放射温度計

で翼腹面,翼背面の温度分布を測定した例を図4.3.14および図4.3.15に示す。

-107-

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Main Stream

u

nHV

Uin=15.8m/s h仰Im2.K]

図4.3.12 内側シュラウド面上の熱伝達率分布

Main Stream

Uin=15.8m/s h [W/m2.K]

~

図4.3.13 外側シュラウド面上の熱伝達率分布

-108-

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Leading Edge Trailing Edge

Outer Shroud

Inner Shroud

図4.3.14 赤外線放射温度計による翼腹面の断熱壁温度の測定

Trailing Edge Outer Shroud

Leading Edge Inner Shroud

図4.3.15 赤外線放射温度計による翼背面の断熱壁温度の測定

-109-

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以上の方法で測定した断熱壁温度 Tawの測定値を基によく知られた式(4. 3.

1 )で定義されたフィルム冷却効率り f を求めた。

ηf T aw T∞

T.o -T∞ (4. 3. 1)

図3.2. 5に示すフィルム孔位置でNo.3および、No.2のフィルム冷却孔列より,

加熱した空気を吹き出し,翼背側および翼腹側のフィルム冷却効率を測定した

結果を図4.3.16および図4.3.17に示す。図 4.3.16および図 4.3.17に示したフィ

ルム冷却の質量流東比Mは,吹き出し点における主流流速を基にして求めると,

それぞれ 0.426, 1. 39である。図4.3.16,図4.3.17より翼面のシュラウド部近

傍では,翼中央に比較してフィルム冷却効率の低下が著しいことがわかる。こ

の傾向を定量的に比較するため,代表的な高さにおける,平均フィルム冷却効

率 TJ f を,無次元距離 x/MS' に対して整理してそれぞれ図4.3.18,図4.3.19

に示した。

Film Cooling Holes

Outer Shroud

Main Stream

Cコ

Inner Shroud

Leading Edge

M=O.426

Trailing Edge

図4.3.16 翼背側におけるフィルム冷却効率分布

nuU

4EEム

4EEム

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Outer Shroud

Main Stream

仁今

Inner Shroud

1.0

0.5

I~

ω ω 岨20.2

0.1 OC E

O 。。

E 0.05

LL

0.02

Film Cooling Holes

Leading Edge

M==1.39

Trailing Edge

図4.3.17 翼腹側におけるフィルム冷却効率分布

M= 0.87 M= 1.75 Height

。 • 22.7%

ーーロ圃圃 ーー・ーー 46.7%

ー.-6-._圃・+.ー 82.7%

-ー+・・ -・令・ー 10.7%

-ーーー;Eq. (3.2.11) M = 0.52

s'zt 4P

o 2 5 10 20 50

Normalized Distance X/MS'

100 200

図4.3.18 翼背側におけるフィルム冷却効率

'ai --

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1.0

0.5

11="

ω ω Q)

0.2 c

苗詰聖0.1

oc v

δ E 0.05

LL.

0.02ト・---;Eq. (3.2.12)

S'= 1td2

=--4P

O 2 5 10 20 50

Normalized Distance X/M8'

100 200

図4.3.19 翼腹側におけるフィルム冷却効率

第 3章で 2次元翼列実験によるフィルム冷却効率を表わす実験式 (3.2.11)

および式 (3.2.12)を得たが,図 4.3.18および図 4.3.19に比較のためにプロット

した。図4.3.18より,翼背側の平均径断面におけるフィルム冷却効率は,二次

元翼列からえた実験式 (3.2.11) にほぼ一致するが,シュラウドに近い翼面で

は,平均径断面におけるフィルム冷却効率に比較して距離 xの増加とともに急

激に減少することがわかる。特に,外側シュラウド面に近い翼面ほどフィルム

冷却効率の低下の度合が大きい。この原因は,外面シュラウドに近いほど,空

力負荷が高く,流路渦および二次流れの影響が大きく,そのためフィルム冷却

空気と主流との混合が促進されて,フィルム冷却効率が低下すると考えられる。

一方図4.3.19より明らかなように,翼腹面では,シュラウドに近い翼面のフィ

ルム冷却効率は,平均径断面におけるフィルム冷却効率に比較して多少低いが,

円ノ臼

4Ei

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その低下度合は背側に比較して急激ではなく,高さ方向にわたってほぼ同じで

ある。翼の平均径断面のフィルム冷却効率が,二次元翼列実験結果より得た実

験式 (3.2.12)よりも低い原因は,本環状翼列実験の翼列入口における主流乱れ

2. 7月が二次元翼列実験時の 0.5%に比べて高いためと考えられる。

(6) シュラウド面上のフィルム冷却効率測定結果

外側シュラウド面の翼列入口部に設けたフィルム冷却孔(図 4.3. 3①)から

フィルム冷却空気を吹き出した場合のシュラウド面上のフィルム冷却効率の測

定結果を図4.3. 20に示す。

図4.3. 20において,翼背側前縁近傍にフィルム冷却効率の低い領域が存在す

る。これは翼前縁近傍に馬蹄渦が形成され,フィルム空気と主流の混合が促進

されたためである。シュラウド面上の等フィルム冷却効率曲線は,流線に垂直

とならず,翼背側近傍が高くなっている。この原因は,翼背腹の圧力差によっ

て生じたシュラウド面上の流れによりフィルム冷却空気が翼背側近傍に流され

るためである。フィルム冷却効率の O.1の曲線が波打っているのは,流路渦流

れにフィルム冷却空気の混合が依存しているためではないかと推定される。

Main Stream

.(}T M = 1.65

図4.3.20 外側端シュラウド上のフィルム冷却効率の分布

円4U

'i

'i

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シュラウド面上のフィルム冷却効率を一般的な形で表すために,フィルム冷

却孔の位置を示した図 4.3. 3の I--IIIのフィルム孔から吹き出しを行った場合

のフィルム冷却効率を,無次元化した流線に沿う長さ xに対して整理し,図4.3.

21--図4.3.24に示した。フィルム冷却効率を測定する実験は, I--IIIの各場所

で質量流束比Mをパラメータとして実施した。 I--IIIの吹き出し場所のフィル

ム冷却効率への影響を調べる目的で行なったシュラウド面上のフィルム冷却効

率の測定結果を図4.3. 21 '"'-'図4.3. 24に示す。

図 4.3.21と図 4.3.22を比較すると図 4.3.21に示した外側シュラウド面上のフ

ィルム冷却効率には図 4.3.22に示した内側シュラウド上のそれと同じ特徴が現

れていない。特に異なる点は,外側シュラウド面上のフィルム冷却効率は翼腹

側に近い流線に沿う部分で著しく低下することおよび内側シュラウド面上のフ

ィルム冷却効率では後縁部で急激にフィルム冷却が低下していることである。

図 4.3.21に示すごとく外側のシュラウド面で翼背側の流路に沿う前縁近傍のフ

ィルム冷却効率 ηf はO.035である。この値は,距離が増加すると O.1まで増

加する。これは,翼腹側と翼背側の圧力差によって生じるクロスフロー“ B"

によってフィルム冷却空気が供給されるからである。また,図 4.3.21中の翼腹

側近傍の流線に沿うフィルム冷却効率は距離の増加に伴って急激に減少してい

る。この理由は,クロスフロー“ B" によってスイープされフィルム冷却空気

は流線に沿って流れることが出来ないためである。これら二つの流線間のフィ

ルム冷却効率はやや波打ちながら距離の増加に伴ってしだいに減少する o

外側シュラウド面のフィルム冷却効率と比較して,図4.3.22に示したごとく

内側シュラウド面上のフィルム冷却効率には,同じ特徴が表れていない。これ

は,内外シュラウド近傍の翼面上で空力的負荷が異なるため,外側シュラウド

部よりも内側シュラウド部の方が二次流れのフィルム冷却に及ぼす効果が弱い

ためである。以上は翼間流れについてであるが翼後縁部において図4.3. 22に示

したごとく内側シュラウド面上では,ノズルウェーク領域でフィルム冷却効率

が急激に減少していることである。しかし,外側シュラウド面上では,ノズル

ウェークの領域でこのような急激な低下は現れていない。これは内側では翼ス

ロート巾に対する翼後縁厚みの比 r/sが大きく,強いノズルウェークが発生

-114-

Page 125: Osaka University Knowledge Archive : OUKA«–文.pdf · (3) 測定方法 ー ーーーー一一一 ーー一一ーー一 一一 42 (4) フィルム冷却時の冷却孔壁面の熱伝達率測定方法

しているためである。この結果を反映してフィルム冷却翼の設計では,後縁厚

みを十分考慮しておく必要がある。

外側シュラウド面上の EおよびEの位置のフィルム冷却孔より吹き出しを行

った場合の平均フィルム冷却効率をポテンシャル流れの流線に沿って測定した

距離 xの無次元量を用いて,それぞれ図4.3.23,図4.3.24に示す。

EおよびEの位置からのフィルム冷却効率はクロスフロー“ B" に支配され

ている o そして, n, mともノズルウェーク領域まで,フィルム冷却効率は距

離の増加に伴ってほとんど一様な低下割合で減少する。しかし図4.3.23および

図4.3. 24のx/MS=. 50における平均フィルム冷却効率の急激な減少は,翼後縁

における強いノズルウェークの影響によるものである。環状翼列伝熱実験装置

を用いて内外シュラウド面上のフィルム冷却効率を測定した結果を示した図4.

3. 21---図4.3.24は,シュラウド面のフィルム冷却設計を実施する上で非常に有

用なデータである。

Fhu

EA

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h

o

anHV

O

o

av

o

m

t

t

A

AV

1.0

o

0.5

.... I~

F

0.2

0.1 o

αコマ

v

v

v

v

v マ。

。o O

0.05

ωωozo〉200E凶

mgzoooE-E

0.02

500 200 100 50 20 10 5

X/MS

外側シュラウド面上の|からのフィルム冷却によるフィルム冷却効率

Normalized Distance

図4.3.21

-

Main Stream 1.0

0.5

M=2.30

マ企

マQ ロo マ

6 0-() () o 0 マ

ロ0.0αoowマA ロロ o

6 06ロα2

0

60

n A

g

句-

11='

g o z o 〉:0=

8 ::: 凶

c)

主 0.050 0 0 E I.L

0.2

0.1

0.02

500 200 100 ょ

50 ム20 10 5

XJMS

内側シュラウド面上の|からのフィルム冷却によるフィルム冷却効率

-116-

Normallzed Distance

図4.3.22

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Main Stream

がぜ、ao-

-

o 口

A・A 0 • 企

ロ.•

o A •

1.0

0.5 句岡・

I~

0.2

o • 0.1

A

ロa

o a A

圃Outer Endwall Inner Endwall

Symbol M Symbol M

O 0.39 • 1.29

A 0.77 A 1.92

ロ 1.16 • 2.52

O 1.55

0.05

ggg-HSU凶mz=。。OE--仏@mEgd『 A

0.02

• 500 200 100 50 20 10 5

X/MS

外側シュラウド面上の 11からのフィルム冷却によるフィルム冷却効率

Normalized Distance

図4.3.23

Main Stream Fllm Coollna

(¥ '0八 Holes⑩

〉J大¥• gA • O

A 0

・0

1.0

0.5

0.2

‘" I~

O

O • A 0.1

• • Outer Endwall Inner Endwall

Symbol M Symbol M

O 0.82 • 0.92

企 1.63 A 1.35

ロ 1.63 圃 1.81 一

0.05

0.02

ggg事gEos-000EZ@mEgd『

A

500 200 100 50 20 10 5

X/MS

外側シュラウド面上の川からのフィルム冷却によるフィルム冷却効率

咋』

Ei

''i

Normalized Distance

図4.3.24

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4.4 結論

低アスペクト比のタービン静翼の翼面およびシュラウド面の熱伝達率とフィル

ム冷却効率におよぼす二次流れ効果を明らかにするために,第 1段静翼のモデル

翼を用いた環状翼列伝熱実験装置で伝熱実験を実施して下記の結論を得た。

。翼腹側と翼背側の圧力差によって生じる二次流れは, シュラウド近傍の翼背

側の熱伝達率を増加させる O 一方,翼腹側の熱伝達率には影響を与えない。

。シュラウド面の翼前縁近傍では,馬蹄渦の影響により熱伝達率が高くなり,

逆にフィルム冷却効率は低くなる。

。翼背側のフィルム冷却効率は,二次流れの影響を受けてシュラウド部近傍で

効率低下が著しい。また翼腹側のフィルム冷却効率は二次流れの影響を受けず

に,二次元翼列実験で得られたフィルム冷却効率に近い値となる。

。翼腹側と翼背側の圧力差によって生じるシュラウド面上の流れの影響により

フィルム冷却空気が翼背側に吹き寄せられることから, シュラウド面のフィル

ム冷却効率は,翼背側近傍が高くなる。一方,翼腹側はシュラウド面上に生じ

る二次流れによってスイープされるために,フィルム冷却効率は急激に低下す

る。

-118-

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第4章の文献

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tigation of Endwall Heat Trasfer and Aerodynamics in a Linear Vane

Cascade, "Trans. ASME Journal of Engineering for Gas Turbines and

Power. Vo1.106, pp.159-167, 1984.

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ASME Journal of Engineering for Gas Turbines and Power. Vo1.106, pp.

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Nozzle," Trans. ASME, Journal of Turbomachinery. Vol. 112. PP.488-496,

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-119ー

Page 130: Osaka University Knowledge Archive : OUKA«–文.pdf · (3) 測定方法 ー ーーーー一一一 ーー一一ーー一 一一 42 (4) フィルム冷却時の冷却孔壁面の熱伝達率測定方法

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ービン定期講演論文集. pp. 79-85. 1988.

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scade." ASME Paper No.79-GT-20. 1979.

[15J Goldstein. R. J.. and Chen. H. P.. “Film Cooling of a Turbine Blade

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Trans. ASME Journal of Turbomachinery. Vol. 109. pp.588-593. 1987.

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Endwall in the Region Between Adjacent Turbine Blades." Heat Transf

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[17J Sharma. O.P..Nguyen. P..Ni. R.H..Rhie. C.M..White. J.A.. and Finke.

A. K.. “Aerodynamic and Heat Transfer Analysis of a Low Aspect Ratio

Turbine." AIAA Paper No. AIAA-87-1916. 1987.

