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中性子バイオ・ソフトマターサイエンス中性子バイオ・ソフトマターサイエンス ワークショップワークショップ ((2009/07/072009/07/07))
小角中性子散乱法を主体としたナノサイズエマルション製剤の状態解析
小角中性子散乱法を主体としたナノサイズエマルション製剤の状態解析
花王株式会社 ケアビューティ研究所久米卓志・岩井秀隆・川田裕三・佐野友彦
東京大学 物性研究所松永拓郎・遠藤仁・柴山充弘
中性子バイオ・ソフトマターサイエンス中性子バイオ・ソフトマターサイエンス ワークショップワークショップ ((2009/07/072009/07/07))
予備乳化
ナノサイズエマルション
高圧乳化
循環
製造プロセス ナノサイズエマルション
高圧乳化機のチャンバー
背景 (高圧乳化法によるナノサイズエマルション)
電子顕微鏡観察(フリーズフラクチャー法)
粒子径(直径) 30nm程度
50 nm50 nm
原液
水(希釈)
透明化粧水
HEC水溶液混合
Shearで高粘度化:ダイラタンシー現象(Shake Gel)
中性子バイオ・ソフトマターサイエンス中性子バイオ・ソフトマターサイエンス ワークショップワークショップ ((2009/07/072009/07/07))
実験の目的・実験装置
【目的】
小角中性子散乱: 東京大学物性研究所 小角散乱装置(SANS-U)(ダイラタンシー挙動の解析には、レオメーターを組合せたRheo-SANSを使用)
レオメーター : Anton Paar社製 MCR-501 / MCR-301
動的光散乱 : 動的光散乱装置 ALV-5000
高圧乳化法により作製したナノサイズエマルション(NE)について、
(1) コロイド結晶状と思われるエマルション粒子の充填構造
(2) 高分子(HEC)との混合でダイラタンシー(shear thickening)挙動が
生じる際に系内に形成される構造
を散乱法を用いて明らかにする
【実験装置】
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東海村日本原子力研究開発機構 改造3号原子炉(JRR-3M)
原子炉
実験利用棟
原子力機構研究炉大学共同利用施設(中性子散乱)
中性子散乱(小角中性子散乱装置)
(レオメータ)MCR 501 (Anton Paar)
SANS-U
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サンプル
高圧乳化ナノサイズエマルション 原液処方: NE1
油剤
界面活性剤
ナノサイズエマルション粒子のイメージ
水相
水中油型(O/W型)製剤
水溶性高分子: ヒドロキシエチルセルロース(HEC)
分子量 130万
・Shake Gel (ダイラタンシー製剤)の作製法
NE原液(NE1) + HEC 0.8%水溶液 (1:1で混合)NE原液(NE1) + HEC 0.8%水溶液 (1:1で混合)
D50/04Shake Gel (ダイラタンシー製剤)
界面活性剤(N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム)固体脂(N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミド)シリコーンオイル(メチルポリシロキサン)グリセリンエタノール防腐剤(メチルパラベン)重水
(比率)
約25%
粒子部分
水相成分
約75%
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ナノサイズエマルション単体の状態解析
ナノサイズエマルション単体の状態解析
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10-2
10-1
100
101
102
103
I(q) [
cm-1
]
10-2 10-1
q [Å-1]
NE1 NE1.25 NE2 NE4 NE8 NE16 NE27 NE54
10-4
10-3
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
η [P
a • s]
10-4 10-3 10-2 10-1 100 101 102 103 104
γ [s-1]
NE1 NE1.25 NE1.33 NE2 NE4 NE8 NE16 NE27 NE54
.
NE単体でのSANSおよびレオロジー測定結果
(a) 小角中性子散乱(SANS)データ (b) レオロジー(定常流粘度)測定データ
(NE1がナノサイズエマルション原液。NE*の「*」の数字は希釈倍率を表す)
希釈に伴い、ピーク位置が小角側に移動
⇒均一に希釈(粒子間距離が増加)している
希釈に伴い、粘度が減少する。Shear-thinningが観られていたものが、ニュートン流体に変わる。
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100
101
D(x
)/D(x
= 1
)
100 101
x [-]
slope : ~1/3
NE単体でのSANS測定結果
NE単独では希釈すると理論値どおりに粒子間距離が広がっている
(a)小角中性子散乱(SANS)データのピーク位置より、希釈倍率に対する相関長(∝粒子間距離)の変化をプロット
NE原液(NE1)
NE1.25
NE2
NE4 NE8
NE16NE27
NE54
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10-2
10-1
100
101
102
103
I(q)
[cm
-1]
10-2 10-1
q [Å-1]
10-1
100
101
102
103
P(q), S(q)
NE1 fitting with fcc P(q) S(q)R = 17.05nm
ΔR/R =0.21a = 57.3nmg = 0.16
NE原液のSANS散乱関数のFitting
FCCで良好にFittingできた。得られた粒径も電子顕微鏡観察とほぼ一致する。
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103
I (q
) [cm
-1]
10-2
q [Å-1]10-2
10-1
100
101
102
103
I(q) [
cm-1
]
10-2 10-1
q [Å-1]
NE2 + KCl: 0% NE2 + KCl: 0.01% NE2 + KCl: 0.02% NE2 + KCl: 0.05%
塩添加ナノエイズエマルションのSANS測定結果
塩濃度の増加に伴ってピーク位置は変化しないが、ピークがブロードになる。
粒子間には電荷反発による斥力相互作用が働いている
‥平均NE粒子間距離は変化しないが、分布は広がってくる。(乱れてくる)
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Shake Gelのダイラタンシー現象(Shear-thickening)の解析
Shake Gelのダイラタンシー現象(Shear-thickening)の解析
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ダイラタンシー(shear thickening)挙動
静置状態(振とう前)は流動的 振とう後はゲル状に変化
(振とう)
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10-2
10-1
100
101
102
103
104
η (P
a • s)
10-4 10-3 10-2 10-1 100 101 102 103 104
γ (s-1)10-2
10-1
100
101
102
103
104
σ (Pa)
(A) (B) (C) (D)
σ
η
D50/04 η ascent D50/04 η descent D50/04 σ ascent D50/04 σ descent 0.4wt% HEC 50wt% NE 0.4wt% HEC + 50wt% NE
.