-120-

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第 5章 回転勤翼面のフィルム冷却実験

5. 1 まえがき

フィルム冷却を行った動翼翼面上のフィルムの形成は,静止翼列で観察される

現象に加えて,動翼の回転の影響および静翼のノズルウェークによって生じる非

定常流の影響を受ける。高温ガスタービンに用いるフィルム冷却を行ったタービ

ン動翼を設計するためには,静止翼列実験で得られるデータに加えて,回転して

いるタービン動翼面上のフィルム冷却効率を測定し,回転のフィルム冷却効率へ

の影響を把握することが非常に重要である。

Dring [11. [21 等は,大型で低速回転する動翼を用いて,翼面上にあけた単孔

から吹き出す場合のフィルム冷却効率とその軌跡を調べた。そして,翼背側では

1 t 0 [3] 等の二次元静止翼列結果と良く一致することを,また翼腹側では回転動

翼のフィルム効率の低下が著しいことを明らかにした。しかし,回転している動

翼面上のフィルム冷却効率を直接測定した実験結果について発表された論文は非

常に少なく,実機と相似な空力条件(速度三角形および圧力比が等しい条件)で

作動する動翼面上のフィルム冷却効率を測定した結果は報告されていない。

第 3章においては,フィルム冷却を施行したタービン動静翼の冷却設計にとっ

て重要な翼面上の平均フィルム冷却効率を明らかにしたが,本章では,産業用ガ

スタービンの第 1段動翼をベースとした同ーの翼型を用いた二次元低速の翼列実

験における局所フィルム冷却効率の測定結果と,実機と相似な空力条件で実験し

た空気タービン実験における局所フィルム冷却効率の測定結果を示して,動翼面

上のフィルム冷却効率について考察する o 本章の内容は主に文献[4Jに発表した

内容をまとめたものである。

Ei

円〆臼

EA

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5.2 空気タービンによるフィルム冷却実験

5. 2. 1実験装置

(1)供試翼

回転している動翼面上のフィルム冷却効率を測定するために,単段からなる空

気タービン実験装置を用いた。

空気タービン実験に用いたタービン動翼の形状は,典型的な産業用の高温ガス

タービンの第 l段動翼と同じ形状である。フィルム冷却孔を設けたタービン第 l

段動翼の冷却構造を図5.2.1に示す。

翼の前縁に翼面に対して300傾き 3列からなるシャワーヘッド冷却 (LE),翼背

側には 1列のフィルム冷却孔 (SS)を設けている。また翼腹側には翼前縁近傍と翼

後縁近傍にそれぞれ l列から成るフィルム冷却孔 (PS1.PS2) を設けている。なお

第 3章の 3.3節で述べた二次元低速翼列実験に用いた翼型は,空気タービン実験

に用いた翼の50児高さの断面を拡大したモデルであり第 3章の 3.3節に示した二

次元低速翼列実験に用いた翼および空気タービン実験に用いた第 l段動翼面上に

あけたフィルム冷却孔のす法を対比して表5.2.1に示した。さらに空気タービン

実験に用いた翼50%高さ断面における寸法を二次元翼列実験のモデルと対比して

表5.2. 2に示した。

図5.2. 1 第 1段動翼のフィルム冷却孔位置

-122-

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表5.2.1 タービン動翼のフィルム冷却孔寸法

2・D Low-Speed Cascade Rotating Rig

Chord 230.2 35.0

Height 300 46.7

Pitch 195.6 26.4

Aspect Ratio (height/chord) 1.30 1.33

Air Inlet Angle 46.3 46.3

Air Exit Angle 65.4 65.4

表5.2. 2 翼列寸法

Number Low 5peed Cascade Rotating Blade

Location of Row Hole Diameter Pitch Hole Diameter Pitch

d[mm] p[mm] d[mm] p[mm]

LE 3 2.0 12.4 0.32 1.95

55 2.6 9.2 0.41 1.41

P51 2.6 9.2 0.41 1.41

P52 2.0 6.68 0.32 1.00

なお,回転動翼実験の供試翼には,フィルム冷却空気を送り込む通路面積の確

保が l枚の翼では困難なことから,図5.2. 2に示す 2枚のモデルを製作して実験

に供した。これらの回転動翼実験の供試動翼の平均径断面には,フィルム冷却膜

を吸引するタップ孔を設けているが, これは,図5.2. 3に示すごとく,翼面に放

電加工で溝を加工し,その溝に外径1.0 mm,内径 O.5mmの先の閉じた注射針を銀

ろう付けによって埋め込み,表面を翼型に研磨した後,埋め込んだ管と通じるよ

うにO.3mmの静圧孔を翼面に直角に,放電加工であけたものである。静圧タップ

とタービンディスクへのワイヤリングの状況を図5.2. 4に示す。

円、

unノ臼

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55

Mode 1 1

③ Suction taps

図5.2. 2

Model II

フィルム冷却効率測定用翼構造

nB

n

o

o

c s

mh山

o

c'MH

(Pressure Surface) (Suction Surface)

図5.2. 3 タービン動翼フィルム冷却効率測定翼

8AHA

円ノ臼

EEム

Suction

Taps

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図5.2. 4 フィ ルム冷却効率測定翼のタップおよびワイヤリング

(2)空気タービ ン実験装置

単段の空気タ ー ビン実験装置を用いて,回転動翼の翼面上のフィルム冷却効率

を測定した。この単段の空気タ ー ビン実験装置の全体のレイアウトを図5.2. 5に

示す。

空気タ ー ビンを駆動する空気源としては, 4000kWのモー タで駆動された遠心圧

縮機で生じる空気を用いている。この圧縮された空気は,ク ーラを通すことによ

って,所定のタ ー ビン入口温度に調整されているが,空気タ ー ビン実験装置の圧

力比,回転数を主流流量コントロ ールバルブで調整しており,タ ー ビンで発生し

た動力は水動力計で吸収している。

空気タ ー ビンの構造(断面図)を図5.2. 6に示す。この空気タ ー ビンの第 l段

静翼列は, コー ド長 c= 76.5mmの翼32枚から構成されている。また,タ ー ビン

動翼列は高さ R.= 46. 7mm,平均径断面における翼 コー ド長 c= 35. Ommの翼72枚か

ら構成されており, 72枚の内 2枚の翼が図 5.2. 2に示した翼構造を持つフィルム

冷却効率測定翼で,残りの70枚はソリッド翼である。

単段の空気タ ー ビン実験装置の軸端にはフィルム冷却孔にフィルム空気を送り

込む回転バルブと,フィルム冷却孔の下流に生じる冷却膜内の流体を静圧タップ

Fhu

ηL

li

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を通して吸引して静止系に渡す60chの回転スキャニーバルブが装着されている。

主流の状態を把握するために,フィルム冷却効率測定翼前方100mmの点において 1

3孔ピトー管を用いて主流の全圧を測定するとともに,スロート出口下流 100mm

の点において,静圧を測定した。また,静翼入口の静圧測定点付近で全温度を測

定した。

4000kW

Compressor

Cooler

Model

Turbine

Water

Blake

Detailof③ is shown in Fig.5.2.7

図5.2. 5 空気タービン実験装置のレイアウト

-126-

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φ

一一一一

Scanivalve③ (60TRTC)

・ミミミさとで

図5.2.6 空気タービン実験装置断面図

(3) フィルム冷却効率の測定方法

実翼のフィルム冷却は,温度T.oの冷却空気をフィルム冷却孔から吹き出して

主流温度T∞と境界層内で混合し,翼面上に Tf なるフィルム冷却膜が形成され

れることを利用しているものである。翼が断熱壁の場合T.w= T f であり断熱壁

温度T.wを測定すればフィルム冷却効率 ηf を知ることが出来るが,本回転動翼

実験で用いた動翼モデルは非常に小型であるため熱伝導誤差が大きく,断熱壁温

度から求めることは困難である。そこで,ルイス数=1.0であれば熱伝達と物質

伝達の聞にアナロジーが成立することを利用して,フィルム冷却孔より吹き出す

フィルム空気中に, トレーサとして炭酸ガスを混ぜ,フィルム冷却孔下流の壁近

傍の流体中の炭酸ガス濃度を分析することによってフィルム冷却効率を求める方

法を用いた。この場合,次式よりフィルム冷却効率を求めることができる。

tn〆副1

i

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ηf 一T∞-T 8W

T∞-T 80

-A

一o

pv一円し

一一一

∞一∞

pu

一円し(5. 2. 1)

ここで Cxは,フィルム冷却孔下流xの位置における壁面上の炭酸ガス濃度で

ある。また, C ∞ Co は主流およびフィルム冷却空気のフィルム冷却孔吹き出

し点における炭酸ガス濃度である。なお,炭酸ガスをトレーサとした物質伝達の

アナロジーを用いた方法でフィルム冷却効率を測定する精度については,第 2章

の基礎実験において十分確認している。

フィルム冷却膜より吸引する空気の量が多すぎると主流を吸込むことになり,

大きな誤差を伴う。そこで,実験では翼面に設けた吸引タップより回転スキャニ

パルプを介して十分な時間をかけ吸引ガスをガスバッグに捕集し,ガスクロマト

グラフィーで分析した。フィルム冷却空気の吸引の速度を早くすると主流を吸引

むため,実験に先立って吸引速度を変化させてフィルム冷却効率を測定し,この

C∞ C>JJ 1st Blade Main Flow

Co

Film Cooling Holes

Suction Taps

Air ⑪

+

C02 Gas

Chromatograpy

図5.2.7 回転勤翼のフィルム冷却効率を測定する方法

-128-

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効率が変化しないように吸引速度を決めた。この吸引速度は,フィルム冷却効率

を測定する各場所において10m/s以下である。回転するタービン動翼面上のフィ

ルム冷却効率を測定するために炭酸ガスをトレーサとした測定のシステム図を図

5. 2. 7に示す。フィルム冷却孔の吹き出し点における炭酸ガス濃度は約3000ppm.

l段静翼入口における主流の炭酸ガス濃度は約 350ppmであった。またフィルム

冷却効率の測定では各測定ごとに 3回の濃度分析を実施した。なお炭酸ガスの濃

度の分析に用いたガスクロマトグラフィの測定精度は,測定値の土問である。

5.2.2 実験結果および考察

(1)回転時の動翼面のフィルム冷却効率

代表的な空気タービンの運転条件を表5.2. 3に示す。この空気タービンを用い

て,空力条件が相似な状態で回転する動翼面上のフィルム冷却効率を測定した。

表5.2.3 回転実験条件

Turbine Inlet Temperature TitOC 78.2

Turbine Inlet Total Pressure PO ata 2.06

Turbine Exit Temperature Texit oC 25.4

Turbine Exit Pressure Pexit ata 1.08

Pressure Ratio π 1.91

Main Flow Rate G kg/s 8.38

Rotating Speed N rpm 6260

単段の空気タービン実験では,フィルム冷却空気と主流との質量流束比Mは0.6

から1.0の範囲で変化させた状態で実験を行った。この条件は,実エンジンの状

態 (M=r O. 7 )をカバーしている。トレーサガスとして用いた炭酸ガスの濃度は

薄いため,フィルム空気と主流の密度比 ρa/ρ は,常にほぼ1.0である。なC幻

お実エンジンでは,この密度比は1.5から 2.5であるが,本研究では動翼の回数

の効果を調べる目的のために密度比は合わせていない。

-129-

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以上に述べた物質伝達のアナロジーを応用して翼背側のフィルム冷却孔 (SS)か

の測定しら吹き出した場合の質量流束比Mをパラメータにフィルム冷却効率 ηf

た結果を図5.2.8に示す。

質量流束比Mを増加させていくとフィルム冷却効率 ηf は低下図5.2. 8より,

フィルム冷却空気が境界層を貫通してこれの原因は,することは明らかである。

翼の表面にフィルム冷却膜を形成しないためである。

フィ翼前縁のフィルム冷却孔 (LE)から吹き出した場合のフィルム冷却効率を,

ルム冷却孔の下流方向に翼背側および翼腹側の翼面上で測定した結果をそれぞれ

図5.2. 9.図5.2.10に示す。翼前縁から吹き出したフィルム冷却空気は静止翼列で

図5.2. 9.図5.2.10のフィルム冷却翼腹側にほぼ等量の割合で流れるが,翼背側,

N = 6260 rpm 1tt = 1.906

M = 0.36 ー〈砂一

一企一

一-0-ー

M=0.6

@

¥

¥

¥

¥

¥

¥

、、、、 ss

M = 0.91

,,

ィyIri

--d

0.2

0.1

81 8 ulu 1 I 1 XI 0

tコlにコ11

句h・r

ωω@CO〉一日O@』出回三一

ooOE=HL

1.0

T.E.

0.5 ss

(Location of Film Cooling Hole)

Non-dimonsional Distance

o L.E.

x/s

背側 (SS)吹き出しのフィルム冷却効率

-130一

図5.2. 8

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翼背側のそれに比効率を比較すると翼腹側におけるフィルム冷却効率の低下は,

後述す図 5.2.10中には,なお図 5.2.9 , 非常に急であることがわかる。較して,

る二次元低速翼列実験の局所フィルム冷却効率の測定結果も記入している。

回転動翼面上の局所フィルム冷却翼背側のフィルム冷却孔 (SS)より吹き出し,

なお翼背側のフィルム冷却効率を測定す効率を測定した結果を図5.2.11に示す。

る静圧タップはフィルム冷却孔の丁度中間の点から下流方向に設けているため,

このためにフィルム冷却効率の最も低い箇所を測定していることになっている。

下流に行くにつ吹き出し孔近傍では Oで,回転動翼面上のフィルム冷却効率は,

れてフィルム冷却孔より横方向に広がったフィルム冷却空気が測定部をカバーす

フィルム冷却効率は x/ d =25付フィルム冷却効率は増加する。ることとなり,

ゆるやかに低下していく状況が図主流との混合により,近で最大値をとった後,

5.2.11より明らかになった。

Lo伺 tlonof Fllm Coollng Holes; Leadlng Edge (555ide)

一-<!トー AlrTurbine Test M=1.02

a-e

T

e

4u a

nhv

C川

U

D

d

erM

0.7

0.6

.圃・r

i!I

LE 0.5

o.叫

0.1

0.3

0.2

ωω@Z@』,zo@hhω

。==000E-E

100 75 50 25 。

Non-dimensional Distance from Film Cooling Hole xld

翼前縁(LE)での吹き出しにおける翼背側のフィルム冷却効率分布

14

qtu --

図5.2. 9

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Locatlon of Film Cooling Holes; Leadlng Edge (PS Slde)

1:出iElm…0.7

『ーベ吾トー AlrTurblne Test M=O.60

一一五〉一一 AlrTurblne Test M=1.00

0.6 ‘ ... r

ω ω @

巴@ 〉-S0.H :a: 凶

tn g

。。o E 比

0.1

0.5

0.3

0.2

100 75 50 25 o

Non-dimensional Distance from Film Cooling Hole x1d

翼前縁(LE)での吹き出しにおける翼腹側のフィルム冷却効率分布

=主こb・DCascade Test --{ト一一 IM=O.596

一-(!ト AirTurbine Test M=O.60

J

図5.2.10

0.7

0.6

0.4

0.5

0.3

句回-

r

ωω@C@三百

aEos-oooE一正

/か

〆M/ロ

0.2

0.1 .

75 50 25

Non-dimensional Distance from Film Cooling Hole x1d

翼背側 (SS)での吹き出しにおけるフィルム冷却効率分布

つ臼円

δ1i

図5.2. 11

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フィルム冷却効率を測定の位置より吹き出し,翼腹側のフィルム冷却孔 (PS1)

回転動翼面上で測定されたデータは 2点と少ない。した結果を図5.2.12に示す。

吸引主流中のダス卜が慣性衝突で付着し,これは動翼の翼腹側の面においては,

あるいは吸3回測定出来なかったもの,タップをプラギングさせたためであり,

引量が少なくデータのバラツキが大きいものは削除したために測定点は 2点とな

翼背側のフィルム図 5.2.10より回転動翼の翼腹側のフィルム冷却効率は,

冷却効率に比べて非常に低いことが明らかである。

っ fこ。

二次元低速静止翼列実験におけるフィルム冷却効率との比較(2)

強度上回転する動翼面上におけるフィルム冷却効率を詳細に測定することは,

回転するそこで,の制約から静圧タップの数が限られているために困難である。

二次元の低速翼列風洞で詳細なフィルム冷動翼の50見断面の拡大模型を用いて,

本二次元低速翼列実験に用いた翼と回なお,却効率を測定する実験を実施した。

表 5.緒元等は表 5.2. 1 , 転動翼の50%断面形状は前述したごとく相似であるが,

2. 2に示している。

Locatlon 01 Fllm Coollng Holes; Leadlng Edge (555Ide)

二主二b・oCascade Test --{子一一 IM=O.992

0.7

一~盲トー AlrTurblne Test M=1.02

、0.6

o.叫

0.1

0.5

0.3

0.2

-F

倒的

@E@2Hωω一む凶

05-。。oE-E

75 25 50

NorトdimensionalDistance from Film Cooling Hole xld

翼腹側 (PS1)での吹き出しにおけるフィルム冷却効率分布

円毛U円。

図5.2.12

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翼前縁のフィルム冷却孔 (LE)より吹き出した場合の翼背側,翼腹側のフィルム

冷却効率測定結果を回転動翼面上での測定結果と比較して図5.2.9. 図5.2.10中

に示す。静止翼列と回転翼列とでは,一致する質量流束比Mの測定データが無い

ため.Mの近くの値の測定結果を比較した。図 5.2. 9に示したごとく翼背側では,

最もフィルム冷却効率の高いと予測されるフィルム冷却孔位置がよどみ点より 300

のところにあけられたフィルム冷却孔の下流を回転動翼では測定しているが,回

転動翼の翼背側のフィルム冷却効率は,二次元低速翼列で測定したフィルム冷却

効率と非常によく一致していることが明らかになった。このことは,回転動翼の

翼背側の平均フィルム冷却効率は第 3章の二次元低速翼列の実験で明らかにした

フィルム冷却効率を推定する実験式 (3. 2.10を用いて回転効果に相当する修正

係数を掛けることによって推定可能であることを示している。

一方,翼腹側では図 5.2.10より明らかなごとく同ーの測定を行っているが,傾

向が一致しない。これは,翼腹側では回転動翼面上のフィルム冷却空気は,翼の

先端の方向に流される傾向にあり [21 フィルム冷却孔の下流を直線上に測定を

行ってもフィルム冷却効率の最高点がずれるためである。しかし翼腹側は凹面上

の境界層の不安定性によって主流とフィルム空気の混合が促進されるために,吹

き出し孔近傍を除き平均的なフィルム冷却効率になると考えられ, この点から回

転動翼の翼前縁のフィルム冷却孔 (LE)より吹き出した場合のの翼腹側面上での測

定データと静止系で測定した値を比較すると,回転動翼面上の方がはるかに急激

にフィルム冷却効率が低下していることが図5.2.10よりわかる。これは,静翼の

ノズルウェークによる非定常流の効果が影響していると考えられる。

翼背側のフィルム冷却孔 (SS)より吹き出した場合の翼背側のフィルム冷却効率

の測定結果を回転動翼面上での結果と比較して,図5.2.11中に示した。静止翼列

では,フィルム冷却孔の下流の 3列,すなわち,冷却孔と冷却孔間の下流方向お

よびそれらの中間のフィルム冷却効率を測定した。一方,回転動翼ではフィルム

冷却孔聞を下流方向に測定しているために,フィルム冷却効率の最小値の箇所

を測定していることになる。図 5.2.11に示す静止翼列と回転動翼の値を比較する

と,フィルム冷却空気の吹き出し点から x/ d =. 45までの両者のフィルム冷却効

率は非常に良く一致していることがわかる。しかし. x / d =. 45より下流側で

-134-

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は,回転動翼面上のフィルム冷却効率は静止系のそれに比較して約30見低くなっ

ている。このフィルム冷却効率の低くなる領域は,フィルム冷却孔からの吹き出

しが広がり,二次元性を有する領域である。

図5.2. 11中に示した静止翼列実験の 3ヶ所の点で測定したフィルム冷却効率は

きわだったフィルム冷却効率の違いを示している。すなわち,翼背側ではフィル

ム冷却空気は翼面に付着して,翼高さ方向の混合が小さいことを意味している。

そしてフィルム冷却孔から下流方向に x/d毎日までは,フィルム冷却の三次元

性が残っており, x / d >45においては,横方向に広がって来た噴流が合体し,

二次元性のあるフィルムへと変化していると考えられる。

翼腹側のフィルム冷却孔(PSl)より吹き出した場合の翼腹側のフィルム冷却効

率の測定結果を回転動翼面上の 2ヶ所の点で測定したフィルム冷却効率と比較し

て図5.3.12中に示す。翼腹側の二次元低速翼列実験においては翼背側と同じよう

に 3ケ所のフィルム冷却孔下流の線上でのフィルム冷却効率を測定した。図5.2.

12より明らかなごとく,翼腹側のフィルム冷却効率は,翼背側のそれとは相違

して,フィルム冷却孔の下流直下より三ケ所の測定値がほぼ同じ値を示す。この

原因は凹面上に吹き出されたフィルム冷却空気は,凹面上に発達した境界層の不

安定性に基づき乱流混合が促進されるために,あるいは凹面上のゲルトラー渦に

よる混合促進の効果のためと考えられる。また,フィルム冷却効率の値は翼背側

に比較して低く,かっ,下流方向に急激に減少している。回転動翼面上のフィル

ム冷却効率の測定点が 2点であるために,全体の傾向は議論できないが,翼腹側

ではフィルム冷却空気は 1ピッチにわたって良く混合していると考えると,この

2点の測定値は平均フィルム冷却効率の値に近いと考えても問題はない。そこで

回転勤翼のフィルム冷却効率を静止系の平均フィルム冷却効率と比較すると図 5.

2.12より約20--25月低自の値を示していることが明らかになった。第 3章 3.2節

で静翼のノズルウェークの非定常流の影響等を明らかにしたが,回転動翼の腹側

におけるフィルム冷却は,回転の影響を受け易いことがこの実験結果に現れてい

る可能性がある。

-135一

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(3) フィルム冷却の重ね合せに関する検討

回転する動翼の翼背側のフィルム冷却効率の測定結果を用いてフィルム冷却効

率の重ね合せが成り立つか否かを検討した。翼背側でのフィルム冷却効率の重ね

合せの可否を調べる目的で, (LE)および (SS)からそれぞれ単独にフィルム冷却空

気を吹き出した場合と,同時に吹き出した場合のフィルム冷却効率の測定した結

果を図5.2.14に示す。 2列のフィルム冷却孔からの吹き出しに関してフィルム冷

却効率を重ね合せた状態のフィルム冷却効率は,次式より求める [5]

η=η1 +η2 (1一η1) (5. 2. 2)

フィルム冷却効率の重ね合せは,上流側のフィルム冷却孔から吹き出した冷却

空気が下流側のフィルム冷却の主流として作用する考え方である。図5.2.13にフ

ィルム冷却効率の重ね合せの概念図を示す。

第 l列目のフィルム冷却孔列による

フィルム冷却効率を ηl とすると,

η -t-

u

f

-

a

T一T

∞一∞

T一T

(5. 2. 3)

第 2列目のフィルム冷却孔列による

フィルム冷却効率を η2 とすると重

ね合せが成り立っと仮定することに

より,

図5.2.13 フィルム冷却効率の重ね合せの概念図

η2 一2

-

f

-

a

T一T

I--

f

-

f

T一T

(5. 2. 4)

で表される。

第 l列目と第 2列目のフィルム冷却孔から同時にフィルム冷却空気を吹き出した

場合のフィルム冷却効率は次式で定義され,この式に式 (5.2.3),式 (5.2. 4) を代

入すると式 (5.2. 2) を得る。

nhu

J噌・E4

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(5. 2. 5) 2

-

o

,z-a

T

一T一一一∞

一∞

T

一T一一拘吋

+η2 ( 1 -η1 ) =η1

測定値と式 (5.2. 2) 図5.2.14中に式 (5.2. 2)より求めた値を記入しているが,

フィルム冷却孔 (SS)の吹き出し孔近傍では両者はーより求めた値を比較すると,

三次元性の強この理由はフィルム冷却孔 (SS)の吹き出し孔近傍では,致しない。

二次元境界層的流れが始まる点 (x/い流れが生じているためと考えられるが,

フィルム冷却両者は良く一致しており,より下流では,x / d =. O. 6 ) S =. 45,

効率の重ね合せが成立していると考えられる。

N=6260

π=1.906

Symboll Film Cooling

I LE on Suction Side ー-0-ー 1-(M';'O~6)

SS (M=O.6) ーー込ーー

LE on Suction Side 一仁ト (M=O.6)+

SS (M=O.6)

(

ρ〈へ¥、ji ?行ηr¥"¥、/打!¥

lf:

i k --也、

L斗

81 8 υiυ ><1 0 υlυ

~

0.2

0.1

叫切削

WCω〉

ZU申』』凶

mwc

一一ooUEZ比

国-.--Eq. (5.2.2)

1.0 TE

0.5 I'ss LE

x/s

回転動翼面上でのフィルム冷却効率の重ね合せ

tqd

1i

Distance

図5.2.14

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5.5 結論

空気タービンと低速翼列風洞実験に相似な動翼モデルを用いてフィルム冷却実

験を実施し,下記の結論を得た。

。回転動翼面上翼背側のフィルム冷却効率は,静止翼列のそれと非常に良く一

致する。しかし x/ d =. 45より下流のフィルム冷却膜が二次元性を持つ部分で

は,回転動翼面上のフィルム冷却効率は静止系に比べて約30児低い。

。回転動翼面上の翼背側のフィルム冷却効率は,式 (3.2.10に修正係数を掛

けることによって求めることができる。

。回転動翼面上の翼前縁からの吹き出した場合の翼前縁のフィルム冷却効率は,

静止翼列のそれと良く一致する。

。回転動翼面上の翼腹側のフィルム冷却は,回転の効果により,その効率は静

止系に比べて20"'-'25月低目である。また,効率の減衰率は静止系に比べて大き

きい。

。フィルム冷却効率の重ね合せは,フィルム冷却孔近傍の三次元性の強い流れ

部では成立せず,下流の二次元境界層的流れの部分で成立する。

-138-

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第5章の文献

[1J Dring. R. P.. Blair. M. F.. and Joslyn. H. D.. “An Experimental Investi-

gation of Film Cooling on a Turbine Rotor Blade." Trans. ASME Journ-

al of Engineering for Power. Vol.102. PP.80-87. 1980.

[2J Dring. R. P.. Blair. M. F.. and Joslyn. H. 0.. “Research on Centrifugal

Effects on Turbine Ro10r Blade Film Cooling." AFAPL-TR-78-63. 1978.

[3J 110. S.. Goldstein. R. J.. and Eckert. E. R. G.. “Film Cooling of a Gas

Turbine Blade." Trans. ASME Journal of Engineering for Power. Vol.100.

pp. 476-481. 1978.

[4J Takeishi, K.. Aoki, S.. Sato. T.. and Ma1suura. M.. “Film Cooling on

a Gas Turbine Ro1or Blade.. Trans. ASME Journal of Turbomachinery.

Vo l. 114. pp.828-834. 1992.

[5J Muska. J.F.. Fish. R.W.. and Suo. M.. “The Additive Nature of Film

Cooling from Rows of Holes." Trans. ASME Journal of Engineering for

Power. Vol. 98. PP.457-467. 1976.

-139-

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第 6章 フィルム冷却翼のメタル温度の検証

6. 1 まえがき

コンバインドプラントの主機としてガスタービンをベースロード運用すること

が始まって以来,燃焼器,タービン翼といった高温部品は,非常に長時間の使用

に耐える必要が生じた。このガスタービンのタービン冷却翼は小型ではある

が,空力,伝熱,振動,材料,強度,コーティング等の要素が複雑に関連した部

品であり,このために冷却翼を最適設計するには,要素技術の全分野にわたる調

整が必要である。

航空エンジンあるいは小型エンジンのタービン冷却翼を新しく開発する場合,

従来用いていた冷却翼をベースに相似設計し,タービン入口温度の上昇に相当す

る冷却を強化するという方法がとられて来たが,大型産業用ガスタービンの場合

第 l章の図1.2. 1に示すごとく,タービン入口温度の上昇は新しい機種ごとに

1500C "-'200 oC上昇しているために,これに対応して全く新しいコンセプトを導

入して冷却翼を設計し,開発した冷却翼の性能を検証する必要があった。しかし

この場合モデルを製作し,実験的に冷却性能を確かめてその結果に基づいて改良

を繰り返す開発方法は,組織的でなく非効率的である。そこで,冷却設計を例に

取り上げれば,実機を模擬した要素実験によって伝熱データを得て,これを用い

て冷却翼を設計する解析コードを構築し,このコードを用いて冷却翼を設計する

システムが効率的である。このシステムを用いて設計される冷却翼は,実機と同

じガス温度の条件下でその冷却性能が評価され,最終的にはエンジンの運転状態

で冷却性能が確かめられる。この過程を模擬的にフローチャートで図6.1. 1に示

す。

本章では.第 2章から第 5章にわたって実施したフィルム冷却に関する研究成

果を用いて開発したフィルム冷却静動翼の冷却性能の検証実験について述べ,メ

-140-

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タル温度の推定精度への伝熱実験の寄与を考察する。さらにフィルム冷却翼の開

発を,より組織的に行い,またメタル温度の推定精度を向上させることが出来る

ガスタービン冷却翼の開発システムについて述べ,信頼性の向上策を検討する。

⑤ Field Tests

性)High Temperature - 0eveloplng Units

③ Hot Cascade Tests

(2) Air Cooled Turbine Vanes and Blades Design

① Fundamental Heat Transfer Tests

図6.1. 1 冷却翼の開発および検証過程

-141-

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6.2 タービン翼のメタル温度の検証

6.2. 1 翼列実験における熱的相似性の考察

高温翼列実験あるいは回転高温タービン実験において,設計した冷却翼の冷却

性能を確認する場合の実験条件の相似性について検討する。

実験に用いるモデルは実機のタービン冷却翼と,冷却構造,翼型等について完

全に相似である必要がある。モデルと実機の翼のスケール比を σとすると,実機

の運転条件と翼列実験条件とで異なるパラメータは,流体の温度,圧力,主流レ

イノルズ数(主流マッハ数は,翼列の圧力比 πを合せると一致する)である。

異った条件下で翼列実験を実施し,翼列実験で得られた冷却効率に基づき実機

の冷却翼の冷却性能を評価する方法がとられている。まず内部対流冷却翼の冷却

効率について検討する。高温ガスタービン用の冷却翼は,熱応力を低減するため

に薄肉化の傾向にあり,翼のメタル温度を平均温度TMで代表させることが出来

る場合には翼の厚さ方向の熱流束のバランスから次式が成り立つ。

q=h∞( T∞-TM) =ha ( TM -Ta) (6. 3. 1)

冷却効率 ηを次式で定義する。

M

一a

T一T

∞一∞

T一T一一η

(6. 3. 2)

式 (6.3. 2 )に式 (6.3. 1 )を代入して整理すると冷却効率 ηは次式で表され

る。

η=

+

(6. 3. 3)

翼列実験に関しても式 (6.3. 3)と同じ式が成り立つ。翼列実験における値に'

を付けて区別する。

1 +

式 (6.3.3),式 (6.3. 4)より

η (6.3.4)

-142-

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η= C

_1, -1+C η

ここで, C= ~二江主h. h. '

(6. 3. 5)

(6. 3. 6)

翼列実験により η' を測定し,熱的条件の違いである Cを補正すれば式 (6.3.