レオロジー測定(せん断流動挙動)
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10-2
10-1
100
101
102
103
G',
G" /
Pa
• s
100 101
ω (rad/s)
G' > G"
G' < G"γ = 5%at 25 ÞC
1270 times
G'(ω) ∼ ω0
G"(ω) ∼ ω0.71
G'(ω) ∼ ω0.91
G"(ω) ∼ ω0
after
before
せん断流動(100 s-1で 10 min)前後でのG’(ω) ・ G”(ω) 測定
流動的であったものが、流動印加後はゲル状の物性を示す。
レオロジー測定(動的粘弾性)
γ=5%at 25℃
γ=5%at 25℃
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SANS dataRheology data Stationary0.1 s-1
0.3 s-1
1.0 s-1
1.6 s-1
2.5 s-1
4.0 s-1
6.3 s-1
10 s-1
16 s-1
25 s-1
40 s-1
63 s-1
100 s-1
102
103
104
Inte
nsity
[cm
-1]
10-3 10-2
Q [Å-1]
Dilatant Point !!
Dilatant Point !!
Dilatant Point 以上のせん断速度で、低波数領域の散乱強度が増加
(ca. 4 s-1)
Rheo-SANS測定
sec
68
1
2
4
68
10
η / P
a s
10x10386420t / minsec
中性子バイオ・ソフトマターサイエンス中性子バイオ・ソフトマターサイエンス ワークショップワークショップ ((2009/07/072009/07/07))
400020000 1000050000
γ = 0.1 s-1Radial Tangential
γ = 4.0 s-1
γ = 100 s-1
.
.
.
2次元パターンは、Dilatant Point を超えた高せん断速度でも等方的!
RadialTangential
Quartz cellCylinder
Diameter : 48 mmAngle : 2.2 ˚
BeakerDiameter : 50 mm
Gap size : 1 mmSample amount: 10 ml
Rheo-SANS測定: 2D patterns
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-60x10-6
-50
-40
-30
-20
-10
0
10
Bire
frin
genc
e
300250200150100500Time (s)
1 301030 50
(b) 0.4wt% HEC
0 s-1
-60x10-6
-50
-40
-30
-20
-10
0
10
Bire
frin
genc
e
10008006004002000Time (s)
D50/04
(a)
0 s-150 s-1Before shearing
After shearing
流動複屈折
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ナノエマルション粒子の粒子間距離の計算
L=2×π/0.14= 45nm a=√2L≒60~65nm
03/22/ DaL ==3
34
⎟⎠⎞
⎜⎝⎛=
aRjπ
jφ
L: Bragg spacing, D0: nearest neighbor distance,R:radius of the sphere, j = 1(sc), 2(bcc), 4(fcc)
粒子の体積分率が約25%で、R = 約16nmとなる(散乱からは約17nm)
102
103
104
I (q)
/ cm
-1
10-2 10-1
q / nm-1
stationary 1.0 s-1
4.0 s-1
10 s-1
40 s-1
100 s-1
(b)SANS data
散乱プロファイルの干渉性ピーク位置 qm≒0.14nm-1
FCC
60~65nm
Rh=41.8nm
HEC高分子鎖
(DLS測定より)
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中性子バイオ・ソフトマターサイエンス中性子バイオ・ソフトマターサイエンス ワークショップワークショップ ((2009/07/072009/07/07))
Shear thickening(ダイラタンシー)現象で想定されるメカニズム
エマルション粒子と高分子の吸脱着の時間(緩和時間)よりも速いスケールでshearを印加
すると、脱着する前に高分子がエマルション粒子にさらに吸着する(shearによる衝突頻度
の増加)。
適当なせん断速度では系全体にネットワーク構造が広がるようになり粘度が上昇する。
エマルション粒子が架橋点になり、Bridgingされた高分子が引き伸ばされてネットワーク構
造をとることで、弾性が発現(高粘度化)する。
Shear静置状態
Shearを印加(振とう)
粘度:低粘度:高
ダイラタンシー (Shear thickening)
中性子バイオ・ソフトマターサイエンス中性子バイオ・ソフトマターサイエンス ワークショップワークショップ ((2009/07/072009/07/07))
まとめ
(1)ナノサイズエマルション単体について(1)ナノサイズエマルション単体について
小角中性子散乱法などによる解析から以下のことが示唆される。
(2)高分子((2)高分子(HECHEC)とナノサイズエマルションの混合で)とナノサイズエマルションの混合で生じるダイラタンシー(生じるダイラタンシー(shear thickeningshear thickening)挙動について)挙動について
コロイド結晶状と思われるエマルション粒子の充填構造は、粒子の電荷反発による斥力相互作用により、FCC構造を
とっている。
エマルション粒子間距離と高分子鎖の大きさは同程度。せん断流動下でエマルション粒子が架橋点になり、吸着した高分子が引き伸ばされてネットワーク構造をとることで弾性が発現(高粘度化)する。