5)より実機の ηが求められる。 Cの補正に関しては,実機および翼列実験が同じ

熱伝達率式で表わされると仮定すれば, Cは物性値とスケール比 σの関数として

求まる。

翼外面の熱伝達率式が h If は Re~ ・ P~ • A/xで与えられる場合,

(6. 3. 7)

となる。同様の式が冷却側についても成立する。

つぎにフィルム冷却を行っている静翼に関しては,形状が相似でかっ空力的条

件が相似な場合,次の無次元量を合す必要がある。

質量流束比 M=ρ. U a

ρ∞ U ∞

また,回転している動翼であればさらに次式を合す必要がある。

回転パラメータ

(6. 3. 8)

(6. 3. 9)

冷却空気流量G.の主流流量G∞に対する比をゆ =G./G∞,ガス側の流路

面積をAIf. フィルム冷却孔の孔面積をA.とすると,

一也二三一位二Mφ

(6.3. 10)

(6.3.10

静翼では翼列実験と実機のフィルム冷却の質量流速比Mを一致させるために

は,式 (6.3.11)より空気流量比を同じにする必要がある。

-143ー

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一方回転している動翼では,空力的に相似条件を満せば,式 (6.3. 9 )より

一ξ二一 U a

~ Ua (6.3. 12)

が成り立ち,この式より翼面上のフィルム冷却空気の吹き出し流速比を合す必要

がある。

6.2.2 タービン第 1段静翼のメタル温度

(1)実験装置と供試体

産業用ガスタービンに用いられるフィルム冷却翼のメタル温度解析精度を検証

するために,実機エンジン相当の条件下で高温翼列実験を実施した。高温翼列実

験に用いた実験装置は,出力25MWのMW-252型ガスタービン駆動の圧縮機を空気源

とした実機と相当の条件下で燃焼器あるいは冷却翼が実験可能な実圧燃焼実験装

A.

一「

届L・-..wl¥l ..ラ:;'1ーコ;.il副lLJEL ー」

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トヲ-r-'

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;恥おinと一仙加旬'

,.tlturt cor柑oIV.'岬

図6.2. 1 ガスタービン実験設備運転系統図

-144-

CY.'l'

''-Co' ‘v e

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置である。実圧燃焼実験装置の系統図を図6.2.1に,装置の断面図を図6.2.2に,

また装置の仕様を表6.2.1に示す [51 。

まず,フィルム冷却を用いていない内部対流冷却構造の5018型ガスタービンの

第 l段静翼のメタル温度を実機相当の条件下で実圧燃焼実験装置を用いて,測定

した[日]。実験に用いた5018型ガスタービンの第 l段静翼の冷却構造を図 6.2. 3

に示す。 5018型ガスタービンの第 l段静翼の冷却構造には内部対流冷却を採用し

ており,翼前縁および翼背側の前縁に近い部分をインピンジメント冷却し,他は

翼内面壁とインサートの聞に冷却空気を流す単純な対流冷却を採用している。

5018型ガスタービンの第 1段静翼にはフィルム冷却を採用していないため,ター

ビン翼のメタル温度はガス温度 Tg.冷却空気温度 Ta.ガス側熱伝達率 hι および

5ず 押 用

4危

""'"ι

一ー.・...一一..一一句・ ー 一..-.-,-;.-

. .

図6.2. 2 実圧燃焼実験装置

表6.2. 1 実圧燃焼実験装置仕様

Flow Rate 50kg/ s

Maximum Pressure 15kg/ cnf G

Combustor Exit Temperature 15000C

Fhu

a44

'i

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冷却側熱伝達率 hllのパラメータで決まる。このため,フィルム冷却を採用した

タービン翼に比べればメタル温度の精度が容易に検証可能である。

つぎに,フィルム冷却を行なっている5010型ガスタービンの第 1段静翼を用い

て同様の実機条件における高温翼列実験を実施した [7]。実験に用いた5010型ガ

スタービンの第 1段静翼の冷却構造を図6.2.4に示す。 5010型ガスタービンの第

l段静翼の冷却構造には二つのインサートによるインピンジメント冷却,翼背側

の前縁に近いところに l列からなるフィルム冷却孔が 2箇所,また翼腹側では後

縁側に l列からなるフィルム冷却孔が 2箇所,そして後縁にピンフィンを採用し

ている。

高温翼列実験における翼列の構成は501B型ガスタービンの第 1段静翼の場合も

501D型のそれも同じであるので501D型の第 1段静翼の場合について説明する。

501D型ガスタービンの第 l段静翼 5枚をセクター状に配置し, 4通路からなる翼

列を構成した。この翼列の中央の翼でメタル温度を測定し,メタル温度測定翼を

はさむ 2枚の翼で翼面上の静庄分布を測定して,翼面の速度分布を求めている。

翼のメタル温度は,翼内部に取り付けた K型シース熱電対で測定した。測定に用

いた熱電対は翼表面に放電加工で溝をあけて,この構に熱電対をスポット溶接で

取り付けた後,翼材とほぼ熱伝導率が等しいニッケルをベースとした材料をプラ

ズマコーテイングしその後翼型に研磨することによって取り付けた。タービン翼

の材料はコバルトをベースにした材料で熱伝導率が12W/m • K程度と低いため

に,熱伝導率の高い銀ロウ付等でシース型熱電対を翼面に埋め込むと,測定され

たメタル温度は大きな誤差を伴うこととなる。熱電対を埋め込む材料の熱伝導率

がメタル温度の測定誤差へおよぼす影響を解析した結果を図 6.2.5に示す。図 6.

2. 5より,冷却翼の典型的な熱的境界条件において,銀ロウ付等の熱伝導率の高

い材料で取り付けると 140

C高めの温度を示し,反対に熱伝導率の低いセラミック

ス材料で取り付けると 160C低自の温度を示すことがわかる。

メタル温度を測定する供試翼の主流ガス温度は,翼前方 230mmの位置に取り付

けた全温管で高さ方向に 5点測定した。供試翼への熱電対の取り付け状況および

翼列の写真を図 6.2. 6 ,図 6.2.7に示す。

-146-

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Isolation Ring

Impingem・ntCooling

=主〉 A

Maln Hot Gas

Coollng Alr

Section A-A

図 6.2. 3 501 B型ガスタービン第 1段静翼の冷却構造

• o 0 • • o • • • J~ll • • Gas Flow Q • • • • Front I nsert

Rear Insert Pin Fin Cooling 、

図6.2.4 5010型ガスタービン第 1段静翼の冷却構造

-147-

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hg=2326W/m2K Coating Material

Eε守

Metal

( AM =23.26W/mK)

Thermocouple ( o 1.0) rChromal・Alumal",

¥Inconel Sheath )

Ta=5000C

Temperature Distribution

Gas Surface Coating Material

Silver Soldering

(Ag70%+Cu30%)

( A =314W/mK)

~TE附=+14.1 0C

Junction Cooling Surface Gas Surface

一一-740 Coating Material

i¥(A=5川 mK)

\~TE問団・15.50C

|¥Junction

e

c

aM 吋

euc

S陥

gM

Ma

os

oa

C

G

Plasma Spray Goating

(Ni80%+AI20%) ~ 7ω 、

740 ¥

i竺¥720

¥ 、7ω

680 -660

Cooling Surface

図6.2. 5 熱電対埋め込み材料のメタル温度測定誤差への影響

-148ー

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""...圃---

r F

図6.2. 6 メタル温度測定翼の熱電対の取付状況

(501D型ガスタービン第 1段静翼)

J J

r e

図6.2. 7 高温翼列実験用 50 1 D型ガスタービン第 1段静翼列

一149-

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(2) 実験結果および考察

まず内部対流冷却翼である 501B型ガスタービンの第 1段静翼の高温翼列実験条

件を表 6.2. 2に示す。メタル温度測定翼をはさむ 2枚の翼で翼面の静圧分布を測

定した。その静庄 Ps と翼前方 230mmのところに取り付けた全圧管で測定した全

圧Ptより, u=v'2 g (Pt-Ps) /γ から翼面上の境界層外縁の速度分布 U

を求めた。その結果を図 6.2. 8に示す。同図中には,タービン設計システムTDSYS

[2] [3] [4] により解析した翼面の速度分布を併記したが, + 10%の誤差で良く一

致していると考えられる。この速度分布に基づいて翼面の境界層解析を実施し,

翼まわりの熱伝達率分布を求めた。 501B型ガスタービンの実機相当の圧力および

タービン入口温度条件下で測定した50%高さのメタル温度分布を図 6.2. 9に示す。

501B型ガスタービンの第 l段静翼の冷却構造は,図 6.2. 3に示したごとく単純な

対流冷却から成り立っているので,内部を流れる冷却空気の配分は各部の冷却通

路寸法に基づくフローネットワークを解くことによりインピンジメント冷却およ

び対流冷却部の冷却空気量を求めた。この冷却空気量と冷却構造の寸法より翼内

面の冷却面の熱伝達率を求め,さらにエネルギーバランスを解くことにより冷却

空気の温度上昇量を求めた。以上の一連の解析は,タービン翼のメタル温度を解

析するTACOOLコードによりくり返し収れん計算を実施した。以上の方法で求めた

メタル温度の測定値と解析値を比較して図 6.2. 9に示す。

表 6.2. 2 501 B型ガスタービン第 1段静翼翼列実験条件

Average Gas Temperature

Flow Rate (per one vane)

Inlet Gas Pressure

Exit Gas Pressure

Pressure Ratio

Cooling Air Temperature

1022 oc 4.92 kg /s

10.44 ata

6.56 ata

1. 59 (一)

288 oc

nHu

phU

4EEム

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精内部対流冷却翼の場合TACOOLコードによってメタル温度が,図 6.2. 9より,

この図において解析値と測定値の不一致度良く推定できることが明らかである。

測定値の箇所を検討するとまず翼前縁に近い翼背側の x/ s =< O. 1においては,

これは乱流選移点が実験状態では前縁より後ろにず

また翼背腹面の後縁近傍の x/ s =< 0.75付近れているためであると推定される。

1.5

メタル温度が低目であるが,

1.0 zu@コ、コ

とち。一

ω〉一ωco一ωcωE一万coz

0.5

e 一一一 Analysis

Experiment 0・①

1.0 0.5

Nondimensional Distance X/Cx

501 B型ガスタービン第 1段静翼翼面速度分布測定結果

EA

Fhu

E4

図6.2.8

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のメタル温度が解析値に比較して低い理由は,この部分は図 6.2.3に示した5018

型ガスタービンの第 l段静翼の後縁のスロットの入口付近に相当し,後縁のスロ

ット入口近傍の管内流の発達領域の熱伝達率が高いためと考えられる。

内部対流冷却構造を持つ5018型第 l段静翼の高温翼列実験により,メタル温度

解析コードTACOOLの精度が確かめられたので,つぎにフィルム冷却を採用したタ

ービン静翼のメタル温度の精度を検証するために501D型ガスタービンの第 l段静

翼の高温翼列実験を実施した。この501D型の第 l段静翼の高温翼列の実験条件を

表 6.2.3に示すが,翼列平均入口ガス温度Tg= 11540C. 冷却空気温度Ta = 374

℃の実機運転条件相当下で翼高さ 50%断面における翼厚さの中央で熱電対によっ

てメタル温度を測定した結果を図 6.2.10に示す。なお,実験条件における状態量

を用いてTACOOLコードによって翼メタル温度を解析した結果を図 6.2.10に併記し

た [7] 。図 6.2.10よりメタル温度の測定値と解析値との誤差は最大約500Cである

900 ,旬、O 0

2

← ω ‘田コ豆 800① 0. E O ト

;c

r」

o

q

a

u

nLau

2

1

=

一一門UM

角田

一TT

O

o Experiment ー_.Average Metal Temperture

600

Pressur Side

X!,ンァー可、s

x、丸二、、、‘ s \、~u

Suction Side

1.0

(TE)

0.5

xJs 0.0

(LE)

0.5

xJs 1.0

(TE)

図6.2. 9 501 B型ガスタービンの第 1段静翼のメタル温度測定値と解析値の比較

LFhd

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表 6.2. 3 5 0 1 D型ガスタービンの第 1段静翼実験条件

Average Gas Temperature Flow Rate (per one vane) Inlet Gas Pressure Exit Gas Pressure Pressure Ratio Cooling Air Temperature

1154 oc 6.39 kg / s 12.74 ata 8.50 ata 1. 47 (一)374 oc

ことがわかる。この誤差の原因を検討するとまず翼前縁近傍の背側(図 6.2.10の

①の部分)では,測定されたメタル温度は,解析値よりも約400C高い。この原因

はおそらく,前縁を冷却したインピンジメント冷却空気が翼背側にあけられたフ

ィルム冷却孔より主流に放出するまでに翼内面とインサートの狭いすきまを流れ

る聞に翼背側のインピンジメント冷却の熱伝達率をクロスフロー効果で低下させ

るが,その効果が伝熱実験で予想している値より翼列実験では大きいためである

と考えられる。次に背側のフィルム冷却孔の近傍(図 6.2.10の⑪部分)では逆に

メタル温度の測定値は解析値に比べ約500

C低目となっている。この部分にはフィ

ルム冷却孔が存在する位置で,メタル温度の測定値が低い理由は,フィルム冷却

孔の側壁の助走区間の高い熱伝達率を解析では考慮していないためである。以上

のごとくフィルム冷却を実施したタービン第 1段静翼において,実機条件下での

翼列実験結果において一部測定値と解析値が異なる箇所が存在するが,全体的な

メタル温度分布の傾向は両者非常に良く一致している。ガスタービンのタービン

静翼のメタル温度を解析するTACOOL解析コードは,フィルム冷却効率を始めとす

る種々の冷却翼を構成する伝熱データで構成して作成したコードであるがさらに

不一致箇所を改良することによりメタル温度は推定精度:t250Cと考えられる。

円べU

Fhu

BA

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ーーー Calculated by TACOOL

---Average Metal Temperture

o Experiment

900

Tg = 11540C

Tc = 3740C

¥、Co∞o州|

700

(Oo)巴コ古』ωaE@↑-502 Suction Surface Pressur Surface

1.0

(TE)

0.5

xJs 0.0

(LE)

0.5

xJs 1.0

(TE)

5010型ガスタービンの第 1段静翼のメタル温度測定値と解析値の比較

aq

phd

図 6.2.10

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6. 2. 3 タービン第 1段動翼のメタル温度

(1) 実験装置と供試翼

まずタービン静翼の場合と同様にメタル温度への影響パラメータの少ない内部

対流冷却翼を用いてタービン動翼のメタル温度の推定精度の検証を行なった。高

温翼列実験に用いた対流冷却の構造をもっMF-111型ガスタービンのタービン第 l

段動翼の冷却構造を図 6.2.11に示す。またこの動翼のメタル温度を測定するため

に用いた高温翼列実験装置の構成を図 6.2.12に,また翼列の外観を図 6.2.13に示

す。

MF-111型ガスタービンの第 1段動翼の冷却構造は二通路のサーペンタイン流路

からなりたっている。このMP-111型第 l段動翼 5枚を供試翼として用い,翼高さ

50%における流入角,流出角を実機と合せ翼列を構成した。図 6.2. 2に示すごと

く翼列に高温ガスを供給する燃焼器の下流には計測ダクトを設けてガス温度を測

定し,その下流に翼列を取り付けている。

t

Serpentine Flow Passage

Turbulence Promoter

、'u 'u

Cooling Air

図 6.2. 11 MF-111型ガスタービンの第 1段動翼の冷却構造

Fhd

Fhd

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Combustor

Total Temp. Probe

View Window

図 6.2.12 高温翼列実験の構成

図 6.2. 13M F -1 1 1型ガスタービンの第 1段動翼の翼列の構成

hu

Fhu

--よ

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MF-111型ガスタービンの第 l段動翼を用いた 5枚の供試翼列の,中央の翼に K

型熱電対を取り付けてメタル温度を測定した。メタル温度の測定に用いた熱電対

は, この翼面に放電加工で溝をあけ,その溝に外径 O.5ゅのインコネル被覆シー

ス熱電対を取り付け,ニッケル・アルミ材をプラズマコーテイングし,その後翼

型に研磨することによって取り付けた。この中央のメタル温度計測翼をはさむ両

側の翼には翼面に静圧タップを設け,実験状態での翼面の静圧分布を測定した。

ダクトでのガス温度の分布の測定には,新しく開発した放射誤差が小さく I 1400

℃までの高温ガス温度を精度良く測定できるセラミックス全温管を用いた。この

セラミックス全温管の全体図と構成部品を図 6.2.14に示す [810

区コ ロ3

臨時17 1 図 6.2.14 セラミックス全温管

tf

「「u

EE4

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セラミックス全温管は,温度測定用の熱電対として白金シースの白金・白金ロ

ジウム熱電対,サポート材料として高温強度に秀れた炭化珪素を用い,熱電対回

りの放射シールドおよび熱電対のサポートには放射率が約 O.2と低くかっ熱伝導

率の低いアルミナから構成されている。このセラミックス全温管は,高温強度に

秀れる無冷却のサポートと放射シールドにより,ガス温度を 14000C程度まで精度

良く測定することができる。このセラミックス全温管の温度測定精度を検定した。

10000Cを越えるガス温度を測定する全温管の高温における精度を検定すること

は困難であるが,全温管で測定するガス温度は冷却翼の冷却性能を評価する基準

として重要な値であるために,均一な温度分布を持つ高温風洞中で, 5層放射シ

ールドを施した基準温度計の測定値と相対比較することによって,セラミックス

全温管の温度測定精度を検定した O なお温度測定の基準として用いた 5層放射シ

ールド温度計の構造を図 6.2.15に示す。

実験に先立ち温度測定の基準として用いた多層放射シールド温度計の放射シー

ルドの効果を検討した。大気圧条件下で,多層放射シールド温度計のまわりを取

り囲む壁の温度を Tw.流速 U g. ガス温度 Tg と仮定して,放射シールドの層数を

パラメータに多層放射シールドした温度計の示度を解析した結果を図 6.2.16に示

す。 [8] 図 6.2.16より,高温風洞の壁温度を主流温度に近づけて放射シールドを

5層以上行なうと,ガス温度の測定誤差は100C以下となり高温ガスを測定する基

準の温度計として用いることが出来る考えられる。

以上より 5層の放射シールドを施した基準温度計を製作し,基準温度計とセラ

ミックス全温管を高温風洞に取り付けて,ガス温度の精度検定を実施している状

況を図 6.2.17に示す。以上の方法で,セラミックス全温管のガス温度の測定精度

を検定した結果を図 6.2.18に示す。図 6.2.18より,セラミックス全温管は,温度

測定精度の高いプロープであると言える。

-158-

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1200

σ1100

E

i ト

s 1000

。。

o B

Refrac町 y MaterIal

φ1.6 Thermocouple

図 6.2. 15 5層放射シールド温度計

Real Ges Temp・ra!ur・

CASfl CASE2 ICASEJ I

Tg [・C] 1200 12∞ 1200

Tw [.C] 脱却 1150 8∞ Ug [mls] 20 20 120

E 0.7 0.7 0.7

Symbol .... ・'ー 一 一一一

3 4 6

Number of Radiation Shleld Foils n [ -)

図6.2. 16 放射シールドの効果

-159-

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Total Temperature Probe

Insulation

↑Thermocouple

Material

JIS C-1 (A1203 50%, Si 43%, Fe2031%)

5 Layer Radiation Shield Gas T emperature Probe

セラミックス全温管の検定状況

¥ Ceramics Total be | |

Temperature Pro #5 。#4 マ#3 ロ#2 A #1 。

図 6.2.17

1400

1200

1000

800

600

400

{Oo]

目。↑020』乱。』

2goaEOトω岡山匂百一

ω一工のCOZEヨwE

hOKAMW」的

hD刀

ω』コω

旬。222EoaEφト

ω

旬。

1400

Gas Temperature Measured by Total Temperature Probe T 9 [oC]

1200 1000 800 600 400 200

200

セラミックス全温管の検定結果

-160一

図 6.2.18

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同次にフィルム冷却を行っている 501F型ガスタ ー ビンの第 l段動翼について,

様の高温翼列実験を実施した。 50lF型ガスタ ー ビンの第 l段動翼の冷却構造は,

翼背側お翼前縁,図 L3. 6に示すごとく 3通路のサーペンタイン流路からなり,

よび翼腹側の前縁近傍と後縁近傍にフィルム冷却孔を設けている。高温翼列実験

流出角およびガス温度を実機と相似になるよう装置の50%高さにおける流入角,

翼列を構成して実験した。501P型第 l段動翼のメタル温度測定翼に熱電対を

また高温翼列実験用の翼構成を図 6.2.20に示取り付けた状況を写真図 6.2. 19に,

す。

501 F型ガスタービンの第 1段動翼高温翼列実験用供試翼への熱電対取り付け状況

-aEム

nhu

唱EEム

図 6.2.19

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以上は静止系でタービン動翼のメタル温度を確認した方法であるが,動翼は回転

しているために,最終的には回転した状態でのメタル温度の検証が必要である 。 こ

の目的のために,高温回転タービン実験装置があるが, この装置は実機タービン翼

の縮小相似モデル翼を用いて実機と相似な条件下でタ ー ビン動翼の冷却性能を検証

するものである 。 この高温回転タービン実験装置の断面図を図 6.2.21に示す。また

高温回転タービン実験に用いた動翼へのメタル温度測定用の熱電対の取り付けとタ

ー ビンディスク面上のワイヤリングの状況を図 6.2.22に,実験装置全体の写真を図

6. 2.23に示す。

以上の過程を踏んで開発されたタービン動翼は,最終的に実エンジンの定格負荷

運転の状態でメタル温度を測定し冷却設計の目標値を満すか否かを確めたo

三菱重工業(樹高砂製作所の構内にあるエンジンの工場実負荷試験設備は,発電機

で発生した電力を水抵抗器に全て吸収することによってエンジンの最大負荷条件下

での試験が可能な設備である 。工場実負荷試験設備の系統図を図 6.2.24に示す [510

図 6.2.20 5 0 1 F型ガスタービンの第 1段動翼高温翼列実験用翼列

円乙円

hU

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図 6.2.21 高温タービン実験装置

Ni Foil Spot Welded

図 6.2.22 タービン動翼への熱電対の取り付けおよびワイヤリング

円べ

unhu

咽lよ

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図 6.2.23

図6.2.24

高温タービン実験装置外観

実負荷試験設備系統図

-164-

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'-タービン入口温度13500C級の501F型ガスタ ービ ンの断面図を図 6.2.25に示す。

圧力等の1500点にのぼる温度,の501Fガスタービンの工場実負荷試験においては,

なお501F型ガスタ ー ビン図6.2.26にその測定項目を示す [101。測定を実施したが,

の工場実負荷試験用に準備中のタ ービ ンロータ部の写真を図 6.2.27に示す。

501 F型ガスタービン断面図図 6.2.25

(0) Others

24 Cooling Air Network . Flow

・Temperature. Pressure

25 Trust Load 26 Exhaust Emission

27 Rotor/Casing Expansion

28 Noise

29 Lube Oil Temp.

(C) StressNibration

16 Compressor Blade 17 Compressor Vane 18 Combustor Basket 19 Transition Piece

20 Turbine Blade

21 Rotor Vib.

22 .Casing Vib. 23 Rotor T orsional Vib.

(8) Metal Temperature

8 Combustor Basket 9 Transition Piece

10 Turb. Row 1 Blade 11 Turb. Row 1-4 Vane

12 Bearing Metal

13 Outer Casing

14 Inner Casing

15 Exhaust Cylinder

(A) Performance

Air Flow Inlet Temp. & Press Exhaust Temp. & Press

Fuel Flow Generator Output

Combustor (Surge Margin)

(Stage Eff.) Turbine

(Stage Eff.) (Diffuser Eff.)

123456

7

5 0 1 F型ガスタービンの工場実負荷試験時の測定項目

にd

nhU

EEム

図 6.2.26

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図 6.2.27 5 0 1 F型ガスタービンのタービンロータ

hunnu

'lよ

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工場実負荷試験時に回転するタービン動翼のメタル温度を,オプテイカルパイロ

メー夕方式の放射温度計で測定した。オプテイカル方式のパイロメータは,ター

ビン動翼表面から放射された赤外線を集光するサファイア製のレンズと,赤外線

をディテクターに導く光ファイバーから成り立っている。このディテクターはシ

リコン製で応答速度は 2μSと高速であるため,タービン動翼の回転に応じた集

光点の翼表面温度の測定が可能である。回転する動翼の翼表面のメタル温度を測

定するシステムを図 6.2.28に示す。

nH》n

cJ-a

pv

加「lilt

,宇'o

e

Au

c--n

Detector

Rotation Pulse

¥4

図 6.2.28 オプテイカルパイロメータによる動翼メタル温度測定

-167一

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(2) 実験結果および考察

まず対流冷却翼であるタービン入口温度12500

C級のMF-111型ガスタービ

ンの第 1段動翼の高温翼列実験結果について述べる。高温翼列実験の50%断面に

おける実験条件を表 6.2. 4に示す。

表 6.2. 4 M F - 1 1 1第 1段動翼翼列実験条件

aTEb

tn ns --

凸し、.. j

Hne

n

u

p

u

VAW古川

a

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u

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I

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n

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4Lnyγ且

ρU4・L

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・-nHU'EA白し.,

A

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-

a

A

A

nY6ta品。

unuH6

白し

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qanhuqGVAqanun邑

6enknhuHUAAnU

9u巾

1

4

L

q

4L

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t

s

e

t

-

-

白しの占

nu'EA・'inu'EA・'anU

VV9uttanuvAvanuVAnu

AAnunFylnznyyln巴

nし

1050. 1 1033.5

O. 20 2. 73 1. 63 1. 68

48. 01 21. 66 309. 1

。cOC

kg/ s ata ata

。。

。C

表 6.2. 4に示す実験条件下で,供試翼の50%高さの断面のメタル温度分布を測

定した結果を図 6.2.29に示す。また内面にターピュレータを有する 2つのサーペ

ンタイン流路から成り立つMF-111型第 1段動翼のメタル温度をTACOOLレコ

ードによって解析した結果を測定値と比較して図 6.2.29中に併せ示している。[II

図6.2.29に示した TACOOLコードを用いた解析値と測定値は約200C以内で一致し

ており, TACOOLコードは十分な精度でメタル温度を推定出来ることが明らかであ

る。

MF-ll1型ガスタービンの工場実負荷試験時に,回転している第 l段動翼のメタ

ル温度を,前述のオプテイカルパイロメータによって測定した。その状況を図 6.

2.30にまたその測定結果を図 6.2.31に示す。 [9l 図6.2.31の測定結果より 68枚の

個々の翼に流量のアンバランスあるいは冷却のアンバランスにより最大200Cのバ

ラツキが測定されているが,測定された翼表面最高メタル温度許容値内に十分お

さまっているといえる。

-168-

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Pressure Side Suction Side

.0 Experiment

Analysis ー一ー GasSide

ー.-Mean Section

--_. Cooling Side

0.5 0.0 0.5 1.0 x/s (LE) xJs (TE)

500C

1.0 (TE)

図 6.2.29 MF-lll型ガスタービンの第 1段動翼のメタル温度測定値と解析値の比較

C∞ling Air

203Z@司mw一回』。

erN@

Row 1 Blade

図 6.2.30 MF-lll型ガスタービンの工場実負荷試験時の第 1段動翼メタル温度測定

-169-

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以上より内部対流冷却構造のMF-l11型ガスタービンの第 1段動翼を用いた

高温翼列実験におけるメタル温度の測定値とタービン冷却翼メタル温度解析

まfこMF-ll1良く一致することが確かめられ,コードTACOOLによる推定値は,

オプテイカル型ガスタービンの工場実負荷試験の定格負荷運転時において,

メタル温度の許容値よパイロメータで測定した第 l段動翼のメタル温度は,

りも充分低い値であることが認められた。

TACOOLコードのメタ以上のように内部対流冷却のタービン動翼に関して,

つづいて行なったフィルム冷却を採用しル温度解析精度が確認されたので,

たタービン入口温度13500C級の 50 1 Fガスタービンの第 1段動翼の高温翼

列実験結果について述べる。

この501F型ガスタービンの第 1段動翼の高温翼列実験の実験条件を表 6.2.

この実験条件下で501F型ガスタービンの第 l段動翼の高温翼列実5に示す。

第 1段動翼の50%高さの断面のメタル温度分布を測定した結果験を実施し,

なお高温翼列実験を行った501F型第 l段動翼のメタル温を図 6.2.32に示す。

1000

Allowabl・t.ta.l.T~押可~. 9∞.C 900

82S.C

Max. Temp. 01 AIJ Blades

X 700

U-E2E副

EE@ト有志

2

・ue℃コ的

uu. .. lTd・0暗,鴨関u・j .. ‘L.2.1 0・T[ '4 A,..叩・・7副 E 問。2:12

111:国

寝泊g

i聞

100

800

detall

DATE ,. Apr 10.'

7剛 E 150212 ・υ・4陶 L.2.1lIDI

¥ Mean Temp. 01 AII Blades 600

uu. ..

::!市川~']\...lv\刀匂U

oee。句"・司

1c泊50 Power 0..比例rt%

o

D?l -一一一一.__...一一-;oSTA~T -I E・jD・咽

ls・d・h叫".1'"・0..",*",'0"1

MF-111型ガスタービンの工場実負荷試験時の第 1段動翼メタル温度測定結果

-170一

図 6.2.31

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表6.2. 5 5 0 1 F第 1段動翼翼列実験条件

&EL ιu

ku

--

白し、tj

Hne

bsnu

白し

v

a

M

W

A

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l

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-

-

OしP

、unu'EA・'lob

・』且.,inU

UV9u

・ianuvAvanuvAnu

aAnupayln巴

nryln巴円し

1177.4 1282. 2

2. 30 4. 50 3.15 1. 43 45. 5 24. 1 250

℃ ℃

kg/ s ata ata

。。

。C

度を表 6.2. 5に示す境界条件下でTACOOLコードで解析した結果を図 6.2.32中

に測定値と比較して示す。なお501F型ガスタービンの第 1段動翼のメタル温

度の測定には翼表面下 O.7 mmに温接点が位置する K型シース熱電対を用いて

いる。フィルム冷却を採用しているタービン動翼のメタル温度の精度を確認

するために501F型ガスタービンの第 1段動翼の60%断面における高温翼列実

験のメタル温度測定値とTACOOLコードによる解析値を比較することにより以

下の点が明らかになった。

まず図 6.2.32中の翼前縁①においてメタル温度の測定値は解析値より約35

OC低目である。また翼前縁に近い翼腹側⑪においても同様に約500C低目であ

る。この原因は,翼前縁近傍のフィルム冷却効率の見積りが低目の値になっ

て.いるためである。つぎに,⑫の点でのメタル温度測定値は解析値より約70

OC高い。この原因は,翼背側の x/s当 0.2付近にフィルム冷却孔が存在す

るが,フィルム冷却孔近傍の,フィルム空気が主流に貫通して効率が低くな

る効果がTACOOLコードに反映されていないためと考えられる。さらに翼後縁

の翼腹側⑪でメタル温度測定値が解析値に比べて約300C高い原因は,他のマ

ルチホール型の内部対流冷却翼(図1.3. 4に示した501B型. 701D型ガスター

ビンの第 1段動翼)での測定結果を考慮して検討すると,翼腹側における主

流側の熱伝達率が高いためと推定される。①~⑪に示した以外のメタル温度

測定値と解析値は非常に良く一致しており,冷却設計上は問題ない。今後実

機環境を解析に反映するとともに,フィルム冷却,翼面熱伝達率の詳細なデ

-171-

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さらなるメタル温度の推定精度向上を目指す必要がある。ータを応用して,

501F型ガスタービンの回転しているフィルム冷却を施した第 l段動翼の60

初号機の工場実負荷試験時にパイロメータに%高さの翼表面メタル温度は,

第 l段静翼の入口ガス温度をアキュファイバーによって測定するとともに,

72 工場実負荷試験時にタービン入口温度を変化させ,また,より測定した。

結果をまとめ枚の第 1段動翼のメタル温度をパイロメータにより測定した。

動翼材この結果フィルム冷却タービン動翼の翼前縁は,

の許容温度以下におさまっていることが確められた。

て図 6.2.34に示す。

{OL2・F

23Hmw』

@aEOLF-E@冨

measured Temperature

一一:Analysls by TACOOL

Estimated Temperature

。。。OOF

Suction Side Pressure Side

1.0

σE)

0.5

XlS

0.5

XlS

1.0

σE) (LE)

Non -dimensional Distance

501F型ガスタービンの第 1段動翼メタル温度測定値と解析値の比較

-172-

図 6.2.32

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501F型ガスタービンの工場実負荷試験時の第 1段動翼メタル温度の測定

AlIowable Limit :

図 6.2.33

10001 IGV : Inlet Guide Vane

: IGV = 4。

: IGV = 0。

800

(。。)2

・FO』コ芯』oaEOト-502

• O

900

1350 1300 1250 1200 700

Turbine Inlet Temperature (OC)

501F型ガスタービンの第 1段動翼パイロメータによる測定結果

tu

t'BA

図 6.2.34

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6.3 結論

産業用ガスタービンの第 l段動静翼として開発したフィルム冷却翼のメタ

ル温度を検証するために実施した高温翼列実験および,工場実負荷試験にお

けるメタル温度測定値と TACOOLコードによる解析値の比較より下記結論を得

fこ。

。種々の伝熱要素データから構築された冷却翼メタル温度解析コード

TACOOLは,フィルム冷却翼の開発にとって非常に有効である。

。内部対流冷却を用いたタービン第 l段動静翼の,高温翼列実験によるメ

タル温度測定値と TACOOLの解析値とを比較すると,局所的に::t200C程度の

不一致の箇所が存在するが,全体的には非常に良く一致する。

。フィルム冷却を用いたタービン第 l段動静翼の高温翼列実験によるメタ

ル温度分布測定値の傾向はTACOOLの解析解と非常に良く一致する。しかし

フィルム孔の吹き出し近傍ではメタル温度測定値と解析値は最大で400

C程

度異なる。この部分の解析精度を上げるためにはフィルム冷却孔近傍の三

次元的伝熱の特性を考慮する必要がある。

。MF-ll1型, 501F型ガスタービンの工場実負荷試験時に,パイロメータに

よって測定した第 l段動翼のメタル温度測定値より,いずれも許容メタル

温度以下である。したがって,内部対流冷却動翼ならびに,フィルム冷却

動翼共に十分な裕度で設計されていることが確められた。

-174一

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第 6章の文献

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[2J 青木,間瀬,武石,“ガスタービン設計における CADシステム〆 日本ガス

タービン学会誌, Vo 1. 11. 42, PP.29-36, 1983.

[3J Sato, T., Aoki. S., and Mori. H.,“A Gas Turbine lnteractive Design

System TDSYS for Advanced Gas Turbines," ASME Paper 85-JPGC-l1. 1985

[4J 武石,“ガスタービンの熱設計における CAEについてJ ・85 新テクノロジ

ーシンポジウム, pp.19-29, 1985.

[5J 佐藤,“研究紹介ガスタービン編〆 三菱重工技報, Vo1.16, pp.I-7, 1979.

[6J Sato, T., Takeishi. K., and Sakon, T.,“Thermal Fatigue Life Predic-

tion of Air-Cooled Gas Turbine Vanes," Trans, ASME, Vo1. 108, pp.414-

420, 1987.

[7J Sato, T., and Takeishi. K.,“lnvestigation of the Heat Transfer in

High Temperature Gas Turbine Vanes," ASME Paper 87-GT-137, 1987.

[8J 佐藤,武石, “産業用ガスタービンにおける温度計測技術について〆 第12

回ガスタービン定期講演会論文集, pp.49-54, 1984.

[9J Aki ta, E., Aoyama, K., Tsukuda, Y., Fukue, I., and Aoki. S.,

“Development and Testing of the 13MW Class Heavy Duty Gas Turbine

MF-ll1." ASME Paper 87-GT-37, 1987.

[10J Entenmann, D. T., North, W. E., Fukue, I., and Muyama, A.,“Shop Test

of the 501F --A 150MW Combustion Turbine." Trans. ASME, Journal of

Engineering for Gas Turbine and Power. Vol.113, pp.488-494, 1991.

Fhd

I1i

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第 7章 フィルム冷却の高性能化の研究

7.1 まえカfき

1列の円孔からの吹き出しにおけるフィルム冷却効率は,第 2章で述べたごと

く質量流束比Mの増加に伴ってM=0.5付近で極大値を取り,さらにMが増加す

るとフィルム冷却空気の主流への貫通によって低下する。この主流への貫通力を

弱くし,フィルム冷却効率を改善しようとする試みの 1つにシェイプトフィルム

冷却方法がある。これは,フィルム孔の側壁を流出側に向かつて広げて,円錐形

のディフユーザを形づくり,フィルム冷却空気がフィルム孔の出口で主流に放出

される際のモーメンタムを減らし,主流への貫通力を減らすとともに,主流と直

角方向にも冷却媒体を広がらせフィルム冷却孔下流の冷却効率分布を均一化しよ

うとするものである。

このアイデアは,初め Goldstein[1]によって提案,研究された。 Goldstein[lJ

の研究によれば質量流束比Mの小さな CM< 0.5)値では,シェイプトフィルム孔

を用いても際だった効果は無い。しかしMが O.5よりも大きな値では,従来のフ

ィルム冷却孔の形状が円孔の場合吹き出し部の下流において急速に,効率が低下

するのに比べ,シェイプトフィルム冷却孔ではMの増加と共に高くなっている。

また,シェイプトフィルム冷却孔ではフィルム冷却空気が横に広がり,従来の

方法では孔と孔の聞のフィルム冷却効率が低い流れと直角方向のフィルム冷却効

率が改善されている。 Goldstein以外にもフィルム冷却孔の形状を変え,フィル

ム冷却効率を改善する試みは, Makki [2] , Papell[3] 等によって研究されたが,

フィルム冷却孔の加工および費用上の問題から,実用化には至らなかった。しか

し近年のガスタービンの高温化と高効率化に対応して,より少量の冷却空気で

効果的に冷却するシェイプトフィルム冷却が,航空用エンジンのタービン翼に採

用されるようになってきた。 Goldstein等の研究によればフィルム冷却孔を出口

方向に向って広げた形状にすることによって高いフィルム冷却効率が得られるこ

とを示しているが,フィルム冷却孔を出口方向に向って広げる加工は非常に困難

-176-

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である。本研究では,二回の放電加工により製作することが出来るようにフィル

ム冷却孔の後縁近傍を流れ方向に広げるフィルム冷却孔の形状を考案しフィルム

冷却効率の改善の程度を調べた結果をまとめた。

フィルム冷却空気を主流中に吹き出すと,フィルム冷却空気は高温の主流ガス

と混合し,フィルム冷却孔から下流に向って距離の増加とともにフィルム冷却効

率は低下する。このフィルム冷却効率が低下した位置に新たなフィルム冷却孔を

設ければ,メタル温度をある許容温度以下に保つことができる。このようにフィ

ルム冷却孔を配置すればフィルム冷却空気の温度は,のこぎりの刃のように分布

するが,フィルム冷却孔を密に並べて吹き出し量を減せば,非常に均一なメタル

温度を得ることが理論的には可能である。しかし,この方法を実際のタービン翼

へ応用した場合,低流速で吹き出す空気の圧力差は小さく,主流側の圧力変動を

敏感に受けてしまう欠点を有する。

そこで本章では,加工が容易なシェイプトフィルム冷却の実験的研究により,

フィルム冷却空気が主流を巻き込むことなく,壁面にへばりつくことによって,

フィルム空気と主流との混合を抑制して高いフィルム冷却効率が得られることを

明らかにする。さらに, トランスピレーション冷却ほどは連続的には吹き出しを

行っていないが,多数のフィルム冷却孔を有する一種の全面フィルム冷却を第 1

段動静翼モデルに施行した翼モデルを用いて実施した全面フィルム冷却翼の実験

結果より全面フィルム冷却の有効性を示す。なお,翼面全面に渡るフィルム冷却

は全面フィルム冷却として従来よりもガス温度の高いタービン翼への適用の可能

性が考えられている。本章の内容は主に文献 [4J,[6Jに発表した内容をまと

めたものである。

de

1・Ei

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7.2 高性能フィルム冷却

7.2. 1 シェイプトフィルム冷却の伝熱実験

(1) 供試体および測定方法

テストセクションが 300mmX 300mmの正方形の,伝熱風洞〈図 2.2. 1参照)の

断熱壁温度測定用の底面前方にシェイプトフィルム孔からなる供試体を装着し,

主流を常温,フィルム空気として加熱空気を流し,吹き出し部より下流を,櫛型

温度計(図 2.3. 1参照〉でトラパースすることによってフィルム冷却孔下流の流

路壁画上の温度分布を測定した。本実験に用いたシェイプトフィルム冷却孔と比

較の基準として用いた円形の冷却孔列の形状,寸法を図7.2.1に,写真を図 7.2.

2に示す。

Shaped Film Cooling Holes

α=30・s=30・Uo。ー:40m/s

Main Stream

U∞ oling Ai

d=10mm

p=30mm

α=30。

U∞と40m/s

Conventional Film Cooling

図7.2. 1 シェイプ卜フィルム冷却孔の形状

-178-

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(2) 実験結果および考察

図 2.2. 1に示した吸込型の伝熱風洞を用いて,主流を大気温度T∞'フィルム

冷却空気を T.。の加熱空気としてフィルム冷却孔より下流 x/ d = 0 .2.8.5.8.

8. 8の位置で,流路壁面上の空間温度分布を自動卜ラパース装置を用いて測定し

た。このフィルム冷却空気と主流が混合した気流温度Tの測定には第 2章の図 2.

3. 1に示す櫛型温度計を用いたが,質量流束比M= O. 3. O. 63. 1. 06. 1. 26の 4

ケースについて,空間温度分布を測定した結果を図7.2.3,....,図7.2. 6に示す。

O c")

O Eつ

Shaped Film Cooling Holes

Cylindrical Filry1 Cooling Holes

f-------" X

図7.2.2 高性能フィルム冷却実験供試体形状

-179-

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M=O.30

x/d=O

η= 0.1¥ ・0.2,. 0.3・.0.4 0.5 0.6、0.7

x/d=2.8・

η= 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

x/d=5.8・

2. x/d=8.8・

Shaped Film Cooling

M=O.30

xld=O

-η= 0.1父・0.2,"

.0.3 0.4 0.5

. 0.6": ・0.7

xld=2.8・

xld=5.8・

xld=8.8・

GV

門川nu

門V

FU m

F

「a

戸U

VE-

Au

nH VY

FU

図7.2. 3 シェイプトフィルム冷却のフィルム冷却効率分布 (M= 0.30)

-180-

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M=O.63

xld=O

xld=2.8・

x/d=5.8・

xld=8.8・

Shaped Film Cooling

xld=O

-η= 0.1・0.2・0.3. 0.4. 0.5 0.6 0.7' 0.8・0.9

xld=2.8・

xld=5.8・

xld=8.8・

Cylindrical Film Cooling

M=O.63

図7.2.4 シェイプトフィルム冷却のフィルム冷却効率分布 (M= 0.63)

-181-

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2.

M=1.06

xld=O

xld=2.8・

xld=5.8・

xld=8.8・

Shaped Film Cooling

xld=O

.η= 0.1・

・0.2・. 0.3. 0.4. 0.5 0.6 0.7・

・0.80.9

xld=2.8・

xld=5.8・

xld=8.8・

Cylindrical Film Cooling

M=1.06

図7.2.5 シェイプトフィルム冷却のフィルム冷却効率分布 (M= 1. 06)

-182-

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2.

M=1.26

x/d=O

x/d=2.8・

X/d=5.8・

X/d=8.8・

Shaped Film Cooling

x/d=O

.η= 0.1' 0.2・0.3. 0.4. 0.5 0.6 0.7' 0.8 0.9

x/d=2.8・

X/d=5.8・

X/d=8.8・

Cylindrical Film Cooling

M=1.26

図1.2.6 シェイプトフィルム冷却のフィルム冷却効率分布 (M= 1. 26)

-183ー

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図7.2.3に示した質量流東比M=O.3の場合,円孔列では吹き出したフィルム

冷却空気のジェットのごく近傍にフィルム冷却効率の高い箇所が存在するのに対

して,シェイプトフィルム冷却孔では,横方向へのフィルム冷却空気の広がりに

より広範囲にフィルム冷却効率が高くなっていることがわかる。この傾向は下流

x/ d =8.8においても保たれている。

図7.2.4に示した質量流東比M=O.63の場合,円孔列からの吹き出しにおける

等温線には,フィルム冷却空気が主流に貫通し,下流部で再付着している状況が

現れている。同図中の,シェイプトフィルム冷却孔の場合では,フィルム冷却空

気のフィルム冷却孔出口の位置で横方向への広がりが見られ,フィルム冷却空気

の主流への貫通はなくこの結果として流路壁面上で高いフィルム冷却効率が得ら

れていると考えられる。この傾向は下流でも保たれており,円孔列からの吹き出

しに比べて, シェイプ卜フィルム冷却のフィルム冷却効率が高いと推定される。

さらに質量流束比Mが大きいM= 1. 06. M = 1. 26について,図7.2.5.図7.2.6に

示したごとく. x / d =2.8のコントゥアーから,従来型の円孔列から吹き出し

たフィルム冷却空気の等温線図は腎臓型の形状をなし,主流を巻き込んでいるこ

とがわかる。しかし,同じ大きな質量流束比Mにおけるシェイプトフィルム冷却

孔列からの吹き出しの場合はフィルム冷却空気は壁面に密着しており,主流との

混入は生じていないと考えられる。

本実験条件で流路壁面上で測定したフィルム冷却効率を. 1ピッチに渡り平均

化し,その結果を図7.2.7に示す。この図より円孔列からの吹き出しの場合,質

量流束比Mの増加に伴って主流への貫通が生じるために,フィルム冷却効率は低

下するが,シェイプトフィルム冷却孔列からの吹き出しの場合は,主流への貫通

がなくむしろ質量流束比Mの増加とともにフィルム冷却効果が増える傾向が現れ

ている。

-184-

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M Cylindrical Shaped

0.5 ---0-----ー---.一一1.0 一-0-ー • 1.25 ーー-Ls--ー--A---

1.0

0.8

0.4

0.2

0.6

』戸市

ωωωCO〉zoot凶

05一ooOE=Lω06』@〉〈

。30 20 10

x/d

円孔およびシェイプトフィルム冷却孔からの吹き出しによるフィルム冷却効率の比較

-185-

図7.2. 7

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7.3 全面フィルム冷却

フィルム冷却が離散化された円孔列からのフィルム冷却空気の吹き出しに対し

て,翼面全面に渡り多数の冷却孔をあけてフィルム冷却空気を吹き出す全面フィ

ルム冷却法が存在する。一般に円孔列からの吹き出しの場合,主流からのエント

レインによって翼面上をカバーするフィルム冷却空気はフィルム冷却孔より下流

方向に距離が増えるほど温度が上昇する。全面フィルム冷却法は, この温度上昇

を一定に保つように下流に新たなフィルム孔を設けて吹き出しを行うことによっ

て,翼面全体を一定のフィルム冷却気流中に置く方法である。この冷却方法を採

用した全面フィルム冷却翼は,翼面にあけられた多数のフィルム冷却孔より,フ

ィルム冷却空気を吹き出すために個々のフィルム冷却孔より吹き出すフィルム冷

却空気の流速は非常に遅くなる。従って,フィルム冷却孔より吹き出すフィルム

冷却空気の量は翼面静圧分布の影響を受け易く,全体の冷却空気の流量バランス

がとれた設計が非常に難しい。

現在において,全面フィルム冷却が採用されている航空機用エンジンのタービ

ン翼は無く,タービン入口温度17000

Cを越える軍用エンジン用のタービン翼の開

発試作が行われている程度である。米国の GMアリソン社では,内面にインピン

ジメントメン卜冷却構造を持った積層構造を Lamilloy@と称し,これを使った全

面フィルム冷却タービン翼を開発し研究を実施している。図 7.3. 1は, Lami lloy⑧

で製作したタービン静翼である [51

産業用ガスタービンにおいても近い将来タービン入口温度が15000

C--1700oCの

レベルに達すると考えられるが,その際翼面を高温ガスから防御する方法は,全

面フィルム冷却しかないと考えられている。ここでは,将来の全面フィルム冷却

翼開発に向けて実施したタービン静動翼のモデルを使った全面フィルム冷却の基

礎実験について述べ,その効果を評価する。

-186ー

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図7.3.1 ラミロイ冷却方式のタービン静翼

7.3. 1 全面フィルム冷却の伝熱実験

(1) 供試体および測定方法

現在運用中のタービン入口温度13500C級よりもさらに高温化したガスタービン

を想定し[6] タービン第 l段動静翼の翼型を選定した。第 l段静翼の翼型を図

7. 3. 2に,その主要寸法を表7.3.1に示す。また,第 l段動翼の翼型を図7.3. 3

に,その寸法を表7.3. 2に示す。 これらのモデルを用いた伝熱実験には,第 3章

の3.2節で述べた低速翼列風洞を用いた。なお,翼列は, 5枚の翼から構成し中

央の翼にフィルム冷却孔を設け,両側各 2枚の翼はソリッド翼から成り立ってい

る。

-187一

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シ/図7.3.2 第 1段静翼モデル翼形状

P

図7.3.3 第 1段動翼モデル翼形状

-188-

表7.3.1 第 1段静翼モデル寸法

Chord

Pitch

Height

c 172.7

p 159.3

R 300.0

表7.3.2 第 1段動翼モデルす法

Chord

Pitch

Height

c 201. 7

p 177.5

R 300.0

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低速翼列風洞を用いた全面フィルム冷却翼のフィルム冷却効率を測定する実験

においては,主流は常温とし,フィルム冷却空気を加熱してフィルム冷却孔より

吹き出して実施した。第 1段静翼の翼列の構成と低速翼列風洞の仕様を図7.3.4.

表7.3.3に示す。また,第 1段動翼の実験状況の写真を図7.3. 5に示す。

表7.3.3 低速翼列風洞仕様

Dimension of the Test Section 300W x 600H

Maximum Exit Velocity 50 m/s

Main Steam Temperature 200C (Room Temp.)

Main Steam Pressure 1.03 ata

Main Steam Turbulence Intensity 0.5'"" 80/0

Dummy Vane

Instrumented Vanes

Turbulence Grid

Dummy Vane

U∞

図7.3.4 低速翼列風洞の概形図

Gd

nHU

4li

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図7.3.5 低速翼列風洞による第 1段動翼実験状況

供試第 l段動静翼は低熱伝導材料であるベークライトで製作し,壁温度を測定

する直径 O.2mmのK型熱電対をフィルム冷却孔下流とフィルム冷却孔間下流の翼

壁面に直線状に取り付けた。このフィルム冷却孔近傍の壁温度を測定する熱電対

の取り付け方法を図7.3. 6に示す。全面フィルム冷却翼の翼面の壁温度を測定す

る目的で 4mmのピッチで翼面に埋め込んだ熱電対の総数は 169本である。第 l段

動翼の供試翼のフィルム冷却孔近傍の熱電対取り付け状況を図7.3. 7に示す。こ

の熱電対による断熱壁温度と並行して翼全面にわたる壁温度を測定するために,

カメラ式の赤外線放射温度計での測定も実施した。なお赤外線放射温度計による

壁温度の測定値は埋め込んだ熱電対で較正した。

-190-

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Film Cooling Holes Thermocouples

1/2p

Main Stream

亡二〉

J~ /""¥ Jン.,... ..-、....."....、.、.R55¥¥¥¥Film Cooling Air

Blade Surface

Bakelite

K-Type

Thermo

Couple detail of A

図7.3.6 全面フィルム冷却翼への熱電対の取り付け方法

図7.3.7 全面フィルム冷却の第 1段動翼モデルおよび熱電対の取り付け状況

-191一

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(2) 実験結果および考察

まず第 l段静翼の翼背側にあけたフィルム冷却孔の各々のフィルム冷却孔位置

で質量流束比Mを 0.2. 0.4に制御した状態で赤外線放射温度計で断熱壁温度を

測定した結果を図7.3. 8に示す。この図より翼全面にわたり均一な断熱壁温度が

達成されていることがわかる。一方,翼腹側についても同様に質量流東比M=

0.5. 1. 0における断熱壁温度を測定し,これよりフィルム冷却効率を算出し図7.

3. 9に示す。図7.3. 9より全面フィルム冷却では質量流東比が小さい条件で高い

フィルム冷却効率が達成出来ることを意味している。翼腹側の xがlO---84mmの位

置では主流流速も低く,質量流束比Mを大きくとってもフィルム冷却空気流量の

増加は少ない。 さらに各吹き出し孔における質量流束比を最適化することによっ

て,少ない冷却空気量で均一で高いフィルム冷却効率が達成できることが明らカ

になった。

t Maln F10w

M=O.2

ー畑い一日

t Maln Flow

M二0.4

図7.3.8 第 1段静翼 の赤外線放射温度計 による 断熱壁温度 の測 定

-192一

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C

c) E

8 tコE 比

1.0f マJ刃l マ マ

H G

、~ ト九~ N l、~ v

od 50

マ マ マF E D

M = 1.0

|¥ 時A ~

代司、

11q、t.f L 円 ':

n、

N r¥t v ¥M =0.5

I I 100

》「ytφφ@⑤タイ,@,@JBφφ@@タ

g 可旨

代~世論

X 凡主泊~

陸 ~ 。主

h

防βゆ 4

一一合一一:M = 1.0 ト

一ーの一一:M = 0.5 H

150 200

Distance from Leading Edge X (mm)

図7.3.9 第 1段静翼の全面フィルム冷却時のフィルム冷却効率

つぎに第 1段動翼の供試翼で翼背側および翼腹側の代表的なフィルム冷却孔か

らフィルム冷却空気を吹き出した場合の,フィルム冷却孔およびフィルム冷却孔

の中間の点で下流方向に翼面に取り付けた 169本の熱電対によりフィルム冷却効

率を測定した結果を図7.3.10,図7.3.11に示す。

翼背側においてフィルム冷却効率を測定した図7.3.10より,フィルム冷却孔下

流とフィルム冷却孔聞を下流方向に測定したフィルム冷却効率は x=. 40mmの点ま

でフィルム冷却効率が異なっていて, x =. 40mmより下流では両者は一致し一様の

フィルム冷却膜が形成されていると考えられる。このように全面フィルム冷却と

いっても翼背側では個々のフィルム冷却孔の近傍では三次元的なフィルム冷却空

気の混合過程が現われている。しかし翼腹側では,図7.3.11よりフィルム冷却孔

-193一

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r

ω ω Q) c o 〉

(.)

1.0

42 0.5 w c) C

O

S E u..

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-、J ......

FilmC∞ling d ・2.50

白人 p・6.0'</ ro‘'

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U

,ベト:downstream of the cooling hole

v 戸-・司 : between thEl cO()ling .hole

え「司、b 『同λ

1-0. A

'‘

一」ー

50 100

Distance x (mm)

Main 5tream

、,

150

M=O.3

図7.3. 10 全面フィルム冷却第 1段動翼の背側におけるフィルム冷却効率

1.0

r

UGω 3 3

c 。>

さ喝., 0 .5

w 0> c o O ()

E lL 。

V グ、 一

-0ー:downstreamoI f the l cooll ing hole

d

ミq

k -・-: betw下een可-怪Qトk

問問》

。the cooling hole

50

Distance x (mm)

一一100

M=0.3

図7.3. 11 全面フィルム冷却第 1段動翼の腹側におけるフィルム冷却効率

-194-

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の近傍からフィルム冷却孔下流とフィルム冷却孔聞を下流に測定したフィルム冷

却効率は一致していることからフィルム冷却空気がよく混合することが明らかで

ある。さらに,翼背側でのフィルム冷却効率の低下割合に比べて翼腹側でのフィ

ルム冷却効率の低下が著しい。

各フィルム冷却孔における質量流束比MをO.3に調整し,各列ごとにフィルム

冷却効率を測定した結果ならびに全面にわたってM=0.3で吹き出した場合の測

定結果を併せて図7.3.12に示す。翼腹側面上ではフィルム冷却効率の低下が著し

いため,質量流東比M=0.3で吹き出した場合下流のフィルム冷却孔部でフィル

ム冷却効率が Oになっている場合があり全ての上流側からのフィルム冷却が寄与

するわけで無いが,フィルム冷却効率の重ね合せ効果によって,下流に位置する

フィルム冷却孔からの吹き出しのフィルム冷却効率が高くなっていることがわか

る。ここでは限られた飛び飛びのフィルム冷却孔の流れ方向ピッチ間隔を設けて

いるが,流れ方向ピッチをさらにつめて,列数が増加した分質量流束比Mを低下

させると,非常に均一で高効率なフィルム冷却が達成できることが予想される。

図7.3.12よりフィルム冷却効率の最高値は ηfーO.85であり,平均的な最低値

は ηr "=i O. 4であることから,コード方向のフィルム冷却孔のピッチを約半分に

して,質量流束比をM=0.2に設定すると,平均フィルム冷却効率 ηr=0.6程

度達成可能と予想される。平均フィルム冷却効率 η=0.6の場合,ガス温度T"

= 1700oC,冷却空気温度 Tao=400 oCとしてフィルム冷却空気膜の温度 Trを求

めると Tr = 920 oCとなり,フィルム冷却孔の側壁あるいは,内面からの冷却を

考慮すると全面フィルム冷却は現在使用されている翼材料を許容温度以下に冷却

することが可能な冷却方法であることがわかる。さらに全面フィルム冷却の冷却

空気をクーラで冷やしたり,主流ガスからタービン翼への熱遮蔽効果を増すTBC

(Therrnal Barrier Coating)と併用すればタービン入口温度17000C級の冷却翼の

開発が可能であると考えられる。

F円U

Gd

EA

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Mキ0.3

t~=0.5%

O

O

bh h Q Q

O 、。cb

O

Q

Q

a 0

Ob6o

沼CIl c CIl 〉

S a 0.5 cl c

g u ε u..

FE

nu '

L

nu 25 50

% Distance from [a] hole

75 100 TE

図7.3.12 全面フィルム冷却第 1段動翼腹側への全面フィルム冷却時のフィルム冷却効率と各冷却孔単独でのフィルム冷却効率との比較

-196-

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7.4 結論

フィルム冷却を高性能化する方法に,フィルム冷却孔の形状を吹き出し部分で

工夫し,壁面にフィルム冷却空気が沿い易くするシェイプトフィルム冷却法と,

翼面に全面にわたるフィルム冷却孔を設け,低い質量流束比でフィルム冷却空気

を吹き出し翼を冷却空気で覆う全面フィルム冷却法がある。低速伝熱風洞を用い

たシェイプトフィルム冷却の基礎モデルによる実験ならびにタービン 1段動静翼

の翼モデルを用いた全面フィルム冷却の低速翼列実験によって下記の結論を得た。

。円孔列からの吹き出しによるフィルム冷却ではフィルム冷却空気の主流への

貫通および主流の巻き込みにより腎臓型のコントゥアーが得られるが,円形フ

ィルム冷却孔の下流部を広げる形のシェイプトフィルム冷却孔列を用いるとフ

ィルム冷却空気の主流への貫通がおさえられて流路壁にへばり付き,さらに横

方向にフィルム冷却空気が広がることによって流路壁画上で高いフィルム冷却

効率を有する。

。本研究で実験した形状のシェイプトフィルム冷却孔列のフィルム冷却効率は,

円孔列のそれに比較して約 2倍となる。また質量流束比M=1. 0以上の大きな

状態においてもフィルム冷却空気は主流に貫通することなくフィルム冷却効率

は,質量流束比とともに増加する。

。静翼の場合全面フィルム冷却で質量流束比の小さい CM= 0.5)冷却状態では,

均一で非常に高いフィルム冷却効率が達成できる。

。全面フィルム冷却方法は,次世代17000

C級のガスタービンの冷却翼の冷却方

法として非常に有効であると考えられる。

-197-

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第 7章の文献

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achinery, Vol.1l6. pp.597-604, 1994.

-198ー

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Eヨ結主早第 8

ガス圧力特にガス温度,産業用高温ガスタービンの空冷翼の冷却方法として,

フィルム冷却は必要不可欠の熱負荷低減の観点から,が高い第 1段動静翼には,

主流と翼壁の間にフ内部の対流冷却と異なって,フィルム冷却は,技術である。

主流との混合という非常に複雑な現象を呈すィルム冷却膜を形成することから,

フィルムさらにフィルム冷却をガスタービンのタービン翼に適用する場合,る。

冷却膜はタービン翼面上に発生する二次流れあるいはシュラウド面上に発生する

種々の渦の影響を受ける。高温ガスタービンのタービン翼にフィルム冷却を適用

フィルム冷却孔より吹き出したフィルム最適な冷却翼を開発するためには,し,

フィル空気が知何にタービン翼面上にフィルム冷却膜を形成させるかを把握し,

あるいはフィルムム冷却が最も効果的に作用するようにフィルム冷却孔の寸法,

要素実験で得たフィルム冷却のデータまた,冷却孔の形状を決める必要がある。

実用条件下で材料が許容すメタル温度が,を用いて開発したフィルム冷却翼は,

る温度以下に保たれているか確認することが必須である。

ガスタービンのフィルム冷却動静翼の開上記した背景に基づき,本論文では,

第 2章~発に必要なフィルム冷却方法の構築を目的として実施した研究成果を,

第 7章に取りまとめた。

フィルム冷却孔より吹き出したフィルム冷却空気の主流との混合の状態先ず,

実機のタービン翼に適そこで,定量的に把握することが必要である。を基礎的,

用される円孔列を非常に簡単な形で模擬して主流に傾斜した二次元スロットから

得られた結果を一般化した境界の吹き出しにおけるフィルム冷却実験を実施し,

また円孔列から層理論から導いたフィルム冷却効率推定式と比較して評価した。

の吹き出しにおけるフィルム冷却実験結果とヒート・シンクモデルによる解析を

吹き出し近傍の境界層近似が出来ないフィルム冷却孔のご比較することにより,

く近傍領域にも適用可能なフィルム冷却効率の推定式を示した。

平板面上のフィルム冷却タービン動静翼面上におけるフィルム冷却効率には,

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に影響するパラメータに加えて,翼面の曲率,主流の加速率等の影響が入る。こ

れらの影響を入れたタービン翼面上のフィルム冷却効率式を得るため,典型的な

産業用ガスタービンの第 l段動静翼モデルを用いてフィルム冷却効率を測定した。

そして,得られたフィルム冷却効率を整理して翼背側および翼腹側面上でのフィ

ルム冷却効率式を明らかにした。さらに曲率一定の条件で主流加速率,主流乱れ

をパラメータにした翼列実験を実施し,翼背側では主流加速率および主流乱れは

フィルム冷却効率に影響を与えないことを,一方,翼腹側では主流加速率の減少

(翼ピッチ増加による高負荷化)および主流乱れはフィルム冷却効率を低下させ

ることを明らかにした。今後の産業用ガスタービンのタービン翼設計が高負荷化

する傾向の中で,空力設計に配慮していく必要があることを明らかにした。

高温ガスタービンのタービン翼は低ソリディティ化,低アスペクト比化の傾向

にある。このような低アスペクト比のタービン翼では,翼間の三次元的流れが翼

面に影響をおよぼす。シュラウド面上の二次流れは,翼面およびシュラウド面上

の熱伝達率およびフィルム冷却効率に強い影響を与えるが,現在のところ実験的

にも解析的にも明らかでない。近年ナービエ・ストークス方程式を数値的に解く

ことにより翼間流れを求める試みがなされているが,熱伝達率分布,フィルム冷

却効率の推定に適用した例はまだ非常に少なく,実用の域に達していない。しか

し今後計算機と数値解析法の進歩により熱伝達率あるいはフィルム冷却効率等の

伝熱問題が,数値解析で解けるのも間近にせまっていると考えられるためまた,

解析コードの検証のためにも,精度の良い実験データが必要である。このためタ

ービンの流れを相似な形でシミュレートさせるため,環状翼列伝熱実験装置を用

いた伝熱研究を実施した。その結果シュラウド面上に発達する渦の影響で,翼面

およびシュラウド面上の熱伝達率が促進され,フィルム冷却効率は急激に減少す

ることを明らかにした。さらに環状翼列の翼面およびシュラウド面上に発達する

境界層の流れを可視化する新しい方法を開発し可視化像からもこの事実を明確に

した。

ガスタービンのタービン静翼は,燃焼器の高温ガスが不均一に分布している影

響を直接受けるために非常に高度な冷却技術を必要としたが,タービン動翼は,

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回転運動によりガス温度が平均化されることと,回転運動により相対全温度が低

くなる分,静翼ほどの高度な冷却技術を必要としなかった。しかし,タービン入

口温度の上昇に伴って,タービン動翼においてもフィルム冷却の施行が必要な段

階となった。

タービン動翼にフィルム冷却を適用する場合,タービン静翼面上に生じるフィ

ルム冷却の現象を把握するのはもちろんのこと,翼の回転ならびに,主流の非定

常流のフィルム冷却効率への影響を知っておく必要がある。しかし,回転してい

る動翼面上のフィルム冷却効率を直接測定することは非常に困難であるため,報

告された例は皆無であった。タービン翼面上のフィルム冷却効率への回転の効果

を調べる目的で, 50%高さにおけるタービン翼型が相似なモデルを用いて二次元

低速翼列と空気タービン実験装置を用いてフィルム冷却効率を測定する実験を行

った。回転しているタービン動翼面上のフィルム冷却効率の測定には, トレーサ

に炭酸ガスを用いた物質伝達のアナロジーを応用して,回転動翼面上のフィルム

冷却効率を実機相当の条件で測定した。そして回転している動翼面上で測定した

フィルム冷却効率の測定結果を,詳細なフィルム冷却効率の測定を実施した二次

元静止翼列の実験結果と比較することにより,回転動翼面上のフィルム冷却効率

の特性を明らかにした。

本論文で示した種々のフィルム冷却効率の実験式および予測法は,他の伝熱デ

ータと共に冷却翼開発のシステム(TDSYS)に組み込まれている。このシステムを

用いて開発したフィルム冷却動静翼は,高温翼列実験,高温回転実験で詳細な冷

却性能が確認され,最終的にはフィルム冷却翼が組み込まれたガスタービンが使

用されると同一の条件下で,ガスタービンを運転し,回転するタービン動翼のメ

タル温度を測定することによってタービン動翼の冷却性能が検証される。フィル

ム冷却を初めとする種々の伝熱データから成り立つTDSYS システムは高性能な冷

却翼の開発に寄与するばかりでなく,タービン動静翼の信頼性に最も影響を与え

るメタル温度の推定精度においても十分な精度があることが確かめられた。高温

翼列実験,高温回転実験および工場での実負荷試験で得られたフィルム冷却動静

翼のデータは,今後のさらなるシステムのメタル温度推定精度向上に利用される。

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高温ガスタービンの開発は,熱サイクルの改善の観点から永遠に続けられるで

あろうと考えられる。この熱サイクルの改善の有力な手段としてタービン動静翼

の冷却空気量の低減とタービン入口温度の上昇が上げられる。フィルム冷却を施

行しているタービン翼の冷却空気量を低減させる最も効果的な方法は,フィルム

冷却を高性能化することである。フィルム冷却孔から主流にフィルム冷却空気を

吹き出す場合,主流との混合を押え,翼の壁に沿い易くするようフィルム冷却孔

の形状を工夫したシェイプトフィルム冷却孔の採用はその 1つの方法である。シ

ェイプトフィルム冷却孔列からの吹き出しによるフィルム冷却効率の改善効果を

調べる目的で,伝熱風洞を用いることにより,シェイプトフィルム冷却孔列から

の吹き出し空気の下流における空間温度分布の詳細を測定し従来の円孔列から

の吹き出しにおける空間温度分布と対比することによって,シェイプトフィルム

冷却孔列から吹き出したフィルム冷却空気は,主流に貫通しにくく,横方向に広

がることによって高いフィルム冷却効率が得られることを明らかにした。一方タ

ービン入口温度の上昇に対しては,全面フィルム冷却, トランスピレーション冷

却で対処する方法以外に無いと考えられる。そこで全面フィルム冷却孔をあけた

タービン動静翼を用いた低速翼列実験により,全面フィルム冷却の効率分布を明

らかにし,今後の高温化への可能性を明らかにした。

本論文に示したフィルム冷却方法は,現在13500

C級のコンバインドプラント用

ガスタービンに用いられるフィルム冷却動静翼の開発に適用され,その信頼性を

確保するために効果を上げている。産業用ガスタービンのタービン入口温度をさ

らに上昇させ熱効率の改善をはかるためには,高温化に対処して,より一層のタ

ービン動静翼の冷却法の信頼性の確保が必要となる。このためには,フィルム冷

却効率の推定精度の向上と,高性能化に一層努力する必要があると考えている。

また,フィルム冷却技術の要素研究のみではなく,実機のタービン翼の長時間使

用の実績を分析・評価することによって,フィルム冷却翼の設計あるいはフィル

ム冷却翼を組込んだガスタービンプラントの運転にフィードバックする研究が必

要であり,これらは,今後の研究課題としていきたい。

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言身ず 舌辛

本論文をまとめるにあたり,終始懇切丁寧な御指導をいただきました大阪大学基礎工学

部 木本日出夫教授,ならびに査読をしていただき有益な御助言を賜りました大阪大学基

礎工学部 角谷典彦教授,同じく大阪大学基礎工学部 辻本良信教授に厚く御礼申し上げ

ます。

また,本論文をまとめることを許可,御鞭縫いただきました三菱重工業側高砂研究所

佐藤友彦所長をはじめ坂元成夫次長,吉井紹介次長,燃焼伝熱研究室 藤本哲郎室長,

所内関係者の方々に深くお礼申し上げます。

私が,三菱重工業(鮒に入社した昭和49年当時の産業用ガスタービンのタービン入口温度

は, 9000Cレベルでありました。その頃から既に今日の産業用ガスタービンの重要性を予想

されて開発研究の全般を推進され,その一環として高温ガスタービンにおける冷却技術の

重要性を考え,タービン翼の冷却技術の開発にたずさわる機会を与え,御指導下さいまし

た三菱重工業(欄高砂研究所佐藤友彦所長はじめ,ターボ機械開発の観点、から御指導を賜

りました同ターボ研究推進室 青木素直室長に深く感謝致します。

またフィルム冷却技術の基礎研究に関しましては,三菱重工業(欄長崎研究所に御在職時

御鞭撞いただきました大分大学工学部 時田雄次教授に深く謝意を表します。東新潟発電

所コンバインドプラント用のガスタービンの開発時御指導をいただき,本論文作成に当っ

て御鞭縫をいただきました元基盤技術研究所 島通恒所長にあわせて御礼申し上げます。

実験にあたりましては,三菱重工業(樹高砂研究所燃焼伝熱研究室松浦正昭主任,

笠井剛州社員には多大の御協力をいただきましたことを記して感謝の意を表します。

最後に産業用ガスタービンの冷却翼の研究開発の機会を与えて下さいました三菱重工業

(樹高砂製作所 日浦治也副所長,同タービン技術部 福江一郎次長,同ガスタービン設計

課 塚越敬三課長に心からの感謝の意を表します。

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